【実施例】
【0009】
<1>基本的構成
本発明の固定金具1は、梁材2上にコンクリート板3を固定するための部材である。
固定金具1は、矩形の平板を略Z字上に折曲したものであり、連結部4と、連結部4の端部から立ち上がる段差部5と、段差部5の上端から水平に延出する固定部6と、からなる(
図2)。
固定部6にはボルト挿通孔61を形成する。
連結部4の上面には弾性体7を設ける。
【0010】
<2>弾性体
弾性体7はバネ71、連結部4に設けたピン挿通孔41およびバネ71内部に挿通するピン72、および、バネ71から延出したピン72の端部に設ける上プレート73からなる。バネ71はコイルバネである。
ピン72のピン挿通孔41から下方向に延出した端部にはピン挿通孔41よりも大径のストッパー74を設ける。ピン72の長さはバネ71の自由長よりも短くする。
このように構成することにより、バネ71を蓄勢した状態で連結部4と上プレート73とにより狭持する。このとき、バネ71の長さはコンクリート板3の上下方向の変位量よりも長くしておくことにより、コンクリート板3の上下動に合わせて伸縮する。
【0011】
<2−1>弾性体の伸縮
弾性体7の上プレート73に下方向の荷重をかけるとバネ71は圧縮される。このとき、ピン72およびピン挿通孔41がガイドとなり、バネ71は倒れたり曲がることなく、軸方向に均一に圧縮される。
そして荷重を取り除くと、バネ71は、圧縮時と同様にピン72およびピン挿通孔41がガイドとなり、ストッパー74が連結部4の下面に当接するまで伸長する。
【0012】
<3>固定形態
次に、固定金具1を用いたコンクリート板3の固定形態を説明する。
本発明の固定金具1は、梁材2上にコンクリート板3を固定するものである。梁材2とコンクリート板3との間には、梁上防振材8が配置されている(
図1)。
本発明の固定金具1は、固定部6のボルト挿通孔61に挿通したボルト62によって、コンクリート板3の下面に固定する。
そして、段差部5が梁材2のウェブと略平行に立ち下がり、段差部5の下端から連結部4が梁材2の上フランジ21と平行に延出する。
連結部4と梁材2の上フランジ21との間には弾性体7が位置する。
【0013】
<3−1>積載荷重がゼロのとき
弾性体7の上プレート73の上面は、梁材2の上フランジ21の下面と当接している。そして、コンクリート板3の上面への積載荷重がゼロ(床構造への積載荷重がゼロ)のとき、弾性体7のバネ71が密着長さ(最も圧縮された状態)となるように、段差部5の高さやバネ71の長さをあらかじめ決定しておく。
【0014】
<3−2>積載荷重が加わったとき
コンクリート板3の上面に積載荷重が加わると、梁上防振材8が圧縮されて、コンクリート板3全体が変位して沈み込む(
図3)。
コンクリート板3が沈み込むと、コンクリート板3の下面に固定した固定金具1も同時に下がるが、弾性体7は上プレート73が上フランジ21に当接したまま、バネ71が伸長する。バネ71の長さはコンクリート板3の変位量よりも長いため、コンクリート板3の位置が最大に変位した場合でも、上プレート73が上フランジ21から離れず、当接したままである。
【0015】
<3−3>積載荷重が取り除かれたとき
コンクリート板3の上面の積載荷重が取り除かれると、梁上防振材8の復元力により、コンクリート板3がもとの位置に戻るように上昇する。
上プレート73と上フランジ21は当接したままであるため、上プレート73と上フランジ21との接触音は発生しない。そして、上昇中のコンクリート板3には下方向にバネ71の復元力が作用し、コンクリート板3の上昇速度が低減される。これにより、復元時の騒音の発生が少なくなる。
そしてコンクリート板3が元の位置に戻るまで梁上防振材8が復元すると、バネ71が最も圧縮されるため、コンクリート板3が跳ね上がって振動が発生することがなく、騒音が防止される。
以上のように、弾性体7のバネ71は、コンクリート板3の積載荷重がゼロのときの長さが密着長さとすることで、騒音の防止効果が最大に発揮される。
【0016】
[その他実施例]
上記した実施例においては、弾性体7をバネ71により構成したが、エラストマー75と、上プレート73を有する固定ピン76と、により構成しても良い。
エラストマー75は軸に沿って挿通孔751を有する中空の柱状体であり、挿通孔751に固定ピン76を挿通する。
固定ピン76の長さはエラストマー75の自由長よりも短くする。
コンクリート板3の上面への積載荷重がゼロ(床構造への積載荷重がゼロ)のとき、固定ピン76の下端が連結部4に接触するように(
図5)、段差部5の高さや固定ピン76の長さをあらかじめ決定しておく。
また、コンクリート板3の位置が最大に変位した場合でも、上プレート73が上フランジ21から離れないように、エラストマー75の長さはコンクリート板3の変位量よりも長くする。
このように構成することにより、エラストマー75は、挿通孔751および固定ピン76がガイドとなり、軸方向に均一に伸縮する。
【0017】
コンクリート板3の上面に積載荷重が加わると、梁上防振材8が圧縮されて、コンクリート板3全体が沈み込み、弾性体7は上プレート73が上フランジ21に当接したまま、エラストマー75が伸長する。エラストマー75の長さはコンクリート板3の変位量よりも長いため、コンクリート板3の位置が最大に変位した場合でも、上プレート73が上フランジ21から離れず、当接したままである。
そして、コンクリート板3の上面の積載荷重が取り除かれると、梁上防振材8の復元力により、コンクリート板3がもとの位置に戻るように上昇する。
上プレート73と上フランジ21は当接したままであるため、上プレート73と上フランジ21との接触音は発生しない。そして、上昇中のコンクリート板3には下方向にエラストマー板3の復元力が作用し、コンクリート板3の上昇速度が低減される。これにより、復元時の騒音の発生が少なくなる。
そしてコンクリート板3が元の位置に戻るまで梁上防振材8が復元すると、固定ピン76の下端が連結部4に接触し、それ以上エラストマー75が圧縮されることがなく、コンクリート板3が跳ね上がって振動が発生することがない。