特許第6062794号(P6062794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062794
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】自動二輪車のイモビアンプ取付構造
(51)【国際特許分類】
   B62H 5/00 20060101AFI20170106BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20170106BHJP
   B62K 19/40 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B62H5/00 Z
   B60R25/24
   B62K19/40
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-92460(P2013-92460)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-213716(P2014-213716A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】國貞 洋平
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095244(JP,A)
【文献】 特許第4833876(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 5/00
B62K 19/40
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車にイモビ信号出力手段のイモビアンプを取り付ける構造であって、
イグニッションスイッチ・ユニットにイモビ信号出力手段が内蔵され、
車体フレームの左右一対のフレーム片における前後方向中間部の内面でエンジンのシリンダヘッドよりも後方に、前記イモビ信号出力手段からのイモビ信号を増幅する前記イモビアンプが取り付けられている自動二輪車のイモビアンプ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のイモビアンプ取付構造において、
左右一対のフレーム片におけるスイングアームブラケットの上方近傍に前記イモビアンプが取り付けられている自動二輪車のイモビアンプ取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイモビアンプ取付構造において、
車体フレームにアンプブラケットを介して前記イモビアンプが取り付けられている自動二輪車のイモビアンプ取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のイモビアンプ取付構造において、
車体フレームに設けたエンジン取付部に、エンジンマウントと共締めで前記アンプブラケットが締結され、このアンプブラケットに前記イモビアンプが取り付けられている自動二輪車のイモビアンプ取付構造。
【請求項5】
請求項3または4に記載のイモビアンプ取付構造において、
前記アンプブラケットにハーネスの支持部が設けられている自動二輪車のイモビアンプ取付構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のイモビアンプ取付構造において、
後輪を支持するスイングアームに後端部が連結された緩衝ユニットが車体の幅方向中央部に配置され、前記緩衝ユニットの前端部が前記車体フレームのクロスメンバーに連結され、前記前端部の外側方に前記イモビアンプが取り付けられている自動二輪車のイモビアンプ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イモビ信号出力手段と共に自動二輪車の盗難防止装置を構成するイモビアンプを車体フレームに取り付けるイモビアンプ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車、四輪車のような車両の盗難防止装置として、イグニッションキーに各車両に固有のIDコード(照合用の識別コード)を記憶させておき、他のイグニッションキーが使用されたときに車両の作動を電気的に禁止するイモビシステムが知られている。このイモビシステムに使用するイモビユニットは、イグニッションスイッチに組み込まれたイモビアンプを備えているため、イグニッションスイッチが大形化していた。
【0003】
そこで、近年では、イグニッションスイッチとは別にイモビアンプを設けることによりイグニッションスイッチの小形化を図ったものがある。この場合、イモビアンプは、イグニッションスイッチに対する信号線の配線を容易に行えること、および走行風による冷却効果が得られることを目的として、イグニッションスイッチの近傍箇所である車体前側箇所、例えばサイドカウルに配置される。なお、このような構成とは別に、車体に取り付けられた車体側通信装置が、乗車用ヘルメットに取り付けられたヘルメット側通信装置から発信される車両固有のIDコードを受信し、動力源を運転制御する制御部がIDコードの照合を行う構成の車両盗難防止装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4833876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動二輪車では、イモビアンプが配置される車体前側はエンジンに近いことから、高温にさらされて誤作動するなどの悪影響を受けることがある。しかも、車体前側は、イグニッションスイッチやラジエータ等の多くの部品が配置されることから、大形部品であるイモビアンプを安定に支持するための取付スペースを確保するのが難しく、構造が複雑化し易い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、イグニッションスイッチを小形化しながらも車体の前部の配置を簡素化することができ、さらに、イモビアンプがエンジンの高温にさらされて熱的悪影響を受けることがない自動二輪車のイモビアンプ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動二輪車のイモビアンプ取付構造は、イグニッションスイッチ・ユニットにイモビ信号出力手段が内蔵され、車体フレームの左右一対のフレーム片における前後方向中間部の内面でエンジンのシリンダヘッドよりも後方に、前記イモビ信号出力手段からのイモビ信号を増幅するイモビアンプが取り付けられている。ここで、中間部とは、車体フレームの全長に対して、前端から1/3〜2/3の位置にある部分をいう。
【0008】
このイモビアンプ取付構造によれば、イモビアンプをイモビ信号出力手段が内蔵されたイグニッションスイッチ・ユニットとは別体に設けたことにより、イグニッションスイッチ・ユニットを小形化することができ、さらに、イモビアンプを車体フレームの前後方向中間部に配置したことにより、車体の前部に設けられるイグニッションスイッチ・ユニットやラジエータなどの配置を簡素化することができる。また、イモビアンプは、エンジンに近いことから温度が高くなり易い車体前側から離間した車体フレームの前後方向中間部であって、エンジンのシリンダヘッドよりも後方位置に配置されるので、イモビ信号出力手段から大きく離れていないことから配線が容易になるとともに、エンジンの高温にさらされて熱的悪影響を受けるのが抑制される。イモビ信号出力手段は、例えばキースイッチの操作に連動するスイッチング回路である。
【0009】
本発明において、左右一対のフレーム片におけるスイングアームブラケットの上方近傍に前記イモビアンプが取り付けられていることが好ましい。一般に、スイングアームブラケットの上方近傍には空きスペースが存在することが多いので、イモビアンプの取付スペースを容易に確保することができる。
【0010】
本発明において、車体フレームにアンプブラケットを介して前記イモビアンプが取り付けられることが好ましい。アンプブラケットを介在させることによって、イモビアンプを容易、かつ強固に車体フレームに取り付けることができる。
【0011】
アンプブラケットを介して前記イモビアンプを取り付ける場合、車体フレームに設けたエンジン取付部に、エンジンマウントと共締めで前記アンプブラケットが締結され、このアンプブラケットに前記イモビアンプが取り付けられることが好ましい。これにより、既存のエンジン取付部を利用してアンプブラケットを車体フレームに取り付けることができるので、イモビアンプの取付構造が簡素化される。
【0012】
アンプブラケットを介して前記イモビアンプを取り付ける場合、前記アンプブラケットにハーネスの支持部が設けられていることが好ましい。これにより、ハーネスの支持部を別途設ける必要がなくなり、構造が一層簡素化される。ここで、ハーネスとは、電気部品同士を接続する電線をいう。
【0013】
本発明において、後輪を支持するスイングアームに後端部が連結された緩衝ユニットが、車体の幅方向中央部に配置され、前記緩衝ユニットの前端部が前記車体フレームのクロスメンバーに連結され、前記前端部の外側方に前記イモビアンプが取り付けられることが好ましい。一般に、緩衝ユニットの前端部の外側方には比較的広い空きスペースが存在することが多いので、イモビアンプの取付スペースを十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車体フレームの前後方向中間部の内面でエンジンのシリンダヘッドよりも後方に、イグニッションスイッチ・ユニットに内蔵されたイモビ信号出力手段からのイモビ信号を増幅するイモビアンプが取り付けられているので、イモビアンプをイグニッションスイッチ・ユニットとは別体に設けたことによってイグニッションスイッチ・ユニットを小形化することができる。また、イモビアンプを車体フレームの前後方向中間部に配置したことにより、イモビ信号出力手段から大きく離れていないことから配線が容易になるとともに、車体の前部の配置を簡素化することができ、さらに、イモビアンプがエンジンの高温にさらされて熱的悪影響を受けることがない、
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るイモビアンプ取付構造を備えた自動二輪車を示す側面図である。
図2】同上のイモビアンプ取付構造を示す拡大側面図である。
図3】同上のイモビアンプ取付構造を示す拡大平面図である。
図4】同上のイモビアンプ取付構造を斜め前方から見た斜視図である。
図5】同上のイモビアンプ取付構造を後方斜め下方から見た斜視図である。
図6】同上のイモビアンプ取付構造に用いるエンジンマウントを示す斜視図である 。
図7】同上のイモビアンプ取付構造に用いるイモビアンプ支持用のゴムケースを示す側面図である。
図8】同上のイモビアンプ取付構造に用いるアンプブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るイモビアンプ取付構造を備えた自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、メインフレーム1の後部に連結されて車体フレームFRの後半部を構成するリヤフレーム2とを有する。メインフレーム1は左右一対のメインフレーム片1A、1Bを有し、リヤフレーム2も同様に左右一対のリヤフレーム片2A、2Bを有する。つまり、車体フレームFRは左右一対のフレーム片1A、2Aおよび1B、2Bを有している。このメインフレーム1の前端にヘッドパイプ3が取り付けられ、このヘッドパイプ3に回動自在に挿通されたステアリングシャフト(図示せず)にアッパブラケット4およびアンダーブラケット5が取り付けられ、これらアッパブラケット4およびアンダーブラケット5にフロントフォーク8が支持され、フロントフォーク8の下端部に前輪9が支持されている。フロントフォーク8の上端部のアッパブラケット4にハンドル10が取り付けられている。
【0017】
前記メインフレーム1の後端部には、スイングアームブラケット11が設けられ、このスイングアームブラケット11に、スイングアーム12が、その前端部に挿通されたピポット軸13を介して、上下揺動自在に支持されている。このスイングアーム12の後端部に後輪14が支持されている。スイングアームブラケット11は、メインフレーム1に一体形成されるか、またはメインフレーム1と別体に形成されて、メインフレーム1に溶接のような手段で接合される。メインフレーム1の中央下部にエンジンEが支持され、このエンジンEが、チェーンのような動力伝達機構16を介して後輪14を駆動する。
【0018】
前記リヤフレーム2にライダー用シート22が支持されており、メインフレーム1の上部、つまり、車体上部で、前記ハンドル10とライダー用シート22との間には、燃料タンク18が取り付けられている。燃料タンク18の後部の下方およびライダー用シート22の下方は、サイドカバー17により側方から覆われている。車体前部には、エンジンEの側方前方を覆う樹脂製の左右一対のサイドカウル30が装着され、これらサイドカウル30、30の内側でシリンダヘッド29の前方にエンジン冷却水のラジエータ26が配置されている。また、アッパブラケット4およびアンダーブラケット5にヘッドランプユニット32が支持されている。
【0019】
アッパブラケット4と燃料タンク18との間にはキースイッチと呼ばれるイグニッションスイッチ21にイモビ信号出力手段23を内蔵したイグニッションスイッチ・ユニット(以下、スイッチユニットという)SUが配置されている。イモビ信号出力手段23は、スイッチング回路の一種であり、車両ごとに固有のIDコードが記憶されたイグニッションキー(図示せず)がイグニッションスイッチ21に差し入れられたとき、そのIDコードに対応する微弱なイモビ信号を出力する。
【0020】
イモビ信号出力手段23からのイモビ信号を増幅するイモビアンプ24は、イモビ信号出力手段23とは別体に設けられており、イモビ信号出力手段23よりも後方下方に離間して配置されている。具体的には、イモビアンプ24は、スイングアームブラケット11の上方近傍であって、後輪用の緩衝ユニット25における車体フレームFRのクロスメンバー27に連結される先端部25aの外側方の位置で、かつ、エンジンEのシリンダヘッド29よりも後方に離間した位置に配置されている。つまり、イモビアンプ24は、メインフレーム1とリヤフレーム2とを有する車体フレームFRにおける前後方向中間部に配置されている。ここで、「車体フレームFRにおける前後方向の中間部」とは、車体フレームFRの前端FR1から後端FR2までの全長Lに対して、前端FR1から1/3〜2/3・Lの位置にある部分をいう。このイモビアンプ24の取付位置および取付構造の詳細について以下に説明する。
【0021】
図1のイモビアンプ取付構造の拡大側面図を示す図2において、イモビアンプ24は、扁平な直方体状の外形を有し、ゴムケース31内に嵌め込み固定された状態で、そのゴムケース31がアンプブラケット33に取り付けられる。さらに、アンプブラケット33が2本のボルト35により、エンジンマウント38と共締めでメインフレーム1のエンジン取付部1aに締結されて、メインフレーム1に取り付けられている。これの詳細については後述する。
【0022】
前記アンプブラケット33には、ハーネスをクランプする2つのハーネス支持部39、40が取り付けられている。イモビ信号出力手段23(図1)からイモビ信号が伝送されるイモビ信号ハーネス41が一方のハーネス支持部39に挿通して支持され、そのイモビ信号ハーネス41の先端部のコネクタ41aが、イモビアンプ24のアンプコネクタ34aに接続されている。他方のハーネス支持部40には、ジェネレータ(図示せず)から点火制御用の回転信号を伝送するパルサ信号ハーネス42と、排気系の酸素センサ(図示せず)からの信号を伝送する酸素センサ信号電線(以下、電線をハーネスと称する。)43とが挿通されて支持されている。これらイモビ信号ハーネス41、パルサ信号ハーネス42および酸素センサ信号ハーネス43はそれぞれ、ノイズ防止用のより線により構成されている。イモビアンプ24からの出力信号は、図示しない信号ハーネスを介してエンジン制御ユニット(ECU)に入力され、ECU内のイモビライザ回路によって、例えばエンジンのスタートを不能にすることで、自動二輪車の作動が電気的に禁止される。
【0023】
イモビアンプ取付構造の拡大平面図である図3に示すように、後輪用の緩衝ユニット25は、メインフレーム1の左右一対のメインフレーム片1A、1Bの幅方向中間に配置されている。この緩衝ユニット25の前端部25aが、両メインフレーム片1A、1B間に掛け渡されたクロスメンバー27に設けた取付ブラケット28にボルト19で連結されており、緩衝ユニット25の後端部25bが、スイングアーム12に設けた後端取付ブラケット45にボルト46で連結されている。緩衝ユニット25の前端部25aの外側方に存在する空きスペースにイモビアンプ24が配置されている。
【0024】
図2のエンジンマウント38は、エンジンEを車体フレームFRに支持するために従来から設けられている既存のものであつて、図6に示すように、単一の金属板を屈曲することにより、支持孔44を介してエンジンEに連結される支持片38aと、二つの取付孔48、48を介してメインフレーム1に取り付けられる取付片38bと、支持片38aと取付片38bとを連結する中間片38cとが一体形成されている。支持片38aと取付片38bとはほぼ平行であり、ほぼ鉛直方向に延びている。
【0025】
図2のゴムケース31は、上述したように、ほぼ直方体状の外形を有するイモビアンプ24を覆う形態で保持するものである。図7に示すように、イモビアンプ24には、アンプコネクタ34aを有するコネクタユニット34が一体形成(モールド)されており、このイモビアンプ24を、ゴムケース31の後部開口31bからゴムケース31内に嵌め込む。コネクタユニット34はイモビアンプ24よりも厚くなっており、イモビアンプ24との間に傾斜面からなるアンプ段差部24aが形成されている。このアンプ段差部24aに対応して、ゴムケース31にケース段差部31aが形成されている。さらに、ゴムケース31には、イモビアンプ24の挿抜方向Pに対し直交する上下箇所にそれぞれ支持スリット49、49が貫通形成されている。
【0026】
アンプブラケット33は、図8に示すように、平板状の取付板50の一面に、前後方向から見てU字形状の支持板51が接合されてなり、支持板51の両端側に屈曲形成された上下一対の支持片52、52がゴムケース31の一対の支持スリット49、49に差し込まれることにより、イモビアンプ24を保持するゴムケース31がアンプブラケット33に支持される。このとき、両支持片52、52の各々の先端部から両側方に突き出た突部52aが、ゴムケース31の支持スリット49、49を通り抜けてゴムケース31の外面に係合し、ゴムケース31がアンプブラケット33から抜け落ちるのを阻止する。一方、取付板50には、エンジンマウント38の2つの取付孔48、48に重合される2つの支持孔53、53と、樹脂製のクランプのようなハーネス支持部39,40(図2)が差し込みによって取り付けられる2つの取付孔54,58とが形成されている。
【0027】
つぎに、図1に示すゴムケース31、アンプブラケット33およびエンジンマウント38を用いてイモビアンプ24を車体フレームFRのメインフレーム1に取り付ける手順を説明する。まず、図7に示すコネクタユニット34付きのイモビアンプ24を、ゴムケース31の内部空間に図4の右側(後方側)から嵌め込み、ゴムケース31自身の弾性復元力によりイモビアンプ24を保持させる。この状態で、イモビアンプ24のアンプ段差部24aがゴムケース31のケース段差部31aに当たることで、イモビアンプ24がゴムケース31から前方へ抜け落ちるのが防止される。
【0028】
イモビアンプ24を保持したゴムケース31を、図5に示すように、アンプブラケット33に取り付ける。その際、ゴムケース31は、一対の支持スリット49、49にアンプブラケット33の一対の支持片52、52が挿通されて、両支持片52、52の先端の突部52aが支持スリットからはみ出し、アンプブラケット33からゴムケース31が抜け落ちるのを阻止する。これにより、イモビアンプ24が、ゴムケース31を介在してアンプブラケット33に容易かつ安定して取り付けられる。
【0029】
イモビアンプ24が取り付けられたアンプブラケット33を、図4に示すように、右側のフレーム片1Bの内面のエンジン取付部1aに設けられた2つのボス59、59に取り付ける。その際、ボス59とアンプブラケット33との間にエンジンマウント38を介在させ、エンジンマウント38の一対の取付孔48、48(図6)およびアンプブラケット33の一対の支持孔53、53に挿通した2つのボルト35,35を、ボス59、59のねじ孔にねじ込むことにより、アンプブラケット33とエンジンマウント38をボス59、59に共締めして固定する。これにより、イモビアンプ24は、ゴムケース31およびアンプブラケット33を介在し、かつ、エンジンマウント38の締結構造を利用して、メインフレーム1のエンジン取付部1aに安定に支持される。
【0030】
つづいて、イモビ信号出力手段23から配線されたイモビ信号ハーネス41を一方のハーネス支持部39に挿通させ、パルサ信号ハーネス42および酸素センサ信号ハーネス43を両ハーネス支持部39、40に挿通させた状態で、アンプブラケット33の上下2つの取付孔54,58(図8)にそれぞれハーネス支持部39,40を差し込んで取り付け、イモビ信号ハーネス41の先端部のコネクタ41aをアンプコネクタ34aに接続する。
【0031】
上記構成の自動二輪車のイモビアンプ取付構造では、図1のイモビアンプ24をイモビ信号出力手段23が内蔵されたイグニッションスイッチ・ユニットSUとは別体に設けたことにより、イグニッションスイッチ・ユニットSUを小形化することができる。さらに、イモビアンプ24を車体フレームFRの前後方向中間部に配置したことにより、車体の前部に設けられるイグニッションスイッチ・ユニットSUやラジエータ26などの配置を簡素化することができる。また、イモビアンプ24は、エンジンEに近いことから温度が高くなり易い車体前側から離間した車体フレームFRの前後方向中間部であって、エンジンEのシリンダヘッド29よりも後方位置に配置されるので、イモビ信号出力手段23から大きく離れていないことから配線が容易になる一方で、エンジンEの高温にさらされて熱的悪影響を受けることがない。
【0032】
また、イモビアンプ24がメインフレーム片1Bにおけるスイングアームブラケット11の上方近傍に取り付けられており、このスイングアームブラケット11の上方近傍には空きスペースが存在することが多いので、イモビアンプ24の十分な取付スペースを容易に確保することができる。
【0033】
さらに、図2に示す車体フレームFRのメインフレーム片1Bにアンプブラケット33を介してイモビアンプ24が取り付けられているので、一般に、ねじ止めのような既存の支持手段を採用し難い外形を有するイモビアンプ24を、アンプブラケット33を介在させることによって、容易かつ強固に車体フレームFRに取り付けることができる。このイモビアンプ24の取り付けに際して、車体フレームFRに設けたエンジン取付部1a(図4の)に、エンジンマウント38と共締めでアンプブラケット33が締結され、このアンプブラケット33にイモビアンプ24が取り付けられている。これにより、既存のエンジンマウント38のエンジン取付部1aを利用してアンプブラケット33が車体フレームに取り付けられるので、イモビアンプ24の取付構造が簡素化される。しかも、そのアンプブラケット33にハーネス41、42,43の支持部39,40が設けられているので、ハーネス41、42,43の支持部を別途設ける必要がなくなり、構造を一層簡素化できる。
【0034】
また、図3に示す車体幅方向中央部に配置された後輪用の緩衝ユニット25の前端部25aが車体フレームFRのクロスメンバー28に連結され、その前端部25aの外側方にイモビアンプ24が取り付けられているが、緩衝ユニット25の前端部25aの外側方には比較的広い空きスペースが存在するので、イモビアンプ24の取付スペースを十分に確保することができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。例えば、実施形態では、車体フレームFRにおける右側のメインフレーム片1Bの内面にイモビアンプ24を取り付ける場合を例示したが、車体フレームFRにおける左側のメインフレーム片1Aの内面、またはリヤフレーム片2A、2Bの一方の内面にイモビアンプ24を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 メインフレーム(車体フレーム)
1A、1B メインフレーム片(フレーム片)
1a エンジン取付部
2 リヤフレーム(車体フレーム)
2A、2B リヤフレーム片(フレーム片)
11 スイングアームブラケット
12 スイングアーム
23 イモビ信号出力手段
24 イモビアンプ
25 緩衝ユニット
25a 緩衝ユニットの前端部
28 クロスメンバー
29 シリンダヘッド
33 アンプブラケット
38 エンジンマウント
39、40 ハーネスの支持部
E エンジン
FR 車体フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8