特許第6062693号(P6062693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062693
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】オランザピン含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5513 20060101AFI20170106BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 9/28 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
   A61K31/5513
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61P25/24
   A61P25/18
   !A61K9/28
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-203437(P2012-203437)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-58461(P2014-58461A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】金井 匡平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】奥村 友則
(72)【発明者】
【氏名】岡村 康史
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531681(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/026864(WO,A1)
【文献】 特表2006−524650(JP,A)
【文献】 特開2010−070466(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/134097(WO,A1)
【文献】 Pharmaceutical Development and Technology,2000年,Vol.5,No.3,p.303-310
【文献】 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,2008年,Vol.97,No.2,p.883-892
【文献】 Pharmaceutical Technology,2011年,JANUARY,p.50-52
【文献】 ARKIVOC,2008年,Vol.2008,No.11,p.195-201
【文献】 J.Sep.Sci.,2008年,Vol.31,p.107-118
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/5513
A61K 47/32
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オランザピンと、過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンもしくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンとの混合物と、を含み、
過酸化物含有量が80ppm以上のクロスポビドンを含まないことを特徴とするオランザピン含有製剤。
【請求項2】
前記クロスポビドンの過酸化物含有量が1ppm以上50ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のオランザピン含有製剤。
【請求項3】
前記過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンもしくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンとの混合物を、前記オランザピン含有製剤100重量部に対して1重量部以上30重量部以下含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のオランザピン含有製剤。
【請求項4】
前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと前記過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンの配合比が、重量比で30:1〜1:10であることを特徴とする請求項1に記載のオランザピン含有製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オランザピン含有製剤に関する。特に、保存時の類縁物質の増加を抑制するオランザピン含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
統合失調症や双極性障害における躁症状の治療薬として、非定型抗精神病薬であるオランザピン(olanzapine)(2−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−4H−チエノ−〔2,3−b〕〔1,5〕ベンゾジアゼピン)(特許文献1)が広く用いられており、イーライリリー社よりジプレキサ(登録商標)として市販されている。最近、オランザピンは、双極性障害におけるうつ症状の改善効果が認められ、日本において、うつ症状に対する適用も承認された。
【0003】
オランザピンの作用機序としては、ドパミンDタイプ(D、D、D)、セロトニン5−HT2A、2B、2C、5−HT、α−アドレナリン及びヒスタミンH受容体に対してはほぼ同じ濃度範囲で高い親和性を示すのに対し、ドパミンDタイプ(D、D)やセロトニン5−HT受容体に対してはやや低い親和性で結合することから、受容体標的化による脳内作用部位への選択性によるものが考えられている。
【0004】
一般に、オランザピンは、長期保存時の褪色性に対する課題については、例えば、特許文献2や3に記載されているものの、長期間の保存に対しては、薬学的に許容し得る比較的安定な物質と考えられている。オランザピンは、高温・高湿度の条件下でも比較的安定な物質とされている。一方、例えば、特許文献4には、オランザピンの製造過程でオランザピン−4’−N−オキシドが望ましくない量で生成すること、有効成分としてオランザピンを含有する医薬組成物中に存在する4’−N−オキシド体の量は、保存期間中に増加すること、オランザピンと4’−N−オキシド体との間の構造類似性のため、2つの化合物の分離は煩雑であり、不可避的な損失を招くことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−89965号公報
【特許文献2】特表平11−502848号公報
【特許文献3】特表2001−501207号公報
【特許文献4】特表2009−515867号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Calligaro DO, Fairhurst J, Hotten TM, Moore NA, Tupper TM. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 1997, 1, 25-30.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが長期間の保存におけるオランザピン含有製剤の安定性について検証した結果、一般に処方される錠剤のオランザピン含有製剤に含まれるオランザピンが経時的に減少するとともに、類縁物質が増加することを見出した。また、増加した主な類縁物質として、上述した4’−N−オキシド体が認められた。非特許文献1には、4’−N−オキシド体はオランザピンの薬理学的特性に寄与しないことが報告されている。したがって、薬効成分であるオランザピンの経時的な減少は、抗精神病薬の処方においては好ましくはない。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであって、長期間の保存においても、類縁物質の増加を抑制するオランザピン含有製剤を提供することを目的とする。また、類縁物質の増加を抑制するとともに、製剤の十分な崩壊性を備えたオランザピン含有製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、オランザピンと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンもしくはそれらの混合物と、を含むオランザピン含有製剤が提供される。
【0010】
前記オランザピン含有製剤において、前記クロスポビドンの過酸化物含有量が1ppm以上50ppm以下であってもよい。
【0011】
前記オランザピン含有製剤において、前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物含有量が80ppm未満のクロスポビドンもしくはそれらの混合物を、前記オランザピン含有製剤100重量部に対して1重量部以上30重量部以下含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、長期間の保存においても、類縁物質の増加を抑制するオランザピン含有製剤が提供される。また、類縁物質の増加を抑制するとともに、製剤の十分な崩壊性を備えたオランザピン含有製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係るオランザピン含有製剤の組成及び物性を示す表である。
図2】本発明の一実施例に係るオランザピン含有製剤の崩壊試験結果を示す図である。
図3】本発明の一参照例に係るオランザピン含有組成物の性状を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、オランザピン含有製剤、特に錠剤において、4’−N−オキシド体を含む類縁物質が経時的に増加する原因について、鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、類縁物質の経時的な増加は、オランザピン含有製剤の添加剤である崩壊剤に起因することを見出した。本発明者らは、所定の物性を有する崩壊剤を用いた製剤により類縁物質の経時的な増加を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
以下、図面を参照して本発明に係るオランザピン含有製剤について説明する。但し、本発明のオランザピン含有製剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
上述したように、本発明者らは、オランザピン含有製剤に用いられる従来の添加剤と、類縁物質の経時的な増加との関係について検討した。その結果、崩壊剤として汎用されているクロスポビドンが、類縁物質を経時的に増加させていることを見出した。化学式(I)はオランザピンの構造式を示し、化学式(II)はオランザピンの4’−N−オキシド体の構造式を示す。
【化1】

・・・(I)

【化2】

・・・(II)
【0017】
4’−N−オキシド体は、オランザピンの4’位の窒素が酸化されることにより生成されることから、クロスポビドンに含まれる酸素がオランザピンを酸化する可能性が疑われる。そこで、市販されているクロスポビドンの組成について調査した結果、本発明者らは、クロスポビドンに含まれる過酸化物が、類縁物質の増加に影響することを見出した。従って、本発明者らは、オランザピン含有製剤の添加剤には、過酸化物の含有量が少ないものを用いることが重要であることを見出した。
【0018】
本発明に係る崩壊剤としては、過酸化物の含有量が少ないものが好ましく、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)または過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物を好適に用いることができる。崩壊剤として汎用されているものには部分α化デンプン等もあるが、後述するように、部分α化デンプンを用いると、オランザピン含有製剤の崩壊性が著しく低下するため好ましくない。本実施形態に係るオランザピン含有製剤においては、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物を含むことにより、類縁物質の経時的な増加を抑制するとともに、速やかな崩壊性を実現することができる。
【0019】
本実施形態の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては信越化学工業社のLH−21を用いることができる。
【0020】
本実施形態の過酸化物含有量が少ないクロスポビドンとしては、過酸化物含有量が80ppm未満であり、好ましくは、1ppm以上50ppm以下である。当該クロスポビドンとしては、例えばPOLYPLASDONE(登録商標) ULTRA(ISP Technologies社)、POLYPLASDONE(登録商標) ULTRA-10(ISP Technologies社)を用いることが出来る。
【0021】
前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)または過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物は、オランザピン含有製剤100重量部に対して1重量部以上30重量部以下含有することが好ましい。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンの混合物の配合比としては、重量比で30:1〜1:10であることが好ましく、20:1〜1:5であることがより好ましい。
【0022】
オランザピン含有製剤に用いる他の成分については、公知のものを用いることができる。
【0023】
(製造方法1)
本実施形態に係るオランザピン含有製剤、特に錠剤の製造方法としては、上述した崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物を用いる点以外は、公知の方法を用いることができる。例えば、所定量のオランザピン(例えば、2.5mg、5mg、10mg)、乳糖水和物、結晶セルロース、所定量の一部の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物を混合し、所定量のヒドロキシプロピルセルロースを含む水溶液を加えて造粒し、乾燥させ、造粒物とする。得られた造粒物を整粒し、所定量の残部の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物及び所定量のステアリン酸マグネシウムを混合して打錠前粉末とする。得られた粉末を打錠し、常法によりフィルムコーティグを被覆して錠剤とすることができる。
【0024】
(製造方法2)
本実施形態に係るオランザピン含有製剤、特に錠剤の製造方法としては、結晶セルロースの添加の順序を変更することもできる。例えば、所定量のオランザピン、乳糖水和物、所定量の全量の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたは過酸化物の含有量が少ないクロスポビドンもしくはそれらの混合物を混合し、所定量のヒドロキシプロピルセルロースを含む水溶液を加えて造粒し、乾燥させ、造粒物とする。得られた造粒物を整粒し、所定量の結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムを混合して打錠前粉末とする。得られた粉末を打錠し、常法によりフィルムコーティグを被覆して錠剤とすることもできる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
乳鉢にて、オランザピン1.5g、乳糖水和物61.29g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社、PH101)7.8g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社、LH-21)1.5gを混合し、そこにヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社、L)3.12gを含む水溶液を加えて練合した。続いて乾燥させて、造粒物を得た。得られた造粒物を篩22号で整粒し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース2.4gおよびステアリン酸マグネシウム0.39gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり130.0mgで打錠し、その後常法によりフィルムコーティグを被覆し、1錠あたり139.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0026】
(実施例2)
乳鉢にて、オランザピン1.5g、乳糖水和物61.29g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース3.9gを混合し、そこにヒドロキシプロピルセルロース3.12gを含む水溶液を加えて練合した。続いて乾燥させて、造粒物を得た。得られた造粒物を篩22号で整粒し、結晶セルロース7.8gおよびステアリン酸マグネシウム0.39gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり130.0mgで打錠し、その後常法によりフィルムコーティグを被覆し、1錠あたり139.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0027】
(実施例3)
実施例3として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに代えて、クロスポビドン(ISP Technologies社、POLYPLASDONE(登録商標) ULTRA−10(過酸化物含有量 8〜50ppm))を崩壊剤に用いた。その他の製造工程は、実施例1と同様である。
【0028】
(実施例4)
結晶セルロースを添加せずに、添加する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの総量を11.7gとした。その他の製造工程は、実施例1と同様である。
【0029】
(比較例1)
比較例1として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに代えて、クロスポビドン(BASF社、KOLLIDON(登録商標) CL-F(過酸化物含有量 80〜400ppm))を崩壊剤に用いた。その他の製造工程は、実施例1と同様である。
【0030】
(比較例2)
比較例2においては、造粒方法を流動層造粒とした。流動層造粒機にて、オランザピン5.0g、乳糖水和物204.3g、結晶セルロース26.0g、クロスポビドン(BASF社、KOLLIDON(登録商標) CL-F(過酸化物含有量 80〜400ppm))5.0gを混合し、そこにヒドロキシプロピルセルロース10.4gを含む水溶液をスプレー噴霧して造粒した。続いて乾燥させて、造粒物を得た。得られた造粒物を篩22号で整粒し、クロスポビドン8.0gおよびステアリン酸マグネシウム1.3gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり130.0mgで打錠し、その後常法によりフィルムコーティグを被覆し、1錠あたり139.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0031】
(比較例3)
比較例3として、実施例2の製造方法において、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに代えて、クロスポビドン(BASF社、KOLLIDON(登録商標) CL-F(過酸化物含有量 80〜400ppm))を崩壊剤に用いた。その他の製造工程は、実施例2と同様である。
【0032】
(比較例4)
比較例4として、実施例1の製造方法において、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとクロスポビドン(BASF社、KOLLIDON(登録商標) CL-F(過酸化物含有量 80〜400ppm))を併用した。このとき、添加するクロスポビドンの総量は2.94g、乳糖水和物は58.35gとした。その他の製造工程は、実施例1と同様である。
【0033】
(比較例5)
比較例5として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに代えて、部分α化デンプン(旭化成ケミカルズ社、PCS)を崩壊剤に用いた。その他の製造工程は、実施例1と同様である。
【0034】
(純度試験)
上述した実施例及び比較例のオランザピン含有製剤について、純度試験を行い、安定性を評価した。オランザピン含有製剤の安定性の評価は、温度60℃、湿度60%で4週間保存、及び温度40℃、湿度75%で4週間保存のオランザピン含有製剤における類縁物質の増加率を算出して行った。純度の測定は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて、下記の測定条件で、オランザピンのピーク面積(保持時間 約30分)を求め、オランザピン原薬のピーク面積に対する不純物の増加率を測定した。
(HPLC測定条件)
装置:Prominence LC−20AD(島津製作所)
検出器:紫外吸光光度計(220nm)
カラム:オクチルシリル化シリカゲル
カラム温度:35℃
移動相:30mMドデシル硫酸ナトリウム溶液(リン酸でpH2.5に調整)及びアセトニトリルの混液
流量:オランザピンの保持時間が約30分となるように調整した。
注入量:10μL
【0035】
(崩壊試験)
上述した実施例及び比較例のオランザピン含有製剤について、崩壊試験を行った。崩壊時間の測定は、崩壊試験器HM−4D(宮本理研工業)にて、第十五改正日本薬局方の崩壊試験に準じて、試験液に水を用いて、補助盤無しで行った。
【0036】
上述した実施例及び比較例のオランザピン含有製剤の組成、純度試験及び崩壊試験の結果を図1に示す。図2は、実施例及び比較例のオランザピン含有製剤の崩壊試験結果を示す図である。図1に示したように、温度60℃、湿度60%で4週間保存、及び温度40℃、湿度75%で4週間保存の何れにおいても、崩壊剤に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、過酸化物含有量の少ないクロスポビドンを用いた実施例は、従来のクロスポビドンを用いた比較例に比して、類縁物質の増加が抑制されていることが明らかである。また、製造方法が異なる実施例1及び2について、類縁物質の増加抑制効果は同程度であることがわかる。
【0037】
また、図1及び2に示したように、実施例のオランザピン含有製剤は速やかな崩壊性を示している。一方、崩壊剤に部分α化デンプンを用いた比較例5においては、著しい崩壊時間の遅延が認められ、オランザピン含有製剤の崩壊剤としては好ましくないことが示された。
【0038】
(クロスポビドンの過酸化物含有量とオランザピン含有組成物の安定性)
参照例として、図3にクロスポビドンに含有される過酸化物が、オランザピンの類縁物質の増加に与える影響について示す。オランザピンとクロスポビドンとの配合試験を次の様にして行った。オランザピン1gと、下記に示すクロスポビドン8gとを、乳鉢中で混合した。この混合物約1gを、4号褐色瓶に入れ、温度60℃、湿度60%開放下、及び、温度45℃、湿度75%開放下の条件で、4週間保存後に、純度試験を行い類縁物質の生成を調べた。クロスポビドンAとして(BASF社、KOLLIDON(登録商標) CL-F(過酸化物含有量 80〜400ppm))、クロスポビドンBとして(BASF社、KOLLIDON(登録商標) CL-M(過酸化物含有量 369〜1000ppm))、クロスポビドンCとして(ISP Technologies社、POLYPLASDONE(登録商標) XL-10(過酸化物含有量 95〜400ppm))、クロスポビドンDとして(ISP Technologies社、POLYPLASDONE (登録商標) INF-10(過酸化物含有量 172〜400ppm))、クロスポビドンEとして(ISP Technologies社、POLYPLASDONE(登録商標) ULTRA-10(過酸化物含有量 8〜50ppm))を用いた。図3に、初期値、温度60℃、湿度60%で4週間保存、及び温度40℃、湿度75%で4週間保存の結果を示す。過酸化物含有量の多いクロスポビドンA〜Dを用いたオランザピン含有組成物では類縁物質の著しい増加が確認されるが、過酸化物含有量の少ないクロスポビドンEでは類縁物質の増加が確認されるものの、その増加率は有意に低いことが明らかとなった。この結果は、崩壊剤としてクロスポビドンEに相当するような過酸化物含有量の少ないクロスポビドンが利用可能であることを示唆する。
図1
図2
図3