特許第6062751号(P6062751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062751
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】温度感知材料、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/16 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   G01K11/16 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-10535(P2013-10535)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-142249(P2014-142249A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】中村 敬彦
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−112123(JP,A)
【文献】 特開平07−027633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の温度を感知し表示状態が変化する温度感知材料において、
ポリシロキサン樹脂とアルカンとの混合物として形成され
前記ポリシロキサン樹脂はシルセスキオキサンを含むことを特徴とする温度感知材料。
【請求項2】
前記ポリシロキサン樹脂は、有機ケイ素化合物とフッ素含有有機ケイ素化合物とを含むことを特徴とする請求項1に記載の温度感知材料。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物はカゴ状化合物であり、前記フッ素含有有機ケイ素化合物は環状化合物であることを特徴とする請求項に記載の温度感知材料。
【請求項4】
前記フッ素含有有機ケイ素化合物がパーフルオロアルキル基を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の温度感知材料。
【請求項5】
前記混合物は、炭素数4から40のうちの複数の炭素数のアルカンを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の温度感知材料。
【請求項6】
対象物の温度を感知する温度感知材料の製造方法において、
ポリシロキサン樹脂の溶液とアルカンとの混合液を硬化し、
前記ポリシロキサン樹脂の溶液は、シルセスキオキサンを含み、パーフルオロアルキル基を有するフルオロシランを含むことを特徴とする温度感知材料の製造方法
【請求項7】
前記ポリシロキサン樹脂の溶液にアルカンと硬化剤とを加えて混合液を作製する混合工程と、
前記混合液を、凸凹面に塗布し、加熱させる加熱硬化工程とを有する請求項6に記載の温度感知材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリシロキサン樹脂を含む温度感知材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ある物体の温度環境を記録、表示するサーモラベルがある。嗜好品のお茶やコーヒーや酒などは人それぞれに最適の液温を持っている、その温度で飲んだときに最も美味しいと感ずる。しかしその最適の温度はカップに口をつけるまで分からず、場合によっては舌を火傷することも少なくない。
【0003】
また幼児や食事の介護を必要とする病人や老人などにも最適な温度で美味しく飲食するために、温度表示をわかりやすくした温度表示カップを提供することを目的とする。しかしながら、従来のサーモラベルはほとんどのものが不可逆性であり、繰り返し使用ができないため、その都度交換しなければならず無駄が多かった。また水やお湯に浸漬すると着脱したりして使えなくなるなどの問題があった。この問題は、可逆性を要するサーモラベルに防水性のカバーを貼設することで解決することが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−110825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の方法では、サーモラベルを貼り付けた後に更に防水性カバーを貼り付けるという面倒さがあった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的とする所は、表示が可逆性であり、繰り返し使用が可能であり、防水性を有する温度感知材料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の温度感知材料は、対象物の温度を感知し表示状態が変化する温度感知材料において、ポリシロキサン樹脂とアルカンとの混合物として形成されることを特徴とする。これにより、アルカンの融点の変態(アルカンの融点より温度が高い場合は透明に、低い場合は白濁になる)を利用することより、防水性を有しつつ、温度変化を感知でき、繰り返し使用可能となる温度感知材料を得ることができる。
【0008】
また、本発明の温度感知材料は、前記ポリシロキサン樹脂が、有機ケイ素合物とフッ素含有有機ケイ素化合物とを含むことを特徴とする。また、本発明の温度感知材料は、前記有機ケイ素化合物がカゴ状化合物であり、前記フッ素含有有機ケイ素化合物が環状化合物であることを特徴とする。これにより、可撓性に優れる温度感知材料を得ることができる。
【0009】
また、本発明の温度感知材料は、前記ポリシロキサン樹脂がシルセスキオキサンを含むことを特徴とする。これにより、耐候性に優れる温度感知材料を得ることができる。
【0010】
また、本発明の温度感知材料は、前記フッ素含有有機ケイ素化合物がパーフルオロアルキル基を有することを特徴とする。これにより、撥水効果に優れる温度感知材料を得ることができる。
【0011】
また、本発明の温度感知材料は、前記混合物が炭素数4から40のうちの複数の炭素数のアルカンを含むことを特徴とする。これにより、段階的に温度を感知することが可能にとなる温度感知材料を得ることができる。
【0012】
また、本発明の温度感知材料の製造方法は、対象物の温度を感知する温度感知材料の製造方法において、ポリシロキサン樹脂の溶液とアルカンとの混合液を硬化することを特徴とする。これにより、アルカンの融点の変態を利用することより、防水性を有しつつ、温度変化を感知でき、繰り返し使用可能となる温度感知材料を製造することができる。
【0013】
また、本発明の温度感知材料の製造方法は、前記ポリシロキサン樹脂の溶液がシルセスキオキサンを含むポリシロキサンオリゴマー溶液であり、前記ポリシロキサンオリゴマー溶液がパーフルオロアルキル基を有するフルオロシランを含むことを特徴とする。これにより、耐候性や撥水性に優れる温度感知材料を製造することができる。
【0014】
また、本発明の温度感知材料の製造方法は、前記ポリシロキサン樹脂の溶液にアルカンと硬化剤とを加えて混合液を作製する混合工程と、前記混合液を、凸凹面に塗布し、加熱させる加熱硬化工程とを有することを特徴とする。これにより、凹凸のある面にも配置できる温度感知材料が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示が可逆性であり、繰り返し使用が可能であり、防水性を有する温度感知材料、及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る温度感知材料は、ポリシロキサン樹脂である下記の一般式(1)で表されるシルセスキオキサンおよび/またはその重合体からなる有機ケイ素化合物と、同じくポリシロキサン樹脂である下記の一般式(2)で表されるシルセスキオキサンおよび/またはその重合体からなるフッ素含有有機ケイ素化合物と、下記の一般式(3)で表されるアルカンものを含むものである。
【0017】
(R1SiO1.5n ・・・(1)
(R2SiO1.5n ・・・(2)
n2n+2・・・(3)
(但し、上記の一般式(1)中、nは4〜18の整数、複数のR1は、同一または異なっており、直接結合、ハロゲン置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、エーテル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、エステル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、および、置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基を含有する炭素数1〜12の2価の炭化水素基からなる群から選択された少なくとも1種である。上記の一般式(2)中、nは4〜18の整数、複数のR2は、同一または異なっており、炭素数1〜20のアルキル基、直接結合、ハロゲン置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、エーテル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、エステル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、および、置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基を含有する炭素数1〜12の2価の炭化水素基からなる群から選択された少なくとも1種であって、少なくとも1つのR2が、フッ素、炭素数5〜18のアルキル基の水素がフッ素に置換された置換基、または、パーフルオロアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つである。)上記の一般式(3)中、nは6〜40の整数である。
【0018】
上記の一般式(1)で表されるシルセスキオキサンは、一般式SiR1(OR13で表されるトリアルコキシシランを、下記の化学反応式(4)に従って重合してなるカゴ状化合物である。なお、複数のR1は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0019】
【化1】
【0020】
炭素数1〜20のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
ハロゲンとしては特に限定されず、例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)などが挙げられる。
【0021】
炭素数1〜20のアルキレン基としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などが挙げられる。
炭素数5〜12のシクロアルキレン基としては特に限定されず、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルニレン基、トリシクロドデシレン基などが挙げられる。
【0022】
エステル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、−(C=O)−O−CH2−、−(C=O)−O−(CH22−、−CH2−(C=O)−、−(CH22−(C=O)−O−、−(CH22−(C=O)−O−(CH22−などが挙げられる。
【0023】
置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基を含有する炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などに置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基が結合した基などが挙げられる。
【0024】
このようなシルセスキオキサンからなる有機ケイ素化合物としては、例えば、下記の化学式(4)で表されるn−オクチルトリエトキシシラン(OTES)、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシランおよびトリメトキシ(プロピル)シランからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
また、シルセスキオキサンの重合体からなる有機ケイ素化合物としては、例えば、下記の化学式(5)で表されるn−オクチルトリエトキシシラン(OTES)、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシランおよびトリメトキシ(プロピル)シランからなる群より選択される少なくとも1種を重合してなるものが挙げられる。
【0026】
【化2】
【0027】
上記の一般式(2)で表されるシルセスキオキサンは、一般式SiR2(OR23で表されるトリアルコキシシランを、上記の化学反応式(4)に従って重合してなる環状化合物である。なお、複数のR2は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0028】
炭素数1〜20のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
ハロゲンとしては特に限定されず、例えば、塩素、フッ素などが挙げられる。
【0029】
炭素数1〜20のアルキレン基としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などが挙げられる。
炭素数5〜12のシクロアルキレン基としては特に限定されず、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルニレン基、トリシクロドデシレン基などが挙げられる。
【0030】
エステル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、−(C=O)−O−CH2−、−(C=O)−O−(CH22−、−CH2−(C=O)−、−(CH22−(C=O)−O−、−(CH22−(C=O)−O−(CH22−などが挙げられる。
【0031】
置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基を含有する炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などに置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基が結合した基などが挙げられる。
【0032】
炭素数5〜18のアルキル基の水素がフッ素に置換された置換基としては、例えば、CF3(CF25CH2CH2−、CF3(CF22CH2CH2−、CF3(CF27CH2CH2−、CF3CH2CH2−などが挙げられる。
【0033】
パーフルオロアルキル基は、CF3(CF2n−で表される。パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、nが1〜20の整数からなるものが挙げられる。パーフルオロアルキル基の起源となる化合物としては、例えば、トリエトキシフルオロシランが挙げられる。
【0034】
このようなシルセスキオキサンからなるフッ素含有有機ケイ素化合物としては、例えば、下記の化学式(5)で表されるトリエトキシフルオロシラン(F1TES)、下記の化学式(6)で表されるトリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(F13TES)、トリメトシキ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランおよび1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
また、シルセスキオキサンの重合体からなるフッ素含有有機ケイ素化合物としては、例えば、下記の化学式(6)で表されるトリエトキシフルオロシラン(F1TES)、下記の化学式(7)で表されるトリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(F13TES)、トリメトシキ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランおよび1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種を重合してなるものが挙げられる。本発明に係る温度感知材料では、フッ素含有有機ケイ素化合物としては、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(F13TES)、トリメトシキ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランおよび1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種を重合してなるものが好ましい。
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
また、フッ素含有有機ケイ素化合物は、上記の一般式(2)で表されるシルセスキオキサンの重合体であってもよい。例えば、一般式SiR2(OR23で表されるトリアルコキシシランと、一般式SiR32(OR32で表されるジアルコキシシランとを重合させてなる重合体であってもよい。
【0039】
但し、上記の一般式SiR32(OR32中、複数のR3は、同一または異なっており、直接結合、ハロゲン置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、エーテル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、エステル結合を含有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、および、置換基を有していてもよいオルガノシロキシ基を含有する炭素数1〜12の2価の炭化水素基からなる群から選択された少なくとも1種である。
【0040】
このような重合体は、下記の化学反応式(8)に従って重合されたものであり、例えば、下記の化学式(9)で表されるものが挙げられる。
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
本発明に係る温度感知材料は、このような一般式(1)で表されるシルセスキオキサンからなる有機ケイ素化合物と、一般式(2)で表されるシルセスキオキサンおよび/またはその重合体からなるフッ素含有有機ケイ素化合物とを含み、カゴ状化合物の有機ケイ素化合物の間に、環状化合物のフッ素含有有機ケイ素化合物がランダムに介在した構造をなしているものであり、その中に一般式(3)で表されるアルカンが介在する構造である。上記一般式(3)のnが6〜40のうちの任意のアルカンを介在させることにより、段階的な温度感知が可能な温度検知材料を得ることができる。
【0044】
本発明に係る温度感知材料では、シルセスキオキサンの架橋物を形成するために、硬化剤を用いてもよい。
このような硬化剤としては、例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0045】
本発明においては、シルセスキオキサンの架橋物を形成するために、硬化剤とともに硬化触媒を用いてもよい。
このような硬化触媒としては、4級ホスホニウム塩、例えば、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミドなどが挙げられる。
【0046】
本発明に係る温度感知材料には、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤を配合することができる。
このような添加剤としては、シランカップリング剤、ヒンダードアミン系光安定化剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0047】
シランカップリングとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビルニトリメトキシシラン、ビルニトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、例えば、TINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)622LD(いずれもチバスペシャルティーケミカルズ社製)、アデカスタブ(登録商標)LA−57(旭電化工業社製)などが挙げられる。
【0049】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)、ノクラックNS−30(商品名)(大内新興化学工業社製)、トミノックスTT(商品名)(吉豊ファインケミカル社製)などが挙げられる。
【0050】
本発明に係る温度感知材料は、上記の一般式(1)で表されるシルセスキオキサンおよび/またはその重合体からなる有機ケイ素化合物と、上記の一般式(2)で表されるシルセスキオキサンおよび/またはその重合体からなるフッ素含有有機ケイ素化合物とを含んでいるので、カゴ状化合物の有機ケイ素化合物の間に、環状化合物のフッ素含有有機ケイ素化合物がランダムに介在した構造をなし、カゴ状化合物の間に、弾性を示す環状化合物が存在するので、本発明に係る温度感知材料を硬化してなる硬化物(封止材)は、可撓性に優れたものとなる。したがって、本発明に係る温度感知材料により、厚膜形成やバルク形成を行っても、クラックが発生することを防止できる。また、本発明に係る温度感知材料は、所望の形状に成形したり、キャビティなどの凹部に充填したりすることができる。しかも、有機ケイ素化合物およびフッ素含有有機ケイ素化合物がシルセスキオキサンからなるので、本発明に係る温度感知材料を硬化してなる硬化物(封止材)は、高温高湿状態等にも適用しやすいという耐候性に優れ、および/または、紫外線に強い耐光性に優れたものとなる。また、かかる温度感知材料のみで防水性を確保することができるようになる。よって、温度感知材料を高湿雰囲気や液中などにも配置しやすくなり、利便性が向上する。
【0051】
また、フッ素含有有機ケイ素化合物がパーフルオロアルキル基を有していれば、本発明に係る温度感知材料を硬化してなる硬化物の撥水性や耐透湿性が向上するとともに、前記の硬化物(封止材)のタック性を消失させて、前記の硬化物(封止材)に塵や埃などが付着することを防止し、結果として、汚れを防止できる。
【0052】
上述のようなポリシロキサン樹脂とアルカンとの混合物として形成される温度感知材料は、アルカンの融点の変態を利用することで、アルカンの融点より温度が高い場合は透明に、低い場合は白濁になるように表示状態が変化する。つまり、表示状態の変化として、視覚による色の変化により温度変化を感知可能となる。これにより、液体や気体など対象物の温度を感知することができる。