特許第6062760号(P6062760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062760
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】樹脂封止金型および樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/02 20060101AFI20170106BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20170106BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B29C45/02
   H01L21/56 T
   B29C45/26
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-33601(P2013-33601)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-162055(P2014-162055A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】窪田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】秋野 勝
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−124989(JP,A)
【文献】 特開平04−197720(JP,A)
【文献】 特開平06−143325(JP,A)
【文献】 特開平10−284526(JP,A)
【文献】 特開平01−205432(JP,A)
【文献】 米国特許第04946633(US,A)
【文献】 特開2007−243146(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0181903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
H01L 21/56
H01L 23/28−23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に駆動可能なプランジャを有する複数のポットおよび前記ポットの上部に設けられたカルからなる樹脂供給部と、
前記樹脂供給部から樹脂が供給されるランナーと、
前記ランナーに接続して前記ランナーから樹脂が供給されるキャビティと、
からなり、前記キャビティ内に載置されているリードフレーム上に搭載された半導体チップを樹脂封止する樹脂封止金型であって、
前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有し、
前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に、圧力弁の付いた微孔である脱樹脂孔を設けたことを特徴とする樹脂封止金型。
【請求項2】
前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に接続してダミーキャビティを設けたことを特徴とする請求項1記載の樹脂封止金型。
【請求項3】
上下駆動可能なプランジャする複数のポットおよび前記ポットの上部に設けられたカルからなる樹脂供給部と、前記樹脂供給部から樹脂が供給されるランナーと、前記ランナーに接続して前記ランナーから樹脂が供給されるキャビティとからなる樹脂封止金型を用いる樹脂封止方法であって、
前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有し、前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に、圧力弁の付いた微孔である脱樹脂孔を設けた樹脂封止金型を準備する工程と、
前記樹脂封止金型内の半導体チップを搭載したリードフレームおよび固形樹脂をセットする工程と、
前記固形樹脂を溶解して前記樹脂供給部から前記ランナーおよび前記キャビティに供給する工程と、
前記リードフレームを樹脂封止する工程と、
前記樹脂封止されたリードフレームを前記樹脂封止金型から取出す工程と、
からなることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項4】
前記樹脂封止金型を準備する工程において、前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有し、前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に接続してダミーキャビティを設けた樹脂封止金型を準備することを特徴とする請求項記載の樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止金型及び樹脂封止方法に関し、特に生産効率と製品品質の向上に好適なモールド金型とリードフレームとを備えた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9に従来の樹脂封止金型の平面図を示す。金型内に、モールド樹脂を押圧供給するためのポット10を備え、複数のポットに互いに独立したランナー12を設け、これら各ランナーから枝分かれするように複数のキャビティ17を設け、これらの各キャビティ17内にモールドすべき電気部品、例えば半導体チップ20を配置して、ポット10から複数個の各キャビティ17にモールド樹脂を押圧供給するように構成している。(例えば、特許文献1参照)。さらに、図10に示すように、金型流路内の圧力を均等化するための方策として、ポット間に連通路15を設けるという技術も開示されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−122136号公報
【特許文献2】特開2002−28947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の半導体装置のコストの低減化を目的として、リードフレームにおける半導体チップを多数個に配置する傾向にある。そのためにリードフレームの幅および長さを大きくして、リードフレーム1枚あたりの半導体チップの取り個数を確保している。しかしながら、リードフレームの幅に合わせてランナー12を延ばすと、末端において種々の課題が発生する。
【0005】
リードフレームを大きくした場合の問題を図7、8にて説明する。図7は、フィラー含有率の異なる2種類の樹脂AおよびBを用いて樹脂充填を行った場合の樹脂に含まれるフィラーの含有率の変化を表したもので、カル中心から距離が40mmをすぎると、フィラー含有率が急激に上昇することがわかる。この場合、フィラー含有率が上昇することで樹脂硬度が上がり、レーザーマーク時の刻印深さが浅くなり、マーク不良が発生する可能性がある。図8はフィラーの粒径(メジアン径)を調査した結果であるが、封止樹脂Aではカル中心から60mmの距離で粒径が幾分小さくなる傾向を示す。封止樹脂Bでは20mm程度の距離から粒径小の傾向を示し、樹脂充填不良に至るという不具合が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記不具合を解決することができる樹脂封止金型および樹脂封止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、以下のような手段を用いた。
まず、上下駆動可能なプランジャする複数のポットおよび前記ポットの上部に設けられたカルからなる樹脂供給部と、前記樹脂供給部から樹脂が供給されるランナーと、前記ランナーに接続して前記ランナーから樹脂が供給されるキャビティとからなる樹脂封止金型であって、前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有することを特徴とする樹脂封止金型を用いた。
【0008】
また、前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に接続してダミーキャビティを設けたことを特徴とする樹脂封止金型を用いた。
また、前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に、脱樹脂孔を設けたことを特徴とする樹脂封止金型を用いた。
【0009】
また、上下駆動可能なプランジャする複数のポットおよび前記ポットの上部に設けられたカルからなる樹脂供給部と、前記樹脂供給部から樹脂が供給されるランナーと、前記ランナーに接続して前記ランナーから樹脂が供給されるキャビティとからなる樹脂封止金型を用いる樹脂封止方法であって、前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有する樹脂封止金型を準備する工程と、前記樹脂封止金型内の半導体チップを搭載したリードフレームおよび固形樹脂をセットする工程と、前記固形樹脂を溶解して前記樹脂供給部から前記ランナーおよび前記キャビティに供給してする工程と、前記リードフレームを樹脂封止する工程と、前記樹脂封止されたリードフレームを前記樹脂封止金型から取出す工程とからなることを特徴とする樹脂封止方法とした。
【0010】
また、前記樹脂封止金型を準備する工程において、前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有し、前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に接続してダミーキャビティを設けた樹脂封止金型を準備することを特徴とする樹脂封止方法とした。
さらに、前記樹脂封止金型を準備する工程において、前記ランナーの両端に前記樹脂供給部を有し、前記両端の樹脂供給部から等距離にある前記ランナーの中心に、脱樹脂孔を設けた樹脂封止金型を準備することを特徴とする樹脂封止方法とした。
【発明の効果】
【0011】
上記手段を用いることにより、リードフレームの幅および長さを大きくなっても樹脂充填不良が無い樹脂封止型半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂封止金型の構成を示す断面図および平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程フロー図である。
図3】本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程断面図である。
図4図3に続く、本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程断面図である。
図5図4に続く、本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程断面図および平面図である。
図6図5に続く、本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程断面図および平面図である。
図7】フィラー含有量の傾向を示す図である。
図8】フィラー粒径分布を示す図である。
図9】従来の樹脂封止金型を示す平面図である。
図10】従来の樹脂封止金型を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を用いて発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂封止金型の構成を示す図である。図1(a)は、断面図であり、図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係る樹脂封止金型の平面図である。図1(a)は、図1(b)のA−A線における断面図にあたる。また、図1(c)は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂封止金型の平面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、金型は上下に対を成す上金型2と下金型3を備えており、樹脂封止装置に装着される。下金型3にはポット10と呼ばれる溝を備え、ポット10を上下方向に駆動可能なプランジャ19が備わっている。図では、ポット10のプランジャ19上には、ペレット状固形樹脂1が置かれ、複数のポット10の間にはリードフレーム21が載置されている。上金型2のポット10と対応するように凹形状のカル11が設けられている。上金型2と下金型3の間には所定の空間を設けた複数のランナー12やゲート13が形成されている。なお、ランナー12はカル11に連通している。ランナー12の両端には複数のポット10と、ポット10内を上下方向に駆動されるプランジャ19およびその上部に設けられたカル11からなる複数の樹脂供給部が配置される。ここで、ランナー12の両端に配置された複数のプランジャ19は同一の駆動系により上下駆動し、複数のプランジャ19には同一の圧力がかかるようになっている。
【0015】
図1(b)に示すように、ふたつのポット10の間には複数のランナー12が設けられ連通しており、個々のランナー12から枝分かれしてキャビティ17が設けられている。キャビティ17にはリードフレーム上に搭載され、ワイヤによって端子と接続された半導体チップ20が収められている。なお、ランナー12の中心付近に小点により図示されている脱樹脂孔6は圧力弁の付いた微孔であって所定の圧力になると微量の樹脂を排出する構成である。本構成は樹脂充填不良を防止するもので、必要に応じて設ければ良い。
【0016】
図1(c)に示す実施形態が図1(b)と異なる点は、ランナー12の中心付近のキャビティ20に代えてダミーキャビティ31とした点である。ランナー12の両端に配置されたポット10、カル11などからなる樹脂供給部からランナーに流れ込む溶解樹脂は、ランナー12のほぼ中心付近で合流するが、合流点では樹脂充填不良が発生する可能性もあり、ダミーキャビティ31を配置することにより不良の発生を防止している。
【0017】
以上説明したように、上記構成とすることにより、リードフレームの幅および長さが大きくなり、ランナーなどの樹脂流路が長くなっても樹脂充填不良を防止することができ、1枚のリードフレームからより多くの樹脂封止型半導体装置を得ることができる。
【0018】
次に、上記のように構成された樹脂封止金型4を用いた樹脂封止方法について、図2図6を用いて詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程フロー図である。図3図6は、本発明の実施形態に係る樹脂封止方法を示す製造工程断面図である。
図2には、一連の樹脂モールド工程を示した。まず、金型内にリードフレームおよび固形樹脂をセットし、次に上下金型を型締めしたのち、樹脂を溶解し、所定時間加圧・保持することで樹脂封止型半導体装置を形成することができる。
【0019】
図3以降で樹脂モールド工程の詳細説明を行う。
まず、図3に示すように、半導体チップ(図示せず)を搭載したリードフレーム21を下金型3のキャビティ17内にセットすると共に、下金型3のポット10にペレット状固形樹脂1をセットする。ここでは、上金型を図示していないが、下金型3の上方に所定の距離をもって配置されている。
【0020】
次いで、図4に示すように、下金型3を上昇させ、この下金型3を上金型2と嵌合させて、型締めを行う。このとき、上金型2と下金型3は、ランナー12を確保しながら、部分的に接触する。また、固形樹脂1の下のプランジャ19は下がった位置にある。
【0021】
次に、ポット部10内のプランジャ19を上方へ押し上げて、加熱溶解した樹脂5をカル11内に注入する。このとき、ランナー12の両端に位置する複数のプランジャ19は同時に同一圧力で押し上げられる。これにより、両端のポット10から均等に樹脂供給が行われることになる。図5は、樹脂注入途中の図である。プランジャ19の押上げ加減により、溶解樹脂5の樹脂流路14への入り込み方が調整される。図5(b)は平面図であり、図1(c)に示した本発明の第2の実施形態に係る樹脂封止金型の場合を示したものである。ランナー12中心付近のダミーキャビティ31までは溶解樹脂5が注入されていない時点での図である。
【0022】
さらに、プランジャ19を押上げ、所定位置に達すると、図6に示すように、樹脂供給部から流れ込んだ溶解樹脂5がダミーキャビティ31で合流し、その隅々まで行き渡り充填がほぼ終了する。このとき、半導体チップ20を搭載したリードフレーム21は、溶解樹脂5により樹脂封止された状態となる。この状態で所定時間加圧・保持すると、キャビティ17、ダミーキャビティ31、カル11などの各空間に充填した溶解樹脂5は重合して硬化する。その後、下金型3を下方に下げて型を開き、下金型3の押出しピンで上方へ突出させて、成形された樹脂で封止されたリードフレームを取り出す。
【0023】
以上のように、本実施形態に係る樹脂封止方法によれば、リードフレーム両方向から流れ込んだ溶解樹脂がダミーキャビティ31で合流することになり、品質の安定した樹脂封止型半導体装置を得ることができる。
【0024】
また、以上説明したように、本発明の樹脂封止金型およびそれを用いた樹脂封止方法によれば、リードフレームの幅および長さを大きくなって、ランナーなどの樹脂流路が長くなっても、実質的な樹脂流動距離を短いままとすることができ、1枚のリードフレームからより多くの樹脂封止型半導体装置を得ることができる。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形は可能である。例えば、本実施形態では、下金型にプランジャを設ける構造であるが、上金型にプランジャを設ける構造であっても良いし、また、ハンマーゲート方式に代えて、スルーゲート方式の金型構造に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 固形樹脂
2 上金型
3 下金型
4 樹脂封止金型
5 溶融樹脂
6 脱樹脂孔
10 ポット
11 カル
12 ランナー
13 ゲート
14 樹脂流路
15 連通路
17 キャビティ
19 プランジャ
20 半導体チップ
21 リードフレーム
31 ダミーキャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10