特許第6062747号(P6062747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062747
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】歯科用インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20170106BHJP
   A61K 6/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
   A61K6/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-8511(P2013-8511)
(22)【出願日】2013年1月21日
(62)【分割の表示】特願2012-220383(P2012-220383)の分割
【原出願日】2002年11月23日
(65)【公開番号】特開2013-78655(P2013-78655A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2013年1月21日
【審判番号】不服2015-1201(P2015-1201/J1)
【審判請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】101 59 683.9
(32)【優先日】2001年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504209493
【氏名又は名称】ストラウマン ホールディング アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ガーラート
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 高木 彰
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−112000(JP,A)
【文献】 特開昭61−146757(JP,A)
【文献】 特開平7−328036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C8/00
A61K6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部分歯科用インプラントを形成する方法であって、
前記一部分歯科用インプラントは、骨内にアンカーするためのアンカー部(12、32、52)と、利用されるべきエレメントを受容するための載置部(18、38、58)を有し、
アンカー部及び載置部を連結させたところが一部分歯科用インプラントの内部に存在せず、
載置部は、円錐台又は円錐形状を有し、かつ、アンカー部はシリンダ(円筒)形状を有し、
アンカー部(12、32、52)と載置部(18、38、58)がグラインド可能でかつ天然歯の色に近いジルコニアセラミックで一体的に形成されており、
アンカー部(12、32、52)がネジ部分(14、34、54)を有し、
前記方法は、アンカー部(12、32、52)不可視領域においてのみチタン又はチタン合金の熱スプレーコーティングで1μm及び20μmの間の最大表面粗さを有する表面上にコートて骨化を促進するとともに、アンカー部(12、32、52)の可視領域において天然歯に近い色を利用しているステップを有することを特徴とする一部分歯科用インプラントを形成する方法
【請求項2】
載置部(18)は、溝(22)又は凹所(60)と平坦部(20)が組み合わせた形で載置部の外表面内に設けられている請求項1に記載の一部分歯科用インプラントを形成する方法
【請求項3】
載置部(58)は、アンカー部(52)の長手軸に関して、角度がずれていることを特徴とする請求項1に記載の一部分歯科用インプラントを形成する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨内でアンカー(固定)するためのアンカー部を含み、橋脚歯又は冠歯、橋義歯又は補綴構造のような取り付けられるべきエレメントを受容するための載置部を含む歯科用インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラントは、10年以上にわたり継続的に使用されている。現在使用されている歯科用インプラントの主要部分はチタンからなるが、これはチタンが十分に低い弾性係数を有し、比較的大きな強度をも有するからである。加えて、チタンをインプラント材料として使用するときに、表面が適当に処理される(例えばサンドブラスト法により粗くされる)と、安全な一体的骨形成が達成され得ることが特に重要である。これは、チタンインプラントが、骨内への捩込みにより第1の安定性を達した後、約3〜4ヶ月の治癒期間内で安全に骨化し、骨内に捩込まれたアンカー部と骨との間の永久結合が保証されるようになっていることを意味する。ここでは通常二部分インプラントが利用されている。基本的にこの目的には2つの可能性がある。
【0003】
閉鎖された歯肉下系によれば、インプラントのアンカー部が骨リッジまで埋め込まれ、ムコペリオストカバーがインプラント上で縫い合わせられ得る。ここで、第1の治癒フェーズの終わりにおいて、引上げが必要な第2の操作であり、それに続いて載置部とその上への所望の補綴又は歯冠の適用を可能にする。
【0004】
対照的に、開放移行歯肉系を使用するときに、インプラントのアンカー部が粘膜レベルで骨リッジ上約3mmまで沈められることが可能であり、これが第2操作を回避している。曲げられたエッジがインプラントネック部分に直接適合されることが可能であり、これによりインプラントに対する第1の軟組織の閉鎖をもたらす。
【0005】
このような開放移行歯肉系のための二部分インプラント構造が、例えばInstitut−Straumann AG,Waldenburg/Switzerlandにより、ITI(登録商標)DENTAL IMPLANT SYSTEMのマークのもと市場取引されている。移行歯肉として移植されるアンカーすなわち第1部分は、割り当てられた構造部分とともに、両方ともここでは純チタンからなる。良好な骨化を保証するために、チタン表面は粗くサンドブラストされ又は熱スプレーでチタンによりコーティングされる。表面は両方とも良好な骨化又は一体的骨形成を保証する。
【0006】
その後、橋義歯や冠歯のようなインプラント補綴エレメントの載置部上に、媒介物を用いていわゆるアバットメントが通常捩込まれまたはセメント結合される。最近はこの目的のために、載置部上に適用されるセラミックアバットメントも開発されている。
【0007】
セラミックアバットメントは、橋義歯や冠歯のような上構造をアバットメントに続けてマッチングする間の特有の利点を提供する。それらは、単純にグラインドされて歯科医に公知の従来技術工程を使用する構成の構築を可能にする。セラミックアバットメントは、それらの色が天然歯の色にぴったりとマッチされ得るという特有の利点を提供する。最近はジルコニアアバットメントも開発されていて、これが特に高い強度を提供している。
【0008】
このような系は、アンカー部と載置部を有する二部分インプラントからなり、その上に用いられるアバットメントと補綴材は、異なる療法のための幾何位置に対して良好なマッチングを提供する。もっとも、一般に使用されるコンポーネントが多いことは、全系の機械的安定性にとって不利益である。また、各々の余分な結合が、バクテリアのための起こり得る起点につながり、これはギャップ内の歯周炎又は歯肉炎をもたらす。
【0009】
もっとも、美的観点から、特に前方の可視領域において、全ての移行歯肉部と、アンカー部も、セラミックで形成することが望まれる。もっとも、金属(チタン製のアンカー部)とセラミック(載置部)の間のネジ接続は、とりわけ、熱拡散係数が異なるため、実現され得ない。対照的に、これまで、セラミックからなるアンカー部は、通常必要な機械的安定性を有さないため、普及し得なかった。
【0010】
最近ジルコニアセラミックも利用可能になってきており、特に形状ボディが熱間等静圧圧縮成形により又はこれにつづく熱間等静圧高密度化により作成される場合これは極めて高強度を有する。このようなジルコニアセラミックは、およそ92.1−93.5重量%ZrO、4.5−5.5重量%Y及び3.8−2.2重量%HfOからなり、例えばUS6,165,925から公知である。
【0011】
もっとも、インプラントのアンカー部を形成するための材料としてジルコニアセラミックを利用することは、可能でないように見える。なぜなら、ジルコニアセラミックには十分な機械的安定性が必要であり、これは測定される多孔性が実質的にない高密度の作成を要求し、これは同時にクリーンに切断された超硬表面につながるからである。
【0012】
このような材料は生体不活性であり、一体的な骨形成が望まれないことになっており、この材料はインプラントのアンカー部の作成には適さないとみなされているためである。
【0013】
DE19530981A1から、予備製造された、全セラミックインプラントジルコニア上構造が、インプラントに付着された歯の色の人工歯冠錐体の構成で公知である。ここでは、ジルコニアセラミックの審美性に関して、及び恐らく上構造の構成を単純化して作成することに関して、ある種の利点が可能となるが、このインプラント構造は、多部分インプラント構造に基づいているという基本的な欠点を有する。すなわち、実際のインプラントはチタンからなるので、先と同じ問題がインプラントとジルコニアセラミックからなる上構造の間の結合領域内に生じる。
【特許文献1】US6,165,925
【特許文献2】DE19530981A1
【特許文献3】DE4012731A1
【特許文献4】DE2838759A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、本発明の目的は、先行技術の欠点を回避し、全系の高い機械的安定性を保証すると同時に特に可視領域でのセラミックの利点を利用可能にする改良された歯科用インプラントを提供することである。このようなセラミックを形成する適当な工程も開示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の歯科用インプラントによって達成される。
【0016】
このような歯科用インプラントを形成する方法では、最初に、骨内にアンカーするためのアンカー部と利用されるべきエレメントを受容するための載置部とを有するベースボディが、ジルコニアをベースにした材料から一体的に設けられ、つづいて少なくともアンカー部がその外表面で少なくとも部分的にサブトラクティブ除去工程により前処理され、又は骨化を促進するコーティングでコートされる。
【0017】
本発明の目的は、このようにして十分に達成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
驚くべきことに、アンカー部と載置部を有する一部分歯科用インプラントが作成されることが可能であり、これがジルコニアセラミックからなり、治癒期間においてもなお良好な骨化を保証することが見出された。
【0019】
ここで、高強度のジルコニアセラミックが、全系の高い安定性を保証することと組み合わせて、特有の利点がインプラントの一部分構成に見られなければならない。同時に、載置部が、天然歯の色に近づけられることが可能であり、こうして特に可視領域で十分に天然に見えるセラミック構造の作成を可能にするという特有の利点がある。加えて、載置部は、直接グラインドされることが可能であり、これは利用されるべき追加のエレメントの単純で有利な適合を可能にする。恐らく追加のアバットメントは不要となるだろう。
【0020】
DE4012731A1から、インプラントを扱うための基本的に幾つかの工程が公知であり、これは明確な粗い表面を生成するものであるが、本発明はこれにより自明とされるものではない。なぜならこの公報は、単に金属のインプラントの処理に関するものであり、更にジルコニアをベースにした一部分インプラントを当業者に構成させることの示唆を何ら示すものではないからである。
【0021】
加えて、DE2838759A1から、不動態層及び/又は幾つかの生理学活性層からなる層系を備えた、金属、プラスチック又はセラミックからなるインプラントを提供することは、基本的に公知である。ここでは、特に、窒化ケイ素の不動態層及びフッ化カルシウム、α―アラニン、カーボン等の生理学活性層が考慮されている。
【0022】
もっとも、これは本発明を自明とするものではない。なぜならこの文献は単に一般的にインプラントの可能なコーティングに関連し、当業者がジルコニアをベースにした一部分インプラントを構成することの提案を何ら提供するものではないからである。
【0023】
好ましくは、本発明によるインプラントは、移行歯肉に利用される。こうして、生物学的幅を発展させる軟組織の付着は、カバーされた粘膜内張で治癒する系で行われるような第2操作によって妨げられない。
【0024】
本発明によれば、移植の後、一時的な手段を載置部上へ直接適用することによる第1の処理が可能となる。この目的のために、十分な第1の安定性に到達した後、例えばアンカー部を骨穴内に捩込むことにより、それにつづく治癒期間の間特にシェアリング動作を避ける手段のみが取られなければならない。幾つかのインプラントの場合、これはブロッキングにより影響を受け得るが、一方で単一のインプラントで、接着剤を塗布することにより、近接した歯への又は補綴部分へのアタッチメントによりこれは影響を受け得る。
【0025】
好ましくは、アンカー部はネジ部分を含む。
【0026】
これにより本発明によるインプラントは、必要な第1の安定性をもって移植されることが可能であり、移植につづいて直接第1の処理が、一時的な手段を利用することにより可能になる。
【0027】
本発明の更なる実施例によれば、アンカー部はその外表面で、除去工程により少なくとも部分的に粗くされ又は微細構造にされる。
【0028】
酸化ジルコニウム材料は、生体不活性であるが、骨材料との一体的骨形成を達成し得ることを、この様な表面構造化が保証する。
【0029】
良好な一体的骨形成を達成するため、この点に関して、歯科用インプラントが、アンカー部の領域において、1及び20μmの間、特に4及び12μm、特に好ましくは6及び12μmの間の最大表面粗さを有するときが好ましい。
【0030】
基本的にこの目的のため、(コランダムを用いる)サンドブラスト法、炭化ホウ素粒子によるブラスト法、又は高圧水ブラスト法のような、研磨ブラスト法が可能である。もっとも、このような処理で問題があるのは、酸化ジルコニウムセラミックの高硬度である。
それゆえ、かなり改善された表面粗さが、ブラスト法のための、値段の高い炭化ホウ素粒子のような硬い材料を使用することにより達成され得る。
【0031】
それゆえ、交替的に、エッチング工程のような化学的工程も考慮され、これは、先の機械的処理に追加して、つづく処理として部分的に用いられ得る。
【0032】
このような除去工程とは離れて、レーザーベースの工程が考慮される。
【0033】
特に好ましいのは、Alでのサンドブラスト法のような最初のブラスト処理と、これにつづくリン酸、硫酸、塩酸又はこれらの混合物を使用したエッチング処理を行うことである。
【0034】
ここで、ブラスト処理は、約1bar及び10barの間、好ましくは2及び6barの間、特に3及び5barの間の圧力を使用して、行われても良い。
【0035】
ここで、特に、ブラスト処理の後につづく処理として、10〜90体積%、好ましくは15〜50体積%、特に20〜40体積%のリン酸を用いた、エッチング処理が望ましい。
【0036】
エッチングは、例えば、10秒〜10分、好ましくは10及び120秒の間、特に約15〜60秒の期間行われてもよい。
【0037】
エッチング処理には、NaCl溶液内でのすすぎと、それにつづく脱イオン水でのすすぎのような、クリーニングステップが続く。
【0038】
特にアンカー部の領域で前処理されるこのような歯科用インプラントを使用することにより、安全な一体的骨形成が達成され得る。
【0039】
本発明の更なる実施例によれば、アンカー部は、その外表面で、少なくとも部分的に生体活性コーティングを備えている。
【0040】
これは例えば、骨形成を促進する、シラン化又はヒドロキシル化でもよい。
【0041】
本発明の更なる実施例によれば、アンカー部は、金属又はセラミックコーティングで、又はセルメットコーティングで、少なくとも部分的にコートされる。
【0042】
またこの様にして、特有の表面構造化が設けられることができ、これは一体的骨形成を促進させる。
【0043】
ここで、アンカー部は、例えば熱スプレーにより、CVDにより又はPVDによりコートされても良い。
【0044】
ここで、特に、チタン又はチタン合金からなるコーティングは、利点として認識され、これは恐らく熱スプレーにより用いられてもよいだろう。
【0045】
このようなコーティングで、長年来公知であったチタンの生体互換性が、治癒期間アンカー部の安全な一体的骨形成を達成するため利用され得る。熱スプレーにより恐らく適用されるチタンは、別々の骨形成を回避して安全な骨化を保証する十分な微細構造を有する。
【0046】
好ましくは、ここでアンカー部内の領域のみがコートされ、これは移植の間、骨内に置かれる。これにより、載置部の領域でのジルコニアベースセラミックの有利な審美性が、チタンの有利な生体互換性と結合され得る。
【0047】
適切に載置部は、捩込みツールを用いるためのサポートを含む。
【0048】
ここで、載置部は、基本的に既にその技術分野で公知のように、捩込みツールの積極的なフィッティングのために構成されてもよい。
【0049】
基本的に、歯科用インプラントは、既に公知の又は開発され得る全ての種類の形状で構成され得る。
【0050】
ここで、載置部は、アンカー部の延長部として構成されてよく、またはアンカー部に関してずれていてもよい。
【0051】
また、載置部は、錐台基本形状を有しても良く、これは補綴構造のためのアバットメントの接着結合を促進している。
【0052】
もちろん、追加的に、正方形や六角形のような載置部の更なる形状も可能である。
【0053】
本発明の更なる実施例によれば、歯科用インプラントが、シラン化又はヒドロキシル化により又はエッチング処理によるようなその表面の先の活性化の後、それが医師により移植される前、脱イオン水のような適当な液体内に貯蔵される。こうして、歯科用インプラントが、好ましくはエアのアクセス無しでコンテナ内に貯蔵される。
【0054】
こうして、歯科用インプラントの表面が載置の前に、エア成分により、その活性を全部又は部分的に喪失することが回避される。このようにして、骨化が促進される。
【0055】
一部分歯科用インプラントのためのジルコニアセラミックの作成は、基本的にその分野で公知であり、本発明の一部として認識されない。この点に関して、例えば初めに述べられたUS6,165,925に参照がなされており、これは本願内に全て含まれている。このようにして作成されたジルコニアセラミックは、例えば、歯科用インプラントの所望の形状にグラインド加工されてもよく、つづいて表面処理されて所望の表面特性に到達するようにしてもよい。
【0056】
本発明の上述及び後述の構成は、与えられたコンビネーションに限定されず、本発明の範囲から離れることなく、他のコンビネーションに利用可能であり又は単独で採用される。
【0057】
本発明の更なる構成及び利点は、後述の好ましい実施例の詳細な説明から、図面と組み合わせて明らかとなる。
【実施例】
【0058】
図1〜3において、本発明による一部分歯科用インプラントの幾つかの可能な実施例が描かれていて、これは純粋に典型的なものであり、本発明の範囲をいずれかのインプラントの形状に限定するものではない。
【0059】
図1において、本発明による歯科用インプラントは、全体として符号10で示されている。それはネジ部分14と丸みを帯びた下端を有するアンカー部12を含む。アンカー部12はその上端で僅かに外側に拡大した円錐部分16を介して、そこで一体的になっていてネジ部分14の長手軸24の延長部内に延びる載置部18に推移している。載置部18は、円錐台又は円錐形状を有していて、その一方の側に平坦部20を備えている。平坦部20と反対側において、溝22が外表面内にあり、これは載置部18の上方前方表面から下側に向かって延在してアンカー部12の円錐部分16へ推移する部分を形成する円錐部分で終了している。
【0060】
平坦部20は、反対側に位置付けられた溝22とともに、そこにマッチされるプラグインシートを有する捩込みツールの積極係合を提供する働きをする。
【0061】
図2は、歯科用インプラントの僅かに修正された実施例を示し、全体として符号30で示されていて、これはまたネジ部分34を有するアンカー部32を含み、これに円錐形の載置部38が続いていて、その上に溝42を見ることができるが、これは、歯科用インプラント30は図1の歯科用インプラント10に関して90°回転されて描かれているためである。
【0062】
図1に示された実施例とは対照的に、歯科用インプラント30は、アンカー部32と載置部38の間に円錐部分を有さない。代わりに、載置部38は、シリンダ形状にされたアンカー部32に直接隣接する円錐部分として構成される。また溝42と反対側において、図1から理解できるような、対応する平坦部を設けてもよい。
【0063】
図3において、歯科用インプラントの修正された実施例が、全体として符号50で示されている。
【0064】
歯科用インプラント50は、図1による実施例に対応していてネジ部54を有するアンカー部52を含み、これは外側円錐部分56を介して載置部58に推移している。
【0065】
また、載置部58は、円錐基本形状を有するが、アンカー部52の長手軸に関して、例えば角度が約15°ずれており、これは多くの場合門歯領域への適用に特に適している。
また、適当な凹所60により、載置部58の外表面で捩込みツールの積極係合が可能となり、骨穴内に、ずれた載置部を有するこの歯科用インプラントを捩込むことも可能にしている。
【0066】
アンカー部は、例えば10mmの軸方向長さを有してもよく、その点で他の寸法は対応する方式となる。もっとも、寸法及び形状は、とるべき療法に応じて適当な方式に修正され得ることを理解すべきである。
【0067】
本発明による歯科用インプラント10、30、50は、ジルコニアセラミックから一体的に作成され、これは例えば、初めに述べたUS6,165,925によれば、92.1〜93.5重量%ZrOと4.5〜5.5重量%Yと1.8〜2.2重量%HfOを有する安定化ジルコニアセラミックでもよい。このような安定化ジルコニアセラミックは、特に、熱間等静圧圧縮成形により又は焼結とそれに続く熱間等静圧高密度化により作成されるときは、特に高い機械的安定性と強度を提供する。また、他のジルコニアセラミックスの利用も考えられる。
【0068】
アンカー部は、その外表面で、適当な除去の前処理により、又は適当なコーティングにより処理されたものであり、これによりインプランテーションの後良好な一体的骨形成に到達する。例えば、アンカー部は、シラン化又はヒドロキシル化されてもよく、又は除去工程により粗くされてもよく、又は微細構造にされてもよい。
【0069】
好ましくは約20及び100μmの間の範囲にある層厚で熱スプレーにより好ましくは塗布されるコーティングを用いることで、一体的骨形成が到達され得る。
【0070】
例えばジルコニア、アルミナ、シリカ又はこれらの混合物と可能な更なる構成要素を含むセラミックコーティングとは別に、特に、約20〜100μmの層厚を有する純チタンからなる熱スプレーによるコーティングが好ましい。
【0071】
コーティングを可能ならプラズマスプレーによりスプレーする前に、表面の適当な前処理を行い、例えば研磨ブラスト法又はエッチング処理を使用して、コーティングの良好な接着のための十分な粗さを保証することが提案される。
【0072】
薄く、熱スプレーされた、特にアンカー部の領域(可視領域にない)にのみ適用されるチタンからなるコーティングを使用することで、安全な一体的骨形成が治癒期間において達せられ得る。同時に、グラインド可能性や天然歯に近い色のようなジルコニアセラミックの利点が利用され得る。
【0073】
第1フィールドテストを用いて、外表面がサブトラクティブ処理に単にさらされただけの一部分ジルコニアインプラントは、一体的骨形成を保証し得ることが示された。
【0074】
この目的のために、図4によるテストインプラントサンプルが、US6,165,925によるジルコニアセラミックから作成され、グラインド処理されて、図4による形状を得た。
【0075】
その後、表面は、4barのブラスト圧力を用いたコランダムでサンドブラストされた。これは、約4.7μmの平均表面粗さで6.4μmの最大表面粗さをもたらした。図4に示されたテストインプラントサンプル70は、患者に移植(インプラント)された。約3ヶ月の治癒期間の後、テストインプラントサンプルは、少量の周囲骨材料とともに中空ドリルを用いて取り除かれ、骨一体化に関して組織学的に分析された。一体的な骨形成が達成されていることが分かった。
【0076】
約5〜15μmRmaxの範囲にある増加された表面粗さを用いるときに、一体的骨形成に関する追加の改良が短い治癒期間の後特に期待され、その目的のために、特にリン酸によるエッチングによりブラストされた表面の継続処理が考慮される。特に、30%のリン酸で30秒間エッチングし、続いて最初にNaCl溶液で、その後脱イオン化水ですすぐことで、表面粗さが、5〜15μmRmax(先のブラスト処理に応じて、特に約8〜12μm)に増加され得る。
【0077】
加えて、エッチングにより到達される表面の活性が骨一体化を促進する。この活性を移植まで保持するために、インプラントが医師により移植されるまで、さらにエッチング及びすすぎ処理の直後インプラントを脱イオン水のような適当な液体に貯蔵するのが好ましい。このようにして、歯科用インプラントが利用される前に、空気成分により表面がその活性を全部又は部分的に失うことが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】本発明によるインプラントの第1実施例を示す側面図である。
図2】本発明によるインプラントの実施例を示す側面図であり、図1の実施例に関して僅かに修正されている。
図3】本発明によるインプラントの更なる実施例を示す側面図であり、載置部がアンカー部に関して僅かにずれている。
図4】約3月の治癒期間の後、患者に移植されて、ドリルを使用して近接した骨材料とともに除去されたインプラントのテスト見本のREM写真である。
【符号の説明】
【0079】
10、30、50 歯科用インプラント
12、32、52 アンカー部
14、34、54 ネジ部分
16、56 円錐部分
18、38、58 載置部
20 平坦部
22、42 溝
24 長手軸
図1
図2
図3
図4