特許第6062390号(P6062390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062390
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】コンクリート板の固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20170106BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20170106BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   E04B5/43 H
   E04B5/02 C
   E04F15/18 601K
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-90098(P2014-90098)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209649(P2015-209649A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2014年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】土肥 政男
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−204313(JP,A)
【文献】 特開2006−183340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04B 5/02
E04F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材と連結する連結部と、
前記連結部の端部から立ち上がる段差部と、
前記段差部の上端から水平に延出する固定部と、からなり、
前記固定部にはボルト挿通孔を形成し、
前記連結部の上面には弾性体を設け
前記固定部の前記ボルト挿通孔に下方から挿通したボルトによって前記固定部をコンクリート板の下面に固定し、
前記弾性体が前記連結部と前記梁材の上フランジの下面との間に位置し、
前記弾性体は、コンクリート板の上下動に合わせて、上面が前記上フランジの下面に当接したまま伸縮する長さを有し、
前記コンクリート板への積載荷重がゼロのとき、前記弾性体が最も圧縮されていることを特徴とする、
コンクリート板の固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート板を用いた床構造においてコンクリート板を梁材上に固定するための固定金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造の建築物において、床材となるコンクリート板を梁材に固定する方法としては、段差のある断面Z状の金具の一方をコンクリート板に固定し、他方を梁材の上フランジの下部に当接させる方法が知られている。(図7
金具と上フランジとの間には、ゴム等の緩衝材を設ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
防振を目的としてコンクリート板と梁材との間に梁上防振材を配置した場合において、コンクリート板に積載荷重が加わると、梁上防振材が圧縮されて、コンクリート板全体が変位して沈み込む形となる。このとき、金具と梁材の上フランジとの間には空間ができる(図8)。
その後、積載荷重が取り除かれると梁上防振材が復元し、コンクリート板が上昇し、金具と梁材が接触する。このとき、緩衝材が金具と梁材が接触するときの金属音を抑えるが、高音域から音域を下げたとしても、低音域での音の発生を防ぐのは困難である。
また、載荷荷重がゼロの状態においてすでに金具と梁材との間に空間がある場合には、梁上防振材の復元力によってコンクリート板が跳ね上がり、振動・騒音が発生する(図9)。
【0004】
本発明は、金具と梁材との接触による騒音や、コンクリート板の跳ね上がりを防止する、コンクリート板の固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決する本発明のコンクリート板の固定金具は、梁材と連結する連結部と、前記連結部の端部から立ち上がる段差部と、前記段差部の上端から水平に延出する固定部と、からなり、前記固定部にはボルト挿通孔を形成し、前記連結部の上面には弾性体を設け、前記固定部の前記ボルト挿通孔に下方から挿通したボルトによって前記固定部をコンクリート板の下面に固定し、前記弾性体が前記連結部と前記梁材の上フランジの下面との間に位置し、前記弾性体は、コンクリート板の上下動に合わせて、上面が前記上フランジの下面に当接したまま伸縮する長さを有し、前記コンクリート板への積載荷重がゼロのとき、前記弾性体が最も圧縮されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコンクリート板の固定金具は以上説明したようになるから、次のような効果のいずれかを得ることができる。
(1)コンクリート板の下面にボルトによって取り付けるため、容易に取り付けることができる。
(2)梁材の上フランジ下面と金具の連結片との間に弾性体を配置する。コンクリート板への積載荷重によって梁上防振材が圧縮されて、コンクリート板が沈み込んだ際には弾性体が伸長するため、金具と梁材との間に空間が生じることがない。そして空間が生じないため、積載荷重が取り除かれて梁上防振材が復元したときに、梁材と金具との接触による騒音が発生することがない。
(3)積載荷重がゼロのとき弾性体が最も圧縮されているため、コンクリート板に積載荷重が作用して弾性体が伸長した後、積載荷重が取り除かれて梁上防振材の復元によってコンクリート板が上昇する際に、弾性体の弾性力によってコンクリート板の上層速度が遅くなる。これにより、復元時の騒音を低減することができる。
(4)積載荷重がゼロのとき弾性体が最も圧縮されているため、梁上防振材が復元される際、積載荷重がゼロの位置までしか弾性体が縮まないため、コンクリート板が跳ね上がることがない。
(5)コンクリート板が跳ね上がることがないため、コンクリート板の振動を抑制し、騒音を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の固定金具の使用状態の説明図
図2】固定金具の斜視図
図3】固定金具の変形の説明図
図4】その他実施例にかかる固定金具の斜視図
図5】その他実施例にかかる固定金具の使用状態の説明図
図6】その他実施例にかかる固定金具の変形の説明図
図7】従来の固定金具の説明図(1)
図8】従来の固定金具の説明図(2)
図9】従来の固定金具の説明図(3)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>基本的構成
本発明の固定金具1は、梁材2上にコンクリート板3を固定するための部材である。
固定金具1は、矩形の平板を略Z字上に折曲したものであり、連結部4と、連結部4の端部から立ち上がる段差部5と、段差部5の上端から水平に延出する固定部6と、からなる(図2)。
固定部6にはボルト挿通孔61を形成する。
連結部4の上面には弾性体7を設ける。
【0010】
<2>弾性体
弾性体7はバネ71、連結部4に設けたピン挿通孔41およびバネ71内部に挿通するピン72、および、バネ71から延出したピン72の端部に設ける上プレート73からなる。バネ71はコイルバネである。
ピン72のピン挿通孔41から下方向に延出した端部にはピン挿通孔41よりも大径のストッパー74を設ける。ピン72の長さはバネ71の自由長よりも短くする。
このように構成することにより、バネ71を蓄勢した状態で連結部4と上プレート73とにより狭持する。このとき、バネ71の長さはコンクリート板3の上下方向の変位量よりも長くしておくことにより、コンクリート板3の上下動に合わせて伸縮する。
【0011】
<2−1>弾性体の伸縮
弾性体7の上プレート73に下方向の荷重をかけるとバネ71は圧縮される。このとき、ピン72およびピン挿通孔41がガイドとなり、バネ71は倒れたり曲がることなく、軸方向に均一に圧縮される。
そして荷重を取り除くと、バネ71は、圧縮時と同様にピン72およびピン挿通孔41がガイドとなり、ストッパー74が連結部4の下面に当接するまで伸長する。
【0012】
<3>固定形態
次に、固定金具1を用いたコンクリート板3の固定形態を説明する。
本発明の固定金具1は、梁材2上にコンクリート板3を固定するものである。梁材2とコンクリート板3との間には、梁上防振材8が配置されている(図1)。
本発明の固定金具1は、固定部6のボルト挿通孔61に挿通したボルト62によって、コンクリート板3の下面に固定する。
そして、段差部5が梁材2のウェブと略平行に立ち下がり、段差部5の下端から連結部4が梁材2の上フランジ21と平行に延出する。
連結部4と梁材2の上フランジ21との間には弾性体7が位置する。
【0013】
<3−1>積載荷重がゼロのとき
弾性体7の上プレート73の上面は、梁材2の上フランジ21の下面と当接している。そして、コンクリート板3の上面への積載荷重がゼロ(床構造への積載荷重がゼロ)のとき、弾性体7のバネ71が密着長さ(最も圧縮された状態)となるように、段差部5の高さやバネ71の長さをあらかじめ決定しておく。
【0014】
<3−2>積載荷重が加わったとき
コンクリート板3の上面に積載荷重が加わると、梁上防振材8が圧縮されて、コンクリート板3全体が変位して沈み込む(図3)。
コンクリート板3が沈み込むと、コンクリート板3の下面に固定した固定金具1も同時に下がるが、弾性体7は上プレート73が上フランジ21に当接したまま、バネ71が伸長する。バネ71の長さはコンクリート板3の変位量よりも長いため、コンクリート板3の位置が最大に変位した場合でも、上プレート73が上フランジ21から離れず、当接したままである。
【0015】
<3−3>積載荷重が取り除かれたとき
コンクリート板3の上面の積載荷重が取り除かれると、梁上防振材8の復元力により、コンクリート板3がもとの位置に戻るように上昇する。
上プレート73と上フランジ21は当接したままであるため、上プレート73と上フランジ21との接触音は発生しない。そして、上昇中のコンクリート板3には下方向にバネ71の復元力が作用し、コンクリート板3の上昇速度が低減される。これにより、復元時の騒音の発生が少なくなる。
そしてコンクリート板3が元の位置に戻るまで梁上防振材8が復元すると、バネ71が最も圧縮されるため、コンクリート板3が跳ね上がって振動が発生することがなく、騒音が防止される。
以上のように、弾性体7のバネ71は、コンクリート板3の積載荷重がゼロのときの長さが密着長さとすることで、騒音の防止効果が最大に発揮される。
【0016】
[その他実施例]
上記した実施例においては、弾性体7をバネ71により構成したが、エラストマー75と、上プレート73を有する固定ピン76と、により構成しても良い。
エラストマー75は軸に沿って挿通孔751を有する中空の柱状体であり、挿通孔751に固定ピン76を挿通する。
固定ピン76の長さはエラストマー75の自由長よりも短くする。
コンクリート板3の上面への積載荷重がゼロ(床構造への積載荷重がゼロ)のとき、固定ピン76の下端が連結部4に接触するように(図5)、段差部5の高さや固定ピン76の長さをあらかじめ決定しておく。
また、コンクリート板3の位置が最大に変位した場合でも、上プレート73が上フランジ21から離れないように、エラストマー75の長さはコンクリート板3の変位量よりも長くする。
このように構成することにより、エラストマー75は、挿通孔751および固定ピン76がガイドとなり、軸方向に均一に伸縮する。
【0017】
コンクリート板3の上面に積載荷重が加わると、梁上防振材8が圧縮されて、コンクリート板3全体が沈み込み、弾性体7は上プレート73が上フランジ21に当接したまま、エラストマー75が伸長する。エラストマー75の長さはコンクリート板3の変位量よりも長いため、コンクリート板3の位置が最大に変位した場合でも、上プレート73が上フランジ21から離れず、当接したままである。
そして、コンクリート板3の上面の積載荷重が取り除かれると、梁上防振材8の復元力により、コンクリート板3がもとの位置に戻るように上昇する。
上プレート73と上フランジ21は当接したままであるため、上プレート73と上フランジ21との接触音は発生しない。そして、上昇中のコンクリート板3には下方向にエラストマー板3の復元力が作用し、コンクリート板3の上昇速度が低減される。これにより、復元時の騒音の発生が少なくなる。
そしてコンクリート板3が元の位置に戻るまで梁上防振材8が復元すると、固定ピン76の下端が連結部4に接触し、それ以上エラストマー75が圧縮されることがなく、コンクリート板3が跳ね上がって振動が発生することがない。
【符号の説明】
【0018】
1 固定金具
2 梁材
21 上フランジ
3 コンクリート板
4 連結部
5 段差部
6 固定部
61 ボルト挿通孔
62 ボルト
7 弾性体
71 バネ
72 ピン
73 上プレート
74 ストッパー
75 エラストマー
751 挿通孔
76 固定ピン
8 梁上防振材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9