特許第6062642号(P6062642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062642伝達力調整治具、および、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システム、ならびに、タイロッドの試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062642
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】伝達力調整治具、および、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システム、ならびに、タイロッドの試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20170106BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20170106BHJP
【FI】
   G01M17/00 Z
   G01M99/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-51765(P2012-51765)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-185979(P2013-185979A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】増田 洋司
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−020833(JP,A)
【文献】 特開2008−157678(JP,A)
【文献】 特開平08−334441(JP,A)
【文献】 特開2002−228555(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0083744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 − 17/10
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具であって、
前記伝達力調整治具が、バネ部材を備え、バネ部材を介してタイロッドに連結されるように構成され、
前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数kが、タイロッドのバネ定数kよりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする伝達力調整治具。
【請求項2】
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の伝達力調整治具。
【請求項3】
前記伝達力調整治具のバネ部材が、板バネから構成されていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の伝達力調整治具。
【請求項4】
前記伝達力調整治具のバネ部材が、一定間隔離間して配置された複数の板バネから構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伝達力調整治具。
【請求項5】
前記伝達力調整治具のバネ部材が、部分的に幅が狭くなった形状であることを特徴とする請求項3から4のいずれかに記載の伝達力調整治具。
【請求項6】
前記伝達力調整治具が、バネ部材の振動を減衰する減衰機構を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝達力調整治具。
【請求項7】
前記減衰機構が、バネ部材の端部と摩擦接触する接触部材から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の伝達力調整治具。
【請求項8】
前記減衰機構が、バネ部材を流体中に封入する封入部材から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の伝達力調整治具。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置であって、
前記タイロッドの先端側に連結された伝達力調整治具と、
前記伝達力調整治具のタイロッドと反対側に連結され、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置とを備え、
前記伝達力調整治具は、バネ部材を介してタイロッドの先端側に連結されており、
前前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数kが、タイロッドのバネ定数kよりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とするタイロッドの試験装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システムであって、
前記ステアリングを所定の舵角で回動して、ステアリングの情報を入力するステアリング入力手段と、
前記ステアリング入力手段で入力されたステアリングの情報に基づいて、前記ステアリングのラックの変位に対応するように、前記加振装置の変位を制御する加振装置制御手段と、
前記タイロッドにかかる荷重を測定する荷重測定手段と、
を備えることを特徴とするタイロッドの試験システム。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験方法であって、
前記ステアリングを所定の舵角で回動して、ステアリングの情報を入力するステアリング入力ステップと、
前記ステアリング入力ステップで入力されたステアリングの情報に基づいて、前記ステアリングのラックの変位に対応するように、前記加振装置の変位を制御する加振装置制御ステップと、
前記タイロッドにかかる荷重を測定するステップと、
を備えることを特徴とするタイロッドの試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車などの車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具、および、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システム、ならびに、タイロッドの試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、自動車のステアリング機構全体を説明する斜視図である。
図9に示したように、自動車のステアリング100は、ハンドル102と、ハンドル102に連結されたステアリングシャフト104とを備えている。このステアリングシャフト104の先端には、自在継手106を介して連結されたピニオン108を備えており、このピニオン108は、ラックバー110に形成されたラック112と噛合するように構成されている。
【0003】
そして、ラック112の先端は、タイロッド114に連結されており、タイロッド114の先端は、ピニオン116を介して、ナックルアーム118に連結されている。そして、ナックルアーム118の先端が、車輪のハブ120に固定されている。
【0004】
これにより、ハンドル102を左右に回転させると、ステアリングシャフト104を介して、ピニオン108が回転する。そして、ピニオン108に噛合するラック112を介して、ラックバー110が左右に移動して、ラックバー110に連結されたタイロッド114が左右に移動する。
【0005】
そして、タイロッド114に連結されたナックルアーム118により、ナックルアーム118に固定された車輪のハブ120が左右に回動するように構成されている。
なお、ハンドル102を左右に最大舵角まで回転すると(すなわち、いわゆる「据え切り」操作時において)、図示しないストッパーであるステアリングエンド(ラックエンド)に当接して、それ以上ハンドル102、および車輪のハブ120が左右に回動しないように構成されている。
【0006】
従来、このように構成される自動車などの車両のステアリングの挙動、耐久試験などを行うために種々の試験装置が提案されている。例えば、特許文献1(特開2002−228555号公報)においては、右最大舵角と左最大舵角との間の往復動を繰り返して、自動車など車両のステアリング装置の耐久性能を調べる耐久性能試験方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−228555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、自動車などの車両において、タイロッド114にかかる荷重を模擬する試験において、据え切り時のタイヤの反力とステアリングエンドに当たった時のタイロッド114にかかる荷重を再現する必要がある。
【0009】
従来、このような自動車のタイロッド114にかかる荷重(振動)などを模擬する試験装置としては、図10の斜視図に示したような試験装置200が提案されている。
この従来の試験装置200では、タイロッド114の先端に、加振装置120の先端側のロッド122を直接連結して、タイロッド114にかかる荷重(振動)などのタイロッドの試験を行っている。
すなわち、据え切り時のタイヤの反力に対して、加振装置120の応答速度が間に合わないため、このようにタイロッド114と加振装置120を直接連結して固定している。
【0010】
ところで、通常、ラック112からの入力に対して、タイヤが地面から受ける反力を加振装置120が模擬して、ラック112へと返している。
しかしながら、このような従来の車両のタイロッドの試験装置では、タイロッド114と加振装置120を直接連結して固定しているので、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置120がその動きに追随せず、実際のタイロッド114の荷重(振動)を再現するのが困難である。
【0011】
本発明は、このような現状に鑑み、例えば、自動車などのステアリングにおいて、タイロッドにかかる荷重(振動)を模擬してタイロッドの試験を行う場合に、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置がその動きに追随して、実際のタイロッドの荷重(振動)を再現することが可能な伝達力調整治具、および、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システム、ならびに、タイロッドの試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の伝達力調整治具は、
車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具であって、
前記伝達力調整治具が、バネ部材を備え、バネ部材を介してタイロッドに連結されるように構成され、
前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数kが、タイロッドのバネ定数kよりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のタイロッドの試験装置は、
前述のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置であって、
前記タイロッドの先端側に連結された伝達力調整治具と、
前記伝達力調整治具のタイロッドと反対側に連結され、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置とを備え、
前記伝達力調整治具は、バネ部材を介してタイロッドの先端側に連結されており、
前前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数kが、タイロッドのバネ定数kよりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。


【0014】
また、本発明のタイロッドの試験システムは、
前述のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システムであって、
前記ステアリングを所定の舵角で回動して、ステアリングの情報を入力するステアリング入力手段と、
前記ステアリング入力手段で入力されたステアリングの情報に基づいて、前記ステアリングのラックの変位に対応するように、前記加振装置の変位を制御する加振装置制御手段と、
前記タイロッドにかかる荷重を測定する荷重測定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のタイロッドの試験方法は、
前述のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験方法であって、
前記ステアリングを所定の舵角で回動して、ステアリングの情報を入力するステアリング入力ステップと、
前記ステアリング入力ステップで入力されたステアリングの情報に基づいて、前記ステアリングのラックの変位に対応するように、前記加振装置の変位を制御する加振装置制御ステップと、
前記タイロッドにかかる荷重を測定するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成することによって、車両のステアリングのタイロッドの試験装置10は、図6の概略図で示したような構成となる。
すなわち、図6において、通常、ラック22からの入力に対して、タイヤが地面から受ける反力を加振装置80が模擬して、ラック22へと返している。
【0017】
なお、図6において、m1は、タイヤ質量部材32のタイヤの質量、k1は、タイロッド24のバネ定数、m2は、本発明の伝達力調整治具40の慣性質量、k2は、本発明の伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数を示している。
【0018】
そして、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置80がその動きに追随せず、図7に示したように、加振装置80が存在しない状態となって、2自由度系となる。
【0019】
この系の運動方程式は次のように表される。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
となる。
【0022】
この系が振動しない解u1=u2=0を除くと、上式を満足する振動解が存在するためには、u1、u2の係数に関する行列式がゼロとなる必要がある。
これを整理すると、次式が得られる。
【0023】
【数3】
この式をω2について解くと、次の関係が分かる。
【0024】
【数4】
ここで、本発明の伝達力調整治具40が用いられるタイロッドの試験装置10では、性質上、タイロッド24のバネ定数k1に比較して、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k2は、k2=k1/150程度と大変小さい。
【0025】
従って、k2=0とすると、
【0026】
【数5】
となり、この系全体の固有振動数ωは、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k2と、伝達力調整治具40の慣性質量m2を無視できると分かる。
【0027】
従って、本発明によれば、車両のステアリングのタイロッドの試験装置において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤを模擬してあるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0028】
また、本発明の伝達力調整治具は、
車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具であって、
前記伝達力調整治具が、バネ部材を備え、バネ部材を介してタイロッドに連結されるように構成され、
前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数kが、タイロッドのバネ定数kよりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
また、本発明では、前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
【0029】
その結果、試験体であるタイロッド24と、伝達力調整治具40の共振点に差を持たせて、伝達力調整治具40の荷重(振動)をキャンセルすることができる。
従って、車両のステアリングのタイロッドの試験装置において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0030】
また、本発明では、前記伝達力調整治具のバネ部材が、板バネから構成されていることを特徴とする。
このように伝達力調整治具のバネ部材が、板バネから構成されていれば、バネ部材のバネ定数k2を低減するように設定し易く、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0031】
また、本発明では、前記伝達力調整治具のバネ部材が、一定間隔離間して配置された複数の板バネから構成されていることを特徴とする。
このように伝達力調整治具のバネ部材64が、一定間隔離間して配置された複数の板バネから構成されていれば、バネ部材64のバネ定数k2を制御して、低減するように設定し易い。すなわち、例えば、n枚の板バネ(バネ定数k)から構成されるバネ部材64であれば、バネ部材64のバネ定数k2は、nkとなる。
【0032】
従って、バネ部材64のバネ定数k2を制御して、低減するように設定し易く、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0033】
また、本発明では、前記伝達力調整治具のバネ部材が、部分的に幅が狭くなった形状であることを特徴とする。
このように構成することによって、部分的に幅が狭くなった部分で、板バネから構成されるバネ部材64が、撓み易く、応力集中(集中荷重)を受けるのを避けることができ、バネ部材64が破断するのを防止することができる。特に、据え切り時にステアリングエンドに当たった際には、ラック22からの入力が高い入力荷重(高い周波数)となるが、バネ部材64の破断を避けることができる。
【0034】
また、本発明では、前記伝達力調整治具が、バネ部材の振動を減衰する減衰機構を備えることを特徴とする。
このように構成することによって、据え切り時にステアリングエンドに当たった際には、ラック22からの入力が高い入力荷重(高い周波数)となるが、伝達力調整治具のバネ部材の共振点を越えた減衰領域を利用し、軸力の伝達を抑制する。
【0035】
そして、バネ部材64の振動を減衰する減衰機構によって、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0036】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0037】
また、本発明では、前記減衰機構が、バネ部材の端部と摩擦接触する接触部材から構成されていることを特徴とする。
このように、減衰機構が、バネ部材の端部と摩擦接触する接触部材であっても良く、これにより、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0038】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0039】
また、本発明では、前記減衰機構が、バネ部材を流体中に封入する封入部材から構成されていることを特徴とする。
このように、減衰機構が、例えば、水、油、空気などの流体などのバネ部材を流体中に封入する封入部材であっても良く、これにより、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0040】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、車両のステアリングのタイロッドの試験装置において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の伝達力調整治具の斜視図である。
図3図3は、図2の伝達力調整治具の上面図である。
図4図4は、図2のA方向の端面図である。
図5図5は、図4のB−B線での横断面図である。
図6図6は、本発明のタイロッドの試験装置10の動作を説明する概略図である。
図7図7は、本発明のタイロッドの試験装置10の動作を説明する概略図である。
図8図8は、本発明の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置の試験方法を説明するフローチャートである。
図9図9は、自動車のステアリング機構全体を説明する斜視図である。
図10図10は、従来の試験装置200の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置の斜視図、図2は、本発明の伝達力調整治具の斜視図、図3は、図2の伝達力調整治具の上面図、図4は、図2のA方向の端面図、図5は、図4のB−B線での横断面図、図6は、本発明のタイロッドの試験装置10の動作を説明する概略図、図7は、本発明のタイロッドの試験装置10の動作を説明する概略図、図8は、本発明の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置の試験方法を説明するフローチャートである。
【0044】
図1図5において、符号10は、全体で本発明の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置を示している。
図1に示したように、自動車のステアリング1は、ハンドル12と、ハンドル12に連結されたステアリングシャフト14とを備えている。このステアリングシャフト14の先端には、自在継手16を介して連結されたピニオン18を備えており、このピニオン18は、ラックバー20に形成されたラック22と噛合するように構成されている。
【0045】
そして、ラック22の先端は、タイロッド24に連結されており、タイロッド24の先端は、ピニオン26を介して、ナックルアーム28に連結されている。そして、ナックルアーム28の先端が、車輪のハブ30に固定されている。
【0046】
これにより、ハンドル12を左右に回転させると、ステアリングシャフト14を介して、ピニオン18が回転する。そして、ピニオン18に噛合するラック22を介して、ラックバー20が左右に移動して、ラックバー20に連結されたタイロッド24が左右に移動する。
【0047】
そして、タイロッド24に連結されたナックルアーム28により、ナックルアーム28に固定された車輪のハブ30が左右に回動するように構成されている。
なお、ハンドル12を左右に最大舵角まで回転すると(すなわち、いわゆる「据え切り」操作時において)、図示しないストッパーであるステアリングエンド(ラックエンド)に当接して、それ以上ハンドル12、および車輪のハブ30が左右に回動しないように構成されている。
【0048】
また、ハブ30には、タイヤを模擬してあるタイヤ質量部材32が固定されており、このタイヤ質量部材32に、軸部材34が固定され、この軸部材34の先端部には、連結孔36が形成されている。
【0049】
一方、伝達力調整治具40には、シャフト42を備えており、このシャフト42の後端に、二股形状の装着部44が形成され。装着部44には、装着孔46が形成されている。
これにより、軸部材34の先端部の連結孔36と、シャフト42の装着孔46に、ピボット軸ボルト38を挿通して、ナット38aで締結することによって、伝達力調整治具40のシャフト42と、タイヤ質量部材32に固定された軸部材34が、相互に回動することができるよう連結されている。
【0050】
すなわち、図1の矢印で示したように、ハンドル12を左右に回転させることにより、伝達力調整治具40に車輪のハブ30が連結されていても、車輪のハブ30が左右に回動できるように構成されている。
【0051】
一方、伝達力調整治具40は、図2図3に示したように、伝達力調整治具本体48と、後述するバネ部材64とを備えている。そして、伝達力調整治具本体48は、平板形状の基板部材50と、この基板部材50の両端に固定されて、タイヤ質量部材32の方向に突設する一対の側板部材52とを備えている。
【0052】
また、側板部材52は、基板部材50に固定された基端部54と、基端部54からタイヤ質量部材32の方向に突設するバネ部材装着部56とを備えている。そして、バネ部材装着部56は、一定間隔離間して複数のバネ部材装着間隙58が形成されるように、複数の離間部材60から構成されている。
【0053】
図2図3に示したように、バネ部材装着間隙58には、それぞれ複数枚の(この実施例では、合計5枚の)板バネ62が装着されており、これにより、バネ部材64を構成している。すなわち、図1図5に示したように、板バネ62の両端の端部62bがそれぞれ、一定間隔離間してバネ部材装着間隙58に装着されるように、複数の離間部材60の間に配置されている。
【0054】
なお、この板バネ62の枚数は、特に限定されるものではなく、1枚であっても良く、また、複数枚としては、その枚数は、特に限定されるものではない。
そして、締結ボルト64aで、これらの板バネ62、離間部材60の締結孔(図示せず)を介して、側板部材52の基端部54に、これらの板バネ62、離間部材60が固定されている。
【0055】
また、図2に示したように、側板部材52の側方には、補強プレート66が配置され、締結ボルト66aにより、側板部材52の基端部54と、離間部材60を固定するように構成されている。
【0056】
一方、板バネ62は、図4に示したように、中央部分62aと、両端に配置された端部62bと、この中央部分62aと端部62bから、漸次その幅が狭くなるように形成された中間部分62cとを備えている。
【0057】
このように構成することによって、部分的に幅が狭くなった部分である中間部分62cにおいて、板バネ62から構成されるバネ部材64が、撓み易く、応力集中(集中荷重)を受けるのを避けることができ、バネ部材64が破断するのを防止することができる。特に、据え切り時にステアリングエンドに当たった際には、ラック22からの入力が高い入力荷重(高い周波数)となるが、バネ部材64の破断を避けることができる。
【0058】
なお、中央部分62aと、両端に配置された端部62bの幅T1と、中央部分62aのもっとも狭くなった幅T2との関係は、特に限定されるものではないが、せん断力分布に合わせて設計するのが望ましい。
【0059】
このように伝達力調整治具のバネ部材64が、一定間隔離間して配置された複数の板バネ62から構成されていれば、バネ部材64のバネ定数k2を制御して、低減するように設定し易い。すなわち、例えば、n枚の板バネ62(バネ定数k)から構成されるバネ部材64であれば、バネ部材64のバネ定数k2は、nkとなる。
【0060】
従って、バネ部材64のバネ定数k2を制御して、低減するように設定し易く、後述するように、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0061】
また、図2図5に示したように、最もタイヤ質量部材32の側の板バネ62の中央部分62aには、シャフト42が固定されている。そして、複数枚の板バネ62の中央部分62aの間には、前述した側板部材52の離間部材60と対応するように、複数の離間部材68が配置されている。図示しないが、これらのシャフト42、複数枚の板バネ62の中央部分62a、離間部材68が、締結ボルトで固定されている。
【0062】
さらに、図2に示したように、基板部材50の図2の中央部分には、図2において上下に、一対の板状の接触部材70が、タイヤ質量部材32の側に立設するように固定されている。そして、この接触部材70の内側の接触面70aがそれぞれ、図4に示したように、板バネ62の中央部分62aの接触面62dと接触するように構成されている。
【0063】
これらの接触部材70が、バネ部材64(板バネ62)の振動を減衰する減衰機構を構成している。
このように構成することによって、据え切り時にステアリングエンドに当たった際には、ラック22からの入力が高い入力荷重(高い周波数)となるが、伝達力調整治具のバネ部材の共振点を越えた減衰領域を利用し、軸力の伝達を抑制する。
【0064】
そして、バネ部材64の振動を減衰する減衰機構である接触部材70によって、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0065】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0066】
また、図2に示したように、これらの接触部材70の端部の間には、略コ字形状のガイド部材72が固定されており、このガイド部材72の中央に形成されたガイド開口72aを挿通するように、シャフト42が配置されている。
【0067】
また、図2図5に示したように、シャフト42と、最もタイヤ質量部材32の側に位置する板バネ62には、第1のストッパー部材74が装着されている。一方、最もタイヤ質量部材32の側から離間した、板バネ62と離間部材68とに、第2のストッパー部材76が装着されている。
【0068】
この第1のストッパー部材74は、板バネ62から構成されるバネ部材64が振動した際に、第1のストッパー部材74とガイド部材72とが当接して、それ以上、バネ部材64が、タイヤ質量部材32の側に移動して、板バネ62が破損損傷しないようにするためのものである。
【0069】
一方、同様に、第2のストッパー部材76は、板バネ62から構成されるバネ部材64が振動した際に、第2のストッパー部材76と基板部材50とが当接して、それ以上、バネ部材64が、タイヤ質量部材32から離間する側(すなわち、後述する加振装置80側)に移動して、板バネ62が破損損傷しないようにするためのものである。
【0070】
なお、これらの第1のストッパー部材74と第2のストッパー部材76の材質は特に限定されるものではないが、これらの第1のストッパー部材74と第2のストッパー部材76がそれぞれ、ガイド部材72と基板部材50に当接した際の衝撃を緩和して、板バネ62の破損損傷を防止するためには、例えば、ゴム、樹脂などの柔軟な部材から構成するのが望ましい。
【0071】
なお、後述するように、タイロッドの試験装置10では、性質上、タイロッド24のバネ定数k1に比較して、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k2が、小さくなるように設定されている。その大きさは特に限定されるものではないが、例えば、k2=k1/150程度と大変小さいように構成されているのが望ましい。
【0072】
さらに、図1図3に示したように、基板部材50の加振装置80側に、慣性質量部材78が、固定ボルト78aで固定されている。そして、基板部材50に、加振装置80の先端側のロッド82を、締結ボルト82aで固定している。
【0073】
また、図1に示したように、タイロッドの試験装置10では、制御装置84を備えており、この制御装置84には、ステアリング1のハンドル12の舵角情報を入力して記憶する舵角情報記憶部86を備えている
また、制御装置84には、加振装置80の変位を入力して記憶する加振装置変位記憶部88を備えている。さらに、制御装置84には、ラック22の変位を入力して記憶するラック変位記憶部90を備えている。制御装置84には、これらの舵角情報記憶部86の舵角情報、加振装置変位記憶部88からの加振装置変位情報、ならびに、ラック変位記憶部90からのラック変位情報を読み出して、所定の演算処理を行うCPUなどの中央演算処理装置92を備えている。
【0074】
また、制御装置84には、タイロッド24にかかる荷重などの情報を入力して記憶するタイロッド荷重情報記憶部94を備えるとともに、このタイロッド荷重情報などの記憶部に記憶された各種情報を、リアルタイムに表示するCRTなどの表示装置96を備えている。
【0075】
このように構成される本発明のタイロッドの試験装置10では、図6の概略図で示したような構成となる。
すなわち、図6において、通常、ラック22からの入力に対して、タイヤが地面から受ける反力を加振装置80が模擬して、ラック22へと返している。
【0076】
なお、図6において、m1は、タイヤ質量部材32のタイヤの質量、k1は、タイロッド24のバネ定数、m2は、本発明の伝達力調整治具40の慣性質量、k2は、本発明の伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数を示している。
【0077】
そして、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置80がその動きに追随せず、図7に示したように、加振装置80が存在しない状態となって、2自由度系となる。
【0078】
この系の運動方程式は次のように表される。
【0079】
【数6】
【0080】
【数7】
となる。
【0081】
この系が振動しない解u1=u2=0を除くと、上式を満足する振動解が存在するためには、u1、u2の係数に関する行列式がゼロとなる必要がある。
これを整理すると、次式が得られる。
【0082】
【数8】
この式をω2について解くと、次の関係が分かる。
【0083】
【数9】
ここで、本発明の伝達力調整治具40が用いられるタイロッドの試験装置10では、性質上、タイロッド24のバネ定数k1に比較して、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k2は、k2=k1/150程度と大変小さい。
【0084】
従って、k2=0とすると、
【0085】
【数10】
となり、この系全体の固有振動数ωは、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k2と、伝達力調整治具40の慣性質量m2を無視できると分かる。
【0086】
従って、本発明によれば、車両のステアリングのタイロッドの試験装置10において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤを模擬してあるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0087】
また、本発明のタイロッドの試験装置10では、伝達力調整治具40が、伝達力調整治具40の慣性質量を調整する慣性質量部材78を備えている。
このように構成することによって、伝達力調整治具40の慣性質量部材78の慣性質量m2を調整することによって、例えば、上記式と同様に、慣性質量部材78の慣性質量m2を大きく設定することによって、伝達力調整治具40の固有振動数ωを低減することができる。
【0088】
その結果、試験体であるタイロッド24と、伝達力調整治具40の共振点に差を持たせて、伝達力調整治具40の荷重(振動)をキャンセルすることができる。
従って、車両のステアリングのタイロッドの試験装置において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0089】
このように構成される本発明のタイロッドの試験装置10では、図1図8に示したように、下記のようにして、タイロッド24の試験が行われる。
先ず、ステアリング1のハンドル12を所定の舵角で回動して、ステアリング1の情報を舵角情報記憶部86に入力して記憶される。一方、ラック22の変位が逐次、ラック変位記憶部90に入力して記憶される。
【0090】
これらの情報に基づいて、中央演算処理装置92により、所定の演算処理が行われ、ラック22の変位に対応するように、すなわち、加振装置80の変位が、ラック22の反力に相当するように、加振装置80の変位を設定するようになっている。
【0091】
そして、図8に示したように、タイロッド24の試験の際には、常に、制御装置84によって、加振装置80の変位が、ラック22の反力に相当するように、加振装置80の変位を設定するようにループ制御が行われる。
【0092】
この状態で、タイロッド24にかかる荷重が測定され、このタイロッド24にかかる荷重情報が、逐次タイロッド荷重情報記憶部94に入力記憶される。
そして、このタイロッド24の荷重情報などの記憶部に記憶された各種情報が、CRTなどの表示装置96にリアルタイムに表示されるように構成されている。
【0093】
このように、加振装置80の変位を、実際の車両の挙動と等しくすることによって、タイロッド24の車両にかかる荷重を模擬することによって、試験を行うように構成されている。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、減衰機構として、接触部材70を用いたが、バネ部材64を流体中に封入する封入部材から構成されていてもよい。
【0095】
このように、減衰機構が、例えば、水、油、空気などの流体などのバネ部材を流体中に封入する封入部材であっても、これにより、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0096】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0097】
また、上記実施例では、バネ部材64として、板バネ62を用いたが、例えば、コイルバネなどバネ定数を制御できるバネ部材であれば用いることが可能である。
さらに、本発明のタイロッドの試験装置10では、据え切り以外でも、ステアリング1のハンドル12を所定の舵角で回動した際の、タイロッドの荷重(振動)試験に用いることができるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば、自動車などの車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドの先端側と、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具、および、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システム、ならびに、タイロッドの試験方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 タイロッドの試験装置
12 ハンドル
14 ステアリングシャフト
16 自在継手
18 ピニオン
20 ラックバー
22 ラック
24 タイロッド
26 ピニオン
28 ナックルアーム
30 ハブ
32 タイヤ質量部材
34 軸部材
36 連結孔
38 ピボット軸ボルト
38a ナット
40 伝達力調整治具
42 シャフト
44 装着部
46 装着孔
48 伝達力調整治具本体
50 基板部材
52 側板部材
54 基端部
56 バネ部材装着部
58 バネ部材装着間隙
60 離間部材
62 板バネ
62a 中央部分
62b 端部
62c 中間部分
62d 接触面
64 バネ部材
64a 締結ボルト
66 補強プレート
66a 締結ボルト
68 離間部材
70 接触部材
70a 接触面
72 ガイド部材
72a ガイド開口
74 第1のストッパー部材
76 第2のストッパー部材
78 慣性質量部材
78a 固定ボルト
80 加振装置
82 ロッド
82a 締結ボルト
84 制御装置
86 舵角情報記憶部
88 加振装置変位記憶部
90 ラック変位記憶部
92 中央演算処理装置
94 タイロッド荷重情報記憶部
96 表示装置
100 ステアリング
102 ハンドル
104 ステアリングシャフト
106 自在継手
108 ピニオン
110 ラックバー
112 ラック
114 タイロッド
116 ピニオン
118 ナックルアーム
120 ハブ
120 加振装置
122 ロッド
200 試験装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10