特許第6062746号(P6062746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062746
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】車両ドアのベルトラインモール
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/75 20160101AFI20170106BHJP
   B60J 10/25 20160101ALI20170106BHJP
   B60J 10/22 20160101ALI20170106BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B60J10/75
   B60J10/25
   B60J10/22
   B60R13/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-8466(P2013-8466)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139047(P2014-139047A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240949
【氏名又は名称】片山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 直樹
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−031818(JP,A)
【文献】 特開平11−034757(JP,A)
【文献】 特開平03−034832(JP,A)
【文献】 特開2004−224230(JP,A)
【文献】 特開2007−131016(JP,A)
【文献】 特開2007−290667(JP,A)
【文献】 特開2005−119487(JP,A)
【文献】 特開2000−071763(JP,A)
【文献】 特開平06−092144(JP,A)
【文献】 実開平03−033710(JP,U)
【文献】 実開昭63−034709(JP,U)
【文献】 実開昭62−174923(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0297726(US,A1)
【文献】 米国特許第06446392(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/75
B60J 10/22
B60J 10/25
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、
ベルトラインモールはドアガラス昇降部からドアフレームの表面にわたって延在するモール本体部と、
当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、
前記ステップ断面形状部は、ドアガラスに摺接する水切りリップを有するとともに前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、
前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着され、
前記ドアフレームの表面に位置する部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあることを特徴とするベルトラインモール。
【請求項2】
車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、
ベルトラインモールは意匠面を形成するモール本体部と、当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、
ステップ断面形状部は前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、
ベルトラインモールは前記モール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着されるものであり、
前記ステップ断面形状部は引掛けフランジ部からドアガラスに摺接するように立設した水切りリップと、縦フランジ部から前記水切りリップの外側に当接するサブリップを立設させたことを特徴とするベルトラインモール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両ドアのドアガラス昇降部に装着されるベルトラインモールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアはドアパネルの上部にドアフレームを立設することで窓部を形成し、ドアパネルの内部に配置されたドアガラスがこの窓部を昇降するようになっているものが一般的である。
ドアパネルはドアガラスを内設するためにドア外面を形成するアウタパネルとドアの内面を形成するインナパネルとで形成されている。
アウタパネルの上縁部にはドアガラスの外面と摺接し、雨水を切るための水切りリップ(シールリップ)を有するベルトラインモール(モールディング)が装着されている。
ベルトラインモールは、車両の外面のベルトラインを装飾する意匠モールとしての役割があることから、ドアフレームの表面からドアガラス昇降部(アウタパネル上縁部)まで連続的に配設するデザインモールも採用されている。
この種のベルトラインモールの場合には、ドアフレームの表面に位置する部分の水切りリップを切除する必要がある。
例えば特許文献1には、ベルトモール本体の端部において水切りリップを切除し、エンド部材を射出成形により、このベルトモール本体の端部に一体的に成形した例を示す。
このように従来はベルトラインモールの端部において意匠部を残すように水切りリップ等を切除すると剛性不足であったり、別部材のエンドキャップを取り付けることができないためにエンド部材を射出成形にてモール本体部に一体化していたが、射出成形による一体化には専用設備が必要となるだけでなく、射出成形されるエンド部材とモール本体との間にラップ代が必要となるために外観意匠性に劣る問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は端末の剛性に優れるとともに外観デザインの全長にわたった連続性に優れ、ドアガラスとのシール性が高いベルトラインモールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るベルトラインモールは、車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、ベルトラインモールはドアガラス昇降部からドアフレームの表面にわたって延在するモール本体部と、当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、前記ステップ断面形状部は、ドアガラスに摺接する水切りリップを有するとともに前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着され、前記ドアフレームの表面に位置する部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあることを特徴とする。
本発明で車両ドアとは乗用車のフロントドア,リアドア,トラックキャビンドア等のドア全般に適用できる。
また、ドアフレームにはピラー部一体型のドアフレームも含まれ、ドアフレームの表面には上記のピラー部の表面も含まれる。
【0006】
本発明はベルトラインモールの水切りリップ及び引掛けフランジを切除してもドアの外面意匠部を形成するモール本体部とステップ断面形状部を構成する縦フランジ部にて、端末に後からエンドキャップを取り付けることができるだけの断面剛性を有するようにした点に特徴がある。
従って、本発明において縦フランジ部は硬質樹脂等が好ましい。
また、引掛けフランジ部が切除できるようになっていれば縦フランジ部にインサート材が埋設けられていてもよい。
【0007】
このように本発明に係るベルトラインモールは、意匠面となるモール本体部の上部から内側下方に延在させたステップ断面形状部を設けたので、ベルトラインモールは意匠面を形成するモール本体部と、当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、ステップ断面形状部は前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、ベルトラインモールは前記モール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着されるものであり、前記ステップ断面形状部は引掛けフランジ部からドアガラスに摺接するように立設した水切りリップと、縦フランジ部から前記水切りリップの外側に当接するサブリップを立設させることも可能になる。
【0008】
本発明に係るベルトラインモールは、モール本体部の裏面側を縦フランジ部の有するステップ断面形状部にしたことによりステップ断面の下側から水切りリップを立設し、上側からサブリップを立設し、このサブリップの先端が水切りリップの外側に当接する二重リップ構造を採用することが容易になる利点がある。
このように水切りリップとサブリップの二重構造にすると、ドアガラスの車内外方向の位置バラツキに対してそのバラツキを吸収し、常にドアガラスの表面に水切りリップの先端が接触するようにサブリップが水切りリップを側面からサポートする。
縦フランジ部をモール本体部の上部から概ね垂直方向下に折り返した場合に、縦フランジ部下側あるいは引掛けフランジ部から水切りリップを立設させると、水切りリップの根元付近に凹部空間が形成されることになる場合が生じる。
この場合に縦フランジ部の上部あるいはモール本体部からサブリップを立設すると、このサブリップが意匠リップとしての役割が生じるとともに上記凹部空間に埃やゴミ等がたまるのを防ぐ。
また、水切りリップとサブリップとの間に閉じた空間部が形成されるので、遮音効果もある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るベルトラインモールは、モール本体部の上部から下に折り返した縦フランジ部を有し、ドアフレームの表面に位置する部分は縦フランジ部を残して、水切りリップや引掛けフランジ部を切除できるようにしたので、モール本体部と縦フランジ部とで略C断面形状を形成しつつ断面剛性を確保したので、ベルトラインモールの端末部に別物品としてのエンドキャップを取り付けることができる。
また、縦フランジ部の下部側に引掛けフランジ部を有する、ステップ断面形状に形成したので、水切りリップとこの水切りリップの外側の側面をサブリップで押圧するように二重リップ構造とすることもでき、このように二重リップ構造にすると段差凹部に埃等がたまるのを防止するだけでなく、ドアガラスに対するシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施例に係るベルトラインモールの断面図を示し、(a)はドアガラス昇降部、(b)はドアフレーム部の断面をそれぞれ示す。
図2】本発明の第2実施例に係るベルトラインモールの断面図を示し、(a)はドアガラス昇降部、(b)はドアフレーム部の断面をそれぞれ示す。
図3】本発明の第3実施例に係るベルトラインモールの断面図を示し、(a)はドアガラス昇降部、(b)はドアフレーム部の断面をそれぞれ示す。
図4】ベルトラインモールの端末付近の外観斜視図を示す。
図5】ベルトラインモールの装着位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るベルトラインモールの構造例を以下図面に基づいて説明する。
ベルトラインモール10は、図5に車両ドアへの取り付け例を示す。
ドアパネル(アウタパネル)2の上部に設けたドアフレーム3の内側に形成された窓部を有する。
窓部にはドアガラス4が昇降するようになっている。
ドアフレーム3はフロントドアで説明すると、車両の前方からルーフ部に向けて弓形曲線状のフレーム部3bとドアガラスの昇降をガイドするピラー部3aからなる。
ベルトラインモール10は、このフレーム3bのフロント側表面からドアガラス昇降部及びピラー部3aの表面部まで連続的につながった例を示す。
なお、ベルトラインモール10は、フレーム部のフロント側又はピラー部のうち一方のみが連続的になっている場合もある。
そこで、本明細書では以下、フレーム部及びピラー部を含めてフレーム部(3a)とまとめて表現する。
【0012】
図1は第1実施例の断面図を示し、(a)はドアガラス昇降部におけるベルトラインモールの断面、(b)はフレーム部3aにおけるベルトラインモールの断面をそれぞれ示す。
ベルトラインモール10の端部付近の形状を図4に示す。
フレーム部に位置する部分は、水切りリップ16,サブリップ17及び引掛けフランジ部13を切除してある。
この切除部Cの断面が図1(b)に対応する。
図4では図示を省略したが、ベルトラインモール10の端末部Eに別部材としてのエンドキャップを装着する。
ベルトラインモール10は、図1(a)に示すように意匠部を構成するモール本体部11の上部から概ね垂直に折り返した縦フランジ部12を有し、この縦フランジ部12の下部からは内側方向にほぼ水平に延びるように折り曲げた段差部13cを有し、この段差部13cの端部より下側に向けて延在させた引掛けフランジ部13を有する。
【0013】
第1実施例は、引掛けフランジ部13の段差部13cの内側に位置する部位からドアガラス4に向けて斜めに立設した水切りリップ16と縦フランジ部12の上部より水切りリップ16に向けて、この水切りリップ16の外側の側面に先端部が当接(押圧)するようにサブリップ17を設けた二重リップ構造の例を示す。
ドアガラス4は、図1(a)に示したアウタパネル1と図示を省略したインナパネルとの間に昇降可能に配設されている。
アウタパネル1は、ドアガラス昇降部に向けて内側に段差状に立設したアウタパネル上縁部1aを有する。
モール本体部11の裏面には、アウタパネル上縁部の外側面に弾性当接する押圧部14とアウタパネル1の段差部に弾性当接する押圧リップ15を有する。
これにより、ベルトラインモール10は、モール本体部11と引掛けフランジ部13とでアウタパネル上縁部1aを両側から弾性挟持するように装着できる。
ここで、水切りリップ及びサブリップ17は、軟質樹脂又はエラストマー等にて成形されていて、ドアガラス4の室内外方向のバラツキを吸収しながらドアガラス4との間をシールするので、ベルトラインモール10は当接部13bを支点にして外側に向けて、図1(a)では右側に向けて転ぶように力が作用するが、被係止部1bに係止した係止部13aにて外側への転びを防止し、逆に室内側への転びは押圧部14にて支える。
また、押圧リップ15は、アウタパネル1との間をシールする。
従って、モール本体部11,縦フランジ部12及び引掛けフランジ部は、硬質樹脂で成形され、押圧部14及び押圧リップ15は軟質樹脂又はエラストマーで成形されている。
本実施例は、モール本体部11の芯部11aを硬質樹脂で成形し、表面意匠部11b,サブリップ17及び押圧リブ15を軟質樹脂とした例である。
このように第1実施例は、水切りリップ16をステップ断面部の段差部13cから立設させたので、段差部13cの上面に凹部が形成されることになり、この凹部に埃等がたまる恐れがあるが、この凹部を塞ぐようにサブリップ17を設けたので、外部から凹部が見なくなり、外観意匠性に優れるとともに埃等がたまるのを防ぐ。
また、二重リップの内側の空間Sは閉じた空間になるので、モールの遮音性も向上する。
さらには、ドアガラス4の室内外方向のバラツキも2重リップで吸収することができ、シール性(水切り性)が高い。
本実施例は、引掛けフランジ部13の下部側に軟質部13dを設けることでドアガラス4が外側に大きく振れるのを防止している。
図1(b)は、フレーム部3aに位置するベルトラインモール10の断面を示し、剛性のある縦フランジ部12を残し、引掛けフランジ部13,水切りリップ16及びサブリップ17を切除した状態になる。
モール本体部11と縦フランジ部12にて略C断面形状部を形成した。
また、本実施例では、モール本体部11の芯部11aの下端部11cを内側上部方向に折り曲げた断面形状にしたので、さらに断面剛性が向上するとともに端部にエンドキャップ部品を挿入,装着できる。
【0014】
図2は第2実施例を示し、水切りリップ16を縦フランジ部12及びモール本体部11の上部から立設させた例である。
図3は第3実施例として、サブリップ17aを意匠リップとして水切りリップ16と接触せずに設けた例である。
第2,第3実施例においても図2(b),図3(b)に示すようにフレーム部3aは縦フランジ部12とモール本体部11にて略C断面形状になる。
【符号の説明】
【0015】
1 アウタパネル
1a アウタパネル上縁部
1b 被係止部
2 リインフォース
3a フレーム部
4 ドアガラス
10 ベルトラインモール
11 モール本体部
12 縦フランジ部
13 引掛けフランジ部
13a 係止部
13b 当接部
13c 段差部
14 押圧部
15 押圧リップ
16 水切りリップ
17 サブリップ
図1
図2
図3
図4
図5