特許第6062736号(P6062736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062736
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20170106BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20170106BHJP
   C01B 32/984 20170101ALI20170106BHJP
   C01B 32/956 20170101ALI20170106BHJP
   F01N 3/28 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
   B01D53/86
   B01J27/224 A
   C01B31/36 601C
   C01B31/36 601Y
   !F01N3/28 301P
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-285529(P2012-285529)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124622(P2014-124622A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】箕迫 卓
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−059361(JP,A)
【文献】 特開2010−105861(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/070749(WO,A1)
【文献】 特表2010−516621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86
B01J 27/224
C01B 31/36
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程と、
前記ハニカム成形体を脱脂する脱脂工程と、
前記脱脂工程の後、前記炭素粒子及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程とを含み、
前記炭素粒子は、平均粒子径が異なる2種類以上の粒子からなり、10〜20μmの平均粒子径を有するアモルファスコークスを含むことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記炭素粒子は、40〜80nmの平均粒子径を有するカーボンブラックを含む請求項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記炭素粒子は、前記アモルファスコークスと、前記アモルファスコークスの平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するカーボンブラックとからなる請求項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記反応工程では、前記溶融シリコンを前記ハニカム成形体に含浸させる請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ハニカム成形体準備工程では、前記炭素粒子及びシリコン粒子を含むハニカム成形体を準備する請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記反応工程では、アルカリ金属のフラックスによってシリコンを溶融する請求項又はに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属は、ナトリウムである請求項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記ハニカム成形体が有する前記セルのいずれか一方の端部が封止されるように封止材ペーストを充填する封止工程をさらに含む請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック、乗用車等の車両及び建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレート(以下、PMともいう)が周囲の環境又は人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
そこで、排ガス中のPMを捕集し、排ガスを浄化するフィルタとして、多孔質セラミックからなるハニカム構造体が種々提案されている。
【0003】
このようなハニカム構造体においては、気孔率がフィルタの性能を決定するための非常に重要な因子である。そして、触媒の担持量の増加、及び、圧力損失の関係から、気孔率の大きいハニカム構造体が望まれている。
また、今後さらに排ガス規制の強化が予想されており、ハニカム構造体に多量の触媒を担持する必要があることが予想されている。そのため、気孔率のより大きいハニカム構造体の開発が待たれている。
【0004】
特許文献1には、有機ポリマー及び無機粒子からなる多孔体用造孔材と骨材粒子とを含む成形体用原料を混合、成形した後、焼成することを特徴とする多孔体(ハニカム構造体)の製造方法が開示されている。
また、特許文献1には、気孔率が45〜85%である多孔体(ハニカム構造体)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/068397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハニカム構造体を構成する材料のうち、炭化ケイ素は、耐熱性及び熱伝導性に優れているため好適に使用されている。
このような炭化ケイ素からなるハニカム構造体を製造する場合、特許文献1に記載の従来の製造方法では、炭化ケイ素粒子を骨材粒子として使用し、1000〜2300℃程度で焼成している。
しかしながら、特許文献1には、骨材粒子として炭化ケイ素粒子を使用する以外の方法は何ら開示されていない。
【0007】
また、特許文献1に記載の従来の製造方法を用いて、気孔率が70%を超えるハニカム構造体を製造する場合、脱脂工程を行った後の成形体が、僅かな外力によってその形状が崩れてしまうことが判明した。
そのため、実験室レベルでハニカム構造体を製造する場合には、このような脱脂後の成形体を人手により取り扱うことは可能であるものの、ハニカム構造体の量産化を想定した場合、このような脱脂後の成形体を機械により搬送することは極めて困難であるという問題に直面している。
【0008】
本発明は、炭化ケイ素からなる多孔質のハニカム構造体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の好ましい態様として、脱脂後の成形体を容易に搬送することができるハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、
炭素粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程と、
上記炭素粒子及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、特許文献1に記載の従来の製造方法と異なり、炭素粒子を含むハニカム成形体を準備する。そして、炭素粒子を溶融シリコンと反応させることによって、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する。
上記のような製造方法は、炭化ケイ素からなる多孔質のハニカム構造体の製造方法として新規なものである。
【0011】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記反応工程の前に、上記ハニカム成形体を脱脂する脱脂工程をさらに含む。
脱脂工程を行うことにより、ハニカム成形体に含まれる有機物を除去することができる。
【0012】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記炭素粒子は、平均粒子径が異なる2種類以上の粒子からなる。
炭素粒子が平均粒子径が異なる2種類以上の粒子からなる場合、脱脂工程を行った後も、ハニカム成形体の強度を保持することができる。相対的に小さい平均粒子径を有する粒子は、相対的に大きい平均粒子径を有する粒子の粒界部分に凝集及び/又は充填する。そのため、炭素粒子同士の接触面積が大きくなり、ハニカム成形体の強度を保持することができると考えられる。
その結果、ハニカム構造体の量産化を想定した場合であっても、脱脂後のハニカム成形体を機械により容易に搬送することができる。
【0013】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記炭素粒子は、10〜20μmの平均粒子径を有するアモルファスコークスを含む。
また、本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記炭素粒子は、40〜80nmの平均粒子径を有するカーボンブラックを含むことが好ましい
炭素粒子としてアモルファスコークス又はカーボンブラックを使用する場合、脱脂工程を行ったハニカム成形体の強度をより保持することができる。アモルファスコークス又はカーボンブラックには、揮発成分が含有されている。この揮発成分が、脱脂工程において、炭素粒子同士を結合するバインダー機能を発揮するため、ハニカム成形体の強度をより保持することができると考えられる。
【0014】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記炭素粒子は、アモルファスコークスと、上記アモルファスコークスの平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するカーボンブラックとからなることが好ましい
相対的に小さいカーボンブラックは、相対的に大きいアモルファスコークスの粒界部分に凝集及び/又は充填する。そのため、カーボンブラックとカーボンブラックとの間、及び、カーボンブラックとアモルファスコークスとの間の接触面積が大きくなる。また、アモルファスコークス及びカーボンブラックに含有されている揮発成分が、カーボンブラックとカーボンブラックとの間、及び、カーボンブラックとアモルファスコークスとの間におけるバインダー機能を発揮する。その結果、脱脂工程を行った後も、ハニカム成形体の強度を保持することができると考えられる。
【0015】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記反応工程では、溶融シリコンを上記ハニカム成形体に含浸させてもよい
このように、炭素粒子を含むハニカム成形体にシリコンを染み込ませることにより、炭素粒子及び溶融シリコンを反応させてもよい。
【0016】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記ハニカム成形体準備工程では、炭素粒子及びシリコン粒子を含むハニカム成形体を準備してもよい
このように、炭素粒子及びシリコン粒子を含むハニカム成形体を準備しておき、ハニカム成形体中の炭素粒子及びシリコン粒子を反応させてもよい。
【0017】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記反応工程では、アルカリ金属のフラックスによってシリコンを溶融することが好ましい
アルカリ金属を用いることによって、シリコンの融点が低下するため、容易にシリコンを溶融することができる。従って、反応工程を効率良く行うことができ、その結果、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を効率良く作製することができる。
【0018】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記アルカリ金属は、ナトリウムであることが好ましい。
【0019】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記ハニカム成形体準備工程では、炭素粒子を含む原料を成形することにより、上記ハニカム成形体を作製してもよい
つまり、反応工程の前に、ハニカム成形体を作製する工程があってもよい。
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記ハニカム成形体が有する上記セルのいずれか一方の端部が封止されるように封止材ペーストを充填する封止工程をさらに含むことが好ましい
セルのいずれか一方の端部を封止することにより、排ガス中のPMを捕集するためのフィルタとして機能するハニカム構造体を製造することができる。
【0021】
本発明のハニカム構造体は、
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を含むハニカム構造体であって、
上記炭化ケイ素質ハニカム焼結体のX線回折(XRD)プロファイルにおいて、炭化ケイ素の結晶構造は、3Cからなることを特徴とする。
また、上記炭化ケイ素の結晶構造は、3Cのみからなるものであってもよいし、2H、4H、6H及び15Rの少なくとも1つをさらに含むものであってもよい。
【0022】
炭素粒子を溶融シリコンと反応させることによって作製されている炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、上記の点において、炭化ケイ素粒子を含むハニカム成形体を焼成することによって作製されている炭化ケイ素質ハニカム焼成体と異なっている。
【0023】
ここで、炭化ケイ素を含むハニカム焼成体を焼成することによって作製されている炭化ケイ素質ハニカム焼成体においては、炭化ケイ素の結晶構造が主に4H及び6Hから構成されている。
3Cの結晶構造は、板状又は柱状方向に伸びやすいため、等軸的な粒子形状をしている4H及び6Hの結晶構造に比べて破壊靱性が大きくなり、機械的性質がやや優れている。そのため、3Cの結晶構造から構成される炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、機械的強度に優れている。
以上より、本発明のハニカム構造体は、炭化ケイ素質ハニカム焼成体が高気孔率であっても、使用中の振動に耐えることが可能である。
【0024】
本発明のハニカム構造体は、本発明のハニカム構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0025】
本発明のハニカム構造体では、上記炭化ケイ素質ハニカム焼結体の気孔率は、70〜95%であることが好ましい
そのため、ハニカム構造体に多量の触媒を担持することができる。
【0026】
本発明のハニカム成形体は、
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体であって、
炭素粒子を含む原料を成形することにより作製されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1(a)は、本発明の第一実施形態に係るハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示すハニカム成形体のA−A線断面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3(a)は、図2に示すハニカム構造体を構成するハニカム焼結体の一例を模式的に示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)に示すハニカム焼結体のB−B線断面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体のX線回折プロファイルである。
図5図5は、炭化ケイ素を含むハニカム成形体を焼成することにより作製された炭化ケイ素質ハニカム焼成体のX線回折プロファイルである。
図6図6(a)及び図6(b)は、実施例1で作製した炭化ケイ素質ハニカム焼結体の断面のSEM画像である。
図7図7(a)は、本発明の他の実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示したハニカム構造体のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0029】
(第一実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法、ハニカム構造体、及び、ハニカム成形体の一実施形態である第一実施形態について説明する。
【0030】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法は、
炭素粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程と、
炭素粒子及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程とを含むことを特徴とする。
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、反応工程において、溶融シリコンをハニカム成形体に含浸させる。
【0031】
以下、各工程について説明する。
なお、本明細書においては、「炭化ケイ素質ハニカム焼結体」を単に「ハニカム焼結体」とも表記する。
【0032】
まず、炭素粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程を行う。
【0033】
ハニカム成形体を準備する方法は特に限定されないが、例えば、炭素粒子を含む原料を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製することができる。
具体的には、まず、炭素粒子を含む粉末と、造孔材と、有機バインダと、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の原料(湿潤混合物)を調製する。
次に、上記湿潤混合物を押出成形機に投入して押出成形した後、所定の長さに切断することにより、所定の形状を有する生のハニカム成形体を作製する。
その後、上記生のハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、又は、凍結乾燥機等を用いて乾燥させることにより、ハニカム成形体を作製する。
【0034】
炭素粒子を含む粉末としては、例えば、アモルファスコークスと、上記アモルファスコークスの平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するカーボンブラックとの混合物を使用することができる。
この場合、炭素粒子を含む粉末として、10〜20μmの平均粒子径を有するアモルファスコークスと、40〜80nmの平均粒子径を有するカーボンブラックとの混合物を使用することが好ましい。
【0035】
上記のように作製されたハニカム成形体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム成形体である。
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係るハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示すハニカム成形体のA−A線断面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すハニカム成形体10には、多数のセル11がセル壁12を隔てて長手方向(図1(a)中、矢印aの方向)に並設されるとともに、その周囲に外周壁13が形成されている。
【0036】
本明細書において、ハニカム成形体は、生のハニカム成形体も含む概念とする。
【0037】
その後、ハニカム成形体を脱脂する脱脂工程を行うことが好ましい。
例えば、窒素雰囲気下において、ハニカム成形体を500〜700℃で加熱することにより、ハニカム成形体中の有機物を除去する。
【0038】
続いて、炭素粒子及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程を行う。
【0039】
具体的には、溶融したシリコンをハニカム成形体に含浸させ、反応焼結させる。
例えば、まず、ハニカム成形体及び金属シリコン粉末を同じ坩堝に入れて、不活性雰囲気下で加熱することにより、金属シリコンを溶融する。そして、溶融したシリコンをハニカム成形体に含浸させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製することができる。なお、金属シリコンは粉末でなくてもよい。
【0040】
反応工程では、アルカリ金属のフラックスによって溶融したシリコンをハニカム成形体に含浸させることが好ましい。
具体的には、ハニカム成形体及び金属シリコン粉末が入った坩堝とは別の坩堝にアルカリ金属を入れて、2つの坩堝を同じ容器内で加熱する。そして、アルカリ金属を蒸気にすることによって、シリコンを溶融することができる。
アルカリ金属のフラックスを用いることによって、シリコンの融点を低くすることができるため、容易にシリコンを溶融することができる。従って、反応工程を効率良く行うことができ、その結果、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を効率良く作製することができる。
【0041】
上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属の中では、ナトリウムが好ましい。
また、フラックスには、アルカリ金属の他、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム等)等のその他の元素が含まれていてもよい。
【0042】
アルカリ金属のフラックスによって溶融したシリコンをハニカム成形体に含浸させる場合、反応工程の条件は、700〜900℃、18〜36時間であることが好ましい。
また、反応工程は、不活性雰囲気下で行われることが好ましく、アルゴン雰囲気下で行われることがより好ましい。
【0043】
反応工程の後、フラックス成分であるアルカリ金属を蒸発させるために、不活性雰囲気下において、700〜800℃で加熱する加熱工程を行ってもよい。
加熱工程では、ハニカム焼結体に付着したアルカリ金属成分を蒸発させることができるとともに、未反応のカーボンを除去することもできる。
【0044】
上記の工程を経ることにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製することができる。
【0045】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼結体を作製することもできる。この場合、ハニカム成形体を作製した後、ハニカム成形体が有するセルの所定の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填してセルを封止する封止工程を行えばよい。
封止工程の後、上述した反応処理(脱脂工程を行う場合には、脱脂工程及び反応工程)を行うことにより、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼結体を作製することができる。
セルのいずれか一方の端部を封止することにより、排ガス中のPMを捕集するためのフィルタとして機能するハニカム構造体を製造することができる。
封止材ペーストは、例えば、炭素粒子を含む粉末と、バインダと、溶媒とを混合することにより作製することができる。
【0046】
続いて、少なくとも1つのハニカム焼結体を用いてセラミックブロックを作製する。
一例として、複数のハニカム焼結体が接着材層を介して結束されてなるセラミックブロックを作製する方法について説明する。
まず、上記ハニカム焼結体のそれぞれの所定の側面に、接着材層となる接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成し、この接着材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼結体を積層する工程を繰り返し、ハニカム焼結体の集合体を作製する。
次に、ハニカム焼結体の集合体を加熱して接着材ペースト層を乾燥、固化させて接着材層とすることにより、セラミックブロックを作製する。
ここで、接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0047】
その後、セラミックブロックに切削加工を施す。
具体的には、ダイヤモンドカッター等を用いてセラミックブロックの外周を切削することにより、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0048】
さらに、円柱状のセラミックブロックの外周面に、外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
また、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
以上の工程によって、ハニカム構造体を製造することができる。
【0049】
以下、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体について説明する。
図2は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3(a)は、図2に示すハニカム構造体を構成するハニカム焼結体の一例を模式的に示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)に示すハニカム焼結体のB−B線断面図である。
【0050】
図2に示すハニカム構造体100では、ハニカム焼結体110が複数個ずつ接着材層101を介して結束されてセラミックブロック103を構成し、さらに、このセラミックブロック103の外周に外周コート層102が形成されている。なお、外周コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
なお、ハニカム焼結体110は、図3(a)及び図3(b)に示す形状を有している。
このような、ハニカム焼結体が複数個結束されてなるハニカム構造体は、集合型ハニカム構造体ともいう。
【0051】
図3(a)及び図3(b)に示すハニカム焼結体110には、多数のセル111がセル壁112を隔てて長手方向(図3(a)中、矢印bの方向)に並設されるとともに、その周囲に外周壁113が形成されている。そして、セル111のいずれかの端部は、封止材114で封止されている。
従って、一方の端面が開口したセル111に流入した排ガスG(図3(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、必ずセル111を隔てるセル壁112を通過した後、他方の端面が開口した他のセル111から流出するようになっている。排ガスGがセル壁112を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル壁112は、フィルタとして機能する。
このように、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼結体を含むハニカム構造体は、セラミックフィルタとして好適に使用することができる。
【0052】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体では、炭化ケイ素質ハニカム焼結体のX線回折(XRD)プロファイルにおいて、炭化ケイ素の結晶構造は、3C型からなることを特徴とする。
なお、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体において、炭化ケイ素の結晶構造は、3Cのみからなるものであってもよいし、本発明の作用効果が阻害されない程度に3C以外の結晶構造が含まれていてもよい。3C以外の結晶構造としては、例えば、2H、4H、6H及び15R等が挙げられる。これらの3C以外の結晶構造は、いずれか1つが含まれていてもよいし、2つ以上が含まれていてもよい。
【0053】
図4は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体のX線回折プロファイルである。
図4より、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体では、炭化ケイ素の結晶構造が主に3Cからなることが分かる。
一方、図5は、炭化ケイ素を含むハニカム成形体を焼成することにより作製された炭化ケイ素質ハニカム焼成体のX線回折プロファイルである。
図5より、炭化ケイ素を含むハニカム成形体を焼成することにより作製された炭化ケイ素質ハニカム焼成体では、炭化ケイ素の結晶構造が主に4H及び6Hからなることが分かる。
【0054】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、主に炭化ケイ素粒子からなる。具体的には、炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、炭化ケイ素を60重量%以上含んでいる。炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、骨材としての多数の炭化ケイ素粒子が相互間に多数の細孔を保持した状態で結合することによって構成されている。
また、炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、炭化ケイ素を60重量%以上含む限り、炭化ケイ素以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、40重量%以下のケイ素を含んでいてもよい。炭化ケイ素質ハニカム焼結体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたケイ素含有炭化ケイ素であってもよいし、ケイ素又はケイ酸塩化合物で結合された炭化ケイ素であってもよい。
これらの中でも、炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、炭化ケイ素を98重量%以上含んでいるか、又は、炭化ケイ素と金属ケイ素とを98重量%以上含んでいることが好ましい。
【0055】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体の気孔率は、70〜95%であることが好ましい。
炭化ケイ素質ハニカム焼結体の気孔率は、例えば、湿潤混合物に含まれる造孔材の粒子径、造孔材の含有量、及び、炭素粒子の粒子径を変更することによって調整することができる。
【0056】
なお、ハニカム焼結体の気孔率は、以下の方法により測定することができる。
まず、ハニカム焼結体の任意の直交断面(クロスカット)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて150倍のSEM画像を撮影する。次に、上記SEM画像を2値化(白黒写真化)する。この時、白色の部分が基材に該当し、黒色の部分が気孔に該当する。そして、2値化したSEM画像における白色の部分と黒色の部分との境界を決定し、2値化したSEM画像をルーゼックスのソフトに取り込む。取り込まれた画像上では、水平方向に1ビットごとの厚さを有する短冊が作成される。そこで、各短冊において、黒色の部分から黒色の部分までの距離(黒色の部分の距離)、及び、白色の部分から白色の部分までの距離(白色の部分の距離)をそれぞれ測定する。全ての測定結果より、黒色の部分の距離及び白色の部分の距離の合計に対する黒色の部分の距離の割合を算出し、この値をハニカム焼結体の気孔率とする。
【0057】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法により製造することができる。
【0058】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法、及び、ハニカム構造体の作用効果について説明する。
(1)本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、炭素粒子を含むハニカム成形体を準備する。そして、炭素粒子を溶融シリコンと反応させることによって、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する。
上記のような製造方法は、炭化ケイ素からなる多孔質のハニカム構造体の製造方法として新規なものである。
【0059】
(2)本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、炭素粒子は、アモルファスコークスと、アモルファスコークスの平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するカーボンブラックとからなる。
炭素粒子が平均粒子径が異なる2種類の粒子からなる場合、脱脂工程を行う場合であっても、ハニカム成形体の強度を保持することができる。相対的に小さい平均粒子径を有する粒子は、相対的に大きい平均粒子径を有する粒子の粒界部分に凝集及び/又は充填する。そのため、炭素粒子同士の接触面積が大きくなり、ハニカム成形体の強度を保持することができると考えられる。
その結果、ハニカム構造体の量産化を想定した場合であっても、脱脂後のハニカム成形体を機械により容易に搬送することができる。
【0060】
(3)また、炭素粒子としてアモルファスコークス及びカーボンブラックを使用すると、脱脂工程を行ったハニカム成形体の強度をより保持することができる。アモルファスコークス及びカーボンブラックには、揮発成分が含有されている。この揮発成分が、脱脂工程において、炭素粒子同士を結合するバインダー機能を発揮するため、ハニカム成形体の強度をより保持することができると考えられる。
【0061】
(4)さらに、相対的に小さいカーボンブラックは、相対的に大きいアモルファスコークスの粒界部分に凝集及び/又は充填する。そのため、カーボンブラックとカーボンブラックとの間、及び、カーボンブラックとアモルファスコークスとの間の接触面積が大きくなる。また、アモルファスコークス及びカーボンブラックに含有されている揮発成分が、カーボンブラックとカーボンブラックとの間、及び、カーボンブラックとアモルファスコークスとの間におけるバインダー機能を発揮する。その結果、脱脂工程を行った後も、ハニカム成形体の強度を保持することができると考えられる。
【0062】
(5)本実施形態のハニカム構造体は、本実施形態のハニカム構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする。
炭素粒子を溶融シリコンと反応させることによって作製されている炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、炭化ケイ素の結晶構造が3Cからなる点において、炭化ケイ素粒子を含むハニカム成形体を焼成することによって作製されている炭化ケイ素質ハニカム焼成体と異なっている。
3Cの結晶構造から構成される炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、機械的強度に優れている。従って、本実施形態のハニカム構造体は、炭化ケイ素質ハニカム焼成体が高気孔率であっても、使用中の振動に耐えることが可能である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒子径12μmのアモルファスコークスの粉末12重量%と、平均粒子径50nmのカーボンブラックの粉末5重量%と、造孔材として平均粒子径40μmのアクリル粒子41重量%とを混合し、混合物を得た。得られた混合物に対して、有機バインダとしてメチルセルロース3重量%、及び、イオン交換水39重量%を加え、プラストグラフ(Brabender社製、W30/W50型)を用いて混練し、湿潤混合物を得た。
【0064】
上記湿潤混合物を、油圧ジャッキ式のバッチ式押出成形機(理研精機社製、P−18)に投入し、金型を用いて湿潤混合物を押出成形し、切断することにより、図3(a)及び図3(b)に示した形状と略同様の形状であって、セルを封止していない生のハニカム成形体を作製した。
【0065】
次に、熱風乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を100℃で24時間乾燥させることにより、ハニカム成形体を作製した。
【0066】
ハニカム成形体の所定のセルに、封止材ペーストを充填してセルの封止を行った。
封止材ペーストは、上述のアモルファスコークスの粉末と、カーボンブラックの粉末と、バインダと、溶媒とを混合することにより作製した。
【0067】
セルの封止を行ったハニカム成形体を、窒素100容量%雰囲気下において、600℃で2時間脱脂処理を行った。
【0068】
金属シリコン粉末、及び、脱脂処理を行ったハニカム成形体を同じ坩堝に入れた。また、ナトリウムを別の坩堝に入れた。
上記2つの坩堝を同じ反応容器内に入れて、反応容器内をアルゴンガスで封入した。
【0069】
上記のハニカム成形体等を800℃で24時間加熱し、反応焼結を行った。
ナトリウムの蒸気によって金属シリコンを溶融し、ハニカム成形体に溶融シリコンを染み込ませることによって、炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製した。
【0070】
さらに、アルゴン雰囲気において、700℃で24時間加熱し、ナトリウムを蒸発させた。
【0071】
その後、作製した炭化ケイ素質ハニカム焼結体を反応容器から取り出した。
実施例1で作製した炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、気孔率が80%、大きさが10mm×10mm×10mm、セルの数(セル密度)が31.0個/cm(200個/inch)、セル壁の厚さが0.4mmであった。
なお、炭化ケイ素質ハニカム焼結体の気孔率は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像を用いて測定した。
図6(a)及び図6(b)は、実施例1で作製した炭化ケイ素質ハニカム焼結体の断面のSEM画像である。
【0072】
次に、平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性の接着材ペーストを調製した。
そして、ハニカム焼結体の側面に接着材ペーストを塗布し、この接着材ペーストを介して上記ハニカム焼結体を縦4個、横4個の計16個接着させることにより、ハニカム焼結体の集合体を作製した。
さらに、ハニカム焼結体の集合体を180℃、45分で加熱して、接着材ペーストを乾燥固化させることにより、厚さが1.0mmの接着材層が形成された、四角柱状を有するセラミックブロックを作製した。
【0073】
続いて、ダイヤモンドカッターを用いて、セラミックブロックの外周を切断することにより、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックを作製した。
次に、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックの外周面に外周コート材ペーストを塗布し、外周コート材ペースト層を形成した。
この際、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストと同一の組成のペーストを使用した。
そして、この外周コート材ペースト層を120℃、60分で乾燥固化させて外周コート層を形成することにより、外周に外周コート層が形成された円柱状のハニカム構造体を作製した。
【0074】
実施例1では、80%という高い気孔率を有する炭化ケイ素質ハニカム焼結体からなるハニカム構造体を製造することができた。
また、実施例1では、脱脂処理後のハニカム成形体をピンセットで掴んでも、その形状が崩れないことが確認された。このようなハニカム成形体は、量産時の機械搬送にも充分に耐えることができると考えられる。
【0075】
(第二実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法、ハニカム構造体、及び、ハニカム成形体の一実施形態である第二実施形態について説明する。
【0076】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体の製造方法は、
炭素粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程と、
炭素粒子及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程とを含むことを特徴とする。
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、ハニカム成形体準備工程において、炭素粒子及びシリコン粒子を含むハニカム成形体を準備する。
【0077】
以下、各工程について説明する。
【0078】
まず、炭素粒子及びシリコン粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程を行う。
【0079】
ハニカム成形体を準備する方法は特に限定されないが、例えば、炭素粒子及びシリコン粒子を含む原料を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製することができる。
具体的には、まず、炭素粒子を含む粉末と、シリコン粒子を含む粉末と、造孔材と、有機バインダと、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の原料(湿潤混合物)を調製する。
次に、上記湿潤混合物を押出成形機に投入して押出成形した後、所定の長さに切断することにより、所定の形状を有する生のハニカム成形体を作製する。
その後、上記生のハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、又は、凍結乾燥機等を用いて乾燥させることにより、ハニカム成形体を作製する。
【0080】
本発明の第二実施形態におけるハニカム成形体準備工程は、湿潤混合物にシリコン粒子がさらに含まれている点を除いて、本発明の第一実施形態におけるハニカム成形体準備工程と共通する。従って、炭素粒子を含む粉末等に関する詳細な説明を省略する。
【0081】
上記のように作製されたハニカム成形体は、本発明の第二実施形態に係るハニカム成形体である。
本発明の第二実施形態に係るハニカム成形体は、シリコン粒子をさらに含む点を除いて、本発明の第一実施形態に係るハニカム成形体と共通する。従って、その詳細な説明を省略する。
【0082】
その後、ハニカム成形体を脱脂する脱脂工程を行うことが好ましい。
本発明の第二実施形態における脱脂工程の条件は、本発明の第一実施形態における脱脂工程の条件と共通するので、その詳細な説明を省略する。
【0083】
続いて、炭素粒子及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程を行う。
【0084】
具体的には、ハニカム成形体中の炭素及びシリコンを反応焼結させる。
例えば、まず、ハニカム成形体を坩堝に入れて、不活性雰囲気下で加熱することにより、ハニカム成形体中のシリコンを溶融する。そして、溶融したシリコンをハニカム成形体中の炭素粒子と反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製することができる。
【0085】
反応工程では、アルカリ金属のフラックスによって、ハニカム成形体中の炭素及びシリコンを反応させることが好ましい。
具体的には、ハニカム成形体が入った坩堝とは別の坩堝にアルカリ金属を入れて、2つの坩堝を同じ容器内で加熱する。そして、アルカリ金属を蒸気にすることによって、ハニカム成形体中のシリコンを溶融することができる。その結果、溶融したシリコンをハニカム成形体中の炭素粒子と反応させることができる。
【0086】
上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属の中では、ナトリウムが好ましい。
また、フラックスには、アルカリ金属の他、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム等)等のその他の元素が含まれていてもよい。
【0087】
本発明の第二実施形態における反応工程の条件は、本発明の第一実施形態における反応工程の条件と共通するので、その詳細な説明を省略する。
【0088】
反応工程の後、フラックス成分であるアルカリ金属を蒸発させるために、不活性雰囲気下において、700〜800℃で加熱する加熱工程を行ってもよい。
【0089】
上記の工程を経ることにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製することができる。
【0090】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼結体を作製することもできる。この場合、ハニカム成形体を作製した後、封止工程を行えばよい。
封止工程の後、上述した反応処理(脱脂工程を行う場合には、脱脂工程及び反応工程)を行うことにより、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼結体を作製することができる。
本発明の第二実施形態における封止工程の条件は、本発明の第一実施形態における封止工程の条件と共通するので、その詳細な説明を省略する。
【0091】
その後、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法で説明した、セラミックブロックを作製する工程、セラミックブロックに切削加工を施す工程、及び、必要に応じて外周コート層を形成する工程を行うことによって、ハニカム構造体を製造することができる。
【0092】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と共通の構成を備えている。
【0093】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体では、炭化ケイ素質ハニカム焼結体のX線回折(XRD)プロファイルにおいて、炭化ケイ素の結晶構造は、3C型からなることを特徴とする。
なお、本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体において、炭化ケイ素の結晶構造は、3Cのみからなるものであってもよいし、本発明の作用効果が阻害されない程度に3C以外の結晶構造が含まれていてもよい。3C以外の結晶構造としては、例えば、2H、4H、6H及び15R等が挙げられる。これらの3C以外の結晶構造は、いずれか1つが含まれていてもよいし、2つ以上が含まれていてもよい。
【0094】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、主に炭化ケイ素粒子からなる。具体的には、炭化ケイ素質ハニカム焼結体は、炭化ケイ素を60重量%以上含んでいる。
炭化ケイ素質ハニカム焼結体については、本発明の第一実施形態で説明しているので、その詳細な説明を省略する。
【0095】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼結体の気孔率は、70〜95%であることが好ましい。
【0096】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体は、本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体の製造方法により製造することができる。
【0097】
本発明の第二実施形態では、本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(5)を発揮することができる。
【0098】
(その他の実施形態)
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、複数のハニカム焼結体が接着材層を介して結束されてなるセラミックブロックを作製する方法について説明した。
しかしながら、本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、1つのハニカム焼結体を用いてセラミックブロックを作製してもよい。つまり、1つのハニカム焼結体からなるハニカム構造体を製造してもよい。このような、1つのハニカム焼結体からなるハニカム構造体は、一体型ハニカム構造体ともいう。
【0099】
図7(a)は、本発明の他の実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示したハニカム構造体のC−C線断面図である。
図7(a)及び図7(b)に示すハニカム構造体200は、多数のセル211がセル壁212を隔てて長手方向(図7(a)中、矢印cの方向)に並設された略円柱状の1つのハニカム焼結体からなるセラミックブロック203を有し、セラミックブロック203の周囲に外周コート層202が形成されてなる。なお、外周コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
【0100】
図7(a)及び図7(b)に示すハニカム構造体200では、セル211のいずれかの端部が封止材214で封止されている。従って、一方の端面が開口したセル211に流入した排ガスG(図7(b)中、排ガスをGで表し、排ガスの流れを矢印で示す)は、必ずセル211を隔てるセル壁212を通過した後、他方の端面が開口したセル211から流出するようになっている。従って、セル壁212がPM等を捕集するためのフィルタとして機能する。
【0101】
一体型ハニカム構造体を製造する場合には、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、本発明の第一実施形態において説明したハニカム成形体の大きさに比べて大きく、その外形が異なる他は、本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム成形体を作製する。
つまり、得られるハニカム成形体の形状に対応する断面形状を有する他は、本発明の第一実施形態で用いた金型と同様の構成を有する金型を用いてハニカム成形体を作製すればよい。
【0102】
その他の工程は、本発明の第一実施形態で説明したハニカム構造体の製造工程と同様である。ただし、ハニカム構造体が1つのハニカム焼結体からなるため、ハニカム焼結体の集合体を作製する必要はない。また、円柱状のハニカム成形体を作製する場合には、セラミックブロックの外周を切削する必要はない。
【0103】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、断面形状が異なる複数種類のハニカム焼結体を作製し、複数種類のハニカム焼結体を組み合わせて、ハニカム焼結体が接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックを作製してもよい。これにより、セラミックブロックの外周を切削することを省略することができる。
なお、断面形状の異なるハニカム焼結体は、それぞれ、金型の形状を変更することにより作製することができる。この場合にも、得られるハニカム成形体の形状に対応する断面形状を有する他は、本発明の第一実施形態で用いた金型と同様の構成を有する金型を用いてハニカム成形体を作製すればよい。
【0104】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、複数のハニカム焼結体が接着材層を介して結束されてなるセラミックブロックを作製する場合、接着材ペーストを各ハニカム焼結体の側面に塗布する方法以外に、例えば、作製するセラミックブロック(又はハニカム焼結体の集合体)の形状と同形状の型枠内に各ハニカム焼結体を仮固定した状態とし、接着材ペーストを各ハニカム焼結体間に注入する方法等によって行ってもよい。
【0105】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、ハニカム成形体を脱脂する脱脂工程は必須の工程ではない。
【0106】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、ハニカム成形体を脱脂する場合、脱脂工程の条件は特に限定されず、ハニカム成形体に含まれる有機物の種類及び量によって適宜選択されるが、500〜700℃、2〜3時間であることが好ましい。
また、脱脂工程は、不活性雰囲気下で行われることが好ましく、窒素又はアルゴンを含む雰囲気下で行われることがより好ましい。雰囲気中の窒素濃度(窒素に換算した含有量)は特に限定されないが、85〜100容量%であることが好ましい。
【0107】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、ハニカム成形体が有するセルのいずれか一方の端部が封止されるように封止材ペーストを充填する封止工程は必須の工程ではない。
セルのいずれの端部も封止されていないハニカム焼結体を含むハニカム構造体は、触媒担体として好適に使用することができる。
【0108】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、湿潤混合物に含まれる炭素粒子を含む粉末として、アモルファスコークスと、上記アモルファスコークスの平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するカーボンブラックとの混合物を使用する場合について説明した。
しかしながら、本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、炭素粒子を含む粉末は、特に限定されない。
炭素粒子を含む粉末の中では、非晶質カーボンからなる粉末が好ましい。非晶質カーボンの具体例としては、アモルファスコークス、カーボンブラック、活性炭、及び、樹脂の炭化物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、アモルファスコークス及びカーボンブラックがより好ましい。
【0109】
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、炭素粒子が、平均粒子径が異なる2種類の粒子からなる場合について説明した。
しかしながら、本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、平均粒子径が異なる1種類の粒子からなっていてもよいし、平均粒子径が異なる2種類以上の粒子からなっていてもよい。
【0110】
平均粒子径が異なっている限り、炭素粒子を含む粉末としては、同じ種類の粉末を用いてもよいし、異なる種類の粉末を用いてもよい。
特に、炭素粒子は、アモルファスコークスと、前記アモルファスコークスの平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するカーボンブラックとからなることが好ましい。
この場合、炭素粒子は、10〜20μmの平均粒子径を有するアモルファスコークスと、40〜80nmの平均粒子径を有するカーボンブラックとからなることがより好ましい。
【0111】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、湿潤混合物中の炭素粒子を含む粉末の含有量は、10〜30重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。
炭素粒子を含む粉末の含有量が10重量%未満であると、反応工程後のハニカム焼結体を構成する炭化ケイ素の含有量が少なくなりすぎるため、ハニカム焼結体の強度が充分に得られにくくなる。一方、炭素粒子を含む粉末の含有量が30重量%を超えると、湿潤混合物中の造孔材の含有量が少なくなりすぎるため、気孔率の高いハニカム焼結体が得られにくくなる。
【0112】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、湿潤混合物に含まれる造孔材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル粒子、デンプン、ビール粕、及び、クルミ殻等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
造孔材としては、アクリル粒子が好ましく、球状アクリル粒子がより好ましい。
【0113】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、造孔材の粒子径は、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、30〜60μmであることがより好ましい。
排ガスを浄化するフィルタとして使用する際に、フィルタとしての性能に優れたハニカム構造体を製造することができる。
造孔材の粒子径が20μm未満であると、必要な体積の気孔を得るために多量の造孔材が必要となる。その結果、造孔材由来の有機分が増えるため、脱脂時に多量の熱量が発生し、ハニカム脱脂体が崩れやすくなる。一方、造孔材の粒子径が100μmを超えると、気孔が分散されずに偏在しやすくなる。その結果、局所的に機械的強度が弱くなる部分が発生するため、反応工程後のハニカム焼結体の強度が低下しやすくなる。
【0114】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、湿潤混合物中の造孔材の含有量は、20〜60重量%であることが好ましく、30〜50重量%であることがより好ましい。
気孔率が高く、かつ、充分な強度を有するハニカム焼結体とすることができる。
湿潤混合物中の造孔材の含有量が20重量%未満であると、気孔率の高いハニカム焼結体が得られにくくなる。一方、湿潤混合物中の造孔材の含有量が60重量%を超えると、反応工程後のハニカム焼結体を構成する炭化ケイ素の含有量が少なくなりすぎるため、ハニカム焼結体の強度が充分に得られにくくなる。
【0115】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、湿潤混合物に含まれる有機バインダとしては、特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、メチルセルロースが望ましい。有機バインダの配合量は、通常、炭素粒子を含む粉末及び造孔材100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。
【0116】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、湿潤混合物には、可塑剤及び潤滑剤の少なくとも1つが含まれていてもよい。
可塑剤としては、特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。
また、潤滑剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0117】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。
さらに、湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。
成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0118】
接着材ペースト及び外周コート材ペーストに含まれる無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダの中では、シリカゾルが望ましい。
【0119】
接着材ペースト及び外周コート材ペーストに含まれる有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダの中では、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0120】
接着材ペースト及び外周コート材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が望ましい。
【0121】
接着材ペースト及び外周コート材ペーストに含まれる無機繊維及び/又はウィスカとしては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維及び/又はウィスカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナ繊維が望ましい。また、無機繊維は、生体溶解性繊維であってもよい。
【0122】
さらに、接着材ペースト及び外周コート材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが好ましい。
【0123】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体を構成するハニカム焼結体のセル壁には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよい。
担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、ゼオライト等を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0124】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体の形状は、円柱状に限定されるものでなく、楕円柱状、長円柱状、多角柱状等の任意の柱の形状であればよい。
【0125】
また、本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体をフィルタとして使用する場合には、ハニカム構造体を構成するハニカム焼結体の平均気孔径は、5〜30μmであることが望ましい。
ハニカム焼結体の平均気孔径が5μm未満であると、ハニカム焼結体が目詰まりを起こしやすくなる。一方、ハニカム焼結体の平均気孔径が30μmを超えると、パティキュレートがハニカム焼結体の気孔を通り抜けてしまい、ハニカム焼結体がパティキュレートを捕集することができず、ハニカム構造体がフィルタとして機能することができない。
なお、上記気孔径は、従来公知の方法である水銀圧入法により測定することができる。
【0126】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体を構成するハニカム焼結体の断面におけるセル密度は、特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm(200個/inch)、望ましい上限は、93.0個/cm(600個/inch)、より望ましい下限は、38.8個/cm(250個/inch)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500個/inch)である。
【0127】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体を構成するハニカム焼結体のセル壁の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1〜0.4mmであることが望ましい。
セル壁の厚さが0.1mm未満であると、セル壁の厚さが薄くなりすぎるため、ハニカム焼結体の強度を保つことができなくなる。一方、セル壁の厚さが0.4mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を引き起こしやすくなる。
【0128】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体を構成するハニカム焼結体の外周壁の厚さは、セル壁の厚さと同一であってもよいし、セル壁の厚さよりも厚くてもよいが、ハニカム焼結体の強度の観点から、セル壁の厚さよりも厚いことが望ましい。
ハニカム焼結体の外周壁の厚さが、セル壁の厚さよりも厚い場合、外周壁の厚さは、セル壁の厚さの1.3〜3.0倍であることが望ましい。
【0129】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法において、製造するハニカム構造体を構成するハニカム焼結体の各セルのハニカム焼結体の長手方向に垂直な断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、四角形、五角形、六角形、台形、八角形等の任意の形状であればよい。また、種々の形状を混在させてもよい。
【0130】
本発明のハニカム構造体の製造方法においては、炭素粒子を含み、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を準備するハニカム成形体準備工程と、上記ハニカム成形体及び溶融シリコンを反応させることにより、多孔質の炭化ケイ素質ハニカム焼結体を作製する反応工程とを行うことを必須の構成要素としている。また、本発明のハニカム構造体においては、本発明のハニカム構造体の製造方法により製造されていることを必須の構成要素としている。
係る必須の構成要素に、本発明の第一実施形態、及び、その他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、炭素粒子を含む粉末の種類及び含有量、造孔材の種類及び含有量、封止工程の有無及び条件、脱脂工程の有無及び条件、並びに、反応工程の条件等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0131】
10 ハニカム成形体
11、111、211 セル
12、112、212 セル壁
13、113 外周壁
100、200 ハニカム構造体
101 接着材層
102、202 外周コート層
103、203 セラミックブロック
110 ハニカム焼結体
114、214 封止材
G 排ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図6