特許第6062433号(P6062433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062433細菌汚染を低減するためのヒト乳の精密濾過
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062433
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】細菌汚染を低減するためのヒト乳の精密濾過
(51)【国際特許分類】
   A23C 7/04 20060101AFI20170106BHJP
   A01J 11/06 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A23C7/04
   A01J11/06
【請求項の数】31
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-524122(P2014-524122)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公表番号】特表2014-524242(P2014-524242A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012049590
(87)【国際公開番号】WO2013020081
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月14日
(31)【優先権主張番号】61/514,673
(32)【優先日】2011年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509056489
【氏名又は名称】プロラクタ バイオサイエンス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】フォーネル,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】エーカー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】モントヤ,アーマンド
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05707678(US,A)
【文献】 米国特許第05670196(US,A)
【文献】 米国特許第05576040(US,A)
【文献】 特表2010−510811(JP,A)
【文献】 特表2010−502186(JP,A)
【文献】 米国特許第06652900(US,B1)
【文献】 特開平06−062695(JP,A)
【文献】 特表昭62−500141(JP,A)
【文献】 特開2007−202567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J 1/00−99/00
A23C 1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/FROSTI/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ヒト乳と比較して低い細菌含有量を有する精密濾過されたヒト乳を得るために生ヒト乳を処理するための方法であって、
(a)生ヒト乳を提供することと、
(b)前記生乳をクリーム分画と脱脂乳分画とに分離することであって、前記脱脂乳分画が1.0%〜0.1%の脂肪含有量を含有することと、
(c)前記脱脂乳分画を、濾過助剤を用いて1つ以上の予備フィルターに通して予備濾過して、予備濾過された脱脂乳を生成することであって、前記濾過助剤が、20g/L〜50g/Lの濃度で前記脱脂乳分画に添加され、前記濾過助剤が、0.100D〜0.300Dの浸透性を有することと、
(d)ステップ(c)で得られた前記予備濾過された脱脂乳を、1つ以上の精密フィルターに通して精密濾過して、精密濾過されたヒト脱脂乳を得ることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記生乳が、遠心分離によってクリーム分画と脱脂分画とに分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記濾過助剤が、珪藻土である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記濾過助剤が、ステップ(b)で得られた前記脱脂乳分画に添加されてスラリーを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリーが、前記予備フィルターを通過して前記予備濾過された脱脂乳を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)で得られた前記精密濾過されたヒト脱脂乳が、さらに濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)で得られた前記精密濾過されたヒト脱脂乳が、限外濾過によってさらに濃縮される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮された精密濾過されたヒト脱脂乳が、5〜15%のタンパク質含有量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、ヒト乳クリームを前記精密濾過されたヒト脱脂乳に添加して、ヒト全乳製品を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、ヒト乳クリームを前記限外濾過されたヒト脱脂乳に添加して、ヒト全乳製品を生成することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト乳クリームが、ステップ(b)で得られた前記クリーム分画である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト乳クリーム分画が、前記濾過された脱脂乳に添加する前に殺菌される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、(e)前記精密濾過された脱脂乳を低温殺菌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細菌が、バチルス属の種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記バチルス属の種が、バチルス セレウスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記精密濾過された脱脂乳分画が、1ミリリットル当たり10以下の細菌を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記脱脂乳分画中の前記濾過助剤が、2%w/v〜%w/vである、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記精密フィルターが、前記脱脂乳の前記細菌含有量を低減するために十分な平均細孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記精密フィルターの前記平均細孔径が、0.2〜1ミクロンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記予備フィルターが、1〜10ミクロンの平均細孔径を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
精密濾過されたヒト脱脂乳を生成するための装置であって、
生ヒト乳を格納するための被覆付処理槽(100)と、
前記被覆付処理槽(100)から受容した前記生乳を、クリーム分画と脱脂乳分画とに分離するための乳分離器(300)と、
前記乳分離器(300)からの前記脱脂乳分画を格納するための受容被覆付処理槽(400)と、
珪藻土濾過助剤を格納するための珪藻土濾過助剤処理槽(500)と、
前記珪藻土濾過助剤処理槽(500)からの濾過助剤と混合された前記受容被覆付処理槽(400)から前記脱脂乳を予備濾過するための予備フィルターハウジング(700)であって、前記濾過助剤が、20g/L〜50g/Lの濃度で前記脱脂乳分画に添加され、前記濾過助剤が、0.100D〜0.300Dの浸透性を有する、予備フィルターハウジング(700)と、
前記予備フィルターハウジング(700)から受容された予備濾過された脱脂乳を精密濾過するための精密フィルターハウジング(800)と、
前記精密フィルターハウジング(800)から受容された精密濾過された脱脂乳を格納するためのスキム被覆付処理槽(900)と、を備える、装置。
【請求項22】
前記装置から生成された前記精密濾過された脱脂乳が、1ミリリットル当たり10以下の細菌を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記装置から生成された前記精密濾過されたヒト脱脂乳が、1ミリリットル当たり10未満のバチルス セレウス細胞を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記予備濾過ハウジング(700)が、1〜10ミクロンの平均細孔径を持つ1つ以上のフィルターを備える、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記精密フィルターハウジング(800)が、0.2〜1ミクロンの平均細孔径を持つ1つ以上の精密フィルターを備える、請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記受容被覆付処理槽(400)が、前記槽の温度を維持するために冷グリコールシステムに接続されている、請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記スキム被覆付処理槽(900)が、前記槽の温度を維持するために冷グリコールシステムに接続されている、請求項21に記載の装置。
【請求項28】
前記装置が、前記精密濾過された脱脂乳を限外濾過するための限外濾過ハウジングをさらに備える、請求項21に記載の装置。
【請求項29】
前記濾過助剤が0.300Dの浸透性を有する、請求項に記載の方法。
【請求項30】
前記濾過助剤が、50g/Lの濃度で前記脱脂乳分画に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記濾過助剤が、50g/Lの濃度で前記脱脂乳分画に添加され、前記濾過助剤が、0.300Dの浸透性を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2011年8月3日に提出された米国仮特許出願第61/514,673号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ヒト乳製品に関する。具体的には、本開示は、生ヒト乳と比較したときに、バチルスセレウスを含む、より低い細菌含有量を持つヒト乳製品を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト乳、およびヒト乳を基にした製品は、未熟乳児のための好ましい食品である。未熟乳児の免疫系は、比較的未発達であるため、ヒト乳を基にした製品は、バチルスセレウスを含む、著しいレベルの細菌を含まないことが重要である。同時に、脂肪およびタンパク質は、未熟乳児の健康および発育に重要であるため、ヒト乳中のこれらの成分の含有量の任意の変更を最小限に抑えることが重要である。
【0004】
低温殺菌の公知の方法は、ヒト乳中の細菌を殺菌するために何十年も用いられてきた。バチルスセレウスは、内生胞子形成細菌であり、典型的な低温殺菌処理を生き延びることができるため、低温殺菌ヒト乳中で認められる主要細菌であることが多い。典型的な低温殺菌処理(例えば、低温または中温で約30分間)は、一般的に、バチルスセレウスなどの胞子形成細菌を不活性化させない。しかし、バチルスセレウスなどの胞子形成細菌を不活性化させるために低温殺菌処理において必要な超高温度と圧力は、ヒト乳中の組成物、特に脂肪およびタンパク質の構造に悪影響を及ぼす。
【0005】
濾過の使用によって細菌数を低下させた非ヒト乳を生成するための様々な方法が、当該技術分野において知られているが、いずれも広く受け入れられていない。従来の方法は、一般に、不十分な流量という問題を抱えるため、その方法が大規模で不経済になるか、または非ヒト乳の品質に悪影響を及ぼすため、製品が消費者に受け入れられないか、のどちらかに悩まされる。
【0006】
スウェーデン特許公開第380,422号は、精密濾過によって非ヒト全乳が濾液と濃縮分画とに分割される方法を開示する。フィルターの孔(孔径は、広く0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲であってよい)を通過する濾液は、大幅に低減された脂肪含有量を持つ非ヒト乳から構成され、フィルターの表面によって保持された分画である濃縮物は、クリームから構成されている。細菌のみならず、脂肪球もフィルターによって実質的に保持されている。
【0007】
米国特許第5,064,674号は、約5kDa以下の分子量を有する分子の通過を可能にする膜を用いた限外濾過法によって低アレルゲン非ヒト乳を生成する方法に関する。膜によって捕捉される除外成分は、乳タンパク質、生菌または生育不能菌、細胞タンパク質抗原、および乳脂肪を含む。したがって、限外濾過処理から採取した濾液は、細菌および細菌タンパク質抗原のみならず、脂肪および乳タンパク質も含まず、製品それ自体では非ヒト乳としての使用には不適当である。
【0008】
そのため、細菌を乳組成物から濾過するために当該技術分野において使用されるフィルターの孔は、乳を殺菌することにおいて有効である一方で、脂肪およびタンパク質の少なくとも一部も除去する。このようなフィルターは、捕捉された材料によってすぐに目詰まりするため、フィルターを通る流量が急激に低下し、そのような非効率的な処理のコストは、一般的に極めて高額である。さらに、フィルターは脂肪およびタンパク質を保持するため、乳の品質も悪影響を受ける。
【0009】
そのため、ヒト乳およびヒト乳系製品の栄養素含有量を維持しながら、無菌またはほぼ無菌の製品を提供することができる改良された乳濾過処理法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
ヒト乳の精密濾過は、珪藻土などの多孔性微粒子濾過助剤を用いることによって、ヒト乳品質の劣化、早期フィルター目詰まり、および不十分な細菌除去という従来の問題がなく、良好に達成され得ることが今では発見されている。
【0011】
本発明に従って、ヒト乳は、スキム部分とクリーム部分とに分離され、約1.0%〜約0.1%の間の脂肪含有量を持つヒト脱脂乳を生成する。一旦ヒト乳が分離されると、多孔性微粒子濾過助剤がヒト脱脂乳に添加される。ヒト乳の分離を最初に行うことにより、その乳の脂肪球の量および粒径が著しく低下する。濾過助剤を添加することは、ヒト乳の精密濾過を可能にする。
【0012】
ヒト乳は、水中の脂肪およびタンパク質粒子の乳剤である。ヒト乳をクリームとスキムとに分離することは、乳剤中に高い割合で含まれる大きな脂肪粒子を除去する方法を提供する。次に濾過助剤を添加することは、圧縮性固体が、フィルターを目詰まりさせるであろう不透過性の塊を形成することを効果的に防ぎ、適切な孔径の微多孔膜を通るヒト乳の通過を可能にし、乳のタンパク質含有量の不要な除去なしに、バチルスセレウスを含む細菌をその中に含有したまま保持する。
【0013】
ヒト乳をクリームとスキムとに分離した後に、濾過助剤をヒト脱脂乳に添加して、圧縮性固体が、フィルターを目詰まりさせるであろう不透過性の塊を、濾過処理中に形成することを防ぐ。このように本発明は、高温殺菌の必要がなく、バチルスセレウスを含む、より低い細菌含有量を持つヒト乳製品を生成するための改良された方法を提供する。
【0014】
このように、一態様において、本発明は、生ヒト乳を処理して、バチルスセレウスを含む、生ヒト乳より低い細菌含有量を有する処理したヒト乳を生成するための方法を提供する。この方法は、例えば、バチルスセレウスを含む、潜在的な細菌含有量を持つ生ヒト乳を用いることと、その生ヒト乳をクリーム分画とスキム分画とに分離することと、を含み、スキム分画は、約1.0%〜約0.1%の脂肪を含有する。濾過助剤をスキム分画に添加し、次に、一連の精密フィルターであって、そこを通って流れる乳の細菌含有量を低減するために十分な平均孔径を有する一連の精密フィルターに乳を通すことにより精密濾過に供して、初期生ヒト乳より低い細菌含有量および初期生ヒト乳より高い細菌含有量を有する濃縮物を有する濾液を産出する。得られたヒト脱脂乳は、例えば、平均で1ミリリットル当たり約10以下の非常に低い細菌含有量を有し、バチルスセレウス含有量は、平均で1ミリリットル当たり約10未満(すなわち、約1未満)である。この製品はさらに処理され、ヒト脱脂乳として使用および/または販売され得る(例えば、図1参照)。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、生ヒト乳を処理して、生ヒト乳より低い細菌含有量の例えば、バチルスセレウスを有する処理したヒト乳を生成するための方法を提供する。この方法は、例えば、バチルスセレウスを含む、潜在的な細菌含有量を持つ生ヒト乳を用いることと、その生ヒト乳をクリーム分画とスキム分画とに分離することと、を含み、スキム分画は、約1.0%〜約0.1%の脂肪を含有する。濾過助剤をスキム分画に添加し、一連の精密フィルターであって、そこを通って流れる乳の細菌含有量を低減するために十分な平均孔径を有する一連の精密フィルターに乳を通すことにより精密濾過に供して、初期生ヒト乳より低い細菌含有量および初期生ヒト乳より高い細菌含有量を有する濃縮物を有する濾液を産出する。得られたヒト脱脂乳は、例えば、平均で1ミリリットル当たり約10以下の非常に低い細菌含有量を有し、バチルスセレウス含有量は、平均で1ミリリットル当たり約10未満(すなわち、約1未満)である。次いで、低レベルのバチルスセレウスを有することが見出されるヒト乳クリーム分画を、濾過したヒト脱脂乳と混合して、1ミリリットル当たり10未満のバチルスセレウスを含む、非常に低い細菌含有量を持つヒト全乳製品を形成することができる。この製品はさらに処理され、ヒト全乳として使用および/または販売され得る。(例えば、図2および3参照)。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、生ヒト乳を処理して、例えば、バチルスセレウスを含む、生ヒト乳より低い細菌含有量を有する処理したヒト乳を生成するための方法を提供する。この方法は、例えば、バチルスセレウスを含む、潜在的な細菌含有量を持つ生ヒト乳を用いることと、その生ヒト乳をクリーム分画とスキム分画とに分離することと、を含み、スキム分画は、約1.0%〜約0.1%の脂肪を含有する。濾過助剤をスキム分画に添加し、一連の精密フィルターであって、そこを通って流れる乳の細菌含有量を低減するために十分な平均孔径を有する一連の精密フィルターに乳を通すことにより精密濾過に供して、初期生ヒト乳より低い細菌含有量および初期生ヒト乳より高い細菌含有量を有する濃縮物を有する濾液を産出する。得られたヒト脱脂乳は、例えば、平均で1ミリリットル当たり約10以下の非常に低い細菌含有量を有し、バチルスセレウス含有量は、平均で1ミリリットル当たり約10未満(すなわち、約1未満)である。次に、濾過したヒト脱脂乳を、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0124430号において開示される限外濾過を介して、約5%〜約15%のタンパク質含有量に濃縮する。次いで、低レベルのバチルスセレウスを有することが見出されるヒト乳クリーム分画を、濃縮し濾過したヒト脱脂乳と混合して、1ミリリットル当たり10未満(すなわち、約1未満)のバチルスセレウスを含む、非常に低い細菌含有量を持つヒト乳系強化剤を形成することができる。この製品はさらに処理され、ヒト乳系強化剤として使用および/または販売され得る(例えば、図4および5参照)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による、未濾過スキムから濾過した脱脂乳分画を生成するための代表的な処理を描く。
図2】本発明による、濾過した脱脂乳分画から全乳を生成するための代表的な処理を描く。
図3】本発明による、濾過した脱脂乳分画から標準化した全乳を生成するための代表的な処理を描く。
図4】本発明による、通常のスキムから強化剤を生成するための代表的な処理を描く。
図5】本発明による、濾過した脱脂乳分画から強化剤を生成するための代表的な処理を描く。
図6】本発明による、脱脂乳分画を濾過するための代表的な処理を描く。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載の全ての出版物、特許、および特許出願は、各個別の出版物または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」「an」および「the」は、文脈が別に指示しない限り複数の言及を含む。したがって、例えば「1つのサンプル」への言及はこのようなサンプルの複数を含み、「そのタンパク質」への言及は当業者に知られている1つ以上のタンパク質への言及を含む、などである。
【0020】
別途に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または等価な方法および材料を本開示の方法および組成物の実施において使用することができるが、本明細書には例示となる方法、装置および材料が記載されている。
【0021】
圧縮性固体は、ここで説明したように、脂肪、タンパク質、および/またはヒト乳中で通常見出される他の栄養素を含んでよい。圧縮性固体は、細菌、細菌断片、芽胞、他の微生物(例えば、酵母など)、ならびに/または脱落した皮膚および/もしくは皮膚細胞(例えば、泌乳する女性から)を含んでもよい。
【0022】
別途指定されない限り、本明細書における「乳」への全ての言及は、ヒト乳を指す。
【0023】
ヒト乳は、その栄養的な組成および免疫学的な利点ゆえに、長らく早産乳児および満期出産乳児のための理想的な食物として認められてきた。ヒト乳は、このような栄養的および免疫学的利点の最も望ましい供給源である。しかし、ドナー乳の栄養上の価値は変化し、かつドナー乳の細菌、ウイルスおよび他の汚染についての懸念がある。乳児、特に未熟乳児のためには、理想的な栄養的状況は生みの母の乳を含む。あるいは、またはさらに、母親は搾乳器を用いて乳を搾り出し、かつそれを後の使用のために貯蔵することがある。母乳での授乳についての禁忌は少ないが、一部の禁忌には、ガラクトース血症を有する乳児、および母親が活動性結核を有する、HTLV(ヒトT細胞白血病ウイルス)IまたはII陽性である、放射性同位元素、代謝拮抗剤、もしくは化学療法剤を投与されている、または薬物乱用の対象者である場合が含まれる。HIV感染に関しては、状況はより複雑であり、リスクと利益のバランスは専門的に評価されなければならない。
【0024】
文献で十分に立証されている母乳での授乳の肯定的な効果にもかかわらず、米国における現在の病院内開始率は64パーセントにすぎず、産後6ヶ月での継続率は約29パーセントである。母乳授乳に対する代替法は、ヒトドナー乳、ヒト乳に対する補助食としての調乳(formula)、および調乳単独の使用である。搾られた乳の強化は、多くの極低出生体重児のために示されている。
【0025】
Academy of Pediatrics Policy Statementは、バンク保存のヒト乳が、乳児の母親が自身の乳を与えることができないかまたは嫌がる(例えば社会的理由で)乳児のための好適な代替食であり得ることを示唆している。
【0026】
早産乳児は、通常、これらの乳児のために特定の設計がなされた市販の乳児用調乳または自身の母親の乳を与えられる。これらの乳児の栄養の必要条件についてはまだ研究が途上にある。しかし、多くの研究では、非栄養補助早産乳児用乳およびバンク保存満期産児用乳によってはこれらの乳児の必要性を満たすためには不適切な量のいくつかの栄養分しか提供されないことの証拠資料が提供されてきた(Davies,D.P.,″Adequacy of expressed breast milk for early growth of preterm infants,″ARCHIVES OF DISEASE IN CHILDHOOD,52,p.296−301,1997)。推定されている低出生体重乳児のエネルギー要求量は、約120Cal/kg/日であり、個々の乳児の正確なエネルギー必要量は、活動、基礎エネルギー消費量、栄養分吸収の効率、病気および組織合成のためにエネルギーを利用する能力における相違のために変化する。エネルギー摂取量の約50%は基礎代謝の必要性、活動および体温の維持のために消費される。約12.5%は新しい組織を合成するために使用され、25%は貯蔵される。残る12.5%は排泄される。早産ヒト乳は、しばしば特定の栄養面で不足している。例えば、早産ヒト乳はしばしばカルシウム、リンおよびタンパク質が不足している。したがって、早産乳児に早産ヒト乳を与える場合は、早産乳児の栄養必要性をよりよく満たすためにヒト乳を強化することが推奨されてきた。
【0027】
Similac Natural Care(登録商標)およびEnfamil(登録商標)Human Milk Fortifierは、市販されているヒト乳強化剤である。これらの強化剤は、それらの形態、成分源およびエネルギー、ならびに栄養組成において異なる。さらに、これらの製品は本来人工である。新生児集中治療室(NICU)においては、液体および粉末の両方のヒト乳強化剤に対する必要性がある。理想的には、最良の強化剤は、両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2008/0124430号およびPCT出願第WO2008/027572号に記載されるものなどのヒト由来のものである。
【0028】
女性の乳腺からの流体の分泌物は多くの成分を含み、本明細書において以後簡潔に乳と呼ぶ。搾られた乳は通常無菌ではなく、たとえ無菌の条件下で得たとしても細菌を含有している。乳は環境(空気、搾乳器具、手もしくは他の非無菌の物体、乳タンクまたは容器との接触など)からの微生物によって極めて迅速に汚染され、セレウス菌などの特定の病原菌は低温殺菌された乳中でさえ迅速に増殖する。
【0029】
乳は、多数の細菌にとって優れた増殖培地であり、乳が適切に処理されない限り、それらの数は急激に増加する。細菌増殖は、乳を腐敗させるか、または病原性細菌が存在する場合は深刻な健康被害を引き起こしさえする。乳を通して伝達され得る疾患としては、これらに限定されないが、結核(結核菌)、波状熱(ウシ流産菌)、腸チフスおよびQ熱(コクシエラ菌)が挙げられる。汚染は、乳ドナーから、乳を扱った者から、環境から、または容器から起こり得る。汚染された乳中で見出され得る他の微生物としては、これらに限定されないが、ブドウ球菌属(例えば、黄色ブドウ球菌、A群β−溶血性化膿性ブドウ球菌)、連鎖球菌種(例えば、肺炎連鎖球菌)、赤痢菌種(例えば、ソンネ赤痢菌、フレックスネリ赤痢菌、ボイド赤痢菌、および志賀赤痢菌)、古典的な腸管病原性大腸菌A、B、およびC、腸管侵入性大腸菌AおよびB、バチルス種(例えば、バチルスセレウス、コリネ型バチルス)、シュードモナス種(例えば、緑膿菌)、小球菌種、連鎖球菌種(例えば、α−γ溶血性連鎖球菌種)、クレブシエラ種(例えば、クレブシエラニューモニエおよびクレブシエラ オキシトカ)、エンテロバクター種(例えば、エンテロバクタークロアカ、エンテロバクターエロゲネス)、プロテウス種(例えば、プロテウスミラビリス)、シトロバクター種(例えば、シトロバクターフロインディ)、セラチア種、ナイセリア種、カンジダ種、エンテロコッカス 種、(例えば、グループDエンテロコッカス)、ヘモフィルス種、クロモバクテリウム種(例えば、クロモバクテリウムビオラセム)、セデセア種、ステノトロホモナス種(例えば、ステノトロホモナス マルトフィリア)、サルモネラ種、中温細菌、耐熱性細菌、および低温細菌が挙げられる。乳の細菌汚染に関する詳細は、Cairoら(Braz J Infect Dis vol.12 no.3 Salvador June 2008)、Ruediger(The Journal of Infectious Diseases Vol.19,No.4,Oct.,1916)、Surjonoら(Journal of Tropical Pediatrics,26(2):58‐61,1980)、Pirraed WBら(AM J Perinatol.1991 Jan;8(1):25‐7)、およびBurrow(Public Health June 1931 vol.52 No.6 234‐252)で論じられている。
【0030】
バチルスは、グラム陽性棒状細菌属であり、ファーミキューテス門の一員である。バチルス種は、偏性好気性菌または通性嫌気菌であることができ、カタラーゼという酵素の検査は陽性であり得る。自然界に偏在するバチルスは、自由生育種と病原体種の両方を含む。ストレスの多い環境条件下で、バチルス細胞は、長期間の間休眠状態であり得る卵形の芽胞を生成する。2つのバチルス種は、医療上重要であると見なされ、炭疽菌(B.anthracis)は炭疽病を引き起こし、バチルスセレウス菌(B.cereus)はブドウ球菌(Staphylococcus)のそれに類似する食中毒を引き起こす。第3の種バチルスチューリンゲンシス(B.thuringiensis)は、重要な昆虫病原菌であり、害虫を制御するために使用されることがある。枯草菌(B.subtilis)は、顕著な食品スポイラーであり、パンおよび関連食品に粘性をもたらす。バチルスコアグランス(B.coagulans)も食品の損傷を引き起こす。バチルス菌の非限定例としては、バチルスアルカロフィラス(B.alcalophilus)、バチルスアルベイ(B.alvei)、バチルスアミノボランス(B.aminovorans)、バチルスアミノリクエファシエンス(B.amyloliquefaciens)、バチルスアニリノリチカス(B.aneurinolyticus)、炭疽菌(B.anthracis)、バチルスアクイマリス(B.aquaemaris)、バチルスブレビス(B.brevis)、バチルスカルドリチカス(B.caldolyticus)、バチルスセントロスポラス(B.centrosporus)、バチルスセレウス(B.cereus)、バチルスサーキュランス(B.circulans)、バチルスコアグランス(B.coagulans)、バチルスフィルムス(B.firmus)、バチルスフラボサーマス(B.flavothermus)、紡錘菌(B.fusiformis)、バチルスグロビジ(B.globigii)、バチルスインフェルナス(B.infernus)、バチルスラルヴェ(B.larvae)、バチルスラテロスポラス(B.laterosporus)、バチルスレンタス(B.lentus)、バチルスリケニホルミス(B.licheniformis)、バチルスメガテリウム(B.megaterium)、バチルスメセンテリカス(B.mesentericus)、バチルスムシラギノサス(B.mucilaginosus)、バチルスミコイド(B.mycoides)、納豆菌(B.natto)、バチルスパントテンチカス(B.pantothenticus)、バチルスポリミキサ(B.polymyxa)、疑似炭疽菌(B.pseudoanthracis)、バチルスプミルス(B.pumilus)、バチルスシュリジェリー(B.schlegelii)、バチルススファエリクス(B.sphaericus)、バチルススポロサーモデュランス(B.sporothermodurans)、バチルスステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)、バチルスサブティリス(B.subtilis)、バチルスサーモグルコシダシウス(B.thermoglucosidasius)、バチルスチューリンゲンシス(B.thuringiensis)、バチルスブルガチス(B.vulgatis)、およびバチルスウェイヘンステファネンシス(B.weihenstephanensis)が挙げられる。
【0031】
バチルスセレウスは、地方特有の土壌に生息する、グラム陽性、棒状の芽胞形成する通性好気性、およびβ溶血性細菌である。バチルスセレウスは、中温性であり、20℃〜40℃の間の温度で最適に増殖し、広範囲の環境条件に適応可能である。自然に広く分布し、一般的に腐生性有機体として土壌中で見出される。ヒトに有害であり、食中毒を引き起こす株もあれば、動物にとってプロバイオティクスとして有益であり得るものもある(Ryan KJ;Ray CG(editors)(2004)。Sherris Medical Microbiology(4th ed.)。McGraw Hill)。それは「フライドライス症候群」の原因である。
【0032】
バチルスセレウス菌は、好気性であり、バチルス属の他の構成部員と同様に、保護芽胞を生成することができるため、ルーチン低温殺菌技術に影響されにくい。バチルスセレウスは、少数の食中毒(2〜5%)に関与し、激しい悪心、嘔吐および下痢を引き起こす。バチルス食中毒は、食品が不適切に調理されたときに細菌芽胞が生き延びることにより発生する。100℃(華氏212度)以下の調理温度は、一部のバチルスセレウス芽胞を生き延びさせる。この問題は、次いで食品が不適切に冷蔵されたときに悪化し、芽胞を発芽させる。即時消費または急速冷却および冷蔵のいずれかを目的としない調理済食品は、60℃(華氏140度)を超える温度に保つ必要がある。発芽および増殖は、一般的に10〜50℃(華氏50〜122度)の間で発生する。細菌増殖は、熱および2〜11のpHに高度に耐性であるエンテロトキシンの生成を生じ、摂取すると下痢および催吐(嘔吐)症候群という2種類の病気をもたらす。
【0033】
バチルスセレウス感染は、新生児にとって特に危険であり、感染した乳児において特に高い死亡率をもたらす(Hilliard,et al.(2003)J.Clin.Microbiol.,41(7):3441−3444およびLequin,et al.(2005)Am.J.Neuroradiol.,26:2137−2143)。上記の通り、バチルスセレウスは、ヒト乳中で見出される大部分の他の細菌の場合と同様に、低温殺菌によって不活性化されない病原性芽胞形成菌である。新生児に供給される栄養製品中のバチルスセレウスの許容レベルに関する政府指針はないが、新生児におけるバチルスセレウス感染と関連付けられた高い死亡率に起因する多くの注意の他に、当最終ヒト乳製品に対して1CFU/ml未満の制限を設定した。
【0034】
「未熟」、「早産」、および「低出生体重(LBW)」乳児という用語は、互換的に使用され、妊娠期間37週間未満で生まれたおよび/または出生体重2500g未満の乳児のことを言うものである。未熟乳児の必要性は特に緊急である。極めて低い出生体重(1500g未満)の乳児については、1歳以前の死亡率は25%である。低出生体重(2500g未満)の乳児については、1年間の死亡率は2パーセントであり、やはり正常出生体重(2500g超)の乳児についての0.25%という数字よりもかなり高い。
【0035】
一態様において、本開示は、ドナーまたはドナーの群からのヒト乳を得る方法および加工する方法を提供する。本開示の方法は、強化された調製物中の栄養価を維持しつつ細菌含有量を低減させる方法を含む。一般に、本方法は、好適なドナーを確認し認定する方法を含む。個人は、通常、かかりつけの医師によってドナーとして推奨される。理由は他にもあるがとりわけ、このことはドナーが慢性的に病気ではないこと保障するのに役に立つ。乳の収集および配給を認定しモニターする方法およびシステムは、米国特許出願第2010/0268658号に記載されている。
【0036】
インタビューによるスクリーニング方法および生物学的サンプル処理を行う。生物学的サンプルは、ウイルス(例えばHIV 1および2、HTLV IおよびII、HBV、およびHCV)および梅毒、ならびに他の原核生物病原菌(例えばバチルスセレウス)についてスクリーニングし、試験が陽性の献乳は廃棄される。
【0037】
スクリーニングで陽性と判明したサンプルはいずれも、そのサンプルの処理を停止し、当該ドナーからの以後の献乳を停止する。さらに取った別の手段は、ドナーサンプルまたは乳のプールを薬物の乱用について試験することを含む。
【0038】
ドナーは定期的に再認定されてもよい。例えば、ドナーは、4ヶ月毎に当初の認定において使用されたものと同じ手順によってスクリーニングを受けることを求められてもよい。再認定されないまたは認定されないドナーは、適切に再認定されるときまで保留される。一部の事例では、ドナーは、再認定スクリーニングの結果によって正当化される場合、永久に保留される。後者の状況の場合は、そのドナーによって提供されたすべての残っている乳は、在庫から取り除かれ完全に破壊される。
【0039】
認定されたドナーは指定された施設(例えば、乳バンクの事務所)で献乳するかまたは通常家庭で搾乳する。一態様においては、認定されたドナーは、乳バンクによってまたは乳加工業者から直接に(乳バンクと加工業者は同じまたは異なる事業体であり得る)、搾られた乳を回収、保存、および出荷するために必要な支給品を提供され家庭に持ち帰る。支給品は、通常、容器上のコンピューターで読み取り可能なコード(例えば、バーコードラベル)を含み、さらに搾乳器を含み得る。次いでドナーは家庭で乳を絞り、好ましくは−20℃の温度で、冷凍する。一態様では、最後にドナー乳センターを訪れた10〜14日後に血液試験の結果が満足なものであるという条件でドナーの乳は受け入れられ、このような結果を満足するなら、ドナーは乳をセンターに届けるかまたは家庭から収集してもらうという予約をする。乳および容器はそれらの状態を調べ、バーコードをデータベースと照合する。満足なものであれば、そのユニットをドナー乳センターまたは加工センターの冷凍庫(−20℃)に、以後の試験および加工ができるときまで入れておく。
【0040】
別の態様においては、乳は家庭でドナーによって搾乳され、乳貯蔵施設では集められるが、この処理は、乳が本当に登録されているドナーからのものであることを保障する指標のためにそれぞれのドナーの乳のサンプリングをすることを含む。これは、乳が加工業者に送られた乳サンプル上に表示されたドナーからのものであり、直接集められないことを保証するために必要とされる。このような対象確認技法は当業において知られている(例えば、他では参照により全体的に組み入れるが、本明細書では参照により具体的に組み入れるPCT出願第WO2007/035870号を参照されたい)。乳は貯蔵して(例えば−20℃で)試験結果を受け取るまで隔離しておけばよい。上記の方法を通じて、どの不適合乳も廃棄される。献血センターの場合と同様に、ドナーについてのすべての機密情報は、血液試験データを含めて、厳重に管理される。集められ、承認された(例えば、リスク要因試験に合格した)乳は、次に本発明の方法によって濾過される。
【0041】
「生乳」とは、母親から搾られた未処理の乳を意味する。
【0042】
「全乳」とは、脂肪が除去されていない乳を意味する。
【0043】
「スキム」または「脱脂乳」は、脂肪含有量のほぼ全てまたは一部が除去された全乳を意味する。従って、当然のことながら、「脱脂乳」は、実質的にほぼ全ての脂肪含有量が除去された「低脂肪乳」などの変型を含む。
【0044】
「クリーム」または「脂肪部分」は、脱脂乳から分離された全乳の部分を意味する。通常クリームは、長鎖、中鎖、および短鎖脂肪酸を、同一の調製物から得られた脱脂乳よりも高い濃度で含む。
【0045】
本発明の一態様においては、ヒト全乳は、スキムとクリーム(すなわち、脂肪)とに分離される。乳は、遠心分離などの従来の方法により脱脂乳に脱脂される。一態様においては、プールした乳は、遠心分離機中にポンプ輸送されて脂肪(クリーム)が乳の残部から分離され、脱脂乳はプロセスタンク中に移されて、そこで濾過工程(複数可)まで2〜8℃に維持する。遠心分離後、クリームは、小さなステンレス鋼容器中へ流れる。一態様においては、クリームを低温殺菌した後、カロリー、タンパク質および脂肪の含有量の定量化する。別の態様においては、分離が完了した後、クリームの容積、タンパク質および脂肪の含有量を決定し、クリームの一部は脱脂乳に戻して加えられて、作られる特定の製品のためのカロリー、タンパク質および脂肪の含有量を達成する。濾過工程の前または後において、乳にミネラルを添加することができる。
【0046】
必要なわけではないが、本開示のヒト乳組成物は、非天然に存在するかまたは異種/異質の成分で変更または補充することができることが認識されるであろう。例えば、タンパク質含有量は、ヒトの消費に好適な窒素源を用いて調節または変更することができる。そのようなタンパク質は、当業者にはよく知られており、このような組成物を調製する際に簡単に選択することができる。添加することができる好適なタンパク質成分の例は、カゼイン、乳清、コンデンススキムミルク、無脂肪乳、大豆、エンドウ豆、米、コーン、加水分解されたタンパク質、遊離アミノ酸、タンパク質を含むコロイド状懸濁液中にカルシウムを含有するタンパク質源、およびこれらの混合物を含む。
【0047】
本開示の乳組成物の別の成分は、脂肪源を含む。脂肪は一般に、その高カロリー密度だけではなく、溶液中での低浸透圧活性という理由でも、低出生体重乳児(LBW)のためのエネルギー源である。ここでも、必ずしも必要ではないが、本開示の乳組成物は、脂肪成分で補充することができる。このような異種/異質の脂肪成分としては、高オレインのベニバナ油、大豆油、分画されたココナツ油(中鎖トリグリセリド、MCT油)、高オレインひまわり油、コーン油、キャノーラ油、ココナツ、パームおよびパーム核油、魚油、綿実油、ならびにドコサヘキサエン酸(DHA)およびアラキドン酸などの特定の脂肪酸が挙げられる。
【0048】
ドコサヘキサエン酸(DHA)は、オメガ3脂肪酸である。DHAは、ヒト乳中に最も豊富にある炭素20個のオメガ3PUFAである。しかし、ヒト乳のDHA含有量は、母親の食事に大きく依存して変化する。母親がDHAの多い魚を頻繁に食べると、その乳はより高いDHAレベルを含有し、魚の摂取がより少ない母親は、より低いDHAレベルを乳中に有することになる。結果として、早産乳児が十分な量のDHAを摂ることを確実にするために、ヒト乳はDHAの補充を必要とし得る。DHAの補充は、通常、アラキドン酸の補充を伴う。Kyleらの米国特許第5,492,938号は、DHAを渦鞭毛藻から得る方法、ならびに薬学的組成物および補助食品中でのその使用について記載している。
【0049】
糖類は、本開示の組成物の別の成分である。糖類は、成長を助け、かつ、栄養不良が急速に進む乳児となる組織異化のリスクを低減させる簡単に利用可能なエネルギー源を提供する。ヒト乳および最も標準的な乳を基にした乳児用調乳において、重要な糖類はラクトースである。LBW乳児は、胎児の腸におけるラクターゼ活性が妊娠期間の後期(36〜40週)まで完全には発達しないので、ラクトースを十分に消化することができないことがある。他方、スクラーゼ活性は、妊娠32週までに最大であり、コーンシロップ固形分(グルコースポリマー)を消化するグルコアミラーゼ(glucosoamylase)活性は、第三期中にラクターゼ活性の2倍の早さで増加する。本開示のヒト乳組成物は糖類で補充することができる。本開示のヒト乳組成物を補充するために使用することができる糖類の例としては、これらに限定されないが、加水分解されたコーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースポリマー、スクロース、コーンシロップ、コーンシロップ固形分、米シロップ、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ、およびフルクトオリゴサッカリド(FOS)などの消化しにくいオリゴサッカリドが挙げられる。
【0050】
ビタミンおよびミネラルは、乳児の適切な栄養摂取および発育に重要である。未熟乳児またはLBW乳児は、成長のためおよび酸−塩基バランスのためにナトリウム、カリウム、および塩化物などの電解質を必要とする。これらの電解質の十分な摂取は、尿中および糞便中ならびに皮膚からの損失の補充のためにも必要である。カルシウム、リン、およびマグネシウムは適切な骨の石灰化のために必要である。骨が成長するためには、適切な量のこれらのミネラルが哺乳食中に存在しなければならない。
【0051】
微量ミネラルは、細胞分裂、免疫機能、および成長に関連している。結果、乳児の成長および発達のためには十分な量の微量ミネラルの提供が必要である。重要な微量ミネラルには、銅、マグネシウム、および鉄(これはヘモグロビン、ミオグロビン、および鉄含有酵素の合成のために重要である)が含まれる。亜鉛は、成長のために、多数の酵素の活性のために、またDNA、RNAおよびタンパク質の合成のために必要である。銅は、いくつかの重要な酵素の活性のために必要である。マンガンは、骨および軟骨の発育のために必要であり、また多糖類および糖タンパク質の合成において重要である。したがって、本開示のヒト乳および強化剤組成物は、ビタミンおよびミネラルを補充することができる。
【0052】
ビタミンAは、成長、細胞分化、視覚、および免疫系のために必須の脂溶性ビタミンである。ビタミンDは、カルシウムの吸収のために、およびより低い程度でリンの吸収のために、また骨の発育のために重要である。ビタミンE(トコフェロール)は、細胞中の多価不飽和脂肪酸の過酸化を防ぎ、したがって組織の損傷を防ぐ。葉酸は、アミノ酸およびヌクレオチドの代謝において重要である。血清葉酸濃度は、葉酸摂取が低いLBW乳児では2週齢以後正常未満に低下することが示されている。加えて、いくつかのB群ビタミンは、早産乳中には低い濃度で存在する。
【0053】
上記の通り、ヒト乳のビタミンおよびミネラル濃度の変動性および早産乳児の必要性の増加により、発育中の乳児が適切な量のビタミンおよびミネラルを摂ることを保証するための最小限の強化が必要とされる。本開示のヒト乳組成物および強化剤における補助ビタミンおよびミネラルの例としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、m−イノシトール、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、塩化物、鉄、およびセレンが挙げられる。さらなる栄養分クロム、モリブデン、ヨウ素、タウリン、カルニチン、およびコリンも補充を必要とすることがある。
【0054】
細菌汚染を含まないか、または実質的に含まない、限定されないが、バチルスセレウスを含まないか、または実質的に含まない、67Kcal/dL(1オンス(約28グラム)当たり20カロリー)全乳、80Kcal/dL(1オンス(約28グラム)当たり24カロリー)全乳製品、およびヒト乳強化剤を含む、無菌組成物が提供される。特定の文脈に応じて、本発明の組成物は、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位の数(CFU/ml)が、1未満、または1以下、または2以下、または3以下、または4以下、または5以下、または10以下、または20以下、または30以下、または40以下、または50以下、または100以下であるときに、細菌を実質的に含まないか、または特定の細菌属、種(例えば、バチルスセレウス)、または株を実質的に含まないと考えられる。乳強化剤組成物は、約20〜70mg/mlのタンパク質、約35〜85mg/mlの脂肪、約70〜115mg/mlの糖類を含み、かつヒトIgAを含有する。様々なカロリーの組成物を、本開示の方法を用いて得ることができる。例となる組成物は、24カロリーの乳組成物および強化剤乳組成物である。
【0055】
例示の全乳組成物は、以下の成分を含む:ヒト乳、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、および硫酸マンガン。
【0056】
強化剤組成物は、以下の成分を含む:ヒト乳、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸マンガン。いくつかの実施形態においては、強化剤は、約35〜85mg/mlのヒトタンパク質、約60〜110mg/mlの脂肪、および約60〜140mg/mlの糖質も含有する。一実施形態においては、強化剤は、約90mg/mlの脂肪、約60〜90mg/mlの糖質、および約60mg/mlのヒトタンパク質を含有する。
【0057】
本開示のヒト乳組成物および強化剤のオスモル濃度は、組成物の吸着、吸収、および消化にとって重要である。不適切なオスモル濃度は、乳児の腹部膨張および嘔吐をもたらすことがある。本開示のヒト乳組成物および強化剤(一旦乳と混合された)のオスモル濃度は、通常、約400mOsm/kg H2O未満である。通常は、オスモル濃度は約310mOsm/kg水〜約380mOsm/kg水である。本開示の組成物が糖類または脂肪成分で補充される場合、本組成物のオスモル濃度を調節しなければならない。例えば、成分の種類(例えば、糖類または脂肪)は、強化ヒト乳のオスモル濃度に影響する。糖類は、加水分解されているほど浸透圧活性が高い。加えて、部分的に加水分解された糖類源は、ヒト乳と再構成されたとき、ヒト乳アミラーゼによるさらなる加水分解によって、オスモル濃度をさらに増加させることがある。当業者は、再構成された強化剤/ヒト乳組成物の所望のオスモル濃度をもたらす糖類または糖類の組み合わせを容易に選択することができる。
【0058】
強化剤は、通常ヒト乳と混合されて4cal/オンス(約28グラム)を加える。通常、これは生乳:強化剤の80:20混合物(例えば、生乳8mlおよび強化剤2ml)である。他の典型的な混合物は、70:30、60:40および50:50を含むが、乳量と強化剤との任意かつすべての相対的な比率または量が本発明により企図されている。
【0059】
強化剤は典型的には、シリンジまたはボトル中に入れられる。ボトルは、シリンジと共に含まれ得る。シリンジキット(例えば、シリンジおよびボトル)またはボトルのどちらの場合も、ボトルは適切な希釈の助けとするために計量目印(すなわち、指標、ラインなど)を含むことができる。例えば、母乳を乳の栄養価を決定するために試験することができる。通常の乳は平均で1.1%のタンパク質、4.2%の脂肪、7.0%のラクトース(1つの糖)を含み、100グラム当たり70kcalのエネルギーを供給する。母乳は、栄養価につき試験することができ、次いで生母乳に4cal/オンス(約28グラム)を加えるために本開示の強化剤組成物を用いて調節することができる。
【0060】
「単位用量」は、乳児用の乳の調製において使用されるある量の強化剤を含有する強化剤の個々のパッケージを指す。未熟乳児のために調製される強化されたヒト乳の量は、通常、1日当たり25ml〜150mlの範囲である。したがって、単回単位用量は、8〜40mlの乳調製物を強化するために適切な量の強化剤である。より大きい体積に対してはさらなる単位投与量を加えることができる。したがって、単位用量は、生乳8ml当たり2mlの強化剤、または乳40ml当たり10mlの強化剤である。一態様において、単位用量は、10mlのシリンジを含み、複数の乳調製物を調製するのに十分な2mlの計量目印を備えてもよい。
【0061】
通常は、調製されるヒト乳の量は、乳児に24時間の栄養供給を提供するために必要な乳の量に基づく。例えば、1500gの乳児には、1日当たり150mlの乳が与えられる。凍結乳が使用される場合は、凍結された乳が完全に解凍されるまで温水浴中に置かれる。強化剤における混合においては、特別な注意が払われる。哺乳容器の側面への乳脂肪の付着を増大し、脂肪(エネルギー)の著しい損失をもたらし得る乳脂肪球の破壊を避けるために、穏やかな混合が必要とされる。規定量の強化された乳をシリンジに取り入れ、識別ラベルを貼る。乳の調製が完了したら、看護スタッフが取りやすいように、ラベルを貼った分取された哺乳食を育児室に届けて冷凍庫に入れる。通常、冷蔵された強化乳は、哺乳の前に温められる。例えば、強化乳は、約35〜45℃の範囲内に設定された実験用乾熱インキュベーター中で15分間温められる。これにより、強化乳の温度が室温になる。強化乳は、ボーラス供給として、あるいは連続的な供給のためにシリンジ注入ポンプを通して、乳児に投与することができる。注入ポンプを使用する場合は、シリンジの先端を直立させて位置付けて脂肪の連続的な注入を可能にし、シリンジを直接哺乳管に取り付けて脂肪および免疫上の成分が付着する可能性のある表面積を減少させる。
【0062】
本開示は、異種ではないヒト乳および強化剤組成物を提供し、免疫発達および乳児成長を促進させることが実証されているヒトタンパク質を提供する。さらに、本開示のヒト乳および強化剤組成物は、エネルギー、タンパク質、カルシウム、リン、ナトリウム、および他の微量栄養分の供給源としてのヒト乳の変動性に対処する一方で、良好な寛容性を示し、ヒト乳の健康上の有益性を最大化する。
【0063】
通常、大容量のパーケージ材料よりも個々の単位用量サイズのパーケージが使用される。1日の哺乳の過程にわたって未熟乳児に投与される乳が小容量であるため、小容量の強化されたヒト乳が調製される。繰り返し開けられ、分取され、かつ貯蔵された大容量の容器の無菌性は、病院環境において常に懸念事項である。個々の単位用量は、少量の強化剤のヒト乳への添加を、残りの強化剤の汚染の恐れなく、可能にする。
【0064】
多くの種類の容器が簡単に入手可能であり、かつ当業者に知られている。本開示の方法および組成物において有用な種類の容器の例は、ボトル、シリンジ、および缶を含む(例えば、金属、ガラス、またはプラスチック)。
【0065】
上記で述べた通り、本開示は、本開示の強化剤をヒト乳に添加して生ヒト乳を所望の栄養含有量に調節し、強化されたヒト乳を未熟乳児に投与することによる、早産乳児に栄養を提供する方法にも関する。本開示はさらに、強化されたヒト乳を未熟乳児に投与することによって未熟乳児の成長を促進する方法を提供する。
【0066】
得られる脱脂乳部分は、細菌、真菌、および胞子を含まない。濾過されたスキムは、次いで脂肪部分と別々にまたは濾過後に再度合わせて貯蔵される。スキムが別に貯蔵される場合は、後でそれを消費前に脂肪部分と再度合わせることができる。あるいは、スキム部分を消費することができる。スキムおよび/または再度合わせた乳は、好ましくは室温未満で、より好ましくは4℃で、長期間貯蔵することができる。
【0067】
本発明において用いることができる例示の設備(また本明細書では装置と呼ぶ)を図6に示す。槽の温度を維持するために冷グリコールシステムに接続された被覆付処理槽(100)は、生ヒト乳が充填されている。被覆付処理槽(100)は、乳分離器(300)に接続されたポンプ(200)に接続されている。乳分離器(300)のスキムポートは、受容被覆付処理槽(400)に接続されている。受容被覆付処理槽(400)は、槽の温度を維持するために冷グリコールシステムに接続されている。生ヒト乳は、被覆付処理槽(100)から乳分離器(300)を通ってポンプ(200)でポンプ圧送され、スキム分画が受容被覆付処理槽(400)に流れる。その結果、受容被覆付処理槽(400)は、生ヒト乳のスキム分画を保持する。
【0068】
本明細書で使用されるように、その特定の文脈に応じて、設備は、設備の個別の構成要素もしくは部品を指すか、または設備の2つ以上の異なる構成要素もしくは部品を集約的に指すか、または本発明の処理において使用される設備の構成要素または部品のすべてを指し得る。設備の様々な構成要素は、単一の生産プラント内の連続する連結したシステムの場合と同様に、直接物理的に接触し得るか、あるいは設備の1つ以上の個別の構成要素または部品は、必要に応じて物理的に分離され得る。したがって、いくつかの実施形態においては、図面に示される例示の設備のすべては、それらが直接接続されているかどうかに関わらず、一緒に同一または異なる部屋にあり得る。いくつかの実施形態においては、設備の1つ以上の構成要素または部品は、それらが直接接続されているかどうかに関わらず、同一または異なる建物内に位置することができる。他の実施形態においては、設備の1つ以上の構成要素または部品は、同一または異なる地理的位置にあってもよい。したがって、本発明の方法およびシステムは、部屋の中または間で物理的に分離された設備の様々な構成要素または部品を有することと、乳および乳製品をシステム内の設備の次の構成要素または部品に物理的に移すことを必要とすることと、を含む。本記載のすべては、本明細書に図示および記載される設備およびシステムが、本発明の工程が本明細書に記載される通りに達成される限り、任意の特定の物理的順序または配置であることを必要とするものではない。当業者であれば、本発明を達成するために可能な設備の様々な配置を理解するであろう。
【0069】
濾過助剤処理槽(500)は、受容被覆付処理槽(400)に接続され、濾過助剤処理槽(500)は、濾過助剤が充填されている。濾過助剤は、濾過助剤処理槽(500)から受容被覆付処理槽(400)に移される。処理中は、受容被覆付処理槽(400)内で一定の混合が維持される。
【0070】
受容被覆付処理槽(400)は、ポンプ(600)に接続され、次いで予備フィルターハウジング(700)の入力ポートに接続される。予備フィルターハウジング(700)内のフィルターは、1〜10ミクロンの間の孔径を持つフィルターを含む。予備フィルターハウジング(700)の出力ポートは、精密フィルターハウジング(800)の入力ポートに接続される。精密フィルターハウジング(800)内のフィルターは、0.2〜1ミクロンの孔径を持つフィルターを含む。精密フィルターハウジング(800)の出力ポートは、望ましい槽の温度を維持するために冷グリコールシステムに接続されている、濾過したスキム被覆付処理槽(900)に接続される。
【0071】
受容被覆付処理槽(400)内で濾過助剤と混合されたヒト乳のスキム分画は、1〜10ミクロンの孔径を持つフィルターを含む予備フィルターハウジング(700)を通してポンプ(600)でポンプ圧送される。フィルターを通過するヒト乳スキム分画の一部である濾液は、次に精密フィルターハウジング(800)を通り抜ける。この操作からの濾液は、濾過したスキム被覆付処理槽(900)内で捕捉される。この濾過したヒト脱脂乳は、ゼロまたは低い細菌含有量(精密濾過前の乳に対して)からなり、最小限の脂肪およびタンパク質含有量の変化を伴う。次に濾液分画を直接使用して、ヒト脱脂乳、ヒト全乳、または100%ヒト乳から生成されたヒト乳強化剤などの他の製品を生成してもよい。
【0072】
濾液分画は、従来の低温殺菌技術(超高温度および圧力)がヒト乳脂肪およびタンパク質の形態および機能も変化させるため、バチルスセレウスなどの芽胞形成および好冷細菌を殺菌する、そのような低温殺菌技術によって得られたヒト乳よりも優れている。さらに、好冷細菌などの細菌、特にバチルスセレウスは、本発明により除去され得るため、本発明に従って得られたヒト乳は、より安全である。
【0073】
予備フィルター(700)の保持膜表面によって保持され、かつそこから回収されるヒト脱脂乳分画の部分である、第1の濃縮分画は、高い細菌含有量を持つヒト乳、および被覆付処理槽(400)内のヒトスキム分画に添加された濾過助剤からなる。したがって、濃縮分画は、その高い細菌および濾過助剤含有量により後次に廃棄される。
【0074】
精密フィルター(800)の保持膜表面によって保持され、かつそこから回収されるヒト脱脂乳分画の部分である、第2の濃縮分画もまた、高い細菌含有量を持つヒト乳からなるため、後次に廃棄される。
【0075】
得られた濾液は、濾過助剤を含まず、たとえ含むとしても、無視できるレベルの細菌を含有する。ある実施形態においては、得られた濾液は、残りの細菌を全て殺菌するために、さらなる処理工程において低温で少なくとも30分間低温殺菌される。
濾過
【0076】
本発明においては、濾過は、濾過助剤を用いる予備濾過と、精密濾過の2つの工程で行われる。膜の特定の物理的形態は重要ではない。したがって、膜媒体は、例えば、ディスクまたは円筒の形態をとってもよい。一般に、予備フィルターおよび精密フィルターは膜で構成されている。ヒト乳分画は、ポンプ、例えば、蠕動ポンプを用いて、ヒト乳分画をフィルターに押し通し、製品をそのフィルターの膜に通す。
【0077】
予備濾過を使用して、製品を精密フィルターに通して濾過する前に、ヒト乳分画から大粒子を濾過して取り除く。これは、ヒト乳分画が、単位体積当たり過剰な大粒子を有し、精密フィルターを目詰まりさせるため必要である。しかしながら、予備濾過工程(孔径1.0〜10ミクロン)を用いても、ヒト乳分画は、予備フィルターを目詰まりさせ得る。これは、ヒト乳中の圧縮性固体により引き起こされ、不透過性の塊を形成してフィルターを詰まらせる。圧縮性固体により引き起こされたこの状況に対処するために、濾過助剤をヒト乳分画と混合する。
フィルター
【0078】
本明細書に記載される濾過および/または精密濾過処理で使用されるフィルターは、任意の本質的に市販のフィルター材料および/またはフィルターアセンブリを含んでよい。典型的なフィルター材料は、実質的に非反応性であってよく(例えば、それらはそこを通過する材料と化学的に反応および/またはそこを通過する材料を修飾しない)、一般に、フィルター材料中の孔を通過するために十分小さな材料と相互作用(例えば、吸収または吸着)しない。市販のフィルターおよび/またはフィルターアセンブリに用いられ、本濾過および/または精密濾過処理で使用するために適切であり得る例示のフィルター材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であるが、その他多くの同等のポリマーフィルター材料が市販されており、本濾過および/または精密濾過処理で用いられてもよい。例えば、他の適切なフィルター材料としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびガラスマイクロファイバーが挙げられ得る。さらに、本明細書に記載されるフィルター材料は、異なる程度の親水性または疎水性を呈し得、したがって、フィルター材料は、濾過される乳分画中の固体との静電相互作用を最小限にするように選択されてもよい。
【0079】
孔径は、所望の濾過結果を得るために選択されてよい(例えば、濾過後の標的バチルスセレウスCFU数)。フィルター孔径は、約5μm未満であってよい(例えば、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満、約1μm未満、約0.9μm未満、約0.8μm未満、約0.7μm未満、約0.6μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、約0.3μm未満、約0.2μm未満、約0.1μm未満、またはそれら以内もしくはそれら以下の任意の他の値もしくは値の範囲)。
濾過助剤
【0080】
「濾過助剤」という用語は、本明細書で使用されるとき、通常、高多孔性および低密度を有する粒子材料を指す。例示の濾過助剤としては、セライトもしくは珪藻土(keiselguhr)として一般的に知られているか、または様々な未処理および処理済珪藻土の変種が販売されている多数の特許商品名によって知られている珪藻土を含んでよい。濾過助剤、セライトおよび珪藻土(ならびにそれらの文法的変種またはそれらの様々な特許商品名)は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0081】
珪藻土は、固い殻を持つ藻の一種である珪藻の化石を含む。これらの化石は、透過性および多孔性が高いため、濾過用途に適している。しかしながら、合成的に生成された材料は、それらが望ましくない様式で乳を化学的に修飾しないか、または乳と反応しないという条件で用いられてもよい(例えば、ポリマー材料など)。有用な濾過助剤の例としては、シリカ、木材セルロースおよびパーライトが挙げられ得る。さらに、天然または合成濾過助剤は、濾過工程中に形成された濾過助剤パッド中の乳脂肪および/または他の固体を効果的に保持しつつ、脱脂乳製品がそこを通って自由に流れるために、十分な多孔性を有する必要がある。
【0082】
濾過助剤は、約1μm〜約100μmの平均粒径を有し得る(例えば、約1μm、約2μm、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約75μm、約100μm、またはその中の任意の他の値もしくは値の範囲)。通常、濾液が通過するフィルターの孔よりも大きな粒径を持つ濾過助剤が選択される。粒子濾過助剤は、比較的均一な粒径を有し得るか、または粒径の範囲を有し得る(例えば、上記の通り)。濾過助剤は無菌であってよく、任意でさらに化学的に処理または修飾されてもよい(例えば、そのpHは酸性または塩基性であってよい、材料は焼成されてもよい、など)。このような化学処理または修飾は、乳製品中のある成分(例えば、酸性または塩基性の濾過助剤と接触すると沈殿し得るもの)の除去を支援し得る。あるいは、焼成などの処理は、濾過助剤粒子を硬化させ、濾過処理中に圧力下で圧縮または機械的に変形しないように、濾過助剤に追加の機械的強度を提供する。
【0083】
濾過助剤は、懸濁液が通過し得る「パッド」または層の形態で使用され、浮遊粒子状物質を除去および/または保持し得る。しかしながら、濾過助剤が高い多孔質材料であり、かつ高度に吸収性でもあるため、それらは濾過される液体(例えば、脱脂乳)中に浮遊して、濾過される混合液から液体を吸収し、スラリーを形成し得る。濾過助剤を含むスラリーを形成するために混合した後、次にスラリーを従来のフィルターまたは精密フィルターに通してもよい(例えば、本明細書に記載の通り)。フィルターは、濾過助剤および混入固体(すなわち、残余物または濃縮物)を溶液中に保持し、懸濁液が通過し、フィルターおよびろ過液が通過するにつれて、濾過助剤は混入固体を含有する「パッド」を構築し、それ自体はフィルターとして作用し続け、液体または非常に微細な粒子状物質を通過させつつ、固体を捕捉および除去し続ける3次元フィルターを効率的に形成する。濾過助剤は高度に多孔性であるため、パッドは、濾液が通過するフィルターも濾過助剤パッドも詰まらせることなく構築し続け得る。
【0084】
本濾過処理および方法においては、濾過助剤は、乳500mL当たり濾過助剤約10グラム〜約100グラムの範囲の量で添加されてよい(例えば、約20グラム〜約60グラム、約30グラム〜約50グラム、またはその中の任意の他の値もしくは値の範囲)。濾過助剤の量は、必要な濾過助剤の量を最小限に抑えつつ、濾過を最大にし、および/またはフィルターの目詰まりを最小にするように選択されてよい。いくつかの実施形態においては、濾過助剤は、約20g/L、約25g/L、約30g/L、約35g/L、約40g/L、約45g/L、または約50g/Lで存在する。
【0085】
本濾過処理および方法においては、下流フィルターを詰まらせる固体、または所望されない固体(例えば、細菌)が濾過助剤により除去される一方で、他の望ましい固体(例えば、タンパク質)が濾過助剤を通過できるような透過性を伴う濾過助剤が選択されてよい。本明細書で使用される「透過性」は、多孔性材料の、流体がそれを通過することを可能にする能力の尺度を指す。したがって、本方法で使用するために適した濾過助剤は約0.100〜約1.000、約0.200〜約0.800、約0.300〜約0.700、または0.400〜約0.600の範囲の透過性(Darcy)を有してよい。あるいは、濾過助剤は、約0.100、約0.200、約0.300、約0.400、約0.500、約0.600、約0.700、約0.800、約0.900、または約1.000の透過性を有してもよい。したがって、ある実施形態においては、より大きな固体が捕捉される一方で、タンパク質を通過させてタンパク質の喪失を最小限に抑えるような透過性を持つ濾過助剤が選択され得る。
【0086】
いくつかの実施形態においては、濾過助剤は、約0.100〜約0.500の透過性を有し、約25g/L〜約50g/Lの載荷(すなわち、乳分画中の濃度)で用いられる。他の実施形態においては、濾過助剤は、約0.300〜約0.400の透過性を有し、約30g/L〜約45g/Lの載荷で用いられる。さらに他の実施例では、濾過助剤は、約0.300〜約0.400の透過性を有し、約35g/L〜約40g/Lの載荷で用いられる。ある実施形態においては、濾過助剤は、約0.300の透過率を有し、25g/L〜約50g/Lの載荷で用いられる。他の実施形態においては、濾過助剤は、約0.300の透過率を有し、約50g/Lの載荷で用いられる。
【0087】
上記の通り、濾過助剤は、圧縮性固体が、従来のフィルターを詰まらせる不透過性の塊を形成することを防ぐ。これらの圧縮性固体は、予備フィルターの濃縮物中で、細菌含有量および全体濾過助剤とともに捕捉される。得られた濾液は、最小量の圧縮性固体、より少量の細菌含有量を含有し、濾過助剤は含まない。濃縮物中で捕捉された圧縮性固体とともに、予備濾過処理からの濾液は、0.2〜1.0ミクロンの孔径を持つ精密フィルターに通される。
精密濾過
【0088】
精密濾過は、予備濾過工程からの濾液に使用される。予備濾過工程で捕捉されたほぼ全ての圧縮性固体とともに、濾液は、約0.2〜約1.0ミクロンの孔径を持つ精密フィルターを通って流れることができ、精密フィルターを目詰まりさせる圧縮性固体を最小限に伴う。精密濾過工程の濃縮物は、バチルスセレウスを含む、予備濾過工程からの残りの圧縮性固体および細菌含有量を含有する。得られた濾液は、本質的に細菌汚染のないヒト乳を含有する。
限外濾過
【0089】
いくつかの実施形態においては、精密濾過された乳がさらに限外濾過される。一実施形態によれば、精密濾過された脱脂乳を濾過するために使用される限外濾過膜は、40kDaを超える分子量を有する任意の物質の通過を防ぐサイズである。このような排除される物質は、限定されないが、乳タンパク質および乳脂肪を含む。あるいは、1〜40kDaおよびこの範囲内のいずれかの範囲を超える分子量を有する任意の物質の透過を防ぐ限外濾過膜を使用することもできる。通常は、0.45μm以下を含む(例えば、約0.2μm)フィルターを使用することができる。通常は、0.2μmのフィルターが使用される。一部の実施形態では、段階的濾過を使用することができる(例えば、約0.45μmでの第1の濾過、約0.3μmでの第2の濾過、約0.2μmでの第3の濾過、またはこれらの任意の組み合わせ)。脂肪のスキムからの分離により、濾過が容易となる。殺菌は、適切なデプスフィルターまたは膜フィルターを用いて、濾過または接線濾過などの知られている方法によって実施することができる。
【0090】
以下の乳タンパク質は、限外濾過膜によって補捉することができる(分子量を括弧内に記す):ラクトアルブミン(−14kDa)、カゼイン(−23kDa)、ラクトグロブリン(約37kDa)、アルブミン(−65kDa)、およびイムノグロブリン(100kDa超)。3.5kDa以下の遮断分子量を有する限外濾過膜が、例えば、Advanced Membrane Technology、San Diego、Calif.およびDow Denkark、Naskov、Denmarkからそれぞれ入手可能である。セラミック材料で作られた限外濾過膜も使用することができる。セラミックフィルターは、合成フィルターより優れた利点を有する。セラミックフィルターは生蒸気で殺菌することができる。
【0091】
濾過を促進するため、通常、限外濾過膜に圧力勾配が与えられる。通常、圧力勾配は、膜を通過する所望の濾過フラックスを維持するために調節される。一態様においては、濾過の開始前に、限外濾過膜を少量の乳でプライミングし、透過液を廃棄する。この様式でのフィルターのプライミングは、濾過効率のために有利であると考えられている。
概説
【0092】
精密濾過後、予備濾過および精密濾過工程の両方からの濃縮物は、任意の許容される様式で廃棄されてもよい。
【0093】
本発明の方法を使用して利益を得てもよく、所望の最終製品は、ヒト全乳、標準化ヒト乳、ヒト乳強化剤、またはヒト脱脂乳である。
【0094】
細菌を保持する膜を通る、脂肪含有量の低いヒト乳のフラックス速度は、脂肪含有量の高いヒト乳のフラックス速度よりも通常高い。ある状況においては、濾過されたヒト脱脂乳を低温殺菌されたヒト乳脂肪分画と組み合わせることによって、より高い脂肪含有量(例えば、約3.5%または約9.0%)を持つヒト乳を生成することはより有利である。この脂肪分画は、約10%の最小脂肪含有量を持つクリーム分画であり得る。
【0095】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、限定するものとして見なされてはならない。当業者であれば、本開示に照らして、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、なおも同様または類似の結果を得ることができることを理解するであろう。
【実施例】
【0096】
材料および方法
方法A:ヒト乳の温度調整
【0097】
以下の実施例で用いられるヒト乳は、ヒト乳ドナーから得た。ヒト乳の温度は、グリコールシステムに接続された500L被覆付処理槽内で適切な処理温度(約20℃〜約30℃)に調整した。
【0098】
方法B:ヒト乳のクリームとスキム分画への分離
【0099】
生ヒト乳を含む被覆付処理槽を、Westfalia乳分離器に接続した。Westfalia分離器のクリームポートおよびスキムポートを、同様の処理槽に接続した。約10リットルのヒト脱脂乳分画および2リットルのクリーム乳分画を、濾過のために高密度ポリエチレン容器に移した。濾過で使用する準備ができるまで、両分画を冷蔵庫(約2℃〜約8℃)で格納した。
【0100】
方法C:細菌のヒト乳分画への導入
【0101】
実験において、ヒト乳分画の人工播種を使用して、本発明により可能な非常に高い力価の減少を証明した。細菌接種源(バチルスセレウスを含む)をヒト乳分画に添加した。これは、絶えず混合しながら接種源をヒト乳分画の処理槽中に添加することにより行った。十分な接種源をヒト乳分画と混合して、1ミリリットル当たり最少300コロニー形成単位(CFU/mL)を達成する。
【0102】
方法D:細菌アッセイ試験
【0103】
ヒト乳分画を播種するために用いられる接種源は、バチルスセレウスであったため、バチルスセレウスに対して選択的かつ特異的であるように設計されていることから、マンニトール−卵黄−ポリミキシン寒天(MYP寒天)を使用した。バチルスセレウスを試験するとき、1mLのヒト乳製品サンプルを3枚のMYP寒天プレート上に置いた(各プレートは0.33mLのサンプルを含有する)。そのプレートを24時間32℃で培養して読み出した。レシチナーゼ陽性でもあり、コロニー周辺の沈殿物帯として見られる、任意のピンク−赤色コロニーは、バチルスセレウスであると推定的に考えられる。
【0104】
方法E:多量養素アッセイ試験
【0105】
乳分画を濾過処理にかける前後に、最終濾液の脂肪、タンパク質、糖質、および総カロリー含有量を測定することが望ましい。本文書に記載の実験では、Sterling Instruments(Westfield,New York,USA)により製造されたAcudairy赤外線乳分析器を用いて、多量養素を測定した。
【0106】
濾過装置
予備フィルター
【0107】
実験に用いた予備フィルターは、Filtrox Filtrodisc BioSDミニカプセルフィルターであった。これらのフィルターは、細胞分離のために使い捨て設計されている。フィルターは、Filtrox AG(St.Gallen,Switzerland)により製造された。
濾過助剤培地
【0108】
実験で使用した濾過助剤培地は、Advanced Minerals Corporation(Goleta,California,USA)により製造されたCelpure(登録商標)であった。
精密フィルター
【0109】
実験で使用した精密フィルターは、Meissner PTFE膜カプセルフィルターであった。Meissnerフィルターは、Meissner Filtration Products,Inc(Camarillo,California,USA)によって製造されている。
【0110】
方法F:濾過設定
【0111】
Watson‐Marlow蠕動ポンプを1/4インチ(約6.4センチメートル)管で設定した。ポンプからの管を、最初にFiltrox Filtrodisc BioSDミニカプセルフィルター入力に接続した。次にFiltrox Filtrodisc BioSDミニカプセルフィルターの出力を、1/4(約6.4センチメートル)インチ管を介して、Meissner PTFE膜カプセルフィルターの入力に接続した。その結果、最初にFiltrox Filtrodisc BioSDミニカプセルフィルターを通り、次にMeissner PTFE膜カプセルフィルターを通る製品の流れを予測して、2つのフィルターを直列に接続した。1/4インチ(約6.4センチメートル)管を用いて、Meissner PTFE膜カプセルフィルターの出力を500mL回収槽に導いた。
【0112】
方法G:乳分画の濾過
フィルターの準備
【0113】
濾過設定が完了すると、乳分画がフィルターを通過可能になる前に、フィルターを脱イオン化(DI)水で湿らせなければならない。フィルターを湿らせるために、DI水を含有する槽を、方法Fに記載される濾過設定において、Watson−Marlow蠕動ポンプに接続された入力管に接続した。この時点で、少なくとも100mLのDI水がフィルターを通してポンプ圧送され、乳分画の濾過の準備としてフィルターを湿らせる。
濾過のための分画の準備
【0114】
乳分画がフィルターを通過可能になる前に、濾過助剤を乳分画に添加しなければならない。実験では、約20グラム〜約60グラムのCelpure濾過助剤を乳分画500mL毎に添加する。
濾過
【0115】
方法Fに記載の濾過設定の開始点である、Watson−Marlow蠕動ポンプへの入力は、Celpureが添加された乳分画を含有する槽に接続される。ポンプは、毎分約15mL〜約40mLの流量を達成するように設定する。ポンプが始動すると、各フィルター上の通気孔が開き、ポンプ圧送処理の開始時にフィルターをプライミングした後、システムがプライミングされると閉じる。Celpureを含む乳分画は、予備フィルターFiltrox Filtrodisc BioSDミニカプセルフィルターにCelpure(約20グラムのCelpure)が充填されるまで、フィルターを通してポンプ圧送される。予備フィルターおよび精密フィルターの両方を通過した製品である、最終濾液は、約167mL〜約450mL得られた。
多量養素および細菌測定
【0116】
濾過が完了した後、多量養素および細菌測定を行った。測定は、方法Dおよび方法Eに記載の通り行い、初期乳分画、予備フィルター後の濾液、および精密濾過後の最終濾液に関して行った。
実施例I
【0117】
室温で、約500mLの生乳分画を約40gのCelpure(登録商標)300と混合した。方法Cに記載の通り、混合液に約600CFU/mLのバチルスセレウスを添加した。混合液を約30mL/分の速度でポンプ圧送した。濾過設定は方法Fに従い、濾過は方法Gに従った。しかしながら、送り圧力は、製品のポンプ圧送開始直後に上昇し始め、予備フィルターの詰まりを示した。多量養素および細菌測定の結果を表1に記録する。注記:BC CFU/mL=1ミリリットル当たりのバチルスセレウスコロニー形成単位の数
【表1】
【0118】
上記の結果は、全乳を予備濾過することが、バチルスセレウス濃度を低減することにおいて有効であるとともに、非常に低い流量と、圧縮性固体によるフィルターの詰まりをもたらすことを示す。したがって、大規模生産のためには、クリームをスキムから分離し、予備濾過することが有利である。
【0119】
実施例II
室温で、約500mLの脱脂乳分画を約40gのCelpure(登録商標)300と混合した。方法Cに記載の通り、混合液に約600CFU/mLのバチルスセレウスを添加した。混合液を約30mL/分の速度でポンプ圧送した。濾過設定は方法Fに従い、濾過は方法Gに従った。精密フィルターの孔径は、約0.2ミクロンであった。送り圧力は、処理全体を通して一定であり、フィルターの詰まりを示さなかった。多量養素および細菌測定の結果を表2に記録する
【表2】
【0120】
上記の結果は、濾過前に珪藻土などの濾過助剤が脱脂乳に添加されるとき、約1ミクロンの孔径を有する予備フィルターは詰まらなくなることを示す。さらに、脱脂乳中のバチルスセレウス濃度は、脱脂乳を約0.2ミクロンの孔径を有する予備フィルターおよび精密フィルターに通して濾過することにより効果的に低減される一方で、脱脂乳中のタンパク質および糖質の濃度は、この処理により著しく影響されない。
【0121】
実施例III
室温で、約500mLの脱脂乳分画を約40gのCelpure(登録商標)300と混合した。方法Cに記載の通り、混合液に約600CFU/mLのバチルスセレウスを添加した。混合液を約30mL/分の速度でポンプ圧送した。濾過設定は方法Fに従い、濾過は方法Gに従った。精密フィルターの孔径は、約0.4ミクロンであった。送り圧力は、処理全体を通して一定であり、フィルターの詰まりを示さなかった。方法Dおよび方法Eから得られた結果を表3に記録する。
【表3】
【0122】
上記の結果は、脱脂乳中のバチルスセレウス濃度が、脱脂乳を約0.4ミクロンの孔径を有する予備フィルターおよび精密フィルターに通して濾過することにより効果的に低減される一方で、脱脂乳中のタンパク質および糖質の濃度は、この処理により著しく影響されないことを示す。
【0123】
実施例IV
室温で、約500mLの脱脂乳分画を約40gのCelpure(登録商標)300と混合した。方法Cに記載の通り、混合液に約10,000CFU/mLのバチルスセレウスを添加した。混合液を約30mL/分の速度でポンプ圧送した。濾過設定は方法Fに従い、濾過は方法Gに従った。精密フィルターの孔径は、約0.6ミクロンであった。送り圧力は、処理全体を通して一定であり、フィルターの詰まりを示さなかった。方法Dおよび方法Eから得られた結果を表4に記録する。
【表4】
【0124】
上記の結果は、脱脂乳中のバチルスセレウス濃度が、脱脂乳を約0.6ミクロンの孔径を有する予備フィルターおよび精密フィルターに通して濾過することにより効果的に低減される一方で、脱脂乳中のタンパク質および糖質の濃度は、この処理により著しく影響されないことを示す。
【0125】
実施例V
室温で、1,009.8mLの脱脂乳分画をプールした。方法Cに記載の通り、脱脂乳分画に約5,000CFU/mLのバチルスセレウスを添加した。1,009.8mLの脱脂乳分画から、9.8mLを取り、栄養素分析を行い、1,000mLの脱脂乳分画を残した。この1,000mLの脱脂乳分画に、約22gのCelpure(登録商標)300を添加した。1,000mLの脱脂乳分画のうち、方法Fに従う濾過設定および方法Gに従う濾過を使用して、約135mLを濾過した。精密フィルターの孔径は、約0.6ミクロンであった。送り圧力は、処理全体を通して一定であり、フィルターの詰まりを示さなかった。1CFU/mL未満のバチルスセレウスおよび既知の栄養価を有することが試験されたクリームを、15.4mLの量で濾過したスキムに添加して、カロリー、脂肪、タンパク質、および糖質を、標準化ヒト乳に期待されるレベルにした。方法Dおよび方法Eから得られた結果を表5に記録する。
【表5】
【0126】
規模拡大例
実施例A
要約
約30Lの牛乳を約90Lの脱イオン化水と混合して、約120Lの希釈牛乳を提供し、これをバチルスセレウスで処理した後、内袋を備える約23℃の500Lタンクに入れた。CelPure(登録商標)300を添加して、最終濾過助剤/牛乳の比を約50g/Lとした。蠕動ポンプを準備し、そこを通って供給される管は、内袋付タンクを第1および第2のフィルター(「デプスフィルター」および「最終フィルター」)にそれぞれ接続した。濾過実験に先立って、フィルターハウジングを分解および洗浄/消毒した。2つの30インチ(約76センチメートル)「最終フィルター」ハウジングも洗浄および消毒した。全ての管および構成要素、例えば、クランプ、ガスケット、金具などを消毒した。50フィート(約15メートル)の新たな管を運転に用いた。ポリエーテルスルホン(PES)製の約0.6ミクロンの孔径を持つStylux(登録商標)SMO.6−3F6RSフィルター(Meissner Filtration Products, Inc.)を用いた。デプスフィルターまたは最終フィルターのいずれかの下流で消毒したバレルに牛乳を回収した。
【0127】
ポリエーテルスルホン(PES)製のSteriLux SMO.6−3F6RSフィルターを用いて、濃度50g/LでのCelpure 300(透過性約0.300)は、牛乳からバチルスセレウスを1CFU/mL未満のレベルに濾過することにおいて有効であった。
手順
【0128】
内袋付500Lタンク内で牛乳を混合して分配した。約10フィート(約3メートル)の管をタンク出口に接続してクランプオフした。磁気ミキサーをタンクに接続し、約50RPMに設定した。牛乳サンプルを重複で得た。バチルスセレウス接種源を混合しながらタンクに添加した。発泡を最小限に抑えて混合するために回転数を調整し、牛乳を約15分間混合させた。牛乳サンプルを重複で得た。CelPure(登録商標)300をタンクに分配し、ミキサーを約200RPMに設定した。
【0129】
フィルターハウジングを開き、ポリエーテルスルホン(PES)製の約0.6ミクロン孔径を持つStylux(登録商標)SMO.6−3F6RS 30インチ(約76センチメートル)フィルターを各ハウジングに配置した。全てのフィルター上のハウジングを固定し、ハウジング内でフィルターを湿らせて重力排水した。タンク出口をデプスフィルターの入口に接続した。必要に応じて、再循環のためにフィルターハウジングの上面出口からタンクの上面開口部に管を通した。タンクの底面からの管は、蠕動ポンプを通してデプスフィルター入口に接続した。デプスフィルター出口からの管は、回収バレルに達した。
【0130】
最終フィルターである、ポリエーテルスルホン(PES)製の約0.6ミクロン孔径を持つStylux(登録商標)SMO.6−3F6RS 30インチ(約76センチメートル)フィルターは、回収バレルから供給された。管を最終フィルターの両入口に接続し、「T」をいずれかのフィルターに選択的に流体を配向するために、クランプを用いて入口線上に配置した。両フィルターの管出口は、回収バレルの中に供給された。
【0131】
タンク底面の排水弁/クランプを開き、ポンプを始動させた。ポンプ速度を約10L/分まで徐々に増加させた。牛乳がハウジングを充填する様子を観察し、製品が出てくることが確認された後、ハウジングの通気弁を閉めた。再循環管をアンクランプし、製品をタンクに戻した。ハウジングの圧力は、5分毎に記録した。再循環後、デプスフィルターの出口でのクランプを開けた。ハウジング出口でのクランプを開き、製品が回収バレルに流れるのを可能にし、タンクへの再循環管をクランプオフした。タンクからの全製品が濾過されるまでこの処理を継続した。濾液からのサンプルを得た。
【0132】
最終フィルターを湿らせて排水し、次いで回収バレルからポンプへの管をプライミングし、ポンプを始動させて徐々に約4L/分にした。フィルターハウジング#1サイトガラス内で製品を観察し、製品が観察されるまで通気弁を開いた後、通気口を閉じた。フィルターハウジング圧力を記録した。最終フィルターの出口クランプを開き、第1の濾過からの全製品が濾過されるまで、製品を回収バレル内に回収した。第2の濾液からサンプルを得た。
【0133】
実施例B
要約
内袋付500Lタンクを、約23℃で、約147Lのバチルスセレウス処理したヒト脱脂乳で充填した。CelPure(登録商標)1000を添加して、最終濾過助剤/乳比を約25g/Lとした。蠕動ポンプを準備し、そこを通って供給される管は、内袋付タンクを第1および第2のフィルターである、「デプスフィルター」および「最終フィルター」(上記実施例I〜Vの予備フィルターおよび精密フィルターに対応する)にそれぞれ接続した。濾過実験に先立って、フィルターハウジングを分解および洗浄/消毒し、全ての管および構成要素、例えば、クランプ、ガスケット、金具なども消毒した。50フィート(約15メートル)の新たな管を用いた。ポリエーテルスルホン製の約0.6ミクロンの孔径を持つStylux(登録商標)SMO.6−3F6RSフィルターを用いた。デプスフィルターまたは最終フィルターのいずれかの下流で消毒したバレルに乳を回収した。
【0134】
Celpure(登録商標)1000(透過率約1.000)を約25g/Lで使用して、ヒト脱脂乳をデプスフィルターに通したが、最終フィルターは即時に目詰まりしたため運転を終了した。
【0135】
手順
本実験では、牛乳の代わりに本明細書に記載のヒト脱脂乳を用いたことを除いて、実施例Aと同様の手順を用いた。乳を解凍し、内袋付500Lタンクに分配した。約10フィート(約3メートル)の管をタンク出口に接続してクランプオフした。磁気ミキサーをタンクに接続し、約50RPMに設定した。乳サンプルを重複で得た。バチルスセレウス接種源を混合しながらタンクに添加した。発泡を最小限に抑えて混合するために回転数を調整し、乳を約15分間混合させた。次に2つの乳サンプルを得た。CelPure(登録商標)1000(6kg)をタンクに分配し、ミキサーを約200RPMに設定した。
【0136】
フィルターハウジングを開き、Stylux(登録商標)30インチ(約76センチメートル)フィルターを各ハウジング内に配置した。全てのフィルター上のハウジングを固定し、ハウジング内でフィルターを湿らせて重力排水した。タンク出口をデプスフィルターの入口に接続した。必要に応じて、再循環のためにフィルターハウジングの上面出口からタンクの上面開口部に管を通した。タンクの底面からの管は、蠕動ポンプを通してデプスフィルター入口に接続した。デプスフィルター出口からの管は、回収バレルに達した。
【0137】
最終フィルターは、回収バレルから供給されるものとした。管を最終フィルターの両入口に接続し、「T」をいずれかのフィルターに選択的に流体を配向するために、クランプを用いて入口線上に配置した。両フィルターの管出口は、回収バレルの中に供給された。
【0138】
タンク底面の排水弁/クランプを開き、ポンプを始動させた。ポンプ速度を約10L/分まで徐々に増加させた。乳がハウジングを充填する様子を観察し、製品が出てくることが確認された後、ハウジングの通気弁を閉めた。再循環管をアンクランプし、製品をタンクに戻した。ハウジングの圧力は、5分毎に記録した。再循環後、デプスフィルターの出口でのクランプを開けた。ハウジング出口でのクランプを開き、製品が回収バレルに流れるのを可能にし、タンクへの再循環管をクランプオフした。タンクからの全製品が濾過されるまでこの処理を継続した。濾液からのサンプルを得た。
【0139】
最終フィルターを湿らせて排水し、次いで回収バレルからポンプへの管をプライミングし、ポンプを始動させた。意外にも、実施例Aにおいて同様の手順が良好に用いられたという事実にも関わらず、本実施例の各最終フィルターは、乳の導入直後に目詰まりしたため、運転を終了した。
【0140】
実施例C
要約
内袋付500Lタンクを、約23℃で、約240Lのバチルスセレウス処理したヒト脱脂乳で充填した。CelPure(登録商標)1000を添加して、最終濾過助剤/乳比を約25g/Lとした。蠕動ポンプを準備し、そこを通って供給される管は、内袋付タンクを第1および第2のフィルターである、「デプスフィルター」および「最終フィルター」(上記実施例I〜Vの予備フィルターおよび精密フィルターに対応する)にそれぞれ接続した。濾過実験に先立って、フィルターハウジングを分解および洗浄/消毒し、全ての管および構成要素、例えば、クランプ、ガスケット、金具なども消毒した。50フィート(約15メートル)の新たな管を用いた。ポリビニリデンフルオリド(PVDF)(Meissner)製のSterilux VMH0.6−3F6RSフィルターを用いた。デプスフィルターまたは最終フィルターのいずれかの下流で消毒したバレルに乳を回収した。
【0141】
Celpure(登録商標)1000(透過率約1.000)を約25g/Lで使用したところ、デプスフィルターが詰まり、運転を終了した。
【0142】
手順
乳を解凍し、内袋付500Lタンクに分配した。約10フィート(約3メートル)の管をタンク出口に接続してクランプオフした。磁気ミキサーをタンクに接続し、約50RPMに設定した。乳サンプルを重複で得た。バチルスセレウス接種源を混合しながらタンクに添加した。発泡を最小限に抑えて混合するために回転数を調整し、乳を約15分間混合させた。次に2つの乳サンプルを得た。CelPure(登録商標)1000(6kg)をタンクに分配し、ミキサーを約200RPMに設定した。
【0143】
フィルターハウジングを開き、Sterilux VMH0.6−3F6RS PVDF 30インチ(約76センチメートル)フィルターを各ハウジング内に配置した。全てのフィルター上のハウジングを固定し、ハウジング内でフィルターを湿らせて重力排水した。タンク出口をデプスフィルターの入口に接続した。必要に応じて、再循環のためにフィルターハウジングの上面出口からタンクの上面開口部に管を通した。タンクの底面からの管は、蠕動ポンプを通してデプスフィルター入口に接続した。デプスフィルター出口からの管は、回収バレルに達した。
【0144】
最終フィルター(Sterilux VMH0.6−3F6RS PVDF)は、回収バレルから供給されるものとした。管を最終フィルターの両入口に接続し、「T」をいずれかのフィルターに選択的に流体を配向するために、クランプを用いて入口線上に配置した。両フィルターの管出口は、回収バレルの中に供給された。
【0145】
タンク底面の排水弁/クランプを開き、ポンプを始動させた。ポンプ速度を約10L/分まで徐々に増加させた。乳がハウジングを充填する様子を観察し、製品が出てくることが確認された後、ハウジングの通気弁を閉めた。再循環管をアンクランプし、製品をタンクに戻した。ハウジングの圧力は、5分毎に記録した。再循環後、デプスフィルターの出口でのクランプを開けた。デプスフィルターハウジングの圧力が急速に増加するのを観察し、デプスフィルターが詰まったため、実験を終了した。
【0146】
実施例D
要約
内袋付500Lタンクを、約23℃で、約160Lのバチルスセレウス処理したヒト脱脂乳で充填した。実施例Bで用いられた手順とは対照的に、CelPure(登録商標)1000を用いて最終濾過助剤/乳比を約25g/Lとしたところ、フィルターの目詰まりを生じ、ここでCelPure(登録商標)300を添加して、最終濾過助剤/乳比を約50g/Lにした。蠕動ポンプを準備し、そこを通って供給される管は、内袋付タンクを第1および第2のフィルター(「デプスフィルター」および「最終フィルター」)にそれぞれ接続した。濾過実験に先立って、フィルターハウジングを分解および洗浄/消毒した。2つの30インチ(約76センチメートル)「最終フィルター」ハウジングも洗浄および消毒した。全ての管および構成要素、例えば、クランプ、ガスケット、金具などを消毒した。50フィート(約15メートル)の新たな管を運転に用いた。目詰まりをもたらした実施例Bで用いたStyluxフィルターの代わりに、Sterilux VMH0.6−3F6RS PVDFフィルターを用いた。デプスフィルターまたは最終フィルターのいずれかの下流で消毒したバレルに乳を回収した。
【0147】
Sterilux VMH0.6−3F6RS PVDFフィルターを用いて、濃度50g/LでのCelpure 300(透過性約0.300)は、ヒト脱脂乳からバチルスセレウスを1CFU/mL未満のレベルに濾過することにおいて有効であった。
【0148】
手順
乳を解凍し、内袋付500Lタンクに分配した。約10フィート(約3メートル)の管をタンク出口に接続してクランプオフした。磁気ミキサーをタンクに接続し、約50RPMに設定した。乳サンプルを重複で得た。バチルスセレウス接種源を混合しながらタンクに添加した。発泡を最小限に抑えて混合するために回転数を調整し、乳を約15分間混合させた。乳サンプルを重複で得た。CelPure(登録商標)300をタンクに分配し、ミキサーを約200RPMに設定した。
【0149】
フィルターハウジングを開き、Sterilux 30インチ(約76センチメートル)フィルターを各ハウジング内に配置した。全てのフィルター上のハウジングを固定し、ハウジング内でフィルターを湿らせて重力排水した。タンク出口をデプスフィルターの入口に接続した。必要に応じて、再循環のためにフィルターハウジングの上面出口からタンクの上面開口部に管を通した。タンクの底面からの管は、蠕動ポンプを通してデプスフィルター入口に接続した。デプスフィルター出口からの管は、回収バレルに達した。
【0150】
最終フィルターは、回収バレルから供給された。管を最終フィルターの両入口に接続し、「T」をいずれかのフィルターに選択的に流体を配向するために、クランプを用いて入口線上に配置した。両フィルターの管出口は、回収バレルの中に供給された。
【0151】
タンク底面の排水弁/クランプを開き、ポンプを始動させた。ポンプ速度を約10L/分まで徐々に増加させた。乳がハウジングを充填する様子を観察し、製品が出てくることが確認された後、ハウジングの通気弁を閉めた。再循環管をアンクランプし、製品をタンクに戻した。ハウジングの圧力は、5分毎に記録した。再循環後、デプスフィルターの出口でのクランプを開けた。ハウジング出口でのクランプを開き、製品が回収バレルに流れるのを可能にし、タンクへの再循環管をクランプオフした。タンクからの全製品が濾過されるまでこの処理を継続した。濾液からのサンプルを得た。
【0152】
最終フィルターを湿らせて排水し、次いで回収バレルからポンプへの管をプライミングし、ポンプを始動させて徐々に約4L/分にした。フィルターハウジング#1サイトガラス内で製品を観察し、製品が観察されるまで通気弁を開いた後、通気口を閉じた。フィルターハウジング圧力を記録した。最終フィルターの出口クランプを開き、第1の濾過からの全製品が濾過されるまで、製品を回収バレル内に回収した。第2の濾液からサンプルを得た。
【0153】
結果
I.全体体積収率は66.5%であった。
槽内開始体積:160L
デプスフィルター後に回収された体積:97L(後洗浄なし、詰まったフィルター)
第1の最終フィルター後に回収された体積:53L
第2の最終フィルター後に回収された体積:32L
第1の最終フィルターの洗浄後:5L
第2の最終フィルターの洗浄後:5L
最終フィルターからの総量:95L
タンク内に残ったホールドアップ量:15L
デプスフィルター入口内のホールドアップ量:30L
デプスフィルター出口内のホールドアップ量:4L
総ホールドアップ量:49L
体積収率=100*(95L/(160L−15L))=65.5%
【0154】
II.タンパク質収率は78.4%であった。
開始タンパク質:0.97%
デプスフィルター後のタンパク質:0.83%
第1の最終フィルター後のタンパク質:0.78%
第2の最終フィルター後のタンパク質:0.79%
後洗浄後のタンパク質:0.76%
タンパク質収率=100*(0.76%/0.97%)=78.4%
【0155】
III.最終製品中のバチルスセレウスレベルは、1CFU/mL未満であった。
A.24時間での開始バチルスセレウス載荷:145CFU/mL
48時間での開始バチルスセレウス載荷:500CFU/mL
B.24時間でのデプスフィルター後のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
48時間でのデプスフィルター後のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
C.24時間での最終フィルター後のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
48時間での最終フィルター後のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
D.24時間での後洗浄後のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
48時間での後洗浄後のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
E.24時間での最終製品中のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
48時間での最終製品中のバチルスセレウス:1CFU/mL未満
【0156】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と同様もしくは同等の任意の方法および物質を本発明の実践または試験において使用することもできるが、好ましい方法および物質は、本明細書で説明される。引用される全ての刊行物、特許、および特許公開は、あらゆる目的で参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
本明細書で論じられる出版物は、本出願の出願日前にそれらを開示するためだけに提供される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような出版物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0158】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明したが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従って、本発明の任意の変型、使用、または適合を網羅するものであり、本発明が属する技術分野において知られているか、または慣行に含まれるような、また本明細書に前述され、添付の請求項の範囲に含まれる本質的な特徴に適用され得るような、本開示からの逸脱を含むことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6