特許第6062632号(P6062632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062632
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】インビボにおける栄養素持続放出
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20170106BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 31/70 20060101ALI20170106BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61K9/107
   A61K31/70
   A23L2/00 A
   A61P3/02
【請求項の数】7
【全頁数】76
(21)【出願番号】特願2011-542457(P2011-542457)
(86)(22)【出願日】2009年12月17日
(65)【公表番号】特表2012-524711(P2012-524711A)
(43)【公表日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】US2009068608
(87)【国際公開番号】WO2010080557
(87)【国際公開日】20100715
【審査請求日】2012年12月15日
(31)【優先権主張番号】12/337,022
(32)【優先日】2008年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2008/087104
(32)【優先日】2008年12月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510168542
【氏名又は名称】ニューワールド ファーマシューティカルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】セクストン,フレデリック,エイ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン,シタラマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドラ,ヴェンカット,カルヤン
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−255436(JP,A)
【文献】 特開平05−015317(JP,A)
【文献】 特開平09−095440(JP,A)
【文献】 米国特許第05795606(US,A)
【文献】 特表平08−509734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00〜 9/72
47/00〜47/48
31/00〜31/80
A23L 2/00〜 2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液を含むインビボにおける消費のための組成物であって、
(a) 栄養補給剤;及び
(b) 1以上の(a)の栄養補給剤を封入した1以上のヒドロゲル粒子を含み、
該1以上のヒドロゲル粒子が、
(i) 500ミクロン未満の直径を有するナノ粒子又はマイクロ粒子であり;
(ii) 1以上の化合物であって、共有結合的に架橋され、かつ栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出で、封入された1以上の栄養補給剤を放出する該化合物を含み;
(iii) pH応答性であり、ここで、1以上のヒドロゲル粒子は、胃の酸性環境においては膨潤しないが、小腸へ進入した時点で膨潤し;かつ
(iv) 温度反応性であり、ここで、該ヒドロゲル粒子の1以上の化合物は、水溶液中で下限臨界溶解温度を有し;
ここで、該組成物の1以上の栄養補給剤の炭水化物の放出及び吸収の動態が、該栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含まない組成物とは異なる、前記組成物。
【請求項2】
前記ヒドロゲルが、多糖を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖が、熱反応性多糖、疎水化多糖、pH反応性多糖、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記多糖が、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記多糖が、アルギン酸ナトリウムである、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、炭水化物に加えて更に栄養補給剤を含み、該栄養補給剤が、アミノ酸、脂質、電解質、及びビタミンからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記電解質が、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩化物、カルシウム、炭酸水素塩、リン酸塩、及び硫酸塩からなる群から選択される、請求項6記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照の組み入れ)
本出願は、2008年12月17日に出願された国際特許出願PCT/US2008/087104、及び2008年12月17日に出願された米国特許出願第12/337,022号の優先権を主張するものであり、これら両出願は、2007年12月17日に出願された米国特許仮出願第61/014,251号の優先権の利益を主張している。
【0002】
前記出願、並びにそこに引用された又はそれらの審査手続時に引用された全ての文献("出願引用文献(appln cited documents)")、及び出願引用文献において引用若しくは参照された全ての文献、並びに本明細書において引用若しくは参照された全ての文献("本明細書引用文献(herein cited documents)")、並びに本明細書引用文献において引用若しくは参照された全ての文献は、本明細書において言及された任意の製品に関するあらゆる製造業者の指示書、説明書、製品仕様書、及び製品添付シート又は本明細書に参照により組み込まれた任意の文献と一緒に、参照により本明細書に組み入れられ、かつ本発明の実践において使用することができる。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、炭水化物、アミノ酸、及び電解質を含む栄養素の適切に時間指定された放出及び増大された吸収を提供することによる、運動選手のパフォーマンスを増大するための組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
スポーツに関連した栄養要求の最新の理解は、炭水化物消費は、運動選手の持久力及びパフォーマンスの向上において重要な役割を果たすことを指摘している。1960年代半ばに始まったGATORADE(登録商標)及びその他の類似のスポーツ飲料を入口とする、運動イベントにおけるヒトパフォーマンスに対する様々な栄養素の役割の理解に、より注目が集まっている。
【0005】
最高パフォーマンス作出のための炭水化物及び他の栄養素を吸収しかつ処理する身体能力の理解は、多くの人々により研究されている。2003年に、運動選手の栄養(Nutrition for Athletes)に関して国際オリンピック委員会(IOC)は、競技前日の高炭水化物食は、特に運動を約60分間よりも長く続ける場合に、パフォーマンスの向上を助けること、並びに運動選手は、彼等のトレーニングプログラムの燃料要求に合致する炭水化物摂取を達成することを目的とし、かつ同じくトレーニング期間と競技の間の回復期間にそれらの炭水化物貯蔵を適切に補充しなければならないことを提言する立場を発表した。しかしこのことは、向上されたパフォーマンスを維持するために必要とされる食事要求を満たすために、大量又は少量であるがより定期的間隔での食事の摂取という欠点を伴うことのない、炭水化物及び他の栄養素の持続された供給を必要としている、特にトレーニング中の運動選手にとっては、困難な作業である。
【0006】
従って当該技術分野において、過剰な食物及びスナックの摂取を必要としない、個人への炭水化物及び他の栄養素の持続されかつ制御された供給を提供する必要性が存在する。
【0007】
本出願における任意の文献の引用又は確定は、そのような文献が本発明に先行する技術として利用可能であることを承認するものではない。
【発明の概要】
【0008】
(発明の概要)
本発明者らは、驚くべきことにGATORADE(登録商標)などの従来型食品と比べ、上昇されかつ延長された血糖反応を提供する、インビボ投与のための組成物を発見した。本発明は、運動パフォーマンスは、栄養補給剤(炭水化物及び電解質など)の制御放出を提供することにより、改善され得るという前提を基にしている。
【0009】
本発明は、ヒトへ投与した場合に、延長された期間にわたり栄養補給剤の持続放出を提供する、栄養補給剤(炭水化物、アミノ酸、ビタミン、及び/又は電解質など)を含有する組成物に関する。好ましくは、本栄養補給剤は、ピーク運動パフォーマンス及び回復のために、持続されかつ延長された様式で送達されることができる。例えば本組成物は、運動期間中に外来性炭水化物の吸収速度及び酸化速度が増大されるように、栄養補給剤を放出することができる。一実施態様に従い、本組成物は、外来性炭水化物によるSGLT1及びGLUT-5輸送体の飽和が、運動期間中維持されるように、栄養補給剤を放出する。
【0010】
好ましい実施態様において、インビボにおける消費のための組成物は、栄養補給剤;及び、該栄養補給剤のインビボにおける持続放出のための化合物:を含有することができる。好ましくは、本栄養補給剤は、炭水化物、アミノ酸、ビタミン、及び電解質を含有することができる。
【0011】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤の持続放出のため本化合物は、生分解性ポリマー、生体接着剤、ナノ粒子、コロイド懸濁液及び結合剤から選択された1以上の成分を含有することができる。
【0012】
一実施態様に従い、前記生分解性ポリマー及び結合剤は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ酸無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ヒドロゲル、それらの配合物及びコポリマーから選択することができる。
【0013】
有利な実施態様において、本発明は、ヒドロゲルを含有するナノ粒子及びマイクロ粒子を包含している。有利なことに、これらのヒドロゲルは、改質された多糖を含むことができる。これらの多糖は、カルボン酸(カルボキシメチルセルロース[CAS番号9000-11-7]、デンプングリコール酸[CAS番号9057-06-1]などにおけるように)、アクリロイル又はメタクリロイル(デンプンアクリレート[CAS番号39316-65-9]、ヒドロキシプロピルセルロースアクリレート[CAS番号94187-94-7]、ヒドロキシエチルデンプンアクリレートなどにおけるように)、ヒドロキシアルキル(ヒドロキシプロピルセルロース[CAS番号9004-64-2]、ヒドロキシエチルデンプン[CAS番号9005-27-0]、ヒドロキシエチルセルロース[CAS番号9004-62-0]などにおけるように)、及びエステル(酢酸デンプン、リン酸デンプンなどにおけるように)などの化学基による改質を含むことができる。これらの改質されたデンプンは、グラフトされた脂肪酸部分(アジピン酸デンプン[CAS番号39347-22-3]などにおけるように)、オリゴ(アルキレンオキシド)グラフト(ヒドロキシプロピルセルロースなどにおけるように)、コレステロールなどのグラフトされた疎水性物質、アルケニルコハク酸エステルなどのグラフトされた両親媒性物質(1-オクテニルコハク酸無水物で改質されたデンプンなどにおけるように)、又はアルデヒド基若しくはカルボキシル基を導入するための側鎖誘導体化も含むことができる。
【0014】
別の有利な実施態様において、本発明は、ヒドロゲルを形成するための、本発明のマイクロ粒子及びナノ粒子の架橋方法も含むことができる。架橋は、過硫酸塩などのフリーラジカル開始剤、又はアスコルビン酸が関与するレドックスシステム、又はゲニピンなどの天然の架橋剤を用い、実行することができる。ゲランなどの陰イオン性多糖類などによるイオン架橋も、意図され得る。
【0015】
別の更に有利な実施態様において、本発明は、ヒドロゲルの調製も含むことができる。有利な実施態様において、非限定的にヒドロキシプロピルセルロースなどの疎水化多糖と、非限定的にアルギン酸塩若しくはカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシ含有多糖の配合物は、本発明のヒドロゲル粒子の調製に使用することができる。別の有利な実施態様において、ナノ粒子懸濁液は、キトサン及びカルボキシメチルセルロース加水分解物の自己集合により合成することができ、ここでこれらのポリマーは、各々、酵素キトサナーゼ及びセルラーゼにより加水分解されてよい。
【0016】
別の実施態様において、ヒドロゲルは、非限定的にアルギン酸塩などの酸性多糖と、非限定的にキトサンのオリゴ糖誘導体などの塩基性多糖の混合物;非限定的にキトサンなどの塩基性多糖と、非限定的にヒアルロン酸などの陰イオン性多糖類の混合物;キトサンと配合された、アルギン酸塩及び酸化されたアルギン酸塩;グラフトされた寒天及びアクリルアミドとのアルギン酸ナトリウム配合物;スクレログルカンと共架橋されたゲラン;光架橋された改質されたデキストラン;グリシジルメタクリレートと反応されたデンプン;又は、糖質の、エポキシアクリレート、又は塩化メタクリロイル及び塩化アセチルとの反応により生成される、ショ糖などの重合可能なサッカライドモノマーから調製することができる。これらのナノ粒子及びマイクロ粒子ヒドロゲルは、ポリマー自己集合(温度、pH、又はイオン強度が誘導した沈殿;ミセル形成;反対に帯電したポリマー間の静電相互作用に起因したコロイド状沈殿)、又は従来型の乳化ベースの方法を用いて調製することができる。
【0017】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、持続様式で、かつプレ-運動(pre-)及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、運動持続期間及び累積パワー出力能(cumulative power output potential)を少なくとも約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%だけ増加するのに有効な濃度で、インビボにおいて放出される。
【0018】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、持続様式で、かつ運動前及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、バーストエネルギー持続期間(burst energy duration)及びパワー出力(power output)を約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%だけ増加するのに有効な濃度で、インビボにおいて放出される。
【0019】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、持続様式で、かつプレ運動及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、バーストエネルギー持続期間及びパワー出力を約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%だけ増加するのに有効な濃度で、インビボにおいて放出される。
【0020】
更に別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、持続様式で、かつプレ運動及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、有効バースト事象(effective burst event)の数を少なくとも約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%だけ増加するのに有効な濃度で、インビボにおいて放出される。
【0021】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、持続様式で、かつ運動前及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、バースト事象間の回復時間を少なくとも約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%だけ減少するのに有効な濃度で、インビボにおいて放出される。
【0022】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、持続様式で、かつ市販のパフォーマンス向上ドリンクを利用する場合のパフォーマンスと比べた場合に、約VO2 62%で90分間の連続運動において、パワー出力(ワット)を、約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%、有利なことには約50%だけ増加し、並びに約VO2 86%の高強度(バースト)運動、及び引き続きの90分間の連続運動の期間、パワー出力を、約25%を下回らずに増加し、並びに有効「バースト」期間の回数を約100%だけ増加するのに有効な濃度で、インビボにおいて放出される。
【0023】
更に別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤のインビボ持続放出のための化合物は、プレ運動及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、運動期間及び累積パワー出力能を約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%、有利なことに少なくとも約10%〜約70%だけ増加し、バーストエネルギー持続期間及びパワー出力を少なくとも約10%〜約70%だけ増加し、有効バースト事象の回数を約10%〜100%増加し、バースト事象間の期間を少なくとも約10%〜約100%だけ減少するように、延長された期間にわたり有効な量及び濃度で栄養補給剤を放出する。
【0024】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤のインビボ持続放出のための化合物は、プレ運動及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、バースト事象間の回復時間を少なくとも約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%だけ減少するように、延長された期間にわたり有効な量及び濃度で栄養補給剤を放出する。
【0025】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤のインビボ持続放出のための化合物は、市販のパフォーマンス向上ドリンクを利用する場合のパフォーマンスと比べた場合に、約VO2 62%で90分間の連続運動において、パワー出力(ワット)を、約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%、有利なことに約50%だけ増加し、並びに約VO2 86%の高強度(バースト)運動において、及び引き続きの90分間の連続運動の期間、パワー出力を、約25%を下回らずに増大し、並びに有効「バースト」期間の回数を少なくとも約100%だけ増加するのに有効な量及び濃度で、栄養補給剤を放出する。
【0026】
別の好ましい実施態様において、本組成物は、飲料品、ガム、食品スナック、粉末又は任意の他の消費可能なものとして製剤される。
【0027】
別の好ましい実施態様において、運動パフォーマンス及び持久力を向上する方法は、栄養補給剤;及び、該栄養補給剤のインビボにおける持続放出のための化合物を含有する組成物であって、ここで該栄養補給剤は、炭水化物、アミノ酸、ビタミン、及び電解質を含有する組成物を、個人へ投与すること;並びに、該組成物を消費することを含み、ここで該栄養補給剤のインビボ持続放出のための化合物は、運動前及び運動期間中に栄養補給剤を摂取しない対照と比べた場合に、運動持続期間及び累積パワー出力能を少なくとも約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%、約10%〜約70%だけ増加し、バーストエネルギー持続期間及びパワー出力を少なくとも約10%〜約70%だけ増加し、有効バースト事象の回数を約10%〜100%増加し、バースト事象間の回復時間を少なくとも約10%〜約100%だけ減少するように、延長された期間にわたり有効な量及び濃度で栄養補給剤を放出する。
【0028】
別の好ましい実施態様において、インビボにおける消費のための組成物は、1種以上の栄養補給剤、及び該栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含有し、ここで該組成物の炭水化物の放出及び吸収の動態は、栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含まない組成物とは異なる。一部の実施態様において、炭水化物の放出及び吸収の動態は、血中ブドウ糖濃度の変化を含む。好ましい実施態様において、本組成物は、ヒドロゲルを含有する。好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、炭水化物、アミノ酸、脂質、電解質、及びビタミンからなる群から選択される。電解質の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩化物、カルシウム、炭酸水素塩、リン酸塩、及び硫酸塩を含む。
【0029】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出のための粒子の製造方法は、(a)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の溶液を、下限臨界溶解温度を上回るように加熱する段階;(b)ポリマー鎖を架橋させ、マイクロ粒子ヒドロゲルを得る段階;及び、(c)マイクロ粒子ヒドロゲルに1以上の炭水化物を負荷する段階:を含み、ここで該粒子は、分配係数並びに会合された粒子の放出及び吸収動態の制御を生じる。一部の実施態様において、(c)における1以上の炭水化物は、単糖、二糖、多糖、及びそれらの組合せからなる群から選択される。好適な炭水化物の例は、デキストロース、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖、ポリデキストロース、デキストリン、固形コーンシロップ、デンプン及びそれらの組合せを含む。ある実施態様において、ポリマー鎖は、トリメタリン酸三ナトリウム(TSTMP)により架橋される。ある実施態様において、分配係数並びに会合された粒子の放出及び吸収動態は、該粒子内の(c)の1以上の炭水化物分子に関して酸性pHでの拡散障壁を含む。ある実施態様において、この酸性pHは、pH3.8未満である。
【0030】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、ヒドロゲルを含有し、ここでこのヒドロゲルは多糖を含む。ある実施態様において、この多糖は、熱反応性多糖、疎水化多糖、pH反応性多糖、及びそれらの組合せからなる群から選択される。好適な多糖の例は、ヒドロキシプロピルセルロース及びアルギン酸ナトリウムを含む。
【0031】
別の好ましい実施態様において、インビボにおける消費のための組成物は、1以上の炭水化物;及び、該炭水化物のインビボにおけるにおける時間制御されかつ持続された放出のための化合物:を含有する。好ましい実施態様において、本組成物は、ヒドロゲル粒子を含有する。更に別の好ましい実施態様において、これらのヒドロゲル粒子は、炭水化物を封鎖する。更なる実施態様において、これらの炭水化物は、ヒドロゲル粒子内部での炭水化物の拡散により決定された速度で、ヒドロゲル粒子から放出される。好ましい実施態様において、これらのヒドロゲル粒子は、多糖を含む。好適な多糖の例は、熱反応性多糖、疎水化多糖、及びpH反応性多糖、並びにそれらの組合せを含む。特定の実施態様において、多糖は、ヒドロキシプロピルセルロースである。別の実施態様において、多糖は、アルギン酸ナトリウムである。一部の実施態様において、この炭水化物は、高いグリセミック指数を有する。
【0032】
別の好ましい実施態様において、本発明のヒドロゲル粒子は、ポリマーによりコーティングされている。一部の実施態様において、このポリマーは、pH反応性多糖である。
【0033】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、休息時に、血中ブドウ糖濃度を、本栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含まない等量の本組成物よりも、より長期間、空腹時レベルを上回るよう維持することができる。
【0034】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、低-、中-、又は高-強度の運動の期間中、血中ブドウ糖濃度を、本栄養補給剤のインビボにおける時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含まない等量の組成物よりも、より長期間、空腹時レベルを上回るよう維持することができる。
【0035】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物のインビボ投与は、本栄養補給剤の時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含まない組成物のインビボ投与よりも、より低いインスリン反応を生じる。
【0036】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物のインビボ投与は、本栄養補給剤の時間制御されかつ持続された放出のための化合物を含まない組成物のインビボ投与よりも、貯蔵脂肪の増大された利用を生じる。
【0037】
本開示において並びに特に請求項及び/又は段落において、用語「含んでなる(comprises)」、「含んでなられた」、「含んでなっている」などは、米国特許法にそれが帰する意味を有することができること;例えば、これらは、「含む(incldes)」、「含まれた」、「含んでいる」などを意味すること;並びに、「本質的になっている」及び「本質的になる」などの用語は、米国特許法にそれらが帰する意味を有することができ、例えば、これらは、要素が明確には列挙され得ないが、先行技術において認められる要素又は本発明の基本的又は新規特徴に影響を及ぼす要素は排除することに留意されたい。
【0038】
これら及び他の実施態様は、以下の「詳細な説明」により、開示されるか、又はそれらから明らかでありかつこれに包含される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
(図面の簡単な説明)
以下の詳細な説明は、例として示されているが、説明された具体的実施態様のみに本発明を限定することは意図されず、下記の添付図面と一緒に、理解を最良にすることができる。
図1図1は、カルボン酸基を含む多糖を図示している;
図2図2は、酸化されたスクレログルカン誘導体を図示している;
図3図3は、パッセイリーニ及びウギの多成分縮合反応を図示している;
図4図4は、ゲニピンの構造を図示している;
図5図5は、カラゲナンの構造を図示している;
図6図6は、ビニル-官能基化されたデキストランを図示している;
図7図7は、(a)エステル転移反応、及び(b)エポキシ基の開環:から生じる、デンプンのグリシジルメタクリレート付加物を図示している;
図8図8A及び8Bは、ヒドロキシル基を含む多糖の架橋を図示している。Pは、多糖セグメントを表す;
図9図9は、架橋されたヒドロキシプロピルセルロースマクロゲル、及び水中のヒドロキシプロピルセルロースマイクロゲル粒子のコロイド状の安定した分散液を図示している;
図10図10は、水酸化ナトリウムの存在下で、TSTMPを使用する、ヒドロキシル含有多糖の架橋を図示している;
図11図11は、アクリレート化されたヒドロキシプロピルセルロースの合成を図示している;
図12図12は、ヒドロキシルプロピルセルロースの化学構造を図示している;
図13図13は、TSTMPを使用する、化学架橋を図示している;pH=11.5;T=50℃;1時間;Rは、多糖鎖を表す;
図14図14は、ブドウ糖の酵素的測定を図示している;
図15図15A-15Cは、(A)4.4%(w/v)HPC分散液中の数加重粒子サイズ分布、(B)4.4%(w/v)HPC分散液中の質量加重粒子サイズ分布、及び(C)架橋されたHPCマイクロ粒子の走査型電子顕微鏡像:を図示している;
図16図16は、実施例2.1のHPC分散液;及び、HPC分散液(8.7%w/w)と同じブドウ糖全体濃度を有するブドウ糖溶液(HPC粒子非含有):に関する、HPC粒子の全域でかつ拡散セルのメンブレンを通るブドウ糖輸送の動態を図示している;pH=7;T=28℃;
図17図17は、pH反応性拡散障壁としてアルギン酸ナトリウムを含有する実施例2.9のHPC分散液;及び、蒸留水によるこの分散液の1:1希釈により調製された分散液:に関する、HPC粒子の全域でかつ拡散セルのメンブレンを通るブドウ糖輸送の動態を図示している;pH=3.8;T=28℃;
図18図18は、実施例2.1のHPC分散液、及び、HPC分散液(8.7%w/w)と同じブドウ糖全体濃度を有するブドウ糖溶液(HPC粒子非含有):に関する、HPC粒子の全域でかつ拡散セルのメンブレンを通るブドウ糖輸送の動態を図示している;pH=7;T=37℃;
図19図19は、実施例2.4のHPC分散液;及び、HPC分散液(8.7%w/w)と同じブドウ糖の全体濃度を有するブドウ糖溶液(HPC粒子非含有):に関する、HPC粒子の全域でかつ拡散セルのメンブレンを通るブドウ糖輸送の動態を図示している;pH=2;T=37℃;
図20図20は、pH反応性拡散障壁としてアルギン酸ナトリウムを含んだ実施例2.12のHPC分散液:に関する、HPC粒子の全域でかつ拡散セルのメンブレンを通るブドウ糖輸送の動態に対するpHの作用を図示している;pH=7、3.8、及び2;T=28℃。
図21図21A及び21Bは、(A)実施例2.4の分散液380mL及びGATORADE(登録商標)対照380mLの消費後の、血中ブドウ糖濃度、対、時間、並びに(B)空腹時血中ブドウ糖濃度に対する標準化された血中ブドウ糖濃度プロファイルを図示している。被験者は、実験期間中は椅子に着席し続けた;
図22図22は、実施例2.5の分散液380mL及びGATORADE(登録商標)対照380mLの消費後の、標準化された血中ブドウ糖濃度、対、時間を図示している。被験者は、実験期間中は椅子に着席し続けた;
図23図23は、実施例2.5の2つの異なる分散液の消費後の、標準化された血中ブドウ糖濃度、対、時間を図示している。第一の分散液は、純粋なデキストロースを含有するのに対し、第二の分散液は、デキストロース対果糖の質量比1:3を含有した。両方の分散液の全体の糖濃度は、同じであった。被験者は、実験期間中は椅子に着席し続けた;
図24図24は、実施例2.7の分散液450g、及び蒸留水中の10重量%デキストロース溶液450gの消費後の、標準化された血中ブドウ糖濃度、対、時間を図示している。被験者は、実験期間中は椅子に着席し続けた;
図25図25は、(a)大量ボーラス投与として;及び、(b)各々重さ150gの3つのアリコートとして:実施例2.7の分散液450gの消費後の、標準化された血中ブドウ糖濃度、対、時間を図示している。アリコートは、t=0、39及び69分に消費された。被験者は、実験期間中は椅子に着席し続けた;
図26図26は、(a)3つのアリコートでの実施例2.7の分散液;及び、(b)3つのアリコートでのGATORADE(登録商標):の380mLの消費後の、標準化された血中ブドウ糖濃度、対、時間を図示している。被験者は、実験期間中は椅子に着席し続けた;
図27図27は、トレッドミル上での連続した中程度の強度の運動(〜60% VO2max)前の、実施例2.4のHPC分散液380mLの消費の作用を図示している。デキストロースを添加したGATORADE(登録商標)及び水を、各々、陽性対照及び陰性対照として使用した;
図28図28は、血中ブドウ糖濃度プロファイルの定量分析において使用されるパラメータを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(詳細な説明)
本発明の様々な実施態様の実行及び使用は以下に詳細に説明されているが、本発明は、多種多様な具体的状況で実施され得る多くの適用可能な発明の概念を提供することは理解されなければならない。本明細書において説明された具体的実施態様は、本発明の実行及び使用のための具体的方式の単なる例証であり、かつ本発明の範囲又はそれに添付された請求項の範囲の限界を定めるものではない。
【0041】
一実施態様に従い、本発明の組成物は、個人への炭水化物及び任意に他の栄養素の延長された期間にわたる持続放出を提供する。好ましくは、炭水化物は、長期間、最大の炭水化物の吸収及び酸化速度を維持する様式で、本組成物から放出される。一般に、個人における最大炭水化物吸収速度は、約1.2〜約1.7g/分の範囲である。約1.75g/分のピーク炭水化物酸化速度は、例えば炭水化物がブドウ糖(1.2g/分)及び果糖(0.8g/分)の配合物として投与される場合に、達成されることができる。代表的炭水化物酸化プロファイルについては、例えばAzevedo, J. L. Jr.;Tietz, E.;Two-Feathers, T.;Paull, J.;Chapman, K.の論文「スポーツドリンク中の乳酸塩、果糖及びブドウ糖の酸化プロファイル、並びに運動パフォーマンスに対する作用(Lactate, Fructose and Glucose Oxidation Profiles in Sports Drinks and the Effect on Exercise Performance)」、PLoS ONE [オンライン] 2007, 2, e927-e927 (doi:10.1371/journal.pone.0000927)を参照されたい。
【0042】
外来性炭水化物吸収の速度及び程度は、利用可能な炭水化物の量によってのみ限定されるのではなく、ブドウ糖及び果糖に関する最大腸管輸送能によっても限定され得る。ブドウ糖の腸管輸送は、刷子縁膜に位置したナトリウム依存型ブドウ糖輸送体(SGLT1)により媒介される。SGLT1輸送体は、ブドウ糖摂取率〜1g/分で飽和され始める。他方で果糖は、ナトリウム非依存型促進性果糖輸送体であるGLUT-5により、腸から吸収される。一般に、血流への吸収に関して異なる輸送機序を有する炭水化物の混合物の摂取は、同時に炭水化物及び水の吸収を増大する。
【0043】
本出願人は、表1に示されたように、ある活動レベルを基に必要とされるカロリー数を見積もっている。エネルギー必要量は、体重で標準化されたカロリー燃焼速度(個人の1単位ボディーマス当たりの活動kcal/分)及びブドウ糖のカロリー含量(〜4kcal/g)を基に、概算される。外来性ブドウ糖酸化から利用可能なエネルギーは、約396kcalである。表1に見ることができるように、このエネルギーは、列記された活動の総エネルギー必要量に合致するには不充分である。本発明は、制御された放出の栄養素製剤を使用し、カロリーギャップを狭めることを追求している。
【表1】
【0044】
用語「持続放出」(すなわち延長放出及び/又は制御放出)は、ヒト体内に導入され、かつ1以上の栄養素の流れを、所定の期間にわたり、かつ所定の期間を通じ望ましい作用を達成するのに十分なレベルで、連続して放出する、栄養補給剤、例えば炭水化物など、送達システム又は組成物をいうよう本明細書において使用される。連続放出流れの表現は、成分のマトリックスからの拡散-限定された放出、又は該組成物、若しくはマトリックス若しくはそれらの成分のインビボにおける生分解の結果として生じる放出、又は添加された栄養素若しくは他の望ましい物質(類)の代謝による変換若しくは溶解の結果として生じる放出を包含することが意図されている。遅延放出は、栄養素が、粘膜付着性の表面特性を持つ粒子状担体内に捕獲されることにより達成されることができる。栄養素が負荷された粒子の腸管粘膜への付着は、胃腸管内部の非-接着性組成物の通常の滞留時間を超えるよう、該粒子の腸管腔内部での滞留時間を増加し、これにより上皮を超え血液への栄養素の連続放出及び輸送を提供するであろう。
【0045】
好ましい実施態様において、本栄養補給組成物は、溶液、懸濁液、ゲルカプセル、粉末、スナック(例えばバー)、グラノーラ型、又は錠剤の形態である。栄養素の「送達」は、例えば、本栄養素を、個別に、又は持続放出粒子状マイクロ粒子;様々な親和性で本栄養素に結合する化合物などと一緒に、懸濁することを含む。一実施態様に従い、液体形状の場合、個人による消費に必要な容量は、約500mLであるが、その濃度及び量を増加及び/又は減少した製剤が企図されている。
【0046】
栄養素の例は、炭水化物、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、補酵素、リン脂質、ミネラル及び電解質を含むが、これらに限定されるものではない。本発明を用いて送達されることができるビタミン及び補酵素の例は、水溶性又は脂溶性ビタミン、例えばチアミン、リボフラビン、ニコチン酸、ピリドキシン、パントテン酸、ビオチン、フラビン、コリン、イノシトール及びパラアミノ安息香酸、カルニチン、ビタミンC、ビタミンD及びそのアナログ(エルゴカルシフェロール、カルシトリオール、ドキセルカルシフェロール、及びパリカルシトールなど)、ビタミンA及びカロテノイド、レチノイン酸、ビタミンE及びビタミンKなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
好ましい実施態様において、本栄養組成物は、例えばSGLT受容体及びGLUT受容体などの、異なる受容体により取り込まれる炭水化物を含有する。好適な炭水化物は、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖などの単糖、二糖及び多糖に加え、マルトデキストリンなどのより複雑な可食性炭水化物を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい一実施態様に従い、本組成物は、ブドウ糖と果糖の配合物を含む。ブドウ糖の果糖に対する重量比は、約1:1〜約100:1、約5:1〜約95:1、約10:1〜約90:1、約15:1〜約85:1、約20:1〜約80:1、約25:1〜約75:1、約30:1〜約70:1、約35:1〜約65:1、約40:1〜約60:1、約45:1〜約55:1又は約50:1の範囲が好ましい。好ましくは、本組成物は、炭水化物の約0.1〜約99.9重量%、約1〜約99重量%、約5〜約95重量%、約10〜約90重量%、約15〜約85重量%、約20〜約80重量%、約25〜約75重量%、約30〜約70重量%を、本組成物の100%乾燥物質を基に算出された約35〜約65重量%、約40〜約60重量%、約45〜約55重量%、又は約50重量%を含む。
【0048】
別の好ましい実施態様において、本組成物は、アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、遊離アミノ酸又はペプチドの形であることができ、かつ炭水化物の約0.1〜約99.9重量%、約1〜約99重量%、約5〜約95重量%、約10〜約90重量%、約15〜約85重量%、約20〜約80重量%、約25〜約75重量%、約30〜約70重量%の範囲、本組成物の100%乾燥物質を基に算出された約35〜約65重量%、約40〜約60重量%、約45〜約55重量%、又は約50重量%の量で存在することが好ましい。
【0049】
本ペプチド物質は、動物又は植物起源のタンパク質に由来することができ、そのようなタンパク質の例は、ミルクタンパク質、肉タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、エンドウ豆タンパク質、米タンパク質及びトウモロコシタンパク質である。好ましくはこのタンパク質原材料は、小麦グルテンタンパク質又はグリアジンなどのそれらの亜画分である。本文脈において、用語「ペプチド物質」は、タンパク質加水分解物を示し、かつ長さ及び加水分解から生じるある遊離アミノ酸の量が変動し得る全ての種類のペプチドを含むことができると理解される。このタンパク質原材料は、1以上の加水分解酵素により加水分解される。この加水分解酵素は、動物、植物、酵母、細菌又は真菌を起源とすることができる。好ましくは、遊離アミノ酸の遊離を最小化し、かつタンパク質加水分解物の味質プロファイルを向上するために、低いエキソ-ペプチダーゼ活性を有する酵素調製品が使用される。本発明の好ましい加水分解されたタンパク質物質は、平均ペプチド鎖長1〜40個の範囲のアミノ酸残基、より好ましくは1〜20個の範囲のアミノ酸残基を有する。平均ペプチド鎖は、WO 96/26266に開示された方法を用い決定されることができる。更なるペプチド物質は、本組成物の乾燥物質を基に算出された約0.1〜90重量%の量で存在する。
【0050】
本発明の組成物の他の任意の成分は、ビタミン、ミネラル、電解質、香料、抗酸化剤、補-酵素及び抗酸化剤特性を有する成分、乳化剤を含む脂質、及び特定の栄養的及び/又は生理的必要性に合致するタンパク質である。
【0051】
デキストロース、果糖などの炭水化物及びそれらの組合せは、例えば、本組成物の約1〜20重量%、例えば本組成物の1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、又は20重量%を含む、いずれか望ましい量で、本発明の組成物中に存在することができる。同じく20〜25重量%、25〜30重量%、30〜35重量%、35〜40重量%、40〜45重量%、45〜50重量%、及び50重量%を超えている。
【0052】
本発明の組成物の他の任意の成分は、保存剤;F.D.&C色素及びレーキなどの、着色剤;香味料;及び、甘味料を含む。好適な保存剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、及びソルビン酸カリウムを含み、本発明の組成物中に、例えば、組成物の約0.0001重量%、約0.001重量%、約0.005重量%、約0.01重量%、約0.02重量%、約0.03重量%、約0.04重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、又は0.5重量%よりも多くなどの量で存在することができる。
【0053】
別の好ましい実施態様において、本栄養組成物は、結合剤及び/又は生分解性ポリマー若しくは好適な徐放特性及び放出動態を持つ生分解性ポリマーの混合物を含有する。本発明の組成物は、次に、頻繁な再投与を必要とせずに、長時間にわたり、本発明の化合物の有効濃度を提供するのに適した好適な栄養組成物を含有するマイクロ粒子に形成されてよい。本発明の組成物は、当業者に公知の任意の好適な様式で、生分解性ポリマー又はポリマー混合物へ組み込まれることができ、かつ生分解性ポリマーと均質なマトリックスを形成することができる。
【0054】
別の好ましい実施態様において、本栄養素補給剤は、ナノ懸濁液/コロイド状粒子中に存在する。ナノ粒子又はコロイド状粒子(CP)は、水中及び生理的媒体中に安定したコロイド懸濁液を形成することができる。CPは、自発機構により、水性媒体中の例えば炭水化物などの栄養素と会合し;並びに、CPは、生理的媒体中で、より正確にはインビボにおいて、栄養素を放出する。この放出動態は、CP前駆体であるポリマーの性質に左右されるであろう。栄養的価値がその分子の三次構造によって決まるタンパク質も、そのタンパク質を変性しない生体適合性ポリマー宿主を用い、この方法により送達されることができる。
【0055】
従って、前記ポリマーの特異的構造を変動することにより、動態的及び定量的観点から、会合及び放出現象を制御することが可能である。
【0056】
別の本発明の好ましい実施態様は、選択された粒子;及び、構造化されたサブミクロンの、特に1種以上の栄養素を運搬するために使用されることが可能であるその他の選択された粒子の調製に関し、これらの粒子は、個別化(離散)されている超分子配列であり:これらは、ペプチド結合を有し、かつ親水性反復アミノ酸、及び疎水性反復アミノ酸の少なくとも2種の異なる種類を含む、線状両親媒性ポリアミノ酸を基にし、これらの各種のアミノ酸は、互いに同じ又は異なり;非溶解状態で、コロイド懸濁液中で少なくとも1つの栄養素と会合し、かつ、特にインビボにおいて、延長された及び/又は遅延された様式で放出することが可能であり;並びに、界面活性剤(類)の非存在下で、pH4〜13の間で、水相中で安定している。
【0057】
好ましくは、本粒子は、特に1以上の栄養素を運搬するために使用されることが可能であるサブミクロン構造化された粒子であり、これらの粒子は、離散した超分子配列であり;非溶解状態で、コロイド懸濁液中の少なくとも1つの栄養素と会合し、かつ、特にインビボにおいて、延長された及び/又は遅延された様式で放出することが可能であり;並びに、界面活性剤(類)の非存在下で、pH4〜13の間で、水相中で安定している。
【0058】
別の好ましい実施態様において、本組成物は、粉末、飲料品、ガム、栄養食品、丸剤など任意の形状に混合されるか又は製剤され得るように、マイクロスフェア又はマイクロ粒子内に栄養組成物を封入するように製剤されることができる。
【0059】
本明細書において定義された「マイクロスフェア」又は「マイクロ粒子」は、約1mm〜約1μm又はそれ未満の直径を有する生体適合性固相物質の粒子を含み、ここで該粒子は、生物学的活性物質を含有することができ、かつここでこの固相物質は、マイクロスフェアからの栄養組成物のインビボにおける放出を持続する。マイクロスフェアは、球形、非球形又は不規則な形状を有することができる。典型的マイクロスフェアの形状は、一般に球形である。
【0060】
本明細書において定義される「生体適合性」物質とは、物質及びこの物質の任意の分解産物が、レシピエントに対し毒性がなく、かつレシピエントの体に著しく有害な又は望ましくない作用も示さないことを意味する。
【0061】
好ましい実施態様において、マイクロスフェアは、栄養的化合物の混合物を含み、かつこのマイクロスフェアは、ある時間にわたり放出される生分解性物質により構成される。例えば、個人へのエネルギー又は栄養素の即時貯蔵を提供するための、栄養素の初期バーストを提供するために、本栄養的化合物は、そのように製剤され、かつ様々な炭水化物、アミノ酸、電解質、ビタミンなどを様々な比で含むことができる。第二の群は、様々な比の炭水化物:アミノ酸:ビタミンなどを含むか、又は栄養素の持続可能な放出を維持するために比較的長時間にわたり放出される厳密に異なる若しくは類似した炭水化物を含むことができる。本マイクロスフェア中の栄養素の製剤及びその放出のタイミングは、活動の種類、個人、年齢、体重及び栄養的必要性に応じ変動することができる。例えば、マラソンランナー(長期間にわたり持続された栄養)は、スプリンター(栄養のバースト)とは、栄養的必要性が異なるであろう。
【0062】
別の好ましい実施態様において、様々な種類の炭水化物、例として例えばSGLT輸送体、対、GLUT輸送体により取り込まれるものなどは、以下に説明される結果を実現するために、異なる放出速度で、異なる比で添加される。
【0063】
別の好ましい実施態様において、組成物は、逐次的に胃腸管の酸性領域、中性領域、及び弱アルカリ性領域でインビボにおいてある期間にわたり溶解する化合物を含有する。これらの化合物は、栄養素補給剤放出を延長するために、第一のコーティングとして例えば酸性ポリマー分散液コーティングを含む。この実施態様において、マイクロ粒子は、コアとして、炭酸カルシウム、糖質、デキストロース及びノンパレイルシードを含む物質を含有する。第一のコーティングは、水の迅速な通過を妨害する物質である。第一のコーティングは、好ましくはポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)の水性分散液である(名称Eudragit L30D-55で市販されている)。この第二のコートは、ラテックスアクリル系ポリマーである。第二のコーティングは、好ましくはポリ(アクリル酸エチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-2-トリメチルアンモニオエチルメタクリル酸クロリド)(名称Eudragit RS-30Dで市販されている)である。第二のコーティングの厚さは、薬物の望ましい徐放速度を実現するように確立されている。
【0064】
前記徐放性製品は、好ましくは立体配置が実質的に球形である。この徐放性薬品の直径は、典型的には20〜650ミクロン、30〜500ミクロン又は40〜350ミクロンの範囲であり、かつ好ましくは該製品が液体懸濁液の形状である場合に、約50〜250ミクロンである。本発明の製品を含有する徐放性栄養素組成物は、それらのサイズのために、水性媒体中に懸濁されることができ、これにより液体懸濁液を提供することは、本発明の特徴である。
【0065】
この実施態様において、本栄養素組成物は、任意であるコア;コアに結合した栄養補給剤;水への制限された透過性を有する第一のコーティング;及び、第一のコーティングよりも水により透過性である第二のコーティングを含有する、徐放性製剤として製剤され、ここで第一及び第二のコーティングは一緒に、本栄養素組成物の徐放成分を含む。
【0066】
前記コアは一般に、直径約19〜57、約20〜56、約21〜55、約22〜54、約23〜53、約24〜52、約25〜51、約26〜50、約27〜49、約28〜48、約29〜47、約30〜46、又は約31〜45ミクロンを有する。コアは一般に、不活性成分、好ましくは炭酸カルシウム、糖質、デキストロース及びノンパレイルシードからなる群から選択される物質で構成される。
【0067】
第一のコーティングは、水に対し限定された透過性を有し、かつ酸及び水の迅速な通過を妨害する。この第一のコーティングは典型的には、直径約1.30〜4.60、約1.40〜4.50、約1.50〜4.40、約1.60〜4.30、約1.70〜4.20、約1.80〜4.10、約1.90〜4.00、約2.00〜3.90、約2.10〜3.80、約2.20〜3.70、約2.30〜3.60又は約2.40〜3.50ミクロンを有するであろう。第一のコーティングは、好ましくは薬物放出を延長する酸性ポリマー分散液コーティングであり、より好ましくはポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)の水性分散液である。そのようなポリマーは、名称EUDRAGIT L30D-55で販売されている。コアと第一のコーティングは一緒に、典型的には、直径約60〜77、約61〜76、約62〜75、約63〜74、約64〜75又は約65〜74ミクロンを有する。
【0068】
前記第一及び第二のコーティングは一緒に、本発明の製品の徐放成分を含有することが理解される。第一及び第二のコーティングは一緒に、個人内で、最大期間約12時間にわたり、経口投与可能な薬物の徐放を実行する。第二のコーティングの厚さは、補給剤に関して望ましい徐放速度を達成するように変更することができることが、当業者には理解される。すなわち、第二のコーティングの厚さは、体内でのより長い徐放時間を実現するために、増加されることができる。本コーティングは、示差的な多孔性のせいで働く。例えばポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)で構成された内側コーティングは、pHに対し感受性がある。この内側コーティングを横切る栄養素輸送は、そのコーティングの多孔性及び水含量により決定され、これら両方とも、胃腸管領域内の異なるpH値により決定される。酸性環境(胃内)において、内側コーティングは、比較的疎水性で収縮し始め、減少した細孔サイズ及び栄養素透過性につながる。対照的に、腸管腔内側のpHは、比較的高い。本内側コーティングは、イオン化のために比較的親水性となり始め、その粒子コアからの栄養素のより迅速な放出を可能にする。外側コーティングは、pH反応性ではないが、しかし細孔サイズを制御することにより、栄養素透過性を制御するために使用することができる。本発明は、第一及び第二のコーティングにおいて、徐放成分へ進入する水は、第一のコーティングよりもより迅速に第二のコーティングを通過し、かつ徐放成分を排出する薬物及び水は、第二のコーティングを通るよりもよりゆっくりと第一のコーティングを通過するような多孔性を提供する。好ましい形状において、各コーティングの通過は力学的手段により、第一のコーティングの通過はイオン性相互作用により増強される。
【0069】
別の好ましい実施態様において、1以上の栄養素補給剤は、水性環境において安定している粒子により結合されるか又は封入され、かつ一旦この補給剤が消費されると、延長された期間にわたり放出される。
【0070】
本発明の組成物は、粉末、ガム、飲料品又は任意の他の食品の形状を有することができる。本発明の飲料品は、先に規定された成分を、適量の水に溶解することにより、調製することができる。等張のドリンクが調製されることが好ましい。運動時及び運動後の使用が意図されているドリンクに関して、ドリンクの総重量について算出された約0.10〜60重量%の範囲の本発明の組成物の濃度を有することが推奨される。
【0071】
好ましい実施態様において、本製剤は、ほぼ水と等しい粘度及び「口内の感触(mouth-feel)」を有する。本製剤の粘度は、液体がガラスキャピラリー中の1つの基準マークから別のマークまで落下するのに必要とする時間を決定することにより、Ubblehold粘度計などのキャピラリー粘度計を用い量化されることができる[例えば、Pearce, E. M.;Wright, C. E.;Bordoloi, B. K.の文献、「ポリマー合成及び特徴決定に関する実験法(Laboratory Experiments in Polymer Synthesis and Characterization)」;ペンシルバニア州立大学:University Park, 1982年;187頁を参照されたい]。水の室温粘度は、約1cPであるのに対し、オリーブ油のそれは約80cP、ヒマシ油は約1000cP及びコーンシロップは約1400cPである。無脂肪ミルクの粘度は、約30cPである[Vesa, T. H.;Marteau, P. R.;Briet, F. B.らの論文、Am. J. Clin. Nutr. 1997, 66, 123-126]。
【0072】
別の好ましい実施態様において、本組成物は、心地よく、口当たりが良く、かつ成人、青年及び小児の消費者にとって信頼の感触をもたらす様々な味質/芳香を提供する香味剤を含有する。
【0073】
ひとつの好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、プレ運動及び運動期間中に補給の炭水化物(すなわち本栄養素組成物)を摂取しない場合と比べ、運動持続期間及び累積パワー出力能を、少なくとも約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%だけ増加する。
【0074】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、プレ運動及び運動期間中に補給の炭水化物を摂取しない場合と比べ、バーストエネルギー持続期間及びパワー出力を、少なくとも約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%だけ増加する。
【0075】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、プレ運動及び運動期間中に補給の炭水化物(すなわち本栄養素組成物)を摂取しない場合と比べ、有効バースト事象の回数を、少なくとも約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%だけ増加する。
【0076】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、プレ運動及び運動期間中に補給の炭水化物(すなわち本栄養素組成物)を摂取しない場合と比べ、バースト事象間の回復時間を、少なくとも約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%だけ減少する。
【0077】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、GATORADE、CYTOMAX、又はPOWERADEなどのパフォーマンス向上ドリンクを利用する場合のパフォーマンスと比べ、約VO2 62%で90分間の連続運動において、パワー出力(ワット)の約1%〜約50%、約50%〜約100%、約100%〜約500%又は約500%〜約1000%の増加を生じ、並びに約VO2 86%の高強度(バースト)運動、及び引き続きの90分間の連続運動の期間、パワー出力を、約25%を下回らずに増大し、並びに有効「バースト」期間の回数を>100%だけ増加する。
【0078】
累積パワー出力能の測定は、当業者に周知である(例えば、Byrne, C;Twist, C;Eston, R.の文献、「運動が誘導した筋肉損傷後の神経筋機能:理論と適用される意味(Neuromuscular function after exercise- induced muscle damage: theoretical and applied implications)」、Sports Med. 2004, 34, 49-69;Hunter, A.;St, C;Lambert, M.らの文献、「筋電図シグナルに対する過最大運動の作用(Effects of supramaximal exercise on the electromyographic signal)」、Br. J. Sports Med. 2003, 37, 296-299;及び、Williams, S. G.;Cooke, G. A.;Wright, D. J.らの文献、「ピーク運動心臓パワー出力:慢性心不全の予後を強力に予測する心機能の直接指標(Peak exercise cardiac power output: A direct indicator of cardiac function strongly predictive of prognosis in chronic heart failure)」、Eur. Heart J. 2001, 22, 1496-1503を参照されたい)。特に有利な実施態様において、繰り返しの断続的(yo-yo-intermittent)回復試験は、累積パワー出力能を測定するために利用される(例えば、Krustrup, P.;Mohr, M.;Amstrup, T. R.らの文献、「繰り返しの断続的回復試験:生理的反応、信頼性及び妥当性(The yo-yo intermittent recovery test: physiological response, reliability, and validity)」、Med. Sci. Sports Exerc. 2003, 35, 697-705を参照されたい)。
【0079】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、延長された運動時の、集中、手/眼の協調などにおける持続可能性の増大を生じる。この性質の試験は、当該技術分野において公知であり、いずれも利用することができる。例えば、米国特許第7,300,365号を参照されたい。これは、改善された運動パフォーマンスに解釈されるが、非-運動の、学問の及び/又は作業のパフォーマンスでの使用についての促進も補助する。
【0080】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、補給の炭水化物(すなわち、本栄養素組成物)を摂取しない場合と比べ、改善された集中及び脳機能を生じる。
【0081】
別の好ましい実施態様において、本栄養素組成物の消費は、改善されかつ安定化された血中ブドウ糖濃度を生じ、結果的に糖尿病患者にとって有益な飲料品又は食物の代替品であることが期待される。
【0082】
別の好ましい実施態様において、本組成物は、長い期間の競技労作(athletic exertion)時(例えばマラソン)、又は直ちにエネルギー及び会合された補給剤が必要とされる場合に、アクセス可能であるように包装され、これらの栄養素を含有する製品は、そのまま消費される形状で、ヒトにおいて装着可能であるが(wearable)、依然保護されている固形物又はゲルである。
【0083】
別の好ましい実施態様において、本栄養組成物は、取り扱いが容易で、かつバックパック、ダッフルバッグ、ポケットなどの内部に貯蔵されるように、包装される。この包装は、環境に優しいことが好ましい。
【0084】
好ましい実施態様において、本栄養組成物は、生分解性結合剤と混合されるか、又は望ましい炭水化物及び他の栄養素の持続放出を可能にする生分解性マイクロスフェア内に封入される。本明細書において定義される「生分解性」とは、ポリマーが、インビボにおいて分解又は浸食され、より小さい化学種を形成することを意味する。分解は、例えば酵素的、化学的及び/又は物理的プロセスにより生じることができる。好適な生体適合性、生分解性ポリマーは、例えば、多糖、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ酸無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ヒドロゲル、それらの配合物及びコポリマーを含む。
【0085】
本発明の方法及び組成物に適した生体適合性、非-生分解性ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル及び他のアシル置換された酢酸セルロースのポリマー、非-分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ヒドロゲル、それらの配合物及びコポリマーからなる群から選択される非-生分解性ポリマーを含む。
【0086】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤の持続放出において、ヒドロゲルが使用される。物理的ポリマー性ヒドロゲルは、生体材料応用に関して広範に調べられている。例は、エナンチオ性ポリマー又はポリペプチドセグメントと、温度-又はpH-感受性特性を持つヒドロゲルの複合体形成により形成されたヒドロゲルを含む。これらは、タンパク質などの繊細な生体活性物質を捕獲することに関与した穏やかな水性条件のために、持続された薬物送達について特に注意を引く。例えば、熱感受性ブロックコポリマーから形成された、その場で形成されたヒドロゲルが同じく、薬物の持続放出マトリクスとして提唱されている。これらは、ゲル形成に関与した化学反応は存在しないという、利点を有する。これらのコポリマーヒドロゲルは通常、タンパク質及びホルモンなどの、巨大分子型薬物のためにデザインされる。好ましくはこのポリマーは、水溶液中にあり、これはヒドロゲルを形成する。例えば、好適な水性ポリマー溶液は、ポリマー約1%〜約80%、約2%〜約75%、約3%〜約70%、約4%〜約65%、約3%〜約70%、約4%〜約65%、約5%〜約60%、約6%〜約55%、約7%〜約50%、約8%〜約45%、約9%〜約42%、好ましくはポリマー約10%〜約40%を含む。水への溶解度に限界がある栄養素を可溶化するために好適なヒドロゲルも同じく、シクロデキストリン約1%〜約20%、約2%〜約19%、約3%〜約18%、約4%〜約17%(w/w)(総溶液の重量を基に)、好ましくはシクロデキストリン約5%〜15%を含む。このヒドロゲルは典型的には、水性担体流体を用いて、形成される。例えば、典型的水性溶液は、ポリマーを約1%〜約80%、約2%〜約75%、約3%〜約70%、約4%〜約65%、約3%〜約70%、約4%〜約65%、約5%〜約60%、約6%〜約55%、約7%〜約50%、約8%〜約45%、約9%〜約42%を、好ましくはポリマー約10%〜約40%を含む。
【0087】
本ヒドロゲル組成物は、栄養素と複合するか、栄養素と共役するか、又は両方であることができる第二のポリマーを含有することもできる。この第二のポリマーは、好適には、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、多糖、ポリ(アミノ酸)、ポリペプチド、又はタンパク質であることができる。好ましくは、この第二のポリマーは、ポリ(エチレングリコール)セグメントを伴う、ジ-若しくはモノ-官能性ポリマー又はポリイオン性ポリマーである。栄養補給剤がヒドロゲルと共役又は複合している場合、その結果ヒドロゲル製剤は、マトリックスとしてのみではなく、本栄養補給剤の担体としても作用する。このことは、本栄養補給剤、例えば様々な炭水化物は、ヒドロゲル内に物理的に捕獲されるのみではなく、ヒドロゲルを形成する分子と複合又は共役もされることを意味する。第二のポリマーは、多孔性及び粘度などのヒドロゲルマトリックスの特性を変更するために使用することもできる。
【0088】
本ヒドロゲルの特性は、異なるポリマーブロック分子量を使用すること、シクロデキストリン含量を調節すること、及び第二のポリマーの使用により、調整可能である。例えば本ヒドロゲルは、より柔軟性のあるヒドロゲル又はより剛性のあるヒドロゲルであるように調節することができる。ヒドロゲル構造は、可変性粘度及びより長い若しくはより短い薬物放出速度を有するように調整することができる。ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の疎水度も、望ましい持続放出速度のために選択することができる。
【0089】
延長された放出の期間は、ブロックポリマーの分子量、特に疎水性ポリ(ヒドロキシアルカノエート)部分(section)(例えばPHB)の分子量によって決まる。この放出速度は、望ましい反応期間を実現するために、特定のポリ(ヒドロキシアルカノエート);選択されたポリ(ヒドロキシアルカノエート)の立体異性状態;選択されたポリ(ヒドロキシアルカノエート)の分子量;及び、ヒドロゲル中で使用されるシクロデキストリンの相対量:を、持続放出の望ましい期間及び速度を実現するよう選択することにより、本発明に従い変更することができる。親水性ポリ(アルキレンオキシド)の分子量及び選択も、持続放出動態に影響を及ぼすが、疎水性ポリ(ヒドロキシアルカノエート)成分よりもより低い程度である。第二のポリマーは、放出動態を変更するためにも利用することができる。ヒドロゲルは、ブロックポリマー及びコポリマーの分子量の調節、更には本発明のヒドロゲル及び使用可能性のある第二のポリマー内のシクロデキストリン含量の調節により、1日以上の期間にわたる持続放出を提供することができる。
【0090】
ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー内の栄養補給剤の成分のマイクロカプセル封入も、企図される。成分のポリマーに対する比及び利用される特定のポリマーの性質に応じて、成分放出の速度は、持続されることができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)を含む。これらの製剤は、生体組織と適合性があるリポソーム又はマイクロエマルジョン内への成分の捕獲によっても調製される。
【0091】
更に、ポリマーの末端官能性は、修飾することができる。例えばポリエステルは、ブロックポリマー、非ブロックポリマー、又はブロックポリマーと非ブロックポリマーの配合物であることができる。ブロックされたポリエステルとは、当該技術分野において古典的に定義され、具体的にはブロックされたカルボキシル末端基を有する。一般にブロック基は、重合開始剤に由来され、かつ典型的にはアルキル基である。非ブロックポリエステルは、当該技術分野において古典的に定義され、具体的には遊離のカルボキシル末端基を有する。
【0092】
有利な実施態様において、マイクロ粒子又はナノ粒子の水性分散液を合成するために、多糖の配合物が利用される。有利なことに、これらの多糖は、多糖が相互貫入ポリマー網目を形成するよう、疎水化多糖である。特に有利な実施態様において、これらの多糖は、非限定的に、図1の多糖など、カルボン酸基を含んでいる。
【0093】
理論に結びつけられるものではないが、カルボキシ含有ヒドロゲル粒子は、胃の酸性環境においては崩壊状態にあることが予想される。従って封入された糖質分子は、胃内では該粒子内に保持されている。本ヒドロゲル粒子は、小腸(pH5〜7)に到達した時点で膨張状態に達し、かつ胃内よりもより速い速度で封入された糖質を放出するであろう。提唱された多糖ヒドロゲルの重要な特徴は、それらのpH反応性である。理想的には、本ヒドロゲルは、胃の酸性環境内では膨潤しないが、しかし小腸へ進入した時点で膨潤し、かつ封入された糖質を制御された速度で放出しなければならない。有利なことに、本発明の炭水化物は、水性媒体中に分散された制御放出粒子であるが、固形粒子形状で貯蔵されることもできる。
【0094】
特に有利な実施態様において、本ヒドロゲルは、疎水化された多糖を含む。多糖は、コレステロールなどの疎水性物質により官能基化されることができる。例えば、非限定的に、プルラン、デキストラン及びマンナンなどの多糖は、長鎖アルキル及びコレステロールなどであるが、これらに限定されるものではない様々な疎水基により、部分的に置換されることができる。
【0095】
本発明のナノ粒子又はマイクロ粒子は、グラフトされた脂肪酸部分を伴う改質されたデンプン分子を含むことができる。この脂肪酸は、例えば触媒として過硫酸カリウムを用い、デンプン上にグラフトされ得る。別の実施態様において、本発明は、例えば、ステアリン酸クロリド(疎水性物質)、ポリ(エチレングリコール)又はメチルエーテル(親水性分子)を使用する、ナノスケールのデンプン粒子の表面-改質も包含している。別の実施態様において、改質デンプンは、アクリロイル-改質デンプン又はアクリロイル-改質ヒドロキシエチルデンプンであることができる。
【0096】
本発明の有利な実施態様において、多糖は、最初に誘導体化され、その側鎖上にアルデヒド基又はカルボキシル基が導入された。これらの基は次に架橋され、より安定した三次元網目が作製された。
【0097】
有利な実施態様において、本粒子は架橋され、ヒドロゲルを形成する。架橋は、過硫酸塩などのフリーラジカル開始剤、又はアスコルビン酸が関与するレドックスシステム、又はゲニピンなどの天然の架橋剤を用いて実行することができる。イオン架橋も研究されている。ゲランなどの陰イオン性多糖類は、食品製剤中では望ましくないことがあるホウ砂などの化学物質の代わりに、イオン架橋に使用することができる。
【0098】
本発明は更に、ヒドロゲルの調製に関する。有利な実施態様において、非限定的に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの疎水化多糖、及び非限定的に、アルギン酸塩又はカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシ含有多糖の配合物を使用し、本発明のヒドロゲル粒子を調製することができる。好適なアルギン酸塩の例は、アルギン酸ナトリウムポリマー(例えば、アルギン酸ナトリウムNF、F-200、SAHMUP及びアルギン酸ナトリウムNF、SALMUP)であり、これは本発明の組成物中に、例えば組成物の約0.01重量%〜約1.0重量%の量で存在することができる。
【0099】
疎水化多糖は、水中の相分離のために自発的粒子形成を生じるのに対し、カルボン酸基を含む多糖は、pH反応性挙動を授け、腸管通過時間を増大するであろう。一実施態様において、ナノ粒子懸濁液は、キトサン及びカルボキシメチルセルロース加水分解物の自己集合により合成することができる。これらのポリマーは、各々、酵素キトサナーゼ及びセルラーゼにより加水分解される。カルボキシメチルセルロースのカルボキシラート基とキトサンのアミノ基の間の静電相互作用は、これら2種のポリマーの溶液を混合することにより、ナノ粒子の自発的形成を生じる。粒子サイズは、これらの溶液の混合比により、更にはこれらのポリマーの分子量によっても左右される。巨視的ゲルの形成を防止するために、混合する前にこれらのポリマーを加水分解し、分子量をより低くすることが必要であった。
【0100】
別の実施態様において、ヒドロゲルは、非限定的にアルギン酸塩などの酸性多糖と、非限定的にキトサンのオリゴ糖誘導体などの塩基性多糖の混合物;非限定的にキトサンなどの塩基性多糖と、非限定的にヒアルロン酸などの陰イオン性多糖類の混合物;キトサンと配合されたアルギン酸塩及び酸化されたアルギン酸塩;グラフトされた寒天及びアクリルアミドとのアルギン酸ナトリウム配合物;スクレログルカンと同時架橋されたゲラン;光架橋された改質されたデキストラン;グリシジルメタクリレートと反応されたデンプン;又は、糖質の、エポキシアクリレート、又は塩化メタクリロイル及び塩化アセチルとの反応により生成される、ショ糖などの重合可能なサッカライドモノマー:から調製することができる。
【0101】
例えば、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ヒドロキシアルキルセルロースなどの、ヒドロキシル基を含む多糖類の架橋は、図8A及び8Bに示されたように、ビス-エポキシド、ジビニルスルホン、N,N'-カルボニルジイミダゾール、シアヌル酸クロリド、テレフタロイルクロリド、二硫化炭素、ホルムアルデヒド、及びグルタルアルデヒドを含む様々な試薬を用い実現することができる[Park, H.;Park, K.;Shalaby, W. S. W.の文献、「薬物送達のための生分解性ヒドロゲル(Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery)」、Technomic Publishing社:ランカスター, PA, 1993]。巨視的ヒドロゲルを形成するための架橋は、これらの試薬を用い、容易に実行することができる。Kabraらは、ジビニルスルホン架橋剤を使用し、ヒドロキシプロピルセルロースのマクロゲルを調製した[Kabra, B. G.;Gehrke, S. H.;Spontak, R. J.の論文、「多孔性反応性ヒドロキシプロピルセルロースゲル、1.合成と微小構造(Microporous, responsive hydroxypropyl cellulose gels. 1. Synthesis and microstructure)」、Macromolecules, 1998, 31, 2166-2173]。他方で、ヒドロゲルナノ-又はマイクロ粒子の合成は、沈殿(コロイドの不安定さに起因)又はマクロゲル形成を防止するための、反応条件の慎重な選択を必要としている。図9に示されたように、マクロゲルとコロイド的に安定したマイクロゲル懸濁液の間の違いは、ヒドロキシプロピルセルロースポリマーの2種の架橋された試料の写真から明らかである。図9に示されたバイアルは両方共、水中に約4%(w/v)ヒドロキシプロピルセルロースを含んでいる。'1'と表示されたバイアルはマクロゲルを示すのに対し、'2'と表示されたバイアルはヒドロキシプロピルセルロースのコロイド的に安定したマイクロゲル懸濁液を含む。マクロゲル形成及びコロイドの凝集を防ぐために、架橋反応時に多糖濃度は、極めて低く(約1重量%未満)に維持される。Caiらは、ジビニルスルホン架橋剤をポリマーの0.05重量%濃度で使用し、架橋されたヒドロキシプロピルセルロースのナノ粒子を調製した[Cai, T.;Hu, Z.;Marquez, M.の論文、「天然のポリマーのほぼ単分散ナノ粒子の合成及び自己集合(Synthesis and self- assembly of nearly monodisperse nanoparticles of a naturally occurring polymer)」、Langmuir, 2004, 20, 7355-7359]。ジビニルスルホンの毒性が、栄養素の制御放出のための製剤の合成時には懸念される。図8A及び8Bは、ヒドロキシル基を含む多糖の架橋を図示している。Pは、多糖セグメントを表している。
【0102】
多糖ヒドロゲルを介したブドウ糖などの小型分子の輸送は、細胞封入及び組織工学のために研究されている[McEntee, M.-K. E.;Bhatia, S. K.;Tao, L.;Roberts, S. C;Bhatia, S. R.の論文、「イオン架橋したアルギン酸塩ゲルを介したブドウ糖の調整可能な輸送:アルギン酸塩及びカルシウム濃度の作用(Tunable transport of glucose through ionically-crosslinked alginate gels: effect of alginate and calcium concentration)」、J. Appl. Polym. Sci. 2008, 107, 2956-2962]。平均ビーズ直径が2mmであるイオン架橋されたアルギン酸ヒドロゲルビーズが、アルギン酸塩及び塩化カルシウムを用い調製された。この研究者らは、20〜50分の時間範囲にわたる、ブドウ糖の二工程放出プロファイルを認めた。この放出速度は、純水中にブドウ糖-負荷された球体を懸濁することにより測定されたことは注意されなければならない。球体の内部と懸濁している液体(純水)のブドウ糖濃度の大きな差は、比較的迅速な糖質の放出を生じる(懸濁後約50分以内)。
【0103】
共有結合架橋は、GI管内において遭遇する広範なpH及びイオン強度条件において、イオン架橋されたヒドロゲルよりも、ヒドロゲル球体へより大きい安定性(速すぎる崩壊に対する)をもたらすことが予想される。架橋剤としてメタリン酸三ナトリウム(trisodium metaphosphate)が使用される場合、共有結合架橋が形成される。この栄養素の放出速度は、マイクロスフェアの架橋密度を制御することにより、調整される。より重要なことに、この放出速度は、懸濁液の水相内の粒子の外側の栄養素の濃度によって決まる。本出願人の分散液は、水相中の比較的高い糖質濃度を含む。ヒドロゲルマイクロ粒子からの栄養素の拡散は、栄養素が水相から枯渇された場合にのみ生じる。従ってこれらの粒子は、糖質の貯蔵庫として働き、かつイオン架橋されたアルギン酸ビーズを使用した研究において報告された期間(〜50分間)を大きく超えた期間にわたり、腸管腔内に栄養素を供給する[McEntee, M.-K. E.;Bhatia, S. K.;Tao, L.;Roberts, S. C;Bhatia, S. R.の論文、「イオン架橋したアルギン酸塩ゲルを介したブドウ糖の調整可能な輸送:アルギン酸塩及びカルシウム濃度の作用(Tunable transport of glucose through ionically-crosslinked alginate gels: effect of alginate and calcium concentration)」、J. Appl. Polym. Sci. 2008, 107, 2956-2962]。本出願人の製剤において、水相中に溶解された栄養素は、腸管上皮を超えて最初に吸収されるであろう。これらのマイクロ粒子は、捕獲された栄養素を、最初に低速で放出し(低い濃度勾配のため)、水相の栄養素が枯渇した場合に、より速い速度で放出する(より大きい濃度差のため)。
【0104】
本発明において使用されるポリマーに関する許容し得る分子量は、望ましいポリマー分解速度、力学的強度などの物理的特性及び溶媒中のポリマーの溶解の速度などの要因を説明し、当業者により決定される。典型的には、許容し得る分子量の範囲は、約2,000ダルトン〜約2,000,000ダルトン、約3,000ダルトン〜約1,900,000ダルトン、約4,000ダルトン〜約1,800,000ダルトン、約5,000ダルトン〜約1,700,000ダルトン、約6,000ダルトン〜約1,600,000ダルトン、約7,000ダルトン〜約1,500,000ダルトン、約8,000ダルトン〜約1,400,000ダルトン、約9,000ダルトン〜約1,300,000ダルトン、約10,000ダルトン〜約1,200,000ダルトン、約12,000ダルトン〜約1,100,000ダルトン、約13,000ダルトン〜約1,000,000ダルトン、約14,000ダルトン〜約900,000ダルトン、約15,000ダルトン〜約800,000ダルトン、約16,000ダルトン〜約700,000ダルトン、約17,000ダルトン〜約600,000ダルトン、約18,000ダルトン〜約500,000ダルトン、約19,000ダルトン〜約400,000ダルトン、約20,000ダルトン〜約300,000ダルトン、約21,000ダルトン〜約200,000ダルトン、約22,000ダルトン〜約100,000ダルトン、又は約23,000ダルトン〜約50,000ダルトンである。一実施態様において、本ポリマーは、生分解性ポリマー又はコポリマーである。
【0105】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、マイクロ粒子又はマイクロスフェア内に封入されることができる。これらの粒子は任意に、粒子表面に捕獲又は固定される陽イオン又は陰イオン界面活性剤などの界面活性剤を含む。界面活性剤の疎水性末端は固形コアに包埋され、かつ親水性末端はマイクロ粒子の表面に露出されるので、マイクロ粒子の生体接着特性は、粒子表面に捕獲された帯電した界面活性剤に起因すると考えられる。
【0106】
粘膜付着性物質とも称される生体接着物質は一般に、生体膜に結合し、かつ長期間その膜上に保持されることが可能である物質であることが知られている。従来型制御放出システムと比較し、生体接着制御放出システムは、以下の利点を有する:i)生体接着制御放出システムは、生物学的活性成分を、特定領域に局在化し、これによりそれら自身による貧弱な生物学的利用能を有する活性成分の生物学的利用能を改善及び増強すること、ii)生体接着制御放出システムは、生体接着物質と粘膜の間の比較的強力な相互作用に繋がり、そのような相互作用は、制御放出システムと問題の組織の間の接触時間の増大に貢献し、かつ制御放出システムから放出された活性成分(active)の特異的部位への局在化を可能にすること、iii)生体接着制御放出システムは、ほぼあらゆる非-非経口経路において、生物学的活性成分の送達を延長すること、iv)生体接着制御放出システムは、局所療法を目的として、特定部位に局在化され得ること、v)生体接着制御放出システムは、特定の罹患組織に標的化され得ること、並びにvi)生体接着制御放出システムは、適切に吸収されないある種の生物学的活性成分などの、従来型アプローチが適さない場合に、有用であること。
【0107】
前記マイクロ粒子は、少なくとも1つの補助界面活性剤も含有することができる。補助界面活性剤は、天然の生物学的に適合性のある界面活性剤又は医薬として許容し得る非天然の界面活性剤であることができる。補助界面活性剤は、粒子を望ましいサイズ範囲内に維持し、かつそれらの凝集を防止することを補助する。補助界面活性剤は、粒子の約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、好ましくは約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、約0.5%未満、約0.4%未満、約0.3%未満、約0.2%未満、及びより好ましくは約0.1質量%未満を構成する。
【0108】
このマイクロ粒子は、好ましくはサブミクロンの粒子のコロイド相を懸濁している水性連続相として形成される。粒子懸濁液の水性連続相は、抗酸化剤、保存剤、殺微生物剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、凍結保護剤、及び他の公知の医薬として有用な添加剤又は溶質を含むことができる。
【0109】
このマイクロ粒子は、長期間、栄養補給剤の放出速度を持続する。例えば、マイクロ粒子は、約1分〜12時間の期間、栄養補給剤の放出を持続する。
【0110】
栄養素放出の様々な速度を提供するマイクロ粒子の使用が、企図されている。例えば、栄養素-放出動態は、以下のいずれかであってよい:(i)全体を通して実質的に均一な放出速度である、定常状態又はゼロ次放出速度;(ii)放出速度が、経時的にゼロへと下落する、一次放出速度;及び、(iii)初速度は遅いが、その後経時的に増加する、遅延放出。
【0111】
用語「生体接着」は、物質の生体膜などの生物学的基板への付着に関連している。用語「粘膜付着性物質」は、一般に受け入れられた専門用語に従い、用語「生体接着物質」と同義的に使用される。
【0112】
陽イオン界面活性剤は、生体接着マイクロ粒子を形成するために、マイクロ粒子の外側表面に取り込まれている。この界面活性剤は、粒子表面に捕獲又は固定されており、粒子コアを取り囲む界面にコーティングを形成する。コアを取り囲む界面は、疎水性である。陽イオン界面活性剤は、マイクロ粒子の疎水性コア成分の外側表面も安定化し、これによりより均一な粒子サイズを促進する。
【0113】
負帯電しかつ親水性の組織の表面への強力な結合が可能である表面活性物質の例は、陽イオン帯電した界面活性剤としての使用が好ましい。好適な表面活性物質は、直鎖アルキルアンモニウム化合物、環状アルキルアンモニウム化合物、石油由来陽イオン、及び高分子陽イオン性物質を含む。塩化セチルピリジニウムは、生物学的表面に対し強力な生体接着特性を示し、かつ好ましい表面活性物質であることが分かった。この界面活性剤は、懸濁液の約0.01%〜約5重量%、好ましくは約0.05%〜約2重量%の割合で存在する。
【0114】
直鎖アルキルアンモニウム化合物は、1個以上の疎水性アルキル基が陽イオン性窒素原子に結合された、陽イオン表面活性物質である。この結合は、例えば、R-C(=O)-NHCH2CH2CH2N(CH3)2におけるように、より複雑であることもできる。あるいは、この陽イオン表面活性物質は、化合物R-NHCH2CH2CH2NH2及びそれらの誘導体のクラスなどの、1個よりも多い陽イオン性窒素原子を含むことができる。陽イオン界面活性剤に適した化合物の代表例は、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTAB)、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ドデシルエチルジメチルアンモニウム、ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウム、ココナツハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、及びC8-C20ハロゲン化N,N-ジアルキルジメチルアンモニウムを含むが、これらに限定されるものではない。
【0115】
陽イオン界面活性剤に適した他の化合物は、表面上に、それから離れて配向された疎水基により吸着されることがわかっているビス(水添タロウアルキル)塩化ジメチルアンモニウム、2-ヒドロキシドデシル-2-ヒドロキシエチル塩化ジメチルアンモニウム[CAS番号xx]及びN-オクタデシル-N,N',N'-トリス-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパンジヒドロフルオリド[CAS番号6818-37-7]を含むが、これらに限定されるものではない。
【0116】
陽イオン電荷を保持する窒素原子が複素環の一部である表面活性第4級アンモニウム化合物は、陽イオン界面活性剤として使用されることができる。好適な化合物の例は、塩化ラウリルピリジニウム、臭化ラウリルピリジニウム、臭化テトラデシルピリジニウム、及びハロゲン化セチルピリジニウムであり、ここでハロゲン化物は塩化物、臭化物又はフッ化物から選択される。
【0117】
陽イオン界面活性剤として使用することができるポリマーアミンは、主鎖に沿ってイオン基を含むポリマーのクラスを含み、かつ電解質及びポリマーの両方の特性を示す。これらの物質は、それらの主鎖に第一級、第二級、第三級又は第四級官能性の窒素を含み、かつ約100と同じ位に低いか又は約100,000よりも高い重量平均分子量を有することができる。陽イオン界面活性剤として有用な好適なポリマーアミンは、General Mills Chemical社から入手可能なポリジメリルポリアミン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド化合物、及び同じく他のビグアニド類、例えば引用により本出願中に組み込まれている米国特許第2,684,924号、第2,990,425号、第3,183,230号、第3,468,898号、第4,022,834号、第4,053,636号及び第4,198,425号に開示されたもの、Aldrich社により製造された「Polybrene」などの1,5-ジメチル-1,5-ジアザウンデカメチレンポリメトブロミド、ポリビニルピロリドン及びそれらの誘導体、ポリペプチド、ポリ(アリルアミン)塩酸塩、ポリオキシエチレン化されたアミン、及びBASF社により製造された「Polymin」などのポリエチレンイミンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0118】
陽イオン界面活性剤に適したポリマー性物質は、アミノ基の画分をそれらのアシル誘導体へ変換することにより調製される表面活性陽イオン性ポリマーも含む。例えばポリエチレンイミンは、化学量論的な量未満の酸ハロゲン化物と最初に縮合され、その結果そのアミノ基の一部はアルキル化し、かつ残りのアミノ基は次に、塩化水素又は好ましくはフッ化水素などの、ハロゲン化水素と縮合される。これらの化合物の表面活性は、アシル化されるアミノ基の数及びアシル化する基RCOの鎖長により変動する。この縮合反応は、金属フッ化物、好ましくはフッ化銀を含有する溶媒の存在下で、ステアリン酸又はオレイン酸の塩化物により実行することができ、そのような方式で、この反応において形成された金属塩化物は、溶媒から沈殿する。
【0119】
本発明の目的には、デキストラン、デンプン又はセルロース、例えばジエチルアミノエチルセルロースなどの、多糖の陽イオン性誘導体も適している。アクリルアミド及び陽イオン性モノマーを基にした適用可能なコポリマーの例は、RETEN 220を含む商品名RETENでHercules社から、又はFLOC AID 305を含む商品名FLOC AIDでNational Adhesives社から、入手可能である。他の有用なアクリルアミド-ベースの高分子電解質は、商品名PERCOLでAllied Colloids社から入手可能である。好適な物質の更なる例は、Celanese-Hall社により商品名JAGUARで販売されているものなどの、陽イオン性グアー誘導体である。
【0120】
別の好ましい実施態様において、本マイクロ粒子は、好ましくは障壁特性を有する生分解性疎水性物質で形成される疎水性コアを含む。好適な無毒の医薬用固形コア物質は、融点が約50℃〜約120℃、約60℃〜約110℃、約70℃〜約100℃又は約80℃〜約90℃の範囲である、不活性の疎水性生体適合性物質である。例は、蜜ろうなどの動物ワックス;ラノリン及びセラックワックス;カルナバ、カンデリラ、サトウキビ、米糠、及びベイベリーワックスなどの野菜ワックス;パラフィン及び微結晶ワックスを含む石油系ワックスなどのミネラルワックス;コレステロール;ステアリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及びパルミチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル;セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びオレイルアルコールなどの高分子量脂肪族アルコール;固形の水添ヒマシ油及び植物油;硬質パラフィン;ハードファット;ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及び乳酸とグリコール酸のコポリマーなどの生分解性ポリマー;セルロース誘導体及びそれらの混合物を含む、天然、再生、又は合成のワックスを含むが、これらに限定されるものではない。本発明において使用され得る他の疎水性化合物は、トリグリセリド、好ましくは食品等級純度又はそれよりも良いトリグリセリドを含み、これは合成又は天然の給源からの単離により生成され得る。天然の給源は、長鎖トリグリセリド(LCT)の給源である、動物脂肪又は、大豆油などの植物油を含む。他の好適なトリグリセリドは、中鎖トリグリセリド(MCT)と称される、中程度の長さ脂肪酸(C10-C18)で主に構成される。そのようなトリグリセリドの脂肪酸部分は、不飽和、モノ不飽和又はポリ不飽和であることができる。様々な脂肪酸部分を有するトリグリセリドの混合物も、本発明に有用である。このコアは、単独の疎水性化合物又は疎水性化合物の混合物を含むことができる。疎水性物質は、「マーチンデール準薬局方(Martindale、The Extra Pharmacopoeia)」(第28版;The Pharmaceutical Press:ロンドン、1982年;1063-1072頁)の好適な担体物質のリストに記載されたように、当業者に公知であり、かつ市販されている。このコア物質の選択における考察は、活性成分及び官能マーカー(sensory marker)に対する良好な障壁特性、低い毒性及び刺激性、生体適合性、安定性、並びに関心対象の活性成分の高い負荷能を含む。
【0121】
両親媒性又は非イオン性補助界面活性剤は、改善された安定性を提供するために、本発明のマイクロ粒子において使用することができる。補助界面活性剤は、天然の化合物又は非天然の化合物で形成することができる。天然の化合物の例は、リン脂質及びコール酸塩である。非天然の化合物の例は、TweenとしてUnigema surfactants社により販売されている、ポリエトキシル化されたソルビトールの脂肪酸エステルである、ポリソルベート;ヒマシ油などの給源由来の脂肪酸のポリエチレングリコールエステル;ステアリン酸などの、ポリエトキシル化された脂肪酸;ポリエトキシル化されたイソオクチルフェノール/ホルムアルデヒドポリマー;PluronicとしてBASF社から入手可能な、ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーなどの、ポロキサマー;BrijとしてICI surfctants社から入手可能な、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル;Triton NとしてUnion Carbide社により販売される、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;Triton XとしてUnion Carbide社により販売される、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル;及び、SDSを含む。様々な化学種の界面活性剤の混合物を含む、界面活性剤分子の混合物を、本発明において使用することができる。界面活性剤は好ましくは、医薬投与に適し、かつ送達されるべき薬物と相溶性がある。
【0122】
特に好適な界面活性剤は、高度に生体適合性である、リン脂質を含む。特別に好ましいリン脂質は、大豆又は卵レシチンなどの、ホスファチジルコリン(レシチン)である。他の好適なリン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、及びホスファチジルエタノールアミンを含む。これらのリン脂質は、天然の給源から単離されるか、又は合成により調製される。リン脂質界面活性剤は、疎水性コアの単独の単層コーティングを通常形成すると考えられる。この補助界面活性剤は、疎水性コア成分の重量に対して、約5%未満、好ましくは約1%未満、より好ましくは約0.1%未満の量で存在することができる。一部の実施態様において、1種以上の補助界面活性剤を使用することができる。
【0123】
別の好ましい実施態様において、本栄養補給剤は、炭水化物の取り込みを変更する化合物を含む。胃腸管において、クロム及びバナジウム(個別に、又は好ましくは協調してのいずれか)は、典型的にはブドウ糖の吸収を遅らせることにより、糖質輸送(例えばブドウ糖輸送)を変更する。より遅いブドウ糖吸収は、インスリン放出を遅くし、かつ食後上昇する血中ブドウ糖レベルに反応した過剰なインスリン反応を軽減する。このことは、体によるブドウ糖の検出、吸収及び代謝の初期相にわたり、ブドウ糖負荷及びブドウ糖負荷速度の両方を減少することにより、インスリンの膵分泌のためになる。低下したブドウ糖負荷速度は、上昇するブドウ糖に反応するインスリンに通常関連したβ細胞に対するストレスを減少する。更には、より遅いか又は変更されたブドウ糖吸収は、ブドウ糖負荷が完了する前、又はブドウ糖負荷がより遅い速度である期間のいずれかで、インスリンがより長い時間、正常な糖質代謝経路を刺激することを可能にする。結果的に、インスリン依存機構は、腸から糖質の到着(arrival)に準備するために、より多くの時間を有する。このブドウ糖吸収の変更は、肝臓、筋肉、及び脂肪組織における、短期間のインスリン変更を改善する。胃腸管におけるこれらの作用は、あらゆる可能性において、短期間の反応であり、かつこれらは、クロム及びバナジウム投与の長期間全身作用に必ずしも随伴していない。
【0124】
加えてクロム及びバナジウムは、腸、特に糖質代謝(吸収を含む)に寄与する腸上皮との相互作用により、潜在的にブドウ糖代謝を遅延することができる。腸管内の糖質輸送に関するひとつの主要な機構は、ナトリウム促進された糖質輸送である。そのような輸送体は、上皮の内腔膜(lumenal menbrane)内に位置している。側底側細胞膜も、細胞の外側へ及び血液の中への輸送を促進する、追加の糖質輸送体である。腸管腔から血液への正味の糖質吸収に関して、ナトリウムで促進される糖質輸送は、ナトリウムの内腔から上皮細胞への拡散に好ましいナトリウム濃度を一般に必要とする。この濃度勾配は、上皮細胞内のNa/K ATPaseの能動輸送により大部分生じ、これは概して3個のナトリウム原子を細胞外へ、上皮の血液側へと輸送し、逆方向で2個のナトリウム原子と交換する。
【0125】
各ポンプサイクルは、ナトリウム及びカリウム各々の濃度勾配に対抗するナトリウム及びカリウムの輸送のために、1個のATPの加水分解を必要としている。この加水分解反応は、二価の陽イオン、典型的にはマグネシウムを必要としている。しかし多くの場合、その他の二価の陽イオンは、様々な程度の触媒活性又は阻害を伴い、置換するか、又は加水分解反応に進入することができる。本サイクルにおける三価の陽イオンの二価の陽イオンとの置換は、一般に、ポンプ活性及び/又はリン酸化酵素中間体状態からの脱リン酸化の著しい阻害につながる。従ってクロムは、マグネシウムと置換することにより、Na/K ATPase活性を阻害することができ、これによりマグネシウムに比べ、触媒及び輸送活性を阻害し、内腔膜を超えるナトリウム勾配の減少を生じる。減少した勾配は、腸管からの糖質の進入に好ましい、熱力学及び動態の力を減少することにより、糖質輸送に作用する。
【0126】
加えてNa/K ATPaseの触媒サイクルにおけるATPの加水分解時に、リン酸化酵素中間体(EP)は、APTaseの活性部位で、リン酸塩とアスパラギン酸の間で形成される。この共有結合的EPは、一過性であり、かつキナーゼ及びホスファターゼに関連したリン酸化タンパク質とは化学的に区別され、これは同じくバナジウムにより影響を受けることが示されている。Na/K ATPaseの触媒サイクルにおけるEPの形成は、1マイクロモル未満の低濃度で存在するバナジン酸塩により阻害される。バナジン酸塩は、EPよりもむしろ、バナジル-酵素、又はEV錯体のリン酸塩の遷移状態アナログとしての、活性部位に結合する。EV錯体からのバナジン酸塩の喪失の動態は比較的遅いので、このEV錯体は、高度に安定している。従ってバナジン酸塩は、EVの形成を介した触媒の破壊により、Na/K ATPaseを効果的に阻害し、内腔膜を超えるナトリウム勾配の減少を生じる。結果的にこの減少した勾配は、腸からの糖質の進入を減少する。
【0127】
クロム及びバナジウムは、腸管からのこれら2種の遷移金属の吸収後に、全身レベルでも作動する。活性の主要部位は、肝臓、筋肉及び脂肪組織を含む。バナジウムは、代謝の変更に寄与する多くのリン酸化タンパク質を含む、リン酸化システムに関して特定の活性を有することができる。クロムも、細胞レベルで代謝を変更することができる。これらの全身作用は一般に、インスリンの作用並びに/又は糖質及び/若しくは脂質代謝に関連した代謝経路を改善する。
【0128】
被験組成物、及びそれらの様々な成分の吸収及び代謝に関して、消化管の特徴は、本発明の組成物及びこれを使用する方法が経口摂取される場合に、どのようにして利用されるかに影響を及ぼし得る。胃腸管を含む消化管の要素は、そのようなモダリティに必要な用量に影響を及ぼし得る。そのような特徴は、当業者に周知である。
【0129】
別の好ましい実施態様において、本栄養組成物は、従来型装置及び当該技術分野において公知の技術を用い、錠剤、カプレット、粉末、顆粒、ビーズ、チュアブルロゼンジ、カプセル、液剤、水性懸濁液又は溶液又は同様の剤形などの、単位剤形に製剤されている。そのような製剤は典型的には、固形、半固形、又は液体の担体を含む。担体の例は、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、鉱油、カカオバター、カカオ脂、アルギン酸塩、トラガカントゴム、ゼラチンシロップ、メチルセルロース、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどを含む。
【0130】
経口投与に適した他の製剤は、各々が活性成分として補給剤又はそれらの成分を所定量含有する、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(通常ショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントゴムである、香味基剤を使用する)、粉末、顆粒の形状で、又は水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンとして、又はエリキシル剤若しくはシロップとして、又は香錠として(ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴムなどの、不活性基剤を使用する)であることができる。補給剤又はそれらの成分は、ボーラス剤、舐剤、又は泥膏として投与することもできる。
【0131】
別の製剤において、本栄養補給剤は、飲料品中に提供される。本発明の飲料品は、炭酸飲料、例えば、香味のついた天然発泡水、ソフトドリンク又はミネラルドリンクに加え、炭酸ではないジュース、パンチ及びこれらの飲料品の濃縮物であることができる。ソフトドリンクの様式で炭酸ガス注入された飲料品、特にジュース及びコーラ飲料に加え、「非発泡性」飲料品及びネクター及びそのままの濃度の(full-strength)飲料品又はジュースを少なくとも約45質量%含有する濃縮飲料も、企図されている。
【0132】
例として、ここで使用される果実ジュース及び果実香料は、ブドウ、ナシ、パッショフルーツ、パイナップル、バナナ又はバナナピュレ、アプリコット、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、リンゴ、クランベリー、トマト、マンゴー、パパイヤ、ライム、ミカン(tangerine)、サクランボ、ラズベリー、ニンジン及びそれらの混合物を含む。加えて、例えばコーラなどの人工香料、又はこれらのジュース由来の天然香料を、本飲料品において使用することができる。チョコレートフレーバー及び他の非-果実香料も、ビタミン及びミネラル補給剤を含有する飲料品を製造するために使用することができる。加えて、ウシから得られた又は合成のミルクは、それに本発明の粉末組成物を添加することができるよう企図された飲料品である。このミルクは、それ自身、他の飲料品成分、特にチョコレート、コーヒー、又はストロベリーなどの香料を含有することができる。本明細書において使用される用語「ジュース製品」は、果実及び野菜ジュース飲料、並びに果実ジュースを少なくとも約45%含む果実及び野菜濃縮ジュースの両方をいう。本明細書において使用される場合、野菜は、塊茎、葉、外皮などの果実ではない可食性植物部分、並びに別に指摘されない場合は、ジュース又は飲料品香味料として提供される任意の穀粒、堅果、豆、及び芽の両方を含む。
【0133】
好ましい一実施態様において、スポーツ飲料品は、本発明の粉末組成物により補給することができる。典型的スポーツ飲料品は、水、ショ糖シロップ、ブドウ糖-果糖シロップ、及び天然香料又は人工香料を含有する。これらの飲料品は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸一カリウムに加え、発汗時の電解質喪失の補充に有用である他の物質も含有することができる。
【0134】
表2及び3は、代表的スポーツドリンク及びエネルギードリンク製品の成分を示している。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0135】
本明細書において使用される用語「ジュース飲料」とは、濃度100%の(single-strength)、直ぐ飲める、可飲性の形状である果実又は野菜ジュース製品をいう。本発明のジュース飲料は、典型的には少なくとも約95%ジュースを含む「そのままの濃度」型であることができる。そのままの濃度のジュース飲料は、例えば、オレンジ、レモン、リンゴ、ラズベリー、サクランボ、アプリコット、ナシ、グレープフルーツ、ブドウ、ライム、ミカン、ニンジン、パイナップル、メロン、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツ、バナナ及びバナナピュレ、クランベリー、トマト、ニンジン、キャベツ、セロリ、キュウリ、ホウレンソウ、及び様々なそれらの混合物などの、そのような100%ジュース製品も含む。ジュース飲料は、「ネクター」と称されるイクステンディッドジュース製品も含む。これらのイクステンディッドジュース製品は、典型的には約50%〜約90%、約55%〜約85%、約60%〜約80%、約65%〜約75%のジュースを、好ましくは約50%〜約70%のジュースを含む。ネクターは通常、添加された糖質又は人工甘味料又は炭水化物代用品を含む。本明細書において使用される用語「シトラスジュース」は、オレンジジュース、レモンジュース、ライムジュース、グレープフルーツジュース、ミカンジュース及びそれらの混合物から選択された果実ジュースをいう。
【0136】
本明細書において使用される用語「ジュース材料」は、濃縮された果実又は野菜のジュースに加え、ジュース芳香及び香料揮発分、皮の油(peel oils)、及び果肉又は搾りかすなどの他のジュース材料をいう。本明細書において使用される用語「濃縮ジュース」とは、適量の水で希釈された場合に、可飲性のジュース飲料を形成する果実又は野菜ジュース製品をいう。本発明の範囲の濃縮ジュースは、典型的には、3〜5重量部の水で希釈した場合に、可飲性の飲料品を提供するように製剤される。
【0137】
本明細書において使用される用語「濃縮飲料」又は「瓶詰めシロップ」とは、香料、水、及び約10%〜約60%、約20%〜約50%又は約30%〜約40%の糖質又は炭化物代用品、例えばショ糖、デキストロース、固形コーンシロップ、果糖、デキストリン、ポリデキストロース及びそれらの混合物の混合物をいう。
【0138】
本飲料品及び濃縮飲料の香料成分は、果実香料、野菜香料、植物香料及びそれらの混合物から選択された香料を含む。本明細書において使用される用語「果実香料」とは、種子植物の可食性繁殖部分、特に種子に関連した甘味果肉(sweet pulp)を有する部分に由来したそのような香料をいい、並びに「野菜香料」とは、種子の他の可食性部分及び他の植物に由来した香料をいう。用語「果実香料」及び「野菜香料」には、天然の給源に由来した果実又は野菜の香料を模倣するように製造された、合成により調製された香料も含まれる。特に好ましい果実香料は、オレンジ、レモン、ライム、及びグレープフルーツ香料を含む、シトラス系香料である。シトラス系香料に加え、リンゴ、ブドウ、サクランボ、パイナップル、マンゴー及びパパイヤ香料などの、様々な他の果実香料を使用することができる。これらの果実香料は、ジュース及び香油などの天然の給源に由来するか、又は合成により調製することができる。本明細書において使用される用語「植物香料」とは、果実以外の植物部分に由来する香料;すなわち、堅果、樹皮、根及び葉、並びにコーヒー、ココア及びバニラなどの豆に由来する香料をいう。用語「植物香料」には、天然の給源由来の植物香料を模倣するように製造された、合成により調製された香料も含まれる。そのような香料の例は、コーラ、茶、コーヒー、チョコレート、バニラ、アーモンドなどを含む。植物香料は、精油及び抽出物などの天然の給源に由来することができるか、又は合成により調製されることができる。
【0139】
前記香料成分は、コーラ香料などを形成するために、様々な香料、例えばレモン及びライム香料、コーラ香料及びシトラス系香料の配合物を含むことができる。望ましいならば、オレンジ、レモン、ライム、リンゴ、ブドウ、 ニンジン、セロリなどのジュースのようなジュースを、香料成分において使用することができる。この香料成分中の香料は時には、エマルジョン滴に形成され、その後これは濃縮飲料中に分散される。これらの液滴の比重は通常水の比重未満であり、結果的に分離相を形成するので、増量剤(これは濁り剤として作用することもできる)が、飲料品中に分散されたエマルジョン滴を維持するために典型的には使用される。そのような増量剤の例は、臭素化された植物油(BVO)及びロジンエステル、特にエステルガムである。液体飲料品中の増量剤及び濁り剤の使用の更なる説明については、Green, L. F.の文献、「ソフトドリンク技術の開発(Developments in Soft Drinks Technology)」;Applied Science Publishers:ロンドン、1978年;1巻、87-93頁を参照されたい。増量剤に加え、乳化剤及びエマルジョン安定剤を、エマルジョン滴を安定化するために使用することができる。そのような乳化剤及びエマルジョン安定剤の例は、ガム、ペクチン、セルロース、ポリソルベート、ソルビタンエステル及びアルギン酸プロピレングリコールを含む。前掲のGreen, L. F.の文献の92頁を参照されたい。飲料品及び濃縮飲料に香料の特徴を与えるのに有効な特定量の香料成分(「香味増強剤」)は、選択された香料(類)、望ましい香料の印象、及び香料成分の形状によって決まる。
【0140】
前記香料成分は、該飲料品組成物の少なくとも0.05質量%、典型的には炭酸飲料の0.1%〜2質量%を構成することができる。ジュースが香料として使用される場合、この香料成分は、濃度100%を基に、飲料品の最大25重量%果実ジュース、好ましくは炭酸飲料の5%〜15重量%ジュースを構成することができる。
【0141】
二酸化炭素は、希釈後炭酸化を実現するために、飲料品シロップと混合される水へ、又は可飲性飲料品へ、導入することができる。この炭酸飲料は、瓶又は缶などの容器へ入れられ、次に密封されることができる。任意の従来の炭酸化方法を使用し、本発明の炭酸飲料を作製することができる。飲料品へ導入される二酸化炭素の量は、使用される特定の香料システム及び望ましい炭酸化の量によって決まるであろう。通常本発明の炭酸飲料は、二酸化炭素を1.0〜4.5容量含む。好ましい炭酸飲料は、二酸化炭素を2〜約3.5容量含む。
【0142】
本発明は、水及びシトラスジュースを含む、飲料品及び濃縮飲料の補給にも特に適している。本飲料品は、3%〜100%のジュース又は約0.05%〜約10%の人工若しくは天然香料、特にオレンジジュースを含むことができる。本発明の方法において使用される濃縮されたオレンジジュース、オレンジジュース芳香及び香料揮発分、果肉及び皮の油は、標準のオレンジジュースから得ることができる。オレンジ、グレープフルーツ及びミカンの標準の加工処理については、Nagy, S.;Shaw, P. E.;Veldhuis, M. K.の文献、「シトラスの科学と技術(Citrus Science and Technology)」;AVI Publishing:コネチカット州ウェストポート、1977年;2巻、177-252頁を参照されたい。(同じく、非シトラスジュース製品用のジュース及びジュース物質の給源を提供するための、リンゴ、ブドウ、パイナップルなどの非シトラスジュースの標準加工処理については、Nelsonらの文献、「果実及び野菜ジュースの加工処理技術(Fruit and Vegetable Juice Processing Technology)」、第3版;AVI Publishing:コネチカット州ウェストポート、1980年、180-505頁も参照されたい)。
【0143】
様々な給源からのジュースは、ジュースの糖質対酸の比を調節するために、配合されることが多い。望ましい香料及び糖質対酸の比を得るために、多種多様なオレンジが配合されることができるか、又は異なるジュースが配合されることができる。約8:1〜約20:1の糖質対酸の比は、果実ジュースにとって受け入れられると考えられる。しかし好ましい糖質対酸の比は典型的には、特にシトラスジュースに関して、約11:1〜約15:1である。甘味料は、通常ジュース製品中に存在する糖質、例えばブドウ糖、ショ糖及び果糖を含む。糖質は、高果糖コーンシロップ、転化糖シロップ、ソルビトールを含む糖アルコール、精製シロップ、及びそれらの混合物も含む。糖質に加え、本発明のイクステンディッドジュース飲料は、他の甘味料を含むことができる。他の好適な甘味料は、サッカリン、シクラメート、アセスルファム、L-アスパルチル-L-フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味料(例えばアスパルテーム)を含む。そのようなイクステンディッドジュース製品において使用するための好ましい甘味料は、アスパルテームである。濃度100%のジュース飲料について、糖質含量は、約2°〜約16°Brixの範囲であることができる(16°Brixは、ジュースが約16%の可溶性固形物を含有することなどを意味する)。典型的にはそのような飲料品の糖質含量は、そこに含まれるジュースの量によって決まる。
【0144】
経口投与のための固形剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒など)において、本補給剤又はそれらの成分は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムなどの1以上の医薬的に許容し得る担体、及び/又は以下のいずれかと混合される:(1)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及び/又はケイ酸などの、充填剤又は増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシアゴムなどの、結合剤;(3)グリセロールなどの、保湿剤;(4)アガーアガー、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの、崩壊剤;(5)パラフィンなどの、溶解遅延剤;(6)第4級アンモニウム化合物などの、吸収促進剤;(7)例えばアセチルアルコール及びグリセロールモノステアレートなどの、湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイトクレイなどの、吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物などの、滑沢剤;並びに、(10)着色剤。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、本医薬組成物は、緩衝剤も含有することができる。同様の型の固形組成物は、乳糖又はミルクシュガーのような賦形剤、加えて高分子量ポリエチレングリコールなどを使用し、軟及び硬-充填用ゼラチンカプセル中の充填剤として利用することもできる。
【0145】
錠剤は、任意に1以上の付属成分と共に、圧縮又は成形により作製することができる。圧縮錠は、結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム又は架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面-活性化剤又は分散剤を用い調製することができる。成形錠は、好適な機械において、不活性液体希釈剤により湿潤された本補給剤又はそれらの成分の混合物を成形することにより、作製することができる。錠剤、並びに他の固形剤形、例えば糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒などは、任意に刻み目を入れるか、又は腸溶性コーティング及び製剤技術分野において周知のその他のコーティングなどの、コーティング及びシェルと共に調製することができる。
【0146】
錠剤及び他の固形剤形は、望ましい放出プロファイル、他のポリマーマトリクス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で使用し、その中の活性成分の遅延放出又は制御放出を提供するように、製剤されることもできる。これらは、例えば、細菌-保持するフィルターを通す濾過によるか、又は滅菌水中に溶解され得る無菌の固形組成物の形状で滅菌剤の混入によるか、又は使用直前に他の無菌の注射可能な媒体の音波処理により、滅菌することができる。これらの組成物は、不透明化剤も、任意に含むことができ、かつ胃腸管のある部分において、任意に遅延様式で、活性成分(類)のみを又はこれを優先的に放出する組成物であることができる。使用することができる埋め込み組成物の例は、高分子物質及びワックスを含む。この活性成分は、適しているならば、1以上の前記栄養補給剤と共に、マイクロ-封入された形状であることもできる。
【0147】
経口投与のための液体剤形は、医薬として許容し得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を含む。本補給剤又は成分に加え、これらの液体剤形は、例えば水又は他の溶媒などの当該技術分野において通常使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油類(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物などの可溶化剤及び乳化剤を含有することができる。
【0148】
不活性希釈剤に加え、前記経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤及び保存剤などの助剤も含むことができる。懸濁液は、本補給剤又はそれらの成分に加え、例えばエトキシル化されたイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガーアガー及びトラガカントゴム、並びにそれらの混合物などの懸濁化剤を含むことができる。
【0149】
本発明の組成物は、本阻害剤の単回投与量又は分割投与量を含有するカプセル剤又は錠剤として投与されることができる。好ましくは、本組成物は、単回又は分割投与量で、無菌の溶液、懸濁液、又はエマルジョンとして投与される。錠剤は、乳糖及びトウモロコシデンプンなどの担体、並びに/又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含有することができる。カプセルは、乳糖及び乾燥トウモロコシデンプンを含む希釈剤を含有することができる。
【0150】
錠剤は、本活性成分を、任意に1以上の付属成分と一緒に、圧縮又は成形することにより作製することができる。圧縮錠は、好適な機械において、任意に結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、表面活性剤、又は分散剤と混合された、粉末又は顆粒などの自由流動性の形の本活性成分を、圧縮することにより、調製することができる。成形錠は、好適な機械において、粉末化された活性成分及び不活性液体希釈剤により湿潤された好適な担体を、成形することにより、作製することができる。
【0151】
本発明の組成物を混入している剤形を調製する場合、本化合物は、ゼラチン、α化デンプンなどを含む、結合剤;硬化植物油、ステアリン酸などの、滑沢剤;乳糖、マンノース、及びショ糖などの、希釈剤;カルボキシメチルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムなどの、崩壊剤;ポビドン、ポリビニルアルコールなどの、懸濁化剤;二酸化ケイ素などの、吸収剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、及び安息香酸ナトリウムなどの、保存剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80などの、界面活性剤;F.D.&C.色素及びレーキなどの、着色剤;香味料;及び、甘味料などの従来型賦形剤:と配合されてもよい。
【0152】
本発明はここで、以下の非限定的実施例により、更に詳細に説明される。
【実施例】
【0153】
(実施例1:運動競技パフォーマンス向上のための遅延放出型炭水化物製剤)
本実施例の目的は、ピーク運動パフォーマンスを促進する様式で、運動選手へ炭水化物及び他の栄養素を送達する栄養液(nutrition fluid)を開発することである。提唱されたアプローチは、好適なマイクロスフェア又はナノスフェアの水性分散液から可消化炭水化物の制御放出を操作することである。重要な可消化炭水化物は、単糖−ブドウ糖、果糖及びガラクトース;二糖−ショ糖、麦芽糖及び乳糖;並びに、多糖−デンプンを含む。デンプンは、唾液アミラーゼ(口中)及び膵アミラーゼ(小腸中)により、デキストリンへ分解される。デキストリンは、小腸の刷子縁酵素により作用を受け、これも二糖類を単糖類へ変換する。これらの単糖は最終的には、腸上皮を超えて血流へと輸送される。提唱された研究は、血液への持続した取り込みのために、可消化炭水化物、特に単糖類、ブドウ糖及び果糖の制御放出を探求している。
【0154】
胃腸(GI)管の生理学の基本的理解は、この送達システムのデザインにおいて有用である。食物の胃内滞留時間は、最大2時間であり、他の要因の中でも、食事の発熱量によって決まる(例えば、Hadi, N. A.;Giouvanoudi, A.;Morton, R.;Horton, P. W.;Spyrou, N. M.の論文、「シンチグラフィーを使用する単純食と複雑食に関する3つの胃領域の胃内容物排出時間の変動(Variations in gastric emptying times of three stomach regions for simple and complex meals using scintigraphy)」、IEEE Transactions on Nuclear Science, 2002, 49, 2328-2331参照)。本制御放出システムは、搭載された糖質を放出することなく、胃内滞留時に胃の酸性pH(1〜3)に耐えることができなければならない。ほとんどの栄養素が吸収される小腸内の滞留時間は、約3時間である。より長い期間にわたる栄養素送達のために、栄養素を粘膜付着特性を持つ担体内に封入することにより実現され得る腸管滞留の延長が必要である。カルボン酸基を含む親水性ポリマーは、良好な粘膜付着特性を示す。糖質の制御放出システムのデザインにおける重要な工程は、炭水化物を封入する担体物質の選択である。多糖及びそれらの誘導体は、それらの無毒の性質及び優れた生体適合性のために、持続放出型薬物送達のための担体及び組織工学における足場として選択されるポリマーである(例えば、Dumitriu, S.;Dumitriu, M.の文献、「薬物送達システムのための支持体としてのヒドロゲル(Hydrogels as support for drug delivery systems)」、Polysaccharides in Medicinal Applications;Dumitriu, S.編集;Dekker:ニューヨーク、1996年;705-764頁;Coviello, T.;Matricardi, P.;Marianecci, C;Alhaique, F.の文献、「修飾された放出製剤のための多糖ヒドロゲル(Polysaccharide hydrogels for modified release formulations)」、J. Control. Rel. 2007, 119, 5-24;及び、Kong, H.;Mooney, D. J.の文献、「組織工学における多糖-ベースのヒドロゲル(Polysaccharide-based hydrogels in tissue engineering)」、Polysaccharides、第2版;Dumitriu, S.編集;Dekker:ニューヨーク、2005年;817-837頁参照)。これらは、食品製剤における香料封入のためにも使用されている(例えば、Madene, A.;Jacquot, M.;Scher, J.;Desobry, S.の論文、「香料封入及び制御放出−総説(Flavour encapsulation and controlled release-a review)」、International Journal of Food Science and Technology、2006, 41, 1-21参照)。
【0155】
多糖の配合物は、マイクロ粒子又はナノ粒子の水性分散液を合成するために使用される。ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなどの、疎水化多糖は、水中で自発的にナノ粒子を形成することは公知である。これらのポリマーの、カルボン酸基を含む多糖との相互貫入ポリマー網目が、合成されている。図1は、3種の重要なカルボキシ-含有多糖の化学構造を示している。カルボキシメチルセルロース骨格のモノマー単位は、β-(1→4)結合を介して連結されたD-ブドウ糖残基からなる。アルギン酸塩は、給源のアルギン酸塩に応じてポリマー鎖に沿って量及び逐次分布が変動する、(1→4)-連結されたβ-D-マンヌロン酸及びα-L-グルロン酸モノマーから構成される。ヒアルロン酸は、交互に(1→4)-連結された2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコースと(1→3)連結されたβ-D-グルクロン酸からなる、線状ポリマーである。
【0156】
GI管内のこれらの粒子の安定性を増大するために、これらの粒子は架橋され、ヒドロゲルを形成する。望ましい放出動態を実現するために、様々な架橋機序が研究されている。架橋は、過硫酸塩などのフリーラジカル開始剤、又はアスコルビン酸が関与するレドックスシステム、又はゲニピンなどの天然の架橋剤を用いて、実行される。イオン架橋も研究されている。ゲランなどの陰イオン性多糖類は、食品製剤中では望ましくないホウ砂などの化学物質の代わりに、イオン架橋に使用することができる。
【0157】
カルボキシ含有ヒドロゲル粒子は、胃の酸性環境においては崩壊状態であることが予想される。従って、封入された糖分子は、胃内では粒子内に貯留される。このヒドロゲル粒子は、小腸(pH5〜7)に到達した時点で膨潤状態となり、胃内におけるよりもより迅速に封入された糖質を放出するであろう。
【0158】
数名の研究者らは、制御放出のための多糖粒子及びヒドロゲルの合成を研究している。しかしこれらの研究のほとんどは、担体中の比較的疎水性の薬物又はタンパク質高分子の取り込みに焦点を当てていた。この提唱された研究の目的は、糖質などの小型の親水性分子を封入することである。ヒドロゲル粒子と水相の間の糖質分子の平衡分配が決定される。多糖担体と封入された単糖の化学構造の類似性のために、多糖ヒドロゲルの封入効率は、他のヒドロゲルのものよりも高いことが予想される。
【0159】
炭水化物に関する遅延放出システムを報告した研究は、わずかに数種存在するのみである。Fox及びAllenは、炭水化物マイクロ粒子を可食性遅延型-放出コーティングでコーティングした(Fox, G. J.;Darlene, A.の特許、「封入された炭水化物の放出制御のための方法及び組成物(Method and composition for controlling the release of carbohydrates by encapsulation)」、米国特許第5536156号、1996年7月16日)。このコーティングされた炭水化物は、経口摂取された場合に、炭水化物の消化系への時間遅延された放出を引き起こす。このコーティングされた粒子は、サイズが30〜100μmであり、固形粒子の形状で貯蔵された。これに対し本出願人は、水性媒体中に分散されている制御放出粒子を開発することを追求している。Lake及びSmithは、糖尿病患者における血中ブドウ糖の改善された長時間管理に使用され得るデンプン顆粒の調製を報告している(Lake, M.;Smith, U.の特許、「長時間の血糖管理のための組成物及び方法(Composition and method for long-term glycemic control)」、国際特許出願WO/2006/022585、2006年2月3日)。遅延-放出型デンプン製剤は、夜間の低血糖の発生を減少するようにデザインされ、ここで該患者は、就寝時に治療量のデンプン顆粒を服用する。Zecherは、共有結合的に架橋された多糖からなる同様の制御放出型炭水化物組成物を報告している(Zecher, D. C.の特許、「架橋された多糖中に包埋された制御放出型炭水化物(Controlled release carbohydrate embedded in a crosslinked polysaccharide)」、国際特許出願WO/2000/032064、2000年8月6日)。しかし、この架橋された炭水化物は、粒子形状ではなく、かつ水性懸濁液の形状でもなかった。
【0160】
下記セクションは、多糖ヒドロゲルの合成方法を説明する。
疎水化された多糖は、水性環境中でのそれらの自己集合特性のために、ナノ粒子の合成を高度に促進する。Akiyoshi及びSunamotoは、コレステロールなどの疎水性物質により官能基化された多糖は、水中に分散された場合に、自発的にナノ粒子を形成したことを認めた(Akiyoshi, K.;Sunamoto, J.の論文、「疎水化された多糖の超分子集合体(Supramolecular assembly of hydrophobized polysaccharides)」、Supramolecular Science, 1996, 3, 157-163)。このナノ粒子のサイズ、密度及びコロイド安定性は、疎水性物質のグラフト密度及び疎水度を調整することにより制御することができる。プルラン、デキストラン及びマンナンなどの多糖は、アルキル長鎖及びコレステロールなどの様々な疎水基により部分的に置換された。例えば分子量55kDaのプルランは、コレステロールにより官能基化される場合(〜1.7コレステロール部分/ブドウ糖100ユニット)、サイズが20〜30nmであるナノ粒子を自発的に形成した(Akiyoshi, K.;Deguchi, S.;Tajima, H.;Nishikawa, T.;Sunamota, J.の論文、「疎水化された多糖の自己集合体:ヒドロゲルナノ粒子の構造及び有機化合物との複合体形成(Self-assembly of hydrophobized polysaccharide: Structure of hydrogel nanoparticle and complexation with organic compounds)」、Proc. Japan Acad. 1995, 71, 15-19)。コレステロールを有するプルランは、自己凝集され、水中の懸濁液の超音波処理後に、単分散の安定したナノ粒子を形成した。90℃で1時間加熱した後であっても、凝固は生じなかった。これらのナノ粒子は、抗腫瘍アドリアマイシンなどの疎水性物質(Akiyoshi, K.;Taniguchi, I;Fukui, H.;Sunamoto, J.の論文、「疎水化された多糖の自己集合により形成されたヒドロゲルナノ粒子:複合体形成によるアドリアマイシンの安定化(Hydrogel nanoparticle formed by self- assembly of hydrophobized polysaccharide. Stabilization of adriamycin by complexation)」、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 1996, 42, 286-290)、及び様々な水溶性タンパク質の受入れのために使用されるが、小型の水溶性分子の封入は報告されなかった。
【0161】
Simi及びAbrahamは、触媒として過硫酸カリウムを使用し、デンプン上にグラフトされた脂肪酸を得た(Simi, C. K.;Abraham, T. E.の論文、「薬物送達のための疎水性グラフトされ架橋されたデンプンナノ粒子(Hydrophobic grafted and crosslinked starch nanoparticles for drug delivery)」、Bioprocess and Biosystems Engineering, 2007, 30, 173-180)。改質デンプン分子から生じたナノ粒子は更に、トリポリリン酸ナトリウムとの架橋により、安定化された。このナノ粒子は、疎水性薬物の封入に使用された。
【0162】
Thielemansも、ステアリン酸クロリド(疎水性物質)及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(親水性分子)を使用し、ナノスケールのデンプン粒子の表面修飾を成功した(Thielemans, W.;Belgacem, M. N.;Dufresne, A.らの論文、「巨大鎖表面修飾を伴うデンプンナノ結晶(Starch nanocrystals with large chain surface modifications)」、Langmuir, 2006, 22, 4804-4810)。Wooらは、アクリロイル-修飾されたヒドロキシエチルデンプンを使用する、多糖マイクロスフェアの合成を報告した(Woo, B. H.;Jiang, G.;Jo, Y. W.;DeLuca, P. P.の論文、「タンパク質送達のための複合PLGA及びポリ(アクリロイルヒドロキシエチルデンプン)マイクロスフェアシステムの調製及び特徴決定(Preparation and characterization of a composite PLGA and poly(acryloyl hydroxyethyl starch) microsphere system for protein delivery)」、Pharmaceutical Research, 2001, 18, 1600-1606)。これらのマイクロスフェアは、制御されたタンパク質送達のためにタンパク質を負荷するそれらのパフォーマンスについて調べた。
【0163】
Basheerらは、ヒドロキシエチルデンプンを脂肪酸(ラウリン酸、パルミチン酸及びステアリン酸)と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びジメチルアミノピリジン(DMAP)を用い、穏やかな反応条件下で反応させた(Besheer, A.;Hause, G.;Kressler, J.;Mader, K.の論文、「疎水性に改質されたヒドロキシエチルデンプン:合成、特徴決定及び:ナノサイズのポリマーミセル及び小胞への水性自己集合(Hydrophobically modified hydroxyethyl starch: Synthesis, characterization, and aqueous self-assembly into nano-sized polymeric micelles and vesicles)」、Biomacromolecules,2007, 8, 359-367)。得られたポリマーは、自己集合し、2〜30nmのミセル及び250〜350nmのポリマー小胞を形成した。しかしDCC及びDMAPなどの化学物質は、潜在的に有毒であり、可食性製剤においては使用することができない。
【0164】
Chakrabortyらは、動的光散乱を用い、水中のデンプンナノ粒子の溶液特性を研究した(Chkraborty, S.;Sahoo, B.;Teraoka, I;Gross, R. A.の論文、「動的光散乱により研究された水及びDMSO中のデンプンナノ粒子の溶液特性(Solution properties of starch nanoparticles in water and DMSO as studied by dynamic light scattering)」、Carbohydrate Polymers, 2005, 60, 475-481)。ナノ粒子は、Ecosynthetix社(ランシング、MI)から入手され、かつトウモロコシデンプンから、架橋剤としてグリオキサールを用い、合成された。デンプン、グリセロール(乾燥デンプンの18重量%)、及びグリオキサール(0.1〜10重量%)の混合物を押出し、架橋されたデンプン顆粒を得た。これらの顆粒は、低温処理により摩砕され、篩分けされ、直径が150nmよりも小さい粒子を得た。動的光散乱又は水中の粒子は、平均直径40〜300nmで、各々、孤立したデンプンナノ粒子及びそれらの凝集体で構成される、2つの主な集団を示した。より高い濃度(〜3%w/w)で、第三のピークが、粒子凝集のために約1μm当たりに出現した。粒子凝集の制御は、炭水化物ナノ粒子のデザインにおいて、重要な工程である。
【0165】
提唱された多糖ヒドロゲルの重要な特徴は、それらのpH反応性である。理想的には、これらのヒドロゲルは、胃の酸性環境においては膨潤しないが、小腸へ進入した時点で膨潤し、かつ封入された糖質を制御された速度で放出しなければならない。本セクションは、多糖マトリックスは、酸性環境において不溶性であるが、より高いpH値では完全に溶解される極端な例を検証する。
【0166】
スクレログルカンは、完全な加水分解時に、D-ブドウ糖のみ生じる、分岐したホモ多糖である。このポリマーは、(1→3)-連結されたβ-D-グルコピラノシル単位の主鎖からなる。このポリマーは、主鎖に沿った3番目の単位毎に、枝として、1つの(1→6)-連結されたβ-D-グルコピラノシル単位を持つ。スクレログルカンのグルコピラノース側鎖は、二工程反応により酸化され:最初に過ヨウ素酸塩により、アルデヒド誘導体を形成し、次に亜塩素酸塩により、カルボキシル化された誘導体を生じ、これはスクレロックス(sclerox)と称される(例えば、図2、及びCoviello, T.;Palleschi, A.;Grassi, M.;Matricardi, P.;Bocchinfuso, G.;Alhaique, F.の論文、「スクレログルカン:修飾された薬物送達のための汎用多糖(Scleroglucan: A versatile polysaccharide for modified drug delivery)」、Molecules, 2005, 10, 6-33参照)。酸化剤と多糖の間の比を変動することにより、本ポリマーは、異なる程度に酸化される。60%を上回る酸化で、スクレロックスは、環境条件に感受性となり、pHにより媒介された可逆的ゾル-ゲル転移をもたらすことがわかった。。モデル分子の透過は、ゾル及びゲルを通り異なる速度で生じ、結果的にスクレロックス錠剤からの放出は、胃液及び腸液を模倣する2つの環境において、各々、異なるプロファイルを示した。
【0167】
酸性媒体において、この剤形の周りの膨潤層の形成は、送達の速度の決定における基本的役割を獲得したのに対し、より高いpH値では、浸食及び溶解が優先し始める。本製剤中のクエン酸などの酸性物質の添加は、模倣された腸液における放出速度を減少した。この送達速度は、GI管を通る通過時間に関しては依然速すぎる。従って別の戦略が使用された。多糖は、その側鎖にアルデヒド基又はカルボキシル基を導入するために、最初に誘導体化された。これらの基は次に架橋され、より安定した三次元網目を生成した。
【0168】
Pitarresiらは、UV照射による、メタクリル酸無水物で官能基化された炭水化物の架橋を報告している。ヒアルロン酸は、メタクリル酸無水物により最初に誘導体化された。比較的低分子量のヒアルロン酸(174kDa)は、水に溶解し、2%(w/v)溶液を形成する。5N NaOHを同時に添加しながら(pHを8〜9に維持するため)、20倍過剰量のメタクリル酸(ヒアルロン酸の反復単位のモル数に関して)を添加した。この反応は、4℃で維持し、かつ24時間攪拌した。次にこの反応混合物を、エタノール中で沈殿させ、この生成物を回収し、遠心分離及びゲル透過クロマトグラフィーにより精製した。
【0169】
Giezenらは、デンプン又はデンプン誘導体が、ジアルデヒド又はポリアルデヒドを用い、架橋されたバイオポリマーナノ粒子を作製する方法を開示した(例えば、Giezen, F. E.;Jongboom, R. O. J.;Fell, J.;Gotlieb, K. F.;Boersma, A.の特許、「バイオポリマーナノ粒子(Biopolymer nanoparticles)」、米国特許第6677386号、2004年1月13日参照)。可塑剤グリセロールを、マレイン酸、シュウ酸又はクエン酸などの酸と一緒に、この方法において使用した。ジアルデヒド及びグリセロールなどの化学物質は、食品成分としては適していないことは注意されなければならない。この架橋されたナノ粒子は、平均粒子サイズ400nm未満を有した。これらの粒子を10重量%含有する水性分散液の粘度は、150mPas未満の粘度(剪断速度186s-1で測定)を有した。
【0170】
この製剤粘度は、粒子濃度の増加と共に増加すると予想された。第一の近似式として、懸濁液の粘度は、アインシュタイン式η=ηw (1+2.5φ)により、粒子濃度に関連し、式中、ηは分散液の粘度であり、ηwは水相の粘度であり、φは分散液中の粒子の体積分率である。粒子の体積分率は:
【数1】
により得られ、式中、ρpは粒子の密度であり、ρwは水相の密度であり、mは分散液中の粒子の質量分率である。分散液粘度は、分散液中の2つの隣接する粒子の表面の間の平均距離である粒子間距離Hによっても左右される。六方最密充填構造を持つ単分散の粒子の集団に関して、粒子間距離は:
【数2】
により得られ、式中、Dは粒子直径である。従って分散液中のポリマーの所定の質量分率(すなわち、固定されたφ)に関して、分散液粘度は、粒子のサイズがより小さい場合に、より高いと予想される。本実施例において、分散液の粘度は、水の粘度(〜1mPas)に近いように調整される。
【0171】
Magnaniらは、アルギン酸塩、ヒアルロナン、及びカルボキシメチルセルロースを使用し、多糖ヒドロゲルを合成した(例えば、Magnani, A.;Rappuoli, R.;Lamponi, S.;Barbucci, R.の論文、「新規多糖ヒドロゲル:特徴及び特性(Novel polysaccharide hydrogels: characterization and properties)」、Polym. Adv. Technol. 2000, 11, 488-495、及びBarbucci, R.;Consumi, M.;Lamponi, S.;Leone, G.の論文、「生体応用のための多糖ベースのヒドロゲル(Polysaccharides based hydrogels for biological applications)」、Macromol. Symp. 2003, 204, 37-58参照)。この架橋手順は、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージドによるカルボキシラート部分の活性化、及び架橋剤としての1,3-ジアミノプロパンの使用からなる。ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液は、強酸交換樹脂Dowex 50WX8(Fluka社)による4℃での処理により、カルボン酸に転換した。この溶液を、5%水酸化テトラブチルアンモニウム溶液に添加し、pH8〜9を達成した。この多糖のテトラブチルアンモニウム塩を、凍結乾燥後、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。0℃に維持したこの溶液に、化学量論的量の2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージドを添加した。その後この溶液へ、架橋剤ジアミンを過剰に添加し、この反応混合物を、室温で4時間攪拌しながら維持した。この反応は、ヨウ化水素捕獲者(captor)として作用する、少量のトリエチルアミンの添加により促進された。巨視的ゲルが得られた。マイクロ-又はナノ粒子の合成は、報告されなかった。更に、関与した化学物質は、食品製剤には適していない。
【0172】
Kabraらは、下限臨界溶解温度(LCST, 41℃)を上回る温度での、ポリマーのジビニルスルホンによる架橋により、ヒドロキシルプロピルセルロースのマクロゲルを調製した(例えば、Kabra, B. G.;Gehrke, S. H.;Spontak, R. J.の文献、「細孔性反応性ヒドロキシプロピルセルロースゲル、1.合成及び微細構造(Microporous, responsive hydroxypropyl cellulose gels. 1. Synthesis and microstructure)」、Macromolecules, 1998, 31, 2166-2173参照)。Caiらは、同じ反応を使用し、ヒドロキシルプロピルセルロースナノ粒子の水性懸濁液を調製した(例えばCai, T.;Hu, Z.;Marquez, M.の論文、「天然ポリマーのほぼ単分散ナノ粒子の合成及び自己集成(Synthesis and self-assembly of nearly monodisperse nanoparticles of a naturally occurring polymer)」、Langmuir, 2004, 20, 7355-7359参照)。高分子量(〜106Da)は、水酸化ナトリウムの水溶液(pH12)中に溶解した。ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド及びジビニルスルホンを、各々、界面活性剤及び架橋剤として添加した。この溶液を、LCSTを上回る温度で約3時間加熱し、直径170nm〜430nmの範囲のナノ粒子を生じた。この粒子濃度は、0.1重量%未満であった。Gaoらは、ジビニルスルホンを使用する、自己会合されたヒドロキシプロピルセルロースナノ粒子のインサイチュ架橋も報告している(例えば、Gao, J.;Haidar, G.;Lu, X.;Hu, Z.の論文、「水中のヒドロキシプロピルセルロースの自己会合(Self- association of hydroxypropylcellulose in water)」、Macromolecules, 2001, 34, 2242-2247参照)。
【0173】
De Nooyらは、カルボン酸、アルデヒド、及びイソシアニドの間の反応(パッセリーニ3成分縮合)を使用し、多糖ヒドロゲルを調製した(例えば、De Nooy, A. E. J.;Masci, G.;Crescenzi, V.の論文、「パッセリーニ及びウギの多成分縮合を使用する汎多糖ヒドロゲル合成(Versatile synthesis of polysaccharide hydrogels using the Passerini and Ugi multicomponent condensations)」、Macromolecules, 1999, 32, 1318-1320参照)。カルボキシメチルセルロース又はヒアルロン酸などのカルボン酸含有炭水化物を使用し、ヒドロゲルを調製した。カルボン酸基を含まないスクレログルカン又はプルランなどの多糖は、アルデヒド基及びカルボン酸基を導入するためにTEMPOを用い、部分的に酸化された。ウギ縮合反応には、追加成分アミンが関与している。ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドを、この縮合反応のために、1,5-ジアミノペンタン又は塩化アンモニウムなどのアミンと一緒に使用した。キトサンも、その構造に存在するアミン基のために、ヒドロゲル合成に使用した。全ての合成されたゲルは、巨視的ゲルであった。マイクロ-又はナノ粒子合成は報告されなかった。更に、アルデヒド及びイソシアニドは、一般に食品成分として安全とは考えられない。
【0174】
他の架橋反応を用いて調製された共有結合架橋されたヒドロゲルも、報告されている。Douらは、デキストラン、ヒドロプロピルセルロース、及びヒドロエチルセルロースのカルボキシ-官能基化されたナノ粒子を合成した(例えば、Dou, H.;Tang, M.;Yang, W.;Sun, K.の論文、「カルボキシ官能基を持つ多糖-ベースのナノ粒子のワンポット合成、特徴、及び薬物負荷(One-pot synthesis, characterization, and drug loading of polysaccharide-based nanoparticles with carboxy functional groups)」、Colloid Polym. Sci. 2007, 285, 1043-1047参照)。しかしそれらの手順には、食品製剤での使用に適していない、硝酸、アクリル酸、硝酸アンモニウムセリウム(IV)、及びN,N'-メチレンビスアクリルアミドなどの化学物質の使用が関与している。Yu及びHoffmanは、モデル陽イオン性タンパク質リゾチームの制御放出のための化学的に架橋されたアルギン酸ナトリウム/コンドロイチン6-硫酸のヒドロゲルの合成を報告している(例えば、Yu, X. J.;Hoffman, A. S.の文献、「薬物送達マトリックスとしての多糖ヒドロゲル(Polysaccharide hydrogels as drug delivery matrixes)」、第22回生体活性物質の制御放出に関する国際シンポジウムのプロシーディング、1995年;制御放出部会;352-353頁参照)。このヒドロゲルは、二価の陽イオン溶液中で縮合状態であり、かつPBS中で脱縮合された状態であることがわかった。Chenらは、ペプチド及びタンパク質の鼻腔内送達に使用されるいくつかの多糖ヒドロゲルを検討した(例えば、Chen, J.;Jo, S.;Park, K.の論文、「タンパク質薬物送達のための多糖ヒドロゲル(Polysaccharide hydrogels for protein drug delivery)」、Carbohydrate Polymers, 1995, 28, 69-76参照)。インスリンの鼻腔内送達のためにデザインされたこれらのヒドロゲルは、45μmデンプンマイクロスフェア(例えば、Illum, L.;Jrgensen, H.;Bisgaard, H.;Krogsgaard, O.;Rossing, N.の論文、「可能性のある鼻腔内薬物送達システムとしての生体接着マイクロスフェア(Bioadhesive microspheres as a potential nasal drug delivery system)」、Int. J. Pharm. 1987, 39, 189-199)、エピクロロヒドリン架橋されたデキストラン(例えば、Edman, P.;Bjork, E.の論文、「送達経路:ケーススタディ:(1)ペプチド薬物の鼻腔内送達(Routes of delivery: Case studies: (1) Nasal delivery of peptide drugs)」、Adv. Drug Delivery Rev. 1992, 8, 165-177参照)、及びヒアルロン酸エステルマイクロスフェア(例えば、Illum, L.;Farraj, N. F.;Fisher, A. N.;Gill, I;Miglietta, M.;Benedetti, L. M.の論文、「インスリンの鼻腔内送達システムとしてのヒアルロン酸エステルマイクロスフェア(Hyaluronic acid ester microspheres as a nasal delivery system for insulin)」、J. Control. Rel. 1994, 29, 133-141参照)を含んでいる。ヒアルロン酸エステルのマイクロスフェアは、直径10〜100μmであった(例えば、Benedetti, L. M.;Topp, E. M.;Stella, V. J.の論文、「ヒアルロン酸エステルマイクロスフェア−加工法及びインビトロヒドロコルチゾン放出(Microspheres of hyaluronic acid esters-Fabrication methods and in vitro hydrocortisone release)」、J. Control. Rel. 1990, 13, 33-41参照)。
【0175】
好適な架橋剤の選択は食品製剤のための多糖ヒドロゲルの調製において、重要な工程である。明確に、架橋している化学物質の毒性は、その使用を排除する。ゲニピンは、タンパク質と多糖の天然の架橋剤であり、クチナシの果実抽出物から得られる。これは、多糖ヒドロゲルの合成において非常に魅力的である。これは、低い急性毒性を有し(マウスのLD50 静注で382mg/kg)、かつグルタルアルデヒドなどのほとんどの他の化学架橋剤よりもはるかに低い毒性である。その構造は、図2に示されている。
【0176】
Meenaらは、pH〜7、周囲条件で、水性媒体中でアガロースを架橋するために、ゲニピンを使用した(例えば、Meena, R.;Prasad, K.;Siddhanta, A. K.の論文、「ゲニピン-固定されたアガロースヒドロゲルの調製(Preparation of genipin- fixed agarose hydrogel)」、J. Appl. Polym. Sci. 2007, 104, 290-296参照)。ゲニピンは、Challenge BioProducts社(台湾)から購入した。使用されるゲニピンの量は、アガロース質量の約0.8重量%であった。ゲニピン-固定されたアガロースは、胃環境を表している酸性媒体(pH1.2)における膨潤の減少を示した。その膨潤の程度は、4.8g/gであるのに対し、架橋されないアガロースは最大6g/g膨潤した。著者らは、周囲条件下で、最大架橋には、約85時間後に達することを報告した。
【0177】
あるいは架橋は、フリーラジカルを用いて実現することができる。過硫酸アンモニウムなどのフリーラジカル開始剤は、化学物質のGRASリストに一覧されており、食品製剤において使用することができる。
【0178】
ヒドロキシル基を含むポリマーの周知のホウ砂で媒介された架橋を基に、Palleschiらは、ホウ砂を用いスクレオグルカンのヒドロゲルを合成した(例えば、Palleschi, A.;Coviello, T.;Bocchinfuso, G.;Alhaique, F.の論文、「新規スクレログルカン/ホウ砂ヒドロゲルの研究:構造及び薬物放出(Investigation of a new scleroglucan/borax hydrogel: structure and drug release)」、Int. J. Pharm. 2006, 322, 13-21参照)。彼等は、架橋されたヒドロゲルからのモデル薬物テオフィリン、ビタミンB12及びミオグロビンの放出動態を研究した。これらのヒドロゲルは、巨視的ゲルであり、マイクロ-又はナノ粒子ではない。
【0179】
ゲランは、イオン架橋剤として使用することもできる。ゲランは、対イオン、特にカルシウムのような二価イオンの存在下での、そのゲル化特性が周知である、陰イオン性微生物多糖である。ゲランは、スクレログルカンの架橋剤として使用されている。
【0180】
カラゲナンは、D-ガラクトース及び3,6-アンヒドロ-D-ガラクトース単位で構成された、線状の硫酸化されたバイオポリマーである。κ-カラゲナンビーズは、一価のイオン(しばしばK+)及び時には二価イオンによるゲル化により調製される。アルギン酸塩は、変動量の(1→4)-連結されたβ-D-マンヌロン酸残基及びα-L-グルロン酸残基を含む、藻類により生成された線状多糖である。Mohamadniaらは、炭水化物バイオポリマーκ-カラゲナン(図5)及びアルギン酸ナトリウムのイオン架橋されたビーズを合成した(例えば、Mohamadnia, Z.;Zohuriaan-Mehr, M. J.;Kabiri, K.;Jamshidi, A.;Mobedi, H.の論文、「制御された薬物送達のためのカラゲナン-アルギン酸塩のpH-感受性IPNヒドロゲルビーズ(pH-Sensitive IPN hydrogel beads of carrageenan-alginate for controlled drug delivery)」、J. Bioactive Compat. Polym. 2007, 22, 342-356、及びMohamadnia, Z.;Zohuriaan-Mehr, M. J.;Kabiri, K.;Jamshidi, A.;Mobedi, H.の論文、「イオン架橋されたカラゲナン-アルギン酸塩ヒドロゲルビーズ(Ionically crosslinked carrageenan-alginate hydrogel beads)」、Journal of Biomaterials Science: Polymer Edition 2008, 19, 47-59参照)。アルギン酸塩ゲル化は、二価又は三価の陽イオン(通常Ca2+)がグルロン酸残基とイオン的に相互作用する場合に起こり、三次元網目の形成を生じる。アルギン酸塩-Ca2+ヒドロゲルは、制御放出型経口薬剤について研究されている(例えば、Bajpai, S. K.;Sharma, S.の論文、「Ca2+及びBa2+イオンにより架橋されたアルギン酸塩ビーズの膨潤/分解挙動の研究(Investigation of swelling/degradation behavior of alginate beads crosslinked with Ca2+ and Ba2+ ions. React)」、React. Func. Polym. 2004, 59, 129-140参照)。
【0181】
Langerらは、イオン架橋又は共有結合架橋されたヒドロゲルからなる相互貫入ポリマー網目の合成を説明している(例えば、Langer, R. S.;Anseth, K.;Elisseeff, J. H.;Sims, D.の特許、「薬物送達及び組織工学のためのセミ-相互貫入又は相互貫入ポリマー網目(Semi-interpenetrating or interpenetrating polymer networks for drug delivery and tissue engineering)」、米国特許第6,224,893号、2001年5月1日参照)。ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルギン酸塩、ゲラン及びカラゲナンなどの炭水化物が、イオン架橋されたヒドロゲルを合成するために使用された。共有結合架橋されたヒドロゲルは、キトサンポリマー及びイソチオシアネート架橋剤からなった。これらのヒドロゲルは、インビボに注射された場合に、生物学的活性分子又は薬物を保持することが可能である粘性溶液の形状であった。マイクロ-又はナノ粒子の形成は、報告されていない。イソチオシアネート架橋剤の使用は、食品等級のヒドロゲル合成には適していないであろう。
【0182】
ヒドロプロピルセルロースなどの疎水化多糖及びアルギン酸塩又はカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシ含有多糖の配合物が、ヒドロゲル粒子を調製するために使用される。疎水化多糖は、水中における相分離のために自発的粒子形成を生じるが、カルボン酸基を含む多糖は、pH反応性挙動をもたらし、かつ腸管通過時間も増大するであろう。多糖の配合を使用するヒドロゲル形成(巨視的ゲル及び水性分散液の両方)の総説は、以下である。
【0183】
Ichikawaらは、キトサン(脱アセチル化度〜77%)及びカルボキシメチルセルロース加水分解物の自己集合により濃度0.5重量%のナノ粒子懸濁液を合成した(例えば、Ichikawa, S.;Iwamoto, S.;Watanabe, J.の論文、「キトサン及びカルボキシメチルセルロースの酵素的加水分解物の自己集合による生体適合性ナノ粒子の形成(Formation of biocompatible nanoparticles by self-assembly of enzymatic hydrolysates of chitosan and carboxymethyl cellulose)」、Biosci. Biotechnol. Biochem. 2005, 69, 1637-1642参照)。これらのポリマーは、各々、酵素キトサナーゼ及びセルラーゼにより加水分解された。カルボキシメチルセルロースのカルボキシラート基とキトサンのアミノ基の間の静電相互作用は、これら2種のポリマーの溶液をただ混合することにより、ナノ粒子の自発的形成を生じた。粒子サイズは、これらの溶液の混合比によって、同じくこれらのポリマーの分子量によっても決まる。巨視的ゲルの形成を防止するために、混合前に、これらのポリマーを加水分解しかつ分子量を低下することは必要である。
【0184】
Sergioらは、アルギン酸塩などの酸性多糖、及びキトサンなどのオリゴ糖誘導体などの塩基性多糖の混合物からの、ヒドロゲルの調製を報告した(例えば、Sergio, P.;Ivan, D.;Eleonora, M.の特許、「組織工学のための及び活性化合物の担体としての多糖混合物のヒドロゲル(Hydrogels of polysaccharide mixtures for tissue engineering and as carriers of active compounds)」、国際特許出願WO/2007/135114、2007年11月29日)。彼等は、静電的「ビーズジェネレーター」を使用する、平均直径870μmのマイクロカプセルの合成を説明した。粒子合成の別の化学的方法は、例えば、0.15M NaCl及び10mM HEPES(pH7.4)中に調製されたアルギン酸塩及びキトサンの乳糖誘導体の溶液の混合からなる。その全体のポリマー濃度は2%であり、かつポリ陰イオンのポリ陽イオンに対する重量比は3:1であった。これらの粒子は、典型的にはサイズが大きく、その結果光学顕微鏡により画像化することができる。
【0185】
Whiteらは、キトサンなどの塩基性多糖及びヒアルロン酸などの陰イオン性多糖類を使用し、ヒドロゲルフィルムを調製した(皮膚科、形成外科、泌尿器科及び整形外科分野における適用のため)(例えば、White, B. J.;Rodden, G. I.の特許、「セミ-相互貫入ポリマー網目の組成物(Compositions of semi-interpenetrating polymer network)」、国際特許出願WO/2005/061611、2005年7月7日)。
【0186】
Vieiraらは、酸化されたアルギン酸塩及びキトサンと配合された酸化されたアルギン酸塩のヒドロゲルを調製し、これらの薬物の抗葉酸薬ピリメタミンとの相互作用を研究した(例えば、Vieira, E. F. S.;Cestari, A. R.;Airoldi, C;Loh, W.の論文、「多糖-ベースのヒドロゲル:調製、特徴決定及び薬物相互作用挙動(Polysaccharide-based hydrogels: Preparation, characterization and drug interaction behavior)」、Biomacromoleculars, 2008, 9, 1195-1199参照)。アルギン酸ナトリウムは、過ヨウ素酸ナトリウムを用い、部分的に酸化され、アルギン酸2,3-ジアルデヒドを得た。この過ヨウ素酸は、十分な透析により、完全に除去された。アルギン酸2,3-ジアルデヒドのゲル化は、ホウ砂の存在下で、CaCl2又はキトサン/CaCl2により実現された。マイクロ-又はナノ粒子の合成は報告されなかった。
【0187】
Meenaらは、寒天及びアルギン酸ナトリウム配合物のアクリルアミドによるグラフトを基にしたヒドロゲルシステムの合成を考察した(例えば、Meena, R.;Chhatbar, M.;Prasad, K.;Siddhanta, A. K.の論文、「寒天及びアルギン酸ナトリウム配合物を基にした堅牢なヒドロゲルシステムの開発(Development of a robust hydrogel system based on agar and sodium alginate blend)」、Polym. Int. 2008, 57, 329-336参照)。寒天及びアルギン酸ナトリウムは、蒸留水中に個別に溶解した。寒天は、90℃で2分間の電磁波照射を用いて溶解し、他方アルギン酸ナトリウムは、周囲温度で溶解した。寒天とアルギン酸ナトリウムの配合物は、寒天をとそれらを異なる比で混合することにより調製した。得られた配合物を冷却し、ゲルを形成し、これを小片に切断し、かつイソプロパノールで脱水した。脱水され硬化されたゲル粒子を、ナイロン布を通して、減圧下で濾過し、風乾し、引き続き50℃の炉で2時間乾燥した。この乾燥した配合物試料を、乳鉢と乳棒を使用し摩砕し、20〜40メッシュの粒子を得た。
【0188】
スクレログルカンで共架橋されたゲランからなるヒドロゲルも報告された(例えば、Alhaique, F.;Coviello, T.;Rambone, G.;Carafa, M.;Murtas, E.;Riccieri, F. M.;Dentini, M.;Desideri, P.の文献、「制御された薬物送達のためのゲラン-スクレログルカン共架橋されたヒドロゲル(A gellan-scleroglucan co-crosslinked hydrogel for controlled drug delivery)」、第25回生体活性物質の制御放出に関する国際シンポジウムのプロシーディング、1998年、866-867参照)。ヒドロゲル中のゲランとスクレログルカンの両方の使用は、巨視的ヒドロゲルのより良い剛性及び安定性を生じ、かつゲスト分子のより遅い放出を生じる。この放出速度は、Ca2+架橋されたゲラン単独からは望ましくないほど高かった。
【0189】
Kimらは、修飾されたデキストランの光架橋を用い、多糖-ベースのヒドロゲルを合成した(例えば、Kim, S. H.;Won, C. Y.;Chu, C. C.の論文、「光架橋により調製されたデキストランベースのヒドロゲルの合成及び特徴決定(Synthesis and characterization of dextran-based hydrogel prepared by photocrosslinking)」、Carbohydrate Polymers, 1999, 40, 183-190参照)。デキストランは、(1→6)-連結されたα-D-グルコピラノシル残基、及びその構造の1個のブドウ糖残基につき3個のヒドロキシル基を含む。デキストランは、ブロモアセチルブロミドと最初に反応された。次にブロモアセチル化されたデキストランを、ビニル基の取り込みのために、アクリル酸ナトリウムと反応させる。光架橋を、アクリレート化されたデキストランにUV光を照射することにより実現した。これらは、巨視的ゲルであり、マイクロ-又はナノ粒子ではなかった。
【0190】
同様に、Reisらは、デンプンをグリシジルメタクリレートと反応させることにより、ペンダントビニル基を導入した(例えば、Reis, A. V.;Guilherme, M. R.;Moia, T. A.;Mattoso, L. H. C;Muniz, E. C;Tambourgi, E. B.の論文、「薬物送達システムの可能性のある担体としてのデンプン-修飾されたヒドロゲルの合成及び特徴決定(Synthesis and characterization of starch-modified hydrogel as potential carrier for drug delivery system)」、J. Polym. Sci.: Part A: Polym. Chem. 2008, 46, 2567-2574参照)。デンプンは、アミラーゼ及びアミロペクチンの2つの構成成分で構成された多糖である。アミラーゼは、250〜300の(1→4)-連結されたα-D-ブドウ糖残基からなる直鎖である。アミロペクチンは、α(1→4)及びα(1→6)連結により、約1400D-ブドウ糖残基からなる分岐した分子である。これは、総デンプンの約 80%を構成し、かつ容易に加水分解される。架橋可能なビニル基は、デンプンのグリシジルメタクリレートとの反応により導入され、図7に概略的に示された構造を生じた。
【0191】
Chenらは、糖質のエポキシアクリレート、又は塩化メタクリロイル及び塩化アセチルとの反応により、ショ糖などの重合可能なサッカライドモノマーを合成し、かつこれらのモノマーを使用し、ヒドロゲルを形成した(例えば、Chen, J.;Bongjo, S.;Park, K.の特許、「親水性、疎水性、及び熱可逆性サッカライドゲル及び泡、これらの製造方法(Hydrophilic, hydrophobic, and thermoreversible saccharide gels and foams, and methods for producing same)」、米国特許第6018033号、2000年1月25日参照)。Caiらは同様に、フリーラジカル重合プロセスを介して、多糖鎖のナノ粒子への化学連結を可能にするビニル基の共有的結合により、ヒドロプロピルセルロースを修飾した(例えば、Cai, T.;Hu, Z.;Ponder, B.;St. John, J.;Moro, D.の論文、「官能基化されたヒドロキシプロピルセルロースを基にしたナノ粒子及びそれらの網目の合成及び研究並びにそれらからの制御放出(Synthesis and study of and controlled release from nanoparticles and their networks based on functionalized hydroxypropylcellulose)」、Macromolecules, 2003, 36, 6559-6564参照)。
【0192】
前述のように、水性分散液の粒子状担体中への親水性分子の封入に関する報告は、多くはない。Edlund及びAlbertssonは、ヘミセルロース-ベースのヒドロゲルマイクロスフェアの架橋密度を変動し、この架橋された網目は、カフェインのような化合物の小型で親水性の分子の迅速な放出を妨害することはできないことを発見した(例えば、Edlund, U.;Albertsson, A.-C.の論文、「マイクロスフェアシステム:ヘミセルロース-ベースのヒドロゲル(A microsphere system: hemicellulose-based hydrogels)」、Journal of Bioactive and Biocompatible Polymers, 2008, 23, 171-186参照)。対照的に、タンパク質(ウシ血清アルブミン)などの大型分子の放出は、網目のメッシュサイズを変動することにより制御することができ、その放出はフィック型拡散により進行される。別の研究は、捕獲された分子のサイズ及び親水性への同じ依存を示した。
【0193】
本出願人らは、ヒドロキシプロピルセルロースマイクロゲルを、トリメタリン酸三ナトリウム(TSTMP)及びトリポリリン酸ナトリウム(STPP)などの比較的無毒の架橋剤を用いて合成した。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、プロピレンオキシドのセルロースによる塩基-触媒反応により調製される。HPCは、ヒト消費のための食品中で許可され、米国食品医薬品局(FDA)規則121.1160項に記載されている[Klug, E. D.の文献、「ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl Cellulose)」、Encyclopedia of Polymer Science and Technology;Bikales, N. M.編集;Wiley Interscience社:ニューヨーク、1971年;15巻307-314頁]。「未反応」のTSTMP及びSTPPの最大0.4重量%が、FDA規則に従い、食品中で許可されている。塩化ホスホリル、アジピン酸塩、及びアジピン酸-酢酸の無水混合物などの、食品等級デンプンを製造するためにFDAにより許可された他の物質も、本架橋反応に使用することができる。エピクロロヒドリンなどの発癌物質も、以前はデンプンの架橋に使用されていたが、これは明らかに使用することができない。例えば、水酸化ナトリウムの存在下でTSTMPを使用するヒドロキシル含有多糖の架橋を示している、図10を参照されたい。
【0194】
トリメタリン酸三ナトリウムを使用するデンプンの架橋は、典型的には水性媒体中で、pH11.5で実行される[Xie, S. X.;Liu, Q.;Cui, S. W.の論文、「デンプン改質と応用(Starch modification and application)」、「食品炭水化物:化学、物理特性及び応用(Food Carbohydrates: Chemistry, Physical Properties, and Applications)」;Cui, S. W.編集;Taylor & Francis社:ニューヨーク、2005年;358頁]。この反応は、40℃で2〜6時間進行させることが可能である。本出願人らは、ヒドロキシプロピルセルロースマイクロ粒子は、著しく高い水酸化ナトリウム濃度及び反応温度を用い、比較的高濃度(最大10重量%、マクロ相が分離せずに)で得ることができることを発見した。水酸化ナトリウムは、この架橋反応に参加するのみではなく、更に明らかに、室温であっても粒子形成を生じるヒドロキシプロピルセルロースのLCSTも低下する(NaOHの十分に高い濃度で)。
【0195】
Sigma-Aldrich社から得たヒドロキシプロピルセルロース粉末を、マイクロ粒子合成に使用した。このHPCポリマーは、数-平均分子量
【数3】
10,000g/mol、重量-平均分子量
【数4】
80,000g/mol、置換度DS 2.5、及びモル置換度MS 3.7を有した。置換度DSは、1個の無水ブドウ糖単位あたり置換されたヒドロキシル基の平均数と定義される[Klug, E. D.の文献、「ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl Cellulose)」、Encyclopedia of Polymer Science and Technology;Bikales, N. M.編集;Wiley Interscience社:ニューヨーク、1971年;15巻307-314頁]。モル置換度MSは、1個の無水ブドウ糖単位あたり一緒にされたプロピレンオキシド分子の平均数と定義される。
【0196】
精製大豆レシチン(MP Biomedicals社)約15mgを、水酸化ナトリウム溶液(pH=12)5mLに溶解し、淡黄色の半透明の溶液を得た。この溶液に、HPC 400mgを添加し、攪拌し、粘性の溶液を生じた。別のバイアル中に、蒸留水中TSTMPの12%(w/v)溶液を調製した。その後このTSTMP溶液5mLを、HPC/大豆レシチン溶液に添加した。この混合物を攪拌し、均質な溶液を得、これを50℃で1時間加熱し、引き続き室温まで冷却した。ステンレス鋼製ISFET pHプローブ(IQ Scientific Instrument社)を用いて測定した得られた分散液のpHは、7.8であった。4M塩酸数μLを用い、このpHを7に調節した。HPC分散液は、以下からなる:蒸留水約10mL中、HPC(ヒドロキシル基3.2mmol)400mg、大豆レシチン15mg(0.05mmol)、TSTMP 600mg(2.0mmol)、及び水酸化ナトリウム約12mg(0.3mmol)。数-平均粒子直径は3.5μmであり、かつ重量-平均粒子直径は3.7μmであった。この分散液の粘度は、約11cPであった。その後蒸留水中の20%(w/v)デキストロース溶液10mLを、この分散液に添加し、かつこの混合物を60℃で10分間加熱した。数-平均粒子直径は、デキストロースの添加後も、ほぼ同じ(〜5μm)で有り続けた。最終分散液の粘度は、約5cPであった。この分散液中の粒子の平均直径は、ALVS-NIBS High Performance Particle Sizer(ALV社、Langen/独国)を用いて決定した。分散液粘度は、Ubbelohde粘度計(Cannon Instrument社、ペンシルバニア州)を用いて決定した。
【0197】
本製剤を50℃で1時間の代わりに3時間加熱した場合、粒子サイズ又は分散液粘度に有意差は存在しなかった。
【0198】
別の製剤において、蒸留水中のHPCの4%(w/v)溶液10mLを、ガラスバイアルに入れた。水酸化ナトリウムペレット(310mg, 7.75mmol)を添加し、この溶液に溶解した。水酸化ナトリウムの添加は、混濁した均質な分散液を生じた。TSTMP(600mg, 1.96mmol)及び大豆レシチン(14mg, 0.043mmol)を、引き続き添加し、溶解した。この分散液を、50℃で1時間加熱し、その後室温に冷却した。この手順は、マクロ粒子の形成を生じ、これはバイアルの底に沈降した。冷却直後に、この分散液を攪拌し(磁気攪拌機を使用)、かつ4M塩酸を用いpH7に中和した。上清相中の数-及び重量-平均粒子直径は、各々、約610nm及び690nmであった。このHPC分散液の粘度は、約1.6cPであった。次に蒸留水中の20%(w/v)デキストロース溶液10mLを、この分散液に添加し、かつこの混合物を60℃で10分間加熱した。デキストロースの添加後、デキストロース負荷された分散液の数-平均粒子直径は約1.6μmであり、重量-平均粒子直径は約2.2μmであった。最終分散液の粘度は、約2cPであった。
【0199】
別の実施態様において、水100g中HPC(ヒドロキシル基31.9mmol)4gの溶液の、水酸化ナトリウム2.1g(52.5mmol)及びTSTMP 1g(3.27mmol)と一緒の、110℃で2時間の加熱は、ヒドロゲルマイクロスフェアの形成を生じた。この分散液を室温に冷却し、4M塩酸約4mLを使用し中和し、粘度約22cP及び重量-平均粒子直径約3.4μmの溶液を生じた。20%(w/v)デキストロース溶液104mLの添加は、糖質濃度10%(w/v)、粘度6.8cP及び重量-平均粒子直径約4.1μmの最終分散液をもたらした。この製剤を、糖質溶液の添加後、60℃で10分間加熱した。
【0200】
別の製剤において、水100gに溶解したHPC(ヒドロキシル基63.7mmol)8gを、水酸化ナトリウム2.23g(55.8mmol)及びTSTMP 1g(3.27mmol)と一緒に加熱した。加熱は、密封ガラス反応器内で110℃で2時間実行した。冷却後、未反応の水酸化ナトリウムを、4M塩酸約20mLを用いて中和し、重量-平均粒子直径約4.3μmの架橋されたHPCマイクロスフェアの分散液を得た。この分散液の粘度は、約31.2cPであった。その後20%(w/v)デキストロース溶液(120mL)を添加し、10%(w/v)デキストロース、3.3%(w/v)HPC、約2.5%(w/v)塩化ナトリウムの製剤を得た。この分散液を、糖質添加後、60℃で10分間加熱した。最終分散液の重量-平均粒子直径は、約4.5μmであり、かつ分散液粘度は約31cPであった。分散液粘度は、これらの溶液が混合される順番に対し感受性があった。デキストロース溶液が第二の加熱工程(60℃で10分間)の後に添加された場合、得られる分散液の粘度は、より高かった(約55cP)。
【0201】
ヒドロキシプロピルセルロース及びアルギン酸ナトリウム(CAS番号9005-38-3;American International Chemical社、F-200)のマイクロ粒子ヒドロゲルを、以下のように合成した。HPC(ヒドロキシル基0.080mmol)10mgを、蒸留水1mL中に溶解した。この溶液へ、2.5M NaOH 溶液(2.5mmol NaOH)1mL、トリメタリン酸三ナトリウム20mg(0.065mmol)、アルギン酸ナトリウム10mg及び大豆レシチン2mg(6.1μmol)を添加した。この溶液を徹底的に攪拌した。混濁した分散液が得られ、これは濃塩酸数滴の添加後(胃の酸性環境を模倣するために、最終pH約2に導く)であっても、安定し続けた。
【0202】
ヒドロキシプロピルセルロースは、水中で温度41℃以上で自己集合した。それ以上でこのポリマー鎖の自発的自己集合が生じるこの温度は、下限臨界溶解温度(LCST)と称される。HPCの熱的自己集合は、可逆的プロセスである。マイクロ粒子を構成している個別のポリマー鎖は、この溶液がLCST以下に冷却された場合に、水分子により溶媒和される。トリメタリン酸三ナトリウム(TSTMP)を使用するHPC鎖の架橋は、この溶液が臨界溶解温度以下に冷却された場合に、マイクロ粒子の溶解を防止した。
【0203】
別の戦略において、架橋は、塩化アクリロイル(又は塩化メタクリロイル)を使用し、アクリロイル(又はメタクリロイル)基を使用する、多糖の官能基化により実行され得る。アクリロイルエステルの形成は、塩化アクリロイルの多糖のヒドロキシル基との反応から生じた(図11)。しかし、未反応の塩化アクリロイルを官能基化されたポリマーから完全に除去することは、塩化アクリロイルの毒性のために、重要である。その後ビニル官能基化されたHPCは、アスコルビン酸及び過酸化水素などの比較的良性の(benign)フリー-ラジカルレドックス-開始剤、又は過硫酸カリウムなどの熱開始剤を使用し、LCST以上で、水中で架橋することができる。
【0204】
従って、ヒドロキシプロピルセルロース(8mmol)1gを、磁気攪拌棒を装着しかつゴム栓をはめた丸底フラスコに入れた。このポリマーを、無水ジクロロメタン20mLに溶解し、混濁した粘性の溶液を得た。フラスコ内の空気を、乾燥窒素により掃流した。トリエチルアミン約1mL(7mmol)を、この反応器に注入し、引き続き塩化アクリロイル約520μL(6.4mmol)を滴加した。この混合物を室温で攪拌し、この時点で混濁した溶液は、塩化アクリロイルの添加後数分で透明になり始めた。この溶液を一晩攪拌し、その後アクリル化されたヒドロキシプロピルセルロース生成物を回収し、冷(〜0℃)ジエチルエーテル及びアセトン中で繰り返し沈殿することにより精製した。この生成物を、真空、40℃で乾燥した。アクリル化されたHPCポリマー約40mgを、蒸留水2mL中に溶解し、混濁した溶液を室温で得た。大豆レシチン約65mg(200mmol)をこの溶液に添加し、溶解した。このHPC及び大豆レシチンの溶液を、窒素ガスを泡立てることにより、酸素除去し、その後脱気した過硫酸アンモニウム(9.1mg, 40mmol)溶液2mLを注入した。この溶液を、70℃で2時間加熱し、架橋されたアクリル化されたヒドロキシプロピルセルロース粒子の分散液を得た。数-平均及び重量-平均粒子直径は、各々、1.28μm及び1.34μmであった。
【0205】
ヒドロキシプロピルセルロースマイクロゲルのエマルジョンベースの合成において、アクリル化されたヒドロキシプロピルセルロース80mgを、ジクロロメタン2mLに溶解した。この溶液へ蒸留水(4mL)を添加し、かつ攪拌し、エマルジョンを得た。アクリル化されたヒドロキシプロピルセルロースの架橋は、過硫酸アンモニウム及びデキストロースのレドックスシステムを用い、35℃で実行した。デキストロース(21.6mg, 12mmol)を、このエマルジョンに溶解した。蒸留水(2mL)中の過硫酸アンモニウム(27.4mg, 0.12mmol)の溶液2mLを、このエマルジョンに注入し、架橋反応を開始した。得られた分散液から、回転蒸発器を用い、ジクロロメタンを除去した。架橋されたアクリル化されたヒドロキシプロピルセルロースマイクロゲルの混濁した分散液を得た。この架橋された粒子は、静置時に、バイアルの底に沈降し、従ってその上清をデカントすることにより、粉末の形状で分離することができる。この架橋は、過硫酸塩/ブドウ糖、過酸化水素/アスコルビン酸などのレドックスシステムを用いても、実行することができる。
【0206】
分散液を濃HClで中和した、110℃で2時間加熱したHPC 400mg、TSTMP 100mg、NaOH 200mg、水10mLの溶液の走査型電子顕微鏡像は、SEM下で認められた大きい(〜1μm)立方体粒子を明らかにした。HPCは、低いガラス転移点を有し、室温でSEM基板上にフィルムを容易に形成する。しかし、SEMを用いてナノ粒子を画像化することは困難であった。
【0207】
(実施例2)
更に先に詳述された本発明の様々な態様に対し、エネルギー源として比較的重要な炭水化物(CHO)の基本的理解は、本発明の送達システムのデザインにおいて有用である。運動選手の持久能及び運動パフォーマンスを向上することができる食品製剤は、スポーツ科学及び運動科学におけるいくつかの研究の中心となっているi。運動選手は、疲労を避けるために、運動期間中に燃料の連続供給を必要としている。タンパク質、脂肪及び炭水化物は全て、運動選手の食事の重要な成分として考えられてきたがii,iii、運動選手にとって炭水化物-豊富な食事の現在の強調は、約90年前に行われた研究を基にしている。これらの初期の研究は、血中ブドウ糖濃度と疲労の間の関係を示唆した。Levineらは1924年に、25マイルマラソンレースの参加者への炭水化物-豊富な食事は、向上したランニングパフォーマンス(レースを完走する時間として測定)を生じ、かつランナーにおける低血糖を防止したことを発見したiv。他方でChristensenとHansenは、運動時の高脂肪食は、低血糖及び神経低糖症を引き起こし、これは運動後の重篤な疲労及び消耗を引き起こしたことを示したv,vi,vii。彼等は、これらの症状は、運動前に炭水化物食を用いることにより、予防することができることを発見した。
【0208】
運動のエネルギー源としての炭水化物、脂肪及びタンパク質の相対的重要性は、Coyleにより1995年の総説に詳細に説明されているviii。Jeukendrupによるより最新の総説は、エネルギー源としての炭水化物に焦点を当てているi。タンパク質異化作用は一般に、筋肉収縮に必要なエネルギーの5%未満に寄与しているがix、筋肉グリコーゲン、肝臓グリコーゲン及び血中ブドウ糖の形の炭水化物、並びに血漿脂肪酸及び筋肉内トリグリセリドの形の脂肪は、定常状態の有酸素運動の主要なエネルギー源であるviii。ヒトの体は、大量のエネルギーを脂肪(>300,000kJ)として貯蔵するがx,ix、体脂肪は、中等度の運動時であっても、酸化には容易に利用されない。中等度から激強度の運動を持続するのに十分な高い速度で脂肪を酸化する筋肉の限定された能力(すなわち、最大酸素摂取量VO2maxが60%以上)は、筋肉グリコーゲン及び血中ブドウ糖を、これらの運動時の主要なエネルギー源とする。貯蔵された筋肉グリコーゲン及び血中ブドウ糖が枯渇し始めた時に、疲労が生じる。
【0209】
肝臓グリコーゲン(〜80g)中のエネルギー貯蔵は、約1280kJであり、筋肉グリコーゲン(〜400g)中の貯蔵は、約6400kJであり、かつ細胞外液のブドウ糖内容物を含む血中ブドウ糖(〜10g)は、約160kJであるix,xi。従って4.5L/分の最大酸素摂取量の80kgの運動選手は、激しい有酸素運動をVO2max約80%で行っている場合に、約75kJ/分の割合でエネルギーを消費し、約105分以内に内在性炭水化物貯蔵の枯渇を引き起こすであろう。この運動選手は、例え中等度の強度の運動(60〜75%VO2max)であってもそのエネルギー必要量を満たすのに十分な速度で脂肪を酸化することができるであろうviii。これらの要因は、105分後に、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼすことが予想される。炭水化物消費は、内在性炭水化物貯蔵を使わず、かつ疲労を避けることができる。
【0210】
多くの研究が、運動前及び運動期間中の炭水化物消費は、高度に強度な運動時に、運動選手の疲労を遅延することができることを報告しているxii,xiii,xiv,xv,xvi,xvii,xviii, xix,xx,xxi,xxii,xxiii。Jeukendrupとその同僚は、炭水化物が40〜75g/時の速度で消費される場合、向上された身体のパフォーマンスが認められ、及び炭水化物摂取速度が75g/時を超えると更なる向上は認められないことを発見したi。彼等は、運動期間中の中等度の速度のブドウ糖摂取(35g/時)は、内在性ブドウ糖生成を抑制し、及び高い速度のブドウ糖摂取(175g/時)は、内在性ブドウ糖生成を完全にブロックしたことも決定したxxiv。更に彼等は、高い外来性炭水化物酸化速度(>1g/分)、その結果の低下した筋肉グリコーゲン消費が、ブドウ糖食と比べ、ブドウ糖及び果糖併用食について得られたことも発見したxxv
【0211】
プレ-運動(pre-exercise)炭水化物消費は、肝臓及び筋肉の両方のグリコーゲン貯蔵を増加し、その結果疲労を遅らせかつ運動パフォーマンスを向上するために、通常実践されるxxvi。しかしこれは、血漿インスリン濃度の上昇も引き起こし得、このことは、運動開始時には筋肉ブドウ糖取り込みを増大するが、その後は低血糖に導くであろうxxvi。Febbraioらは、炭水化物のプレ-運動摂取は、その炭水化物摂取が運動を通じて維持される場合にのみ、有益であることを明らかにしたxxvi。CHOの連続摂取は、運動選手にとって簡便でないことがある。文献におけるほとんどの研究は、CHOの連続摂取に経静脈的方法を使用するか、又は参加者に10〜15分毎にCHOボーラス量を消費することを要求している。これらは両方共、実践的ではない。市場で入手可能な製剤は、CHOの持続された送達が可能ではない。本明細書に説明されたように、本発明者らは、CHOの持続された送達を提供することができる1種以上の製剤を開発した。
【0212】
比較的高い血漿インスリン濃度も、脂肪異化作用に悪い影響を及ぼす。脂肪酸の動員、取り込み及び酸化は、運動期間中の筋肉へのエネルギー源としての、ヒト体内における最大エネルギー貯蔵−脂肪組織トリグリセリド−の有用性を決定する。脂肪組織トリグリセリドは、リパーゼ酵素により最初に加水分解され、作業している筋肉により取り込まれるために、遊離脂肪酸を血流へ放出するix,x。筋肉内トリグリセリドも、脂肪分解を受け、ミトコンドリアでの酸化のための脂肪酸給源として働くことができる。低い運動強度(<25%VO2max)及び絶食状態においては、運動に必要なエネルギーのほとんど全ては、血漿脂肪酸に由来する。脂肪酸化は、70%VO2maxでの運動に必要なエネルギーの最大50%を提供し(血漿脂肪酸及び筋肉内トリグリセリドからとほぼ等しい貢献)、かつ10〜30分間続くより激しい運動に必要なエネルギーの1/3未満を提供することができる。筋肉グリコーゲンの枯渇後、脂肪を酸化する筋肉の能力は、約50%VO2maxのエネルギー利用率に制限される。
【0213】
筋肉による酸化のための血漿脂肪酸の利用可能性は、運動の強度が増すにつれ減少し、これは恐らく脂肪組織血管におけるカテコールアミンが刺激した血管収縮、不充分な脂肪組織血流x、その結果の脂肪組織から作業筋肉へ脂肪酸を運搬するためのアルブミン送達の不充分さixのためであろう。脂肪を酸化する筋肉の限定された能力も、ミトコンドリア膜を超える脂肪酸のカルニチンパルミトイル転移酵素で刺激された輸送の律速段階に起因すると考えられるviii。筋肉内の炭水化物の存在は、脂肪酸化及びミトコンドリア膜を超えた脂肪輸送を減少することがわかっている。プレ-運動CHO負荷のための血漿インスリン濃度の上昇は、脂肪分解xxvii及び脂肪利用可能性xxviiiを減少し、かつ運動パフォーマンスに悪影響を及ぼす。血漿インスリン濃度の非常に小さい上昇であっても、基底レベルを50%以上下回るまで脂肪分解速度を抑制することができるx
【0214】
Coyleは、血流中のブドウ糖濃度が高く有り続けるように、74%VO2maxで、炭水化物が運動を通じて摂取された場合、筋肉グリコーゲン使用は、運動の最後の段階の間(3から4時間の期間)は最低であり、これは血中ブドウ糖は、この期間の主な炭水化物源であることを示していることを明らかにしたviii。他の研究は、筋肉グリコーゲンは、運動には不要であることを示したxxix
【0215】
小腸から全身循環へのCHOの吸収は、運動期間中にエネルギー源として外来性ブドウ糖を使用する律速因子である。外来性ブドウ糖が運動期間中に酸化される最大速度は、約1g/分であるxxi
【0216】
高い血糖インデックスを持つブドウ糖、ショ糖、及びマルトデキストリンなどの炭水化物は、血中ブドウ糖濃度及び炭水化物酸化の維持並びに運動パフォーマンスの向上において同等に有効であるviii。肝臓が果糖をブドウ糖に変換する速度は比較的遅いために、果糖摂取は典型的には、ブドウ糖又はショ糖と比べパフォーマンスの向上に影響を及ぼさない。果糖摂取は、肝臓グリコーゲン貯蔵において、ブドウ糖の4倍の増加を生じるxxx。果糖は主に肝臓で代謝されるが、ブドウ糖は肝臓を迂回し、筋肉により貯蔵されるか又は酸化されるかのいずれかである。Jandrainらは、果糖は、中等度-強度の長期間の運動期間中繰り返し摂取される場合、循環ブドウ糖への高い変換速度にもかかわらず、ブドウ糖よりもより少なく代謝的に利用されることを発見したxxxi。最近、Jeukendrupと同僚らは、ブドウ糖と果糖の適量の摂取は、外来性CHO酸化を、ブドウ糖単独の等カロリー量のそれを超えるようには増加しないことを発見したxxxii
【0217】
しかし他の研究は、様々な単糖類(例えばブドウ糖、果糖、及びショ糖)の混合物を使用することにより、外来性CHO酸化速度を増加することができることを示したxxxiii。Jentjensらは、1分間にブドウ糖1.8gの速度でブドウ糖が摂取される場合、外来性CHO酸化の速度は、0.83g/分に限定されることを発見したxxxiv。他方で、ブドウ糖及び果糖の混合物が摂取される場合、1.26g/分の総外来性CHO酸化速度が達成され〜52%増加する。Adopoらによる初期の研究は、ブドウ糖及び果糖の混合物の摂取は、等カロリー量のブドウ糖よりもより高い外来性CHO酸化速度を生じることを示したxxxv。外来性ブドウ糖及び果糖の酸化速度は、ブドウ糖のみが消費される場合の速度よりも21%より高い。様々な単糖が特定の輸送タンパク質により腸管腔を超えて輸送されるので、単糖の混合物は、単独の炭水化物よりもより高い細胞による全般的取り込みを生じることができる。例えば、ブドウ糖及びガラクトースは、ナトリウム-依存型ブドウ糖輸送体1(SGL1)と称される輸送タンパク質により腸管細胞膜を通じて輸送されるのに対し、果糖は、ブドウ糖輸送体5(GLUT5)と称される異なる輸送タンパク質により輸送される。原則として、ブドウ糖分子と果糖分子の1:1混合物の供給は、SGL1輸送経路における輸送量(traffic)を、ブドウ糖分子のみが提供される場合と比べ、1/2に減少するであろう。CHOの正味の吸収速度は、ブドウ糖及び果糖の混合物を用い増加することができるが、果糖のブドウ糖への肝臓での変換速度がかなり遅いために、果糖は、エネルギー源として直ちに利用可能であることはできない。
【0218】
小腸への血流量も、CHO吸収の限定因子であろう。高強度の運動の間に、小腸への血流量の著しい減少が存在する(表4参照)xxxvi。運動期間中に外来性ブドウ糖酸化速度を限定する理由は、小腸への血流量の減少のためでもあろう。肝臓のグリコーゲン合成及びグリコーゲン分解は、小腸からの供給速度とは無関係に、約1.0g/分よりも大きいブドウ糖産生をもたらさない可能性もある。
【表4】
【0219】
Pfeiffer, B.らの論文は、炭水化物ゲルの胃腸管耐性に対する作用を考察している(Int. J. Sport Nutr. Exerc. Metab. (2009) 19(5): 485-503)。Hultson, C.らの論文は、長期間の運動時に炭水化物摂取からのプラセボ作用が存在しないことを示している(Int. J. Sport Nutr. Exerc. Metab. (2009) 19(3): 275-284)。Currel, K.らの論文は、1種よりも多い炭水化物の摂取による持久力パフォーマンスに関係している(Med. Sci. Sports Exerc. (2008) 40(2): 275-281)。
【0220】
(実験法)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの温度反応性ポリマーのマイクロ粒子を、このポリマーの水溶液をその下限臨界溶解温度以上に加熱することにより調製した。これらの粒子内のポリマー鎖を、FDA承認のトリメタリン酸三ナトリウム(TSTMP)を用い、共有結合架橋し、マイクロ粒子ヒドロゲルを得た。これらの粒子を、デキストロース(D-ブドウ糖)で負荷し、捕獲されたデキストロースの放出速度を、様々な化学組成及び粒子濃度を持つ製剤について試験した。水-膨潤性ヒドロゲル粒子内に存在する糖質は、遅延放出に利用可能であった。残りの糖質は、水相に存在し、腸管腔を超える即時吸収に利用可能であった。これらのヒドロゲルマイクロ粒子を、アルギン酸ナトリウムなどのpH反応性で粘膜付着性のポリマーによりコーティングし、胃放出に対する拡散障壁を提供した。インビトロ放出動態及びインビボ放出動態の両方(2つの異なるエネルギー消費速度で)を、実験により決定した。本発明の遅延放出型製剤に関するブドウ糖濃度、対、時間プロファイルは、市販の従来型即時放出型製剤及び他の対照に対する差異及びこれらに勝る利点を明確に示した。
【0221】
(材料)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、USP等級)は、Nippon Soda社から入手した。精製大豆レシチンは、MP Biomedicals社(カタログ番号102147)から購入した。アルギン酸ナトリウムポリマー(アルギン酸ナトリウムNF、F-200、SAHMUP、及びアルギン酸ナトリウムNF、SALMUP)は、American International Chemical社から入手した。トリメタリン酸三ナトリウム(TSTMP、試薬等級)及び水酸化ナトリウム(試薬等級、>98%)は、Sigma-Aldrich社から購入した。グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ酵素(PGO酵素カプセル、製品番号P7119)、o-ジアニシジン二塩酸塩(カタログ番号D3252)、デキストロース(カタログ番号D9434)及び塩酸(37%、カタログ番号320331)は、Sigma-Aldrich社から入手した。Thin-N-Thik(登録商標)99デンプン及びResista(登録商標)682デンプン、無水クエン酸、Staleydex(登録商標)333デキストロース、及びKrystar(登録商標)300結晶果糖は、Tate&Lyle社から入手した。食品等級大豆レシチン、UltraLec(登録商標)P脱油レシチンは、Archer Daniels Midland社から入手した。食品等級界面活性剤モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM、Panodan(登録商標)150 LP K-A)は、Danisco社から入手した。水酸化ナトリウム(FCC等級)は、VWR社から購入した。安息香酸ナトリウム(FCC等級)は、Fischer Scientific社から購入した。食品等級のソルビン酸カリウム及びトリメタリン酸三ナトリウムは、Spectrum Chemical Mfg社から購入した。全ての化学物質は、更に精製することなく使用した。広く使用された市販のスポーツドリンクであるGATORADE(登録商標)を、インビボ実験の陽性対照として使用した。GATORADE(登録商標)は、水、高果糖コーンシロップ(ブドウ糖-果糖シロップ)、ショ糖シロップ、クエン酸、天然香料、塩分、クエン酸ナトリウム、リン酸一カリウム、食用改質デンプン、赤色色素#40、及びロジンのグリセロールエステルからなる。総糖質濃度は、5.83%(w/v)である。ナトリウム及びカリウム濃度は、各々、0.45mg/mL及び0.125mg/mLである。
【0222】
(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))
ヒドロキシプロピルセルロースは、温度反応性ポリマーである。このポリマー溶液の下限臨界溶解温度(LCST)以上に加熱した場合、水和されたポリマー鎖は、ポリマー−水の水素結合の熱破壊のために、水分を喪失する。このポリマー鎖は、疎水性になり始めるので、溶液から沈殿し、マイクロ粒子を形成する。疎水性相互作用による粒子形成は、可逆性であり−このポリマー分子は、この分散液がLCST以下に冷却された場合に、再度溶解し始める。HPC水溶液の下限臨界溶解温度に対する様々な添加剤の作用を、示差走査熱量測定を用い測定した。HPC水溶液(8%w/v)のLCSTは、48℃であった。3.2%(w/v)大豆レシチン溶液4mLを、8%(w/v)HPC溶液(10mL)へ添加した場合、LCSTの変化は認められなかった。水中TSTMP溶液(1.77%w/v)3gを、HPC及び大豆レシチンを含有する溶液に添加した場合、LCSTは37℃に低下した。最後に、1.36%w/v水酸化ナトリウム溶液0.5gを添加し、かつこの分散液を、300rpmで攪拌しながら、50℃で1時間加熱した。ポリマー粒子の固形物の沈殿が、1時間の加熱後に認められ、これは室温への冷却後に容易に再分散することができた。この分散液のpHは、4N塩酸40μLを添加することにより、約7に調節した。デキストロース(1.75g)をこの分散液に添加し、かつ攪拌により溶解した。デキストロース添加後の、分散液中の架橋されたHPCのLCSTは、約32℃であった。HPCのLCSTに対する添加剤の作用についてのこれらの測定から、架橋剤を使用しなくとも、粒子の形成が生じることは明らかである。しかし広範なイオン強度、温度及びpH条件にわたり粒子の完全性を維持するためには、化学架橋が望ましい。
【0223】
置換度(DS)及びモル置換度(MS)は、HPC分散液の粒子形成及び架橋に影響する重要なパラメータである。セルロース分子内の各ブドウ糖単位は、3個のヒドロキシル基を有する。この置換度は、プロピレンオキシドと反応する1つの無水ブドウ糖単位当たりのヒドロキシル基の平均数として定義されるxxxviii。従って、この置換度は常に、3以下である。モル置換度は、1つのブドウ糖単位当たりの反応するプロピレンオキシド分子の平均数として定義される。モル置換度は一般に、その置換度よりも大きく、かつ3よりも大きいことができる。モル置換度の置換度に対する比は、ポリマーにおける、ヒドロキシプロピル側鎖の平均長をもたらす(x+1、図12参照)。
【0224】
図12に示されたHPCポリマーの構造を基に、このポリマーの各反復単位の平均分子量は、(162.15+58.08 MS)と等しいことは明らかである。各反復単位は、3個のヒドロキシル基を有する。従って、HPCポリマー1g当たりのヒドロキシル基のモル数は、3/(162.15+58.08MS)により得られる。HPC-SLに関して、置換度は1.9であり、モル置換度は約2.1である。従ってヒドロキシル基の濃度は、ポリマー1g当たり約10.6mmolである。
【0225】
(分散液合成)
反応温度50℃で、HPC鎖は凝集し、マイクロ粒子を形成する。粒子内の個々のポリマー鎖を、図13に示された反応を用い、共有結合架橋した。この反応の終了時に、粒子はバイアルの底に沈降した。しかしこれらは、室温への冷却後、穏やかに攪拌することにより、容易に再分散した。
【0226】
pH測定には、多目的ステンレス鋼製ISFETセンサープローブを備えたIQ 150-77 pH/mV/Tempearture system(IQ Scientific Instruments社)を使用した。分散液中の粒子サイズは、ALV-NIBS High Performance Particle sizerを用いて測定した。走査型電子顕微鏡は、JEOL JSM 6300走査型電子顕微鏡を用いて実行した。試料の液滴を、アルミニウムスタブ(stub)上で、室温で約12時間風乾した。この乾燥粒子は、SEM分析の前に、金の導電層により、スパッタリングコーティングした。この分散液の粘度は、Ubbelohde粘度計(Cannon instruments社、サイズ1C)を用いて決定した。液体が粘度計上の2つの基準点の間を溶出するのに要する時間を、ストップウォッチを用いて測定し、その製剤の粘度を、「粘度計定数」、実験的に決定された液体密度、及び溶出時間の積として算出した。示差走査熱量測定(DSC)を、TA Instruments示差走査熱量計を用いて行った。DSC測定は、超高純度窒素の不活性大気中で行った。PerkinElmerアルミニウムパン(#02190062)を、試料と参照の両方について使用した。これらの試料を75℃に加熱し、この温度で1分間維持し、その後20℃まで10℃/分の速度で冷却した。試料と参照の間の熱流量の差を測定し、DSCサーモグラムを得た。
【0227】
ヒドロゲルマイクロ粒子に封入されたブドウ糖のインビトロ放出動態は、PermeGear Side-Bi-Side水平拡散セルを用いて決定した。この拡散セルは、メンブレンにより分離されたドナーチャンバー及びレシーバーチャンバーからなる。メンブレンは、2つのチャンバーの間に配置され、かつこれらのチャンバーは、ステンレス鋼製クランプによりまとめて把持された。ドナーチャンバー及びレシーバーチャンバーは、各々容積7mLを有し、かつ開口部の直径は15mmであった。ドナー及びレシーバーの両チャンバーは、温度制御された水浴からの水がそれを通り循環されるジャケットにより取り囲まれていた。本明細書において詳述される放出動態実験については、ポリエーテルスルホンメンブレンを、その親水性及び耐酸性のために、使用した。細孔サイズ450nm及び直径25mmのポリエーテルスルホンメンブレンは、Sterlitech社から購入した。この拡散セル集成体を、磁気攪拌プレート上に搭載した。レシーバーチャンバーの内容物を、磁気攪拌棒を用いて攪拌した。ドナーチャンバーの内容物は、攪拌せずに留めた。時間の関数としてブドウ糖濃度を決定するために、試料100μLを、レシーバーチャンバーから、マイクロシリンジを用いて採取し、かつ等量の蒸留水と置き換えた。
【0228】
インビトロ実験でのブドウ糖濃度は、Sigma-Aldrich社のプロトコールに従い、グルコースオキシダーゼ比色法を用いて決定したxxxix。このグルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ酵素溶液は、褐色瓶中でSigma社のPGO酵素1カプセルを水100mL中に溶解することにより調製した。各カプセルは、グルコースオキシダーゼ(アスペルギルス・ニジェール)500ユニット、ペルオキシダーゼ(ホースラディッシュ)100プルプロガリンユニット、及び緩衝塩を含んだ。この瓶を、穏やかに振盪しながら数回倒置し、カプセルを溶解した。水20mL中にo-ジアニシジン二塩酸塩50mgを溶解することにより、o-ジアニシジン溶液を調製した。PGO酵素溶液100mLとo-ジアニシジン二塩酸塩溶液1.6mLを混合することにより、PGO-酵素反応溶液を調製した。この溶液は、数回倒置するか、又は穏やかに振盪することにより混合した。水を溶媒とする0.05mg/mlのブドウ糖標準液を調製した。ブドウ糖-含有試料を、PGO酵素反応溶液に添加した。この反応を、室温でおよそ45分間、完了まで進行させた。最終吸光度を、PerkinElmerラムダ650UV-可視分光光度計を波長450nmで使用し、測定した。試料のブドウ糖濃度は、以下のように決定した:
【数5】
【0229】
図14は、ブドウ糖の酵素的測定の反応スキームを示している。
ブドウ糖は、グルコースオキシダーゼにより、グルコン酸と過酸化水素に酸化される(図14)。過酸化水素は、ペルオキシダーゼの存在下で、o-ジアニシジンと反応し、着色生成物を形成する。450nmで測定された茶色の強度は、当初のブドウ糖濃度に比例する。
【0230】
(インビボ放出動態)
LifeScan社から市販されているOneTouch Ultra血中ブドウ糖バイオセンサーを使用し、血中ブドウ糖濃度を決定した。OneTouch Ultra血中ブドウ糖モニタリングシステムは、血液わずか1μL及び濃度分析に5秒を必要とする先進の電気化学バイオセンサー試験紙を使用するXL。この試験紙は、血液を試験紙に自動的に引き寄せるデザインを特徴としている。
【0231】
本試験の非-運動アームに関して、被験者には以下のことが指示された:
1.実験前24時間は激しい運動を避けること。
2.実験前に、一晩、少なくとも10時間は絶食すること。
3.坐位で採血し、血中ブドウ糖濃度を決定するために、従来型ばね押し式使い捨てランセット、及び携帯型ブドウ糖測定器を使用し分析すること。45分間で最大3回、初回測定値を得かつ記録し、ベースラインブドウ糖レベルを確立すること。
4.被験製剤、水(対照)、水性デキストロース溶液又はGATORADE(登録商標)(陽性対照)の400mLをおよそ2分以内に消費すること。
5.坐位で採血し、携帯型ブドウ糖測定器を使用し血中ブドウ糖濃度を分析すること。最初の90分間は5分毎に、及びその後最大240分間は15分毎に、測定値を得かつ記録し、血中ブドウ糖濃度、対、時間プロファイルを得ること。
【0232】
異なる時点で測定した血中ブドウ糖濃度から空腹時(ベースライン)値を減算した後、濃度対時間プロファイル下面積を、simple Matlabコードを使用する台形公式により決定した。
【0233】
動的運動試験には、Precorモデル966iトレッドミル又は類似型を使用した。本試験の運動アームにおいて、被験者には以下のことが指示された:
1.実験前24時間は激しい運動を避けること。
2.実験前に、一晩、少なくとも10時間は絶食すること。
3.45分前には、試験施設に入り、着座し楽にすること。
4.坐位で採血し、血中ブドウ糖濃度の決定を目的として従来型ばね押し式使い捨てランセット、及び携帯型ブドウ糖測定器を使用し分析すること。45分間で最大3回、初回測定値を得かつ記録し、ベースラインブドウ糖レベルを確立すること。
5.ベースラインブドウ糖レベルが確立した後、約5mph(〜60%VO2max)の速度で最大15分間、トレッドミル上を走行すること。所定の時点で、被験者には:短時間走行を停止すること;採血し、血中ブドウ糖レベルを決定するために、従来型ばね押し式使い捨てランセット、及び携帯型ブドウ糖測定器を使用し、分析すること;並びに、ウォーミングアップ期間が完了するまで、走行を直ちに再開すること:が求められた。15分間で最大3回、初回測定値を得かつ記録し、運動ベースラインブドウ糖濃度を確立すること。ウォーミングアップ期間後直ちに、約2分以内で、被験製剤400mLを消費すること。
6.前記ペースで走行を再開し、所定の時点で、被験者には:短時間走行を停止し、採血し、血中ブドウ糖レベルを決定するために、従来型ばね押し式使い捨てランセット、及び携帯型ブドウ糖測定器を使用し、分析し、並びに、運動アームが完了するまで、各試料採取後、走行を直ちに再開すること:が求められた。被験者には、できる限り長く(最大195分間)、予め設定されたペースで走行することが指示された。通常の原則(regular basis)で測定値を得かつ記録し、血中ブドウ糖濃度、対、時間プロファイルを得ること。
【0234】
異なる時点で測定した血中ブドウ糖濃度からベースライン値を減算した後、濃度対時間プロファイル下面積を決定した。
【0235】
(実施例2.1)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、4g)を、250-mLエーレンマイヤーフラスコ中で、室温で、磁気攪拌機を使用し、蒸留水50gに溶解した。エーレンマイヤーフラスコ内のこのHPC溶液に、大豆レシチンの水溶液を添加し、この混合液を、均質な淡黄色溶液が得られるまで、5分間攪拌した。この溶液に、TSTMP水溶液を、3アリコートで添加し、各添加の間2分間攪拌した。この製剤の濁りは、TSTMPの添加後増大し、これは粒子形成を示している。最後に、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、この分散液を5分間攪拌した。この分散液のpHを、pHメーターを用い測定し、約11.6であった。得られた製剤を、ホットプレート(Corning Instruments社、PC 620D)を用い50℃に維持した水浴で、2時間加熱し、磁気攪拌機を用い、300rpmで攪拌した。この反応の間に、固形沈殿物が形成された。エーレンマイヤーフラスコを、水浴から取り外し、室温まで冷却し、この反応時に形成された固形沈殿物が再分散されるまで磁気攪拌機を用いて混合し、均一な均質分散液を形成した。この分散液のpHを測定し、10.9であった。この分散液のpHを、4N HCl溶液(〜30〜50μL)を用いて、7.8に調節した。その後デキストロース粉末(8.95g)を添加し、かつ固形物が溶解するまで、この混合物を室温で5分間攪拌した。この分散液を50℃で20分間再度加熱し、この間300rpmで攪拌した。形成された沈殿を、室温まで冷却後、磁気攪拌機を用いて再分散させた。
【0236】
(実施例2.2)
8%(w/v)HPC溶液10mLを、ガラスバイアルに入れた。磁気攪拌機(300rpm)及び攪拌棒(長さ5mm×直径2mm)を使用し攪拌しながら、大豆レシチンの水溶液をこのバイアルに添加した。この溶液に、攪拌を続けながら、TSTMP水溶液を滴加した。最後に、NaOH溶液0.5mLを添加し、得られた溶液を50℃で1時間加熱した。1時間後、この混合物を冷却した。白色固形物が溶液の底に沈降した。沈降した固相中のマイクロ粒子を、200rpm(室温で約1時間)混合することにより、再分散させ、透明で均質な溶液を生じた。こうして得られた分散液を、4N HCl溶液数μLで中和した。この分散液の最終HPC濃度は、約4.4%(w/v)であった。デキストロース粉末(1.85g)を、4.4%(w/v)HPC分散液18.5mLに添加した。この分散液を、デキストロースの溶解が完了するまで、攪拌した。放出試験を行う前に、少なくとも48時間経過した。
【0237】
平均直径約5.4μmのヒドロキシプロピルセルロースマイクロ粒子が得られた(図15a及び15b参照)。4.4%(w/v)HPC分散液の粘度は、室温で15.46cPであることがわかった(デキストロースの添加前)。直径が5.4μmより大きい少数の粒子(図15c参照)を、SEM像において認めた。
【0238】
(実施例2.3)
疎水性に改質された食用デンプン(Thin-N-Thik(登録商標)99デンプン及びResista(登録商標)682デンプン)などの多糖を使用し、ヒドロゲルマイクロ粒子を形成した。デンプン800mgを蒸留水10mL中に室温で溶解することにより、8%(w/v)デンプン溶液を調製し、混濁しているが均質な分散液を得た。その後精製大豆レシチン、TSTMP、及び水酸化ナトリウムの溶液を、蒸留水中に調製した。ガラスバイアル中に入れたデンプン分散液10mLに、大豆レシチン溶液4mLを添加し、この混合液を5分間攪拌した。この混合液に、TSTMP溶液3mLを添加した。5分間攪拌した後、水酸化ナトリウム溶液0.5mLを添加した。このガラスバイアルを、50℃の油浴中に配置し、60分間加熱した。磁気攪拌機を用い攪拌を提供し、かつ反応の間は速度300rpmを維持した。60分後、バイアルを油浴から取り外し、室温まで冷却し、4M塩酸溶液数μLを使用し、pHを7に調節した。得られる分散液中の粒子サイズを、表5に示した。
【表5】
【0239】
(実施例2.4)
下記の製剤を、蒸留水及び食品等級の化学物質を用い、2-リットルガラス反応器内で合成した。アルギン酸ナトリウム(SALMUP)、大豆レシチン、トリメタリン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸、及びデキストロースのストック液を、蒸留水中に調製した。蒸留水250mL中に安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムを溶解することにより、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムのストック液を、調製した。容量2-リットルの欧州式先細の3-首のジャケット付きフラスコ(Chemglass社、カタログ番号CG-1576-11)において、反応を実行した。この反応器の内容物は、オーバーヘッド攪拌機(IKA(登録商標)RW-20)、及びテフロン攪拌ブレード(Chemglass社、カタログ番号CG-2080)に装着された磨きガラスシャフト(Chemglass社、カタログ番号CG-2078-02)からなるかき混ぜ機を用いて、混合した。再循環式水浴を使用し、反応器のジャケットを通過する水の温度を制御した。
【0240】
蒸留水1Lを、シリコーン漏斗を用い、フラスコの側方の首を通り、反応器へ注いだ。攪拌機の速度は、260rpmに設定した。反応器のジャケットを通り流れる水は、室温であった。HPC-SL粉末約100gを、シリコーン漏斗を通り、反応器に、20分間かけてゆっくり添加し、約60分間混合し、均質な(透明な)HPC溶液を得た。次に大豆レシチン溶液を、この反応器に添加した。約5分間混合した後、TSTMP溶液を添加し、この反応器の内容物を更に5分間混合した。最後に、水酸化ナトリウムを反応器に添加し、混合した。得られる溶液のpHを測定し、約11.1であった。
【0241】
水浴の温度を、50℃に設定した。水浴の温度が50℃に達した後、この反応器の内容物を、この温度で90分間加熱した。90分後、白色固形物が、この反応器の底に沈降した。反応器のジャケットから熱水を排水し、かつ冷水(〜10℃)を循環させることにより反応器の内容物を冷却した。この反応器内容物を約1時間混合し、この時点で沈降した固形物を、水相中に再分散させ、均質な分散液を生じた。この分散液のpHを測定し、10.3であることがわかった。
【0242】
このpHを、クエン酸溶液の添加により、7に調節した。その後、デキストロース溶液(100%w/v)400.1gを、この反応器に添加し、これらの内容物を約10分間混合した。最後に、アルギン酸ナトリウム溶液を、漏斗を通して添加した。漏斗に付着し残留したアルギン酸ナトリウムは、デキストロース溶液33gを用い、反応器へと洗い落とした。10分間混合した後、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウム溶液を含有する溶液を添加した。この分散液のpHを、クエン酸溶液を用い、3.8まで低下させた。
【0243】
この分散液中の粒子の数平均直径は約4.1μmであり、かつ質量平均直径は約4.3μmであった。分散液の粘度は約32.2cPであった。そのpHは約3.8であった。室温での密度は、約1.2g/mLであった。実施例2.4の当初の分散液の一部を、等質量の水を添加することにより希釈し、希釈された希釈分散液を得、その粘度は11.7cPであった。
【0244】
(実施例2.5)
先に説明された手順を用い、製剤の別のバッチを合成し、4つの部に分けた。これらの各々は、異なる量の糖質デキストロース及び果糖を含んだ。これらの試料の全体の組成、粒子サイズ、及び粘度を、表6に示している。
【表6】
【0245】
(実施例2.6)
大豆レシチン、トリメタリン酸三ナトリウム(TSTMP)、水酸化ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウムの水溶液を、蒸留水中に各化合物を溶解することにより、各々調製した。無水クエン酸も、蒸留水中に溶解した。水中の安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムの溶液も、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムを蒸留水中に溶解することにより、調製した。加えて、水中のデキストロースの溶液を、蒸留水172g中にデキストロース151gを溶解することにより調製した。
【0246】
ヒドロゲルマイクロ粒子の合成は、容量2-リットルの欧州式先細の3-首のジャケット付きフラスコ(Chemglass社、カタログ番号CG-1576-11)において実行した。この反応器の内容物は、オーバーヘッド攪拌機(IKA(登録商標)RW-20)、及びテフロン攪拌ブレード(Chemglass社、カタログ番号CG-2080)に装着された磨きガラスシャフト(Chemglass社、カタログ番号CG-2078-02)からなるかき混ぜ機を用いて、混合した。再循環式水浴を使用し、反応器のジャケットを通過する水の温度を制御した。
【0247】
蒸留水(750g)を、シリコーン漏斗を用い、フラスコの側方の首を通り、反応器へ注いだ。攪拌機の速度は、265rpmに設定した。室温の水を反応器のジャケットを通り再循環させた。HPC-SL粉末約75.2gを、シリコーン漏斗を用い、反応器中の水に、20分間かけてゆっくり添加し、約60分間混合し、均質なHPC溶液を得た。大豆レシチン溶液を、この反応器に添加した。室温で約5分間混合した後、TSTMP溶液を添加し、この反応器の内容物を更に5分間混合した。最後に、水酸化ナトリウムを反応器に添加し、混合した。得られる溶液のpHを測定し、約11.1であった。
【0248】
水浴の温度を、50℃まで上昇させた。水浴の温度が50℃に達した後、この反応器の内容物を、この温度で90分間加熱した。90分後、白色固形物が、この反応器の底に沈降した。反応器のジャケットから熱水を排水し、かつ冷水を循環させることにより反応器の内容物を冷却した。この反応器内容物を約1時間混合し、この時点で沈降した固形物を、水相中に再分散させ、均質な分散液を生じた。この分散液のpHを測定し、10.3であることがわかった。
【0249】
このpHを、クエン酸溶液の添加により、6.5に調節した。その後、デキストロース溶液320gを、分散液に添加し、約10分間混合した。最後に、アルギン酸ナトリウム溶液を、漏斗を通して添加した。漏斗に付着し残留したアルギン酸ナトリウムは、デキストロース溶液33gを用い、反応器へと洗い落とした。10分間混合した後、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウム溶液を添加した。この分散液のpHを、クエン酸溶液を用い、3.8まで低下させた。
【0250】
この分散液中の粒子の数平均直径は約4.5μmであり、かつ質量平均直径は約4.7μmであった。分散液の粘度は約38.7cPであった。
【0251】
(実施例2.7)
製剤の合成は、食品等級の化学物質を用い、1.5-リットルスケールで実行した。大豆レシチン、TSTMP、水酸化ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムの水溶液を、最初に個別に調製した。無水クエン酸も蒸留水中に溶解させた。
【0252】
この反応は、容量2-リットルの欧州式先細の3-首のジャケット付きフラスコ(Chemglass社、カタログ番号CG-1576-11)において実行した。この反応器の内容物は、オーバーヘッド攪拌機(IKA(登録商標)RW-20)、及びテフロン攪拌ブレード(Chemglass社、カタログ番号CG-2080)に装着された磨きガラスシャフト(Chemglass社、カタログ番号CG-2078-02)からなるかき混ぜ機を用いて、混合した。再循環式水浴を使用し、反応器のジャケットを通過する水の温度を制御した。
【0253】
蒸留水(750g)を、シリコーン漏斗を用い、フラスコの側方の首を通り、反応器へ注いだ。攪拌機の速度は、265rpmに設定した。反応器のジャケットを通り流れる水は、室温であった。HPC-SL粉末(75.2g)を、シリコーン漏斗を通り、反応器に、20分間かけて添加し、約60分間室温で混合し、均質な(透明な)HPC溶液を得た。次に大豆レシチン溶液を、この反応器に添加した。5分間混合した後、TSTMP溶液を添加し、この反応器の内容物を更に5分間混合した。最後に、水酸化ナトリウムを反応器に添加し、混合した。得られる溶液のpHを測定し、約11.1であった。
【0254】
水浴の温度を、50℃に設定した。水浴の温度が50℃に達した後、この反応器の内容物を、この温度で120分間加熱した。120分後、白色固形物が、この反応器の底に沈降した。反応器のジャケットから熱水を排水し、かつ冷水を循環させることにより反応器の内容物を冷却した。約1時間の更なる混合は、沈降した固形物を再分散させ、均質な分散液を生じた。この分散液のpHを測定し、10.3であることがわかった。クエン酸溶液の添加は、このpHを約6.6まで低下した。その後、デキストロース溶液(150g)を、粉末として反応器に添加し、内容物を約10分間混合した。最後に、SALMUP溶液を、漏斗を通して添加した。10分間混合した後、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムを含有する溶液を添加した。最後に、この分散液のpHを、クエン酸溶液を用い、3.8まで低下させた。
【0255】
この分散液中の粒子の数平均直径は約4.2μmであり、かつ質量平均直径は約4.8μmであった。分散液の粘度は約36.7cPであった。
【0256】
(実施例2.8)
実施例2.1の製剤を使用した。HPC粒子からのデキストロースの放出動態は、pH7、及び温度28℃で測定した。この温度は、分散液中のHPCのLCSTよりも低いので、これを選択した。
【0257】
28℃で操作する水浴を用い、拡散セルのドナー及びアクセプターコンパートメントの加熱ジャケットを通して水を循環させた。このHPC製剤7mLを、拡散セルのドナーコンパートメントに添加し、蒸留水(pH〜7)7mLをレセプターコンパートメントに添加した。規則的間隔でレセプターコンパートメント内のこの液体の少量アリコート(0.1mL)を、マイクロシリンジを用いて採取し、等量の蒸留水(0.1mL)と置き換えた。これらのアリコートを、250mLの容量フラスコに入れ、蒸留水を用いて希釈した(2500倍)。ブドウ糖の濃度を、グルコースオキシダーゼ比色法を用いて決定した。
【0258】
HPC分散液に関するアクセプターコンパートメントのブドウ糖濃度、対、時間プロファイルを、HPC分散液と同じ全体のブドウ糖濃度(8.7重量%)を有したブドウ糖対照について得られたプロファイルと比較した。
【0259】
この濃度、対、時間プロファイルは、本被験製剤と対照について極めて異なり、このことは、実施例2.1の製剤は、ブドウ糖の遅延放出を示したことを示唆している。予想されたように、最終ブドウ糖濃度は、HPC分散液(〜38mg/mL)のほうが、ブドウ糖対照(〜54mg/mL)よりも低かった。この実験手順は、ブドウ糖輸送の動態を決定するために非-沈降(non-sink)条件を利用した。HPC分散液中のブドウ糖の一部は、平衡状態で、粒子内に封鎖され続けた。従ってドナーコンパートメント中の最終濃度は、ブドウ糖対照の場合のそれよりも、低かった。
【0260】
(実施例2.9)
アルギン酸ナトリウム(SALMUP)粉末を、実施例2.1に説明された製剤20gに添加した。最終分散液のpHは、4N塩酸を用い、3.8に調節した。この製剤は、8.7%(w/w)デキストロース、3.9%(w/w)HPC、SALMUP、TSTMP、及び大豆レシチンを含有した。同じ製剤を、等質量の水により希釈した。ブドウ糖輸送の動態を、拡散セルを用い28℃で測定した。この希釈した製剤は、4.3%(w/w)デキストロース、1.9%(w/w)HPC、SALMUP、TSTMP、及び大豆レシチンを含有した。ブドウ糖輸送の動態に対する希釈の作用は、実施例2.8に説明された手順に従い、拡散セルを用いて調べた。図17は、当初の製剤と希釈した製剤について、アクセプターコンパートメントのブドウ糖濃度プロファイルを比較した。
【0261】
この濃度プロファイルのプラトー値は、1:1希釈について予想されたように、当初の製剤よりも希釈した製剤のほうがより低かった(約50%)。図17に示された濃度プロファイルから、希釈された製剤は、当初の製剤と比べ、より速い速度でブドウ糖を放出したことも明らかであった。
【0262】
(実施例2.10)
HPC粒子からのデキストロースの放出の動態を、pH7及び温度37℃で測定した。この温度は分散液中のHPCのLCSTを上回り、かつヒト体の温度に近いので、これを選択した。実施例2.1の製剤を使用した。約10時間後には、封入されたブドウ糖のほとんど全てが、放出された(図18)。このHPC粒子は、温度がLCSTを上回って上昇した場合(例えば37℃)、親水性状態から疎水性状態への転移を受ける。これらの粒子は縮小されるので、粒子内に存在するブドウ糖分子は、水と共に排出される。HPC分散液が、ブドウ糖(対照)と同じ濃度でブドウ糖溶液の代わりにドナーコンパートメント内に存在する場合、レセプターコンパートメント中のブドウ糖濃度は、より遅い速度で増加することは、図18から明らかである。
【0263】
(実施例2.11)
HPC粒子からのデキストロース放出の動態を、pH2及び温度37℃で測定した。pH値2は、空腹時の胃液のpHに似ている。実施例2.4の分散液を使用した。この分散液のpHは、4N塩酸を用い、2に調節した。拡散セルのジャケット内の水は、水浴を用い37℃で維持した。このHPC分散液7mLを、ドナーコンパートメントに添加し、酸性水(pH2、塩酸)7mLを、レセプターコンパートメントに添加した。選択された時間間隔で、レセプターコンパートメント内の液体の0.1mLアリコートを採取し、これを等量の蒸留水で置き換えた。採取したアリコートは、容量フラスコを用い10倍希釈し、このブドウ糖濃度を、GM8分析装置(Analox Instruments社)を用いて決定した。図19は、本分散液及びブドウ糖溶液(対照)に関する濃度プロファイルを示している。明らかに、放出速度は、ブドウ糖溶液よりも、HPC分散液の方が遅い。
【0264】
(実施例2.12)
HPC粒子からのデキストロース放出の動態に対するpHの作用を、実施例2.1の分散液を用い更に例証した。当初の分散液のpHを、4N塩酸を用い、〜7に調節した。アルギン酸ナトリウム(SALMUP)粉末を、この分散液20gに添加し、磁気攪拌機を用いて溶解した。ブドウ糖放出動態の決定(拡散セルを使用する)の数分前に、アルギン酸ナトリウムを含有する分散液約10gを採取し、そのpHを4N塩酸を用い3.8に調節した。この分散液の残り10gのpHを、4N塩酸を用い2に調節した。そのようにして得られた3種の分散液は全て、約8.7%(w/w)デキストロース、3.9%(w/w)HPC、SALMUP、TSTMP、及び大豆レシチンを含有した。28℃でのブドウ糖放出の動態を、実施例2.8において考察したように、拡散セルを用いて決定した。ドナーコンパートメントは、この分散液7mLを含有した。レセプターコンパートメントは、蒸留水7mLを含有し、ドナーコンパートメント中の分散液のpHと同じpHに酸性化した。レセプターコンパートメント内のブドウ糖の濃度は、グルコースオキシダーゼ比色法を用い決定した。図20は、3種の分散液について、レセプターコンパートメントブドウ糖濃度プロファイルを比較した:pH7、3.8、及び2。pH値7と3.8の濃度プロファイルに、ほとんど差異はなかった。しかしこの分散液のpHが、カルボン酸基(アルギン酸塩の)のpKaよりも実質的により低い場合、有意に異なる濃度時間プロファイルが認められた。このデータは、HPC粒子内でブドウ糖分子の拡散障壁を作製するアルギン酸ナトリウムの役割を明確に示している。この障壁特性は、この分散液が消費後に胃環境において遭遇するであろう酸性pHで増強される。
【0265】
(実施例2.13)
実施例2.4の分散液約12.85oz(380mL、450g)は、一晩絶食後(〜10時間)に消費された。これらの製剤は、米国食品医薬品局(FDA)により「一般に安全と認められる物質(GRAS)」である食品添加物と考えられる物質で構成された。全ての成分の量は、米国FDA及びWHOにより決定された許容レベル内に収まる。HPC分散液の消費の前1時間に、空腹時血中ブドウ糖濃度を測定し、ベースラインを確立した。この血中ブドウ糖濃度は、分散液の消費後規定間隔で決定した(図21a)。図21aは、GATORADE(登録商標)380mLの消費後の、同じ被験者に関する血中ブドウ糖濃度プロファイルも示している。図21bにおいて、血中ブドウ糖濃度は、空腹時ベースラインブドウ糖濃度を減算することにより、標準化されている。HPC分散液及びGATORADE(登録商標)の両方共、高いグリセミック指数(血中ブドウ糖濃度の上昇速度に反映された、摂取された炭水化物が腸管吸収に利用可能になる速度の測定値)を示した。
【0266】
しかしGATORADE(登録商標)対照は、約70分で血中ブドウ糖濃度の急激な減少を示し、これは明らかに高グリセミック指数の炭水化物に対するインスリン反応(高インスリン血症)のためであるviii。再摂食状態において(HPC分散液の消費後)、血液のインスリン濃度は、上昇した血糖値に反応して増加する。インスリンは、血液から体細胞へのブドウ糖の取り込みを増強し、血中ブドウ糖濃度の減少を引き起こす。インスリンの血糖降下反応は、肝臓グリコーゲン分解を引き起こすグルカゴンにより対抗され、最終的には血中ブドウ糖濃度は恒常的レベルに戻る。明らかにこのプロセスは、45分間の期間中に生じた(GATORADE(登録商標)の消費後50〜95分;図21b参照)。対照的に、本HPC分散液は、制御された速度で、ブドウ糖を血流に供給することができ、かつ最大約170分間、血中ブドウ糖レベルを空腹時濃度よりも上に持続することができた。本HPC分散液は、GATORADE(登録商標)対照よりも約75%より高い全体糖質量を含み、そのインスリン反応は比較的穏やかである。最低血中ブドウ糖濃度は、ほぼ185分まで認められなかった。
【0267】
(実施例2.14)
図22は、実施例2.5のHPC分散液の血中ブドウ糖濃度プロファイルを、GATORADE(登録商標)対照のそれと比較している。本製剤は、米国食品医薬品局(FDA)により「一般に安全と認められる物質(GRAS)」である食品添加物と考えられる物質で構成された。全ての成分の量は、米国FDA及びWHOにより決定された許容レベル内に収まる。等容量(380mL)のこれら2種の製剤を消費した。両方の製剤は、類似した糖質濃度を含んだ。本実施例のHPC分散液は、実施例2.13のHPC分散液中のHPC粒子の総数のほぼ半分を有する。従って、血中ブドウ糖濃度は、わずかに最大でも約75分間、空腹時濃度を上回り維持され、それでもこれは対照よりも約25分間長い。
【0268】
(実施例2.15)
本実施例は、2つの異なる種類の炭水化物、すなわちデキストロース及び果糖の遅延放出の、血中ブドウ糖濃度プロファイルに対する影響を例証する。果糖は、迅速に筋肉グリコーゲン合成を促進することはできないがviii、これは、インスリン反応を制御し、かつ炭水化物消費後2時間たっても、空腹時値を有意に上回る血中ブドウ糖濃度を維持するために、使用することができる(図23参照)。実施例2.5の2種の異なるHPC分散液(2.5A及び2.5D)を、図23において比較した。一方の分散液は、糖質としてデキストロースのみを含有するのに対し、他方の分散液は、デキストロース及び果糖の両方を含有した。第二の分散液の総糖質濃度は、第一の分散液のそれと同じであった。同じ容量(380mL)の両方の分散液を消費し、血糖反応を測定した。これらの製剤は、米国食品医薬品局(FDA)により「一般に安全と認められる物質(GRAS)」である食品添加物と考えられる物質で構成された。全ての成分の量は、米国FDA及びWHOにより決定された許容レベル内に収まる。図23において、主に果糖を含有する製剤は、予想されたように、より低いグリセミック指数を有することが認められる。この血中ブドウ糖濃度は、最大約230分間、空腹時レベルを上回った。本HPC分散液により提供された遅延放出機構は、果糖のブドウ糖への肝臓での変換において代謝時間のずれがあり、ベースライン値よりも大きい血中ブドウ糖レベルを生じる。
【0269】
(実施例2.16)
実施例2.7のHPC分散液に関する血中ブドウ糖濃度プロファイルを、対照として使用したブドウ糖の水溶液と比較した(図24参照)。これらの製剤は、米国食品医薬品局(FDA)により「一般に安全と認められる物質(GRAS)」である食品添加物と考えられる物質で構成された。全ての成分の量は、米国FDA及びWHOにより決定された許容レベル内に収まる。これらの製剤は両方共、同様の全体の糖質濃度(〜10重量%)を含んだ。血中ブドウ糖濃度は、ブドウ糖対照(〜60分間)よりも、HPC分散液に関して、より長い期間(〜115分間)空腹時レベルを上回り維持された。このインスリン反応は、即時放出の対照と比べ、遅延放出型製剤に関して明白に同じく有意に低い。
【0270】
(実施例2.17)
本HPC分散液の摂取のタイミングの作用を、実施例2.7の分散液を用い例証する。本製剤は、米国食品医薬品局(FDA)により「一般に安全と認められる物質(GRAS)」である食品添加物と考えられる物質で構成された。全ての成分の量は、米国FDA及びWHOにより決定された許容レベル内に収まる。本製剤のボーラス380mL(450g)が消費された。このボーラス投与量に関する血中ブドウ糖濃度、対、時間プロファイルを、同量の製剤が3部分で摂取される実験の濃度プロファイルと比較し−これら各部分は、本分散液127mL(150g)からなった。図25から、これらの戦略は両方共、少なくとも最大110分間について、血中ブドウ糖濃度のベースラインレベルを上回ったことが認められた。この血糖反応は、予想されたように、より少量の炭水化物分散液が頻回に消費される場合に、より低かった。
【0271】
(実施例2.18)
HPC分散液の摂取のタイミングの作用は、対照としてGATORADE(登録商標)を用い、実施例2.7の分散液を用いて例証される。2つの個別の実験において、各製剤380mL(450g)は、3部分で摂取され−各部分は、本製剤127mL(150g)からなった。この血中ブドウ糖濃度は、図26において比較した。
【0272】
(実施例2.19)
血中ブドウ糖濃度プロファイルに対する中程度の強度の運動(〜60%VO2max)の前に供給された遅延放出型炭水化物の作用を、本実施例において例証している。実施例2.4のHPC分散液380mLを、運動の前に消費した。この実験の対照は、実施例2.4のHPC分散液のデキストロース濃度に近づけるためにデキストロース17.5gを添加したGATORADE(登録商標)製剤380mLであった。図27に認めることができるように、血中ブドウ糖濃度は、HPC分散液において、対照と比べ、50分で有意に高かった。本試験は、被験者が可能な限り長く〜60%VO2maxと等しい速度で走る場合の疲労に対する経過時間の関数としてのエネルギー出力も測定した。HPC分散液は、水対照よりも55%より大きい経過時間、及びデキストロース17.5gが添加された陽性対照GATORADE(登録商標)製剤よりも31%より大きい経過時間を生じた。
【0273】
(実施例2.20)
本HPC分散液の血糖の影響を、血中ブドウ糖濃度プロファイル曲線下面積を用い、特徴付けた。図28は、実施例2.13から2.19に例示された様々な製剤に関する血中ブドウ糖濃度プロファイルの比較に使用された、濃度時間プロファイルのパラメータを示している。C-Cbは、空腹時(本実験の開始前)の血中ブドウ糖濃度であるベースライン値Cbに対する血中ブドウ糖濃度である。時点t=0は、本実験の開始(例えばCHO製剤の摂取)に対応している。時点t実験は、その間血中ブドウ糖濃度が測定される本実験期間の総時間である。時点tベースラインは、血中ブドウ糖濃度がベースラインを超える、すなわち、空腹時値以下に下落する時点である。血液中のブドウ糖は、CHO摂取後、長期間にわたり、エネルギー源として利用可能であるので、より高いtベースライン値が望ましい。
【0274】
報告された全ての血中ブドウ糖濃度プロファイルについて、2つの異なる曲線下面積値AUC+及びAUCトータルが算出された。
AUC+は、図28において「+」により示された領域の面積であり、下記式を用い、算出され:
【数6】
ここで、積分は、下端t=0と上端t=tベースラインの間で評価される。
【0275】
AUCトータルは、濃度プロファイル下総面積であり、かつ図28において「+」及び「-」により示された領域の代数和である。AUCトータルは、下記式を用いコンピュータ算出し:
【数7】
ここで、積分は、下端t=0と上端t=t実験の間で評価される。
【0276】
AUC+は、血中ブドウ糖濃度に対する外来性CHOの作用を表す。血中ブドウ糖濃度は最初に、CHO消費のために増加する。外来性血中ブドウ糖は、インスリン反応のために、組織グリコーゲンに変換され、運動期間中に作業筋肉にエネルギーを提供するためにも使用され、これは血中ブドウ糖濃度の減少につながる。空腹時値以下への血中ブドウ糖濃度の下落は、インスリン反応によるか(被験者が着座し続ける実験において)、又は作業筋肉による血中ブドウ糖酸化速度が血流へのブドウ糖供給速度を超える場合(各々、腸管腔を超えるブドウ糖吸収及びグリコーゲン分解などの、外来性及び内在性給源)、又はこれら両方による。
【0277】
表7は、様々な製剤の血中ブドウ糖濃度に対する作用を、tベースライン、AUC+、及びAUCトータル、並びに下記式を用い算出される実験期間中の血中ブドウ糖濃度<C-Cb>の平均偏差に関して、まとめている。
【数8】
AUCトータル及び<C-Cb>の両方は、実験期間t実験に左右される。従って異なる実験間でのこれらの値の比較は一般に、実験期間が類似している(例えば類似したt実験値を持つ)場合にのみ行われる。別に記さない限りは、本製剤380mLが、単回ボーラス投与量として摂取された。
【0278】
表7から、本HPC分散液は概して、即時放出型CHO対照、又は水よりもより高いtベースラインを示したことは明らかである。AUC+及びAUCトータル値も、休息状態及び運動状態の両方の期間、対照と比べ、HPC分散液について有意に高い。
【表7】
【0279】
(参考文献)
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【0280】
従って本発明は詳細な好ましい実施態様において説明されているが、先の段落で規定された本発明は、本発明の精神又は範囲から逸脱しない可能性のある多くの変更は明らかであるように、先の説明で示された特定の詳細に限定されるものではないことは理解されるべきである。
【0281】
本出願において引用されるか又は説明された特許、特許出願、及び刊行物の各々は、個々の特許、特許出願、又は刊行物が各々、参照により組み入れられることが具体的かつ個別に指摘されるように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A-B】
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28