(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062768
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】メモリ検査装置、メモリ検査方法、およびメモリ検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 12/16 20060101AFI20170106BHJP
G11C 16/02 20060101ALI20170106BHJP
G06F 11/30 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
G06F12/16 330D
G11C17/00 601Z
G06F11/30 140N
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-40979(P2013-40979)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-170600(P2014-170600A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯島 裕基
【審査官】
後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/013351(WO,A1)
【文献】
特開2010−157276(JP,A)
【文献】
特開2009−251627(JP,A)
【文献】
特開2009−205578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 12/16
G06F 11/30
G11C 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リテンション不良によるビットエラーが発生する可能性がある検査対象メモリを検査するメモリ検査装置であって、
前記検査対象メモリの所定領域におけるビットエラーを検出するビットエラー検出手段と、
前記所定領域においてビットエラーが検出された際、前記所定領域内のビットを、前記リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるとともに、前記ビットエラーの発生間隔を求める制御手段と、
を備えることを特徴とするメモリ検査装置。
【請求項2】
前記制御手段によって書き込まれる値は、前記メモリのリテンション不良の発生パターンが”0”→”1”である場合には“0”であり、前記メモリのリテンション不良の発生パターンが”1”→”0”である場合には“1”であることを特徴とする請求項1記載のメモリ検査装置。
【請求項3】
前記検査対象メモリに電力を供給する電源の電圧を監視する電圧監視手段と、
前記検査対象メモリの周囲温度を監視する温度監視手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記電圧監視手段の監視結果に基づいて前記発生間隔内における前記電圧の最大値、最小値、平均値、および前記ビットエラー発生前後の値についての情報のうちの少なくとも1つを算出し、前記温度監視手段の監視結果に基づいて前記発生間隔内における前記温度の最大値、最小値、平均値、および前記ビットエラー発生前後の値についての情報のうちの少なくとも1つを算出することを特徴とする請求項1または2に記載のメモリ検査装置。
【請求項4】
前記制御手段によって算出された前記ビットエラーの発生間隔についての情報、電圧に関する前記各種情報、および温度に関する前記各種情報を外部に通知する通信手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載のメモリ検査装置。
【請求項5】
前記ビットエラー検出手段におけるビットエラー検出は、パリティチェックであることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載のメモリ検査装置。
【請求項6】
前記検査対象メモリは、前記検査対象メモリ自体を検査するためのプログラムが記憶されたメモリであることを特徴とする請求項1−5のいずれか1項に記載のメモリ検査装置。
【請求項7】
前記プログラムが記憶されたメモリは、起動時において自動的に実行されるプログラムが格納される運用領域と、前記運用領域にてビットエラーが発生した場合に実行されるプログラムが格納される予備領域を有することを特徴とする請求項6記載のメモリ検査装置。
【請求項8】
前記検査対象メモリは、フラッシュメモリであることを特徴とする請求項1−7のいずれか1項に記載のメモリ検査装置。
【請求項9】
リテンション不良によるビットエラーが発生する可能性がある検査対象メモリを検査するメモリ検査方法であって、
前記検査対象メモリの所定領域におけるビットエラーを検出し、
前記所定領域においてビットエラーが検出された際、前記所定領域内のビットを、前記リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるとともに、前記ビットエラーの発生間隔を求める
ことを特徴とするメモリ検査方法。
【請求項10】
リテンション不良によるビットエラーが発生する可能性がある検査対象メモリを検査するメモリ検査装置のコンピュータに、
前記検査対象メモリの所定領域におけるビットエラーを検出する第1処理と、
前記所定領域においてビットエラーが検出された際、前記所定領域内のビットを、リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるとともに、前記ビットエラーの発生間隔を求める第2処理と
を実行させるためメモリ検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュメモリ等のメモリを検査するメモリ検査装置、メモリ検査方法、およびメモリ検査プログラム関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置等の電子機器において、電気的に書き換え可能なメモリであるフラッシュメモリが広く使用されている。フラッシュメモリにおいて、ビットエラーが発生することがある。ビットエラーは、フラッシュメモリを搭載する機器側の回路や使用条件が原因で発生する場合と、フラッシュメモリ自体の特性が原因で発生する場合とがある。後者の代表的な例として、「リテンション不良」を挙げることができる。リテンション不良とは、書き込みや消去時に発生するエラーとは異なり、放置された状態でデータが自然に化ける不良のことである。
【0003】
ビットエラーの原因が、リテンション不良によるものなのか、それ以外によるものなのかを区別することができれば、不具合発生原因の切り分けが可能となるため、トラブルシューティングを迅速且つ的確に実行することが可能となる。また、機器側の製造業者とフラッシュメモリを供給するメーカ側との間で、責任の所在が明確となる。
【0004】
特許文献1には、書き込みエラーが発生した場合に、直前に発生した書き込みエラーと現書き込みエラーとの時間間隔を検出する構成についての記載がある。
【0005】
特許文献2には、伝送装置における障害発生の原因を解析するために、伝送装置の状態(電源電圧、衝撃、温度)を観測する構成についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−097600号公報(ページNo.14−15)
【特許文献2】特開2010−147804号公報(ページNo.8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リテンション不良の発生周期はほぼ一定であるとされている。従って、ビットエラーの原因がリテンション不良かそれ以外かを区別する場合、ビットエラーの発生周期を知ることが重要である。
【0008】
また、リテンション不良の発生パターンは、フラッシュメモリのプロセスの特性上、”0”→”1”または”1”→”0”のどちらかに限定されることが知られている。
【0009】
たとえば、リテンション不良の発生パターンが“0”→“1”のタイプのフラッシュメモリの場合、現在の値が“0”であるビットにリテンション不良が発生すると、そのビットは“1”に化ける。そして、一旦、“1”となったビットは、リテンション不良によって“0”に戻ることはない(この場合、意図的に行われるデータの書き換えや消去の場合はその限りではない)。また、現在の値が元々“1”であるビットは、リテンション不良によって“0”に化けることはない。
【0010】
すなわち、リテンション不良の発生パターンが“0”→“1”のタイプのフラッシュメモリにおいて、データ化けによって“1”となったビットおよび元々“1”であるビットに対してリテンション不良が発生した場合、そのビットが“0”に化けることはない。従って、上記のような場合、ビットエラーとして検出されない。これにより、ビットエラーの発生周期が不確かなものとなってしまい、結果として、ビットエラーの原因がリテンション不良によるものなのか、他の原因によるものなのかを正確に区別することができない。
【0011】
特許文献1は、書き込みエラーの時間間隔を測定することについて記載する。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上述したような特殊な発生パターンを有するリテンション不良を区別することはできない。
【0012】
なお、リテンション不良は、さらに、使用環境温度が高いほど発生しやすいという特徴を有している。特許文献2は、伝送装置の状態、例えば、温度を測定することについては記載するものの、リテンション不良の上記特性を考慮したビットエラーの継続的測定については何ら記載していない。従って、特許文献2の技術では、ビットエラーの原因がリテンション不良であることを特定することはできない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、メモリにて発生するビットエラーの原因が、リテンション不良によるものなのか、それ以外によるものなのかを区別可能とすることができるメモリ検査装置、メモリ検査方法、およびメモリ検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のメモリ検査装置は、リテンション不良によるビットエラーが発生する可能性がある検査対象メモリを検査するメモリ検査装置であって、前記検査対象メモリの所定領域におけるビットエラーを検出するビットエラー検出手段と、前記所定領域においてビットエラーが検出された際、前記所定領域内のビットを、前記リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるとともに、前記ビットエラーの発生間隔を求める制御手段と、を備える。
【0015】
本発明のメモリ検査方法は、リテンション不良によるビットエラーが発生する可能性がある検査対象メモリを検査するメモリ検査方法であって、前記検査対象メモリの所定領域におけるビットエラーを検出し、前記所定領域においてビットエラーが検出された際、前記所定領域内のビットを、前記リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるとともに、前記ビットエラーの発生間隔を求める。
【0016】
本発明のメモリ検査プログラムは、リテンション不良によるビットエラーが発生する可能性がある検査対象メモリを検査するメモリ検査装置のコンピュータに、前記検査対象メモリの所定領域におけるビットエラーを検出する第1処理と、前記所定領域においてビットエラーが検出された際、前記所定領域内のビットを、リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるとともに、前記ビットエラーの発生間隔を求める第2処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メモリにて発生するビットエラーの原因が、リテンション不良によるものなのか、それ以外によるものなのかを区別可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るメモリ検査装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】ビットエラー検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すメモリ検査装置の動作例を説明する第1のフローチャートである。
【
図4】
図1に示すメモリ検査装置の動作例を説明する第2のフローチャートである。
【
図5】
図1に示すメモリ検査装置の動作例を説明する第3のフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るメモリ検査装置の構成例を示すブロック図である
【
図7】
図6に示すメモリに格納されるメモリ検査プログラムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るメモリ検査装置100の構成例を示すブロック図である。メモリ検査装置100は、検査対象であるフラッシュメモリ1にて発生するビットエラーの原因が、リテンション不良によるものなのか、それ以外によるものなのかを区別可能とする。メモリ検査装置100は、ビットエラー検出部2と、電圧監視部3と、クロック発生部4と、温度監視部5と、記憶部6と、制御部7と、書込設定部8と、実行領域切替部9と、通信部10と、表示部11と、を備える。
【0020】
なお、本実施形態では、フラッシュメモリ1を検査するためのプログラムが、検査対象のフラッシュメモリ1自体に記憶されている場合を例に挙げる。フラッシュメモリ1は、制御部7によって実行されるプログラムが格納されるプログラム領域を備える。プログラム領域は、運用領域と予備領域とに分割される。運用領域と予備領域には、実質的に同一のプログラムが格納される。制御部7は、運用領域および予備領域のうちのいずれかのプログラムを選択的に実行することが可能である。制御部7によって実行される領域を実行領域と呼ぶ。
【0021】
ビットエラー検出部2は、フラッシュメモリ1のメモリセルから読み出したデータにビットエラーがあるか否かを判断し、ビットエラーがある場合はそのビットエラーが発生したアドレスを特定する。ビットエラー検出部2は、ビットエラーを検出した場合、後述するビットエラー情報(a)を出力する。
【0022】
電圧監視部3は、フラッシュメモリ1の電源電圧を監視し、電圧監視情報として出力する。温度監視部5は、フラッシュメモリ1近傍の温度を監視し、温度監視情報として出力する。クロック発生部4は、制御部7に対して、検査周期としてのクロックを発生する。ここで、「検査周期」とは、上記電圧および温度を検査する周期のことである。検査周期は、たとえば、瞬間的な異常も検出できる周期とすることができる。制御部7は、上記クロックの変化点(たとえば、立ち上がり)を検出するたびに、電圧監視部3から電圧値を取得し、温度監視部5から温度値を取得し、さらに、前記クロックの回数をカウントしているクロックカウンタをインクリメントする。
【0023】
記憶部6は、ビットエラーが発生したときに収集される情報である、ビットエラーアドレスとクロックカウンタ値、および、常時繰り返し収集される情報である、電源電圧値と温度値と、を「監視結果」として記録する。
【0024】
制御部7は、上記監視結果に基づいて、「ビットエラー原因特定情報」を生成する。ビットエラー原因特定情報は、例えば、N回目のビットエラー発生から(N+1)回目のビットエラー発生までの時間間隔、この時間間隔内における、電圧および温度の最大値、最小値、平均値、並びにビットエラー発生前後の電圧、温度情報を含む。たとえば、時間間隔は、(N+1)回目のビットエラー発生時点でのクロックカウンタ値からN回目のビットエラー発生時点でのクロックカウンタ値を減じたものに、検査周期を乗じることによって求めることができる。
【0025】
書込設定部8には、ビットエラー発生後のフラッシュメモリ1に書き込むデータ値(“0”および“1”のいずれか一方)が予め設定されている。このデータ値は、リテンション不良の発生を継続的に検出するために設定される値である。具体的には、フラッシュメモリ1のリテンション不良の発生パターンが”0”→”1”の場合、上記データ値は“0”である。一方、フラッシュメモリ1のリテンション不良の発生パターンが”1”→”0”である場合、上記データ値は“1”である。なお、フラッシュメモリ1の不良発生パターンは、フラッシュメモリ毎に異なり、使用する前に予め既知であるものとする。よって、書込設定部8には、この不良発生パターンに応じた“0”または“1”が、運用前に予め設定されているものとする。
【0026】
実行領域切替部9は、ビットエラーの発生アドレスに応じて実行領域を切り替える。
【0027】
通信部10は、ビットエラー原因特定情報を、外部装置(不図示)へ通知する機能を少なくとも有する。通信部10は、有線通信および無線通信のいずれであってもよい。表示部11は、ビットエラー原因特定情報を、文字あるいは音声にて表示する機能を少なくとも有する。
図2は、
図1に示すビットエラー検出部2の構成例を示すブロック図である。ビットエラー検出部2は、パリティチェック部20と、アドレス監視部22と、を備える。
【0028】
パリティチェック部20は、フラッシュメモリ1から読み出されたデータに対してパリティチェック(ビットエラー検出の一例)を実施する。パリティチェック部20は、チェック結果を、アドレス監視部22へ出力する。アドレス監視部22は、チェック結果に基づいて作成したビットエラー情報(a)を、制御部7、記憶部6、実行領域切替部9に対して出力する。ビットエラー情報(a)は、パリティエラーが発生した旨を示す「ビットエラー発生情報」とパリティエラーが発生したアドレスを示す情報である「アドレス情報」とを含む。
【0029】
図3〜5は、メモリ検査装置100の動作例を説明するためのフローチャートである。
【0030】
メモリ検査装置100の動作は、大別すると、3種類に分類される。1つ目は、初回のビットエラーを検出するまでの動作である(
図3参照)。二つ目は、運用領域においてビットエラーが発生した場合の動作である(
図4参照)。3つ目は、予備領域においてビットエラーが発生した場合の動作である(
図5参照)。
【0031】
図3に示す動作について説明する。メモリ検査装置100が起動すると、クロック発生部4からのクロックタイミングに基づく電源電圧および温度の監視が開始される(ステップS1)。
【0032】
ビットエラー検出部2は、フラッシュメモリ1から読み出した運用領域の全データに対してパリティチェックを実行する(ステップS2)。パリティエラーが検出された場合(ステップS3のYes判定)、ビットエラー検出部2は、ビットエラー情報(a)を、実行領域切替部9へ出力する(ステップS4)。そして、
図4の処理が実行される(ステップS5)。
【0033】
運用領域にてパリティエラーが検出されなかった場合(ステップS3においてNo判定)、ビットエラー検出部2は、フラッシュメモリ1から読み出した予備領域の全データに対してパリティチェックを実行する(ステップS6)。パリティエラーが検出された場合(ステップS7のYes判定)、ビットエラー検出部2は、ビットエラー情報(a)を、実行領域切替部9へ出力する(ステップS8)。そして、
図4の処理が実行される(ステップS9)。
【0034】
予備領域にてパリティエラーが検出されなかった場合(ステップS7においてNo判定)、ステップS2からの処理が再度実行される。
【0035】
なお、運用領域のビットエラー検出は、例えば、初起動時に、制御部7がフラッシュメモリ1から運用領域のデータを読み込むタイミングで実行される。一方、予備領域のビットエラー検出は、例えば、予備領域のデータを一定周期で読み込み、その都度実行される。
【0036】
図4に示す動作について説明する。ビットエラーの発生が運用領域で発生したことが判明すると、実行領域切替部9は、制御部7に対して強制リセット信号を出力する(ステップS20)。強制リセット後、制御部7は、予備領域のプログラムで起動する(ステップS21)。
【0037】
制御部7は、書込設定部8から、データ値(“0”または“1”)を読み込む。制御部7は、運用領域のすべてのビットに上記データ値を書き込む(ステップS22)。ビットエラー検出部2は、フラッシュメモリ1から読み出した運用領域の全データに対してパリティチェックを実行する(ステップS23)。パリティエラーが検出されるまでステップS22の処理が繰り返し実行される。
【0038】
パリティエラー検出された場合(ステップS24のYes判定)、ビットエラー検出部2は、ビットエラー情報(a)を、制御部7へ出力する。制御部7は、記憶部6に記憶された各種監視結果から、「ビットエラー原因特定情報」を生成する(ステップS25)。ビットエラー原因特定情報は、例えば、N回目のビットエラー発生から(N+1)回目のビットエラー発生までの時間間隔、この時間間隔内における、電圧および温度の、最大値、最小値、平均値、並びにビットエラー発生前後の電圧および温度についての情報を含む。
【0039】
ビットエラー原因特定情報は、通信部10によって外部装置へ通知されるか、あるいは、表示部11によって文字あるいは音声にて表示される(ステップS26)。そして、ステップS22の処理から再度実行される。
【0040】
図5に示す動作について説明する。制御部7は、書込設定部8から、データ値(“0”または“1”)を読み込む。制御部7は、運用領域のすべてのビットに上記データ値を書き込む(ステップS40)。ビットエラー検出部2は、フラッシュメモリ1から読み出した予備領域の全データに対してパリティチェックを実行する(ステップS41)。ステップS41の処理は、パリティエラーが検出されるまで繰り返し実行される。
【0041】
パリティエラー検出された場合(ステップS42のYes判定)、ビットエラー検出部2は、ビットエラー情報(a)を、制御部7へ出力する。制御部7は、記憶部6に記憶された各種監視結果から、「ビットエラー原因特定情報」を生成する(ステップS43)。ビットエラー原因特定情報は、例えば、N回目のビットエラー発生から(N+1)回目のビットエラー発生までの時間間隔、この時間間隔内における、電圧および温度の最大値、最小値、平均値、並びにビットエラー発生前後の電圧、温度情報を含む。
【0042】
ビットエラー原因特定情報は、通信部10を介して外部装置へ通知されるか、あるいは、表示部11によって文字あるいは音声にて表示される(ステップS44)。そして、ステップS40の処理から再度実行される。
【0043】
以上説明した第1の実施形態の場合、ビットエラーが検出されたフラッシュメモリ1のプログラム領域(運用領域あるいは予備領域)のビットには、リテンション不良の発生を継続的に検出するための値(フラッシュメモリ1におけるリテンション不良の発生パターンを考慮した値)が書き込まれる。これにより、次回以降のリテンション不良をビットエラーとして確実に検出することができる。すなわち、ビットエラーの発生周期を正確に把握することできる。
【0044】
さらに、上記実施形態の場合、正確なビットエラーの発生間隔の情報と併せて、「ビットエラー原因特定情報」が生成される。「ビットエラー原因特定情報」は、ビットエラー発生間隔についての情報に加えて、この時間内における、電圧および温度の、最大値、最小値、平均値、並びにビットエラー発生前後の電圧、温度情報を含む。
【0045】
ここで、一般的に、リテンション不良は、温度の変化の影響を受け易く、電源電圧の変動の影響はさほど受けないとされている。従って、「ビットエラー原因特定情報」を検証することにより、ビットエラーの原因がリテンション不良によるものなのか、他の原因によるものなのかを、より確実に区別することが可能となる。
【0046】
なお、ビットエラーの発生間隔、温度および電圧に関する各種情報に加えて、ビットエラーが発生したアドレスの情報を併せて管理することにより、より適切な対応をとることが可能となる。
【0047】
もちろん、上記各種情報に基づくビットエラーの原因究明(リテンション不良か否かの切り分け)は、外部の装置ではなく、メモリ検査装置100内で行ってもよいことは説明するまでもない。
【0048】
また、ビットエラー発生時の情報をログデータとして管理し、例えば、保守運用サーバから、通信端末の運用状況の情報を取得できる機能を設けても良い。
【0049】
ビットエラー検出部2におけるビットエラー検出は、パリティチェックに限定されず、他の検出方法(例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)や、チェックサム)であってもよい。
【0050】
また、以上説明した第1の実施形態において、フラッシュメモリを検査するためのプログラムが、検査対象のフラッシュメモリ自体に記憶されている場合を例に挙げたが、検査対象のフラッシュメモリは、上記プログラムが記憶されたメモリである必要はない。検査対象のフラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていない場合、上記プログラムは、上記検査対象のフラッシュメモリとは別のメモリに格納すればよい。
【0051】
また、以上説明した第1の実施形態では、検査対象のメモリをフラッシュメモリとする場合を例に挙げたが、検査対象のメモリは、上述したようなリテンション不良によるビットエラーが発生する可能性があるすべてのメモリとすることができる。
【0052】
また、以上説明した第1の実施形態において、表示部11は、メモリ検査装置100の外部に設けることもできる。
【0053】
また、以上説明した第1の実施形態において、検査対象のメモリがこのメモリ自体を検査するためのプログラムが記憶されたメモリでない場合、
図1に示す実行領域切替部9を不要とすることができる。
【0054】
また、少なくとも、ビットエラーの発生周期さえ判明すれば、メモリにて発生するビットエラーの原因がリテンション不良によるものなのか、それ以外によるものなのかを区別可能なる。したがって、電源監視部3および温度監視部6は必須の構成要素ではない。
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係るメモリ検査装置300の構成例を示すブロック図である。メモリ検査装置300は、CPU(Central Processing Unit)302と、メモリ304と、を備える。
【0055】
メモリ304は、メモリ検査プログラム400を記憶する。CPU302は、ハンドオーバプログラム400を実行する。メモリ304の例としては、非一時的な記憶手段、たとえば、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、リムーバブルメディア、あるいはリムーバブルディスク等を挙げることができる。
【0056】
図7は、メモリ検査プログラム400の構成例を示すブロック図である。メモリ検査プログラム400は、第1プログラム402と、第2プログラム404と、を備える。
【0057】
第1プログラム402は、フラッシュメモリの所定領域におけるビットエラーを検出する処理を実行するためのプログラムである(
図3のステップS2、S6、
図4のステップS23、および
図5のステップS41に対応)。
【0058】
第2プログラム404は、所定領域においてビットエラーが検出された際、所定領域内のビットを、リテンション不良の発生をビットエラーとして継続的に検出するための値に書き換えるプログラム(
図4のステップS22、および
図5のステップS40に対応)を含む。また、第2プログラム404は、ビットエラーの発生間隔を求めるためのプログラム(
図4のステップS25、および
図5のステップS43に対応)である。
【0059】
第1の実施形態と同一の理由により、以上説明した第2の実施形態によって、次回以降のリテンション不良をビットエラーとして確実に検出することができる。すなわち、ビットエラーの発生周期を正確に把握することできる。
[発明の利用が考えられる分野]
以上説明した各実施形態は、通信の信頼性の高さが要求され且つ遠隔地に多数設置される装置、例えば、電力、ガス、水道の自動検針装置や、その他情報を収集するテレメタリング装置への利用が考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 フラッシュメモリ
2 ビットエラー検出部
3 電圧監視部
4 クロック発生部
5 温度監視部
6 記憶部
7 制御部
8 書込設定部
9 実行領域切替部
10 通信部
11 表示部
20 パリティチェック部
22 アドレス監視部
100 メモリ検査装置
300 メモリ検査装置
302 CPU
304 メモリ
400 メモリ検査プログラム
402 第1プログラム
404 第2プログラム