(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記干渉型消音器は、少なくとも前記開口端が前記吸音材とタイヤ周方向における同じ位置に設けられたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤとリムとの組立体。
前記吸音材はタイヤ周方向に対して前後となる第1吸音層と第2吸音層を有し、前記第1吸音層と第2吸音層の間に前記干渉型消音器が設けられたことを特徴とする請求項2記載の空気入りタイヤとリムとの組立体。
前記リムには前記タイヤ空洞に空気を充填するための空気バルブが備えられており、前記吸音材と干渉型消音器が前記空気バルブに取り付けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤとリムとの組立体。
タイヤ内側面における周方向の1箇所又は周方向に間隔をおいた複数箇所に、リムとの間に形成されるタイヤ空洞を主管路として当該タイヤ空洞に対して開口する開口端を有する副空洞共鳴器としての干渉型消音器と組み合わせて、多孔質の吸音材が配置され、前記吸音材はその全体が前記主管路としての前記タイヤ空洞内に設けられ、前記干渉型消音器の前記副空洞共鳴器として作用する空洞の外部に前記吸音材が設けられたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の走行時における騒音に対して、さらなる低騒音化、静粛化が望まれており、タイヤにより生じる騒音についても低減することが求められている。
【0003】
例えば、タイヤの空洞共鳴は自動車の車室内騒音に影響を及ぼす。空洞共鳴は、空気入りタイヤをリムに装着した際に、リム周囲に形成されかつタイヤとリムとが囲む空洞(空気充填される部分)が気柱管を構成して空気が共鳴振動することによるものであり、ロードノイズの原因となる。
【0004】
かかるタイヤ空洞で発生する共鳴を低減させ、車室内に伝わる騒音を低減させるための技術として、タイヤ空洞内に多孔質吸音材や干渉型消音器を設けることが提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、タイヤ内側面に全周にわたって吸音材層を設けた構成が開示されている。この構成では、タイヤ周上に連続して吸音材が設けられているため、タイヤ空洞を断面でみたときの面積に占める吸音材の割合は少なく、吸音材の使用量の割には効果が小さく、また使用する吸音材の量自体も多いという欠点がある。
【0006】
下記特許文献2には、タイヤ空洞内に、タイヤの回転に伴う遠心力によりリムの外周面からタイヤ半径方向に立ち上がり、タイヤ空洞を遮る1以上の立ち上がり部を配置し、該立ち上がり部に不織布からなる吸音材を設けた構成が示されている。吸音材が効果的に働くのは、空気の粒子速度が最大となる粒子速度の腹に位置する場合である。そのため、特許文献2の構成では、吸音材が粒子速度の腹位置にある場合にしか十分な効果を発揮できない。
【0007】
下記特許文献3には、タイヤの内側面にゴム製中空環状体を設け、該中空環状体に開口を形成する構成が開示されており、タイヤ空洞内にサイドブランチ型消音器を設けて、空洞共鳴の低減を図っている。また、下記特許文献4には、タイヤ空洞内に複数の副気室をタイヤ周方向に並べて設け、連通部を介して該副気室をタイヤ空洞に連結することで、ヘルムホルツ型共鳴器として機能させることが開示されている。このような干渉型消音器が効果的に働くのは、開口端が共鳴による音圧の腹位置にある場合であり、当該腹位置にある場合しか十分な効果を発揮できない。
【0008】
下記特許文献5には、タイヤ空洞内に全周にわたって多孔質吸音材を設け、該多孔質吸音材の内部にタイヤ空洞と区画された空気室を形成し、該空気室をタイヤ空洞と連結させることでヘルムホルツ型共鳴器を構成することが開示されている。しかしながら、タイヤ周上に連続して吸音材を設ける構成では、吸音材を有効に使用していると言えない点で上記特許文献1と同様である。また、多孔質吸音材自体でヘルムホルツ型共鳴器の壁を構成しているため、共鳴器内の空気が多孔質の壁を透過したり、該壁に空気が吸収されたりして、共鳴器の効果が十分に発揮されないおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0020】
まず、
図5を参照しながら、タイヤの空洞共鳴における粒子速度と音圧の関係について説明する。空気入りタイヤの空洞共鳴は、トーラス状の円環内で起こる空気の一次共鳴であり、タイヤ周方向においては、空気の粒子速度が最大となる粒子速度の腹が2箇所存在する。すなわち、
図5に示すタイヤ空洞14の模式図において、粒子速度の腹Lvは、タイヤ直径方向に対向する2箇所(180°の位置)に存在する。また、この腹Lv同士が対向する方向に直交する方向における2箇所には、粒子速度が最小となる粒子速度の節Nvが存在する。ここで、多孔質吸音材が効果的に働くのは、粒子速度の腹Lvに置かれたときである。
【0021】
また、タイヤの空洞共鳴における音の伝達方向は、タイヤ周方向であるから、吸音材を粒子速度の腹Lvとなる断面に集中して配置すること、結果的に周方向に断続的に配置することが効果的となる。しかしながら、粒子速度の腹Lvの位置は、タイヤの転動とともに変化するため、常に吸音材が効果的に働く位置にくるわけではない。粒子速度の節Nvの位置にきたときには、吸音材の効果は少ない。例えば、
図5において、タイヤ周上の点Aでは、粒子速度の腹Lv位置であるため吸音材の効果は最大となるが、点Bでは、粒子速度の節Nv位置であるため吸音材の効果は最小となる。そのため、吸音材をタイヤ周上の一箇所に設けた場合、タイヤの転動とともに、吸音材の効果がある瞬間と、効果がない瞬間が交互の繰り返されることになる。
【0022】
一方、粒子速度の節Nvの位置とは、空洞共鳴における音圧にとっては腹Lpの位置となる。すなわち、粒子速度の節Nvとなる周上の2箇所は、同時に音圧の腹Lpの位置となり、粒子速度の腹Lvとなる周上の2箇所は、同時に音圧の節Npの位置となる。ここで、音圧の腹Lpの位置においては、サイドブランチ型共鳴器などの干渉型消音器の効果が発揮される部位となる。
【0023】
以上より、重量増加を抑えつつタイヤの空洞共鳴を効果的に低減するためには、吸音材を周上の一箇所又は断続的に複数配置し、かつ、吸音材では効果的に低減できない周上の位置(粒子速度の節Nv=音圧の腹Lp)においては干渉型消音器として働くよう、吸音材と干渉型消音器を組み合わせて配置することが有効である。例えば、
図5における点Aでは、音圧の節Npであるため干渉型消音器の効果は最小であるが、粒子速度の腹Lv位置であるため吸音材の効果が最大となる。点Bでは、粒子速度の節Nvであるため吸音材の効果は最小であるが、音圧の腹Lpであるため干渉型消音器の効果が最大となる。
【0024】
そのため、吸音材と干渉型消音器を組み合わせたハイブリッド消音器であると、タイヤが転動しても吸音材と干渉型消音器の少なくとも一方の効果が発揮されるので、タイヤ周上の一箇所のみに設けた場合でも、常に空洞共鳴を低減することができる。従って、重量増加を抑えつつ空洞共鳴を低減して、ロードノイズを効果的に低減することができる。
【0025】
次に、該ハイブリッド消音器を設置した空気入りタイヤとリムとの組立体の各実施例について説明する。
【0026】
[実施例1]
図1〜
図3は実施例1に関するものである。
図1において、符号10は空気入りタイヤであり、符号12はリムである。リム12に空気入りタイヤ10を嵌め込んだ組立体としたときに、空気入りタイヤ10とリム12との間には、空気充填空洞としての円環状のタイヤ空洞14が形成される。
【0027】
空気入りタイヤ10は、左右一対のビード部16,16及びサイドウォール部18,18と、左右のサイドウォール部18,18の径方向外方端部同士を連結するトレッド部20とを備えてなり、ビード部16がリム12に係合している。
【0028】
タイヤ空洞14内には、多孔質の吸音材22と干渉型消音器24を組み合わせてなるハイブリッド消音器26が設けられている。この例では、
図2に示すように、ハイブリッド消音器26は、タイヤ周上の1箇所に設けられている。また、ハイブリッド消音器26は、タイヤ内側面、詳細にはトレッド部20の内周面に取り付けられている。
【0029】
吸音材22としては、特に限定されないが、発泡ウレタン樹脂からなるものが好ましく用いられる。吸音材22は、タイヤ空洞14内においてタイヤ周方向の空間を遮ることができるように配置されている。この例では、トレッド部20の内周面に対する取付部28を有し、該取付部28からタイヤ径方向内方に向けて起立した姿勢に形成されている。
【0030】
吸音材22は、タイヤ周方向において複層構造をなしている。詳細には、吸音材22は、タイヤ周方向に対して前後となる第1吸音層30と第2吸音層32を有し、両者の間に空気層34を備えてなる。第1吸音層30と第2吸音層32は、空気層34を挟んでタイヤ周方向に相対する互いに平行な一対の多孔質吸音材料からなる壁部により形成されている。
【0031】
干渉型消音器24としては、この例では、サイドブランチ型共鳴器が用いられている。サイドブランチ型共鳴器は、
図4に示すように、主管路(ここではタイヤ空洞14)から分岐した管状をなす副空洞共鳴器(ブランチパイプ)であり、ブランチパイプの一端において主管路に開口し、他端は閉塞されている。サイドブランチ型共鳴器は、ブランチパイプによる音波の干渉により特定の周波数の音を効率よく低減する。低減する周波数fは、ブランチパイプの長さをLとし、音速をcとして、f=c/(4L)である。そのため、低減すべき音の周波数に応じて、ブランチパイプの長さLを設定すればよい。
【0032】
干渉型消音器24の材質としては、特に限定されないが、空気が透過しないように、未発泡の樹脂やゴム、金属などで形成することができる。
【0033】
干渉型消音器24は、第1吸音層30と第2吸音層32の間の空気層24に設けられている。このように干渉型消音器24を第1吸音層30と第2吸音層32の間に設けることにより、タイヤ周方向に沿って移動する空気の粒子が干渉型消音器24に直接衝突し、その表面で反射することで、吸音材22に入射せずに散乱してしまうのを低減することができる。このような理由から、干渉型消音器24のタイヤ周方向への投影面積のうち50%以上が第1吸音層30と第2吸音層32の間に設けられていることが好ましい。
【0034】
干渉型消音器24は、その開口端36が、第1吸音層30と第2吸音層32の間から外側に引き出されて、タイヤ空洞14に対して開口している。干渉型消音器24は、開口端36における音圧の変化により機能するものであるため、第1吸音層30と第2吸音層32の間がタイヤ幅方向や径方向においてタイヤ空洞14に対して開かれ、音圧が変化するのであれば、必ずしも開口端36を両吸音層30,32の間から引き出さなくてもよい。なお、符号38は干渉型消音器24の閉塞端である。
【0035】
干渉型消音器24は、この例では、第1吸音層30の先端(タイヤ径方向内端)から、当該先端を乗り越えてタイヤ周方向の外側に引き出されている。もちろん、第2吸音層32の先端から当該先端を乗り越えて引き出されてもよく、あるいはまた、第1吸音層30や第2吸音層32の左右いずれかの側部から引き出されてもよい。
【0036】
以上よりなる実施例1であると、タイヤ空洞14内における周上の1箇所に、多孔質の吸音材22と干渉型消音器24を組み合わせて配置したことにより、吸音材22では効果的に低減できない周上の位置(点B、粒子速度の節Nv=音圧の腹Lp)では干渉型消音器24の効果を最大とし、干渉型消音器24では効果的に低減できない周上の位置(点A、音圧の節Np=粒子速度の腹Lv)では吸音材22の効果を最大とすることができる(
図5参照)。また、これらの中間位置(点C)では、吸音材22と干渉型消音器24の効果がともに最大ではないものの、両者を働かせることができる。そのため、タイヤ周上の1箇所のみに設けた構成にもかかわらず、常に空洞共鳴の低減効果を発揮することができる。そのため、重量増加を抑えつつ空洞共鳴を低減して、ロードノイズを効果的に低減することができる。
【0037】
また、本実施例では、吸音材22をタイヤ周方向において複層構造としたことにより、次のような作用効果も奏される。すなわち、この場合、
図3に示すように、タイヤ空洞内に発生する空洞共鳴による音波は、第1吸音層30、空気層34及び第2吸音層32を透過することになる。外部空気層から第1吸音層30に音波が入射すると、第1吸音層30の表面である第1界面40Aにより反射される第1外部放出波と第1吸音層30内に進入する第1内部進入波とに分かれる。第1吸音層30内に進入した第1内部進入波は熱変換により減衰しながら進行し、第1吸音層30の裏面と空気層34とにより形成される第2界面40Bに入射する。第2界面40Bに入射した第1内部進入波は、第2界面40Bにより反射される第1内部反射波と空気層34に進出する第1外部進出波とに分かれる。空気層34に進出した第1外部進出波は、空気層34を進行し、第2吸音層32の表面である第3界面40Cに入射する。第3界面40Cに入射した第1外部進出波は、第3界面40Cにより反射される第1外部反射波と第2吸音層32内に進入する第2内部進入波とに分かれる。第2吸音層32内に進入した第2内部進入波は熱変換により減衰しながら進行し、第2吸音層30の裏面と外部空気層により形成される第4界面40Dに入射する。第4界面40Dに入射した第2内部進入波は、微量外部放出波と第4界面40Dにより反射して第2吸音層30内に進入する第2内部反射波とに分かれる。
【0038】
一方、前記の第2界面40Bにより反射された第1内部反射波は、第1吸音層30内に進入し、熱変換により減衰しながら進行し、第1界面40Aに入射する。第1界面40Aに入射した第1内部反射波は、微量外部放出波と第1界面40Aにより反射される第3内部反射波とに分かれる。第1界面40Aにより反射された第3内部反射波は、その後、前記の第1内部進入波と同様の経過をたどる。
【0039】
また、第3界面40Cにより反射された第1外部反射波は、空気層34を進行し、第2界面40Bに入射する。第2界面40Bに入射した第1外部反射波は、第1吸音層30の内部に進入する第3内部進入波と第2界面40Bにより反射される第2外部反射波とに分かれる。第1吸音層30の内部に進入した第3内部進入波は、その後、前記の第1内部反射波と同様の経過をたどる。第2外部反射波は、その後、第1外部進出波と同様の経過をたどる。
【0040】
第4界面40Dにより反射した第2内部反射波は、第2吸音層32内を熱変換により減衰しながら進行し、第3界面40Cに入射する。第3界面40Cに入射した第2内部反射波は、第3界面40Cにより反射される第4内部反射波と空気層34に進出する第2外部進出波とに分かれる。第3界面40Cにより反射された第4内部反射波は、その後、前記の第2内部進入波と同様の経過をたどる。空気層34に進出した第2外部進出波は、その後、第1外部反射波と同様の経過をたどる。
【0041】
以上のように、本実施例における吸音材22であると、外部空気層から第1吸音層30内に進入した第1内部進入波は各界面の間で往復を繰り返しながら、第1吸音層30と第2吸音層32を通過する毎に熱変換により減衰しながら消滅していき、外部へはほとんど無視可能な微量の外部放出波を放出することになる。そのため、吸音効果に優れる。
【0042】
[実施例2]
図6は実施例2に関するものである。実施例2では、ハイブリッド消音器26Aを構成する干渉型消音器24の配設の仕方が上述した実施例1とは異なる。
【0043】
この例では、サイドブランチ型共鳴器からなる干渉型消音器24は、その略全体が第1吸音層30と第2吸音層32の間に設けられ、開口端36が第2吸音層32を貫通して、その先端の開口面が外側空気層(即ち、タイヤ空洞14)に対して開口するように設けられている。従って、この例では、干渉型消音器24のタイヤ周方向への投影面積の略100%が第1吸音層30と第2吸音層32の間に設けられている。なお、干渉型消音器24の開口端36は、第1吸音層30を貫通させて設けてもよい。
【0044】
このように干渉型消音器24の略全体を吸音材22の間に設けることにより、吸音材22に入射すべき音波が干渉型消音器24に衝突して散乱してしまうことを更に低減することができる。実施例2について、その他の構成及び作用効果は実施例1と同様であり、説明は省略する。
【0045】
[実施例3]
図7は実施例3に関するものである。実施例3では、複層構造ではない単なる円柱状の多孔質吸音材42を用いた点で、実施例1とは異なる。
【0046】
この例では、円柱状の吸音材42が、タイヤ空洞14内においてタイヤ周方向の空間を遮ることができるように配置されており、実施例1と同様、トレッド部20の内周面に取り付けられて、タイヤ径方向内方に向けて起立した姿勢に形成されている。なお、吸音材42の材質は、上記と同様、発泡ウレタン樹脂が好ましい。
【0047】
そして、この吸音材42の外周面に、サイドブランチ型共鳴器からなる干渉型消音器24が螺旋状に巻き付けられている。これにより、タイヤ空洞14内に、多孔質の吸音材42と干渉型消音器24を組み合わせてなるハイブリッド消音器26Bが設けられている。
【0048】
実施例3について、その他の構成は実施例1と同様であり、説明は省略する。実施例3では、多孔質吸音材42と干渉型消音器24を組み合わせたハイブリッド消音器26Bによる上記の優れた効果は奏されるが、吸音材42が複層構造ではなく、また前後の吸音層の間に干渉型消音器24を設けたものでもないため、その分、ロードノイズの低減効果が実施例1,2に対しては劣る。
【0049】
[実施例4]
図8は実施例4に関するものである。実施例4では、ハイブリッド消音器26Cを構成する干渉型消音器44としてヘルムホルツ型共鳴器を用いた点で、上述した実施例1とは異なる。
【0050】
ヘルムホルツ型共鳴器は、
図9に示すように、副気室46と、該副気室46を主管路(ここではタイヤ空洞14)に連結する連結路48からなる副空洞共鳴器であり、副空洞共鳴器による音波の干渉により特定の周波数の音を効率よく低減する。低減する周波数fは、副気室46の体積をV、連結路48の断面積をS、連結路48の長さをL、音速をcとして、f=(c/2π)√(S/V・L)である。そのため、低減すべき音の周波数に応じて、V、S及びLを設定すればよい。なお、干渉型消音器44の材質としては、特に限定されないが、空気が透過しないように、未発泡の樹脂やゴム、金属などで形成することができる。
【0051】
干渉型消音器44は、実施例1と同様、複層構造をなす吸音材22に対し、第1吸音層30と第2吸音層32の間の空気層24に設けられている。詳細には、副気室46が第1吸音層30と第2吸音層32の間に設置されており、連結路48が第1吸音層30と第2吸音層32の間から外側に引き出されて、連結路48の先端、即ち開口端48Aがタイヤ空洞14に対して開口している。
【0052】
このように副気室46を第1吸音層30と第2吸音層32の間に設けることにより、吸音材22に入射すべき音波が干渉型消音器44に衝突して散乱してしまうことを低減することができる。なお、ヘルムホルツ型共鳴器からなる干渉型消音器44についても、上記干渉型消音器24と同様、開口端48Aは両吸音層30,32の間から必ずしも引き出さなくてもよい。
【0053】
以上よりなる実施例4であると、タイヤ空洞14内における周上の1箇所に、多孔質の吸音材22と干渉型消音器44を組み合わせて配置したことにより、実施例1と同様に、吸音材22では効果的に低減できない周上の位置(点B、粒子速度の節Nv=音圧の腹Lp)では干渉型消音器44の効果を最大とし、干渉型消音器44では効果的に低減できない周上の位置(点A、音圧の節Np=粒子速度の腹Lv)では吸音材22の効果を最大とすることができる(
図5参照)。また、これらの中間位置(点C)では、吸音材22と干渉型消音器44の効果がともに最大ではないものの、両者を働かせることができる。そのため、タイヤ周上の1箇所のみに設けた構成にもかかわらず、常に空洞共鳴の低減効果を発揮することができる。そのため、重量増加を抑えつつ空洞共鳴を低減して、ロードノイズを効果的に低減することができる。実施例4について、その他の構成及び作用効果は実施例1と同様であり、説明は省略する。
【0054】
[実施例5]
図10は実施例5に関するものである。実施例5では、ハイブリッド消音器26Dを構成する干渉型消音器44の配設の仕方が上記実施例4とは異なる。
【0055】
この例では、第1吸音層30と第2吸音層32の間にヘルムホルツ型共鳴器からなる干渉型消音器44が2つ設けられ、各干渉型消音器44は、その連結路48が前後の吸音層30,32を貫通して、その先端、即ち開口端48Aのみが外側空気層に開口するように設けられている。従って、この例では、干渉型消音器44のタイヤ周方向への投影面積の略100%が第1吸音層30と第2吸音層32の間に設けられている。
【0056】
このように干渉型消音器44の略全体を吸音材22の間に設けることにより、吸音材22に入射すべき音波が干渉型消音器44に衝突して散乱してしまうことを更に低減することができる。実施例5について、その他の構成及び作用効果は実施例4と同様であり、説明は省略する。なお、実施例5では、干渉型消音器44を2つ設けたが、1つだけで構成してもよく、その数は特に限定されない。
【0057】
[実施例6]
図11は実施例6に関するものである。実施例6では、複層構造ではない多孔質吸音材50を用いた点で、上記実施例4とは異なる。
【0058】
この例では、ブロック状の吸音材50がトレッド部20の内周面に取り付けられている。なお、吸音材50の材質は、上記と同様、発泡ウレタン樹脂が好ましい。そして、この吸音材50に干渉型消音器44が埋設されており、干渉型消音器44の連結路48の開口端48Aが外側空気層に開口するように設けられている。これにより、タイヤ空洞14内に、多孔質の吸音材50と干渉型消音器44を組み合わせてなるハイブリッド消音器26Eが設けられている。
【0059】
実施例6について、その他の構成は実施例4と同様であり、説明は省略する。実施例6では、多孔質吸音材50と干渉型消音器44を組み合わせたハイブリッド消音器26Eによる上記の優れた効果は奏されるが、吸音材50が複層構造ではないため、その分、ロードノイズの低減効果が実施例4,5に対して劣る。
【0060】
[実施例7]
図12は実施例7に関するものである。実施例7では、上記実施例1に係るハイブリッド消音器26を、タイヤ周上の2箇所に設けた点で、実施例1とは異なる。この例では、ハイブリッド消音器26は、タイヤ直径方向に対向する2箇所(180°の位置)に設けられている。
【0061】
上記ハイブリッド消音器26は、タイヤ周上の一部に限定して設けられるものであり、重量がそれほど大きいものではないが、このようにタイヤ直径方向に対向する2箇所に設けることにより、空気入りタイヤ10の重量バランスを向上することができる。
【0062】
なお、従来のように消音器を吸音材又は干渉型消音器の単独で構成する場合、仮にタイヤ直径方向に対向する2箇所に配置すると、ともに粒子速度や音圧の腹Lv,Lp位置、又は節Nv,Np位置に配されることになり、そのため、2つ設けても常に空洞共鳴を低減させるという効果は得られない。常に働かせるためには、90°位置に設ける必要があり、重量バランスが損なわれる。
【0063】
実施例7では、ハイブリッド消音器26をタイヤ周上の2箇所に設けたが、本発明では3箇所以上に設けてもよい。いずれにしても、タイヤ周上に間隔をあけて複数設ける場合、重量バランスの点から、タイヤ周方向において等間隔に設置することが好ましい。好ましくは、重量増加を抑えるために、ハイブリッド消音器はタイヤ周上の4箇所以下に設けることであり、より好ましくは1箇所又は2箇所、更に好ましくは1箇所のみに設けることである。
【0064】
[実施例8]
図13〜15は実施例8に関するものである。実施例8では、ハイブリッド消音器26Fを空気バルブ52に取り付けた点が、上記実施例1と異なる。
【0065】
図13及び
図14において、符号52は、タイヤ空洞14に空気を充填するための空気バルブであり、タイヤ周方向の1箇所においてリム12に設けられている。ハイブリッド消音器26Fは、多孔質の吸音材54と、サイドブランチ型共鳴器からなる干渉型消音器24とで構成されている。
【0066】
吸音材54は、タイヤ空洞14内においてタイヤ周方向の空間を遮ることができるように、空気バルブ52に対する取付部56を有し、該取付部56から径方向外方に向けてタイヤ空洞14内に起立した姿勢に形成されている。なお、吸音材54の材質としては、柔軟な発泡ウレタン樹脂からなるものが、リム組みする際に倒すことができ、リム組の妨げにならないので望ましい。
【0067】
吸音材54は、実施例1と同様、タイヤ周方向において複層構造をなしている。但し、この例では、第1吸音層30と第2吸音層32とが、その側面で連続した中空円筒状をなし、中空部が空気層34となっている。このように構成したことにより、
図15に示すように、タイヤ空洞14内に発生する空洞共鳴による音波が第1吸音層30、空気層34及び第2吸音層32を透過することになる。この音波の透過状況は、実施例1において述べたのと同様の状況である。
【0068】
なお、吸音材54は、中空円筒状であることに限られず、中空の筒状であればよい。また、該吸音材54を空気バルブ52へ取り付ける場合、空気バルブ52が空気の流入口である関係から、内部が空洞の円筒状にし、空気バルブ52の穴と中空部とを連通するようにすれば、空気充填の妨げにならないので合理的である。
【0069】
干渉型消音器24は、実施例1と同様、第1吸音層30と第2吸音層32の間、即ち中空部の空気層34内に設けられている。また、タイヤ空洞14に対する開口端36が、中空部から外側空気層に引き出されて、タイヤ空洞14に対して開口している。詳細には、開口端36は、筒状をなす吸音材54の先端を乗り越えて外側に引き出されている。
【0070】
以上よりなる実施例8であると、多孔質の吸音材54と干渉型消音器24を組み合わせたハイブリッド消音器26Fを空気バルブ52に取り付けたことにより、実施例1と同様に、吸音材54では効果的に低減できない周上の位置では干渉型消音器24の効果を最大とし、干渉型消音器24では効果的に低減できない周上の位置では吸音材54の効果を最大とすることができ、更にこれらの中間位置でも、吸音材22と干渉型消音器44の両者を働かせることができる。そのため、タイヤ周上の1箇所のみに設けた構成にもかかわらず、常に空洞共鳴の低減効果を発揮することができる。実施例8について、その他の構成及び作用効果は実施例1と同様であり、説明は省略する。
【0071】
なお、実施例8では、干渉型消音器24の閉塞端38を空気バルブ52と連結させずに設けたが、閉塞端38を空気バルブ52と一体化させて設けてもよい。すなわち、空気バルブ52のタイヤ空洞14への開口端にパイプ状の干渉型消音器24を連結しておき、干渉型消音器24を介してタイヤ空洞14に空気が充填するようにしてもよい。その場合、空気バルブ52から流入される空気は、干渉型消音器24を空気充填経路としてタイヤ空洞14内に充填され、空気充填終了により空気バルブ52を閉じることでブランチパイプの片端が閉じられる。すなわち、空気バルブ52が干渉型消音器24の閉塞端38となり、片側開口のサイドブランチ型共鳴器が形成される。
【0072】
[その他の実施形態]
上記実施例では、吸音材と干渉型消音器を複合一体化したハイブリッド消音器を設けたが、吸音材と干渉型消音器とは必ずしも複合一体化されていなくてもよい。すなわち、タイヤ周方向における1箇所又は周方向に間隔をあけた複数箇所において、多孔質吸音材と干渉型消音器を、周上の実質的な同じ位置に配置すれば、両者を複合一体化することなく、別体のまま設置してもよい。
【0073】
また、吸音材と干渉型消音器をタイヤ周方向における同じ位置に設ける場合、干渉型消音器については、少なくともタイヤ空洞に対する開口端が吸音材と同じ位置に設けられていればよく、干渉型消音器の全体が吸音材とタイヤ周方向における同じ位置に配置される必要はない。干渉型消音器が音波の干渉効果を発揮する位置は、開口端の位置だからである。なお、タイヤ周方向における同じ位置とは、吸音材と干渉型消音器の開口端の位置が周方向において完全に一致していることを要求するものではなく、タイヤの回転軸を中心としてタイヤ周方向における両者間の角度が20°以内であれば、実質的には同じ位置であり、同様の作用効果が奏される。
【0074】
また、上記実施例1〜7ではハイブリッド消音器をタイヤ内側面に設置し、実施例8ではリム側の空気バルブに設置したが、ハイブリッド消音器はリムの外周面に設けてもよい。更には、吸音材と干渉型消音器のいずれか一方をタイヤ内側面に設け、他方をリムの外周面やリム側の空気バルブに設けてもよい。
【0075】
また、吸音材のタイヤ周方向における配設範囲θ(
図2参照)は、タイヤ周上の1箇所当たりで、タイヤの回転軸を中心としてθ≦30°であることが好ましく、より好ましくはθ≦20°である。特に、吸音材をタイヤ周方向において複層構造とした場合に、第1吸音層と第2吸音層との間隔を大きくとりすぎると両者が対向しているとはいえず、第1吸音層を透過した透過波が第2吸音層に透過しにくくなり、吸音材を複数回透過する効果が得られにくくなる。吸音材のタイヤ周方向における配設範囲θを30°以下に設定することで、吸音材を複層構造とすることによる効果を確保しやすい。
【0076】
その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【実施例】
【0077】
上記実施例1に記載された通りのハイブリッド型消音器26をタイヤ周上の1箇所に持つ空気入りタイヤ10とリム12との組立体と、比較例1として、消音器を設けず、その他は実施例1と同じ例と、比較例2として、ハイブリッド消音器26から干渉型消音器24を取り除き、その他は実施例1と同じ例(消音器として多孔質吸音材22のみを設けた例)と、比較例3として、ハイブリッド消音器26から吸音材22を取り除き、その他は実施例1と同じ例(消音器として干渉型消音器24のみを設けた例)とについて、比較テストを行った。
【0078】
タイヤサイズは215/55R17、リムサイズは17X7−JJとし、タイヤ空洞14に空気圧220kPaを充填し、4500Nの荷重をかけた状態で、タイヤ外周上面のトレッド中央部(
図5における点D)に対し、鉛直方向にハンマーで加振し、その際に車軸に生じる鉛直方向の力応答について、空洞共鳴周波数のピークの振動伝達レベルを比較した。
【0079】
実施例1、比較例2及び比較例3については、それぞれ、各消音器が、接地位置、即ち音圧の腹位置(点B)にあるときと、接地から90°の位置、即ち粒子速度の腹位置(点A)にあるときで比較を行った。評価は、比較例1に対する振動伝達レベルの低減代(dB)で示した
なお、実施例1及び比較例2において、吸音材22の第1吸音層30及び第2吸音層32は、いずれも幅100mm、高さ150mm、厚さ15mmの発泡ウレタン樹脂であり、両者の間隔は15mmとした。また、実施例1と比較例3において、干渉型消音器24のブランチパイプの長さL=340mmとした。また、解析条件は、周波数分解能=1.25Hz、サンプリング周波数=1280Hzとした。
【0080】
結果は下記表1に示す通りであり、多孔質吸音材を用いた比較例2では、接地から90°の位置(点A)にあるときには、低減代が大きかったが、多孔質吸音材が不得意な音圧の腹Lpにあるとき、即ち接地位置(点B)に吸音材がある場合には、低減代が小さかった。干渉型消音器を単独で用いた比較例3では、これとは逆に、接地位置(点B)に消音器があるときには、低減代が大きかったが、干渉型消音器が不得意な粒子速度が腹Lvにあるとき、即ち接地から90°の位置(点A)にあるときは、低減代が小さかった。これに対し、ハイブリッド型消音器を備えた実施例1では、多孔質吸音材が得意な粒子速度の腹Lvにあるとき、即ち接地位置(点A)にある場合はもちろんのこと、多孔質吸音材が不得意な粒子速度の節Nvにあるとき、即ち接地から90°の位置(点B)にあるときにも、干渉型消音器を働かせることにより、低減代を大きくできることが確認された。
【0081】
【表1】