特許第6062677号(P6062677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062677
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】管
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   E21D9/04 F
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-165071(P2012-165071)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-25231(P2014-25231A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】岩永 茂治
(72)【発明者】
【氏名】小田原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】塩川 裕之
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−248655(JP,A)
【文献】 特開昭48−046129(JP,A)
【文献】 特開平10−331570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00− 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設置される管であって、4つの外側面が互いに直角を成す断面四角形状の管本体と、管本体の互いに平行に対向する一対の外側面のうちの他方の外側面に管本体の延長方向に沿って管路が延長するように設けられて4つの外側面が互いに直角を成す断面四角形状の一対の中空管と、管本体の互いに平行に対向する一対の外側面のうちの一方の外側面に管本体の延長方向に沿って延長するように設けられてガイド手段を構成する一対の長尺部材とを備え、
長尺部材は、一方の長辺縁側の面と他方の長辺縁側の面とが直角を成す断面L字状に形成されて一方の長辺縁側の面が管本体の一方の外側面に固定されて他方の長辺縁側の面と管本体の一方の外側面とが直角を成すように構成され
中空管は、一つの外側面が管本体の他方の外側面に固定され、
各長尺部材は、他方の長辺縁側の面同士が互いに一定の間隔H1を隔てて向かい合うように設けられ、
各中空管は、管本体の他方の外側面の長辺縁に近い位置の外側面同士が間隔H1よりも小さい一定の間隔H2を隔てて対向し、かつ、管本体の他方の外側面の長辺縁と長辺縁との間の中心に近い位置の外側面同士が一定の間隔H3を隔てて対向するように設けられ、
間隔H1は、管本体の一方の外側面の各長辺縁間の長さ以下で、かつ、各長辺縁間の長さの2/3以上に設定され、かつ、間隔H3は、管本体の他方の外側面の長辺縁間の長さの1/3以上に設定され、
各中空管は、管本体の他方の外側面の長辺縁に近い位置の外側面を形成する管壁に、中空管の内側から中空管の外部に注入材を注入するための注入口を備えたことを特徴とする管。
【請求項2】
各中空管は、管本体の他方の外側面の長辺縁と長辺縁との間の中心に近い位置の外側面を形成する管壁に、中空管の内側から中空管の外部に注入材を注入するための注入口を備えたことを特徴とする請求項1に記載の管
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に設置される断面四角形状の管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断面四角状の管を地中に設置するための管設置装置であって、管の先頭側の内側に管の推進方向と直交する回転中心線を回転中心として回転する回転掘削体を備えた管設置装置が知られており、さらに、管の先端に管の外径寸法よりも大きい刃管が設けられ、刃管によって余掘りが行われる構成の管設置装置も知られている(例えば特許文献1;2等参照)。
また、管の先端が硬質地盤に衝突して進行しなくなることを防止するために、管の先頭開口の前方に上記回転掘削体を設置するとともに、当該回転掘削体の回転中心線を、管の互いに平行に対向する一方の一対の外側面と平行でかつ管の推進方向と直交する面と直交以外の状態で交差する状態に設定して、回転掘削体を管の互いに平行に対向する他方の一対の外側面よりも外側に移動させることが可能な掘削機械揺動駆動装置を備え、管の進行に先立って管の前方において回転掘削体を揺動させて管の断面積よりも幅の広い断面積を掘削(余掘り)できるようにして、地山が硬質地盤である場合でも管を地中においてスムーズに推進させることができるようにした管設置装置が本出願人により出願されている(特願2011−244272号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−52528号公報
【特許文献2】特開2012−117275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1;2に開示された管設置装置の刃管によって余掘りが行われる場合、又は、上述した揺動可能な回転掘削体を有した管設置装置の回転掘削体によって余掘りが行われる場合において、先に地中に設置された管の横に並ぶように次の管を地中に設置すると、先に地中に設置された管と当該先に地中に設置された管の横に並ぶように地中に設置された次の管との間に間隔、即ち、地中間隙が形成されることになり、この場合、管の内側から当該地中間隙に薬液等の注入材を注入して止水処理部を形成する。
しかしながら、例えば、掘削始点となった出発側の空洞部内に掘削機械等を引き戻して回収する場合、管内に地下水が入り込まないように、管内をコンクリートで埋める場合がある。この場合、管内から管の外側の地盤に注入材を注入することができなくなるといった課題があった。
本発明は、管内にコンクリートが埋められた後であっても、管の外側の地盤に注入材を注入することができるようにした管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る管によれば、地中に設置される管であって、4つの外側面が互いに直角を成す断面四角形状の管本体と、管本体の互いに平行に対向する一対の外側面のうちの他方の外側面に管本体の延長方向に沿って管路が延長するように設けられて4つの外側面が互いに直角を成す断面四角形状の一対の中空管と、管本体の互いに平行に対向する一対の外側面のうちの一方の外側面に管本体の延長方向に沿って延長するように設けられてガイド手段を構成する一対の長尺部材とを備え、長尺部材は、一方の長辺縁側の面と他方の長辺縁側の面とが直角を成す断面L字状に形成されて一方の長辺縁側の面が管本体の一方の外側面に固定されて他方の長辺縁側の面と管本体の一方の外側面とが直角を成すように構成され中空管は、一つの外側面が管本体の他方の外側面に固定され、各長尺部材は、他方の長辺縁側の面同士が互いに一定の間隔H1を隔てて向かい合うように設けられ、各中空管は、管本体の他方の外側面の長辺縁に近い位置の外側面同士が間隔H1よりも小さい一定の間隔H2を隔てて対向し、かつ、管本体の他方の外側面の長辺縁と長辺縁との間の中心に近い位置の外側面同士が一定の間隔H3を隔てて対向するように設けられ、間隔H1は、管本体の一方の外側面の各長辺縁間の長さ以下で、かつ、各長辺縁間の長さの2/3以上に設定され、かつ、間隔H3は、管本体の他方の外側面の長辺縁間の長さの1/3以上に設定され、各中空管は、管本体の他方の外側面の長辺縁に近い位置の外側面を形成する管壁に、中空管の内側から中空管の外部に注入材を注入するための注入口を備えたので、管本体内にコンクリートが埋められた後であっても、中空管を注入管として利用して管の外側の地盤に注入材を注入することができるようになる。即ち、先に地中に設置された管と隣り合うように次の管を地中に設置する場合において、地中での次の管の推進方向が一対の中空管及び一対の長尺部材によって的確にガイドされて、一対の中空管と先の管における管本体の一方の外側面と次の管における管本体の他方の外側面とで囲まれた密封性の高い地中領域を形成できるとともに、中空管における管本体の他方の外側面の長辺縁に近い位置の外側面と、互いに隣り合う先後の管本体の互いに対向する外側面と、の間で囲まれた地中領域に注入材を充填して止水処理部を形成できるようになる。
また、各中空管は、管本体の他方の外側面の長辺縁と長辺縁との間の中心に近い位置の外側面を形成する管壁に、中空管の内側から中空管の外部に注入材を注入するための注入口を備えたので、一対の中空管と先の管における管本体の一方の外側面と次の管における管本体の他方の外側面とで囲まれた密封性の高い地中領域に注入材を注入して止水処理部を形成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】先の管のガイド手段と次の管の衝突防止手段との関係を示す断面図。
図2】管の設置手順を示す図。
図3】先頭管及び後続管による支保工構築方法を示す斜視図。
図4】管とガイド手段と衝突防止手段とを分解して示す分解斜視図。
図5】ガイド手段及び衝突防止手段を備えた管を示す斜視図。
図6】管設置装置の横断面図。
図7】管設置装置の縦断面図。
図8】揺動基板の後面側を後方側から見た図(図7のA−A断面相当図)。
図9】先頭管の内部構造を示す斜視図。
図10】回転掘削体の揺動状態を示す図。
図11】止水処理部の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
後述する管設置装置1により地中10に設置される実施形態1の管2は、図1乃至図5に示すように、断面四角形状の管本体2Aと、管本体2Aの一つの外側面2bに管本体2Aの延長方向に沿って管路が延長するように一定の間隔を隔てて設けられた一対の中空管101;101と、管本体2Aの一つの外側面2bと対向する外側面2aに設けられたガイド手段120とを備えた構成である。
【0008】
管本体2Aは、管が円弧を描くように曲がって延長するように形成された曲管(管の中心線(管の延長方向と直交する断面の中心点を管の延長方向に沿って連続して繋いだ線)が曲線である管)、あるいは、管が真っ直ぐに延長する直管(管の中心線が直線である管)であって、管の中心線(中心軸)と直交する面で管を切断した場合の断面形状が四角状の管により形成される。
管本体2としては例えば鋼製の管が用いられる。管本体2の大きさは、例えば、管本体2Aが断面形状長方形の管である場合、管の長さ(管の中心軸に沿った方向の長さ)が1500mm、管の左右幅(断面長方形の長辺の長さ)が1240mm、管の上下幅(断面長方形の短辺の長さ)が690mm、管の肉厚が16mmである。
【0009】
中空管101としては、例えば、外径寸法75mm×75mm、肉厚16mmの断面正方形の中空管101を用い、当該中空管101の一つの外側面102を管本体2Aの他方の外側面2bに接触させた状態で当該中空管101と管本体2Aとを溶接等の固定手段により固定することで、中空管101の中空管路で管路を形成した。尚、中空管101としては、例えば中空鋼管を用いる。
【0010】
ガイド手段120は例えばレール形成体により構成される。当該レール形成体としては、例えば、断面L字状の鋼板等の長尺部材121が用いられる。当該断面L字状の長尺部材121は、長尺板の一方の長辺縁側と他方の長辺縁側とが当該長尺板の一方の短辺縁の中央位置と他方の短辺縁の中央位置とを結ぶ直線の折曲線を介して互いに近づく方向に折曲されて一方の長辺縁側の面122と他方の長辺縁側の面123とが直角を成すように構成される。そして、一方の長辺縁側の面122を管本体2Aの一方の外側面2aに接触させた状態で当該長尺部材121と管本体2Aとを溶接等の固定手段により固定することで、長尺部材121の他方の長辺側の面123と管本体2Aの一方の外側面2aとが直角を成すように構成される。長尺部材121は、管2の中心線と平行に延長するように管2の一方の外側面2aに固定される。
当該長尺部材121の長辺縁側の面122;123の短手方向の長さは、管路形成体としての中空管101の外径寸法と同じ寸法か、あるいは、中空管101の外径寸法よりも短い寸法に形成される。
【0011】
図4図5に示すように、中空管101、及び、ガイド手段120を構成する長尺部材121は、例えば、管本体2Aの外側面2a;2bの長手方向(即ち、管本体2Aの外側面2a;2bにおける管本体2Aの延長方向)の全長に渡って延長するように設けられる。つまり、中空管101は、管路が管本体2Aの他方の外側面2bにおける管本体2Aの延長方向の全長に渡って長辺縁2gに沿って延長するように当該長辺縁2gと一定の間隔を隔てて設けられる。また、ガイド手段120を構成する長尺部材121は、管本体2Aの一方の外側面2aにおける管本体2Aの延長方向の全長に渡って長辺縁2fに沿って延長するように当該長辺縁2fと一定の間隔を隔てて設けられる。
【0012】
長尺部材121が、管本体2Aの一方の外側面2aにおける両方の上下の長辺縁2f;2fに近い位置にそれぞれ1つずつ設けられたことにより、当該一対の長尺部材121;121によってガイド手段120が構成される。
一対の各長尺部材121;121は、例えば、各長尺部材121の他方の長辺側の面123;123同士が互いに一定の間隔H1を隔てて向かい合い、各長尺部材121の一方の長辺側の面122;122が互いに離れるように管本体2Aの一方の外側面2aの各長辺縁2f;2f側に延長する状態に、当該一方の長辺側の面122;122が管本体2Aの一方の外側面2aに固定されている。
【0013】
中空管101が、管本体2Aの他方の外側面2bにおける両方の上下の長辺縁2g;2gに近い位置にそれぞれ1つずつ設けられ、各中空管101が一定の間隔を隔てて設けられる。
一対の各中空管101は、例えば、各中空管101における管本体2Aの他方の外側面2bの長辺縁2g;2gに近い位置の外側面103;103同士が一定の間隔H2を隔てて対向し、かつ、各中空管101における管本体2Aの他方の外側面2bの長辺縁2gと長辺縁2gとの間の中心に近い位置の外側面104;104同士が一定の間隔H3を隔てて対向するように、一の外側面102が管本体2Aの他方の外側面2bに固定されている。中空管101が固定された管本体2Aは、中空管101の一の外側面102と平行に対向する外側面106が、先に地中10に設置された管本体2Aの外側面2aに接触又は近接した状態で管設置装置1により地中10に設置される。
管本体2Aの他方の外側面2bに固定された各中空管101;101の互いに向かい合って対向する前記外側面104;104を形成する各管壁には、当該管壁を貫通して中空管101の内外に連通する孔部に中空管101の外部から中空管101の内部への物の流入を防止する逆止弁が取付けられて構成された逆止弁付きの注入口105を備え、当該逆止弁付きの注入口105を介して中空管101の内側から前述した地中領域150に注入材200を注入することが可能な構成となっている。
尚、逆止弁付きの注入口105は、1つの管本体2Aに設けられる中空管101に1つ、又は、1つの管本体2Aに設けられる中空管101の管の延長方向に沿って間隔を隔てて複数設けられている。
また、各中空管101における管2の他方の外側面2bの長辺縁2g;2gに近い位置の外側面103;103を形成する各管壁に上述した逆止弁付きの注入口を設ければ、管2の外周囲の地中10に薬液やセメント系注入材を注入する裏込処理が可能となる。
【0014】
前記間隔H1;H2;H3の関係は、H1>H2>H3であり、例えば、H1は、管本体2Aの一方の外側面2aの各長辺縁2f;2f間の長さ以下で、かつ、各長辺縁2f;2f間の長さの2/3以上に設定され、かつ、H3は、管本体2Aの他方の外側面2bの長辺縁2g;2g間の長さの1/3以上に設定される(図1参照)。
具体的には、H2はH1よりも数cm程度小さく設定され、各中空管101における管本体2Aの他方の外側面2bの長辺縁2g;2gに近い位置の外側面103;103が、それぞれ、各長尺部材121の他方の長辺側の面123;123に接触可能に構成されることで、地中10での次の管2の推進方向が一対の中空管101;101及び一対の長尺部材121;121によって的確にガイドされることになる。
【0015】
実施形態1では、管2を地中10に設置するために後述する揺動可能な回転掘削体46を有した管設置装置1(図6乃至図10参照)を用い、図1乃至図3に示すように、管2を地中10に設置した後、当該地中10に設置された先の管2の横に並ぶように次の管2を地中10に設置する場合において、先に地中10に設置された管2の管本体2Aの互いに対向する一対の外側面2a;2bのうちの一方の外側面2aの横に並ぶように地中10に設置される次の管2の管本体2Aの他方の外側面2bに、一対の中空管101;101が設けられており、間隔を隔てて互いに隣り合うように地中10に設置されることになる前記先の管2の管本体2Aの一方の外側面2aと前記次の管2の管本体2Aの他方の外側面2bとの間に形成される地中領域150に、先の管2における管本体2Aの一方の外側面2aと次の管2における管本体2Aの他方の外側面2bとの間の止水処理のための薬液やセメント系注入材等の注入材200を充填して止水処理部を形成する際に、中空管101及び中空管101に設けられた逆止弁付きの注入口105を介して当該地中領域150に注入材200(図11参照)を注入することが可能となる。
また、次の管2の管本体2Aの他方の外側面2bに設けられた一対の中空管101;101の外側面106;106と先に地中10に設置された管2の管本体2Aの外側面2aとを接触又は近接させて次の管2を地中10に設置することにより、一対の中空管101;101と先の管2における管本体2Aの一方の外側面2aと次の管2における管本体2Aの他方の外側面2bとで囲まれた密封性の高い地中領域150を形成でき、この密封性の高い地中領域150に注入材200を充填して止水処理部を形成できる。この場合、密封性の高い地中領域150に注入された注入材200が地中領域150外に流出することが無いので確実に止水でき、さらに止水処理部を形成するための注入材の注入量を少なくできて、施工コストを低減できるようになる。
また、地中10に設置された先の管2の管本体2Aの一対の長尺部材121;121が設けられている外側面2aの横に並ぶように次の管2が地中10に設置される場合において、次の管2の管本体2Aの外側面2bに設けられた中空管101;101が先に地中10に設置されている管2の管本体2Aの外側面2aに設けられた一対の長尺部材121;121でガイドされる。即ち、一対の長尺部材121;121が各中空管101;101の外側面103;103に接触して各中空管101;101を挟むようにして各中空管101;101をガイドするので、当該次の管2が地中10に設置される際に当該次の管2の進行方向を的確にガイドすることができる。
さらに、一対の長尺部材121;121を備えることで、一対の中空管101;101と一対の長尺部材121;121と先の管2における管本体2Aの一方の外側面2aと次の管2における管本体2Aの他方の外側面2bとで囲まれたさらに密封性の高い地中領域150を形成できるので、地中領域150に注入された注入材200が地中領域150外に流出する可能性をさらに少なくでき、施工コストをより低減できるようになる。
尚、一対の中空管101;101は、揺動可能な回転掘削体46を有した管設置装置1を用いて次の管2を地中10に設置する場合において、回転掘削体46を揺動させ当該回転掘削体46が管2の前方において当該管2における管本体2Aの一対の外側面2a;2bより外側に移動した場合(正確には、当該回転掘削体46が当該管2における管本体2Aの一対の外側面2a;2bの進行予定面よりも管本体2Aの外側に移動した場合)に当該回転掘削体46が先に地中10に設置された管2における管本体2Aの一方の外側面2aに衝突しないように、先に地中10に設置された管2の管本体2Aの一方の外側面2aと当該先の管2の横に並ぶように地中10に設置される次の管2の管本体2Aの他方の外側面2bとの間に必要な間隔を設定するための衝突防止手段としても機能する。
【0016】
図3に示すように、実施形態1の管設置装置1及び管設置方法によって地中10に構築される支保工11は、先頭に位置される管2(以下、先頭管という)と後続の複数の管2(以下、後続管という)とにより形成される。即ち、支保工11は、先頭に位置される管2である先頭管6と先頭管6の後に続くように設けられる後続の複数の管2である後続管7とにより構築される。
支保工11としては、複数の曲管が順次連結されて地中10に設置されることによって円弧を描くように曲がって延長する支保工11が地中10に構築されたり、複数の直管が順次連結されて地中10に設置されることによって真っ直ぐに延長する支保工11が地中10に構築される。
支保工11としては、地中10に形成された図外の一方の空洞部と他方の空洞部との間に跨るように複数の管2を連続させて構築される支保工11や、地中10に形成された図外の空洞部から出発して当該空洞部に戻るように複数の管2を連続させて構築される支保工11、地中10に形成された図外の空洞部から出発して地中10で止まるように構築される支保工11等がある。
【0017】
例えば、図2(a)に示すように、地中10に形成された1つの空洞部から地中10に管2(先頭管6及び複数の後続管7)を設置して第1(最初)の支保工11Aを構築する。その後、第1の支保工11Aを形成した管2(先頭管6及び複数の後続管7)の横に並ぶように次の管2(先頭管6及び複数の後続管7)を地中10に設置して図2(b)に示すように第2の支保工11Bを構築する。尚、図2(a)の点線は、管設置装置1を用いて回転掘削体46を揺動させ当該回転掘削体46が管2の前方において当該管2の一対の外側面2a;2bより外側に移動した場合の余掘り範囲を示す。
第2の支保工11Bを構築する際、既に地中10に構築されている第1の支保工11の管2の管本体2Aの一方の外側面2aに設けられたガイド手段120を形成する断面L字状の各長尺部材121;121の間に、1つの空洞部から地中10に入れようとする第2の支保工11を構築するための先頭管6の管本体2Aの他方の外側面2bに設けられた各中空管101;101を挿入してかつ各中空管101;101の外側面106;106を第1の支保工11の管2の管本体2Aの一方の外側面2aに接触又は近接させるように当該先頭管6の位置決めを行ってから当該管2を地中10に設置し、さらに、当該先頭管6の内部空間と後続管7の内部空間とが連通するように当該先頭管6に後方に後続管7を順次継ぎ足すとともに前記各中空管101;101の内部空間と後続の各中空管101;101の内部空間とが連通するように前記各中空管101;101の後方に後続の各中空管101;101を継ぎ足していって上記と同様に地中10に設置して、第2の支保工11Bを構築することによって、第1の支保工11Aと第2の支保工11Bとの間に、中空管101;101と一対の長尺部材121;121と第1の支保工11Aを構築した一方の各管2の管本体2Aの外側面2aと第2の支保工11Bを構築した他方の各管2の管本体2Aの外側面2bとで囲まれた密封性の高い地中領域150が形成される。
同様に、図2(c)に示すように、第2の支保工11Bを形成した管2(先頭管6及び複数の後続管7)の横に並ぶように次の管2(先頭管6及び複数の後続管7)を地中10に設置して第3の支保工11Cを構築することにより、第2の支保工11Bと第3の支保工11Cとの間に、中空管101;101と一対の長尺部材121;121と第2の支保工11Bを構築した一方の各管2の管本体2Aの外側面2aと第3の支保工11Cを構築した他方の各管2の管本体2Aの外側面2bとで囲まれた地中領域150が形成される。
尚、実施形態1では、最初に地中に構築される支保工11Aを形成する管2としては、管本体2Aの一方の外側面2aにガイド手段120を備えるが、管本体2Aの他方の外側面2bには一対の中空管101;101を備えない構成のものを用いた(図1乃至図3参照)。
実施形態1では、一対の中空管101;101とガイド手段120とを設けたことにより、地中10において互いに隣り合う一方の支保工11と他方の支保工11との間に、各中空管101;101の外側面106;106と支保工11の管2の管本体2Aの一方の外側面2aとが接触又は近接した密封性の高い地中領域150が形成され、そして、中空管101及び中空管101に設けられた逆止弁付きの注入口105を介して当該地中領域150に注入材200(図11参照)を注入することによって、地中領域150に注入された注入材200が地中領域150外に流出する可能性が低くなる。従って、地中10において互いに隣り合う一方の支保工11と他方の支保工11との間に止水性能の高い止水処理部を形成するための止水処理を確実にできて、かつ、注入材200の注入量を少なくでき、施工コストを低減できるようになる。
【0018】
揺動可能な回転掘削体46を有した管設置装置1の一例を説明する。
図6に示すように、管設置装置1は、管2と、掘削装置3と、制御装置65とを備える。尚、以下、図6における上側を管2や管設置装置1の先頭あるいは前側と定義し、図6における下側を管2や管設置装置1の後側と定義し、図6における左右側を管2や管設置装置1の左右側と定義し、図6の紙面と直交する方向の上下側を管2や管設置装置1の上下側と定義して説明する。
【0019】
図6に示すように、掘削装置3は、掘削機械26と、掘削機械揺動駆動装置25と、推進装置70と、水供給装置75と、排泥装置76と、を備える。
掘削機械揺動駆動装置25は、揺動基板30と、揺動基板30の案内部材31と、揺動基板駆動手段32とを備える。
【0020】
管設置装置1は、筒状の案内部材31の筒の中心線と先頭管6の管の中心線とが一致するように案内部材31が先頭管6の先頭開口6t側の内側に設置されて案内部材31の筒の外周面33と先頭管6の内周面6xとの間の水密性が保たれ、かつ、揺動基板30が先頭管6の互いに平行に対向する他方の一対の壁面(例えば先頭管6の左右の内壁面6a;6b)間の中心を回転中心として前後に揺動可能なように案内部材31に取付けられて揺動基板30の外周面39と案内部材31の筒の内周面35との間の水密性が保たれた構成とされる。そして、複数の掘削ビット(掘削刃)52を備えた掘削機械26の回転掘削体46が先頭管6の先頭開口6tよりも前方に位置されて回転掘削体46を支持する支柱42が揺動基板30に支持された構成を備え、先頭管6の前方の地山99を回転掘削体46で掘削する際に、揺動基板駆動手段32が揺動基板30における一対の側壁30a;30b側の後面を押圧及び引き戻して前後に移動させることで、回転掘削体46の回転中心線Lが、先頭管6の推進方向と直交する面及び先頭管6の互いに平行に対向する一方の一対の壁面(例えば先頭管6の上下の内壁面6c;6d)と平行な第1の状態、及び、先頭管6の互いに平行に対向する上記一方の一対の壁面と平行で、かつ、先頭管6の推進方向と直交する面と直交以外の状態で交差する第2の状態に設定される。
即ち、管設置装置1は、先頭管6の前方において回転掘削体46を先頭管6の左右方向に揺動させるための掘削機械揺動駆動装置25を備えるので、先頭管6の前方の地山99を回転掘削体46で掘削する際に揺動基板駆動手段32により揺動基板30を駆動して回転掘削体46を左右方向に揺動させることができ、回転掘削体46が左右方向に揺動しない場合と比べて、掘削可能な左右幅を大きくできる。即ち、先頭管6の進行に先立って先頭管6の前方において先頭管6の左右幅間隔(先頭管6の他方の一対の壁面と直交する方向である管の幅間隔)よりも幅の広い左右幅間隔で地山99を掘削でき、先頭管6の前方において先頭管6の左右幅方向での余堀が可能となるので、先頭管6が推進する際に先頭管6の先頭開口6tが地山99の硬質層に衝突する可能性が少なくなり、先頭管6をスムーズに推進させることができるようになる。
【0021】
先頭管6の先頭開口縁6zは、地山99に食い込みやすいように、先細の傾斜面に形成される。
案内部材31は、断面四角形状の筒により形成され、当該案内部材31の筒の中心線と先頭管6の管の中心線とが同じとなるように先頭管6の先端側の内側に設置される。案内部材31は、案内部材31の筒体の中心線と直交する面で案内部材31を切断した場合の断面の外周形状が先頭管6の中心線と直交する面で先頭管6を切断した場合の断面の内周形状と同じで、かつ、揺動案内部材31の断面の外周寸法が先頭管6の断面の内周寸法とほぼ同じ寸法に形成される。
案内部材31の筒の外周面33には外周面33を一周するようにゴムパッキン等の水密性能維持部材34が設けられており、案内部材31の筒体の外周面33と先頭管6の内周面6xとが数mm程度(例えば5mm)の僅かな隙間を介して対向した状態で、かつ、水密性能維持部材34と先頭管6の内周面6xとが接触して、案内部材31の筒の外周面33と先頭管6の内周面6xとの間の水密性が維持されるように、案内部材31が先頭管6の先頭開口6t側の内側に設置される。
案内部材31の内周面35の左右の側壁面35a;35bは、先頭管6の前後方向に沿って前後の中間部が凹状に一定の曲率で湾曲する湾曲面に形成される。
【0022】
揺動基板30は、外周形状が案内部材31の内周形状に合致した四角形状の平板により形成される。この揺動基板30を形成する平板は、前後方向に沿った板厚を有し、平板の左右の側壁30a;30bは、案内部材31の左右の側壁面35a;35bの湾曲面と平行に対向する左右の側壁面35a;35bの湾曲面と同じ曲率の湾曲面に形成される。揺動基板30を形成する平板の上下の端面における左右間の中央位置には例えば円柱状の突起37;37(図7図9参照)が設けられる。この突起37;37が案内部材31の筒の上下の内面に形成された円孔38;38内に嵌合されたことで、この突起37;37が揺動基板30の回転中心軸として機能し、この回転中心軸を回転中心として揺動基板30の左右側が前後方向に揺動可能に構成される。
揺動基板30の平板の外周面39には外周面39を一周するようにゴムパッキン等の水密性能維持部材12が設けられ、揺動基板30の平板の外周面39と案内部材31の内周面35とが数mm程度(例えば5mm)の僅かな隙間を介して対向した状態で、かつ、水密性能維持部材12と案内部材31の内周面35とが接触することにより、揺動基板30の平板の外周面39と案内部材31の筒体の内周面35との間の水密性が維持される。水密性能維持部材12は、揺動基板30の平板の外周面39を一周するように外周面39には形成された溝39h内に収容されて外周面39より突出するように設けられることにより、水密性能を十分に発揮できるよう揺動基板30の平板の外周面39に安定に設置できる。また、水密性能維持部材12は、揺動基板30の平板の外周面39の前後側の両方に設けることが好ましい。
【0023】
図6図8に示すように、揺動基板30には、揺動基板30の平板を前後に貫通する支柱保持貫通孔13、排泥管保持貫通孔14、水供給管保持貫通孔15が形成される。図8に示すように、例えば、支柱保持貫通孔13は揺動基板30の中央部を貫通するように形成され、排泥管保持貫通孔14は、揺動基板30の下部側の左右をそれぞれ貫通するように2つ設けられる。水供給管保持貫通孔15は、揺動基板30の上部側の左右をそれぞれ貫通するように2つ設けられる。支柱保持貫通孔13には、掘削機械26の支持部40の支柱42が貫通した状態で固定状態に保持される。排泥管保持貫通孔14;14には、排泥管76cの先端部が貫通した状態で固定状態に保持される。水供給管保持貫通孔15;15は、水供給管75cの先端部が貫通した状態で固定状態に保持される。
【0024】
揺動基板駆動手段32は、揺動基板駆動用ジャッキ16と、ジャッキ載置台17と、ジャッキ反力受部材18とを備える。
揺動基板駆動用ジャッキ16は、例えば、油圧ジャッキにより構成される。
揺動基板駆動用ジャッキ16は、2個設けられ、揺動基板30の後方における左右側にそれぞれ1つずつ配置される。
左側の揺動基板駆動用ジャッキ16Aは、シリンダ16aがジャッキ載置台17上に載置されてジャッキ載置台17に固定され、シリンダ16aの後端面がジャッキ反力受部材18の前面の左部に固定され、揺動基板30の後面30xにおける左端側の上下中央側を押圧かつ引き戻すことが可能なようにピストンロッド16bの先端と揺動基板30の後面30xとがピン接合のような接続手段22により接続されている。
右側の揺動基板駆動用ジャッキ16Bは、シリンダ16aがジャッキ載置台17上に載置されてジャッキ載置台17に固定され、シリンダ16aの後端面がジャッキ反力受部材18の前面に右部に固定され、揺動基板30の後面30xにおける右端側の上下中央側を押圧かつ引き戻すことが可能なようにピストンロッド16bの先端と揺動基板30の後面30xとがピン接合のような接続手段22により接続されている。
【0025】
掘削機械26は、支持部40と、回転部41とを備える。
支持部40は、1つの支柱42と2つの分岐支柱43とが組合されたT字状の中空支柱により形成される。2つの分岐支柱43は、支柱42の先端部より支柱42の延長方向と直交する一直線上において互いに離れる方向に延長する。
回転部41は、回転機構部45と、回転掘削体46とを備える。回転機構部45は、例えばモータ47により構成される。分岐支柱43の両方の先端には、それぞれモータマウント44が設けられ、各モータマウント44;44には、モータ47のケーシング48が固定される。2つのモータ47;47の回転軸49;49は、支柱42の先端部より支柱の延長方向と直交する一直線上(即ち、分岐支柱43の中心線線上)において互いに離れる方向に延長する。
回転掘削体46は、例えば円筒部50aと円筒部50aの他端を閉塞する底板50bとを有した一端開口他端閉塞の円形箱状の回転体50と、回転体50の円筒部50aの外周面51に設けられた複数の掘削ビット52とを備えた構成である。
【0026】
モータ47は、例えば、流体圧により作動するモータ、あるいは、電気で作動するモータを用いる。例えば油圧モータ(以下、油圧モータ47と言う)を用いる場合、駆動源27としての油圧源55と油圧モータ47のケーシング48内とが圧油供給路56a及び油帰還路56bを形成する耐圧ホース56で繋がれる。即ち、耐圧ホース56は支持部40のT字状の中空路を介して油圧モータ47のケーシング48に接続される。油圧モータ47は、耐圧ホース56を介してケーシング48内に供給される圧油によって回転軸49が回転するように構成される。
例えば、回転掘削体46の回転体50の底板50bの内面53の円中心と回転軸49の回転中心とが一致するように、回転体50の底板50bの内面53と油圧モータ47により回転する回転軸49の先端に設けられた連結板54とがねじ等の連結具57により連結される。即ち、2つの回転掘削体46;46が先頭管6の先頭開口6tよりも前方に位置され、2つの回転掘削体46;46が2つの回転軸49;49に共通の1つの回転中心線Lを回転中心として回転するように構成される。このような2つの回転掘削体46;46を備えた構成は、ツインヘッダと呼ばれる。
実施形態1では、上述したように、2つの回転掘削体46;46の回転中心線Lが先頭管6の推進方向と直交する面と平行な状態及び先頭管6の上下の内壁面と平行な第1の状態で地山99を掘削した場合、推進方向と直交する面内における回転掘削体46の掘削幅を大きくでき、さらに、断面四角形状に掘削できるので、掘削幅に応じた四角幅の管2を容易に地中10に設置できるようになる。
さらに、実施形態1では、掘削機械揺動駆動装置25を作動させ、図10に示すように、2つの回転掘削体46;46の回転中心線Lが先頭管6の推進方向と直交する面と交差しかつ先頭管6の上下の内壁面と平行な第2の状態で地山99を掘削した場合、先頭管6の前方において先頭管6の左右幅間隔よりも広い左右幅間隔で地山99を掘削できるので、先頭管6が推進する際に先頭管6の先頭開口6tが地山99の硬質層に衝突する可能性が少なくなり、先頭管6をスムーズに推進させることができるようになる。
【0027】
推進装置70は、推進駆動源61と、上述した案内部材31と、推進駆動源61による推進力を案内部材31に伝達する推進力伝達手段62と、案内部材31に伝達された推進力を先頭管6に伝達する推進力受け部63とを備える。
推進力受け部63は、先頭管6の先頭開口6t側の内側に設置された案内部材31の筒の前端面31aに接触して案内部材31の前方への移動を規制するとともに案内部材31に伝達された推進力を先頭管6に伝達することができるように、先頭管6の先頭開口6t側の内面に溶接、ボルト・ナット等の固定手段で固定されている。
推進力伝達手段62は、推進力伝達構成部64と、推進力伝達棒状体71と、推進力伝達用の当て材72とを備える。
推進力伝達構成部64は、例えば、H形鋼を組み合わせて形成される。例えば、案内部材31の筒の左端後端面と連結されて上下に延長するよう設けられた前左側上下延長柱部64aと、案内部材31の筒の右端後端面と連結されて上下に延長するよう設けられた前右側上下延長柱部64bと、ジャッキ反力受部材18の左端部と連結されて上下に延長するよう設けられた後左側上下延長柱部64cと、ジャッキ反力受部材18の右端部と連結されて上下に延長するよう設けられた後右側上下延長柱部64dと、前後方向に延長して先端と前左側上下延長柱部64aとが連結され後端と後左側上下延長柱部64cとが連結された左連結部64eと、前後方向に延長して先端と前右側上下延長柱部64bとが連結され後端と後右側上下延長柱部64dとが連結された右連結部64fとを備える。
【0028】
推進力伝達棒状体71は、一端から他端までの長さが推進力伝達構成部64の後端面64xと先頭管6の後端面102eとの間の最短距離よりも長い寸法に形成された棒状体である。推進力伝達棒状体71としては例えばH形鋼を用いる。
推進力伝達棒状体71は、中心線が先頭管6の中心線と同一方向を向くように設置される。左側の推進力伝達棒状体71Aの先端面と後左側上下延長柱部64cの後面における上下の中央位置とが連結され、右側の推進力伝達棒状体71Bの先端面と後右側上下延長柱部64dの後面における上下の中央位置とが連結される。
【0029】
推進駆動源61は、例えば、油圧ジャッキ61Aにより構成される。油圧ジャッキ61Aのピストンロッド61aの先端には押圧板61bが設けられる。油圧ジャッキ61のシリンダ61cは図外のジャッキ反力受部材に固定されている。
【0030】
そして、当て材72を、先頭管6の後端面102eより後方に突出する左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端間に跨るように設置して左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端に図外のボルトや万力装置などで連結し、当て材72における左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端間の中央部分を油圧ジャッキ61Aの押圧板61bで押圧することにより、油圧ジャッキ61Aによる押圧力が、推進力伝達棒状体71、推進力伝達構成部64、案内部材31、推進力受け部63を介して先頭管6及び回転掘削体46;46に伝達されるので、先頭管6が前方に推進するとともに回転掘削体46;46が前方に推進する。
この場合、後右側上下延長柱部64dの後面における上下の中央位置に連結された右側の推進力伝達棒状体71Bと後左側上下延長柱部64cの後面における上下の中央位置に連結された左側の推進力伝達棒状体71Aとを介して推進力伝達構成部64に伝達された推進力が案内部材31の後端面31xの四隅部に伝達される構成としたので(図6参照)、案内部材31に推進力を均等に伝達でき、案内部材31の姿勢を安定に維持することができ、しかも、掘削機械揺動駆動装置25の揺動動作の安定化が図れる。
【0031】
水供給装置75は、水貯留タンク75aと、送水用のポンプ75bと、水供給管75cと、水供給管75cの前端開口部を保持する水供給管保持貫通孔15とを備える。
水供給管75cは、水供給管保持貫通孔15に保持される前側部分75xと当該前側部分75xの後端に連結されて先頭管6の後端開口より外部に延長する主部分75yとを備える。例えば、前側部分75xは鋼管により形成され、主部分75yは硬質ビニル製の蛇腹管により形成される。揺動基板30の前面30fの前方の地山99に水を放出することが可能なように前側部分75xの前端開口側が揺動基板30の水供給管保持貫通孔15に固定され、前側部分75xの後端開口側が揺動基板30の後面30xより後方に突出するように設けられる。前側部分75xの後端開口と主部分75yの前端開口とが連通可能に連結され、主部分75yの後端開口と送水用のポンプ75bの吐出口とが連通可能に連結される。そして、送水用のポンプ75bの吸込口と水貯留タンク75aとが図外の連結管により連通可能に連結される。水供給装置75は、先頭管6の上部内側の左右側に2系統設けられる。尚、揺動基板30が揺動した場合に水供給管75cが先頭管6の左右の内側面に接触しないように、前側部分75xは、前端開口が先頭管6の内側面側に位置されて後端開口が先頭管6の中央側に位置するように設けられる。換言すれば、前側部分75xは、管の中心線が先頭管6の内側面6a;6b側から先頭管6の中央側に傾斜して延長するように設けられる。
【0032】
排泥装置76は、排泥タンク76aと、排泥用のポンプ76bと、排泥管76cと、排泥管76cの前端開口部を保持する排泥管保持貫通孔14とを備える。
排泥管76cは、排泥管保持貫通孔14に保持される前側部分76xと当該前側部分76xの後端に連結されて先頭管6の後端開口より外部に延長する主部分76yとを備える。例えば、前側部分76xは鋼管により形成され、主部分76yは硬質ビニル製の蛇腹管により形成される。揺動基板30の前面30fより前方に集まった掘削土を前端開口を介して取り込むことが可能なように前側部分76xの前端開口側が揺動基板30の排泥管保持貫通孔14に固定され、前側部分76xの後端開口側が揺動基板30の後面30xより後方に突出するように設けられる。前側部分76xの後端開口と主部分76yの前端開口とが連通可能に連結され、主部分76yの後端開口と排泥用のポンプ76bの吸込口とが連通可能に連結される。そして、排泥用のポンプ76bの吐出口と排泥タンク76aとが図外の連結管により連通可能に連結される。排泥装置76は、先頭管6の下部内側の左右側に2系統設けられる。尚、揺動基板30が揺動した場合に排泥管76cが先頭管6の左右の内側面に接触しないように、前側部分76xは、前端開口が先頭管6の内側面側に位置されて後端開口が先頭管6の中央側に位置するように設けられる。換言すれば、前側部分76xは、管の中心線が先頭管6の内側面6a;6b側から先頭管6の中央側に傾斜して延長するように設けられる。
【0033】
尚、水貯留タンク75a及び排泥タンク76aは、例えば水貯留タンク75aと排泥タンク76aとが一体となった集合タンク75Xにより構成される。即ち、集合タンク75Xの内部に仕切体75wを設けて集合タンク75Xの内部を2つの領域に区切り、一方の領域を水貯留タンク75aとして使用し、他方の領域を排泥タンク76aとして使用する。
つまり、最初に一定量の水を集合タンク75X内に満たしておき、送水用のポンプ75bを駆動して揺動基板30の前方に水を圧送すると、揺動基板30の前方に圧送された水と回転掘削体46;46により掘削された土砂とが混ざって泥水となる。そして、排泥用のポンプ76bを駆動することにより、揺動基板30の前方の泥水が排泥タンク76aに排出される。排泥タンク76aに排出された泥水中の泥が排泥タンク76aの底に沈殿するとともに、仕切体75wを越えて水貯留タンク75aに入り込んだ泥水が再び送水用のポンプ75bによって揺動基板30の前方に圧送される。即ち、泥水を循環させて揺動基板30の前方に供給できるようになるので、水の使用量を減らすことができる。また、水よりも比重が大きい泥水を揺動基板30の前方に供給できるので、地盤及び地下水の圧力に抵抗できて、地盤及び地下水の圧力と揺動基板30の前方に供給した圧力とを均等にしやすくなるので、地盤沈下等、地中10に与える影響を少なくすることができる。また、揺動基板30の前方が泥水化するので、排泥をスムーズに行えるようになり、掘削しやすくなる。
尚、最初から泥水を集合タンク75X内に満たしておき、送水用のポンプ75bを駆動して揺動基板30の前方と集合タンク75X内との間で泥水を循環させてもよい。
【0034】
以上説明した、揺動可能な回転掘削体46を有した管設置装置1によれば、掘削機械揺動駆動装置25を備えるので、回転掘削体46の回転中心線Lが推進方向と直交する面と平行な状態から推進方向と直交する面に対して傾く状態にできて回転掘削体46を左右に揺動させることができるので、回転掘削体46による左右方向の掘削幅が大きくなり、左右の余堀量を多くできて、先頭管6の前方の硬質層を掘削できるので、地山99が硬質地盤である場合でも先頭管6を地中10においてスムーズに推進させることができる。
【0035】
次に管設置装置1による地中10への管2の設置方法を説明する。
掘削機械26と、掘削機械揺動駆動装置25と、当て材72を除いた推進装置70と、水供給管75cと、排泥管76cとが組立てられた組立体を、回転掘削体46側から先頭管6の後端開口を介して先頭管6内に入れていき、案内部材31の前端面31aと先頭管の内側に固定された推進力受け部63とを接触させる。そして、先頭管6の後端面102eより後方に突出する左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端間に跨るように当て材72を設置して当て材72を左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端に図外のボルトや万力装置などで連結する。そして、送水用のポンプ75bを駆動して揺動基板30の前方に泥水を供給し、揺動基板30の前方と集合タンク75X内との間で泥水を循環させるとともに、制御装置65による制御によって、油圧源55から油圧モータ47に圧油を供給して回転掘削体46を回転させながら、推進駆動源61を作動させて当て材72に推進力を加えることで、推進力が、推進力伝達棒状体71、推進力伝達構成部64、案内部材31、推進力受け部63を介して先頭管6及び回転掘削体46;46に伝達され、先頭管6が前方に推進するとともに回転掘削体46;46が前方に推進する。この際、揺動基板駆動用ジャッキ16を作動させて揺動基板30の左右壁30a;30b側を前後に揺動させることで、回転掘削体46が先頭管6の左右方向に首振りのように揺動して地山99を掘削する。これにより、先頭管6の前方において先頭管6の左右幅間隔よりも広い左右間隔幅で地山99が掘削されるので、先頭管6が推進する際に先頭管6の先端が硬質地盤の地山99に衝突する可能性が少なくなり、先頭管6をスムーズに推進させることができる。
先頭管6の後端面102eを残して先頭管6が地中10に設置された後、先頭管6の後端面102eに後続管7を溶接、又は、ボルト等の固定具により接続し、さらに、先頭の推進力伝達棒状体71の他端と後続の推進力伝達棒状体71の一端とをボルト、又は、溶接により結合することにより、先頭の推進力伝達棒状体71の後ろに後続の推進力伝達棒状体71を継ぎ足すとともに、また、耐圧ホース56の他端に図外の延長耐圧ホースを継ぎ足し、水供給管75cの他端に図外の延長水供給管を継ぎ足し、排泥管76cの他端に図外の延長排泥管を継ぎ足していく。そして、当て材72を、後続管7の後端縁より後方に突出する左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端間に跨るように設置して、当て材72を油圧ジャッキ61Aのピストンロッド61aで押圧しながら、回転掘削体46;46を回転駆動させることにより、回転掘削体46が掘削を行いながら先頭管6が推進し、後続管7が地中に設置される。
以後、同様に、前の後続管7の後端縁に後の後続管7を順次連結して地中10に設置していくことで、支保工11を構築できる。
【0036】
支保工11を構築した後は、掘削始点となった出発側の空洞部内に掘削機械26等を引き戻して回収するようにすれば、推進力伝達棒状体71を継ぎ足していくことから、掘削機械26等を回収する際には、最後尾の推進力伝達棒状体71側から推進力伝達棒状体71の1個長さ分ずつ空洞部内に引き戻して、最後尾側から先頭まで順番に推進力伝達棒状体71を取り外していくことにより、掘削機械26等を容易に回収できるようになる。この場合、推進装置の一例である油圧ジャッキ61Aを掘削始点となる空洞部内にのみ設置すればよいので、装置コストを低減できる。
尚、到達側の空洞部内に掘削機械26等を押し出して回収するようにしてもよい。
例えば、先頭管6を到達側の空洞部に押し出して推進力受け部63を除去してから、到達側の空洞部内に掘削機械26等を押し出して回収する。この場合、掘削機械26等を掘削始点となった空洞部内に引き戻す作業よりも掘削機械26等を到達側の空洞部内に押し出す作業の方が容易となるので、掘削機械26等の回収作業が容易となる。
地中10に形成された1つの空洞部から出発して当該空洞部に戻るように支保工11を構築する場合には、掘削機械26等が1つの空洞部の到達口に到達したならば掘削機械26等を到達口から当該空洞部内に押し出すようにして回収すれば、掘削機械26等の回収作業が容易となるとともに、油圧ジャッキ61Aを当該1つの空洞部内にのみ設置すればよいので装置コストも低減できる。
尚、必要に応じて、支保工11の管2内に、コンクリート300を充填したり、鉄筋を配置してコンクリート300を充填することによって、管2の強度を上げた支保工11を構築する(図11参照)。
【0037】
図1に示すように、先に地中10に設置された先頭管6及び複数の後続管7によって構築された支保工11の管2(先頭管6及び複数の後続管7)の横に並ぶように次の管2(先頭管6及び複数の後続管7)を地中10に設置して支保工11を構築する場合において、先に地中10に構築された支保工11の管2の管本体2Aの一方の外側面2aに設けられたガイド手段120を形成する断面L字状の各長尺部材121;121の他方の長辺側の面123と面123との間に、地中10に設置しようとする次の管2(先頭管6及び複数の後続管7)の他方の外側面2bに設けられた突起100としての各中空管101;101を挿入し、かつ、各中空管101;101の外側面106;106と第1の支保工11の管2の管本体2Aの一方の外側面2aとを接触又は近接させながら、次の管2を地中10に設置して支保工11を構築する。これにより、地中10において互いに隣り合う一方の支保工11と他方の支保工11との間に、各中空管101;101の外側面106;106と支保工11の管2の管本体2Aの一方の外側面2aとが接触又は近接した密封性の高い地中領域150が形成され、中空管101の管内及び中空管101に設けられた逆止弁付きの注入口105を介して当該地中領域150に注入材200(図11参照)を注入することによって、互いに隣り合う一方の支保工11と他方の支保工11との間に止水性能の高い止水処理部を形成される。
この場合、地中領域150は密閉性が高く、かつ、余掘りされた空隙の多い領域となるので、注入材200が空隙に充填されるとともに、地中領域150に注入された注入材200が地中領域150外に流出する可能性が低くなるので、注入材200の注入量を少なくできて、施工コストを低減できるようになる。
注入処理は、例えば図外のパッカーと呼ばれる注入装置を用いて逆止弁付きの注入口105と連通する注入口付近の中空管101の管内空間を密閉し、当該密閉空間内に注入材200を供給すればよい。
【0038】
尚、本発明のように掘削機械26で地中10を掘削推進しながら後方に管2を順次継ぎ足していく推進工法の場合、管2の管本体2Aの外側面に中空管101;101やガイド手段120等の突起物を設けることは、推進の際の抵抗になるので本来好ましくないが、本発明では、管設置装置1で地中に設置される管2の管本体2Aの外側面2a;2bに設けられている中空管101;101及びガイド手段120の推進方向前方の地中10が揺動する回転掘削体46によって余掘りされるので、管2の管本体2Aの外側面2a;2bに中空管101;101及びガイド手段120が設けられていても、推進の際の抵抗は、ほとんど無くなる。
【0039】
実施形態1によれば、揺動可能な回転掘削体46を有した管設置装置1を用いて管2を地中10に設置する方法において、先に地中10に設置された管2の管本体2Aの互いに対向する一対の外側面2a;2bのうちの一方の外側面2aの横に並ぶように地中10に設置される次の管2の管本体2Aの他方の外側面2b(即ち、先に地中10に設置された一方の外側面2aの横に位置して互いに対向する外側面2b)に、一対の中空管101;101を設け、一対の中空管101;101の外側面106;106を先に地中10に設置されている管2の管本体2Aの一方の外側面2aに接触又は近接させながら次の管2を地中10に設置することによって、間隔を隔てて互いに隣り合うように地中10に設置される一方の管2の管本体2Aの外側面2aと他方の管2の管本体2Aの外側面2bとの間に、一対の中空管101;101と一対の長尺部材121;121と一方の管2の管本体2Aの外側面2aと他方の管2の管本体2Aの外側面2bとで囲まれた密封性の高い地中領域150を形成でき、この地中領域150に中空管101の中空空間及び逆止弁付きの注入口105を介して中空管101の内側から注入材200を充填して止水処理部を形成するようにしたので、地中領域150に注入された注入材200が地中領域150外に流出する可能性が低くなり、間隔を隔てて互いに隣り合うように地中10に設置される一方の管2の管本体2Aの外側面2aと他方の管2の管本体2Aの外側面2bとの間の止水処理を確実に行え、かつ当該止水処理に必要な注入材200の注入量を少なくできて、施工コストを低減できるようになる。
また、先に地中10に設置された管2の管本体2Aの一方の外側面2aには、先に地中10に設置される管2の横に並ぶように地中10に設置される管2の管本体2Aの他方の外側面2aに設けられた一対の中空管101;101をガイドして次の管2の地中10での進行方向をガイドするためにガイド手段120としての断面L字状の一対の長尺部材121;121を設けたので、地中10に設置しようとする管2の地中10での推進方向が一対の中空管101;101及び一対の長尺部材121;121によって的確にガイドされ、また、隣り合う支保工11同士がずれなくなる。
また、ガイド手段120としての断面L字状の一対の長尺部材121;121を設けたので、地中10に設置しようとする管2の地中10での推進方向を的確にガイドできるとともに、一対の中空管101;101と一対の長尺部材121;121と一方の管2の管本体2Aの外側面2aと他方の管2の管本体2Aの外側面2bとで囲まれたより密封性の高い地中領域150を形成できるようになる。
【0040】
尚、管2を到達させる到達側の空洞部が無い場合において、支保工11を構築した後、掘削始点となった出発側の空洞部内に掘削機械26等を引き戻して回収する場合は、当該構築した支保工11の管2内に地下水が流れ込んで地盤沈下が生じないようにするため、掘削機械26等を引き戻して回収する際に、管2内にコンクリート300を埋める必要がある。この場合、管本体2A内がコンクリート300で埋まるため、管本体2Aの内側から一方の支保工11と他方の支保工11との間の地中領域150に注入材を注入することができなくなる。
一方、実施形態1のように、注入管として利用可能な中空管101を用いた場合には、上述のように管本体2A内にコンクリート300が埋められた後であっても、当該中空管101を注入管として利用して地中領域150に注入材200を注入することが可能となる。
従って、上述のように、管2の到達側の空洞部が無い場合で掘削機械26等を引き戻して回収する際に管本体2A内にコンクリート300を埋める必要がある場合においては、実施形態1のような中空管101を備えた管2を用いることが有効である。
【0041】
実施形態2
本発明の管は、ガイド手段120を備えない管であってもよい。
【0042】
実施形態3
回転体50の外周面51より突出するように設けられた掘削刃としての掘削ビットによる掘削半径が、先頭管6の一対の内壁面間(例えば先頭管6の上下の内壁面間)の寸法よりも大きく設定され、かつ、回収時には、先頭管6の内側空間を通過させることが可能に構成された図外の回転掘削体を用い、先頭管6の前方において先頭管6の一方の一対の壁面(例えば上下の内壁面6c;6d)と直交する方向である先頭管6の幅間隔(例えば先頭管6の上下幅間隔)よりも広い幅間隔で地中10を掘削できるように構成された管設置装置を用いてもよい。
実施形態5の回転掘削体と実施形態1の掘削機械揺動駆動装置25とを備えた管設置装置を用いれば、先頭管6の前方の地中10において先頭管6の上下左右側の地中10の余堀が可能となることから、先頭管6の先頭開口縁が硬質の地盤に衝突して先頭管6を推進できなくなるような事態を防止でき、地山が硬質地盤である場合でも、地中10において管2をよりスムーズに推進させることができる。
【0043】
尚、特許文献1に開示されているような管設置装置、即ち、管の先頭側の内側に管の推進方向と直交する回転中心線を回転中心として回転する回転掘削体を備え、かつ、管の先端に管の外径寸法よりも大きい刃管が設けられた構成の管設置装置を用いて管を地中に設置する場合においても、刃管によって余掘りが行われる。従って、この場合にも、先に地中に設置された管の横に並ぶように次の管を地中に設置すると、先に地中に設置された管と管と当該先に地中に設置された管の横に並ぶように地中に設置された次の管との間の管本体間に間隔が形成されることになる。従って、本発明の管を用いれば、当該刃管が設けられた構成の管設置装置を用いて管を地中に設置する場合においても、間隔を隔てて互いに隣り合うように地中に設置される一方の管の管本体の外側面と他方の管の管本体の外側面との間に形成される地中領域に注入材200を注入することが可能となる。
【0044】
また、先に地中10に入れる管の後端に後続管を連結しないようにし、地中に形成された空洞部から先に地中に入れる管のみを地中10に設置して当該先に地中に入れる管のみ(即ち、1本の管)による支保工を形成するようにしてもよい。例えば、一方の空洞部と他方の空洞部とに跨る管を1本の管2で形成するようにしてもよい。
また、本発明でいう断面形状が四角形状とは、四角の角部が面取りされた形状のものも含む。
【0045】
本発明で説明した空洞部は、シールドトンネルのセグメントで囲まれた空洞部、又は、山岳トンネルの壁で囲まれたトンネル空洞部、又は、立坑内の空間等により形成される。そして、本発明により形成される地下空間としては、上述した地下鉄ホームを形成する空間、トンネルの道路や線路における往路空間及び復路空間、トンネルの道路や線路における合流部又は分岐部、トンネルの道路や線路における拡幅部、上述した連通路等がある。
【0046】
また、上記では、管本体2Aの一つの外側面2bに一対の中空管101;101を備えた管2を例にして説明したが、本発明の管は、1本の中空管が管本体の一つの外側面に管本体の延長方向の全長に渡って管路が延長するように設けられた構成であってもよい。この場合でも、中空管を注入管として利用して管の外側の地盤に注入材を注入することができるようになる。
【0047】
さらに、上記では、管本体2A及び中空管101として断面四角形状の管を備えた構成のものを例にして説明したが、本発明の管は、管本体及び中空管が断面四角形状以外の形状の管で構成された管であってもよい。即ち、断面四角形状以外の管本体の外側面に断面四角形状以外の中空管を備えた構成の管であってもよい。例えば、断面円形状の管本体の外側面に断面円形状の中空管を備えた構成の管であってもよい。この場合でも、中空管を注入管として利用して管の外側の地盤に注入材を注入することができるようになる。
【符号の説明】
【0048】
2 管、2A 管本体、2b 管本体の他方の外側面(一つの外側面)、10 地中、101 中空管、120 ガイド手段。
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