【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、自動車などの車両において、タイロッド114にかかる荷重を模擬する試験において、据え切り時のタイヤの反力とステアリングエンドに当たった時のタイロッド114にかかる荷重を再現する必要がある。
【0009】
従来、このような自動車のタイロッド114にかかる荷重(振動)などを模擬する試験装置としては、
図10の斜視図に示したような試験装置200が提案されている。
この従来の試験装置200では、タイロッド114の先端に、加振装置120の先端側のロッド122を直接連結して、タイロッド114にかかる荷重(振動)などのタイロッドの試験を行っている。
すなわち、据え切り時のタイヤの反力に対して、加振装置120の応答速度が間に合わないため、このようにタイロッド114と加振装置120を直接連結して固定している。
【0010】
ところで、通常、ラック112からの入力に対して、タイヤが地面から受ける反力を加振装置120が模擬して、ラック112へと返している。
しかしながら、このような従来の車両のタイロッドの試験装置では、タイロッド114と加振装置120を直接連結して固定しているので、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置120がその動きに追随せず、実際のタイロッド114の荷重(振動)を再現するのが困難である。
【0011】
本発明は、このような現状に鑑み、例えば、自動車などのステアリングにおいて、タイロッドにかかる荷重(振動)を模擬してタイロッドの試験を行う場合に、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置がその動きに追随して、実際のタイロッドの荷重(振動)を再現することが可能な伝達力調整治具、および、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置、伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システム、ならびに、タイロッドの試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の伝達力調整治具は、
車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具であって、
前記伝達力調整治具が、バネ部材を備え、バネ部材を介してタイロッドに連結されるように構成され、
前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数k2が、タイロッドのバネ定数k1よりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のタイロッドの試験装置は、
前述のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験装置であって、
前記タイロッドの先端側に連結された伝達力調整治具と、
前記伝達力調整治具のタイロッドと反対側に連結され、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置とを備え、
前記伝達力調整治具は、バネ部材を介してタイロッドの先端側に連結されており、
前前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数k2が、タイロッドのバネ定数k1よりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のタイロッドの試験システムは、
前述のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験システムであって、
前記ステアリングを所定の舵角で回動して、ステアリングの情報を入力するステアリング入力手段と、
前記ステアリング入力手段で入力されたステアリングの情報に基づいて、前記ステアリングのラックの変位に対応するように、前記加振装置の変位を制御する加振装置制御手段と、
前記タイロッドにかかる荷重を測定する荷重測定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のタイロッドの試験方法は、
前述のいずれかに記載の伝達力調整治具を用いたタイロッドの試験方法であって、
前記ステアリングを所定の舵角で回動して、ステアリングの情報を入力するステアリング入力ステップと、
前記ステアリング入力ステップで入力されたステアリングの情報に基づいて、前記ステアリングのラックの変位に対応するように、前記加振装置の変位を制御する加振装置制御ステップと、
前記タイロッドにかかる荷重を測定するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成することによって、車両のステアリングのタイロッドの試験装置10は、
図6の概略図で示したような構成となる。
すなわち、
図6において、通常、ラック22からの入力に対して、タイヤが地面から受ける反力を加振装置80が模擬して、ラック22へと返している。
【0017】
なお、
図6において、m
1は、タイヤ質量部材32のタイヤの質量、k
1は、タイロッド24のバネ定数、m
2は、本発明の伝達力調整治具40の慣性質量、k
2は、本発明の伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数を示している。
【0018】
そして、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、加振装置80がその動きに追随せず、
図7に示したように、加振装置80が存在しない状態となって、2自由度系となる。
【0019】
この系の運動方程式は次のように表される。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
となる。
【0022】
この系が振動しない解u
1=u
2=0を除くと、上式を満足する振動解が存在するためには、u
1、u
2の係数に関する行列式がゼロとなる必要がある。
これを整理すると、次式が得られる。
【0023】
【数3】
この式をω
2について解くと、次の関係が分かる。
【0024】
【数4】
ここで、本発明の伝達力調整治具40が用いられるタイロッドの試験装置10では、性質上、タイロッド24のバネ定数k
1に比較して、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k
2は、k
2=k
1/150程度と大変小さい。
【0025】
従って、k
2=0とすると、
【0026】
【数5】
となり、この系全体の固有振動数ωは、伝達力調整治具40のバネ部材64のバネ定数k
2と、伝達力調整治具40の慣性質量m
2を無視できると分かる。
【0027】
従って、本発明によれば、車両のステアリングのタイロッドの試験装置において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤを模擬してあるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0028】
また、本発明の伝達力調整治具は、
車両のステアリングのタイロッドの試験装置に用いられ、タイロッドと、タイロッドに対して荷重を付与する加振装置との間に配置される伝達力調整治具であって、
前記伝達力調整治具が、バネ部材を備え、バネ部材を介してタイロッドに連結されるように構成され、
前記伝達力調整治具のバネ部材のバネ定数k2が、タイロッドのバネ定数k1よりも小さくなるように、バネ部材が構成され、
前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
また、本発明では、前記伝達力調整治具が、伝達力調整治具の慣性質量を調整する慣性質量部材を備えることを特徴とする。
【0029】
その結果、試験体であるタイロッド24と、伝達力調整治具40の共振点に差を持たせて、伝達力調整治具40の荷重(振動)をキャンセルすることができる。
従って、車両のステアリングのタイロッドの試験装置において、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0030】
また、本発明では、前記伝達力調整治具のバネ部材が、板バネから構成されていることを特徴とする。
このように伝達力調整治具のバネ部材が、板バネから構成されていれば、バネ部材のバネ定数k
2を低減するように設定し易く、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0031】
また、本発明では、前記伝達力調整治具のバネ部材が、一定間隔離間して配置された複数の板バネから構成されていることを特徴とする。
このように伝達力調整治具のバネ部材64が、一定間隔離間して配置された複数の板バネから構成されていれば、バネ部材64のバネ定数k
2を制御して、低減するように設定し易い。すなわち、例えば、n枚の板バネ(バネ定数k)から構成されるバネ部材64であれば、バネ部材64のバネ定数k
2は、nkとなる。
【0032】
従って、バネ部材64のバネ定数k
2を制御して、低減するように設定し易く、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。その結果、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0033】
また、本発明では、前記伝達力調整治具のバネ部材が、部分的に幅が狭くなった形状であることを特徴とする。
このように構成することによって、部分的に幅が狭くなった部分で、板バネから構成されるバネ部材64が、撓み易く、応力集中(集中荷重)を受けるのを避けることができ、バネ部材64が破断するのを防止することができる。特に、据え切り時にステアリングエンドに当たった際には、ラック22からの入力が高い入力荷重(高い周波数)となるが、バネ部材64の破断を避けることができる。
【0034】
また、本発明では、前記伝達力調整治具が、バネ部材の振動を減衰する減衰機構を備えることを特徴とする。
このように構成することによって、据え切り時にステアリングエンドに当たった際には、ラック22からの入力が高い入力荷重(高い周波数)となるが、伝達力調整治具のバネ部材の共振点を越えた減衰領域を利用し、軸力の伝達を抑制する。
【0035】
そして、バネ部材64の振動を減衰する減衰機構によって、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0036】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0037】
また、本発明では、前記減衰機構が、バネ部材の端部と摩擦接触する接触部材から構成されていることを特徴とする。
このように、減衰機構が、バネ部材の端部と摩擦接触する接触部材であっても良く、これにより、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0038】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。
【0039】
また、本発明では、前記減衰機構が、バネ部材を流体中に封入する封入部材から構成されていることを特徴とする。
このように、減衰機構が、例えば、水、油、空気などの流体などのバネ部材を流体中に封入する封入部材であっても良く、これにより、伝達力調整治具40のバネ部材64の共振点での振動を抑えることができ、その結果、据え切り時にステアリングエンドに当たった際に、あたかも、伝達力調整治具40が存在しない状態となる。
【0040】
これにより、タイヤであるタイヤ質量部材32とタイロッド24が直接連結している状態と同じになり、タイロッド24の実際のタイロッド24の荷重(振動)を再現することが可能であり、タイロッドの正確な試験を行うことができる。