特許第6062618号(P6062618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062618
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】導光体および照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20170106BHJP
   G02B 6/00 20060101ALN20170106BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALN20170106BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170106BHJP
【FI】
   F21S2/00 413
   !G02B6/00 331
   !G02F1/13357
   F21Y101:02
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-49361(P2011-49361)
(22)【出願日】2011年3月7日
(65)【公開番号】特開2012-186081(P2012-186081A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年2月7日
【審判番号】不服2015-15888(P2015-15888/J1)
【審判請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】日東光学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591061046
【氏名又は名称】小池 康博
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史紀
(72)【発明者】
【氏名】大角 和正
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 和田 雄二
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−250974(JP,A)
【文献】 特開2008−027886(JP,A)
【文献】 特開平07−169311(JP,A)
【文献】 特開2010−097088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00,F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射部と、
前記光入射部から入射した光を導光する導光部と、
を有し、
前記導光部は、透明樹脂に光散乱粒子が含有される光散乱導光部であり、
前記導光部を挟んで、前記導光部内の光を反射する第1の反射面と、前記導光部内の光を出射する光出射面とが配置され、
前記第1の反射面と前記光出射面との間隔は、前記光入射部からの距離が長くなるほど狭くなり、
前記光出射面には、前記導光部の側に反射面を向ける複数の反射面からなる第2の反射面が設けられ、
前記第2の反射面は、前記光入射部からの距離が長くなるほど、前記複数の反射面が設けられる密度が低くなる、
ことを特徴とする導光体。
【請求項2】
請求項1に記載の導光体であって、
前記導光部の前記第1の反射面と前記光出射面とを繋ぐ端部に前記導光部の側に反射面を向けた第3の反射面を備える、
ことを特徴とする導光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導光体であって、
前記光入射部に対して前記導光部を挟んだ位置には、反射面を前記導光部の側に向ける第4の反射面を備える、
ことを特徴とする導光体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の導光体であって、
前記複数の反射面は、互いに同心円に形成されている、
ことを特徴とする導光体。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の導光体であって、
前記複数の反射面は、複数の点状に形成されている、
ことを特徴とする導光体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の導光体と、
前記導光体の前記光入射部に配置される光源と、
を備えることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光体および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえば、液晶表示装置のバックライトにおいては、表示画像を鮮明にするため、表示される画像のエリア毎に光量を制御することが行われる。そのため、所定のエリアのみを均一な照度で照明することが要求されることがある。
たとえば、特許文献1においては、点光源から出射した光をハウジング内で拡散させ、この拡散された光を、光導通反射部材を通過させることで、面光源から出射する照明光である面照明光に近い照明光を出射することができる照明装置が開示されている。かかる構成の照明装置によれば、点光源から出射した光を、面照明光に近い照明光でありながら指向性を持たせたとして出射させることができる。そのため照明エリア(被照明範囲)を限定することができ、加えて、この照明エリア内の照度の均一化を図ることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−282852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、面照明光に一層の指向性を持たせることで、所定のエリアのみを照明し易くなり、また、照明エリア内の照度をより均一化することで、たとえば、液晶表示装置においては、より鮮明な画像を表示することが可能となる。
【0005】
そこで、本発明は、面照明光でありながら一層の指向性を持たせることができると共に、照明エリア内の照度の一層の均一化を図ることができる導光体と照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の導光体は、光入射部と、光入射部から入射した光を導光する導光部とを有し、導光部は、透明樹脂に光散乱粒子が含有される光散乱導光部であり、導光部を挟んで、導光部内の光を反射する第1の反射面と、導光部内の光を出射する光出射面とが配置され、第1の反射面と光出射面との間隔は、光入射部からの距離が長くなるほど狭くなり、光出射面には、導光部の側に反射面を向ける複数の反射面からなる第2の反射面が設けられ、第2の反射面は、光入射部からの距離が長くなるほど、複数の反射面が設けられる密度が低くなることとする。
【0007】
また、導光体は、導光部の第1の反射面と光出射面とを繋ぐ端部に導光部の側に反射面を向けた第3の反射面を備えることが好ましい。
【0008】
また、導光体は、光入射部に対して導光部を挟んだ位置には、反射面を導光部の側に向ける第4の反射面を備えることが好ましい。
【0009】
また、導光体は、複数の反射面が、互いに同心円に形成されていることが好ましい。
【0010】
また、導光体は、複数の反射面が、複数の点状に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の照明装置は、上述のいずれかの導光体と導光体の光入射部に配置される光源とを備えることとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、面照明光でありながら一層の指向性を持たせることができると共に、照明エリア内の照度の一層の均一化を図ることができる導光体と照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る導光体を備える照明装置の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す照明装置を光の出射方向から見た平面図である。
図3】上段(A)は、図1に示す照明装置の側面図であり、下段(B)は底面図である。
図4図1に示す切断線A−Aにおける照明装置の断面図である。
図5】光線が散乱粒子により散乱される状態を模式的に示す図である。
図6】LEDから出射した光の光路の例を示す図である。
図7】照明装置を縦横に2台ずつ並べ、全台を点灯したときの照度分布を示す図である。
図8】照明装置を縦横に2台ずつ並べ、1台を点灯したときの照度分布を示す図である。
図9】照明装置を縦横に2台ずつ並べ、3台を点灯したときの照度分布を示す図である。
図10】照明装置を縦横に2台ずつ並べ、全台を点灯したときの配光分布を示す図である。
図11】第2反射面の他の例を示す図である。
図12】導光部中の光散乱粒子となるシリコーン粒子の散乱原理を示す図で、単一真球粒子による散乱光強度の角度分布(Α、Θ)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る導光体1とこの導光体1を用いる照明装置2の構成について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(照明装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る導光体1を備える照明装置2の構成を示す斜視図である。図2は、照明装置2を光の出射方向から見た平面図である。図3の上段(A)は、図1に示す照明装置2の側面図であり、下段(B)は底面図である。図4は、図1に示す切断線A−Aにおける照明装置2の断面図である。以下の説明では、図に示す矢印F方向を、照明装置2の光の出射方向である前方とし、その反対方向を後方として説明する。また、光軸Xに直交する方向を側方とすると共に、光軸Xに近づく方向を内方向(内側)とし、そして、光軸Xから離れる方向を外方向(外側)として説明を行うこととする。
【0016】
照明装置2は、導光体1と、光源としてのLED3(図4参照)とを有する。導光体1は、光入射部としての凹部4(図4等参照)と、この凹部4から入射するLED3から出射した光を導光する導光部5とを有している。導光部5は、たとえば、透明なポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と略記する。)からなる透明樹脂に後述する光散乱粒子が含有された光散乱導光部として形成されている。なお、透明樹脂としては、PMMAの他に、PE(ポリエチレン Polyethylene)、PP(ポリプロピレン Polypropylene)、PC(ポリカーボネート Polycarbonate)等の樹脂を用いることができる。導光部5は、扁平した略四角錐の形状を呈し、四角錐の頂部に当たる部分には、後方から前方に凹む形状の凹部4が形成されている。また、略四角錐の形状の底面5Aに当たる部分は光出射面6として構成され、側面5Bに当たる部分には第1の反射面(第1反射面)7が設けられている。つまり、光出射面6と第1反射面7とは導光部5を挟んで配置されている。光出射面6には、導光部5の側に反射面を向ける複数の反射面8Aからなる第2の反射面(第2反射面)8が設けられている。
【0017】
(凹部4)
凹部4は、後方から前方に略半球状に凹む形状を呈している。LED3の光出射部分は、全て凹部4内に収納されている。したがって、LED3から出射した光のほとんどを、凹部4の内面に入射させることができる。LED3は基板9に実装され、図以外の駆動回路および電源により発光することができる。
【0018】
(第1反射面7)
第1反射面7は、第1反射面7に入射した導光部5内の光を、導光部5内に反射させる反射面である。第1反射面7は、導光部5の側面5Bに、たとえば、アルミニウム等の金属の蒸着やメッキ処理を施したり、あるいは反射材を貼付することで形成することができる。また、側面5Bに直接反射面を形成する替わりに、側面5Bは光を透過可能にしておき、側面5Bの後方に第1反射面7としての反射鏡を配置する構成としてもよい。底面5Aは、光軸Xに対して直交する面に沿う面であるのに対し、側面5Bは、外方向が前方に傾斜している。すなわち、第1反射面7と光出射面6との間隔は、凹部4すなわち光軸Xからの距離が長くなるほど狭くなっている。
【0019】
(第2反射面8)
第2反射面8は、第2反射面8に入射した導光部5内の光を、導光部5内に反射させる反射面である。第2反射面8は、光軸Xを中心に互いに同心円状に形成される複数の反射面8Aから形成される。反射面8Aは、隣接する反射面8Aの間隔8Bが、全体として、内側から外側に向かうほど広くなり、また、反射面8Aの直径方向の幅8Cが、全体として、内側から外側に向かうほど狭くなる。つまり、第2反射面8は、凹部4(光軸X)からの距離が長くなるほど、複数の反射面8Aが設けられる密度が低くなるように形成されている。光出射面6のうち、第2反射面8が形成されていない部分、すなわち、隣接する反射面8Aと反射面8Aとの間は、導光部5内の光を導光部5の前方側に出射することができる光出射部10として形成されている。
【0020】
なお、第2反射面8は、導光部5の光出射面6に、たとえば、アルミニウム等の金属の蒸着やメッキ処理を施したり、あるいは反射材を貼付することで形成することができる。また、光出射面6に直接反射面を形成する替わりに、光出射面6の前方に第2反射面8としての反射鏡を配置する構成としてもよい。
【0021】
(第3反射面12)
第1反射面7と光出射面6とを繋ぐ部分は端面5Cに形成されている。端面5Cには、端面5Cに入射した導光部5内の光を、導光部5内に反射させる第3の反射面(第3反射面)12が形成されている。第3反射面12は、端面5Cに、たとえば、アルミニウム等の金属の蒸着やメッキ処理を施したり、あるいは反射材を貼付することで形成することができる。端面5Cに直接反射面を形成する替わりに、端面5Cの外側に第3反射面12としての反射鏡を配置する構成としてもよい。
【0022】
(第4反射面14)
凹部4に対して導光部5を挟んだ位置には、前方から後方に向けて円弧面状(球の一部の形状)に凹む凹面13が形成されている。凹面13には、凹面13に入射した導光部5内の光を、導光部5内に反射させる第4の反射面(第4反射面)14)が形成されている。第4反射面14は、凹面13に、たとえば、アルミニウム等の金属の蒸着やメッキ処理を施したり、あるいは反射材を貼付することで形成することができる。第4反射面14は、導光部5内から見たときに後方に突出する凸面鏡の形状となっている。凹面13に直接反射面を形成する替わりに、凹面13の前方に第4反射面14としての反射鏡を配置する構成としてもよい。
【0023】
導光部5には、光散乱手段として、光を多重散乱させることができる球形の光散乱粒子が、体積的に一様に多数含有されている。すなわち、導光部5は、散乱能が与えられた光散乱導光部として構成されている。したがって、導光部5の内部に光が入射すると、その光は光散乱粒子によって散乱する。つまり、図5に例示的に示す光線Rのように、1本の光線が、光散乱粒子により様々な方向に散乱させられる。光散乱粒子は、たとえば、以下に説明するシリコーン粒子により形成することができる。なお、光散乱粒子は、シリカにより形成することができる。
【0024】
ここで、光散乱粒子(シリコーン粒子)の理論的な基礎を与えるMie散乱理論について説明する。Mie散乱理論は、一様な屈折率を有する媒体(マトリックス)中に該媒体と異なる屈折率を有する球形粒子(光散乱粒子)が存在するケースについてマックスウェルの電磁方程式の解を求めたものである。光散乱粒子に相当する光散乱粒子によって散乱した散乱光の角度に依存した強度分布I(Α、Θ)は下記(1)式で表される。Αは、光散乱粒子の光学的大きさを示すサイズパラメータであり、マトリックス中での光の波長λで規格化された球形粒子(光散乱粒子)の半径rに相当する量である。角度Θは散乱角で、入射光の進行方向と同一方向をΘ=180°にとる。
【0025】
また、(1)式中のi、iは(4)式で表される。そして、(2)〜(4)式中の下添字ν付のaおよびbは(5)式で表される。上添字1および下添字νを付したP(cosΘ)は、Legendreの多項式、下添字ν付のa、bは1次、2次のRecatti−Bessel関数Ψ、ζ(ただし、「*」は下添字νを意味する。)とその導関数とからなる。mはマトリックスを基準にした光散乱粒子の相対屈折率で、m=nscatter/nmatrixである。
【0026】
【数1】
【0027】
図12は、上記(1)〜(5)式に基づいて、単一真球粒子による強度分布I(Α、Θ)を示すグラフである。この図12では、原点Gの位置に光散乱粒子としての真球粒子があり、図12における下方から入射光が入射した場合の散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)を示している。そして、原点Gから各曲線までの距離が、それぞれの散乱角方向の散乱光強度である。ひとつの曲線はΑが1.7であるときの散乱光強度、別の曲線はΑが11.5であるときの散乱光強度、さらに別の曲線はΑが69.2であるときの散乱光強度である。なお、図12においては、散乱光強度を対数目盛で示している。このため、図12では僅かな強度差として見える部分が、実際には非常に大きな差となる。
【0028】
この図12に示すように、サイズパラメータΑが大きくなればなるほど(ある波長λで考えた場合は真球粒子の粒径が大きくなればなるほど)、図12における上方(照射方向の前方)に対して指向性が高く光が散乱されていることがわかる。また、実際のところ、散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)は、入射光波長λを固定すれば、散乱子の半径rと、媒体および光散乱粒子の相対屈折率mとをパラメータとして制御することができる。
【0029】
このような、単一真球粒子がN個含まれる導光部5に光が入射すると、光は真球粒子により散乱される。散乱光は導光部5中を進み、他の真球粒子により再度散乱される。ある程度以上の体積濃度で粒子を添加した場合には、このような散乱が逐次的に複数回行われた後、光が導光部5から出射する。このような散乱光がさらに散乱されるような現象を多重散乱現象と呼ぶ。このような多重散乱においては、透明ポリマーでの光線追跡法による解析は容易ではない。しかし、モンテカルロ法により光の挙動を追跡し、その特性を解析することはできる。それによると、入射光が無偏光の場合、散乱角の累積分布関数F(Θ)は下記の(6)式で表される。
【0030】
【数2】
【0031】
ここで(6)式中のI(Θ)は、(1)式で表されるサイズパラメータΑの真球粒子の散乱強度である。強度Iの光が導光部5に入射し、距離yを透過した後、光の強度が散乱によりIに減衰したとすると、これらの関係は下記の(7)式で表される。
【0032】
【数3】
【0033】
この(7)式中のτは濁度と呼ばれ、媒体の散乱係数に相当するものであり、下記の(8)式のように粒子数Nに比例する。なお、(8)式中、σは散乱断面積である。
【0034】
【数4】
【0035】
(7)式から長さLの導光部5を散乱せずに透過する確率P(L)は下記の(9)式で表される。
【0036】
【数5】
【0037】
反対に光路長Lまでに散乱される確率P(L)は下記の(10)式で表される。
【数6】
【0038】
これらの式からわかるように、濁度τを変えることにより、導光部5内での多重散乱の度合いを制御することができる。
【0039】
以上の関係式により、光散乱粒子のサイズパラメータΑと濁度τとの少なくとも1つをパラメータとして、導光部5内での多重散乱が制御可能である。
【0040】
ここで、導光部5に含有されている光散乱粒子は、たとえば、平均粒径が2.4μmの透光性のシリコーン粒子とすることができる。また、光散乱粒子による散乱係数に相当する散乱パラメータである濁度τは、τ=0.49(λ=550nm)とすることができる。
【0041】
導光部5に上述の光散乱粒子を含有することで、導光部5内に入射した光は、導光部5内で散乱させられ、導光部5内における光線の分布(照度)は均一化される。そのため、光出射部10から出射する光の照度は、光出射部10が配置されるLED3からの距離に拘わらず均一化されている。
【0042】
(導光体1内の光路)
次に、上述のように構成される照明装置2において、LED3から出射された光が導光体1に入射し、光出射面6から出射するまでの光路の傾向を、図6を参照しながら例示的に説明する。導光部5には光散乱粒子が含有されている。そのため、導光部5内の光は、図5に示すように、光散乱粒子により散乱されながら進行する。光L1から光L5は、説明を簡略化するため、図6上においては直線的に描いているが、導光部5を実際に進行する光は光散乱粒子により散乱されながら進行する。つまり、光L1から光L5は光の光路を大局的に示すものである。なお、図6では、光路を判り易くするため、図4に示す導光体1に付したハッチングを省略している。
【0043】
LED3から出射し第2反射面8に入射する光L1は、第2反射面8と第1反射面7との間で反射を繰り返した後、光出射部10から導光体1の前方に出射する。第2反射面8は光軸Xに対して直交する面に沿う面であるのに対し、第1反射面7は、外方向が前方に傾斜する斜面となっている。そのため、光L1は、第2反射面8と第1反射面7との間で反射を繰り返す間に、前方に立ち上る光、すなわち、光出射面6に対する入射角(出射角)が小さな光となっていく。つまり、LED3から出射した光は、第2反射面8と第1反射面7との間で反射を繰り返す間に、全体として、光出射面6に対する入射角(出射角)が小さな光に変化させられて光出射部10から出射する。言い換えれば、光出射部10から側方に出射する光を減らすことができる。これにより、照明装置2の前方における照明エリア(被照明範囲)を、光出射面6と対応したエリアに近づけることができる。
【0044】
LED3から出射し第2反射面8に入射する光L2は、第2反射面8で後方に向けて反射された後、光散乱粒子により前方に向けて散乱され、光出射部10から光出射面6の前側に出射する。光L2のように、第2反射面8と第1反射面7との間の反射の繰り返し回数が少ない光については、第2反射面8と第1反射面7との間の反射の繰り返し回数が多い光に比べて、光出射部10から出射する際の出射角が比較的大きくなり易く、反射面8Aの前方にも光を配光することができる。導光部5に光散乱粒子を含有させることで、含有しない場合に比べて光出射部10から側方に向けて出射する光を発生させ易くなる。
【0045】
また、LED3から出射し光出射部10に入射する光L3は、光出射部10から光出射面6の前側に出射する。光L3についても、第2反射面8と第1反射面7との間の反射の繰り返し回数が少ない。そのため、光出射部10から出射する際の出射角が比較的大きくなり易く、反射面8Aの前方にも光を配光することができる。
【0046】
光L1を例にして説明したように、LED3から出射した光は、第2反射面8と第1反射面7との間で反射を繰り返すことで、光出射部10から出射する光の出射角は小さくなる。そのため、反射面8Aの前方の照度が落ちやすい。特に、反射面8Aに近いほど反射面8Aの陰になり易く照度が低下し易い。しかしながら、光L2,L3のように、比較的大きな出射角で反射面8Aの前方に配光される光により、反射面8Aの前側を照明することができる。したがって、反射面8Aの前方において、光量が極端に低下し影となってしまう領域を減らすことができる。
【0047】
LED3から出射し第4反射面14に入射する光L4は、第4反射面14で側方に反射され、第1反射面7で反射された後、光出射部10から前方に出射する。第4反射面14が存在することで、照明エリアの光軸Xに近い部分の照度が、他の部分に比べて極端に高くならないようにすることができることに加えて、光軸Xから離れた位置の照明光の光量を増やすことができる。光軸Xに近い部分は、LED3からの距離が近く、また、光出射部10から光軸Xに向けて出射する光が集まり易い。そのため、たとえば、第4反射面14を設けない構成とした場合は、照明エリアの光軸Xに近い部分は、LED3から直接照明されると共に、光出射部10から光軸Xに向けて出射される光により照明されるため、他の部分に比べて照度が極端に高くなる。
【0048】
しかしながら、照明装置2のように、第4反射面14を設けることで、LED3からの直接光を遮光できるため、光軸Xに近い部分の照度が、その周辺に比べて著しく高くなることを防止できる。また、第4反射面14に入射した光を外方向に反射することができ、光軸Xから離れた位置の照明光の光量を増やすことができる。
【0049】
LED3から出射し第4反射面14に入射する光L5は、第1反射面7と第2反射面8との間の反射を繰り返し、また、端面5Cに形成される第3反射面12により反射された後、第1反射面7と第2反射面8との間の反射を繰り返して光出射部10から前方に向けて出射する。つまり、端面5Cに第3反射面12を形成することで、端面5Cに入射した光L5が側方に透過してしまうことを防止できると共に、導光部5に戻すことで、光の利用効率を高くすることができる。
【0050】
第3反射面12は光軸X側に光を反射する。第3反射面12に入射した光は、外側から内側に向かって進行する光として反射される。そのため、第3反射面12で反射した光は、光出射面6から光軸Xと交差する方向に出射し易く、照明エリアの光軸Xに近い部分の照明に寄与する照明光となり易い。
【0051】
たとえば、第4反射面14の光軸Xと交差する部分に光出射部を形成することで、光軸Xに近い部分を照明することができるが、LED3との距離が近いため照度が著しく高くなり易い。これに比べて、第1反射面7と第2反射面8との間で反射を繰り返した光L5は照度が低下している。そのため、光軸Xに近い部分の照度を著しく高くしてしまうことがない。
【0052】
上述のように、光出射部10からは、光L1のような出射角の小さな光の他、光L2〜L5のように光L1に比べて出射角が大きな傾向にある光が出射する。したがって、光出射面6から出射する照明光は全体として面照明光となる。
【0053】
第2反射面8の反射面8Aの配置や面積、第1反射面7の第2反射面8に対する角度等を調整することで、光L1〜L5に代表される各光の量を制御することができ、導光体1から出射する照明光の配光角を制御することができる。たとえば、第2反射面8の密度を高くし光出射部10の面積を少なくすると、第1反射面7と第2反射面8との間で反射が繰り返される光の量と繰り返しの回数が増え、光L1のように立ち上った光が増加する一方、光L2、L3、L4、L5のように側方に向けて出射する光が減り、全体として配光角が小さくなる傾向がある。逆に、第2反射面8の密度を低くし光出射部10の面積を大きくすると、第1反射面7と第2反射面8との間で反射が繰り返される光の量と繰り返しの回数が減り、光L1のように立ち上った光が減少する一方、光L2、L3のように側方に向けて出射する光が増え、配光角が大きくなる傾向がある。
【0054】
したがって、光L1のように立ち上った光を増加させながら、かつ、光L2、L3のように側方に向けて出射する光を適度に発生させるように第2反射面8を構成することで、光出射面6から出射する面照明光の指向性を強くすることができると共に、照明エリア内の照度の均一化を図ることができる。光L1のように立ち上った光を増加させることで、光出射面6から出射する面照明光の照明光の指向性を強くすることができる。また、光L2、L3のように側方に向けて出射する光を適度に発生させることで、反射面8Aの前側を照明することができ、反射面8Aの前方において、光量が極端に低下し影となってしまう領域を減らすことができ、これにより、照明エリア内の照度の均一化を図ることができきる。
【0055】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
以上のように、導光体1は、第1反射面7と光出射面6とが導光部5を挟んで配置され、第1反射面7と光出射面6との間隔が、凹部4(光軸X)からの距離が長くなるほど狭くなるように構成されている。また、光出射面6には、導光部5の側に反射面を向ける複数の反射面8Aからなる第2反射面8が設けられ、第2反射面8は、凹部4からの距離が長くなるほど、複数の反射面8Aが設けられる密度が低くなるように構成されている。このように導光体1が構成されることで、導光体1から出射する面照明光に指向性を持たせ、所定の照明エリアのみを照明することが可能となると共に、照明エリア内の照度の一層の均一化を図ることができる。
【0056】
また、導光部5に光散乱粒子を含有させることで、光出射部10から出射する照明光の照明エリアにおける照度の均一化が図られる。また、導光部5に光散乱粒子を含有させることで、光出射部10から側方に向けて出射する光を発生させ易くなり、第2反射面8によって遮光され易い第2反射面8の直前の部分における照度の低下を抑えることができる。また、導光部5に光散乱粒子を含有させることで、導光体1の光出射効率も高めることもできる。なお、光散乱粒子は、粒子径を1〜10μmとし、含有量を0.1から0.8重量%とすることが好ましい。このようにすることで、光出射部10から出射する照明光の照明エリアにおける照度の均一化を好適に図ることができる。さらに、照明光の指向性の低下を抑えながら、光出射部10から側方に向けて出射する光を発生させることができる。これにより、第2反射面8の前方の第2反射面8によって遮光される領域を狭くすることができる。
【0057】
さらに、第2反射面8は、光軸Xから離れるほど反射面2Aが設けられる密度が低くなり、光出射部10が設けられる密度が高くなっている。これにより、光出射面6から出射する光の光量を、光軸Xに近いほど少なくすることができ、光軸Xから離れるにしたがって多くすることができる。
【0058】
光出射面6から出射する光の照度は、光軸Xに近いほど光源であるLED3に近くなるため高くなり、光軸Xから離れるにしたがって低くなる。したがって、第2反射面8を配置密度を上述のように設定することで、出射する光の照度が高くなる光軸X側ほど光出射面6から出射する光の光量を少なくすることができ、逆に、出射する光の照度が低くなる光軸Xから離れる側ほど光出射面6から出射する光の光量を多くすることができる。そのため、光出射面6から出射する光の照度の均一化を図ることができる。
【0059】
また、第3反射面12を備えることで、端面5Cから導光体1の外部に透過してしまう光を導光部5に戻し、光出射面6から出射させることで、光の利用効率が高くなる。また、第3反射面12を備えることで、外側から内側に向かって進行する光を作ることができる。そのため、光出射面6から光軸Xと交差する方向に光を出射することができる。したがって、LED3の光軸X上に第4反射面14が配置されている場合にも、光軸X側で照度が著しく低下してしまうことのないようにすることができる。
【0060】
また、第3反射面12を備えることで、端面5Cから導光体1の外部に透過してしまう光を導光部5に戻すことができる。仮に第3反射面12を備えない場合、端面5Cから側方に光が出射し、導光体1から出射する面照明光の指向性を低下させてしまう。しかしながら、本実施の形態のように第3反射面12を備えることで、端面5Cから光が出射することを効果的に防ぐことができる。端面5Cに墨塗り塗装等を施すことによっても端面5Cから光が出射することを防止できる。しかしながら、端面5Cに第3反射面12を設けることで、より確実に端面5Cからの光の出射を防止できる。また、第3反射面12により端面5Cから導光体1の外部に透過してしまう光を導光部5に戻し、光出射面6から出射させることで、光の利用効率も高くなる。また、第3反射面12は光軸X側に光を反射するため、外側から内側に向かって進行する光を作ることができる。そのため、第3反射面12で反射した光は、光出射面6から光軸Xと交差する方向に出射し易い。したがって、第3反射面12で反射した光は、照明エリアの光軸Xに近い部分の照明に寄与する照明光となり易い。
【0061】
第4反射面14は、光軸Xに配置されている。したがって、LED3から出射した光は、直接、光軸Xの直上の領域を照明することができない。そのため、照明エリアの光軸Xに近い部分の照度が、他の部分に比べて極端に高くならないようにすることができる。また、第4反射面14は、前方から後方に凹む円弧面である。そのため、LED3から出射し第4反射面14に入射した光を側方に反射することができる。したがって、光軸Xから離れた位置の照明光の光量を増やすことができ、LED3から出射した光の利用効率を高めることができる。
【0062】
(照度分布の具体例)
図7から図10に、光出射面6が縦横45mmの正方形である照明装置2の照度分布と配光分布を示す。
【0063】
図7は、上述した照明装置2を縦横に2台ずつ並べ、全台を点灯したときの照度分布を示すものである。図7(A)は、照明装置2を前方から見たときの照明光の出射状態を模式的に表わしたものであり、照度が高い部分ほど白色が強く表わされている。図7(B)のグラフは、図7(A)におけるX1−X2における照度を示すものである。図7(C)のグラフは、図7(A)におけるY1−Y2における照度を示すものである。図7に示す照度分布は、光出射面6の前方5mmにおける照度分布である。図7より判るように、照明装置2から出射される照明光は、光出射面6から側方にほとんど照明光が漏れることなく、光出射面6と対向するエリアのみを照明している。また、照明エリア内の照度分布も均一化が図られている。
【0064】
図8は、縦横に2台ずつ並べられた4台の照明装置2のうち、1台のみを点灯したときの照度分布を示すものである。図7と同様に、光出射面6の前方5mmにおける照度分布を示している。また、図8(A)は、照明装置2を前方から見たときの照明光の出射状態を模式的に表わしたものであり、照度が高い部分ほど白色が強く表わされている。図8(B)のグラフは、図8(A)におけるX1−X2における照度を示すものである。図8(C)のグラフは、図8(A)におけるY1−Y2における照度を示すものである。図8より判るように、点灯している1台の照明装置2から出射される照明光は、光出射面6から側方にほとんど照明光が漏れることなく、点灯している照明装置2の光出射面6と対向するエリアのみを照明している。照明エリア内の照度分布も均一化が図られている。
【0065】
図9は、縦横に2台ずつ並べられた4台の照明装置2のうち、3台を点灯したときの照度分布を示すものである。図7と同様に、光出射面6の前方5mmにおける照度分布を示している。また、図9(A)は、照明装置2を前方から見たときの照明光の出射状態を模式的に表わしたものであり、照度が高い部分ほど白色が強く表わされている。図9(B)のグラフは、図9(A)におけるX1−X2における照度を示すものである。図9(C)のグラフは、図9(A)におけるY1−Y2における照度を示すものである。図9より判るように、点灯している3台の照明装置2から出射される照明光は、光出射面6から側方にほとんど照明光が漏れることなく、点灯している照明装置2の光出射面6と対向するエリアのみを照明している。照明エリア内の照度分布も均一化が図られている。
【0066】
図10は、上述した照明装置2を縦横に2台ずつ並べ、全台を点灯したときの配光分布を示すものである。図10より判るように、本発明の導光体1を用いる照明装置2によれば、指向性を保持しながら、LED単体の配光角に比べて、広い配光角の照明光を出射することができる。
【0067】
液晶表示装置においては、液晶パネルの背面側に並べたLEDの発光量を個々に制御することで、同一画面内の異なるエリアのコントラスト比を高め、表示画像のコントラストを向上させるいわゆるローカルディミング方式が採用されることがある。照明装置2は、照明エリアを限定しつつ、照明エリア内の照度の均一化が図られている。そのため、液晶表示装置のバックライトとして複数配置することで、好適なローカルディミングを達成するこことができる。
【0068】
(他の形態)
上述した本発明の実施の形態に係る照明装置2は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0069】
たとえば、第2反射面8の複数の反射面8Aは、図11に示すように所定の面積を有する点状に形成してもよい。図11に示す反射面8Aを点状とした場合には、たとえば、凹部4(光軸X)からの距離が長くなるほど、隣接する反射面8Aの間隔を広くすることで、反射面8Aが設けられる密度を、凹部4(光軸X)からの距離が長くなるほど低くすることができる。
【0070】
反射面8Aを図11に示すように点状に形成することで、反射面8Aを図1に示す円環状に形成する場合と比べて、1つずつの反射面8Aの面積を小さくすることができるため、反射面8Aの配置密度を細かく変化させることができる。つまり、照度分布の制御を行い易くなる。
【0071】
なお、点状の反射面8Aの配置密度が高くなると、反射面8Aと反射面8Aとが接触し、全体として面となる場合がある。したがって、点状の概念は、面の形態も含むものとする。
【0072】
また、複数の反射面8Aは、上述の同心円の他に同心の多角形で構成することもできる。この場合は、同一の反射面において、光軸Xからの距離の差が大きくならないように6角形以上であることが好ましい。また、点状は、円形に限らず、3角形を含む多角形、あるいは円あるいは多角形の環状であってもよい。
【0073】
また、光源はLED3に限らず、放電光(キセノンランプ、水銀灯)等を用いることができる。また、導光部5は、四角錐として説明したが、円錐、あるいは他の角錐であってもよい。
【0074】
また、第1反射面7、第2反射面8、第3反射面12および第4反射面14は、上述の説明では、鏡面としたが、反射性のインクを塗付する構成としてもよい。また、照明装置2は、液表表示装置のバックライトに用いることができる他、看板の光源、あるいはパネルスイッチの照明光源等にも用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 … 導光体
2 … 照明装置
3 … 光源
4 … 光入射部(凹部)
5 … 導光部
6 … 光出射面
7 … 第1反射面(第1の反射面)
8 … 第2反射面(第2の反射面)
8A … 複数の反射面
11 … 端面(端部)
12 … 第3反射面(第3の反射面)
14 … 第4反射面(第4の反射面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図10
図11
図12
図7
図8
図9