(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062744
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】金属−ガラス複合材及び金属−ガラス複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/04 20060101AFI20170106BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20170106BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20170106BHJP
C03C 27/04 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B32B15/04 B
B32B17/06
B32B27/00 101
C03C27/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-6638(P2013-6638)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-136388(P2014-136388A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正太郎
【審査官】
飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−301315(JP,A)
【文献】
特表2011−518893(JP,A)
【文献】
特開平08−268735(JP,A)
【文献】
特開昭36−023722(JP,A)
【文献】
特開昭55−014820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C03C 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性金属材と、ガラス材と、前記非磁性金属材と前記ガラス材とを接着するポリメタロシロキサンまたはポリボロシロキサンからなる樹脂層と、を含む金属−ガラス複合材であって、
前記樹脂層は、熱膨張係数が前記非磁性金属材と近似する磁性金属粉を含有した第1の接着層を有し、
前記第1の接着層中の磁性金属粉の濃度が、非磁性金属材側からガラス材側にかけて漸減していることを特徴とする金属−ガラス複合材。
【請求項2】
前記樹脂層は、前記磁性金属粉を含有しない第2の接着層を有し、
前記第1の接着層が前記非磁性金属材との界面側に積層される一方、前記第2の接着層が前記ガラス材との界面側に積層されることを特徴とする請求項1に記載の金属−ガラス複合材。
【請求項3】
非磁性金属材の表面に、熱膨張係数が前記非磁性金属材と近似する磁性金属粉を添加したポリメタロシロキサンまたはポリボロシロキサンからなる第1の接着層を塗布し、
前記第1の接着層の厚み方向において、前記非磁性金属材の表面から離間するにつれて濃度が漸減するように前記磁性金属粉の濃度勾配を形成し、
ガラスの表面に、ポリメタロシロキサンまたはポリボロシロキサンからなる第2の接着層を塗布し、
前記第1の接着層の塗布面と、前記第2の接着層の塗布面を合わせ、加圧加熱を行う金属−ガラス複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記濃度勾配の形成において、前記非磁性金属材の、前記第1の接着層を有する面と対応する側から磁力線を加える請求項3に記載の金属−ガラス複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性金属とガラスとからなる金属−ガラス複合材に係り、さらに詳しくは、耐冷熱サイクル特性に優れた非磁性金属とガラスとからなる金属−ガラス複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種金属の表面に耐熱性、耐食性、電気絶縁性などを持たせることを目的として、ポリボロシロキサン樹脂などの無機ポリマー系樹脂を塗布し高温で焼付けることによって、金属表面に無機ポリマー系樹脂層を設ける技術が知られている。
【0003】
ところで、合わせガラスの製造手法として、ポリイミド等の耐熱性樹脂を当該合わせガラスの中間接着膜として採用したものが知られている。ただし、上記手法によって製造される合わせガラスは、十分な耐熱性を有さない。つまり、当該合わせガラスは、例えば、400℃程度の熱によって分解する、あるいは、その程度の熱により脆化して柔軟性を喪失し易い、等の問題点がある。ここで、ポリボロシロキサンを溶媒に溶解し、無機質充填剤を添加してなる耐熱性電気絶縁塗料が知られている(特許文献1等参照)。しかしながら、上記特許文献では、当該耐熱性電気絶縁塗料を金属−ガラス複合材用中間接着膜に採用することについては一切述べられていない。
【0004】
そこで、金属−ガラス複合材を形成するにあたり、その中間接着膜にポリメタロシロキサン、好適例としてポリボロシロキサン等の耐熱性樹脂層を介在させることにより、耐熱性に優れた金属‐ガラス複合材が生成できる。
【0005】
ところで、金属とガラスの複合化には、高い接合強度とともに、ガラスの熱膨張率が金属の熱膨張率に比べて十分小さいため、この熱膨張差に起因する欠点の発生を抑制することが要求される。すなわち、熱膨張率が金属材と大きく異なるガラス材を中間接着膜を介して金属材に接着すると、接着後の冷却過程で熱膨張差に起因する残留応力が生じ、外部応力との相乗によって接着強度が大幅に低下するおそれがある。また、接着後に冷却過程や冷熱サイクルの付加によって応力の最大点からクラックが発生し、終には金属‐ガラス複合材の剥離破壊を招くおそれがある。
【0006】
しかるに、上述したような従来の技術では、熱膨張差に起因する欠点を十分に抑制するまでには至っておらず、未だ、冷熱サイクルなどの付加に対して十分な信頼性を有する複合材が得られていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−36168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に対処してなされたもので、冷熱サイクルなどの付加によってクラックや剥離などを招くことのない、高い信頼性を有する金属−ガラス複合材及び当該金属−ガラス複合材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属−ガラス複合材は、非磁性金属材と、ガラス材と、前記非磁性金属材と前記ガラス材とを接着する樹脂層と、を含む金属−ガラス複合材であって、前記樹脂層は、熱膨張係数が前記非磁性金属材と近似する磁性金属粉を含有した第1の接着層を有し、前記第1の接着層中の磁性金属粉の濃度が、非磁性金属材側からガラス材側にかけて漸減していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の金属−ガラス複合材において、前記樹脂層は、前記磁性金属粉を含有しない第2の接着層を有し、前記第1の接着層が前記非磁性金属材との界面側に積層される一方、前記第2の接着層が前記ガラス材との界面側に積層されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の金属−ガラス複合材において、前記樹脂層を構成する樹脂は、無機ポリマー系樹脂であることを特徴とする。
また、本発明の金属−ガラス複合材において、前記無機ポリマー系樹脂がポリメタロシロキサンであることを特徴とする。
また、本発明の金属−ガラス複合材において、前記無機ポリマー系樹脂がポリボロシロキサンであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の金属−ガラス複合材の製造方法において、非磁性金属材と、ガラス材と、前記非磁性金属材と前記ガラス材とを接着する樹脂層と、を含む金属−ガラス複合材の製造方法であって、無機ポリマー系樹脂に、熱膨張係数が前記非磁性金属材と近似する磁性金属粉を添加して第1の樹脂塗料を生成する生成工程と、前記生成工程で生成した第1の樹脂塗料を前記非磁性金属材の表面に塗布するとともに、塗布した前記第1の樹脂塗料の厚み方向において、前記非磁性金属材の表面から離間するにつれて濃度が漸減するように前記磁性金属粉の濃度勾配を形成する塗布工程と、前記塗布工程で塗布した第1の樹脂塗料を含む樹脂層により前記非磁性金属材と前記ガラス材とを接着する接着工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の金属−ガラス複合材の製造方法において、前記生成工程において、前記第1の樹脂塗料を生成するとともに、前記磁性金属粉を添加しない第2の樹脂塗料を生成し、前記塗布工程の後に、前記第2の樹脂塗料を前記ガラス材の表面に塗布する第2の塗布工程をさらに備え、前記樹脂層は前記第2の樹脂塗料を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の金属−ガラス複合材の製造方法において、前記塗布工程において、磁力線が前記非磁性金属材の表面から当該表面と対向する面へ向かう磁場を形成することで前記磁性金属粉の濃度勾配を形成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の金属−ガラス複合材の製造方法において、前記無機ポリマー系樹脂がポリメタロシロキサンであることを特徴とする。
また、本発明の金属−ガラス複合材の製造方法において、前記無機ポリマー系樹脂がポリボロシロキサンであることを特徴とする。
本発明に用いられる非磁性金属材としては、銅合金やアルミ合金などがあげられる。
【0016】
また、このような非磁性金属材とガラス材との間に介在させる耐熱性樹脂の接着層としては、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラン、ポリシラスチレン、ポリシラザン、ポリチタノカルボシラン、ポリシロキサン(シリコーン樹脂)などの耐熱性に優れた無機ポリマー系樹脂中に、上記非磁性金属材と同等ないし近似した熱膨張係数を有する磁性金属粉を均一に混合分散させ、これを非磁性金属材表面に塗布する際、磁力線が塗布面に向かうような磁場をかけておくことによって、樹脂接着層中の磁性金属粉を非磁性金属材側に引き寄せ、磁性金属粉濃度が非磁性金属材側で高く、徐々に減少してガラス材表面で低くなるように形成した樹脂層を硬化させたものが適している。
【0017】
このような樹脂接着層は、磁性金属粉の濃度変化とともに熱膨張係数が徐々に変化し、非磁性金属材とガラス材との間にいわゆる熱膨張係数の勾配層が形成されることになるため、非磁性金属材とガラス材間の急激な熱膨張係数の変化が緩和され、非磁性金属材とガラス材の熱膨張差に起因する欠点、すなわち、冷熱サイクルなどの付加によるクラックや剥離などの発生を抑制することができる。
【0018】
なお、磁性金属粉は、上記したように、磁性体であって、非磁性金属材と同等もしくは近似した熱膨張係数を有するものであればよく、鉄やニッケルなどの各種磁性金属の中から、非磁性金属材の種類によって適宜選択すればよい。2種以上の併用も可能であり、また、その形状は、樹脂中に良好に分散できるものであればよく、粉末状に限らず、フレーク状、繊維状などであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る金属―ガラス複合材及び当該金属−ガラス複合材の製造方法によると、上述の通り、非磁性金属材と近似した熱膨張係数からなる磁性金属粉の濃度が、非磁性金属材側からガラス材側にかけて漸減している。そのため、樹脂層の熱膨張係数は、非磁性金属材近傍で非磁性金属材の熱膨張係数に近くなり、ガラス材近傍でガラス材の熱膨張係数に近くなるように、厚み方向にわたって勾配を有する。その結果、本発明に係る金属―ガラス複合材及び当該金属−ガラス複合材の製造方法によると、非磁性金属材とガラス材との界面での熱膨張率の急激な変化が緩和されるので、非磁性金属材とガラス材の熱膨張差に起因する欠点、すなわち、冷熱サイクルなどの付加によるクラックや剥離などの発生が抑制される。
【0020】
したがって、本発明は、冷熱サイクルなどの付加によってクラックや剥離などを招くことのない、高い信頼性を有する金属−ガラス複合材及び当該金属−ガラス複合材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る金属−ガラス複合材の構成を説明するための模式図である。
【
図2】本発明に係る樹脂層中の磁性金属粉の濃度勾配と、金属−ガラス複合材中の熱膨張係数の変化を説明するための図である。
【
図3】
図1に示す金属−ガラス複合材の樹脂層に、磁性金属粉を含有しない接着層を設けた場合を説明するための模式図である。
【
図4】本発明に係る金属−ガラス複合材の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明に係る接着層において非磁性金属材へ向かう磁場が形成された状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜
図5を参照して、本発明に係る金属−ガラス複合材及び当該金属−ガラス複合材の製造方法について説明する。
金属−ガラス複合材1は、
図1に示すように、ガラス材2と、非磁性金属材3と、当該ガラス材2と非磁性金属材3との間に形成された樹脂層4と、で構成される。
【0023】
ガラス材2は、例えば、熱膨張係数が8.5〜9.0×10
-6(1/K)程度からなるソーダ石灰系ガラス等で形成される。非磁性金属材3は、例えば、熱膨張係数が18〜23×10
-6(1/K)程度からなる黄銅等で形成される。すなわち、ガラス材2と非磁性金属材3とは熱膨張差が大きい部材からなる。
【0024】
樹脂層4は、ガラス材2と非磁性金属材3の表面間に形成され、双方の表面間を接着する層である。当該樹脂層4は、例えば、Niフレークのような磁性金属粉を含有した、ポリボロシロキサン、ポリカルボシラン、ポリシラスチレン、ポリシラザン、ポリチタノカルボシラン、ポリシロキサン(シリコーン樹脂)などの耐熱性に優れた無機ポリマー系樹脂からなる第1の接着層で形成される。ここで、非磁性金属材3として例示した黄銅と、磁性金属粉として例示したNiフレークとの熱膨張係数の差は、5〜10×10
-6程度であるので、両者の熱膨張係数は近似したものからなるといえる。ここで、上記で例示したそれぞれの非磁性金属材と磁性金属粉との熱膨張係数が近似したものであるとは、黄銅とNiフレークの例で示唆したように、双方の熱膨張係数の差がクラックを発生させない範囲であるおおよそ10×10
-6以下程度であることを意図する。
【0025】
当該樹脂層4は、
図2(a)に示すように、厚み方向における磁性金属粉の濃度が、ガラス材2から非磁性金属材3へ向かうにつれて増加する(非磁性金属材3側からガラス材2側に向けて漸減する)濃度勾配を有する。そのため、
図2(b)に示すように、樹脂層4は、磁性金属粉が高濃度となる非磁性金属材3側の熱膨張係数が、当該非磁性金属材3の熱膨張係数と近い値を取り、磁性金属粉が低濃度となるガラス材2側の熱膨張係数が、当該ガラス材2の熱膨張係数と近い値を取るように、厚み方向にわたって変化する。
【0026】
その結果、ガラス材2と非磁性金属材3との界面間における熱膨張率は、従来の金属−ガラス複合材(図中破線の矢印)が急峻な変化を示すのに対して、本実施形態に係る金属−ガラス複合材1(図中実線の矢印)では緩やかな変化を示すようになる。すなわち、本実施形態に係る金属−ガラス複合材1では、ガラス材2と非磁性金属材3との熱膨張差に起因する、冷熱サイクルなどの付加によるクラックや剥離などの発生が抑制される。
【0027】
なお、樹脂層4は、上記磁性金属粉を含有しない接着層を含むものであっても良い。具体的には、
図3に示すように、樹脂層4を、非磁性金属材1との界面側に設けられ磁性金属粉を含有する第1の接着層4aと、ガラス材2との界面側に設けられ上記磁性金属粉を含有しない第2の接着層4bと、の2層で構成しても良い。ここで、第2の接着層4bは、第1の接着層4aと同じ無機ポリマー系樹脂からなる。金属−ガラス複合材1において、樹脂層4をこのように構成することで、ガラス材2と非磁性金属材3との接着強度の向上が図れるとともに、ガラス材2と非磁性金属材3との熱膨張差に起因するクラックや剥離などの発生を一層好適に抑制することができる。
【0028】
(金属−ガラス複合材の製造工程)
次いで、金属−ガラス複合材1の製造工程について、
図4及び
図5を用いて説明する。なお、以下で説明する金属−ガラス複合材1の製造工程において、樹脂層4は
図3で示した第1の接着層4aと第2の接着層4bとの2層からなるものを用いるものとする。
【0029】
金属−ガラス複合材1は、たとえば次のようにして製造される。まず、非磁性金属材3を用意する一方、上記した無機ポリマー系樹脂に、非磁性金属材3の熱膨張係数と等しいもしくは近似した熱膨張係数を有する磁性金属粉を適当量添加して均一に分散させた、第1の接着層4aを構成する第1の樹脂塗料を生成する(ステップS1)。この際、第1の樹脂塗料とともに、第2の接着層4bを構成する磁性金属粉を添加しない第2の樹脂塗料も生成しておく。
【0030】
そして、ステップS1で生成した第1の樹脂塗料を非磁性金属材3の表面にスプレーコート、フローコート、ディップコート、ロールコートなどの方法で塗布する(ステップS2)。その際、電磁石などを用いて、
図5に示すように、磁力線が塗布面に向かうような磁場(非磁性金属材3の表面から当該表面と対向する面へ向かう磁場)をかけておく。つまり、このような磁場中で第1の樹脂塗料を塗布することによって、第1の樹脂塗料中にほぼ均一に分散していた磁性金属粉が非磁性金属材3側に引き寄せられる。そのため、非磁性金属材3側で高濃度,ガラス材2側で低濃度となる濃度勾配をもった第1の樹脂塗料が形成されるので、この樹脂塗料を低温で乾燥させる。
【0031】
次に、磁性金属粉を含有しない第2の樹脂塗料をガラス材2に塗布する(ステップS3)。そして、加圧及び加熱により、第1の樹脂塗料の塗布された非磁性金属材3と第2の樹脂塗料の塗布されたガラス材2を接着することで、本発明の金属−ガラス複合材1を得る(ステップS4)。
【0032】
以上、本発明の金属−ガラス複合材1においては、熱膨張差の大きい非磁性金属材3とガラス材2との間に、非磁性金属材3と熱膨張係数の近似した磁性金属粉を含有する耐熱性樹脂塗布層であって、磁性金属粉の濃度が非磁性金属材3側からガラス材2側に向けて漸減している樹脂層4を介在させることで、非磁性金属材3とガラス材2との間にいわゆる熱膨張係数の勾配層を形成できる。そのため、金属−ガラス複合材1によると、非磁性金属材3とガラス材2の熱膨張差に起因する欠点、すなわち、冷熱サイクルなどの付加によるクラックや剥離などの発生が抑制される。
【0033】
「実施例」
次に、本発明の実施例を記載する。
(接着用樹脂溶液の調製)
まず、ポリボロシロキサン樹脂(商品名M‐70,昭和電線電纜社製) 100重量部、キシレン50重量部、ソルベッソ50重量部、及び磁性金属粉としてのNiフレーク70重量部を混合して樹脂溶液を調製した(第1の樹脂塗料)。また、Niフレーク70重量部を混合させない以外は第1の樹脂塗料と同じ構成の樹脂溶液を調製した(第2の樹脂塗料)。
【0034】
(金属‐ガラス複合体試料の作製)
非磁性金属材として2mmの厚さからなる黄銅板(Cu:Zn= 7:3)の表面に第1の樹脂塗料を膜厚20μmに塗布した。その際、黄銅板の背面に電磁石を配置して磁力線が塗布面に向かうような磁場を形成し、その中で第1の樹脂塗料の塗布を行った。次いで、この塗布層を120℃、30分間の条件で乾燥させた。また、ガラス材として1mmの厚さからなるソーダ石灰系ガラスの表面に第2の樹脂塗料を膜厚20μmに塗布し、120℃、30分間の条件で乾燥させた。続いて、黄銅板とソーダ石灰系ガラスとを両樹脂塗料の塗布面を合わせた状態で加熱プレス装置にセットし、3Kg/cm
2の圧力でプレスしつつ、700℃、1時間保持した。その後降温し解圧して金属−ガラス複合材試料を作製した。なお接着層としてのポリボロシロキサン樹脂接着膜の厚みは10μmであった。
【0035】
このようにして得られた金属−ガラス複合材の特性は次の通りであった。 すなわち、35℃、5wt%の食塩水を噴霧して防錆効果を調べる塩水噴霧試験では、1000時間以上錆びの発生は認められなかった。また、室温で2時間、450℃までの昇温に2時間、450℃で2時間保持、室温まで2時間で降温、室温で2時間保持を1サイクルとするヒートサイクル試験では、100サイクル後も塗膜の状態は良好で、クラックや剥離の発生は認められなかった。さらに、450℃で1000時間以上加熱して塗膜の剥離の有無を調べる試験でも、結果は良好で、クラックや剥離の発生は認められなかった。
【0036】
以上の実施例からも明らかなように、本発明の金属−ガラス複合材は、熱膨張差の大きい非磁性金属材とガラス層との間に、非磁性金属材と熱膨張係数の近似した磁性金属粉を含有する耐熱性樹脂接着層であって、磁性金属粉の濃度が非磁性金属材側からガラス材側に向けて漸減している樹脂接着層を介在させるようにしたので、非磁性金属材とガラス材との界面での熱膨張率の急激な変化が緩和され、非磁性金属材とガラス材の熱膨張差に起因する欠点、すなわち、冷熱サイクルなどの付加によるクラックや剥離などの発生が抑制される。
【符号の説明】
【0037】
1 金属−ガラス複合材
2 ガラス材
3 非磁性金属材
4 樹脂層
4a 第1の接着層
4b 第2の接着層