(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062638
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】輸液ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20170106BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B65D1/02 230
A61J1/05 313J
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-18595(P2012-18595)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154940(P2013-154940A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大木 良介
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−146612(JP,A)
【文献】
特開平10−052855(JP,A)
【文献】
特開平07−299119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00− 1/46
A61J 1/00− 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に水平面に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記傾斜面に、前記底部の内側に凹んで構成され、前記傾斜面とは傾斜角の異なる側面と、略水平な水平面と、を有する段部を備え、
前記段部は、前記傾斜面から前記略水平な水平面に向かう方向において、起立した側面を有しないことを特徴とする輸液ボトル。
【請求項2】
前記底部は、両端に水平な平面部を備え、
前記傾斜面は、前記平面部に挟まれて備えられることを特徴とする請求項1に記載の輸液ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部を上に向けて吊り下げることで、自重により輸液を排出する
輸液ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からブロー成形された樹脂製の輸液ボトルが開発されている。ブロー成形は、熱可塑性樹脂からなるパリソンを分割金型ではさみ、その中に空気を注入して膨らませ、金型の内面に密着させたのち、冷却固化して取り出す成形方法である。
【0003】
上記輸液ボトルは、通常、輸液ボトル本体と容器底部と容器底部に形成されたフックと開口とを有して構成される。上記輸液ボトルの使用形態としては、容器底部を上にし、開口を下にして、フックを吊り下げることで、輸液を自重により滴下させることで開口から排出し、患者に供給される。
【0004】
輸液ボトルとして、例えば特許文献1には、輸液ボトル本体の容器底部の中央を横断する形でフック収納凹部が設けてあり、容器底部、フック収納凹部、掛止め突起等は、輸液ボトル本体と共に、フックを境に左右に分割可能な割金型を使用して、ブロー成形により一体成形され、成形後にフックを折り畳んで掛止め突起に掛け止めすることによって、フックをフック収納凹部内に収容しておくことができる技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−284133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるようなブロー成形された容器においては、細い管を通して輸液が送出されるため、内容量が大きく胴部が十分に大きい場合には輸液の滴下とともに胴部が凹んで廃液を促すことができるが、胴部を短くしたものや層の厚みを大きくした場合など、剛性が高くなるようなボトルにおいては、内容物の排出に伴って容器が凹むことが無く、内部が真空状態になることによって徐々に排液性が劣っていき、廃液途中で液体が下に落ちていかなくなっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、剛性の高い輸液ボトルにおいても、良好に内容物を排出することができる
輸液ボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有する。
【0009】
本発明に係る輸液ボトルは、底部に水平面に対して傾斜した傾斜面を有し、前記傾斜面
に、前記底部の内側に凹んで構成され、前記傾斜面とは傾斜角の異なる側面と、略水平な水平面と、を有する段部を備え
、前記段部は、前記傾斜面から前記略水平な水平面に向かう方向において、起立した側面を有しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剛性の高い容器においても容易に針を刺して孔を開けることができ、良好な排液性を保つことができる。
【0011】
また、段部が、傾斜面に少なくとも水平面を有する内側に凹んだように構成されることにより、金型が引っ掛からず、金型の抜けが良いので、ブロー成形においても成形性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本実施形態に係る容器の底部からの斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る傾斜面の段部の要部拡大図である。
【
図4】本実施形態に係る容器と金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、
図1から
図3を参照しながら、本実施形態の容器について説明する。
図1は、本実施形態に係る容器の正面図である。
図2は、本実施形態に係る容器の底部からの斜視図である。
図3は、
図1のA−A断面の要部拡大図である。
【0014】
本実施形態の輸液ボトル本体1は、容器底部2と段部3とフック4と開口5とを有して構成される。本実施形態における輸液ボトルは、合成樹脂からなり、ブロー成形法を用いて一体成形される。なお、ブロー成形に限らず、射出成形などを用いて成形することも可能であるが、その際には、段部3の凹んだ頂点が他と比べて薄肉となるように構成することで、注射針などを用いて孔をあける際に、容易に突き刺すことができ、好ましい。
【0015】
輸液ボトル本体1における開口5は、底部に備えられたフック4と対抗する位置に形成され、
図2に示すように、フック4を上にして吊り下げられて使用され、開口5から内容物が排出される。
【0016】
輸液ボトル本体1を構成する材料としては、ブロー成形に適した熱可塑性樹脂を好適に使用することができ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。なお、本実施形態における輸液ボトルは、これに限定されることなく、実施の態様により様々な熱可塑性樹脂を用いることが可能である。
【0017】
容器底部2は、吊り下げて使用するためのフック4を中央に備え、両端に水平面からなる平面部7を有する。容器底部2の両端部は、やや突出して水平な平面部7を形成しており、容器底部2を下にして容器を起立させたとき、平面部7により安定して起立するように構成してある。
【0018】
また、平面部7の中央部にはピンチオフが縦断して備えられており、起立した際にガタツキのないようにピンチオフに沿って溝部10が形成されており、凹んだ位置でピンチオフを形成している。また、フック4はピンチオフでコンプレッションすることで形成されており、
図3で示されるように、その本体とのつなぎ部分である端部は、容器が倒れないように折り畳み可能にするため、その他の部位より薄肉になるようコンプレッションにて形成されている。
【0019】
また、フック4の隣接位置である両脇には、両端の平面部7に挟まれて傾斜面6がそれぞれ備えられる。傾斜面6は、水平面に対して、容器側面からフック4側にかけて傾いた形状となっている。
【0020】
次に、傾斜面6に備えられる段部3について、
図3を用いて詳細に説明する。本実施形態における傾斜面6は、容器底部2の中央に位置し、傾斜面6はフック4が固定されている部分を頂上として両端に傾斜している。
【0021】
この両傾斜面6の略中央に段部3が形成されている。段部3を構成する面は、A−A断面において、略水平な水平面3aと傾斜面6とは傾斜角の異なる3つの起立した側面と、を有してなる。段部3は、局所的に容器内側に凸な形状として形成しているので、ブロー成形においてはその他の部位と比べて薄肉となるため、針を刺し易くなる。段部3を形成する際に、内側に凸にすればする程、その他の部位に比べて薄肉にしやすく、針を突き刺す上で好適である。このように容器の段部3に空気穴を開けることにより、容器側面が廃液に伴って凹まなくとも、内容物が開口5からスムーズに出て行くようになる。
【0022】
なお、段部3を形成する水平面3aは、
図4で示すように、型抜けが可能な形状であれば良く、必ずしも水平である必要はない。
【0023】
また、段部3は、
図2に示されるように3方を起立した側面に囲まれて形成されているため、水平面3aの開口した部位から注射針を起立した側面まで差し込むことで、注射針を突き刺す際に位置ズレ防止を行うことができ、また、所定位置に針を容易に突き刺すことが可能である。
【0024】
なお、段部3は、少なくとも後述するブロー成形時における型抜け方向において、起立した
側面を備えなければよく、例えば3つ以上の
側面を有するような形状であっても良い。
【0025】
次に、本実施形態に係る容器のブロー成形方法について説明をする。
図4は、本実施形態における輸液ボトルのブロー成形における模式図であり、輸液ボトルとブロー成形に使用される分割金型8の断面図を示すものである。
【0026】
ブロー成形では、熱可塑性樹脂からなるパリソン11を、一対の分割金型8で挟み、その中に図示しないブローピンから空気を注入して、金型8のキャビティ面に押しつけることでキャビティ面に沿った形状に冷却固化され、形成される。
【0027】
その後、
図4に示すように、金型8を開いて、容器は取り出される。金型8は、輸液ボトルの段部3に対応する箇所に凸部9を備える。凸部9は、少なくとも型抜け可能なように、水平、あるいは下側に向かって傾斜した形状である。また、凸部9の周囲には、傾斜面6を形成するために傾斜した形状を備えている。
【0028】
これにより、容器の傾斜面6及び段部3が形成される。凸部9は金型8の傾斜面に局所的に形成されており、ブロー時にパリソンが引き延ばされることで、その他の部位より肉厚を薄くすることができ、その他の部位に比べて針を容易に突き刺すことが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施形態及び実施例は、本発明の好適な実施形態及び実施例であり、上記実施形態及び実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 輸液ボトル本体
2 容器底部
3 段部
3a 水平面
4 フック
5 開口
6 傾斜面
7 平面部
8 金型
9 凸部