(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軟磁性扁平金属粉末とバインダとを含む混合物の成型シートを有し、前記軟磁性扁平金属粉末は、前記成型シートの平面内に2次元的に配向され、前記成型シートの空孔率は、5体積%以上25体積%以下であり、前記軟磁性扁平金属粉末の前記成型シートに対する体積比は55体積%以上である磁芯と、コイルとを有するシート状インダクタであって、
前記磁芯は、予め定められた厚さと、前記厚さの方向に対向する2平面と、前記2平面を結ぶ2つの側面と、
前記2平面間に設けられた第1のビアホールと、
前記2平面間の前記第1のビアホールと離れた位置に設けられた第2のビアホールとを有し、
前記コイルは、前記第1及び第2のビアホールを夫々貫通して設けられた第1及び第2のビア導体と、前記磁芯の2平面にそれぞれ設けられた第1及び第2の表面導体、を備え、
前記第1及び第2のビア導体は、外側断面積が内側断面積よりも大きなテーパ形状を有していることを特徴とするシート状インダクタ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるシート状インダクタを示す斜視図である。
図2は
図1のIIで示すプラグ部分を示す断面図である。
図3は
図1のシート状インダクタの分解組立斜視図である。
【0033】
図1を参照すると、シート状インダクタ10は、シート状の複合磁性材料からなる磁芯1と、コイル8とを、加圧力により一体化して形成されている。
【0034】
シート状インダクタ10は、コイル8に電流を流した際に、発生する磁束が、磁芯1のシート面内に環流している構成である。
【0035】
磁芯1は、軟磁性扁平金属粉末と、熱硬化性の
有機樹脂のバインダとを混合して、ダイスロット法やドクターブレード法等によって、面内方向に扁平金属粉末を配向させてシート状に形成し、1枚もしくは複数枚を積層して、積層方向(第1の方向)に加圧することで、高密度成型体として形成されている。なお、軟磁性扁平金属粉末としては、センダスト(登録商標)で知られるFe−Al−Si合金、パーマロイ(登録商標)で知られるFe−Ni合金、Fe族系金属や合金を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、磁芯の絶縁性を向上させるため、前記軟磁性扁平金属粉末表面に酸化処理を施すほか、前記軟磁性扁平金属粉末表面に、ホウ珪酸系、ビスマス系、リン酸系及び酸化亜鉛系等の低融点ガラス(ガラスフリット)をコーティングしてもよい。
【0036】
磁芯1を構成する金属扁平粉の高密度成型体は、高い飽和磁束密度を有するので、大電流を通電することができるとともに、フェライト相当の高透磁率やインダクタンスが得られ、さらに、フェライトを超える重畳特性が得られる。また、金属材料ではあるが、粉末を絶縁体であるバインダで結着させた構成であるため、周波数特性に優れる。
【0037】
また、金属扁平粉の高密度成型体からなる磁芯1は、フェライトと異なり脆性材料ではないため、低コストである加圧成型においても割れず、耐えうる。
【0038】
さらに、磁芯1の金属扁平粉の高密度成型体の磁化容易軸が平面内になるように扁平粉末を面内に配向した場合、面内方向の透磁率が高くなるという利点を有する。
【0039】
また、コイル8は、第1及び第2のビア導体2,3と、磁芯1の一平面に設けられた第1の表面導体4と、磁芯1の他の平面に設けられた第2の表面導体5,6とを有している。両側の第2の表面導体6,6は、それぞれリード線7,7に接続され、端子として用いられるので、以下の説明においては、端子部材6,6と呼ぶ。
【0040】
なお、磁芯1は、偏平金属粉末は絶縁性のバインダ層でコーティングされているため、絶縁用の部材を用いなくともよく、コイル8を構成する導体と磁芯1は直接接することができる。
【0041】
磁芯1には、第1の方向に互いに対向する2平面(表裏面)を貫通して第1のビアホール1aが、第1の方向に交差する第2の方向(長さ方向)に等間隔で一列に設けられ、この列に沿って第2のビアホール1bが、等間隔で一列に設けられている。
【0042】
第1のビア導体2は、細長い導体からなり、中心導体と、その両側の端部2a,2bを有する。第1のビア導体2は、第1のビアホール1aを貫通して設けられている。
【0043】
第2のビア導体3は、第1のビア導体と同様に、中心導体とその両側の端部3a,3bを有する。第2のビア導体3は、第2のビアホール1bを貫通して設けられている。
【0044】
第1の表面導体4は、両側にプラグ部分を形成するプラグ穴4a,4bを有している。磁芯1の長さ方向の両側に中心線に対して対称位置に設けられた第1及び第2のビア導体2,3のそれぞれの一端2a,2b,3a,3bをプラグ穴4a,4bに嵌合うめ圧入して、両端2a,2b,3a,3bを、表面導体4,5とともに磁芯の厚さ方向(第1の方向)に加圧することで、第1及び第2のビア導体2,3の一端2a,3aが変形して、
図2に最も良く示されるように、外側断面積が内側断面積よりも大きなテーパ状のプラグ部3a(一端と同じ符号3aで示す)が形成される。
【0045】
第2の表面導体5は、両側にプラグ部分を形成するプラグ穴5a,5bを有している。磁芯1の長さ方向(第2の方向)の両側に対向位置に設けられた第1のビア導体2の他端2bと、第1のビア導体2に第1及び第2の方向に交差する第3の方向(幅方向)に対向する第2のビア導体3の他端3bに隣り合う第2のビア導体3の他端3b、即ち、第1のビア導体2に対応する第2のビア導体3から長さ方向にひとつずれた第2のビア導体3の他端3bとをプラグ穴5bに嵌合する。つまり、表面側の第1のビア導体2の一端は互いに幅方向に対向する一端同士が接続されるが、裏面側は、一端側の表面とは異なり、第1のビア導体2の他端2bは、長さ方向に一つずれた第2のビア導体3の他端3bと接続される。第1及び第2のビア導体2,3の他端2b,3bも、一端2a,3aと同様に加圧することで、第1及び第2のビア導体2,3の他端2b,3bが変形して、表面側と同様に、外側断面積が大きなテーパ状のプラグ部2b,3bが形成される。
【0046】
このプラグ部3a及び表面導体の上面は、
図2では、磁芯の2平面から突出して示されているが、実際は、加圧力によって、磁芯が塑性変形し、2平面から表面導体が埋没した形状になる。なお、2平面から埋没させるには、予め2平面にガイド溝を設けておいてもよい。
【0047】
第1の方向に互いに対向する2面の内の一端側の面(裏面)側において、第2の方向(長さ方向)一端側の第2のビア導体3の他端3b及び第2の方向(長さ方向)の他端側の第1のビア導体2の他端には、リード線7,7を有する端子部材6,6がそれぞれ第1及び第2の表面導体4,5と同様に端子部材6,6のプラグ穴6a,6aに嵌合され、加圧されてプラグ部2b,3bが形成され、それぞれの端子部材6,6から長さ方向の外側にリード線7,7が引き出されている。なお、上記の例では、リード線7,7は、端子部材6,6に一体に形成されているものを用いたが、端子部材6,6とは、別体のリード線7,7に、プラグ部2b,3b形成の際に取り付けても、プラグ部形成の後、端子部材6,6を形成してもよいことは勿論である。
【0048】
ここで、コイル8の直流電気抵抗は、インダクタの巻線は低損失化のため、巻き数が少なく、断面積が大きい方が望ましい。このコイル8は、印刷導体やめっきでは実現困難となる直径0.15mm以上の丸線に相当する線径とすることが好ましい。コイルの断面積Sは、長さ2cmの導線に15Aを通電する時の発熱量が1W以下であることが、下記数1から好ましい。
【0050】
なお、ビア導体断面積が直径0.4mm以上丸線相当の断面積のものを用いることが好ましく、直径0.8〜1.2mmであることがより好ましい。
【0051】
また、第1及び第2の表面導体4,5の断面積は、幅2mm、厚み0.25mmの長方形以上に相当する断面積を用いることが、好ましいが、幅2mm、厚み0.3mmであることがより好ましい。
【0052】
本発明の第1の実施の形態においては、磁芯1を高密度成型体で構成しているので、導体の加圧接合に際して割れが生じない。
【0053】
また、高密度成型体に、ビアホールを設け、ビアホールに設置した導体と、ビア間を接続するためのプラグ部を有する導体を、前記成型体とともに配置し、ビア部を圧着する。ビアに設置したビア導体2,3は、表面導体のプラグ穴に嵌合し、かつ加圧力により変形しプラグ部を形成し、信頼性が高いコイルが形成される。
【0054】
本発明の第1の実施の形態によるコイルにおいては、巻線が簡単、巻線を太くできるので、電気抵抗を小さくできるとともに接合部の信頼性が向上する。
【0055】
図4は本発明の第2の実施の形態によるシート状インダクタを示す平面図である。
図4に示す本発明の第2の実施の形態によるシート状インダクタ10aは、
図1乃至
図3に示す第1の実施の形態によるシート状インダクタ10とは、コイル8の一面側をなす表面導体4の周囲に沿って、第1方向に互いに対向する2面(表裏面)を貫通するコの字状のギャップが設けられている点で異なっているほかは、第1の実施の形態によるシート状インダクタ10と同じ構成を有している。本発明の第2の実施の形態シート状インダクタ10aは、コイル8に電流を流した際に、発生する磁束が、磁芯1のシート面内に環流している構成である。
【0056】
また、接続のための加圧力を与えた場合、フェライト磁芯では、脆く割れてしまう。特に、シート状インダクタの一部に特性調整のためのスリット等がある場合には、この傾向は特に顕著となる。本発明の第2の実施の形態によれば、磁芯1に、扁平金属粉末の成型体を用いているので、この難点が解消される。
【0057】
本発明の第2の実施の形態によるシート状インダクタは、金属磁性粉末の圧粉成型体であるために、周波数特性が優れている、重畳特性が優れている、導体の加圧接合に際して割れが生じないという利点を有する。
【0058】
図5は本発明の第3の実施の形態によるシート状インダクタを示す平面図である。
図5に示す本発明の第3の実施の形態によるシート状インダクタ10bは、
図1乃至
図3に示す本発明の第1の実施の形態によるシート状インダクタとは、第1の方向(厚み方向)に、磁芯1の2平面を貫通するとともに2分割するように第3の方向に設けられたギャップが設けられている点で、異なっているほかは、第1の実施の形態によるシート状インダクタ10と同じ構成を有している。
【0059】
本発明の第3の実施の形態によるシート状インダクタ10bは、第1及び第2の実施の形態によるシート状インダクタ10,10aと同様に、磁心1が金属磁性粉末の圧粉成型体であるために、周波数特性が優れている、重畳特性が優れている、導体の加圧接合に際して割れが生じないという利点を有する。
【0060】
図6は本発明の第4の実施の形態によるシート状インダクタを示す平面図である。
図6に示す本発明の第4の実施の形態によるシート状インダクタ10cは、
図1乃至
図3に示すシート状インダクタ10のコイルと同形状のコイル8を幅方向に併設している点で異なるほかは、第1の実施の形態によるシート状インダクタ10と同じ構成を有している。
【0061】
図6のシート状インダクタ10cにおいては、一方のコイル8を一次側コイル、他方のコイル8を2次側コイルとしている。
【0062】
本発明の第4の実施の形態によるシート状インダクタ10cは、第1乃至第3の実施の形態によるシート状インダクタ10,10a,10bと同様に、磁心1が金属磁性粉末の圧粉成型体であるために、周波数特性が優れている、重畳特性が優れている、導体の加圧接合に際して割れが生じないという利点を有する。
【0063】
図7は本発明の第5の実施の形態によるシート状インダクタを示す斜視図である。
【0064】
図7を参照すると、シート状インダクタ20は、1次側コイル11と2次側コイル12とを有している。1次側コイルは、第1のビア導体2と、第1のビア導体の両端2a,2bに夫々端子接続用に接続された第1及び第2の表面導体14,15とを有している。第1及び第2の表面導体は、それぞれの磁芯1の側面まで、延長され、磁芯の側面において、第1及び第2の側面電極14a,15aを形成している。また、2次側コイル12は、第2のビア導体3の両端3a,3bに接続された第1及び第2の表面導体14,15とを有している。第1及び第2の表面導体14,15は、磁芯1の両側面まで延長され、磁芯1の側面において、側面電極14a,15aを形成している。
【0065】
上記第1及び第2の表面導体14,15と、プラグ部2a,2b,3a,3bの上面は、加圧の際に、磁芯1の2平面よりも内部にある、即ち、埋没した形であるが、予め磁芯1の2平面に第1及び第2の表面導体14,15を埋没させるためのガイド溝を設けてもよいことは勿論である。
【0066】
更に、磁芯1の第2の方向(長さ方向)において、1次側コイル11及び2次側のコイル12の間、磁芯1の一端側と1次側コイル11の間及び磁芯1の他端12と2次側コイル12の間には、第1の方向に沿って対向する2面を貫通したギャップ9a,9b,9cがそれぞれ設けられている。
【0067】
以上説明したように、本発明の第1乃至第5の実施の形態においては、第1及び第2の表面導体4,5,14,15に、第1及び第2のビア導体2,3を嵌合し、加圧によって第1及び第2のビア導体2,3の両側を変形させて、プラグ部を形成し、このプラグ部を介して接合しているので、フェライト等の磁芯においては、磁芯が割れて困難であった第1及び第2の表面導体4,5,14,15と第1及び第2のビア導体2,3との機械的接合が可能となる。
【0068】
また、金属磁芯は、フェライト磁芯よりも磁気飽和しにくい、大電流が流せるという利点がある反面、渦電流損失によって励磁が困難であるという欠点あったが、本発明の第1乃至第5の実施の形態に係る磁芯1は、金属粉末を絶縁性のバインダ成分でコーティングすることで、渦電流損失のない粉末成型体である成型シートを用い、さらに、軟磁性扁平金属粉末の配向を平面内にすることで、透磁率の低下を防ぐことができるとともに、磁気ギャップを設けることができる。
【0069】
また、本発明の第1乃至第5の実施の形態によるシート状インダクタにおいて、2種以上のコイルを有するシート状インダクタは、2種以上のコイル間の電磁結合により、トランス、ないしはカップルドインダクタとして機能するシート状インダクタであっても良いことは勿論である。
【0070】
さらに、本発明の第6乃至第10の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0071】
図11(a)は本発明の第6の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタを示す断面図、
図11(b)は
図11(a)のインダクタの斜視図である。
【0072】
図11(a)及び
図11(b)を参照すると、本発明の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタ20は、一対の第1の樹脂基板21a,21bを積層した積層樹脂基板21と、前記積層樹脂基板21に封入された磁性体よりなる磁芯1と、前記積層樹脂基板21及び磁芯1を貫通して設けられたビアホール23a,23bと、前記ビアホール23a,23bを介して形成されたコイル24とを備えている。
【0073】
第1の樹脂基板21a、21bは、一面に銅箔を有する片面銅箔基板から形成され、この銅箔からパターンに形成された基板の第1の基板表面導体4及び第2の基板表面導体5(以下、単に第1及び第2の表面導体4,5と呼ぶ)と端子接続用の第1及び第2の表面導体(端子部材)6,6を夫々備えている。
【0074】
また、第1及び第2の表面導体4,5の厚さは100μm以下の導体膜を二層以上積層して形成されている。ここで、第1及び第2の表面導体4,5の厚さは、一枚あたりの厚さが100μm以下の銅箔パターンを少なくとも2層以上用いて表面導体を形成することが好ましい。その理由は、表皮深さδは、1MHzにおいて約70μm、MHzにおいて約50μmであるため、1MHz以上での交流電気抵抗低減の観点からは、コイルの導体をなす銅箔の厚みは70×2=140μm以下であることが望ましいが、同時にコイルの導体の総断面積はできるだけ大きくして直流電気抵抗を低減することが望ましいので、コイル24の導体をなす100μm以下の銅箔パターンを2層以上用いることにより、トータルのコイル導体断面積を増大せしめるからである。
【0075】
コイル24は、第1のビアホール23aを貫通して設けられた第1のビア導体2と、第2のビアホール23を貫通して設けられた第2のビア導体3と、第1及び第2のビア導体2,3の端部にそれぞれ接続された第1及び第2の表面導体4,5とを有している。
【0076】
第1及び第2のビア導体2,3には、導電性ペースト又は銅線を用いることができるが、第1及び第2のビアホール23a,23bを充填するために、導電性を有するものであるならば、どのような材料であってもよい。
【0077】
なお、
図11(a),(b)では示さなかったが、第6の実施の形態においては、第1及び第2のビア導体2,3として、銅線を用いる場合には、第1及び第2の表面導体4,5との接続は、半田付けによって接続固定されているが、第1及び第5の実施の形態と同様に、それぞれの表面導体4,5,6に、それぞれのビア導体2,3の端部にプラグ部2a,2b,3a,3bを形成しても良いことは勿論である。
【0078】
積層樹脂基板21は、接着成分を有するプリプレグ22を有している。
【0079】
磁性体よりなる磁芯1は、扁平金属粉末をシート状に成形した磁性体を複数枚重ね合わせて、平板状に加圧成形したシート状の成形体である。この扁平金属粉末は、平板の面内に磁化容易軸を有するように、配向している。ここで、磁化容易軸を、扁平粉末を面内に配向した場合、面内方向の透磁率が高くなるという利点がある。
【0080】
このように、加圧成形を行うことで、成形体に加圧力を与えても成形体の割れが無く、かつ磁気特性が変化しないため、積層型基板への成形体封入が容易にすることができる。
【0081】
磁性体よりなる磁芯1は、前記積層樹脂基板と共に加圧力を受けて当該積層樹脂基板と一体化している。接着成分は、磁芯1の空孔部に含浸している。
【0082】
また、コイル24に電流を通電した時に、発生する磁束は、平板の面内で還流している。
【0083】
ここで、磁芯1をなす成形体の空孔率は、弾力と適度な変形余地を兼ね備えるとともに、積層樹脂基板基材(プリプレグ22)の接着成分が成形体に含浸して基板と成形体を強固に一体化することができるように5体積%以上としている。さらに、金属分比率を高めるように、25体積%以下としている。より好ましくは、5体積%以上20%以下である。
【0084】
また、磁芯1をなす成形体は、扁平磁性金属粉末と前記扁平磁性金属粉末とを結着するバインダとを含む。バインダ成分の体積率は、10体積%以上45体積%以下、より好ましくは、10体積%以上20%以下である。その理由は、バインダ成分の体積率が10体積%より小では強度が不足し、45%より大では、金属成分の比率を低めるとともに耐加圧強度が不足を生じるからである。
【0085】
また、磁芯1に含有される磁性粉末は、金属材料ではあるが、成形体は扁平金属磁性粉末を絶縁体で結着させた構成であるため、周波数特性に優れ、酸化物磁性材料であるフェライトと異なり脆性材料ではないため、加圧成形に耐えることができる。
【0086】
また、扁平金属粉末の成形体に対する体積比は55体積%以上の高密度成形体であることが好ましい。その理由は、成形体が55体積%以上の軟磁性金属成分を含有するため、高い飽和磁束密度を有しながら、フェライト相当の高透磁率が得られる。成形体の金属分の体積率を65体積%以上に高めることがより好ましい。
【0087】
図12(a),(b),及び(c)は、
図11(a)及び
図11(b)の第6の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタの製造工程を順に示す断面図である。
図12(a)を参照すると、磁芯1をプリプレグ22に収容し、上下から、一面にパターニングされた導体パターンを有する片面銅箔基板からなる第1の樹脂基板21a,21bで挟み込み、両面から加熱プレスを行う。なお、符号21cは、第1の樹脂基板21aに設けられた、層間接着熱プレスの時の空気抜き用の穴である。
【0088】
さらに、加熱プレス後に、
図12(b)に示すように、第1及び第2の表面導体4,5を貫通するように、第1及び第2のビア導体2,3を形成するための第1及び第2のビアホール23a,23bを穿設する。
【0089】
次に、
図12(c)に示すように、第1及び第2のビアホール23a,23bに導電性ペーストもしくは、銅線よりなる第1及び第2のビア導体2,3を貫通させて、両面をプレスして積層基板内蔵型インダクタ20を得た。
【0090】
図13は本発明の第7の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタを示す断面図である。
図13を参照すると、本発明の第13の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタ20は、積層基板として、一対の第1の樹脂基板21a,21bのさらに上に重ね合わされた第2の樹脂基板25a、25bを有することと、第2の樹脂基板25a,25bの表面にさらに、第3及び第4の表面導体26,27を有する点で異なる。
【0091】
即ち、一対の第1の樹脂基板21a,21bとその上に一対の第2の樹脂基板25a,25b両側を積層した積層樹脂基板29と、前記積層樹脂基板29に封入された磁性体よりなる磁芯1と、前記積層樹脂基板29及び磁芯1を貫通して設けられた第1及び第2のビアホール28a,28bと、前記第1及び第2のビアホール28a,28bを介して形成されたコイル24とを備えている。
【0092】
第1の樹脂基板21a、21bは、絶縁樹脂基板からなる。また、第2の樹脂基板25a,25bは、両面に銅箔を有する両面銅箔基板から形成され、この銅箔からパターンに形成された第1の基板表面導体4に相当する第1の表面導体4、第2の基板表面導体5に相当する第2の表面導体5、第3の基板表面導体26及び第4の基板表面導体27(以下、単に第3及び第4の表面導体と呼ぶ)を夫々備えている。第1及び第2の表面導体4,5の厚さは、前述した第6の実施の形態の第1及び第2の表面導体4,5と同様に、100μm以下の導体膜を二層以上積層して形成されている。
【0093】
第3及び第4の表面導体26,27の厚さは、第1及び第2の表面導体4,5と同様に、一枚あたりの厚さが100μm以下の銅箔パターンを少なくとも2層以上用いて形成する、表皮深さδは、1MHzにおいて約70μm、MHzにおいて約50μmであるため、1MHz以上での交流電気抵抗低減の観点からは、コイルの導体をなす銅箔の厚みは70×2=140μm以下であることが望ましい。しかしながら、同時にコイルの導体のトータルの断面積はできるだけ大きくして直流電気抵抗を低減することが望ましいので、コイル導体をなす100μm以下の銅箔パターンを2層以上用いることにより、トータルのコイル導体断面積を増大せしめる。
【0094】
コイル24は、第1及び第2のビアホール28a,28bを貫通して設けられた第1及び第2のビア導体2,3と、第1及び第2のビア導体2,3の端部にそれぞれ接続された第1及び第2の表面導体4,5及び第3及び第4の表面導体26,27とを有している。
【0095】
また、積層樹脂基板29は、接着成分を有するプリプレグ22を有している。
【0096】
磁芯1は、
図11(a),(b)及び
図12(a),(b)を用いて説明したものと同様であるので、その説明は省略する。
【0097】
図14は本発明の第8の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタを示す断面図である。
【0098】
図14を参照すると、本発明の第14の実施の形態によるインダクタ20は、一対の第1の樹脂基板21a,21bを積層した積層樹脂基板21と、前記積層樹脂基板21に挟み込まれて収容されたシート状の磁芯1と、前記積層樹脂基板21及び磁芯1を貫通して設けられたビアホール23a,23bと、前記ビアホール23a,23bを介して形成されたコイル24とを備えている。
【0099】
第1の樹脂基板21a,21bは、一面に銅箔を有する片面銅箔基板から形成され、この銅箔からパターンに形成された第1の表面導体4及び第2の表面導体5を夫々備えている。
【0100】
第6及び第7の実施の形態で説明したように、第1及び第2の表面導体4,5の厚さは100μm以下の導体膜を二層以上積層して形成されている。
【0101】
コイル24は第1のビアホール23aを貫通して設けられた第1のビア導体2と第2のビアホール23bを貫通して設けられた第2のビア導体3と、第1及び第2のビア導体2,3の端部にそれぞれ接続された第1及び第2の表面導体5とを有している。
【0102】
第1及び第2のビア導体2,3には、導電性ペースト又は銅線等の導電性材料を用いることができるが、銅線等の塑性変形可能な導電性材料を用いる場合には、第6の実施の形態のように、半田付けにて接合固定されているが、第1及び第5の実施の形態と同様に、それぞれの表面導体4,5,6(図示せず)に、それぞれのビア導体2,3の端部にプラグ部2a,2b,3a,3bを形成しても良いことは勿論である。
【0103】
また、積層樹脂基板21は、第1及び第2の樹脂基板21a,21bの内側面に形成された接着成分を有する接着層31を有している。
【0104】
磁芯1は、扁平金属粉末を平板に成形した成形体である。この扁平金属粉末は、その磁化容易軸が平板の面内に配向している。このような扁平粉末を面内に配向した場合、面内方向の透磁率が高くなるという利点を有する。また、本発明では、磁芯1を積層型基板に収容する際に、加圧成形を用いているこの加圧成形は、成形体に加圧力を与えても成形体の割れが無く、かつ磁気特性が変化しないため、基板への成形体封入が容易である。
【0105】
コイル24に通電した場合に発生する磁束は、磁芯1の平板の面内で還流している。磁芯1は、前記積層樹脂基板と共に加圧力を受けて当該積層樹脂基板と一体化している。第1の樹脂基板21a,21bの接着層31からの接着成分は、磁芯1の空孔部に含浸している。
【0106】
ここで、磁芯1をなす成形体の空孔率は、5体積%以上25体積%以下、好ましくは、好ましくは、5体積%以上20%以下である。その理由は、磁性体は5体積%以上の気孔を有するため、弾力と適度な変形余地を兼ね備えている、5体積%以上の空孔を有し、樹脂基板の接着成分が当該気孔部に含浸されるようにしている、5%より小では接着成分が含浸しない。25%より大では、金属成分比率を高め、金属充填率、強度が不足するからである。
【0107】
この成形体は、扁平金属粉末と前記扁平金属粉末とを結着するバインダとを含む。バインダ成分の体積率は、10体積%以上45体積%以下、より好ましくは、10体積%以上20%以下である。その理由は、10%より小では強度が不足するために好ましくなく、45%より大では金属分の比率を下げ、耐加圧強度が不足するからである。
【0108】
また、金属材料ではあるが、粉末を絶縁体で結着させた構成であるため、周波数特性に優れ、フェライトと異なり脆性材料ではないため、加圧成形に耐える。
【0109】
また、扁平金属粉末の成形体に対する体積比は55体積%以上であることが好ましい。その理由は、金属扁平粉の高密度成形体を得るには、成形体が55体積%以上の軟磁性金属成分を含有するため、高い飽和磁束密度を有しながら、フェライト相当の高透磁率が得られる。成形体の金属分の体積率65体積%以上に高めることがより好ましい。
【0110】
図15は本発明の第9の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタを示す断面図である。
図15を参照すると、本発明の第9の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタ20は、一対の第1の樹脂基板21aと、磁芯1を収容する収容部31aを有する第3の樹脂基板31とを積層した積層樹脂基板30と、前記積層樹脂基板30に封入された磁芯1と、前記積層樹脂基板30及び磁芯1を貫通して設けられたビアホール23a,23bと、前記ビアホール23a,23bを介して形成されたコイル24とを備えている。
【0111】
第1の樹脂基板21a、21bは、内側面に接着層31,31を有する絶縁性の樹脂基板を有する。
【0112】
第3の樹脂基板32は、スペーサとして機能し、表裏両面及び収容部32aの内側面には、接着層31を有する。
【0113】
第1の樹脂基板21a,21bの表面に銅箔もしくは銅板からなる第1及び第2の表面導体4,5が形成されている。第1及び第2の表面導体4,5の厚さは、第6乃至第8の実施の形態と同様に、100μm以下の導体膜を二層以上積層して形成されている。ここで、前述したように、表面導体4,5の厚さは、一枚あたりの厚さが100μm以下の銅箔パターンを少なくとも2層以上用いて形成する。表皮深さδは、1MHzにおいて約70μm、MHzにおいて約50μmであるため、1MHz以上での交流電気抵抗低減の観点からは、コイル導体をなす銅箔の厚みは70×2=140μm以下であることが望ましい。しかしながら、同時にコイル導体のトータルの断面積はできるだけ大きくして直流電気抵抗を低減することが望ましいので、コイル導体をなす100μm以下の銅箔パターンを2層以上用いることにより、トータルのコイル導体断面積を増大せしめる。
【0114】
コイル24はビアホール21aを貫通して設けられたビア導体2と、ビア導体2,3の端部にそれぞれ接続された第1及び第2の表面導体4,5とを有している。
【0115】
ビア導体2,3には、導電性ペースト又は銅線等の導電性材料を用いることができ、第1及び第2の表面導体との接合は、半田付けによって、接続固定されているが、銅線等の塑性変形可能な導電性材料を用いる場合には、第1及び第5の実施の形態と同様に、それぞれの表面導体4,5,6(図示せず)に、それぞれの第1及び第2のビア導体2,3の端部にプラグ部2a,2b,3a,3bを形成しても良いことは勿論である。
【0116】
また、積層樹脂基板30の第1の樹脂基板21a,21bは、内側面に接着成分である接着層31,31を有し、第3の樹脂基板32は、両面及び収容部の内側面32aに接着層を有している。
【0117】
磁性体よりなる磁芯1は、扁平金属粉末をシート状に成形し、複数枚重ね合わせて平板に成形した成形体である。この扁平金属粉末は、平板の面内に配向している。
【0118】
なお、本発明において、磁化容易軸を扁平粉末を面内に配向した場合、面内方向の透磁率が高くなるという利点を有する。
【0119】
また、磁芯1の作製に、加圧成形を用いることによって、成形体に加圧力を与えても成形体の割れが無く、かつ磁気特性が変化しないため、基板への成形体封入が容易であるという利点を有している。
【0120】
コイル24に通電した際に発生する磁束は、磁芯1の平板の面内で還流している。磁芯1は、前記積層樹脂基板と共に加圧力を受けて当該積層樹脂基板と一体化している。接着成分は、磁芯1の空孔部に含浸している。
【0121】
ここで、磁芯1をなす成形体の空孔率は、接着層の接着成分が成形体に含浸して、基板と成形体を強固に一体化して、弾力と適度な変形余地を兼ね備えることができる5体積%以上であることが好ましく、一方、金属充填率、強度が不足しない25体積%以下であることが、好ましい。なお、5%より小では接着成分が含浸しない。
【0122】
成形体は、扁平金属粉末と前記扁平金属粉末とを結着するバインダとを含む。バインダ成分の体積率は、10体積%以上45体積%以下であることが好ましく、10体積%以上20体積%以下がより好ましい。その理由は、10%より小では強度が不足し、45%より大では耐加圧強度が不足(金属分比率を高める)するからである。
【0123】
また、金属材料ではあるが、粉末を絶縁体で結着させた構成であるため、周波数特性に優れる。フェライトと異なり脆性材料ではないため、加圧成形に耐える。
【0124】
また、扁平金属粉末の成形体に対する体積比は55体積%以上であることが好ましい。その理由は、成形体が55体積%以上の軟磁性金属成分を含有するため、高い飽和磁束密度を有しながら、フェライト相当の高透磁率が得られる。さrに、金属分の体積率65体積%以上で、金属分比率を高めることができる。
【0125】
図16(a)は本発明の第10の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタを示す断面図、
図16(b)は
図16(a)の積層基板内蔵型インダクタの斜視図である。
【0126】
図16(a)及び
図16(b)を参照すると、第10の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタ20は、一対の第1の樹脂基板21a,21bと、磁性体よりなる磁芯1を収容する口字形状の収容部32aを有する第3の樹脂基板32とを積層した積層樹脂基板30と、前記積層樹脂基板30に封入された口字形状の磁性体よりなる磁芯1と、前記積層樹脂基板30の磁芯1の周囲を貫通して設けられた第1及び第2のビアホール23a,23bと、前記第1及び第2のビアホール23a,23bを介して形成された一次側コイル24a,二次側コイル24bとを備えている。
【0127】
第1の樹脂基板21a、21bは、内側面に接着層31,31を有する絶縁性の樹脂基板を有する。
【0128】
第3の樹脂基板32は、スペーサとして機能し、両面及び収容部32aの内側面には、接着層31を有する。
【0129】
第1の樹脂基板21a,21bの表面に銅箔もしくは銅板からなる第1及び第2の表面導体4,5が形成され、口字形状の磁芯1の対向辺を夫々またぐように形成されている。
【0130】
第1及び第2の夫々の表面導体4,5の厚さは、第6乃至第9の実施の形態と同様に、100μm以下の導体膜を二層以上積層して形成されている。ここで、前述したように、表面導体の厚さは、一枚あたりの厚さが100μm以下の銅箔パターンを少なくとも2層以上用いて表面導体を形成する、表皮深さδは、1MHzにおいて約70μm、MHzにおいて約50μmであるため、1MHz以上での交流電気抵抗低減の観点からは、コイル導体をなす銅箔の厚みは70×2=140μm以下であることが望ましい。しかしながら、同時にコイル導体のトータルの断面積はできるだけ大きくして直流電気抵抗を低減することが望ましいので、コイル導体をなす100μm以下の銅箔パターンを2層以上用いることにより、トータルのコイル導体断面積を増大せしめる。
【0131】
一次側コイル24a及び二次側コイル24bが正面側及び後側に並列して形成されている。
【0132】
一次側コイル24aは、手前側及びすぐ後ろ側に列をなして形成された第1及び第2のビアホール23a,23bを貫通して設けられた第1及び第2のビア導体2,3と、第1及び第2のビア導体2,3の端部にそれぞれ接続された第1及び第2の表面導体4及び5とを有している。
【0133】
第1及び第2のビア導体2,3には、導電性ペースト又は銅線等の導電性材料を用いることができるが、第10の実施の形態においては、第1及び第2のビア導体2,3を銅線を用いており、第1乃至第4の表面導体4.5.26.27との接合は、ビアホール内にあらかじめ設けられた半田膜を用いた半田付けによるが、第1及び第2のビア導体2,3を銅線等の塑性変形可能な導電性材料を用いる場合には、第1乃至第5の実施の形態と同様に、それぞれの表面導体26,27に、それぞれのビア導体2,3の端部にプラグ部2a,2b,3a,3bを形成しても良いことは勿論である。
【0134】
二次側コイル24bは、一次側コイル24aと同様に、後側と、後ろ側より手前に列をなして形成されたビアホール23a,23bを貫通して設けられたビア導体2と、ビア導体2の端部にそれぞれ接続された第1及び第2の表面導体4及び5と、第1及び第2の表面導体(端子部材)6,6を有している。
【0135】
また、積層樹脂基板30の第1の樹脂基板21a,21bは、内側面に接着成分である接着層31,31を有し、第3の樹脂基板32は、表裏をなす両面及び収容部32の内側面に接着層31を有しているが、第1の樹脂基板21a,21bの内側面に形成されていれば、接着層31は有しなくても良い。
【0136】
磁性体よりなる磁芯1は、扁平金属粉末をシート状に成形し、このシートを複数枚重ね合わせて平板に加圧成形した成形体である。この扁平金属粉末は、平板の面内に配向している。
【0137】
なお、本発明において、磁化容易軸を扁平粉末を面内に配向した場合、面内方向の透磁率が高くなるという利点を有する。
【0138】
また、磁芯1の作製に、加圧成形を用いることによって、成形体に加圧力を与えても成形体の割れが無く、かつ磁気特性が変化しないため、基板への成形体封入が容易であるという利点を有している。
【0139】
一次側コイル24a及び二次側コイル24bに通電した際に発生する磁束は、平板の面内で還流している。磁芯1は、前記積層樹脂基板と共に加圧力を受けて当該積層樹脂基板と一体化している。接着成分は、磁芯1の空孔部に含浸している。
【0140】
ここで、磁芯1をなす成形体の空孔率は、接着層の接着成分が成形体に含浸して、基板と成形体を強固に一体化して、弾力と適度な変形余地を兼ね備えることができる5体積%以上であることが好ましく、一方、金属充填率、強度が不足しない25体積%以下であることが、好ましい。なお、5%より小では接着成分が含浸しない。ここで、成形体は、扁平金属粉末と前記扁平金属粉末とを結着するバインダとを含む。バインダ成分の体積率は、10体積%以上45体積%以下であることが好ましく、10体積%以上20体積%以下がより好ましい。その理由は、10%より小では強度が不足し、45%より大では耐加圧強度が不足(金属分比率を高める)するからである。
【0141】
また、金属材料ではあるが、粉末を絶縁体で結着させた構成であるため、周波数特性に優れる。フェライトと異なり脆性材料ではないため、加圧成形に耐える。
【0142】
また、扁平金属粉末の成形体に対する体積比は55体積%以上であることが好ましく、さらに、体積率を65体積%以上として、金属分比率をより高めることが、より好ましい。その理由は、成形体が55体積%以上の軟磁性金属成分を含有するため、高い飽和磁束密度を有しながら、フェライト相当の高透磁率が得られる。さらに、金属分の体積率65体積%以上で、金属分比率を高めることができる。
【0143】
以上説明したように、本発明の第6乃至第10の実施の形態によれば、扁平形状を有する軟磁性金属粉末の成形体よりなる磁芯を、積層樹脂基板の内部に、積層樹脂基板と一体化させて加圧封入するとともに、成形体を、体積分率で表した空孔率が5%以上30%以下であり、金属粉末を結合せしめるバインダ成分が10%以上40%以下であり、軟磁性金属粉末成分が55%以上85%以下とせしめることにより、積層樹脂基板との一体成形において、前記成形体は破壊されることなく樹脂基板と一体化するとともに、高い透磁率と飽和磁束密度を具有し、その結果、磁芯1が積層樹脂基板に封入されてなる、大きなインダクタンスを有するコイルを得ることができる。
【0144】
また、本発明の第6乃至第10の実施の形態では、樹脂基板に内蔵する磁芯の周囲に、空隙を設ける必要が無く、かつ、積層樹脂基板を積層する成形圧力が、封入される磁芯にも直接働く構成としているため、樹脂基板に内蔵する磁芯の体積を大きくできるとともに、信頼性が向上する。
【0145】
また、本発明の第6乃至第10の実施の形態においては、磁性体からなる磁芯1は5体積%以上の気孔を有するため、弾力と適度な変形余地を兼ね備えているため、加圧によって割れることが無い。また、5体積%以上の空孔を有し、樹脂基板の接着成分が当該気孔部に含浸されるようにしているため、樹脂基板と磁芯1を接合して一体化することができる。
【0146】
また、本発明においては、磁芯1として、扁平金属粉末が積層基板内蔵型インダクタがなす平面内に配向され成形された磁芯材料を用い、55体積%以上金属粉末が充填されている55体積%以上の金属成分を含有しているため、NiZnフェライトの二倍以上の重畳特性を有するとともに、高い比透磁率を有する金属薄帯金属薄帯等と異なり、周波数特性に優れるNiZnフェライトと同等の高周波特性を有する。
【0147】
さらに、本発明の第6乃至第10の実施の形態によれば、両面銅箔基板、乃至は、複数層の片面銅箔基板上に形成された導体パターンを用いてコイルを形成しているため、コイル導体の断面積を稼ぐと同時に、表皮効果による交流電気抵抗の増大を低減できる。
【0148】
また、本発明の第6乃至第10の実施の形態に積層基板内蔵型インダクタを製造するに際し、快削性を有する磁芯を基板に封入後、ビア加工を施して、樹脂基板に内蔵された磁芯を貫通するコイルの電流経路を形成できる。また、基板に磁芯を内蔵した後にビア加工を施すので、ビア加工による磁性体のひびカケ発生が防がれる。
【0149】
なお、本発明の実施の形態による積層基板内蔵型インダクタは、トランス型結合タイプ、カップルL型結合タイプ、スリット、ギャップありタイプのインダクタンス素子に提供できることは勿論である
【実施例】
【0150】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0151】
(実施例1)
I.まず、本発明の実施例及び比較例に係るシート状インダクタの作成について説明する。
【0152】
図8(a),(b)は本発明の実施例1によるシート状インダクタを示す斜視図及び平面図である。
【0153】
軟磁性金属の原料粉末として、平均粒径D50として55μmを有するFe−Si−Al系合金(センダスト)のガスアトマイズ粉末を用いた。粉末形状を扁平化するために、ボールミルを用いて、前記原料粉末に8時間の鍛造加工を施し、さらに、窒素雰囲気中で700℃、3時間の熱処理を加え、扁平形状を有する金属粉末であるセンダスト粉末を作製した。作製した扁平金属粉末の平均長径(Da)は60μmであり、平均最大厚さ(ta)は3μmであり、平均アスペクト比(Da/ta)は20である。上記扁平金属粉末を、増粘剤、及び熱硬化性バインダ成分と混合してスラリーを作製した。溶媒としては、エタノールを使用した。また、増粘剤としては、ポリアクリル酸エステルを使用した。熱硬化性バインダ成分としては、メチル系シリコーンレジンを使用した。
【0154】
上記ダイスロット法によって、上記スラリーをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布した。その後、60℃の温度下で1時間乾燥して溶媒を除去し、これによりシート状の予備成型体を得た。このとき磁場をかけなくても、扁平状金属粉末は、予備成型体の面内に配向される。
【0155】
上記の予備成型体を、抜型を用いて、横15mm縦10mmの長方形にカットした。カットした4枚の予備成型体を積層して金型中に封入した。封入した予備成型体に、150℃、20kg/平方センチメートルの成型圧力にて1時間の加圧成型を施した。
【0156】
成型歪を取り除くために、シート状インダクタを窒素雰囲気中にて、350単位、一時間の条件で加熱処理して、シート状インダクタを作製した。
【0157】
図8(a)に示すように、加圧成型後、厚さ(T)が0.9mm、幅(W)が15mm、長さ(L)11mmの成型体(磁芯1)が得られた。
【0158】
その後、
図8(b)に示すように、当該成型体1の所定の位置に、ドリル切削にて直径0.8ミリのビアホール1a,1bを設けた。さらにこの成型体10を、窒素雰囲気中で600℃、1時間の条件で熱処理し、磁芯1を作成した。当該磁芯1は、その体積抵抗率として10kΩ・cm以上の値を有している。また、当該磁芯1の密度は4.9g/ccであり、この密度から求めた金属成分の体積充填率は、約67%である。
【0159】
図8(a)に示すように、直径0.8ミリ、長さ1.8ミリを有する、絶縁皮膜を有しない銅線を作成し、ビアホールに挿入する第1及び第2のビア導体2,3として用いた。また、幅2ミリ、厚さ0.3ミリを有する、絶縁皮膜を有しない銅板を、所定の長さを有するように切断し、かつ、
図8(b)に示す位置にドリル切削にて直径0.8ミリの穴を開け、第1及び第2のビア導体2,3と接合するためのプラグ穴4a,4b,5a,5bになるようにして、第1及び第2の表面導体4,5として用いた。
【0160】
前記のようにして得られた各々の磁芯1に、第1及び第2のビア導体2,3を挿入し、また、所定位置に第1及び第2の表面導体4,5を配置した上で、ステンレス製の板にはさみ、15kgfの加圧を施して第1及び第2のビア導体2,3と第1及び第2の表面導体4,5を接合した。第1及び第2のビア導体2,3と第1及び第2の表面導体4,5の接合部において、第1及び第2のビア導体の両端2a,2b,3a,3bは加圧力により変形し、初期の直径0.8ミリよりも大きくなっていることを確認した。また、表面導体が、磁芯1の2平面よりも内側に埋没されていることが確認された。さらに、当該組み立て済みのシート状インダクタ10dを、窒素雰囲気にて650℃、1時間の条件で熱処理して、第1及び第2のビア導体2,3のプラグ部と第1及び第2の表面導体4,5のプラグ穴との接合部において、拡散接合を生じせしめ、プラグ部とプラグ穴との接合部における電気抵抗を低下させた。
【0161】
(比較例1〜3)
比較例に係るシート状インダクタの作製について説明する。
【0162】
市販のNi−Zn系フェライト焼結体に切断加工および厚み方向の研磨を施し、
図8(a)に示すものと同様な形状の、横15ミリ、縦10ミリ、厚さ0.9ミリの板状のNi−Zn系フェライト磁芯を作成した。NiZn系フェライト焼結体の透磁率は、1MHzにおける比透磁率の実数成分として200、260、550を有する3種類の材料を用いた。各々の焼結体の所定の位置に、超音波加工により、直径0.8ミリのビアホールを設け、比較例2,3、及び4の磁芯を作成した。当該磁芯は、その体積抵抗率として10kΩ・cm以上の値を有している。
【0163】
図8(a)に示すように、直径0.8ミリ、長さ1.8ミリを有する、絶縁皮膜を有しない銅線を作成し、ビアホールに挿入するビア導体2,3として用いた。また、幅2ミリ、厚さ0.3ミリを有する、絶縁皮膜を有しない銅板を、所定の長さを有するように切断し、かつ、
図8(b)に示す位置にドリル切削にて直径0.8ミリの穴を開け、第1及び第2のビア導体2,3と接合するためのプラグ穴4a,4b,5a,5bになるようにして、第1及び第2の表面導体4,5として用いた。
【0164】
前記のようにして得られた各々の磁芯に、第1及び第2のビア導体を挿入し、また、所定位置に第1及び第2の表面導体4,5を配置した上で、ステンレス製の板にはさみ、15kgfの加圧を施してビア導体と表面導体を接合した。ビア導体と表面導体の接合部において、ビア導体は加圧力により変形し、初期の直径0.8ミリよりも大きくなっていることを確認した。さらに、当該組み立て済みのシート状インダクタを、窒素雰囲気にて650℃、1時間の条件で熱処理して、ビア導体と表面導体の接合部において、拡散接合を生じせしめ、接合部における電気抵抗を低下させた。
【0165】
II.次に、本発明の実施例及び比較例に係るシート状インダクタの諸特性の評価について説明する。
【0166】
以上のようにして得られた実施例1、実施例2、比較例のシート状インダクタについて、1MHzのインダクタンスを測定した結果を
図9に、インダクタンスの周波数依存性を測定した結果を
図10に、作成時の破損発生率および特性評価結果のまとめを表1にそれぞれ示す。1MHzにおけるインダクタンスの測定にはヒューレットパッカード社(現アジレントテクノロジー社)のLCRメーターHP4284Aを用いた。また、インダクタンスの周波数特性の測定には、アジレントテクノロジー社のインピーダンスアナライザー4294Aを用いた。
【0167】
図9に示す通り、本発明にあたる実施例1のシート状インダクタで、Ni−Zn系フェライトインダクタと同等レベルのインダクタンスを有しており、また、1MHz以上まで渦電流損失などによるインダクタンスの低下が生じていない。さらに、良好な高周波特性を有することを特徴とするNi−Zn系フェライトを磁芯として用いた比較例2ないし4と同等以上の高周波まで高いインダクタンスを有していることが確認される。この事実は同時に、ビア導体と表面導体で形成されたコイル部分と、実施例1の磁芯が相互に密着した状態で高温熱処理を行っても、コイルのショートが生じていないことを示している。
【0168】
また
図10および表1に示すとおり、本発明にあたる実施例1のシート状インダクタでは、比較例2ないし4のNi−Zn系フェライト磁芯を用いたインダクタと比較して、バイアス電流を大きくしたときのインダクタンスが顕著に優れていることが分かる。具体的には、例えばバイアス電流を5Aとしたときのインダクタンスの値は、比較例2ないし4のNi−Zn系フェライト磁芯を用いたインダクタと比較して、概ね2倍程度のインダクタンスを有している。これは、Ni−Zn系フェライトと比較して高い飽和磁束密度を有する金属粉末を磁芯材料として用いているためであり、本発明の実施例1の構成を有するシート状インダクタは、大電流を通電してもインダクタンスが低下しにくい、大電流通電に適したインダクタであることが分かる。
【0169】
【表1】
【0170】
以上、本発明の実施例1について説明したが、増粘剤ないし成型用バインダとして用いたポリアクリル酸エステル、メチル系シリコーンレジン等の有機結合材の種類もしくは添加量については、成型の対象となる金属粉末の性状に応じて適宜選択、加減されるべきものである。特に、おおむね粉末の比表面積に比例して成型用のバインダ添加量を加減すれば、上記実施例と同様の好適な結果が得られることはいうまでもない。
【0171】
また、コイルの構成要素として、絶縁皮膜を有しない導体を用いたが、適切な部位に絶縁皮膜を有する導体を用いてもよい。また、加圧力による導体の接合に際しては、同時にヒュージングや電流パルスの通電を行い、接合の促進を行ってもよい。また、熱処理による接合部位の拡散接合の実施は必須ではないが、必要に応じ、接合部に金属粉ナノ粒子を介在させることにより、拡散接合の促進を行ってもよい。
【0172】
以上の説明は、本発明の実施の形態に係るシート状インダクタの効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成や使用される軟磁性金属粉末の材種は、上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0173】
(実施例2)
I.樹脂基板に内蔵する磁芯の耐加圧強度試験、並びに、樹脂基板との接合試験用の実施について説明する。
【0174】
軟磁性金属の原料粉末として、平均粒径D50として33μmを有するFe−3.5Si−2Cr合金の水アトマイズ粉末を用いた。粉末形状を扁平化するために、ボールミルを用いて、前記原料粉末に8時間の鍛造加工を施し、さらに、窒素雰囲気中で500℃、3時間の熱処理を加え、扁平形状を有するFe−3.5Si−2Cr粉末を得た。当該扁平金属粉末に対し、溶媒としてエタノール、増粘剤としてポリアクリル酸エステル、熱硬化性バインダ成分として、メチルフェニル系シリコーンレジンを混合してスラリーを作製し、ダイスロット法によりPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にスラリーを塗布した後、60℃で1時間乾燥して溶媒を除去し、予備成形体を得た。この際、前記扁平金属粉末100グラムに対するメチル系シリコーンレジンの添加量を、2重量%から20重量%の間の所定の水準に設定した。
【0175】
前記予備成形体を、抜型を用いて、横100ミリ、縦100ミリの正方形にカットし、得られた個片を、所定枚数積層して金型中に封入し、150℃、2MPaの成形圧力にて1時間の加圧成形を施した。さらにこの成形体1を、窒素雰囲気中で550℃、1時間の条件で熱処理して、耐加圧強度試験用のテストピースを各バインダ添加量水準あたり3枚作成した。当該テストピースの厚さは、0.3ミリである。
【0176】
当該テストピースの成形密度を、アルキメデス法により測定した。ここで、アルキメデス法により測定した、扁平化したFe−3.5Si−2Cr合金のみの真密度は7.6g/ccであり、メチルフェニル系シリコーンレジンの硬化後の真密度は、1.3g/ccである。また、メチルフェニル系シリコーンレジンは、窒素雰囲気中550℃1時間の熱処理条件で、20重量%の加熱減量を示す。増粘剤成分については、前記熱処理によってほぼ完全に熱分解し、磁芯中には残存しない。これらの数値から、熱処理済みの扁平金属粉末の成形体について、金属成分の体積充填率と、メチルフェニル系シリコーンレジン、すなわち、バインダの硬化後成分の体積充填率と、気孔率を計算した。
【0177】
また、前記テストピースを、鏡面研磨を施し厚み6ミリを有する二枚ステンレス板にはさみ、油圧プレス機を用いて15MPaの加圧を施し、割れや剥離の発生有無を確認して耐加圧強度の試験を実施した。
【0178】
また、前記の耐加圧強度試験用のテストピースと同様に作成して得られた横100ミリ、縦100ミリ、厚み0.3ミリを有する熱処理済みの成形体を、横100ミリ、縦100ミリ、厚さ0.3ミリのプリプレグ2枚の間に配置し、180℃、3MPa、1時間の条件で加圧接着した。さらに、このようにして得られた、扁平金属粉末の成形体と、加熱硬化されたプリプレグの積層体を、ダイシングソーを用いて、横15ミリ、縦15ミリ、厚み0.9ミリの個片に切断し、計36個の個片を得た。いずれの個片も、周囲4辺はダイシングソーによる切断面となるようにした。当該個片を、350度に加熱したホットプレートで1分間加熱し、扁平金属粉末の成形体と、プリプレグ層の間の剥離により、両者が分離する現象が発生したテストピースの個数を数え、樹脂基板との接合状態を評価する指標として採用した。
【0179】
以上の評価結果をまとめて表2に示す。耐加圧強度試験において、バインダ成分の体積率が7体積%、気孔率が33体積%の場合には、成形体の強度不足のため、耐加圧強度試験で割れが発生し、かつ、樹脂基板との接合体を切断した個片の扁平金属粉成形体部分において剥離が発生した。次に、バインダ成分の体積充填率が9.5体積%以上で46.5体積%以下であってかつ、気孔率が4体積%以上で25.5%以下の場合には、耐加圧強度試験において割れが発生しないと同時に、樹脂基板積層体の切断個片における剥離も発生していない。これは、バインダ成分の量が適切であって成形体が十分な強度を有していると共に、適度な気孔率を有しているため、プリプレグの接着成分が成形体の気孔部に含浸して互いに一体化し、成形体とプリプレグの層間強度が高く保たれているためと考えられる。次に、気孔率が2.5体積%以下の場合には、樹脂基板積層体の切断個片における剥離が発生した。これは、成形体の気孔率が低すぎるため、プリプレグの接着成分が成形体の気孔部に十分含浸しておらず、成形体とプリプレグの層間強度が不足していることに対応する。次に、バインダ成分が53体積%以上の場合には、耐加圧強度試験において割れが発生した。これは、成形体の空孔率が低すぎるため、成形体の弾力が低下し、加圧力が緩衝されない効果と、成形体の強度を保持するためのフィラーとしても作用する金属成分の体積充填率が低すぎるため、成形体の強度が保持されない効果が相乗的に作用したためである。
【0180】
全体として、バインダ成分の体積充填率が9.5%以上50%以下、気孔率が4%以上25.5%以下となるように組織を制御した場合に、耐加圧強度試験において成形体の割れが発生せず、かつ、樹脂基板積層体の切断個片において剥離が発生しない良好な結果が得られる。
【0181】
【表2】
【0182】
II.実施例1のシート状インダクタの磁芯の作製について説明する。
【0183】
軟磁性金属の原料粉末として、平均粒径D50として55μmを有するFe−Si−Al系合金(センダスト)のガスアトマイズ粉末を用いた。粉末形状を扁平化するために、ボールミルを用いて、前記原料粉末に8時間の鍛造加工を施し、さらに、窒素雰囲気中で700℃、3時間の熱処理を加え、扁平形状を有するセンダスト粉末を得た。作製した扁平金属粉末の平均長径(Da)は60μmであり、平均最大厚さ(ta)は3μmであり、平均アスペクト比(Da/ta)は20である。扁平金属粉末のアスペクト比は、圧縮した金属粉末に樹脂を含浸して硬化させ、当該硬化体を研磨して、走査電子顕微鏡にて研磨面上にある扁平金属粉末の形状を観察することによって求めた。詳しくは、30個の扁平金属粉末について、長径(D)と、最も厚い部位の厚さ(t)を測定し、アスペクト比(D/t)の平均値を計算した。
【0184】
当該センダスト粉末に対し、溶媒としてエタノール、増粘剤としてポリアクリル酸エステル、熱硬化性バインダ成分としてメチル系シリコーンレジンを混合してスラリーを作製し、ダイスロット法によりPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にスラリーを塗布した後、60℃で1時間乾燥して溶媒を除去し、予備成形体を得た。
【0185】
前記予備成形体を、抜型を用いて、横15ミリ、縦10ミリの長方形にカットし、得られた個片を、所定枚数積層して金型中に封入し、150℃、2MPaの成形圧力にて1時間の加圧成形を施した。加圧成形後の成形体の厚さは、0.9ミリである。
【0186】
実施例1と同様の磁芯1を作成するため、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、成形体1の所定の位置に、ドリル切削にて直径0.8ミリのビアホールを設けた。さらにこの成形体1を、窒素雰囲気中で650℃、1時間の条件で熱処理し、実施例1の磁芯1を作成した。当該磁芯1は、その体積抵抗率として10kΩ・cm以上の値を有している。また、当該磁芯の密度は4.9g/ccであり、この密度から求めた金属成分の体積充填率は、約67%、メチル系シリコーンレジンの硬化後成分の体積充填率は、約18%、気孔率は、約15%である。増粘剤成分については、前記熱処理によってほぼ完全に熱分解し、磁芯中には残存しない。
【0187】
III.次に、比較例5,6,7のシート状インダクタの磁芯の作製について説明する。
【0188】
市販のNi−Zn系フェライト焼結体に切断加工および厚み方向の研磨を施し、横15ミリ、縦10ミリ、厚さ0.9ミリの板状のNi−Zn系フェライト磁芯を作成した。NiZn系フェライト焼結体の透磁率は、1MHzにおける比透磁率の実数成分として200、260、550を有する3種類の材料を用いた。各々の焼結体の所定の位置に、超音波加工により、直径0.8ミリのビアホールを設け、比較例2および3および4の磁芯を作成した。当該磁芯は、その体積抵抗率として10kΩ・cm以上の値を有している。
【0189】
IV. コイル形成用導体部品の作成について説明する。
【0190】
直径0.8ミリ、長さ1.8ミリを有する、絶縁皮膜を有しない銅線を作成し、ビアホールに挿入するビア導体として用いた。また、幅2ミリ、厚さ0.3ミリを有する、絶縁皮膜を有しない銅板を、所定の長さを有するように切断し、かつ、所定の位置にドリル切削にて直径0.8ミリの穴を開け、ビア導体と接合するためのプラグ部分になるようにして、表面導体として用いた。
【0191】
さらに、実施例1、および、比較例5,6,7のインダクタの作製について説明する。
【0192】
前記のようにして得られた各々の磁芯に、ビア導体を挿入し、また、所定位置に表面導体を配置した上で、ステンレス製の板にはさみ、15kgfの加圧を施してビア導体と表面導体を接合した。得られたインダクタンス素子の構成の概略図は、
図8(a)及び
図8(b)に示したものと同様である。
【0193】
V.次に実施例2の積層基板内蔵型インダクタの作製について説明する。
【0194】
図17及び18に示すように、本発明の実施例2に係る、基板に磁芯が内蔵されたインダクタを作製するため、実施例1と同じくして得られる予備成形体を、抜型を用いて、横15ミリ、縦10ミリの長方形にカットし、得られた個片を、所定枚数積層して金型中に封入し、150℃、2MPaの成形圧力にて1時間の加圧成形を施した。加圧成形後の成形体1の厚さt1は、0.9ミリである。前記成形体1を、窒素雰囲気中で650℃、1時間の条件で熱処理して磁性体(磁芯)1を作製した。この磁芯1を、
図17及び
図18に示す構成のように、横15ミリ、縦10ミリ、穴をあけた厚み0.3ミリのプリプレグを3枚積み重ねた中央部に配置し、その上下に、コイル導体の一部をなす導体パターンを形成した厚み0.5ミリの片面銅箔基板を第1の樹脂基板21a,21bとして、配置し、3MPa、180℃、1時間の条件で加圧積層した。この加圧積層体の
図18に対応する所定の位置に、ドリル切削にて直径0.8ミリのビアホール23a,23bを設けた。当該ビアホールに、直径0.8ミリの銅線をビア導体2,3として挿入した。当該銅線と、前記片面銅箔基板上に形成された導体パターンを、半田付けによって接合し、
図17及び18に示すインダクタと同様な形状の積層樹脂基板に磁性体が内蔵されたインダクタを作成した。
【0195】
以上のようにして得られた、実施例1,比較例5,6,7、及び実施例2のインダクタについて、インダクタンスの周波数特性を測定した結果を
図19、1MHzにおけるインダクタンスのバイアス電流依存性を測定した結果を
図20に示す。1MHzにおけるインダクタンスの測定にはヒューレットパッカード社(現アジレントテクノロジー社)のLCRメーターHP4284Aを用いた。また、インダクタンスの周波数特性の測定には、アジレントテクノロジー社のインピーダンスアナライザー4294Aを用いた。
【0196】
図19に示す通り、本発明の実施例1,2のインダクタは、Ni−Zn系フェライトインダクタンス素子と同等レベルのインダクタンスを有しており、また、1MHz以上まで渦電流損失などによるインダクタンスの低下が生じていない。すなわち、実施例1及び2のインダクタンス素子は、良好な高周波特性を有するNi−Zn系フェライトを磁芯として用いた比較例5乃至7に係るインダクタと同等以上の高周波まで高いインダクタンスを有していることが確認される。
【0197】
また、
図20に示すとおり、本発明の実施例1,2に係るインダクタは、比較例5ないし7のNi−Zn系フェライト磁芯を用いたインダクタンス素子と比較して、バイアス電流を大きくしたときのインダクタンスが顕著に優れていることが分かる。具体的には、例えばバイアス電流を5Aとしたときのインダクタンスの値は、比較例5ないし7のNi−Zn系フェライト磁芯を用いたインダクタンス素子と比較して、概ね2倍程度のインダクタンスを有している。これは、Ni−Zn系フェライトと比較して高い飽和磁束密度を有する金属粉末を、実施例1,2の磁芯材料として用いているためであり、本発明の構成を有するインダクタンス素子は、大電流を通電してもインダクタンスが低下しにくい、大電流通電に適したインダクタとなっていることが分かる。
【0198】
さらに、
図19,
図20に示す通り、樹脂基板に磁芯が内蔵されてなる実施例2のインダクタンス素子の特性は、実施例1として示した、当該磁芯を樹脂基板に内蔵せずに作成したインダクタンス素子の特性とほとんど一致している。すなわち、本発明の実施例1の磁芯1の構成とすれば、磁芯1の基板内封入に際する加圧力によって磁芯が損傷する懸念がないことに留まらず、磁芯1が有する優れた磁気特性が、磁芯の基板内封入後も変わらずに維持されるという利点も有していることが分かる。
【0199】
以上の説明は、本発明の実施の形態に係る、積層樹脂基板内蔵型インダクタの効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成や使用される軟磁性金属粉末の材種は、上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。