特許第6062649号(P6062649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062649
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】錠装置及び錠装置の機能設定方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 13/08 20060101AFI20170106BHJP
   E05B 9/08 20060101ALI20170106BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   E05B13/08 A
   E05B9/08 Z
   E05B47/00 J
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-81134(P2012-81134)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209856(P2013-209856A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】木野瀬 将明
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−176468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 13/08
E05B 9/08
E05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設錠装置の操作部材に連結されるサムターンコアと、
新設サムターンに連結されるサムターンベースと、
異なる回転位置のそれぞれで前記サムターンコアと前記サムターンベースを相対回転不能に連結するとともに軸線方向にスライドされて前記連結を解除する切替軸と、
前記サムターンコアに同一中心で貫通形成され、工具が挿入されるとともに、前記工具の挿入方向の押圧によって前記切替軸が前記軸線方向にスライドされる切替穴と、
を具備することを特徴とする錠装置。
【請求項2】
請求項1記載の錠装置であって、
前記操作部材がダルマ軸であり、
該ダルマ軸にはダルマ穴を有し、
該ダルマ穴には、相対回転不能に連結軸が挿入されて、
前記連結軸前記サムターンコアが相対回転不能に連結されることを特徴とする錠装置。
【請求項3】
請求項1記載の錠装置であって、
前記操作部材が既設サムターンであり、
前記サムターンコアが前記既設サムターンに被せられて連結されることを特徴とする錠装置。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載の錠装置であって、
装置本体がカバーに覆われ、
前記カバーに覆われずに表出する裏蓋が扉面に対面されて取り付けられ、
前記裏蓋に、前記サムターンコアの前記切替穴が表出するよう配置されることを特徴とする錠装置。
【請求項5】
請求項4記載の錠装置であって、
前記裏蓋に、前記サムターンコアが前記相対回転不能に連結される異なる回転位置の回転方向を表す標示が設けられていることを特徴とする錠装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の錠装置を用いる錠装置の機能設定方法であって、
前記錠装置を扉に取り付ける前に、前記切替穴に前記工具を挿入して前記切替軸をスライドすることにより前記サムターンコアと前記サムターンベースとの連結を解除した後、
前記サムターンコアのみを切り替え位置に回転し、
前記工具を抜くことにより前記サムターンコアと前記サムターンベースとを再連結して、前記操作部材の回転方向に応じた機能設定を切り替えることを特徴とする錠装置の機能設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置及び錠装置の機能設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扉や機械式錠前に対して、極力、孔、切欠等の加工を施さないで、かつ、簡単に制御箱を後付することができるようにした電気錠が知られている(特許文献1等参照)。この電気錠の取付構造は、機械式錠前を扉の内壁面に取付け、錠前の錠箱から突出するサムターン摘みに、制御箱に設けた動力伝達機構の伝動歯車と噛合する歯部を有するサムターン摘み用キャップを外嵌合する。このキャップ用の開口部及び取付け孔を有する制御箱の一端部側を、錠箱の外壁面に位置決めした状態で添設し、かつ固着具を介して制御箱を錠箱に後付固定する。
【0003】
ところで、扉には吊元が左右で異なる左右勝手がある。電動でサムターンを回転させて施解錠するには、サムターンの回転方向が左右勝手で異なるため、左右勝手を変える設定、すなわちサムターンの回転方向に合せてモーターの制御方向を変えるが必要となる。例えば上記特許文献1の電気錠の取付構造では、左右勝手に対応する第1及び第2の取付け孔が形成されている。制御箱は、これら第1及び第2の取付け孔が、錠箱に形成されたネジ孔の位置如何によって選択的に利用され、扉の左右勝手に対応して錠箱に後付固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の電気錠の取付構造は、第1及び第2の取付け孔の位置が、左右勝手に対応する構造となるのみで、切り替えによって容易に左右勝手が変更されるものではなかった。また、電気錠には、表面にディップスイッチ等の切替手段が設けられ、モーター制御回路の設定範囲が決定されるものもあるが、容易に見える位置に配設されており、設定者以外の者が悪戯で触る虞がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、左右勝手などの機能の設定が簡単に変えられ、変えられた設定は簡単には変更できずに悪戯が防止される錠装置及び錠装置の機能設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の錠装置は、既設錠装置35の操作部材に連結されるサムターンコア29と、
新設サムターン17に連結されるサムターンベース25と、
異なる回転位置のそれぞれで前記サムターンコア29と前記サムターンベース25を相対回転不能に連結するとともに軸線方向にスライドされて前記連結を解除する切替軸27と
記サムターンコア29に同一中心で貫通形成され工具89が挿入されるとともに前記工具89の挿入方向の押圧によって前記切替軸27が前記軸線方向にスライドされる切替穴71と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この錠装置では、サムターンコア29の切替穴71に工具89が挿入され、工具89によって奥側の切替軸27がスライドされると、サムターンコア29とサムターンベース25との連結が解除される。連結が解除された状態で、サムターンコア29のみが、所望の機能切替、例えばサムターンコア29に突設された検出杆51を介して設けられる検知体53であれば、左右勝手において検知体53が検知手段55によって検知されることとなる回転位置へ回転される。所望の回転位置へサムターンコア29が回転された後、工具89が切替穴71から抜かれると、切替軸27によってサムターンコア29とサムターンベース25とが再連結される。この際の再連結位置は、切り替え連結前のサムターンベース25と異なる相対角度に設定される。すなわち、切り替え前が左勝手であれば、切り替え後は右勝手となり、切り替え前が右勝手であれば、切り替え後は左勝手となる。これにより、サムターンコア29の左右勝手の切り替え設定が完了される。
【0009】
本発明の請求項2記載の錠装置は、請求項1記載の錠装置であって、
前記操作部材がダルマ軸39であり、
該ダルマ軸39にはダルマ穴41を有し、
該ダルマ穴41には、相対回転不能に連結軸43が挿入されて、
前記連結軸43前記サムターンコア29が相対回転不能に連結されることを特徴とする。
【0010】
この錠装置では、既設サムターン37が抜去されると、既設サムターン軸の挿入されていたダルマ穴41が開口される。このダルマ穴41に、一端が既設サムターン軸と同形状に形成される連結軸43が挿入される。連結軸43は、他端がサムターンコア29の連結穴49に相対回転不能に挿入される。これにより、操作部材とサムターンコア29とが連結軸43によって連結される。なお、連結穴49の奥側には切替穴71が同一中心で配置される。
【0011】
本発明の請求項3記載の錠装置は、請求項1記載の錠装置であって、
前記操作部材が既設サムターン37であり、
前記サムターンコア29が前記既設サムターン37に被せられて連結されることを特徴とする。
【0012】
この錠装置では、既設錠装置35の操作部材である既設サムターン37が扉面91から突出して設けられている。サムターンコア29には、この既設サムターン37に同軸で相対回転不能に被せられる被着穴が形成される。被着穴は、上記の連結穴49に代わるものとなる。錠装置が扉面91に取り付けられると、サムターンコア29は、被着穴が既設サムターン37に同軸に被せられ、相対回転不能に連結される。
【0013】
本発明の請求項4記載の錠装置は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載の錠装置であって、
装置本体13がカバー15に覆われ、
前記カバー15に覆われずに表出する裏蓋21が扉面91に対面されて取り付けられ、
前記裏蓋21に、前記サムターンコア29の前記切替穴71が表出するよう配置されることを特徴とする。
【0014】
この錠装置では、装置本体13は、裏蓋以外がカバー15によって覆われ、扉面91に取り付けられることで、裏蓋21が扉面91によって覆われる。これにより、扉33に取り付けられた装置本体13は、切替穴71へ工具89を挿入できなくなる。
【0015】
本発明の請求項5記載の錠装置は、請求項4記載の錠装置であって、
前記裏蓋21に、前記サムターンコア29が前記相対回転不能に連結される異なる回転位置の回転方向を表す標示が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この錠装置では、扉33に取り付けられる前に、裏蓋21に表出する切替穴71へ工具89が挿入され、回転される際に、相対回転不能にサムターンコア29が連結される異なる回転位置を標示で把握することができ、例えば連結箇所が2か所とされて左右勝手の切り替えが行える設定の場合には、左右勝手の切り替え操作のために工具89が回転される際、2つの機能設定としての左右勝手の設定方向が、工具89の回転方向として標示によって把握可能となる。また連結位置が3か所などの複数箇所となる構成の場合では、それぞれの回転位置で設定でき、工具89の回転方向を標示で把握が可能となる。
【0017】
本発明の請求項6記載の錠装置の機能設定方法は、請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の錠装置を用いる錠装置の機能設定方法であって、
前記錠装置を扉33に取り付ける前に、前記切替穴71に前記工具89を挿入して前記切替軸27をスライドすることにより前記サムターンコア29と前記サムターンベース25との連結を解除した後
記サムターンコア29のみを切り替え位置に回転し、
前記工具89を抜くことにより前記サムターンコア29と前記サムターンベース25とを再連結して、前記操作部材の回転方向に応じた機能設定を切り替えることを特徴とする。
【0018】
この錠装置の機能設定方法では、工具89によって奥側の切替軸27がスライドされると、サムターンコア29とサムターンベース25との連結が解除される。連結が解除された状態で、サムターンコア29のみが、所望の機能設定、例えばサムターンコア29に突設された検出杆51を介して設けられる検知体53であれば、左右勝手において検知体53が検知手段55によって検知されることとなる回転位置へ回転される。所望の回転位置へサムターンコア29が回転された後、工具89が切替穴71から抜かれると、切替軸27によってサムターンコア29とサムターンベース25とが再連結される。この際の再連結位置は、切り替え連結前のサムターンベース25と異なる相対角度に設定される。すなわち、切り替え前が第1の機能設定(左勝手)であれば、切り替え後は第2の機能設定(右勝手)となり、切り替え前が第2の機能設定(右勝手)であれば、切り替え後は第1の機能設定(左勝手)となる。これにより、サムターンコア29の機能設定、例えば左右勝手の切り替え設定が完了される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る請求項1記載の錠装置によれば、工具を使って所望の方向に回転操作するのみで左右勝手などの機能の設定が簡単に変えられ、また、この設定部分が扉に対して取り付けてしまった後は表出しない位置にあることから変えられた設定は簡単には変更できず、悪戯を防止できる。また、左右勝手の切り替えの他に、電動と手動との切り替えにも対応でき、さらに、自動施錠と施解錠繰り返しなどモードの切り替えも簡単に設定可能であり、複数の機能切り替えを回転操作で容易に行うことができる。
【0020】
本発明に係る請求項2記載の錠装置によれば、操作部材とサムターンコアとが連結軸によって同軸に連結され、既設錠装置に操作力が確実に入力でき、かつ、操作力伝達構造をコンパクトにできる。
【0021】
本発明に係る請求項3記載の錠装置によれば、既設サムターンを取り外さずに、錠装置を簡便に後付けできる。
【0022】
本発明に係る請求項4記載の錠装置によれば、切り替え設定後、扉に取り付けられると、裏蓋に設けられた切替穴が隠れ、設定の変更が行えなくなる。
【0023】
本発明に係る請求項5記載の錠装置によれば、標示を確認しながら、切り替え設定を容易、かつ、確実に行うことができる。
【0024】
本発明に係る請求項6記載の錠装置の機能設定方法によれば、複数の機能設定の切り替え、例えば少なくとも2つの機能として左右勝手などの設定が簡単に変えられ、変えられた設定は簡単には変更できなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る実施形態の錠装置を既設錠装置の操作部材とともに表した斜視図である。
図2図1に示した錠装置の側断面図である。
図3】左右勝手を説明する扉の平面図である。
図4】左右勝手を説明する既設錠装置の正面図である。
図5図2に示した要部の拡大分解側断面図である。
図6図2に示した要部の拡大分解斜視図である。
図7図2に示した錠装置の切り替え操作を説明する作用図である。
図8】切り替え時のサムターンコアの動作過程を(a)(b)(c)で表した作用図である。
図9】実施形態の変形例に係る錠装置を既設錠装置の操作部材とともに表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照し、手動の既設錠装置に対して電気錠よりなる錠装置を左右勝手の設定を行う例として説明する。
図1は本発明に係る実施形態の錠装置を既設錠装置の操作部材とともに表した斜視図、図2図1に示した錠装置の側断面図である。
本実施形態に係る錠装置である電気錠ユニット11は、装置本体13(図2参照)がカバー15によって覆われ、カバー15からは新設サムターン17の新設摘み19が表出している。カバー15によって表側が覆われた装置本体13は、裏側が裏蓋21(図2参照)となる。装置本体13は、モーター(図示せず)、施解錠駆動機構(図示せず)、制御部(図示せず)、センサ実装基板23、電池(図示せず)、サムターンベース25、切替軸27、サムターンコア29を備える。カバー15には電池蓋31が設けられ、電気錠ユニット11は電池蓋31を取り外すことで装置本体13に収容される電池の交換が可能となる。
【0027】
一方、扉33には既設錠装置35が内設される。既設錠装置35には操作部材が突出して設けられる。操作部材は、既設サムターン37(図9参照)と、既設サムターン37が係合されるダルマ軸39と、からなる。既設サムターン37は、ダルマ軸39のダルマ穴41に挿入される。本実施形態において、既設錠装置35は、既設サムターン37が抜去されて使用される。
【0028】
電気錠ユニット11は、連結軸43を付属部品として備える。連結軸43は、一端がダルマ軸39のダルマ穴41に係合するダルマ穴係合部45となり、他端が十字軸部47となる。連結軸43は、ダルマ穴係合部45がダルマ穴41に挿入され、十字軸部47が図2に示す裏蓋21に表出するサムターンコア29の連結穴49に挿入される。連結穴49は、十字軸部47と相対回転不能となる十字穴状に形成される。すなわち、サムターンコア29は、既設錠装置35の操作部材であるダルマ軸39に連結される。これにより、電気錠ユニット11は、連結軸43を介して既設錠装置35と連結される。
【0029】
サムターンコア29には、半径方向外側に突出する検出杆51が設けられる。検出杆51には検知体であるマグネット53が固定される。マグネット53は、装置本体13の検知手段55に対向配置されることで検出される。検知手段は、マグネット53を検出するリードスイッチ55と、リードスイッチ55を実装するセンサ実装基板23と、を有する。リードスイッチ55は、1つ設けられていればよい。リードスイッチ55は、センサ実装基板23に形成される電気回路によって制御部に接続される。制御部は、リードスイッチ55からマグネット53を検出した検出信号を受けると、施解錠動作の制御信号をモーターへ送出する。このリードスイッチ55によるマグネット53の検出位置は、扉33の左右勝手によって異なる。つまり、左右勝手に応じサムターンベース25とサムターンコア29との相対回転角は異なる。本実施形態において、この角度差は、90°となっている。
【0030】
電気錠ユニット11は、既設錠装置35と連結される際、扉33の左右勝手に応じサムターンベース25とサムターンコア29とが所定の相対回転角に設定された後に取り付けられる。所定の相対回転角への設定は、サムターンベース25に対しサムターンコア29の連結が解除され、サムターンコア29が回転されることにより行われる。
【0031】
ここで、扉33の左右勝手について説明する。
図3は左右勝手を説明する扉33の平面図である。
本明細書中、扉33は、屋内側に開くことを「内開き」、屋外側に開くことを「外開き」と言う。また、扉33を支える丁番57の軸が扉33の開く側から見て左側に見えることを「左勝手」、扉33を支える丁番57の軸が扉33の開く側から見て右側に見えることを「右勝手」と言う。
【0032】
図4は左右勝手を説明する既設錠装置35の正面図である。
既設錠装置35は、左右勝手によって、施解錠するときの既設サムターン37の回転方向が異なる。解錠状態において、左勝手と右勝手の既設サムターン37は、いずれも既設摘み59が縦向きとなる。一方、解錠状態から施錠状態への操作は、左勝手の場合、既設摘み59が反時計回りに回転、すなわち、左側へ倒すことにより扉33からデッドボルト61が進出され、ストライク63に挿入される。また、右勝手の場合の解錠状態から施錠状態への操作は、既設摘み59が時計回りに回転、すなわち、右側へ倒すことにより扉33からデッドボルト61が進出され、ストライク63に挿入される。本実施形態では、施錠から解錠、解錠から施錠の操作は、既設摘み59が90°回転されることにより行われる。
【0033】
図5図2に示した要部の拡大分解側断面図、図6図2に示した要部の拡大分解斜視図である。
サムターンコア29は、軸線方向へは移動されないようにして、装置本体13に回転自在に支持される。サムターンコア29には図示しないギアが設けられ、モーターに噛合される。サムターンコア29は、モーターで回転されることで、連結軸43を介して既設錠装置35へ施解錠の動力を入力する。サムターンコア29は、連結穴49と反対側の他端側が大径部65として形成される。大径部65には大径穴67と小径穴69とが他端側から順に形成される。サムターンコア29には、小径穴69の奥側に、小径穴69の内側に収まる大きさの正方形状の切替穴71が形成される。大径穴67、小径穴69、切替穴71、連結穴49は、同一中心で連通されている。
【0034】
サムターンベース25は、新設サムターン17の新設摘み19と一体となって同軸で回転される。なお、本実施形態では、新設摘み19にボタン73の設けられる防犯形の新設サムターン17が用いられる。勿論、新設サムターン17は、ボタン73の設けられていない普通のタイプであってもよい。サムターンベース25は、新設サムターン17と反対側の一端側に、大径穴67に嵌る円形状のガイドフランジ75が形成される。ガイドフランジ75からは小径穴69に嵌る円柱形状の凸部77が形成される。凸部77には正方形状の連結凹部79が形成されている。ガイドフランジ75、凸部77、連結凹部79は、同一中心で形成される。また、サムターンベース25は、軸線方向へは移動されないようにして、サムターンコア29と同一中心となるように、装置本体13に回転自在に支持される。すなわち、サムターンベース25は、図2に示すように、ガイドフランジ75が大径穴67に嵌り、凸部77が小径穴69に嵌った状態で、装置本体13に組み付けられている。
【0035】
切替軸27は、一端側に、サムターンコア29の切替穴71に内接して挿入される円形状のガイド軸状部81が形成される。ガイド軸状部81の端側には正方形状の小径四角柱部83が形成され、小径四角柱部83は切替穴71に嵌合される。小径四角柱部83の他端側には正方形状の大径四角柱部85が形成され、大径四角柱部85は切替穴71よりも大きく、連結凹部79に嵌る大きさに形成されている。つまり、切替軸27は、図2に示すように、小径四角柱部83がサムターンコア29の切替穴71に嵌り、大径四角柱部85がサムターンベース25の連結凹部79に嵌ることで、サムターンコア29とサムターンベース25とを相対回転不能に連結することが可能となる。
【0036】
ここで、サムターンベース25の連結凹部79は、切替軸27を奥側へ後退可能とさせる十分な深さで形成されている。連結凹部79に後退された切替軸27は、小径四角柱部83が切替穴71から退出され、ガイド軸状部81のみが切替穴71に残った状態となる。切替軸27が後退されたこの状態において、サムターンコア29とサムターンベース25との連結は解除され、相互に独立回転可能となる。連結凹部79の底と切替軸27との間には圧縮バネ87が設けられ、切替軸27は圧縮バネ87によってサムターンコア29側へ押圧されている。切替軸27は、異なる回転位置のそれぞれでサムターンコア29とサムターンベース25を相対回転不能に連結するとともに、軸線方向にスライドされてその連結を解除する。この連結の解除と再連結とによって、サムターンコア29は、サムターンベース25との相対回転角が切り替え可能となる。この切替は、90°の回転範囲で行われ、一方側の回転端で左勝手に設定され、他方側の回転端で右勝手に設定される。
【0037】
サムターンコア29の切替穴71には、例えば角柱状に形成される工具89が相対回転不能に挿入される。工具89は、挿入方向の押圧によって、切替軸27を軸線方向にスライドさせ、小径四角柱部83を切替穴71から退出可能としている。これら、サムターンコア29、切替軸27、サムターンベース25は、装置本体13の内方に配置され、装置本体13がカバー15によって覆われることで、外からは見えない隠された状態となる。
【0038】
裏蓋21には、左勝手設定と右勝手設定の回転方向を表す標示(図示せず)が設けられている。電気錠ユニット11は、扉33に取り付けられる前に、裏蓋21に表出する切替穴71へ工具89が挿入され、左右勝手の切り替え操作のために工具89が回転される。その際、左右勝手の設定方向が、工具89の回転方向として標示によって把握可能となる。これにより、標示を確認しながら、切り替え設定を容易、かつ、確実に行うことができるようになされている。
【0039】
次に、上記構成を有する錠装置の機能設定方法として左右勝手の設定方法を説明する。
図7図2に示した錠装置の切り替え操作を説明する作用図、図8は切り替え時のサムターンコア29の動作過程を(a)(b)(c)で表した作用図である。
電気錠ユニット11は、扉33に取り付ける前に、図7に示すように、切替穴71に工具89を挿入して切替軸27を圧縮バネ87の付勢力に抗してスライドすることにより、サムターンコア29とサムターンベース25との連結を解除する。但し、連結の解除された後、ガイド軸状部81のみは切替穴71に残る。これにより、小径四角柱部83が切替穴71へ進入するときの再連結がスムースとなる。連結を解除した後、工具89を回転操作することでサムターンコア29のみが回転し、切り替え位置に回転となる。
【0040】
図8(a)に示すように、既設摘み59(図4参照)が縦方向から左に倒されて施錠となる左勝手の場合、垂直上方向を0°とし時計回り方向の角度の場合に、検出杆51が225°の回転角の位置となっている。これを既設摘み59が縦方向から右に倒されて施錠となる右勝手に設定を変更する場合、図8(b)に示すように、連結を解除した状態で、工具89を反時計回りに回転する。図8(c)に示すように、工具89の回転位置が135°の回転角となったら、工具89をサムターンコア29から抜く。すると、圧縮バネ87の付勢力によって切替軸27が再びサムターンコア側へ移動され、90°位相が変更された相対回転角で、小径四角柱部83が切替穴71に挿入される。これにより、左勝手用から右勝手用への設定の変更が完了する。なお、以上の例は左勝手用から右勝手用への設定変更を説明したが、右勝手用から左勝手用への設定変更の場合も逆の動作によって同様に変更が完了する。
【0041】
次に、上記構成を有する錠装置の作用を説明する。
電気錠ユニット11では、サムターンコア29の切替穴71に工具89が挿入され、工具89によって奥側の切替軸27がスライドされると、サムターンコア29とサムターンベース25との連結が解除される。連結が解除された状態で、工具89が回転されると、サムターンコア29のみが、所望の左右勝手において検知体53が検知手段55によって検知されることとなる回転位置へ回転される。所望の回転位置へサムターンコア29が回転された後、工具89が切替穴71から抜かれると、切替軸27によってサムターンコア29とサムターンベース25とが再連結される。この際の再連結位置は、切り替え連結前のサムターンベース25と異なる相対角度に設定される。すなわち、切り替え前が左勝手であれば、切り替え後は右勝手となり、切り替え前が右勝手であれば、切り替え後は左勝手となる。これにより、サムターンコア29の左右勝手の切り替え設定が完了される。
【0042】
電気錠ユニット11では、操作部材が既設サムターン37であり、既設サムターン37が抜去されて開口されるダルマ穴41に連結軸43が相対回転不能に挿入され、連結軸43にサムターンコア29が相対回転不能に連結される。既設サムターン37が抜去されると、既設サムターン軸(図示せず)の挿入されていたダルマ穴41が開口される。このダルマ穴41に、既設サムターン軸と一端が同形状に形成される連結軸43が挿入される。連結軸43は、他端がサムターンコア29の連結穴49に相対回転不能に挿入される。これにより、操作部材とサムターンコア29とが連結軸43によって連結される。なお、連結穴49の奥側には切替穴71が同一中心で配置される。操作部材とサムターンコア29とが連結軸43によって同軸に連結され、既設錠装置35に操作力が確実に入力でき、かつ、操作力伝達構造を軸線方向にコンパクトにできる。
【0043】
また、電気錠ユニット11は、装置本体13がカバー15に覆われている。カバー15に覆われずに表出する裏蓋21は、扉面91に対面されて取り付けられる。この裏蓋21に、サムターンコア29の切替穴71が表出するよう配置されている。装置本体13は、裏蓋以外がカバー15によって覆われ、扉面91に取り付けられることで、この裏蓋21が扉面91によって覆われる。これにより、扉33に取り付けられた装置本体13は、切替穴71へ工具89を挿入できなくなる。その結果、切り替え設定後、電気錠ユニット11が扉33に取り付けられると、裏蓋21に設けられた切替穴71が隠れ、設定の変更が行えなくなる。
【0044】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
図9は実施形態の変形例に係る錠装置を既設錠装置35の操作部材とともに表した斜視図である。
この変形例に係る錠装置である電気錠ユニット93は、操作部材が既設サムターン37であり、サムターンコア(図示せず)が既設サムターン37に被せられて連結される。既設錠装置35の操作部材である既設サムターン37が扉面91から突出して設けられている。サムターンコアには、この既設サムターン37に同軸で相対回転不能に被せられる被着穴(図示せず)が形成される。被着穴は、上記の連結穴49に代わるものとなる。電気錠ユニット93が扉面91に取り付けられると、サムターンコアは、被着穴が既設摘み59に同軸に被せられ、相対回転不能に連結される。これにより、既設サムターン37を取り外さずに、電気錠ユニット93を簡便に後付けできる。
【0045】
なお、切替軸27の小径四角柱部83及び切替穴71の軸線直交断面形状は、上記した正方形に限らず、その他の形状であってもよい。上記した切替角度が90°の場合、90°の位置で嵌まる形状、例えば十字形状、八角星形形状、歯車形状とすることもできる。
【0046】
また、切替角度が上記以外の例えば、180°の場合、これらの軸線直交断面形状は長方形とすることができる。また、切替角度が120°の場合、これらの軸線直交断面形状は三角形とすることができる。更に、切替角度が60°の場合、これらの軸線直交断面形状は正六角形とすることができる。
【0047】
また、工具89の形状は、切替軸27を後退させることができて、そのままサムターンコア29を回転させることが可能な形状であれは、対角線上にあてて挿入可能となるマイナスドライバーでも使用が可能となる。また、切替穴71が六角穴であれば、六角レンチなどの使用も可能となる。
【0048】
従って、本実施形態に係る錠装置及び錠装置の機能設定方法によれば、左右勝手の設定が簡単に変えられ、変えられた設定は簡単には変更できなくなる。
【0049】
なお、上述した実施の形態では、扉の左右勝手を切り替える例として説明したが、本発明の錠装置では、2つの機能設定を切り替えることを可能としており、上記した左勝手と右勝手とを切り替える例の他に、電動と手動との切り替えや、自動施錠と施解錠繰り返しなどの錠の機能としてのモードの切り替えを行うことが可能であり、すなわち第1の機能設定と第2の機能設定の2つの機能の設定を、任意に、且つ簡単確実に切り替えられ、そしてその設定を容易に変更できないようになっている。また、本発明の錠装置は、このような2つの機能の設定の切り替えに限らず、3つの機能の設定など複数の機能設定を切り替え可能である。例えば3つの機能を設定可能な構成としては、切替軸27の形状及びサムターンコア29の切替穴71の形状を3か所の回転位置で互いに連結する切替角度としてそれぞれを形成すれば良く、複数種類の動作モードや機能の切り替えなど、簡単に設定の変更が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
11…錠装置(電気錠ユニット)
13…装置本体
15…カバー
17…新設サムターン
21…裏蓋
25…サムターンベース
27…切替軸
29…サムターンコア
33…扉
35…既設錠装置
37…操作部材(既設サムターン)
39…操作部材(ダルマ軸)
41…ダルマ穴
43…連結軸
51…検出杆
53…検知体(マグネット)
55…検知手段(リードスイッチ)
71…切替穴
89…工具
91…扉面
図1
図2
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図9