(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062400
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】雨センサ並びにこれを備える灌水用タイマ及び灌水装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/14 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
G01W1/14 F
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-160204(P2014-160204)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-38234(P2016-38234A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】恵良 秀一
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−242262(JP,A)
【文献】
特開昭58−042959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水取り込み用開口を上面に有する容器と、
前記容器に収容された吸水部材と、
前記容器内において前記吸水部材の上面の少なくとも一部を覆うように前記開口と前記吸水部材との間に配置され且つ前記開口からの雨水を前記吸水部材に供給する流路の少なくとも一部を構成する吸水部材保護部と、
前記吸水部材にそれぞれ当接し且つ互いに離間した位置に配置される一対の電極と、
を備える雨センサであって、
前記開口は、当該雨センサの外部から当該開口を通して入射する光が前記吸水部材に直接当たらないように設けられている、雨センサ。
【請求項2】
雨水取り込み用開口を上面に有する容器と、
前記容器に収容された吸水部材と、
前記容器内において前記吸水部材の上面の少なくとも一部を覆うように前記開口と前記吸水部材との間に配置され且つ前記開口からの雨水を前記吸水部材に供給する流路の少なくとも一部を構成する吸水部材保護部と、
前記吸水部材にそれぞれ当接し且つ互いに離間した位置に配置される一対の電極と、
を備え、
前記一対の電極が固定されており且つ前記吸水部材の下面の少なくとも一部と当接する吸水部材当接面を更に有し、前記開口からの雨水は前記流路及び前記吸水部材当接面を介して前記吸水部材に吸収され、
前記吸水部材保護部は、その上面から下方に延びて前記吸水部材当接面に対向する下面に至る貫通孔を有し、
前記貫通孔を構成する内周面は、上方から下方に延びる溝部を有する、雨センサ。
【請求項3】
前記容器は前記上面の周縁部から下方に延びる筒状部を有し、前記筒状部の下端の少なくとも一部は開放されている、請求項1又は2に記載の雨センサ。
【請求項4】
雨水取り込み用開口を上面に有する容器と、
前記容器に収容された吸水部材と、
前記容器内において前記吸水部材の上面の少なくとも一部を覆うように前記開口と前記吸水部材との間に配置され且つ前記開口からの雨水を前記吸水部材に供給する流路の少なくとも一部を構成する吸水部材保護部と、
前記吸水部材にそれぞれ当接し且つ互いに離間した位置に配置される一対の電極と、
を備え、
前記吸水部材は環状又は円筒状であり、その上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有し、
前記吸水部材保護部の上面は、周縁部から中央部に向けて低くなる斜面と、前記斜面の中央部に設けられた上側開口とを有し、
前記上側開口からの雨水は前記吸水部材の前記貫通孔の内周面から吸収される、雨センサ。
【請求項5】
雨水取り込み用開口を上面に有する容器と、
前記容器に収容された吸水部材と、
前記容器内において前記吸水部材の上面の少なくとも一部を覆うように前記開口と前記吸水部材との間に配置され且つ前記開口からの雨水を前記吸水部材に供給する流路の少なくとも一部を構成する吸水部材保護部と、
前記吸水部材にそれぞれ当接し且つ互いに離間した位置に配置される一対の電極と、
を備え、
前記容器の前記上面に対してスライド自在に設けられており、前記開口の開口面積を調節するための開口面積調節機構を更に備える、雨センサ。
【請求項6】
前記雨水取り込み用開口は円弧状であり、
前記開口面積調節機構は前記容器に対して回転自在に設けられた可動カバーである、請求項5に記載の雨センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の雨センサと、
受水口と、
吐水口と、
前記受水口と前記吐水口とをつなぐ流路の途中に設けられた弁と、
前記雨センサからの電気信号に基づいて前記弁の開動作を中止するか否かを決定する制御部と、
を備える灌水タイマ。
【請求項8】
請求項7に記載の灌水タイマと、
前記吐水口に基端側が接続されるホースと、
を備える、灌水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨センサ並びにこれを備える灌水タイマ及び灌水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーが希望する時刻に芝生やプランターに所定の時間にわたって水やりを自動で行うための灌水用タイマが知られている。灌水用タイマは、開栓した状態の蛇口に装着され、タイマが作動していない状態においては内蔵された弁は閉じられ、他方、タイマが作動した状態になると弁が開いて水やりが行われる。
【0003】
上記タイマの設定時刻において十分量の雨が降っていたり雨が降った後であれば、水やりを行う必要はない。過剰の水やりは根腐れの原因となるし、水の無駄遣いにもなる。特許文献1は基準面積あたりの雨滴を回収して雨量を検出する雨量検出センサを開示する。このようなセンサを灌水用タイマに採用することで、タイマの設定時刻になっても水やりを中止するという制御を実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4265966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のセンサは回転軸を中心に搖動するシーソー部材の動きによって雨量を検出する。このような機械的構造を有するセンサは汚れの付着等によって適切に作動しなくなる可能性がある点において改善の余地がある。特に、雨を検出するためのセンサは当然のことながら、屋外に設置されるとともに雨水を内部に取り込む必要があるため、機械的構造を筺体で覆っても汚れの付着を十分に防止できない。
【0006】
これに加え、本発明者らの検討によると、屋外に設置されるセンサは紫外線の影響により、センサを構成する部品が劣化するという課題がある。センサの外面を構成する材料には紫外線に強い樹脂材料や金属材料を選択することができる。しかし、センサの内部に配置される吸水部材(特許文献1においてはフェルト22)は紫外線に曝されると、吸水性が低下するなどの劣化が生じる。センサ内部の部品が劣化すると、センサを分解してその部品を交換するメンテナンス作業を行う必要がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分安定的な作動を実現でき且つメンテナンス頻度を十分に低くできる雨センサ並びにこれを備えた灌水用タイマ及び灌水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る雨センサは、雨水取り込み用開口を上面に有する容器と、容器に収容された吸水部材と、容器内において吸水部材の上面の少なくとも一部を覆うように、上記開口と吸水部材との間に配置され且つ上記開口からの雨水を吸水部材に供給する流路の少なくとも一部を構成する吸水部材保護部と、吸水部材にそれぞれ当接し且つ互いに離間した位置に配置される一対の電極とを備える。
【0009】
上記雨センサは雨水の電気伝導を利用して所定量の降雨があったか否かを検知する。すなわち、上記雨センサは、一定量の雨が降って吸水部材が雨水を吸収するに伴って低下する吸水部材の電気抵抗を一対の電極で把握する。上記雨センサによれば、動きを伴う機械的構造を有するセンサと比較して安定的な作動を実現できる。また上記雨センサによれば、開口を通じて容器内部に紫外線が照射されても、開口と吸水部材との間に配置された吸水部材保護部が吸水部材への紫外線照射を遮断する。このため、吸水部材の紫外線による劣化を十分に抑制できる。吸収部材の紫外線による劣化をより確実に抑制する観点から、上記雨水取り込み用開口は、雨センサの外部から当該開口を通して入射する光が吸水部材に直接当たらないように設けられていることが好ましい。すなわち、雨水取り込み用開口の任意の位置と、吸水部材の任意の位置とを結ぶ全ての直線は、雨センサを構成するいずれかの部材に交わるように構成されていることが好ましい。
【0010】
上記雨センサは、一対の電極が固定されており且つ吸水部材の下面の少なくとも一部と当接する吸水部材当接面を更に有し、上記開口からの雨水が上記流路及び吸水部材当接面を介して吸水部材に吸収されるように構成されていることが好ましい。吸水部材当接面を介して吸水部材の下側から雨水を吸水部材に浸み込ませることで、雨水が吸水部材に直接当たる構成と比較して、所定量の降雨があったか否かをより安定的に検知できる。
【0011】
上記吸水部材保護部は、その上面から下方に延びて吸水部材当接面に対向する下面に至る貫通孔を有し、この貫通孔を構成する内周面は上方から下方に延びる溝部を有することが好ましい。雨水が流れる貫通孔に溝部を設けることで、貫通孔にゴミなどの異物が入っても貫通孔が閉塞されることを抑制できる。
【0012】
上記容器は、その上面の周縁部から下方に延びる筒状部を有し、筒状部の下端の少なくとも一部は開放されていることが好ましい。容器の下側に開放された部分を設けることで容器内に入った過剰な雨水を容器外に排出できる。また容器内と外との通気性を確保でき、雨が止んでから所定の時間が経過後に吸水部材が乾いた状態に戻すことができる。
【0013】
上記吸水部材は環状又は円筒状であり、その上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有してもよい。この場合、上記吸水部材保護部の上面は、周縁部から中央部に向けて低くなる斜面と、この斜面の中央部に設けられた上側開口とを有することが好ましい。これにより、上側開口からの雨水が吸水部材の貫通孔の内周面から吸収される構成を採用できる。かかる構成を採用することで雨センサのサイズをコンパクトにできる。
【0014】
上記雨センサは、容器の上面に対してスライド自在に設けられており、開口の開口面積を調節するための開口面積調節機構を更に備えてもよい。例えば、雨水取り込み用開口が円弧状である場合、開口面積調節機構は容器に対して回転自在に設けられた可動カバーであってもよい。雨水取り込み用開口の開口面積を調節可能にすることで、雨センサが作動する雨量を例えばユーザーのニーズに応じて調節できる。
【0015】
本発明に係る灌水タイマは、上記雨センサと、受水口と、吐水口と、受水口と吐水口とをつなぐ流路の途中に設けられた弁と、雨センサからの電気信号に基づいて弁の開動作を中止するか否かを決定する制御部とを備える。本発明に係る灌水装置は、灌水タイマと、灌水タイマの吐出口に基端側が接続されるホースとを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分安定的な作動を実現でき且つメンテナンス頻度を十分に低くできる雨センサ並びにこれを備えた灌水用タイマ及び灌水装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る雨センサを備えた灌水装置を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す雨センサの上面図であり、(a)は雨水取り込み用開口を全開にした状態、(b)は開口面積を少し小さくした状態、(c)は開口面積を更に小さくした状態をそれぞれ示す。
【
図5】
図1に示す雨センサの可動カバーを外した状態を示す上面図である。
【
図6】
図2に示す雨センサのVI−VI線断面図である。
【
図7】上側ケース(吸水部材保護部)の上面側の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す上側ケースのVIII−VIII線断面図である。
【
図9】上側ケース(吸水部材保護部)の下面側の構成を示す斜視図である。
【
図12】一対の電極間の電位差の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。ここでは雨センサの使用時の向きに基づいて構成の位置を表記するものとする。すなわち、雨は上方から下方に落下するので例えば雨水取り込み用開口が設けられている面について「上面」と表記する。
【0019】
<灌水装置>
図1は、本実施形態に係る雨センサを備えた灌水装置を示す斜視図である。灌水装置100は、雨センサ10と、センサケーブル30と、雨センサ用スタンド40と、タイマ本体50と、ホース60とを備える。灌水装置100は、ユーザーが希望する時刻に芝生やプランターに所定の時間にわたって水やりを自動で行うものである。なお、本実施形態において、灌水タイマは、雨センサ10と、センサケーブル30と、タイマ本体50とによって構成される。
【0020】
雨センサ10は、灌水装置100による水やりが必要であるか否かを判断するためのものである。センサケーブル30は雨センサ10からの電気信号をタイマ本体50に伝えるためのものである。センサケーブル30はその基端側にコネクタ31を有する。雨センサ用スタンド40は雨センサ10を地面の上に設置するためのものである。スタンド40は、雨センサ10が係合するセンサ保持スタンド40aと、先端側を地中に突き刺すように構成されたペグ40bとを備える。センサ保持スタンド40aとペグ40bとの接合部付近には灌水装置100が備えるチューブ(不図示)を保持するための円弧状部材40cが設けられている。雨センサ10の取り付け高さは、泥跳ね等による動作不良を抑制する観点から地上から10cm以上であることが好ましい。なお、スタンド40は使用せず、例えば柵や雨樋、植木用支柱に針金で雨センサ10を固定してもよい。
【0021】
タイマ本体50は、蛇口に接続される受水口51と、ホース60が接続される吐水口52と、受水口51と吐水口52とをつなぐ流路(不図示)と、この流路の途中に設けられた弁(不図示)と、雨センサ10からの電気信号に基づいて弁の開動作を中止するか否かを決定する制御部(不図示)とを備える。ホース60によって水やりすべき場所の近くにまで水が送られる。ホース60の先端側にはユーザーのニーズに応じて分岐コネクタ、散水用チューブ、ドリップホース、スプリンクラーなどが接続される。
【0022】
<雨センサ>
図2に示すように、雨センサ10の形状は略円柱状である。雨センサ10のサイズは特に制限はないが、主に使いやすさの観点から、直径2〜5cm程度、高さ2〜5cm程度とすればよい。雨センサ10は、
図2及び
図3に示すように、上側から下側に向けて、可動カバー(開口面積調節機構)1、固定カバー2、上側ケース3、吸水部材5、一対の電極6a,6b、電極支持部材7及び下側ケース8が配置されている。本実施形態においては、固定カバー2と上側ケース3の外側部分3aと下側ケース8によって雨センサ10の容器が構成されている。容器を構成するこれらの部材並びに可動カバー1及び電極支持部材7は例えば樹脂材料を射出成形することによって製造することができる。樹脂材料としては、成形性に優れるPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合樹脂)、POM(ポリアセタール)が好ましい。特にコストの面ではPPが好ましく、強度の面ではPOMが好ましい。以下、雨センサ10の各構成について説明する。
【0023】
可動カバー1は、固定カバー2の上面に形成された円弧状の雨水取り込み用開口2aの開口面積を調節するためのものである。可動カバー1は略半円状の開口1aを有する上面1bと、上面1bの周縁部から下方に延びる側面1cとを有する。可動カバー1は固定カバー2に対して回転自在に設けられている。回転軸Cを中心にして可動カバー1を回転させることにより、可動カバー1が固定カバー2上をスライドする。雨センサ10内に取り込まれる雨水の量を調節できる。
【0024】
図4の(a)は雨水取り込み用開口2aが全開の状態であり、これを初期設定とすることができる。
図4の(b)及び(c)に示すように、固定カバー2に付された雨滴マークM1,M2と開口1aの端面1dとを位置合わせすることにより、ユーザーのニーズに応じて雨水取り込み用開口2aの開口面積を調節することができる。例えば、弱い雨(1時間当たりの雨量3mm程度)が降って十分に地面が湿っているときだけ水やりを中止することを希望するユーザーは可動カバー1の端面1dを雨滴マークM1の位置に合せればよい(
図4の(b)参照)。やや強い雨(1時間当たりの雨量10〜20mm程度)が降ってより十分に地面が湿っているときだけ水やりを中止することを希望するユーザーは可動カバー1の端面1dを雨滴マークM1の位置に合せればよい(
図4の(c)参照)。
【0025】
固定カバー2は、上述のとおり、雨センサ10の容器の一部をなしている。
図5は雨センサ10の可動カバー1を外した状態を示す上面図である。同図に示すとおり、固定カバー2は、その上面2bに円弧状の雨水取り込み用開口2aを有する。雨水取り込み用開口2aの幅は雨センサ10のサイズにもよるが、好ましくは2〜15mm程度であり、より好ましくは4〜8mm程度である。円弧状の雨水取り込み用開口2aの一方の端部から他方の端部までに角度(
図5における角度θ)は105〜180°程度であればよい。角度θが105°以上であればユーザーのニーズに応じて開口面積を十分に調節可能であり、他方、180°以下であれば固定カバー2の強度を十分に確保できる。
【0026】
上側ケース3は、上述のとおり、その外側部分3aが雨センサ10の容器の一部をなしている。また上側ケース3は、吸水部材保護部4を有し、上側ケース3の下に配置される吸水部材5を紫外線から保護する役割を果たしている。
図6は雨センサ10の内部の構成を示す縦断面図である。同図に示すとおり、吸水部材保護部4は吸水部材5の上面5aを覆うように配置され、雨水取り込み用開口2aから入射する紫外線が吸水部材5に直接当たることを防いでいる。
図5に示すとおり、雨水取り込み用開口2a内を覗き込んでも吸水部材保護部4の上面(後述の斜面4a及びリブ4b)が見えるのみで、吸水部材5は吸水部材保護部4に隠れて見えない。換言すれば、固定カバー2の雨水取り込み用開口2aの任意の位置と、吸水部材5の任意の位置とを結ぶ全ての直線は、雨センサ10を構成するいずれかの部材(本実施形態においては上側ケース3)に交わる。
【0027】
吸水部材保護部4は、雨水取り込み用開口2aからの雨水を吸水部材5まで導く流路の役割も果たす。すなわち、吸水部材保護部4は、
図6及び
図7に示すように、上面の周縁部から中央部に向けて低くなる斜面4aと、斜面4aから上側に突出し且つ放射状に設けられた複数のリブ4bと、斜面4aの中央部に設けられた上側開口4cと、上側開口4cから下方に延びて下面に至る貫通孔4dとを有する。
図7に示すとおり、斜面4aは雨水取り込み用開口2aに対応する位置であって中心角約240°の範囲にわたって設けられている。残りの中心角約120°の範囲は通気性確保の観点から開放されている。
【0028】
雨水取り込み用開口2aからの雨水は、斜面4aと、貫通孔4dと、上側ケース3と後述する電極支持部材7の吸水部材当接面7aとの隙間Gとを介して吸水部材5に供給される。隙間Gは吸水部材保護部4の下面であって下側開口4eの周囲には設けられた複数の突起4fによって形成される。
図6に示すように複数の突起4fの先端は吸水部材当接面7aと当接している。
【0029】
図8及び
図9に示すように、上側ケース3の内周面から中心部に向けて6つのリブ4bが設けられている。6つのリブ4bのうち、4つのリブ4bを斜面4aから上方に突出させることで斜面4aにゴミなどの異物が付着しても雨水を上側開口4cへとより確実に導くことができるとともに上側開口4cの閉塞を抑制できる。他方、貫通孔4dを構成する内周面は上方から下方に延びる溝部4gを有する(
図8参照)。貫通孔4dに溝部を設けることで、貫通孔4dにゴミなどの異物が入っても貫通孔4dが閉塞されることを抑制できる。6つのリブ4bは下側に配置される環状の吸水部材5を所定の位置に保持する役割を有する。すなわち、6つのリブ4bはいずれも下側に設けられた凹部4hを有し、これらの凹部4hで吸水部材5を保持できるように構成されている。
【0030】
上側ケース3は、
図6に示すように、雨センサ10の各構成(可動カバー1、固定カバー2、吸水部材5、電極支持部材7及び下側ケース8)を係合させる役割も果たしている。すなわち、可動カバー1はその内面が上側ケース3の外面と係合している。固定カバー2はその内面が上側ケース3の上部と係合している。吸水部材5はリブ4bの凹部4hに保持されている。電極支持部材7はその吸水部材当接面7aが突起4fと当接している。下側ケース8はその外面に設けられた雄ねじ8aが上側ケース3下部の内面に設けられた雌ねじ3bと螺合する。
【0031】
吸水部材5は、水を吸収する材料からなり、その具体的な材料としては発泡体(例えばウレタン、ポリエチレン(PE)又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA))や不織布などが挙げられる。吸水部材5が具備すべき性質としては、吸収した水が所定の時間経過後(例えば4〜8時間後)に乾燥すること、劣化しにくいこと(加水分解しにくいこと)、柔軟性(形状の再現性)があることなどが挙げられる。
【0032】
図3に示すとおり、吸水部材5の形状は環状である。吸水部材5のサイズは雨センサ10のサイズに依存するとともに、吸水部材5の乾燥の速度に影響を与える。かかる観点から吸水部材5の外径は好ましくは16〜24mm程度であり、より好ましくは18〜22mm程度である。吸水部材5の内径は好ましくは4〜12mm程度であり、より好ましくは5〜6mm程度である。吸水部材5の厚さは好ましくは1〜5mm程度であり、より好ましくは2〜4mm程度である。吸水部材5のサイズを上記範囲とした場合、吸水部材5が0.1〜0.5ml程度の雨水を吸収したときに雨センサ10が作動した状態となり、雨が止んだ後、吸水部材5の乾燥が進行して3〜24時間後に雨センサ10が作動していない状態に復帰させることができる。
【0033】
図6に示すように、吸水部材5の下面に一対の電極6a,6bの先端がめり込むように当接している。電極6a,6bは、雨水の吸収に伴う吸水部材5の電気抵抗の変化を検知するためのものである。電極6a,6bは、雨水の電気伝導を利用して所定量の降雨があったか否かを検出する。この検出原理については後述する。
【0034】
一対の電極6a,6bは、吸水部材5の貫通孔5bを挟むように横方向に並んでおり、電極支持部材7に固定されている。電極支持部材7内において電極6a,6bと電線30a,30bがそれぞれ接続されている(
図6参照)。電極支持部材7の上面が吸水部材当接面7aをなしている。この吸水部材当接面7aの形状は略長方形であり、その長辺は吸水部材5の外径よりも長く、他方、短辺は吸水部材5の外径よりも短い(
図3,6参照)。吸水部材5の下面のうち吸水部材当接面7aと当接していない箇所は外気に曝されるように構成されている。このように通気性を確保することで、吸水部材5を所定時間経過後に乾燥状態に戻すことができる。
【0035】
下側ケース8は、上述のとおり、外周の上部に雄ねじ8aを有する(
図3参照)。また、下側ケース8は、上面8bに十字状の開口した空間Sを内部に有する(
図3、10参照)。
図10の縦方向に延びる開口部Saは下面8cまで貫通しているのに対し、
図10の横方向に延びる開口部Sbは底面8dを有する(
図11参照)。この底面8dに電極支持部材7の下面が当接する。開口部Sbに電極支持部材7を収容した状態で下側ケース8の雄ねじ8aと上側ケース3の雌ねじ3bとを締め付けることによって上側ケース3の下面と吸水部材当接面7aとによって吸水部材5を挟み込むことができる。雨センサ10はその下部の側方から下方に延びるピンPを有し、このピンPがセンサ保持スタンド40aの開口部に挿入される。
【0036】
<所定量の降雨があったか否かを検知する原理>
タイマ本体50の定流電源から一対の電極6a,6bに一定の電流(1〜5mA程度)を供給し、電極6a,6b間の電圧変化(電位差変化)を測定することにより、吸水部材5の吸水量(つまり降雨量)を電気抵抗の変化で把握できる。一対の電極6a,6b間の電位差が所定の値(第1の閾値)以下となったとき、タイマ本体50の制御部は水やり中止の信号を発報する。雨が止んだ後は吸水部材5の乾燥に伴って吸水部材5の電気抵抗が上昇し始める。電極6a,6b間の電位差が所定の値(第2の閾値)以上となったとき、タイマ本体50の制御部は水やり中止の信号の発報を停止する。なお、定流電源の代わりに定圧電源を使用し、電極6a,6b間を流れる電流の変化を測定してもよい。
【0037】
図12は、電極6a,6b間の電位差の変化を模式的に示すグラフであり、吸水部材5が乾燥した状態からスタートし、雨が降り始めて吸水部材5が雨水を吸収することによって一対の電極6a,6b間の電位差が小さくなり、その後、雨が止んで吸水部材5の乾燥が進行する過程を示す。
図12のラインL1は第1の閾値を示し、ラインL2は第2の閾値を示す。
図12の矢印Aは、雨が降っていた時間帯を示す。
図12の矢印Bは、タイマ本体50の制御部が水やり中止の信号を発報している時間帯を示す。
【0038】
雨センサ10は、上述のとおり、一対の電極6a,6bによって降雨量を検知するため、動きを伴う機械的構造を有するセンサと比較して安定的な作動を実現できる。また雨センサ10によれば、雨水取り込み用開口2aを通じて雨センサ10内に紫外線が照射されても、雨水取り込み用開口2aと吸水部材5との間に配置された吸水部材保護部4が吸水部材5への紫外線照射を遮断する。このため、吸水部材5の紫外線による劣化を十分に抑制できる。これにより、雨センサ10のメンテナンス頻度を十分に低くできる。なお、雨センサ10は単に降雨を検知するためのセンサではなく、水やりを実施すべき場所の土の状態(乾燥しているか湿っているか)を検知するためのセンサである。これを実現するため、雨センサ10は土壌に対応する吸水部材5を内部に有し、これに雨水が供給されるように構成され、且つ、雨が止んだあとは吸水部材5の乾燥が進むように内部と外部との通気性を確保している。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、突起4fによって形成される隙間Gを通じて雨水が吸水部材5に至る構成を例示したが、例えば、吸水部材保護部4の貫通孔4dを構成する内周面に複数の細孔を設け、これらの細孔を通じて雨水が吸水部材5に至る構成としてもよい。
【0040】
上記実施形態においては、吸水部材5の形状が環状である場合を例示したが、吸水部材の形状はこれに限定されず、柱状、筒状(例えば円筒状)、直方体形状などであってもよい。吸水部材の形状に合わせて容器及び吸水部材保護部の形状を設定すればよい。また、上記実施形態においては、吸水部材保護部4の斜面4aと、貫通孔4dとによって雨水の流路が形成される場合を例示したが、雨水の流路はこのような態様に限定されず、例えば、雨水がスパイラル状に降下して吸水部材5に至る構成を採用してもよい。
【0041】
本明細書には、独立形式請求項に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成を備えなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。
【符号の説明】
【0042】
1…可動カバー(開口面積調節機構)、2…固定カバー(容器)、2a…雨水取り込み用開口、3…上側ケース、3a…上側ケースの外側部分(容器)、4…吸水部材保護部、4a…斜面、4c…上側開口、4d…貫通孔、4e…下側開口、4f…突起、4g…溝部、5…吸水部材、5a…上面、6a,6b…電極、7…電極支持部材、7a…吸水部材当接面、8…下側ケース(容器)、10…雨センサ、30a,30b…電線、50…タイマ本体、51…受水口、52…吐水口、60…ホース、100…灌水装置、G…隙間。