特許第6062457号(P6062457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

<>
  • 特許6062457-空気流検出を備えるエアロゾル発生装置 図000003
  • 特許6062457-空気流検出を備えるエアロゾル発生装置 図000004
  • 特許6062457-空気流検出を備えるエアロゾル発生装置 図000005
  • 特許6062457-空気流検出を備えるエアロゾル発生装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062457
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】空気流検出を備えるエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20170106BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A61M15/06 C
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-549491(P2014-549491)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-503916(P2015-503916A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2012077064
(87)【国際公開番号】WO2013098397
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】11196240.3
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12162894.5
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】タロン パスカル
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−231938(JP,A)
【文献】 特表2008−539890(JP,A)
【文献】 特開2009−172392(JP,A)
【文献】 特表2011−505874(JP,A)
【文献】 再公表特許第2009/069518(JP,A1)
【文献】 特開平03−232481(JP,A)
【文献】 特開平02−124082(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089486(WO,A1)
【文献】 特許第5196672(JP,B2)
【文献】 特許第5041550(JP,B2)
【文献】 特許第4869927(JP,B2)
【文献】 特表2002−519120(JP,A)
【文献】 特表平11−503912(JP,A)
【文献】 特表2013−521860(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015918(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0313901(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0149118(US,A1)
【文献】 特表2011−515093(JP,A)
【文献】 特表2005−538159(JP,A)
【文献】 特表2013−516265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生したエアロゾルをユーザが吸入するように構成されたエアロゾル発生装置であって、
エアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素と、
前記加熱要素に接続された電力源と、
前記加熱要素及び前記電力源に接続されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラが、前記電力源から前記加熱要素に供給される電力を制御して前記加熱要素を目標温度に維持するように構成され、さらに加熱要素の温度の変化又は前記加熱要素に供給される電力の変化を監視して、ユーザ吸入を示す、加熱要素を通過する空気流量の変化を検出するように構成され
前記コントローラは、前記加熱要素に供給される電力と予想電力レベルとの間の差を監視するように構成されている、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記加熱要素の温度と前記目標温度との差を監視して、ユーザ吸入を示す、前記加熱要素を通過する前記空気流の変化を検出するように構成されている、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記コントローラは、ユーザ吸入を示す、前記加熱要素を通過する空気流の変化を検出するために、前記加熱要素の温度と前記目標温度との差が閾値を超えるか否かを監視するように構成されている、請求項2記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記加熱要素の温度と前記目標温度との差が、閾値を所定期間にわたって又は所定の測定繰り返し回数にわたって超えるか否かを監視して、ユーザ吸入を示す、加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成されている、請求項3に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記コントローラは、温度の変化速度又は供給電力の変化速度を閾値と比較するように構成されている、請求項1から4の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合に、前記加熱要素に供給される電力を調整するように構成されている、請求項1から5の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合に、前記目標温度を調整するように構成されている、請求項1から6の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて前記加熱要素の温度を監視するように構成されている、請求項1から7の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記装置は、データ出力手段を含み、前記コントローラは、ユーザ吸入を示す前記加熱要素を通過する空気流の変化の各々の検出記録をデータ出力手段に送るように構成されている、請求項1から8の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記装置は、電気式喫煙装置である、請求項1から9の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
電気加熱式エアロゾル発生装置を通過するユーザ吸入を検出するための方法であって、前記装置は加熱要素及び該加熱要素に電力を供給するための電力源を備え、該方法は、前記電力源から前記加熱要素に供給される電力を制御して前記加熱要素を目標温度に維持する段階と、前記加熱要素の温度の変化又は前記加熱要素に供給される電力の変化を監視して、ユーザの吸入を示す、前記加熱要素を通過する空気流量の変化を検出する段階と、
を含み、
前記監視する段階は、前記加熱要素に供給される電力と予想電力レベルとの間の差を監視する段階を含む方法。
【請求項12】
前記監視する段階は、前記加熱要素の温度と前記目標温度との差を監視して、ユーザ吸入を示す、前記加熱要素を通過する前記空気流の変化を検出する段階を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合に、前記目標温度を調整する段階をさらに備える、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項11から13の何れかに記載の方法を実行させるための、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、エアロゾル発生システムに関し、詳細には、喫煙装置等のユーザ吸入用エアロゾル発生装置に関する。本明細書は、ユーザの吸入又は吸煙に対応するエアロゾル発生装置を通過する空気流の変化を、経済的かつ信頼性が高い方法で検出するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の着火端シガレットは、吸煙時に800℃を超える場合もある温度で生じるタバコ及びラッパーの燃焼の結果として煙を送出する。この温度では、タバコは、熱分解及び燃焼によって熱的に劣化する。燃焼熱は、タバコから種々のガス状燃焼生成物及び留出物を放出及び発生させる。生成物は、シガレットを通って引き込まれて冷却及び凝縮して、喫煙に付随する味覚及び臭いを含む煙を形成するようになっている。燃焼温度において、味覚及び臭いだけでなく多くの不所望の化合物が発生する。
【0003】
電気加熱式喫煙装置が知られており、これは本質的にエアロゾル発生システムであり、従来の着火端シガレットよりも低い温度で作動する。このような電気式喫煙装置の例が、国際公開特許第2009/118085号に開示されている。国際公開特許第2009/118085号には、エアロゾル形成基材を加熱要素で加熱してエアロゾルを発生するようになった電気式喫煙システムが、開示されている。加熱要素の温度は、所定の温度範囲になるように制御され、他の所望の揮発性化合物の放出時に基材から不所望の揮発性化合物が確実に発生及び放出しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開特許第2009/118085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロゾル発生装置に吸煙検出機能を安価で信頼性が高い方法で提供することが望ましい。吸煙検出は、例えばシステム内の加熱要素の動的制御及び解析目的の両方で有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の第1の態様において、発生したエアロゾルをユーザが吸入するように構成されたエアロゾル発生装置が提供され、該装置は、エアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素と、加熱要素に接続された電力源と、加熱要素及び電力源に接続され、電力源から加熱要素に供給される電力を制御して加熱要素を目標温度に維持するように構成され、さらに加熱要素の温度の変化又は加熱要素に供給される電力の変化を監視して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流量の変化を検出するように構成されたコントローラと、を備える。
【0007】
本明細書で用いる場合、「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを発生させる装置乃至装置を意味する。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生物品の一部、例えば喫煙物品の一部とすることができる。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基材と相互作用してユーザの口腔を通してユーザの肺に吸入されるエアロゾルを形成する、喫煙装置であることができる。エアロゾル発生装置は容器とすることができる。
【0008】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル形成基材」は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出することができる基材を意味する。そのような揮発性化合物は、エアロゾル形成基材を加熱することによって放出させることができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生物品又は喫煙物品の一部とすることが好都合である。
【0009】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル発生物品」又は「喫煙物品」は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出することができるエアロゾル形成基材を備える物品を指す。例えば、エアロゾル発生物品は、ユーザの口腔を通してユーザの肺に吸入されるエアロゾルを形成する喫煙物品とすることができる。エアロゾル発生物品は廃棄することができる。用語「喫煙物品」は、以下において一般的に用いる。喫煙物品は、タバコスティックであり又はこれを含むことができる。
【0010】
本明細書で用いる場合、用語「吸入」は、ユーザが口又は鼻を経由して人体内にエアロゾルを吸い込む動作を意味する。吸入は、エアロゾルがユーザの肺に取り込まれる状態を含み、また、エアロゾルがユーザの人体から排出される前にユーザの口腔又は鼻腔にのみ吸い込まれる状態を含む。
【0011】
コントローラは、プログラマブルマイクロプロセッサを備えることができる。別の実施形態において、コントローラは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用電子チップを備えることができる。一般的に、本明細書で説明した実施形態に適合する、加熱要素を制御できる信号を提供できるあらゆる装置を使用することができる。1つの実施形態において、コントローラは、加熱要素の温度と目標温度との差を監視して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成されている。
【0012】
本明細書は、専用の空気流量計を必要とせずに、エアロゾル発生装置を通過する空気流量の変化を検出すること、詳細にはユーザの吸入又は吸煙を検出することを提示する。これにより、専用の空気流量計を備える既存の装置と比べて、費用及びユーザの吸入検出を可能にするための複雑性が低減し、さらに故障する可能性がある部品が少ないので信頼性が向上する。
【0013】
1つの実施形態において、コントローラは、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するために、加熱要素の温度と目標温度との差が閾値を超えるか否かを監視するように構成することができる。コントローラは、加熱要素の温度と目標温度との差が閾値を所定期間にわたって又は所定の測定繰り返し回数にわたって超えるか否かを監視して、ユーザ吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。これにより、温度の短期間の変動がユーザ吸入の誤った検出につながることを確実に防止できる。
【0014】
別の実施形態において、コントローラは、加熱要素に供給される電力と予想電力レベルとの間の差を監視して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。代替的に又は追加的に、コントローラは、温度の変化速度又は供給電力の変化速度を閾値と比較して、ユーザの吸入を示す、加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。
【0015】
コントローラは、加熱器を通過する空気流の変化が検出される場合に、目標温度を調整するように構成することができる。空気流が増大すると、より多くの酸素が基材と接触する状態になる。これにより、所定の温度で基材が燃焼する可能性が高くなる。基材が燃焼することは望ましくない。従って、基材が燃焼する可能性を低くするために、空気流の増大が検出される場合には目標温度を下げることができる。代替的に又は追加的に、コントローラは、加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合には、加熱要素に供給される電力を調整するように構成することができる。一般的に、加熱要素を通過する空気流は、加熱要素を冷却するよう作用する。加熱要素に対する電力は、この冷却作用を補償するために一時的に高くすることができる。
【0016】
電力源は、例えば直流電圧電源といった任意の適切な電源とすることができる。電源はバッテリとすることができる。1つの実施形態において、電源はリチウムイオンバッテリである。代替的に、電源は、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、又は例えば、リチウムコバルト、リン酸鉄リチウム又はリチウムポリマーバッテリ等のリチウム系バッテリとすることができる。電力は、加熱要素に対してパルス信号で供給することができる。加熱要素に供給される電力量は、電力信号のデューティサイクル又はパルス幅を変えることによって調整できる。
【0017】
1つの実施形態において、コントローラは、加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて加熱要素の温度を監視するように構成することができる。これにより、加熱要素の温度を追加の検出ハードウェアを必要とせずに検出できる。
【0018】
加熱要素の温度は、数ミリ秒毎といった所定の時間間隔で監視することができる。これは、連続して行うこと又は電力が加熱要素に供給される期間にのみ行うことができる。
【0019】
コントローラは、リセットするように、つまり検出温度と目標温度との差が閾値以下の場合に次のユーザ吸煙を検出できる状態になるように構成することができる。コントローラは、検出温度と目標温度との差が所定時間又は測定繰り返し回数にわたって閾値未満であることを必要とするように構成することができる。
【0020】
コントローラはメモリを含むことができる。メモリは、空気流又はユーザ吸煙の検出された変化を記録するように構成することができる。メモリは、ユーザ吸煙又は各吸煙の時間のカウントを記録することができる。また、メモリは加熱要素の温度、及び各吸煙時に供給される電力を記録するように構成することができる。メモリは、必要に応じて、コントローラから入手できるあらゆるデータを記録することができる。
【0021】
このユーザ吸煙は、その後の臨床研究並びに装置のメンテナンス及びデザインで有用な場合がある。ユーザ吸煙データは、外部メモリ又は処理装置に適切なあらゆるデータ出力手段によって送ることができる。例えば、エアロゾル発生装置は、コントローラに接続された無線装置、或いはコントローラ又はメモリに接続されたメモリ又はユニバーサルシリアルバス(USB)ソケットを含むことができる。代替的に、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを適切なデータ接続部経由でメモリからバッテリ充電装置内の外部メモリに送るように構成することができる。
【0022】
装置は、電気式喫煙装置とすることができる。エアロゾル発生装置は、電気加熱器を備えた電気加熱式喫煙装置とすることができる。用語「電気加熱器」は、1つ又はそれ以上の電気式加熱要素を指す。
【0023】
電気加熱器は、単一の加熱要素を備えることができる。代替的に、電気加熱器は、2つ以上の加熱要素を備えることができる。単一の加熱要素又は複数の加熱要素は、エアロゾル形成基材を最も効率的に加熱するように適切に配置することができる。
【0024】
電気加熱要素は、電気抵抗材料を含むことができる。適切な電気抵抗材料としては、限定されるものではないが、ドープセラミックスのような半導体、導電性セラミックス(例えば、二珪化モリブデン)、炭素、グラファイト、金属、金属合金、及びセラミック材料及び金属材料から作られる複合材料を挙げることができる。このような複合材料は、ドープ又は非ドープセラミックスを含むことができる。適切なドープセラミックスの例としてはドープ炭化ケイ素を挙げることができる。適切な金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、及び白金族金属を挙げることができる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル−、コバルト−、クロム−、アルミニウム−チタニウム−ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオビウム−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、錫−、ガリウム−、マンガン、金−、及び鉄含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timetal(登録商標)、及び鉄−マンガン−アルミニウムベースの合金をベースにした超合金を挙げることができる。複合材料において、随意的にエネルギ伝達の動力学及び所要の外部物理化学的特性に基づいて、電気抵抗材料は、絶縁材料に埋め込むこと、封入すること、又はそれでコーティングすること、又はその逆とすることができる。セラミック及び/又は絶縁材料は、例えば、酸化アルミニウム又はジルコニア酸化物(ZrO2)を含むことができる。代替的に、電気加熱器は、赤外線加熱要素、光学的ソース、又は誘導加熱要素を含むことができる。
【0025】
電気加熱要素は、任意の適切な形態とすることができる。例えば、電気加熱要素は、加熱ブレードの形態とすることができる。代替的に、電気加熱要素は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基材、又は電気抵抗材料の管体の形態とすることができる。代替的に、すでに説明したようにエアロゾル形成基材の中心を貫通する1つ又はそれ以上の加熱ニードル又はロッドとすることができる。代替的に、電気加熱要素は、円板型(端部)加熱器、又は円板型加熱器を加熱ニードル又はロッドに組み合わせたものとすることができる。別の例として、例えば、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、白金、金、銀、タングステン、又は合金ワイヤである加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートを含む。随意的に、加熱要素は、硬質担体材料上に堆積させることができる。このような1つの実施形態において、電気抵抗加熱要素は、温度と抵抗率との間で所定の関連性を有する金属を用いて形成することができる。このような例示的な装置において、セラミック材料のような適切な絶縁材料上に金属のトラックを形成し、次にガラスのような他の絶縁材料でサンドイッチすることができる。このようにして形成された加熱器は、作動時に加熱器を加熱すると共に温度を監視するために使用することができる。
【0026】
電気加熱要素は、吸熱及び蓄熱して、後で経時的に放熱してエアロゾル形成基材を加熱することができる材料を備える、ヒートシンク又はヒートリザーバを備えることができる。ヒートシンクは、好適な金属又はセラミック材料等の何らかの好適な材料から形成することができる。1つの実施形態において、材料は、高い熱容量を有する(顕熱蓄熱材料)か、又は吸熱後に高温相変化のような可逆プロセスによって放熱することができる材料であることが好ましい。好適な顕熱蓄熱材料には、シルカゲル、アルミナ、炭素、ガラスマット、ガラス繊維、無機物、及びアルミニウム、銀、もしくは鉛等の金属又は合金、並びに紙などのセルロース材料が挙げられる。可逆的相変化によって放熱する他の好適な材料には、パラフィン、酢酸ナトリウム、ナフタレン、ワックス、ポリエチレンオキシド、金属、金属塩、共晶塩の混合物、又は合金が挙げられる。
【0027】
ヒートシンク又はヒートリザーバは、エアロゾル形成基材と直接接触して、蓄熱を直接エアロゾル形成基材に伝達できるように配置することができる。代替的に、ヒートシンク又はヒートリザーバに貯えられた熱は、金属管体のような熱伝導体によってエアロゾル形成基材に伝達することができる。
【0028】
電気加熱要素は、エアロゾル形成基材を熱伝導で加熱することができる。電気加熱要素は、少なくとも部分的に基材、又は基材が堆積された担体に接触することができる。代替的に、電気加熱要素からの熱は、熱伝導要素によって基材に伝達することができる。
【0029】
代替的に、電気加熱器は、使用時に電気加熱式喫煙システムを通って引き込まれる流入周囲空気に熱を伝達することができ、さらに加熱された空気は対流によってエアロゾル形成基材を加熱することができる。周囲空気は、エアロゾル形成基材を通過する前に加熱することができる。
【0030】
1つの実施形態において、エアロゾル形成基材からエアロゾルを生成するために、電気加熱器に対して該電気加熱器の1つ又は複数の加熱要素が約250℃から440℃の間の温度に達するまで電力が供給される。約250℃から440℃の間の温度に達するように1つ又は複数の加熱要素の加熱を制御するために、任意の適切な温度センサ及び制御回路を用いることができ、1つ又はそれ以上の追加の加熱器の使用を含む。このことは、タバコ及びシガレットラッパーの燃焼温度が800℃に達する従来のシガレットとは対照的である。
【0031】
エアロゾル形成基材は、喫煙物品に含めることができる。作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、完全にエアロゾル発生装置内に収容される。この場合、ユーザは、エアロゾル発生装置のマウスピース上で吸煙することができる。マウスピースは、エアロゾル発生物品又はエアロゾル発生装置が発生するエアロゾルを直接ユーザの口腔内へ吸入するためにユーザの口腔内に入れられる、エアロゾル発生装置の任意の部分とすることができる。エアロゾルは、マウスピースを通過してユーザの口腔内に運ばれる。代替的に、作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、エアロゾル発生装置内に部分的に収容することができる。この場合、ユーザは、喫煙物品のマウスピースで直接吸煙することができる。
【0032】
喫煙物品は、ほぼ円筒形とすることができる。喫煙物品は、ほぼ細長い形状とすることができる。喫煙物品は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ円筒形とすることができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ細長い形状とすることができる。また、エアロゾル形成基材は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置のスライド容器内に収容することができ、エアロゾル形成基材の全長が、エアロゾル発生装置内の空気流の方向にほぼ平行となっている。
【0033】
喫煙物品の全長は、約30mmから約100mmとすることができる。喫煙物品の外径は、約5mmから約12mmとすることができる。喫煙物品は、フィルタプラグを備えることができる。フィルタプラグは、喫煙物品の下流端に設けることができる。フィルタプラグは、セルロースアセテートフィルタプラグとすることができる。1つの実施形態において、フィルタプラグの長さは、約7mmであるが、約5mmから約10mmの長さをもつことができる。
【0034】
1つの実施形態において、喫煙物品の全長は約45mmである。喫煙物品の外径は、約7.2mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の長さは、約10mmとすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材の長さは、約12mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の外径は、約5mmから約12mmである。喫煙物品は、外側紙ラッパーを含むことができる。さらに、喫煙物品は、エアロゾル形成基材とフィルタプラグとの間に離隔距離を含むことができる。離隔距離は、約18mmとすることができるが、約5mmから約25mmの範囲とすることができる。
【0035】
エアロゾル形成基材は、固形のエアロゾル形成基材とすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、固形及び液体成分を含むことができる。エアロゾル形成基材は、加熱時に基材から放出された揮発性タバコ香味化合物を含有する、タバコ含有材料を含むことができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、非タバコ材料を含むことができる。エアロゾル形成基材は、高濃度で安定したエアロゾルの生成を助長するエアロゾル生成物をさらに含むことができる。適切なエアロゾル生成物の例は、グリセリン及びプロピレングリコールである。
【0036】
エアロゾル形成基材が固形エアロゾル形成基材である場合、固形エアロゾル形成基材は、例えば、1つ又はそれ以上の、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートを含むことができ、これらは1つ又はそれ以上のハーブ葉、タバコ葉、タバコ茎の断片、再構成タバコ、均質化タバコ、押し出しタバコ、及び膨張タバコを含むことができる。固形エアロゾル形成基材は、容器に入っていない形態とすること、又は適切な容器又はカートリッジで提供することができる。随意的に、固形エアロゾル形成基材は、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むことができ、基材の加熱時に放出されることになる。また、固形エアロゾル形成基材は、例えば、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むカプセルを有することができ、このカプセルは、固形エアロゾル形成基材の加熱時に溶融する。
【0037】
本明細書で用いる場合、均質化タバコは、凝集粒子状タバコで形成された材料を指す。均質化タバコは、シートの形態とすることができる。均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は、乾燥重量ベースで5%よりも多い。代替的に、均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は、乾燥重量ベースで5%から30%の間とすることができる。均質化タバコ材料シートは、タバコ葉身及びタバコ葉柄の一方又は両方を破砕又は粉砕することによって得られる凝集粒子状タバコで形成することができる。代替的に又は追加的に、均質化タバコ材料シートは、例えば、タバコの処理時、搬送時、及び配送時に生じる1つ又はそれ以上のタバコの灰、タバコの粉末、及び他の粒子状タバコ副生成物を含むことができる。均質化タバコ材料シートは、粒子状タバコの凝集を助けるために、タバコ内因性のバインダである1つ又はそれ以上の内因性バインダ、タバコ外因性のバインダである1つ又はそれ以上の外因性バインダ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。代替的に又は追加的に、限定されるものではないが、均質化タバコ材料シートは、タバコ及び非タバコ繊維、エアロゾル生成物、湿潤剤、可塑剤、香味料、増量剤、水性溶媒又は非水溶媒、及びこれらの組み合わせを含む他の添加物を含むことができる。
【0038】
特に好ましい実施形態において、エアロゾル形成基材は、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含む。本明細書で用いる場合、用語「皺寄せシート」は、複数のほぼ平行な隆起部又は皺部を有するシートを指す。好ましくは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合、ほぼ平行な隆起部又は皺部は、エアロゾル発生物品の長手方向軸に沿って又はそれに平行に延在する。これは、エアロゾル形成基材を形成するために、好都合に均質化タバコ材料の皺寄せシートのギャザー寄せを助長する。しかしながら、代替的に又は追加的に、エアロゾル発生物品内に包含する均質化タバコ材料の皺寄せシートは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合に、エアロゾル発生物品の長手方向軸線に対して鋭角又は鈍角でもって配置されるほぼ平行な複数の隆起部又は波形部を有することができることを理解されたい。特定の実施形態において、エアロゾル形成基材は、全表面上にほぼ均一に凹凸を付けた均質化タバコ材料のギャザー付きシートを含むことができる。例えば、エアロゾル形成基材は、シートの幅を横切ってほぼ均一に離間した複数のほぼ平行な隆起部又は波形部を備える、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含むことができる。
【0039】
随意的に、固形エアロゾル形成基材は、熱的に安定した担体上に設けること又はそれに組み込むことができる。担体は、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートの形態とすることができる。代替的に、担体は、その内面、外面、又は内面及び外面の両面に堆積された薄層の固形基材を有する管状担体とすることができる。このような管状担体は、例えば、紙又は紙状材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の荒いメッシュの金属スクリーン、又は有孔金属箔、又は耐熱性ポリマーマトリクスの形を成すことができる。
【0040】
固形エアロゾル形成基材は、例えば、シート、発泡体、ゲル、又はスラリーの形態で担体表面に堆積することができる。固形エアロゾル形成基材は、担体の全表面に堆積すること、又は代替的に使用時に不均一な香味送出をもたらすために所定のパターンで堆積することができる。
【0041】
前述の固形エアロゾル形成基材を参照したが、他の実施形態において当業者には他の形態のエアロゾル形成基材を利用できることは明らかである。例えば、エアロゾル形成基材は、液体エアロゾル形成基材とすることができる。液体エアロゾル形成基材を設ける場合、エアロゾル発生装置は、液体を保管する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基材は、容器内に保管することができる。代替的に又は追加的に、液体エアロゾル形成基材は、多孔性担体材料内に吸収することができる。多孔性担体材料は、何らかの適切な吸収プラグ又は吸収体で作られており、例えば、発泡金属又はプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維、又はセラミックである。液体エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置の使用前に多孔性担体材内に保持すること、又は代替的に、液体エアロゾル形成基材材料は、使用中又は直前に多孔性担体材料内に放出することができる。例えば、液体エアロゾル形成基材は、カプセル内に設けることができる。カプセルの殻は、加熱されると溶けて液体エアロゾル形成基材を多孔性担体材料内に放出することが好ましい。随意的に、カプセルは、液体エアロゾル形成基材と一緒に固形エアロゾル形成基材を含むことができる。
【0042】
代替的に、担体は、タバコ成分が組み込まれた不織布又は繊維束とすることができる。不織布又は繊維束は、例えば、炭素繊維、天然セルロース繊維、又はセルロース誘導体繊維を含むことができる。
【0043】
エアロゾル発生装置は空気入口を備えることができる。さらに、エアロゾル発生装置は空気出口を備えることができる。さらに、エアロゾル発生装置は、所望の特性を有するエアロゾルを形成可能とするための凝縮チャンバを備えることができる。
【0044】
アロゾル発生装置は、ユーザが片手の指の間に楽に保持することできる、手持ち型エアロゾル発生装置であることが望ましい。エアロゾル発生装置は、ほぼ円筒形とすることができる。エアロゾル発生装置は、多角形横断面を有し、一面には突出ボタンが形成されている。この実施形態において、エアロゾル発生装置の外径は、平坦面から反対側の平坦面まで測定した場合、約12.7mmから約13.65mmの間、縁部から反対側の縁部まで(即ち、エアロゾル発生装置の片側の2つの表面の交差部から他方側の対応する交差部まで)測定した場合、約13.4mmから約14.2mmの間、及び底部の頂部から反対側の底部平坦面まで測定した場合、約14.2mmから約15mmの間とすることができる。エアロゾル発生装置の長さは、約70mmから約120mmの間とすることができる。
【0045】
本明細書の別の態様によれば、電気加熱式エアロゾル発生装置を通過するユーザ吸入を検出するための方法が提供され、装置は、加熱要素と該加熱要素に電力を供給するための電力源とを備える、該方法は、電力源から加熱要素に供給される電力を制御して加熱要素を目標温度に維持する段階と、加熱要素の温度の変化又は加熱要素に供給される電力の変化を監視してユーザ吸入を示す、加熱要素を通過する空気流量の変化を検出する段階と、を含む。
【0046】
監視段階は、加熱要素の温度と目標温度との差を監視してユーザ吸入を示す、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する段階を備えることができる。
【0047】
本方法は、ユーザ吸入を示す、加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合に、目標温度力を調整する段階をさらに含むことができる。説明したように、空気流が増えるとより多くの酸素が基材に接触する状態になる。
【0048】
本明細書の別の態様によれば、コンピュータ又は他の適切な処理装置で実行される場合、上述した別の態様による方法を実行するコンピュータプログラムが提供される。本明細書は、プラグラマブルコントローラ並びに他の所要のハードウェア要素を有するエアロゾル発生装置で作動するのに適したソフトウェア物品として実装することができる実施形態を含む。
【0049】
各実施形態は、以下に添付図面を参照して例示的に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】1つの実施形態によるエアロゾル発生装置の基本的な要素を示す概略図である。
図2】1つの実施形態の制御要素を示す概略図である。
図3】他の実施形態によるユーザ吸煙時の加熱器の温度変化及び供給電力を示すグラフである。
図4】さらに他の実施形態によるユーザ吸煙が行われたか否かを判定する制御シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1には、1つの実施形態のエアロゾル発生装置100の内部が簡易的に示されている。詳細には、エアロゾル発生装置100の各構成要素は、縮尺通りには示されていない。図1を単純化するために、本明細書で説明する実施形態の理解に無関係な構成要素は省略されている。
【0052】
エアロゾル発生装置100は、ハウジング10及び例えばシガレットであるエアロゾル形成基材2を備える。エアロゾル形成基材2は、ハウジング10内部に押し込まれて加熱要素20に熱的に近接した状態になる。エアロゾル形成基材2は、異なる温度でさまざまな揮発性化合物を放出することになる。エアロゾル形成基材2から放出されるいくつかの揮発性化合物は、加熱プロセスを通してのみ放出される。各揮発性化合物は、特有の放出温度以上で放出されることになる。エアロゾル発生装置100の最大作動温度を一部の揮発性化合物の放出温度未満に制御することによって、これらの煙成分の放出又は形成を避けることができる。
【0053】
さらに、エアロゾル発生装置100は、例えば、ハウジング10内に設けられる充電式リチウムイオンバッテリである電気エネルギ供給部40を含む。エアロゾル発生装置100は、加熱要素20、電気エネルギ供給部40、エアロゾル形成基材検出部32、及びユーザインタフェース36に接続するコントローラ30をさらに含み、ユーザインタフェース36は、ユーザに対して装置100に関する情報を伝える、例えば図形表示部又はLED表示ランプを組み合わせたものである。
【0054】
エアロゾル形成基材検出部32は、加熱要素20に熱的に近接した状態のエアロゾル形成基材2の存在及び識別情報を検出して、エアロゾル形成基材2の存在をコントローラ30に信号で伝えることができる。この基材検出部は随意的である。
【0055】
コントローラ30は、ユーザインタフェース36を制御して、例えば、バッテリ電力、温度、エアロゾル形成基材2の状態、他のメッセージ、又はこれらの組み合わせ等のシステム情報を表示するようになっている。
【0056】
さらに、コントローラ30は、加熱要素20の最大作動温度を制御する。加熱要素の温度は、専用の温度センサで検出することができる。代替的に、他の実施形態において、加熱要素の温度は、電気抵抗率を監視することによって検出することができる。ワイヤの所定長さの電気抵抗率はその温度に依存する。抵抗率ρは、温度が高くなると大きくなる。実際の抵抗率ρ特性は、加熱要素20の正確な合金成分及び幾何学的構造に応じて変化することになり、コントローラは、実験的に決定した関係性を利用することができる。従って、所定時間の抵抗率ρの知識を利用して、加熱要素20の実際の作動温度を推測することができる。
【0057】
加熱要素の抵抗はR=V/Iであり、Vは加熱要素の両端の電圧、Iは加熱要素20を通過する電流である。抵抗Rは、加熱要素20の構成並びに温度に左右され、以下の関係式で表すことができ、
R=ρ(T)*L/S 式(1)
式中、ρ(T)は温度に依存する抵抗率、Lは加熱要素20の長さ、Sは加熱要素20の断面積である。L及びSは、加熱要素20の所定の構成では一定であり測定可能である。従って、所定の加熱要素デザインに関して、Rはρ(T)に比例する。
【0058】
加熱要素の抵抗率ρ(T)は、以下の多項式で表すことができ、
ρ(T)=ρ0*(1+α1T+α22) 式(2)
式中、ρ0は基準温度T0での抵抗率、α1及びα2は多項式係数である。
【0059】
従って、加熱要素20の長さ及び断面積が分かると、加熱要素の電圧V及び電流Iを測定することによって、所定温度での抵抗R、従って抵抗率ρを決定することができる。温度は、使用する加熱要素に関する特有の抵抗率−温度の関係性のルックアップテーブルから単純に得ること、又は前述の多項式(2)の値を求めることができる。1つの実施形態において、このプロセスは、タバコに適用できる温度範囲における1つ又はそれ以上の、好ましくは2つの直線近似で、抵抗率ρ−温度曲線を表すことによって単純化することができる。このことは温度の評価を単純化するが、これは、計算資源が限られるコントローラ30に望ましいものである。
【0060】
図2は、図1の装置の制御要素を示すブロック図である。また、図2は、装置が1つ又はそれ以上の外部装置58、60に接続されていることを示す。コントローラ30は、測定ユニット50及び制御ユニット52を含む。測定ユニットは、加熱要素20の抵抗Rを決定するように構成される。測定ユニット50は、抵抗測定値を制御ユニット52に送る。次に、制御ユニット52は、トグルスイッチ54によってバッテリ40から加熱要素20への電力供給を制御する。コントローラは、マイクロプロセッサ並びに別個の電子制御回路を備えることができる。1つの実施形態において、マイクロプロセッサは、内部クロック等の標準的な機能及び他の機能を含むことができる。
【0061】
温度を制御するために、エアロゾル発生装置100の目標作動温度を選択する。この選択は、放出するはずの又は放出すべきではない揮発性化合物の放出温度に基づく。次に、この所定値を制御ユニット52に記憶する。制御ユニット52は、不揮発性メモリ56を含む。
【0062】
コントローラ30は、バッテリから加熱要素20への供給電気エネルギを制御することによって加熱要素20の加熱を制御する。コントローラ30は、エアロゾル形成基材検出部32がエアロゾル形成基材20を検出してユーザが装置を作動させた場合のみ、加熱要素20への電力供給を可能にする。スイッチ54を切替えることによって、電力はパルス信号として供給される。制御ユニット52は、この信号のパルス幅又はデューティサイクルを調節して加熱要素に供給されるエネルギ量を変更する。1つの実施形態において、デューティサイクルは60−80%に制限することができる。これにより追加の安全機能がもたらされ、基材が燃焼温度を超える温度に達するといったようなユーザが偶発的に加熱器の補償温度を上昇させるのを防止できる。
【0063】
使用時、コントローラ30は、加熱要素20の抵抗率ρを測定する。次に、コントローラ30は、加熱要素20の抵抗率を、測定した抵抗率ρをルックアップデーブルと比較することによって、実際の加熱要素の作動温度に変換する。これは、測定ユニット50内で行うこと、又は制御ユニット52が行うことができる。次のステップでは、コントローラ30は、得られた実際の作動温度を目標作動温度と比較する。代替的に、加熱プロファイルの温度値は、抵抗値に予め変換され、コントローラは温度の代わりに抵抗を調節するようになっており、これにより抵抗を温度に変換する喫煙体験時の実時間計算を回避することができる。
【0064】
実際の作動温度が目標作動温度以下の場合、制御ユニット52は、加熱要素20の実際の作動温度を上昇させるために加熱要素20に追加の電気エネルギを供給する。実際の作動温度が目標作動温度を超える場合、制御ユニット52は、実際の作動温度を目標作動温度に戻すために加熱要素20に供給される電気エネルギを低減する。
【0065】
制御ユニットは、単純な温度自動調節フィードバックループ又は比例、積分、微分(PID)制御技術といった何らかの適切な制御技術を実行して温度を調節することができる。
【0066】
加熱要素20の温度は、供給される電力だけに影響されるものではない。加熱要素20を通過する空気流は、加熱要素を冷却してその温度を低下させる。この冷却作用は、装置を通過する空気流の変化を検出するために利用することができる。加熱要素の温度及びその電気抵抗は、制御ユニット52が加熱要素を目標温度に戻す前に空気流が増えると低下することになる。
【0067】
図3は、図1に示すタイプのエアロゾル発生装置の使用時の加熱要素の温度及び供給電力の典型的な漸進的変化を示す。供給電力のレベルは実線60で示し、加熱要素の温度は実線62で示す。目標温度は点線64で示す。
【0068】
使用開始の初期には、加熱要素を迅速に目標温度まで上昇させるために高出力が必要である。目標温度に到達すると、加熱要素を目標温度に維持するのに必要なレベルまで供給電力を下げる。しかしながら、ユーザが基材2を吸煙する場合、空気は、加熱要素を通って吸い込まれてこれを目標温度以下に冷却する。このことは、図3に特徴部66として示されている。加熱要素20を目標温度に戻すために、供給電力には図3に特徴部68で示す対応するスパイクが与えられる。このパターンは、装置の使用中、本実施例では4回の吸煙が行われる喫煙セッション中に繰り返される。
【0069】
温度又は電力の一時的な変化、又は温度又は電力の変化速度を検出することによって、ユーザの吸煙又は他の空気流イベントを検出できる。図4は、シュミットトリガ・デバウンス法を用いた制御プロセスの実施例を示し、制御ユニット52内で用いて、吸煙が発生したときを判定するようになっている。図4のプロセスは、加熱要素の温度変化の検出に基づいている。ステップ400において、初期値0に設定された任意の状態変数を元の値の4分の3に変更する。ステップ410において、加熱要素の温度と目標温度との間の差分であるデルタ値を決定する。ステップ400及び410は、逆の順番で又は並行して実行することができる。ステップ415において、このデルタ値をデルタ閾値と比較する。デルタ値がデルタ閾値よりも大きい場合には、ステップ425に進む前に状態変数を4分の1だけ増加させる。これはステップ420に示されている。デルタ値が閾値未満の場合には、状態変数を変更せずプロセスはステップ425に進む。次に、状態変数を状態閾値と比較する。使用する状態閾値の値は、装置が吸煙状態にある時に決定されるか又は非吸煙状態にある時に決定されるかに応じて異なる。ステップ430において、制御ユニットは、装置が吸煙状態にあるか又は非吸煙状態にあるかを決定する。最初に、つまり第1回目の制御サイクルにおいて、装置は非吸煙状態にあると仮定する。
【0070】
装置が非吸煙状態にある場合、ステップ440において、状態変数をHIGH状態閾値と比較する。状態変数がHIGH状態閾値よりも大きい場合、装置が吸煙状態にあると決定する。そうでない場合、非吸煙状態のままであると決定する。いずれの場合も、プロセスは、ステップ460に進み、その後ステップ400に戻る。
【0071】
装置が吸煙状態にある場合、ステップ450において、状態変数をLOW状態閾値と比較する。状態変数がLOW状態閾値よりも小さい場合、装置が非吸煙状態にあると決定する。そうでない場合、吸煙状態のままであると決定する。いずれの場合も、プロセスは、ステップ460に進み、その後ステップ400に戻る。
【0072】
HIGH及びLOW閾値の値は、プロセスが非吸煙状態と吸煙状態との間を遷移するのに必要なサイクル数に直接影響を与える。このようにして、ユーザの吸煙に起因しないシステムの温度及びノイズの短期間の変動を吸煙と検出するのを防止できる。短期間の変動は有効に除去される。しかしながら、所要のサイクル回数は、装置が加熱要素に供給する電力を増やすことによって温度の低下を補償する前に吸煙検出過渡期が生じ得るように選択することが望ましい。代替的に、コントローラは、吸煙が生じたか否かの判定を行う間には補償プロセスを中断することができる。1つの実施例において、LOW=0.06及びHIGH=0.94であり、このことは、デルタ値がデルタ閾値よりも大きかった場合に、システムが非吸煙から吸煙に進むために、少なくとも10回の繰り返しを経験する必要があるであろうことを意味する。
【0073】
図4に示すシステムは、吸煙カウントと、コントローラがクロックを含む場合には各吸煙が生じた時間の表示と、を行うために用いることができる。また、吸煙状態及び非吸煙状態は、目標温度を動的に制御するために用いることができる。空気流が増えると、より多くの酸素が基材に接触する状態になる。これにより、所定の温度で基材が燃焼する可能性が高くなる。基材の燃焼は望ましくない。従って、吸煙状態が検出された場合、基材の燃焼可能性を低くするために目標温度を低くすることができる。次に、非吸煙状態が検出された場合には目標温度を元の値に戻すことができる。
【0074】
図4に示すプロセスは、吸煙検出プロセスの1つの実施例にすぎない。例えば、図4に示したものと類似のプロセスは、測定値としての供給電力を用いて又は温度変化率又は供給電力変化率を用いて、実行することができる。また、図4に示したものと類似のプロセスを用いることが可能であるが、別々のHIGH及びLOW閾値の代わりに単一の状態閾値のみを用いることも可能である。
【0075】
エアロゾル発生装置の動的制御で有用であるのと同様に、コントローラ30が決定した吸煙検出データ及び基材検出データは、解析目的で、例えば臨床試験又は装置メンテナンス、及び設計プロセスで有用であろう。図2は、外部装置58に対するコントローラ30の接続を示す。吸煙の回数及び時間データは、(他の取得データと一緒に)外部装置58にエクスポートすることができ、さらに装置58から他の外部処理又はデータ記憶装置60に送り込むことができる。エアロゾル発生装置は、何らかの適切なデータ出力手段を含むことができる。例えば、エアロゾル発生装置は、コントローラ30又はメモリ56に接続された無線装置、又はコントローラ30又はメモリ56に接続されたユニバーサルシリアルバス(USB)ソケットを含むことができる。代替的に、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを適切なデータ接続部経由でメモリからバッテリ充電装置の外部メモリに送るように構成することができる。バッテリ充電装置は、長期の吸煙データを記憶するために大容量メモリを備えることができ、後で適切なデータ処理装置又は通信ネットワークに接続することができる。さらに、データ並びにコントローラ30に関する命令は、コントローラ30が外部装置58に接続される場合に、例えば制御ユニット52にアップロードすることができる。
【0076】
また、追加のデータは、エアロゾル発生装置100の作動時に収集して、外部装置58に送ることができる。このようなデータは、例えば、エアロゾル発生装置の製造番号又は他の識別情報、喫煙セッションの開始時間、喫煙セッションの終了時間、及び喫煙セッションを終了する理由に関する情報を含むことができる。
【0077】
1つの実施形態において、エアロゾル発生装置100に関連する製造番号又は他の識別情報、又は追跡情報は、コントローラ30内に格納することができる。例えば、このような追跡情報はメモリ56内に記憶することができる。エアロゾル発生装置100は、充電又はデータ送信目的で常に同じ外部装置58に接続される訳ではないので、この追跡情報は、外部処理又はデータ記憶装置60にエクスポートすること、及びユーザの行動のより完全な実態を提示するために収集することができる。
【0078】
当業者であれば、喫煙セッションの開始及び終了といったエアロゾル発生装置の作動時間の情報は、本明細書に記載の方法及び装置を用いて取り込むことができることを理解できるはずである。例えば、コントローラ30又は制御ユニット52のクロック機能を用いて、喫煙セッションの開始時間を取り込んでコントローラ30に記憶することができる。同様に、加熱要素20への電力供給を停止することによってユーザ又はエアロゾル発生装置100がセッションを終了した場合に終了時間を記録することができる。この開始時間及び終了時間の正確さは、何らかのロス又は不正確さを訂正するために、より正確な時間が外部装置58によってコントローラ30にアップロードされる場合に、高めることができる。例えば、コントローラ30を外部装置58に接続する間に、装置58は、コントローラ30の内部クロック機能部に問い合わせして、受信した時間値を外部装置58もしくは1つ又はそれ以上の外部処理又はデータ記憶装置60の内部のクロックと比較して、コントローラ30に更新したクロック信号を供給する。
【0079】
また、喫煙セッション又はエアロゾル発生装置100の動作が終了する理由を、特定するか又は取り込むことができる。例えば、制御ユニット52は、喫煙セッション又は動作の終了に関する種々の理由が包含されたルックアップテーブルを有することができる。このような理由の例示的なリストを以下に提示する。
【0080】
【0081】
前記の表は、動作又は喫煙セッションが終了する可能性のある複数の例示的な理由を提示する。当業者であれば、コントローラ30が含む測定ユニット50及び制御ユニット52が提示する種々の指示を用いて、単独で、又はコントローラ30が加熱要素20の加熱を制御することに応答して記録された指示と組み合わせて、コントローラ30は、エアロゾル発生装置100の動作又は喫煙セッションが終了する理由に関するセッションコードを割り当て可能であることを理解できるはずである。前述の方法及び装置を用いて利用可能なデータから決定できる他の理由は、当業者であれば理解できるはずであり、本明細書及び本明細書に記載の例示的な実施形態の範囲又は精神から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び装置を用いて実行することができる。
【0082】
また、エアロゾル発生装置100のユーザ操作に関連する他のデータは、本明細書に説明された方法及び装置を用いて判定することができる。本明細書に記載のエアロゾル発生装置100は加熱要素20の温度を正確に制御でき、データはコントローラ30並びにコントローラ30内に設けられるユニット50及び52が収集することができるので、例えば、送出可能なエアロゾルのユーザの消費量は、正確に近似することができ、セッションの間の装置100の実際の使用に関する正確なプロファイルを取得することができる。
【0083】
1つの例示的な実施形態において、コントローラ30が取り込んだセッションデータは、ユーザによる装置100の使用をさらにもっと把握するために、管理されたセッションの間に決定したデータと比較することができる。例えば、最初に管理された環境条件の下で喫煙マシンを用いてデータを収集し、吸煙回数、吸煙容量、吸煙間隔、及び加熱要素の抵抗率等のデータを測定することによって、データベースは、例えば、実験条件の下で提供されるニコチン又は他の送出物のレベルを提示するように構成することができる。次に、このような実験データは、実際の使用時にコントローラ30が収集したデータと比較することができ、例えば、ユーザがどれだけの送出物を吸入したかに関する情報を決定するために利用される。1つの実施形態において、このような実験データを包含するデータベースは、1つ又はそれ以上の装置60に格納することができ、データの追加の比較及び処理は、1つ又はそれ以上の装置60で行うことができる。
【0084】
実際のユーザデータと実験データとを正確に比較するために追加的な環境データが必要とされる限り、制御ユニット52は、そのようなデータを提供する追加の機能性を含むことができる。例えば、制御ユニット52は、湿度センサ又は環境温度センサを含むことができ、湿度データ又は環境温度データは、外部装置58に最終的に供給されるデータの一部として組み込むことができる。また、装置の使用を解析して、実験的に決定したどのデータがユーザの行動、例えば吸入の長さ及び頻度、並びに吸入回数に最も一致するかを判定することができる。ユーザ行動に最も一致する実験データは、次に、更なる解析及び表示の基礎として用いることができる。
【0085】
当業者であれば、本明細書に記載の方法及び装置を用いて、実験データとの比較が可能でエアロゾル発生装置100のユーザ操作に関する種々の特性を正確に近似することでほぼ所望の情報を取得できることを理解できるはずである。
【0086】
前述の例示的な実施形態は限定的ではない。当業者には、前述の例示的な実施形態に鑑みて前述の例示的な実施形態と一貫性のある他の実施形態が明らかになるはずである。
【符号の説明】
【0087】
20 加熱要素
30 コントローラ
40 電気エネルギ供給部
50 測定ユニット
52 制御ユニット
56 不揮発性メモリ
58 外部装置
60 供給電力のレベル
62 加熱要素の温度
64 目標温度
100 エアロゾル発生装置
図1
図2
図3
図4