特許第6062648号(P6062648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062648
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】電気錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 35/12 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   E05B35/12 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-81132(P2012-81132)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209855(P2013-209855A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】堀畑 哲男
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−092522(JP,A)
【文献】 特許第4209742(JP,B2)
【文献】 特開2002−180712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作による機械的な施錠が可能な主錠と、該主錠の施錠に追従して電気的に施錠が可能な副錠とを含む複数の錠前と、
前記主錠と前記副錠が取り付けられた扉の開閉状態を検知する扉開閉検知手段と、
前記主錠の手動操作による機械的な施錠を検知する手動操作検知手段と、
前記複数の錠前のすべてが解錠状態であって、前記主錠が手動操作により機械的に施錠されて前記手動操作検知手段が該主錠の手動操作による機械的な施錠を検知し、かつ前記扉開閉検知手段が閉扉を検知したときに、該主錠の施錠に追従して前記副錠を電気的に施錠制御する制御手段とを備えたことを特徴とする電気錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅の玄関扉などの各種扉に採用され、1つの扉に複数個の錠前が設けられた電気錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅の玄関扉などの各種扉に採用される電気錠装置としては、防犯性の向上を図るべく、1つの扉に2個の錠前を装備した1ドア2ロックの電気錠装置が従来より知られている。この種の電気錠装置では、例えば下記特許文献1に示すように、閉扉時に、一方の錠前をシリンダーまたはサムターンで解錠から施錠にすると、この一方の錠前の施錠に追従して他方の錠前が自動で施錠する施錠追従動作を行っている。これにより、利便性の向上を図っている。
【0003】
図3はこの種の従来の電気錠装置の施錠追従動作のフローチャート図である。図3に示すように、施錠追従動作では、施錠時において、2個の錠前(主錠、副錠)が両方とも解錠状態であるか否かを判別するとともに(ST11)、閉扉か否かを判別する(ST12)。そして、2個の錠前が両方とも解錠状態であると判定し(ST11−Yes)、かつ閉扉であると判定したときに(ST12−Yes)、施錠追従動作が働く開始条件である「閉扉2ロック解錠」の条件を満たすので、一方の錠前(主錠)が施錠されたか否かを判別し(ST13)、一方の錠前(主錠)が施錠されたと判定すると、この一方の錠前(主錠)の施錠に追従して他方の錠前(副錠)を施錠する(ST14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4470943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の電気錠装置の施錠追従動作は、閉扉時にしか働かない仕様となっていた。このため、閉扉を検知する前、すなわち扉が完全に閉まりきる前にシリンダーまたはサムターンで一方の錠前を解錠から施錠にすると、閉扉を検知する前に、一方の錠前が施錠になってしまい、施錠追従動作が働く開始条件である「閉扉2ロック解錠」の条件を満たさなくなり、他方の錠前が施錠追従動作しないという問題があった。この施錠追従動作が働かないという問題は、特に、扉と扉枠との隙間、いわゆるチリが広い扉の場合、閉扉検知範囲が狭くなるために起こりやすかった。
【0006】
また、駆動源として二次電池を用いた電気錠装置では、電池消耗を抑えるため、モニタの変化の確認を1〜2秒程度の周期で行っている。そして、周期の谷間で「開扉:2ロック解錠」から閉扉により「閉扉:2ロック解錠」となり、手動操作にて上側の錠前が施錠されて「閉扉:上側施錠+下側解錠」になると、「閉扉2ロック解錠」の条件を満たさなくなり、下側の錠前が施錠追従動作しないという問題が生じる。この施錠追従動作が働かないという問題は、閉扉直後に一方の錠前を施錠した場合に起こりやすかった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、施錠追従動作の精度向上を図ることができる電気錠装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された電気錠装置は、手動操作による機械的な施錠が可能な主錠と、該主錠の施錠に追従して電気的に施錠が可能な副錠とを含む複数の錠前と、
前記主錠と前記副錠が取り付けられた扉の開閉状態を検知する扉開閉検知手段と、
前記主錠の手動操作による機械的な施錠を検知する手動操作検知手段と、
前記複数の錠前のすべてが解錠状態であって、前記主錠が手動操作により機械的に施錠されて前記手動操作検知手段が該主錠の手動操作による機械的な施錠を検知し、かつ前記扉開閉検知手段が閉扉を検知したときに、該主錠の施錠に追従して前記副錠を電気的に施錠制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、扉が完全に閉まりきる前(閉扉を検知する前)に手動操作により主錠を施錠にしても、閉扉後に副錠を追従して確実に施錠することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電気錠装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明に係る電気錠装置の施錠時の動作を示すフローチャート図である。
図3】従来の電気錠装置の施錠時の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0012】
本発明に係る電気錠装置は、例えば住宅の玄関扉などの各種扉に採用され、1つの扉に複数個の錠前が取り付けられたものである。ここでは、電気錠装置として、1つの扉に2個の錠前が取り付けられた1ドア2ロックの構成を例にとって説明する。
【0013】
図1に示すように、電気錠装置1は、錠前2、錠前状態検知手段3、手動操作検知手段4、扉開閉検知手段5、制御手段6、駆動手段7を備えて概略構成される。
【0014】
錠前2は、主錠11と副錠12からなる。主錠11は、2個の錠前2のうち、施解錠時に最初に操作される錠前である。具体的に、主錠11は、室内側のサムターンの回転操作や室外側のシリンダーの鍵穴への鍵の挿入回転操作などの手動操作による機械的な施錠(及び/又は解錠)と、駆動手段7の通電による電気的な施錠(及び/又は解錠)が可能な錠前で構成される。
【0015】
副錠12は、主錠11の施解錠に追従して施解錠が可能な錠前である。具体的に、副錠12は、室外側のシリンダーの鍵穴への鍵の挿入回転操作などの手動操作による機械的な施錠(及び/又は解錠)と、駆動手段7の通電による電気的な施錠(及び/又は解錠)が可能な錠前で構成される。
【0016】
錠前状態検知手段3は、錠前2の現在の状態として、主錠11と副錠12のそれぞれの現在の状態が施錠状態、解錠状態の何れの状態にあるかを検知するもので、主錠状態検知手段3aと副錠状態検知手段3bからなる。
【0017】
主錠状態検知手段3aは、従来より周知の構成であり、例えばマイクロスイッチ、ホールIC、フォトインタラプタ等で構成される。主錠状態検知手段3aは、主錠11のデッドボルトが完全に突出した状態を施錠状態と検知し、主錠11のデッドボルトが完全に引っ込んだ状態を解錠状態と検知しており、主錠11のストライクの係止穴に対する主錠11のデッドボルトの進退位置に応じて施錠状態又は解錠状態を示す検知信号を制御手段6に出力している。
【0018】
副錠状態検知手段3bは、主錠状態検知手段3aと同等に構成され、副錠12のデッドボルトが完全に突出した状態を施錠状態と検知し、副錠12のデッドボルトが完全に引っ込んだ状態を解錠状態と検知しており、副錠12のストライクの係止穴に対する副錠12のデッドボルトの進退位置に応じて施錠状態又は解錠状態を示す検知信号を制御手段6に出力している。
【0019】
手動操作検知手段4は、施錠時の主錠11の手動操作(室内側のサムターンの回転操作、室外側のシリンダーの鍵穴への鍵の挿入回転操作)の有無を検知するもので、施錠時に主錠11の室内側のサムターンが回転操作されたときや室外側からシリンダーの鍵穴に鍵を挿入して回転操作され、主錠状態検知手段3aの状態が施錠に変化したときに、直前に制御手段6に施錠制御信号が入力されたか否かを検知している。
【0020】
なお、手動操作検知手段4は、解錠時の主錠11の手動操作の有無、施錠時の副錠12の手動操作の有無、解錠時の副錠12の手動操作の有無も同様の手法により検知している。
【0021】
扉開閉検知手段5は、従来より周知の構成であり、例えば扉枠側のストライク内に設けられる磁石と、磁石に対応して扉13側に設けられる磁気センサとから構成される。扉開閉検知手段5は、扉13の開閉操作により、磁石の磁界が及ぶ閉扉検出範囲に磁気センサが位置するときを閉扉状態と検知し、閉扉検出範囲から外れて磁気センサが位置するときを開扉状態と検知しており、扉13の開閉状態に応じた検知信号を制御手段6に出力している。
【0022】
制御手段6は、後述する図2のフローチャート図の処理を含め、錠前2(主錠11、副錠12)の施錠及び解錠に関する処理を統括制御するものである。すなわち、制御手段6は、錠前状態検知手段3、手動操作検知手段4、扉開閉検知手段5からのそれぞれの検知信号を入力とし、現在の錠前2(主錠11、副錠12)の施解錠状態、現在の扉13の開閉状態、手動操作の有無を判別している。そして、これらの判別結果に応じて駆動手段7に制御信号(施錠制御信号、解錠制御信号)を出力し、錠前2(主錠11、副錠12)の施錠及び解錠を制御している。
【0023】
駆動手段7は、モータやソレノイドなどで構成され、制御手段6からの制御信号により錠前2(主錠11、副錠12)を施錠駆動又は解錠駆動している。さらに説明すると、駆動手段7は、制御手段6から施錠制御信号が入力されると主錠11のシリンダーを回転駆動して主錠11を施錠し、この主錠11の施錠に追従して副錠12を施錠している。これに対し、駆動手段7は、制御手段6から解錠制御信号が入力されると主錠11のシリンダーを回転駆動して主錠11を解錠し、この主錠11の解錠に追従して副錠12を解錠している。
【0024】
次に、上記構成による電気錠装置1の施錠時の動作について図2のフローチャート図を参照しながら説明する。
【0025】
まず、制御手段6は、錠前状態検知手段3からの検知信号により、全ての錠前2(主錠11、副錠12)が解錠状態か否かを判別する(ST1)。制御手段6は、全ての錠前2(主錠11、副錠12)が解錠状態であると判定すると(ST1−Yes)、手動操作検知手段4により、主錠11が手動操作による施錠であるか否か(通電による電気的な施錠ではないか否か)を判別する(ST2)。
【0026】
そして、制御手段6は、主錠11が手動操作による施錠である(通電による電気的な施錠ではない)と判定すると(ST2−Yes)、扉開閉検知手段5からの検知信号により、扉13が閉扉であるか否かを判別する(ST3)。制御手段6は、扉13が閉扉になるまで待機し、扉13が閉扉であると判別すると(ST3−Yes)、駆動手段7に施錠制御信号を出力する。そして、駆動手段7は、制御手段6から施錠制御信号が入力されると、主錠11の施錠に追従して副錠12を施錠する(ST4)。
【0027】
これに対し、制御手段6は、主錠11が手動操作による施錠ではない(通電による電気的な施錠である)と判定すると(ST2−No)、図3の従来の処理フローのAに移行する。図3の処理フローのAに移行すると、制御手段6は、扉13が閉扉であるか否かを判別し(ST12)、扉13が閉扉であると判定し(ST12−Yes)、「閉扉2ロック解錠」の施錠追従動作が働く開始条件を満たすと、駆動手段7に施錠制御信号を出力する。そして、駆動手段7は、制御手段6から施錠制御信号が入力されると、主錠11が施錠されたか否かを判別し(ST13)、主錠11が駆動手段7の通電により電気的に施錠されたと判定すると、この主錠11の施錠に追従して副錠12を施錠する(ST14:施錠追従動作)。
【0028】
なお、制御手段6は、電気錠装置1により錠前2(主錠11、副錠12)を解錠する場合、錠前状態検知手段3及び扉開閉状態検知手段5からの検知信号により、全ての錠前2(主錠11、副錠12)が施錠状態で扉が閉扉状態であると判定すると(閉扉2ロック施錠)、駆動手段7に解錠制御信号を出力する。そして、駆動手段7は、制御手段6から解錠制御信号が入力されると、主錠11を解錠し、この主錠11の解錠に追従して副錠を解錠する。
【0029】
このように、本例の電気錠装置1によれば、1つの扉13に対して2個の錠前(主錠11、副錠12)を設けた1ドア2ロックの構成において、従来の施錠追従動作が働く開始条件である「閉扉2ロック解錠」を変更し、全ての錠前2(主錠11、副錠12)が解錠状態にある「2ロック解錠」から開扉している扉13を閉めつつ扉13が完全に閉まりきる前(閉扉を検知する前)に手動操作により主錠11を施錠した場合であっても、閉扉後に副錠12を主錠11の施錠に追従して確実に施錠することができ、施錠追従動作の精度向上を図ることができる。このため、閉扉検知範囲が狭いチリの広い扉にも本例の電気錠装置1を採用することができる。また、二次電池を駆動源とした場合でも、必ず施錠追従動作を働かせることができる。
【0030】
ところで、上述した実施の形態では、手動操作による機械的な施錠(解錠)と、電気的な施錠(解錠)が可能な主錠11及び副錠12から錠前2が構成されるものとして説明したが、この構成に限定されるものではない。すなわち、主錠11は、少なくとも手動操作による機械的な施錠及び/又は解錠が可能な構成であれば良い。また、副錠12は、少なくとも主錠11に追従して電気的に施錠が可能な構成であれば良い。
【0031】
さらに、上述した実施の形態では、1つの扉13に対し、1個の主錠11に追従動作する1個の副錠12を設けた構成(1ドア2ロックの構成)を図1に示して説明したが、副錠12の数が1個に限定されるものではなく、2個以上の副錠12を設けた構成であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 電気錠装置
2 錠前
3 錠前状態検知手段
3a 主錠状態検知手段
3b 副錠状態検知手段
4 手動操作検知手段
5 扉開閉検知手段
6 制御手段
7 駆動手段
11 主錠
12 副錠
13 扉
図1
図2
図3