(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、ホースと散水ノズル等とをカップリングで接続したまま冬の夜間に屋外で放置すると、当該カップリング内に滞留している水がその内部で凍結することがある。この場合、水が氷となって体積が膨張する際に、カップリングに大きな応力が作用し、カップリングが損傷しうる。
【0005】
そこで、本開示は、内部に滞留した水が凍結する際に生じうる損傷を抑制することが可能なコネクタを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点に係るコネクタは、第1及び第2の通水部材を接続するためのコネクタであって、第1の通水部材が接続される第1の筒体と、第2の通水部材が接続される第2の筒体と、第2の筒体の外側に配置され、第2の通水部材寄りの第1の位置と第1の通水部材寄りの第2の位置との間で第2の筒体に対してスライド可能に構成されたスライド筒体と、第2の通水部材を第2の筒体に保持するように構成された抜け止め部材と、第2の筒体を中間する中間部材とを備え、抜け止め部材は、第2の筒体の先端部に設けられた貫通孔を通じて第2の筒体の内側へと延びる爪部を有し、スライド筒体が第1の位置にあるときは、第2の筒体の内部空間外への爪部の移動がスライド筒体によって規制され、スライド筒体が第2の位置にあるときは、第2の筒体の内部空間外への爪部の移動が可能とされ、中間部材は、第1の筒体と第2の筒体とを液密に連通し、第1及び第2の筒体に対してこれらの軸線方向に移動可能に構成された筒部と、筒部とスライド筒体との間に延び、筒部の移動をスライド筒体に伝えるように構成された伝動部とを有し、筒部のうち第2の筒体側の端面の外形面積は、筒部のうち第1の筒体側の端面の外形面積よりも大きい。
【0007】
本開示の一つの観点に係るコネクタでは、筒部のうち第2の筒体側の端面の外形面積(S1)は、筒部のうち第1の筒体側の端面の外形面積(S2)よりも大きい。コネクタ内(第1の筒体、第2の筒体、及び中間部材の筒体内)に滞留した水が凍結しはじめると、コネクタ内に水と氷の混合物が生じて体積が増加するので、筒部のうち第2の筒体側の端面が当該混合物から受ける力(F1=コネクタの内圧×S1)と、筒部のうち第1の筒体側の端面が当該混合物から受ける力(F2=コネクタの内圧×S2)との差(ΔF=F1−F2)が増大する。そのため、中間部材は第1の筒体側に移動する。中間部材は筒部の移動をスライド筒体に伝えるように構成された伝動部を有するので、中間部材が第1の筒体側に移動するのに伴い、スライド筒体も伝動部を介して第2の位置に移動される。従って、第2の筒体の内部空間外への爪部の移動が可能とされるので、第2の通水部材の第2の筒体に対する接続が解除される。その結果、コネクタ内の水が凍結して氷に変わるにつれてコネクタ内の体積が増加しても、第2の通水部材が第2の筒体の外側に押し出されるので、コネクタ内の圧力増加が生じ難い。以上より、内部に滞留した水が凍結する際に生じうる損傷を抑制することが可能となる。
【0008】
スライド筒体はその軸線方向に延びる開口部を有し、伝動部はスライド筒体と別体であり、伝動部の先端部は開口部内に配置されていてもよい。この場合、スライド筒体と、中間部材とが別々に移動する。そのため、操作者が手でスライド筒体を操作して、スライド筒体を第1の位置と第2の位置との間で移動させるときには、中間部材は移動しない。従って、操作者の手には中間部材の負荷が加わらないので、操作者がスライド筒体のみを移動させる場合に、よりスムーズにスライド筒体を操作できる。一方、コネクタ内の水が凍結しはじめ中間部材が移動する際には、伝動部の先端部が開口部と当接し、筒部の移動が伝動部及び開口部を介してスライド筒体に伝わる。そのため、内部に滞留した水が凍結する際に生じうる損傷も抑制できる。
【0009】
本開示の一つの観点に係るコネクタは、中間部材を第2の筒体側に向けて付勢する付勢部材をさらに備えていてもよい。この場合、付勢部材による付勢力を所定の大きさに設定することで、コネクタ内の水が凍結しはじめていないときに生ずる差ΔFが付勢部材による付勢力以下となると共に、コネクタ内の水が凍結しはじめたときに生ずる差ΔFが付勢部材による付勢力を超える。そのため、コネクタ内の水が凍結しはじめていないときには中間部材が移動することを抑制することができると共に、コネクタ内の水が凍結しはじめたときには中間部材が第1の筒体側へと移動できる。
【0010】
本開示の一つの観点に係るコネクタは、第2の筒体内に配置されたストップ弁をさらに備え、ストップ弁は、第2の筒体に第2の通水部材が接続されていないときに、中間部材から第2の筒体に向かう液体の流れを止めるように構成されていてもよい。この場合、第2の筒体に第2の通水部材が接続されていないときに、コネクタ内の水が不意に周囲に飛散することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るコネクタによれば、内部に滞留した水が凍結する際に生じうる損傷を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。本明細書において、「上」又は「下」の語は、図面の上方向又は下方向に対応している。
【0014】
[コネクタの構造]
コネクタ1は、
図1〜
図3に示されるように、例えば、ホース101(第1の通水部材)と、散水ノズル用継手102(第2の通水部材)とを接続する。コネクタ1は、ホース取付部材10(第1の筒体)と、ロックナット12と、抜け止め部材14と、継手取付部材16(第2の筒体)と、スライド筒体18と、抜け止め部材20と、中間部材22と、ストップ弁24とを備える。
【0015】
ホース取付部材10は、内筒部10a,10bと、フランジ部10cと、外筒部10d,10eとを有する。内筒部10a,10bは、円筒状であり、所定の方向(上下方向)に沿って延びている。内筒部10aの内径は、内筒部10bの内径よりも小さい。内筒部10aの上端は、内筒部10bの下端と一体的に設けられている。
【0016】
フランジ部10cは円環状の板である。フランジ部10cの内縁は、内筒部10a,10bの接続部分近傍に一体的に設けられている。フランジ部10cは、内筒部10a,10bの径方向外側に向けて拡がっている。
【0017】
外筒部10d,10eは、円筒状であり、所定の方向(上下方向)に沿って延びている。外筒部10dは、内筒部10aを囲むように、フランジ部10cの下面側に設けられている。外筒部10dの内周面は、内筒部10aの外周面とは離間している。外筒部10dの外周面には、雄ねじ部10fが設けられている。外筒部10eは、内筒部10bを囲むように、フランジ部10cの上面側に設けられている。外筒部10eの内周面は、内筒部10bの外周面とは離間している。外筒部10eの内周面のうち先端側の領域には、雌ねじ部10gが設けられている。
【0018】
ホース取付部材10の材質は、例えば、金属、樹脂等であってもよい。コストが低く生産性が高いという観点から、ホース取付部材10は樹脂からなっていてもよい。成型が容易であるという観点から、ホース取付部材10は熱可塑性樹脂からなっていてもよい。成形性が高いという観点から、ホース取付部材10はポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)又はポリアセタール(POM)からなっていてもよい。成形時の外観不良が少ないという観点から、ホース取付部材10はABS樹脂からなっていてもよい。
【0019】
ロックナット12は、抜け止め部材14との協働によりホース101をホース取付部材10に固定するための部材である。ロックナット12は円筒状であり、所定の方向(上下方向)に沿って延びている。ロックナット12の内周面には、雌ねじ部12aが設けられている。雌ねじ部12aが雄ねじ部10fと螺合することで、ロックナット12が外筒部10dに締結される。
【0020】
抜け止め部材14は、円筒状であり、所定の方向(上下方向)に沿って延びている。抜け止め部材14は、下側に向かうにつれて縮径している。抜け止め部材14の下端部には、内側に向かって突出する複数の突起部14aが設けられている。複数の突起部14aは、抜け止め部材14の周方向に沿って並んでいる。各突起部14aの両隣には、スリット14bが設けられている。そのため、各突起部14aは、抜け止め部材14の径方向に弾性変形可能な片持ち片にそれぞれ配置されているともいえる。
【0021】
内筒部10aと抜け止め部材14との間には、ホース101が配置されている。内筒部10aは、ホース101内に挿入されている。抜け止め部材14の各片持ち片は、ロックナット12が外筒部10dに締結される過程で内向きに変形する。その結果、ホース101は、各突起部14aによって内筒部10aに押しつけられる。
【0022】
継手取付部材16は、円筒状であり、所定の方向(上下方向)に沿って延びている。継手取付部材16は、筒部16a,16b,16cを有する。筒部16aの下端は、筒部16bの上端と一体的に設けられている。筒部16aの内径及び外形はそれぞれ、筒部16bの内径及び外形よりも小さい。そのため、筒部16a,16bの接続部分近傍には、外側段差16d及び内側段差16eが設けられている。筒部16aの内部空間は、散水ノズル用継手102のニップル102aを収容可能である。筒部16aには、少なくとも一つの貫通孔16f(本実施形態では、例えば4つの貫通孔16f)が設けられている。各貫通孔16fは、筒部16aの周方向において略等しい間隔で配置されている。
【0023】
筒部16b内には、パッキン26及び保持部材28が配置されている。パッキン26は、散水ノズル用継手102が継手取付部材16内に挿入されたときに散水ノズル用継手102と接し、散水ノズル用継手102と継手取付部材16との間からの水漏れを防止する。パッキン26は、内側段差16eに当接している。パッキン26は、基部26aと、変形部26bとを有する。基部26a及び変形部26bは共に円筒状である。変形部26bは、基部26aの内側に位置している。変形部26bは、基部26aの先端に一体的に設けられている。変形部26bは、基部26aの先端から下方に向けて延びている。変形部26bは、その径方向において弾性変形可能に構成されている。パッキン26は、例えば軟質ゴムで形成されていてもよい。保持部材28は、円筒状である。保持部材28は、パッキン26を継手取付部材16との間で挟持し、パッキン26を継手取付部材16内において保持する。
【0024】
筒部16cは、円筒状である。筒部16cは、筒部16a,16bとは別体である。筒部16cの上端部は、筒部16bの下端と嵌合している。筒部16cが筒部16bと嵌合した状態において、パッキン26及び保持部材28の上下方向における移動が筒部16a及び筒部16cによって規制されている。
【0025】
スライド筒体18は、円筒状である。スライド筒体18は、継手取付部材16の外側に配置されている。スライド筒体18は、継手取付部材16に対して上下方向にスライド可能に構成されている。具体的には、スライド筒体18は、散水ノズル用継手102寄りの第1の位置(
図1及び
図6参照)と、ホース101寄りの第2の位置(
図4及び
図5参照)との間で移動できる。
【0026】
スライド筒体18の内壁面には、内側に向けて突出する突起部18aが設けられている。突起部18aは円環状である。突起部18aは、スライド筒体18の上端寄りに位置している。スライド筒体18のうち突起部18aよりも上端寄りの上端部18bの内径は、突起部18aの内径よりも大きい。そのため、上端部18bの内部空間は、突起部18aの内部空間よりも大きい。スライド筒体18の下端近傍には、少なくとも一つの貫通孔18c(本実施形態では、例えば2つの貫通孔18c)が設けられている。各貫通孔18cは、スライド筒体18の周方向において略等しい間隔で配置されている。貫通孔18cは、上下方向(スライド筒体18の軸線方向)に沿って延びている。
【0027】
スライド筒体18の材質は、例えば、金属、樹脂等であってもよい。コストが低く生産性が高いという観点から、スライド筒体18は樹脂からなっていてもよい。成型が容易であるという観点から、スライド筒体18は熱可塑性樹脂からなっていてもよい。成形性が高いという観点から、スライド筒体18はポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)又はポリアセタール(POM)からなっていてもよい。成形時の外観不良が少ないという観点から、スライド筒体18はABS樹脂からなっていてもよい。
【0028】
筒部16bとスライド筒体18との間には、弾性部材30が配置されている。弾性部材30は、スライド筒体18を上方向(継手取付部材16の上端側)に付勢する。弾性部材30は、弾性変形可能な部材であればよい。弾性部材30としては、例えば、ばね、ゴム等が挙げられる。本実施形態では、弾性部材30として円筒状のコイルばねを用いている。弾性部材30の材質は、例えば、金属、樹脂等であってもよい。コネクタ1の使用過程で負荷方向(圧縮方向)への塑性変形が生じ難いという観点から、弾性部材30は金属からなっていてもよい。錆び難いという観点から、弾性部材30はステンレス鋼(SUS)からなっていてもよい。弾性部材30の最大反発力は3N〜35N程度であってもよい。3N以上であると、弾性部材30が十分な反発力を示すので、使用者が意図せずにスライド筒体18を押し下げるといった誤作動のおそれが少ない。35N以下であると、女性や老人など力の弱い使用者であってもスライド筒体18の操作がしやすい。弾性部材30の最大反発力の下限は、8Nであってもよいし、12Nであってもよい。弾性部材30の最大反発力の上限は、20Nであってもよい。
【0029】
抜け止め部材20は、スライド筒体18と、継手取付部材16の先端部(上端部)である筒部16aとの間に配置されている。抜け止め部材20は、基部20aと、少なくとも一つの接続部20b(本実施形態では4つの接続部20b)と、少なくとも一つの爪部20c(本実施形態では4つの爪部20c)とを有する。
【0030】
基部20aは、中心角が例えば略300°程度の円弧状である。基部20aは、スライド筒体18が第1の位置と第2の位置との間のいずれの位置にあるときでも、突起部18aと外側段差16dとで挟持されている。
【0031】
接続部20bは、平板状である。接続部20bは、基部20aから上方に向けて延びるように基部20aに一体的に設けられている。接続部20bは、基部20aの周方向において略等しい間隔で配置されている。
【0032】
爪部20cは平板状である。爪部20cは、接続部20bの先端に一体的に設けられている。爪部20cは、基部20aの内側に位置している。各爪部20cは、対応する貫通孔16f内に位置しており、対応する貫通孔16fを通じて筒部16aの内側に向けて延びている。換言すれば、各爪部20cが対応する貫通孔16f内に位置するように、抜け止め部材20が筒部16aの外側に取り付けられている。
【0033】
接続部20b及び爪部20cは、基部20aの径方向において弾性変形可能に構成されている。接続部20b及び爪部20cは、スライド筒体18が第1の位置にあるときには、突起部18aと対向している。そのため、スライド筒体18が第1の位置にあるときには、接続部20b及び爪部20cの外方への変形(移動)が突起部18aによって規制される。スライド筒体18が第1の位置にあるときには、爪部20cの先端は、筒部16aの内部空間内に位置している(
図1及び
図6参照)。このとき、爪部20cの先端は、散水ノズル用継手102のニップル102aの外周面と当接し、散水ノズル用継手102が外方に抜け出ないようニップル102aを継手取付部材16内に保持する。接続部20bの上端部及び爪部20cは、スライド筒体18が第2の位置にあるときには、上端部18bと対向している。そのため、スライド筒体18が第2の位置にあるときには、接続部20bの上端部及び爪部20cは、上端部18bに近づくように外方に向けて変形(移動)することが可能である。換言すれば、スライド筒体18が第2の位置にあるときには、爪部20cの先端は、筒部16aの内部空間外に移動することが可能である(
図4及び
図5参照)。なお、スライド筒体18が第2の位置にあるとき、少なくとも爪部20cの先端が筒部16aの内部空間外に移動することが可能であればよく、接続部20bが外方へ変形(移動)可能となっていなくてもよい。
【0034】
中間部材22は、ホース取付部材10と、継手取付部材16との間に配置されている。中間部材22は、筒部22aと、伝動部22bとを有する。筒部22aは、円筒状を呈する。筒部22aの下端部は、内筒部10b内に挿入されており、内筒部10b内において上下方向(内筒部10bの軸線方向)に移動可能である。筒部22aの下端部と内筒部10bとの間には、OリングOR1が配置されており、両者の間が液密に保たれている。筒部22aの上端部は、筒部16c内に挿通されており、筒部16c内において上下方向(筒部16cの軸線方向)に移動可能である。筒部22aの上端部と内筒部10bとの間には、OリングOR2が配置されており、両者の間が液密に保たれている。そのため、中間部材22は、ホース取付部材10と継手取付部材16とを液密に連通している。従って、筒部16a(継手取付部材16)に散水ノズル用継手102のニップル102aが取り付けられている場合には、液体(水)は、内筒部10a、内筒部10b、筒部22a、筒部16c、及び筒部16b内を流れる。
【0035】
筒部22aのうち継手取付部材16側(上端部側)の端面の外形面積S1は、筒部22aのうちホース取付部材10側(下端部側)の端面の外形面積S2よりも大きい。そのため、筒部22aのうち継手取付部材16側(上端部側)は、コネクタ1の内圧に外形面積S1を乗じた大きさの力F1(F1=コネクタ1の内圧×外形面積S1)を受ける。筒部22aのうちホース取付部材10側(下端部側)の端面は、コネクタ1の内圧に外形面積S2を乗じた大きさの力F2(F2=コネクタ1の内圧×外形面積S2)を受ける。従って、外形面積S1,S2の大小関係から、中間部材22には、力F1,F2の差ΔF(ΔF=F1−F2=コネクタ1の内圧×(S1−S2))で表わされる大きさの力が下向きに付与される。コネクタ1の内圧はコネクタ1内の水が凍結しはじめることにより極めて大きく上昇するので、コネクタ1内の水が凍結開始する前後においてΔFが大きく変化する。すなわち、コネクタ1内の水が凍結開始する前におけるΔFをΔFwaterとし、コネクタ1内の水が凍結開始した後におけるΔFをΔFiceとすると、ΔFice>>ΔFwaterと表わすことができる。このことから、後述する弾性部材32等が中間部材22を上向きに付勢する力をFupとしたときに、ΔFwater<Fup<ΔFiceの関係を満たすように外形面積S1,S2の差ΔS(ΔS=S1−S2)又は弾性部材32等による付勢力を設定してもよい。外形面積S2は、例えば、外形面積S1の0.9倍程度であってもよい。この場合、コネクタ1内の水が凍結しはじめていないときには中間部材22が移動することを抑制することができると共に、コネクタ1内の水が凍結しはじめたときには中間部材22がホース取付部材10側(下側)へと移動できるようになる。なお、本明細書において「外形面積」とは、筒部22aの各端面の外周縁で囲まれる面積をいうものとする。従って、筒部22aの穴部分も筒の穴も外形面積に含まれている。
【0036】
伝動部22bは、筒部22aとスライド筒体18との間において延びている。伝動部22bは、フランジ部22cと、少なくとも一つの腕部22d(本実施形態では一対の腕部22d)とを有する。フランジ部22cは、円環状である。フランジ部22cの内周縁は、筒部22aの外周面のうち上下方向における中間部分に一体的に設けられている。フランジ部22cは、筒部22aの径方向外側に向けて拡がっている。一対の腕部22dは、フランジ部22cの周方向において略等しい間隔で配置されており、筒部22aの軸線に関して対向している。腕部22dは、L字状の平板である。腕部22dの下端(基端)は、フランジ部22cの外縁に一体的に設けられている。腕部22dの上端部(先端部)は、外側に向けて延びるように屈曲されている。腕部22dと筒部22aの上部との間には、筒部16cの下部が位置している。各腕部22dの先端は、それぞれ対応する貫通孔18c内に位置している。スライド筒体18が第1の位置にあるときには、各腕部22dの先端は、それぞれ対応する貫通孔18cの下端側に位置している。
【0037】
中間部材22の材質は、例えば、金属、樹脂、ゴム等であってもよい。強度が比較的高いという観点から、中間部材22は樹脂又は金属からなっていてもよい。コストが低く生産性が高いという観点から、中間部材22は樹脂からなっていてもよい。成型が容易であるという観点から、中間部材22は熱可塑性樹脂からなっていてもよい。成形性が高いという観点から、中間部材22はポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)又はポリアセタール(POM)からなっていてもよい。コストが低く必要十分な強度を発揮するという観点から、中間部材22はポリプロピレンからなっていてもよい。
【0038】
筒部22aの下端部及び内筒部10bと外筒部10eとの間には、弾性部材32(付勢部材)が配置されている。弾性部材32は、中間部材22を上方向(継手取付部材16側)に付勢する。弾性部材32は、弾性変形可能な部材であればよい。弾性部材32としては、例えば、ばね、ゴム等が挙げられる。本実施形態では、弾性部材32として円筒状のコイルばねを用いている。弾性部材30の材質は、例えば、金属、樹脂等であってもよい。コネクタ1の使用過程で負荷方向(圧縮方向)への塑性変形が生じ難いという観点から、弾性部材32は金属からなっていてもよい。錆び難いという観点から、弾性部材32はステンレス鋼(SUS)からなっていてもよい。弾性部材32の初期反発力は、12N(水圧が0.5MPaのとき)〜47N(水圧が2.0MPaのとき)であってもよい。12N(水圧が0.5MPaのとき)以上であると、通常散水時の水圧において中間部材22が第1の位置まで移動し難い。47N(水圧が2.0MPaのとき)以下であると、コネクタ1に損傷が生ずる前に中間部材22が動作しうる。弾性部材32の初期反発力の下限値は、18N(水圧が0.75MPaのとき)であってもよい。弾性部材32の初期反発力の上限値は、35N(水圧が1.5MPaのとき)であってもよい。
【0039】
ストップ弁24は、散水ノズル用継手102と中間部材22との間に位置するように、継手取付部材16内に配置されている。ストップ弁24は、継手取付部材16内において上下方向(継手取付部材16の軸線方向)に移動可能である。ストップ弁24は、本体部24aと、フランジ部24bとを有する。本体部24aは、断面十字形状の棒状体である。本体部24aは、上下方向(継手取付部材16の軸線方向)に沿って延びている。フランジ部24bは、円環状である。フランジ部24bの内周縁は、本体部24aの外周面のうち上下方向における中間部分に一体的に設けられている。フランジ部24bの外周面には、OリングOR3が取り付けられている。
【0040】
[コネクタの動作]
次に、コネクタ1の動作について説明する。
【0041】
(1)スライド筒体の移動
操作者が手でスライド筒体18を把持し、弾性部材30の付勢力に抗する大きさの力でスライド筒体18のみを下方に押し下げると、
図4に示されるように、スライド筒体18が第1の位置から第2の位置に移動する。これにより、爪部20cの先端は、筒部16aの内部空間外に移動することが可能となる。この場合、散水ノズル用継手102のニップル102aが筒部16aに挿入されたり、筒部16aから引き出されたりする際に、爪部20cの先端がニップル102aの通過を阻害しなくなる。従って、継手取付部材16に対して、散水ノズル用継手102を取り付け及び取り外すことが可能となる。
【0042】
スライド筒体18と中間部材22(伝動部22b)とは別体であり、各腕部22dの先端がそれぞれ対応する貫通孔18c内に位置しているので、スライド筒体18が第1の位置から第2の位置に移動する際にはスライド筒体18の移動が腕部22dに伝動せず、中間部材22は移動しない。従って、操作者の手には中間部材22の負荷が加わらないので、操作者がスライド筒体18のみを移動させる場合に、よりスムーズにスライド筒体18を操作できる。スライド筒体18が第2の位置にあるときには、各腕部22dの先端は、それぞれ対応する貫通孔18cの上端側に位置している。
【0043】
(2)スライド筒体及び中間部材の移動
コネクタ1内に滞留している水が凍結を開始すると、コネクタ1内の水が徐々に氷となって体積が膨張するので、コネクタ1の内圧が上昇する。そのため、ΔFが極めて大きくなり、
図5に示されるように、中間部材22がホース取付部材10側(下側)に向けて移動する。この際、各腕部22dの先端がそれぞれ対応する貫通孔18cの下端と当接するので、中間部材22の下側への移動がスライド筒体18に伝わり、スライド筒体18も下側に移動する。これにより、爪部20cの先端は、筒部16aの内部空間外に移動することが可能となる。この場合も、操作者が手でスライド筒体18のみを下方に押し下げたときと同様に、散水ノズル用継手102のニップル102aが筒部16aに出入り自在となる。従って、水が氷となって体積が増加しても、その増加分に応じてニップル102aが氷によって筒部16aから押し出されるので、コネクタ1内の圧力増加が生じがたい。その結果、内部に滞留した水が凍結する際にコネクタ1に生じうる損傷を抑制することが可能となる。
【0044】
(3)ストップ弁の移動
継手取付部材16から散水ノズル用継手102が取り外されている状態で、ホース101側からコネクタ1内に水が供給されると、
図6に示されるように、供給された水の圧力により、ストップ弁24が継手取付部材16の先端側に押し出される。このとき、フランジ部24bのOリングOR3が保持部材28に当接する。これにより、中間部材22から継手取付部材16に向かう水の流れ(保持部材28よりも下流側への水の流れ)が、ストップ弁24(OリングOR3)によって止められる。そのため、ホース101側からコネクタ1内への水の供給が継続している場合に、散水ノズル用継手102が継手取付部材16から外れても、水がコネクタ1から不意に周囲に飛散して周囲が水濡れ等することを抑制できる。
【0045】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、上記実施形態ではスライド筒体18には貫通孔18cが設けられていたが、これに代わり、貫通していない開口部がスライド筒体18に設けられていてもよい。この場合、当該開口部は、貫通孔18cと同様に、上下方向(スライド筒体18の軸線方向)に沿って延びている。当該開口部内には、腕部22dの先端が位置している。
【0046】
上記実施形態ではスライド筒体18と伝動部22bとが別体であったが、これらが一体的に構成されていてもよい。
【0047】
上記実施形態では伝動部22bは一対の腕部22dを有していたが、伝動部22bは少なくとも一つの腕部22dを有していればよい。特に、伝動部22bが一つの腕部22dを有する場合や、上記実施形態のように筒部22aの軸線に関して対向する一対の腕部22dを有する場合には、金型に樹脂を充填して中間部材22を成形するときに、腕部22dを金型から取り出しやすくなる。
【0048】
上記実施形態ではコネクタ1がホース101と散水ノズル用継手102を接続していたが、この2つの通水部材に限らず、コネクタ1は種々の通水部材を接続することができる。