特許第6062813号(P6062813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062813
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】カツレツ風食品用衣組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20170106BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20170106BHJP
【FI】
   A23L13/00 Z
   A23L7/157
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-129579(P2013-129579)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-2699(P2015-2699A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】松島 大祐
(72)【発明者】
【氏名】酒井 映浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 みゆき
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−247237(JP,A)
【文献】 特開2001−095473(JP,A)
【文献】 特開昭59−130161(JP,A)
【文献】 特開昭54−098347(JP,A)
【文献】 特開2000−050817(JP,A)
【文献】 特開2011−103830(JP,A)
【文献】 CookPad, ウラワザ!ミルフィーユトンカツ☆,公開日:05/02/05,[検索日:2016年6月22日],URL,http://cookpad.com/recipe/181227
【文献】 CookPad, 揚げない*ミルフィーユとんかつ,公開日:09/09/27,[検索日:2016年6月22日],URL,http://cookpad.com/recipe/920863
【文献】 CookPad, *揚げないミルフィーユカツ,公開日:11/01/14,[検索日:2016年6月22日],URL,http://cookpad.com/recipe/1329248
【文献】 CookPad, ノンフライ♪ミルフィーユとんかつ,公開日:09/09/14,[検索日:2016年6月22日],URL,http://cookpad.com/recipe/911801
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状の畜肉同士を結着させて衣付けを行い焼き調理をしてミルフィーユカツレツ風食品を形成するためのキットであって、
熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉を含む結着粉と、
パン粉を含む衣粉とを、相互に混じり合わない形態で含む、上記キット。
【請求項2】
熱不可逆性ゲル化剤が乾燥卵白である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
結着粉が熱不可逆性ゲル化剤を10〜50質量%含み、かつ、澱粉を5〜25質量%含む、請求項1又は2のキット。
【請求項4】
衣粉がパン粉を50質量%以上含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
衣粉がさらに澱粉を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
衣粉の澱粉含量が50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
衣粉がさらにトレハロースを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキット。
【請求項8】
ミルフィーユカツレツ風食品の製造方法であって、
a.複数の薄片状の畜肉と、熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉を含む結着粉とを混合して、該薄片状の畜肉由来の水分で加湿された該結着粉により該薄片状の畜肉同士を結着させる工程、
b.工程aにて結着した畜肉を成型し、該加湿された結着粉及び/又は該畜肉由来の水分によりパン粉を含む衣粉を該畜肉に付着させ衣付けを行う工程、
c.工程bにて衣付けを行った結着した畜肉を焼き調理する工程を含む、上記方法。
【請求項9】
工程aにおいて、複数の薄片状の畜肉100gあたり1〜10gの結着粉を混合する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易にかつ油で揚げることなく、食感及び風味の良好なミルフィーユカツレツ風食品を製造する方法ならびに当該製造方法にて利用することができる調理用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
薄片状のスライス肉を複数枚重ね合わせ、小麦粉、溶き卵、パン粉の衣をつけて油で揚げて得られる“ミルフィーユカツレツ”は、一枚肉より調理された通常のカツレツと比べて柔らかく、また食感も良いことから人気を博している。今日では、スライス肉を複数枚重ね合わせ油で揚げることを含むカツレツの調理方法が多数報告されている(特許文献1−8)。しかしながら、スライス肉を複数枚重ね合わせて成型する作業は煩雑であり、さらにそのように成型されたスライス肉をその形状を保持したまま調理することは熟練した調理技能を要し、家庭で簡単に“ミルフィーユカツレツ”を製造することは困難であった。
【0003】
一方、近年の健康志向の高まりや、廃油による環境への影響を考慮して、油で揚げずに製造することが可能な油揚げ風食品が注目されている。特許文献9にはスライス肉に混合して団子状にし、炒めることで油揚げ風食品を形成する油揚げ風食品用の衣組成物が記載されている。この方法によれば、スライス肉同士が結着し、肉汁や油脂を保持した油揚げ風食品を得ることができるが、パン粉の入った粉末を肉に混ぜ込んでいるため、フライやカツレツのような肉の食感や風味、また、一面がパン粉で覆われサクサクした食感の衣を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-96969号公報
【特許文献2】特開平9-84554号公報
【特許文献3】特許第3989233号公報
【特許文献4】WO2007/148717
【特許文献5】特開2002-65214号公報
【特許文献6】特開2009-106209号公報
【特許文献7】特開2009-207427号公報
【特許文献8】特開2009-207428号公報
【特許文献9】特開2011-234732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したとおり、“ミルフィーユカツレツ”を製造するためにはスライス肉を複数枚重ね合わせて成型し、そしてそのように成型されたスライス肉をその形状を保持したまま調理することを要する。しかしながら、当該作業は煩雑であり、熟練した調理技能を要することから、家庭で簡単に“ミルフィーユカツレツ”を製造することができる新たな手段が切望されていた。また、油で揚げることなく、フライやカツレツのような肉の食感や風味が感じられ、サクサクした食感の衣を有する“ミルフィーユカツレツ”を製造できる新たな手段が切望されていた。
【0006】
そこで本発明は、熟練した調理技能を要することなく家庭等でも簡単に、かつ油で揚げることなくフライやカツレツのようなサクサクした食感の衣を有する、“ミルフィーユカツレツ”風食品を製造することができる新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複数のスライス肉を、熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉を含む結着粉と混合して肉同士を相互に結着させ、成型した後にパン粉を含む衣粉で衣付けをして焼き調理することによって、簡易にかつ油で揚げることなく、フライやカツレツのような肉の食感や風味が感じられ、サクサクした食感の衣を有する“ミルフィーユカツレツ”を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] 薄片状の畜肉同士を結着させて衣付けを行い焼き調理をしてミルフィーユカツレツ風食品を形成するためのキットであって、
熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉を含む結着粉と、
パン粉を含む衣粉とを、相互に混じり合わない形態で含む、上記キット。
[2] 熱不可逆性ゲル化剤が乾燥卵白である、[1]のキット。
[3] 結着粉が熱不可逆性ゲル化剤を10〜50質量%含み、かつ、澱粉を5〜25質量%含む、[1]又は[2]のキット。
[4] 衣粉がパン粉を50質量%以上含む、[1]〜[3]のいずれかのキット。
[5] 衣粉がさらに澱粉を含む、[1]〜[4]のいずれかのキット。
[6] 衣粉の澱粉含量が50質量%以下である[1]〜[5]のいずれかのキット。
[7] 衣粉がさらにトレハロースを含む、[1]〜[6]のいずれかのキット。
[8] ミルフィーユカツレツ風食品の製造方法であって、
a.複数の薄片状の畜肉と、熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉を含む結着粉とを混合して、薄片状の畜肉同士を結着させる工程、
b.工程aにて結着した畜肉を成型し、パン粉を含む衣粉で衣付けを行う工程、
c.工程bにて衣付けを行った結着した畜肉を焼き調理する工程を含む、上記方法。
[9] 工程aにおいて、複数の薄片状の畜肉100gあたり1〜10gの結着粉を混合する、[8]の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熟練した調理技能を要することなく家庭等でも簡単に、かつ油で揚げることなくフライやカツレツのようなサクサクした食感の衣を有する、“ミルフィーユカツレツ”風食品を製造することができる。
【0010】
また、本発明によれば上記“ミルフィーユカツレツ”風食品を製造するための調理用キットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.結着粉
本発明における「結着粉」は、加湿及び/又は加熱により糊化及び/又は固化する特性を有し、複数の薄片状の畜肉と混合・調理することによって当該畜肉同士の結着性を高め、調理時及び喫食時において結着している畜肉同士が、バラバラとほぐれてしまうのを防ぐ機能を有する。
【0012】
結着粉は畜肉に対して均一に付着することができるように粒体、粉体又は粉粒体の形態とすることができ、粒体、粉体又は粉粒体の形態を有する乾燥原料を混合することによって得ることができる。
【0013】
結着粉は少なくとも熱不可逆性ゲル化剤と澱粉とを含む。
【0014】
「熱不可逆性ゲル化剤」とは、加熱により不可逆的にゲルを形成することが可能なゲル化剤であり、複数の薄片状の畜肉同士を結着させる作用を有する。本発明において、熱不可逆性ゲル化剤としては例えば、乾燥卵白、乾燥全卵、カードラン、アルギン酸及びその塩、LMペクチン、ならびにグルコマンナン等が挙げられ、これらより選択される一種又は複数種の熱不可逆性ゲル化剤を使用することができる。好ましくは熱不可逆性ゲル化剤は乾燥卵白である。畜肉と混合された際に手や器具類への付着が少なく、かつ自然な風味を付与できることから、乾燥卵白を使用することが好ましい。
【0015】
結着粉に含まれる「澱粉」は、薄片状の畜肉の肉汁を保持するとともに、複数の薄片状の畜肉同士を結着させる作用及び粘性により衣粉をまとわせる作用を有する。本発明において、澱粉としては例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等、特に限定されることなく様々な種類の澱粉を使用することができる。これらの澱粉は未加工の生澱粉であっても良いし、あるいはリン酸架橋、アセチル化などのエステル化、ヒドロキシプロピル化などのエーテル化、湿熱処理、温水処理、α化、酸化等の加工処理された加工澱粉であっても良い。澱粉は一種又は複数種の澱粉を使用することができる。畜肉と混合された際に速やかに水分を吸収することができることから、リン酸架橋α化澱粉を使用することが好ましい。
【0016】
結着粉には熱不可逆性ゲル化剤を、結着粉の全質量(乾燥質量)に対して80質量%未満の範囲より選択される量で含めることができる。好ましくは結着粉には熱不可逆性ゲル化剤を、結着粉の全質量(乾燥質量)に対して10〜50質量%含めることができる。結着粉に含める熱不可逆性ゲル化剤の量が50質量%よりも多い量になると、薄片状の畜肉と結着粉とを混合した際に薄片状の畜肉同士が過度に結着し、最終生成物であるミルフィーユカツレツ風食品において喫食時のソフトな口当たりを得ることができない。また、結着粉に含める熱不可逆性ゲル化剤の量が10質量%未満になると薄片状の畜肉と結着粉とを混合した際に薄片状の畜肉同士を十分に結着させることができず、調理時及び/又は喫食時に形状を保持することができず、良好な外観及び食感を有するミルフィーユカツレツ風食品を製造することは困難である。薄片状の畜肉と結着粉とを混合した際に薄片状の畜肉同士を十分に結着する上で、結着粉の全質量(乾燥質量)に対して、熱不可逆性ゲル化剤を20質量%〜50質量%含めることがより好ましい。
【0017】
結着粉には澱粉を、結着粉の全質量(乾燥質量)に対して35質量%未満の範囲より選択される量で含めることができる。好ましくは、結着粉には澱粉を、結着粉の全質量(乾燥質量)に対して5〜25質量%含めることができる。結着粉に含める澱粉の量が25質量%よりも多い量になると、最終生成物であるミルフィーユカツレツ風食品において喫食時にねちゃつきを感じ良好な食感を有するミルフィーユカツレツ風食品を製造することは困難である。また、結着粉に含める澱粉の量が5質量%未満になると、肉汁を澱粉が十分に保持することができないために、衣粉に含まれるパン粉が肉汁を吸着してしまい、サクッとした良好な食感を有するミルフィーユカツレツ風食品を製造することは困難である。喫食時にねちゃつきを感じずサクッとした良好な食感のミルフィーユカツレツ風食品を製造する上で、結着粉の全質量(乾燥質量)に対して澱粉を5質量%〜20質量%含めることがより好ましい。
【0018】
結着粉には熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉に加えて、必要に応じてさらに、乾燥卵黄、食塩、糖、調味料、香辛料、油脂、着色料等の副原料を適宜配合することができる。
【0019】
2.衣粉
本発明における「衣粉」は、食品(結着させた薄片状の畜肉)の表面にまぶし、当該食品を加熱体(例えばフライパン)に直接接触させて焼成することによって、当該食品に油で揚げたようなサクッとした食感を有する衣を付与する機能を有する。
【0020】
衣粉は食品(結着させた薄片状の畜肉)に対して均一に付着することができるように粒体、粉体、粉粒体、及び/又は小片体の形態とすることができ、粒体、粉体、粉粒体、及び/又は小片体の形態を有する乾燥原料を混合することによって得ることができる。
【0021】
衣粉は少なくともパン粉を含む。パン粉は食品(結着させた薄片状の畜肉)の表面にまぶし、当該食品を加熱体に直接接触させて焼成することによって、サクサクした衣を形成する機能を有する。本発明にて用いられるパン粉は、乾燥パン粉など、パン粉を崩して小片状にしたものである。パン粉小片の大きさは特に限定されないが例えば、直径数mm〜10mm程度であればよい。衣粉には小片の大きさが異なる一種又は複数種のパン粉を含めることができる。
【0022】
衣粉にはパン粉を、衣粉の全質量(乾燥質量)に対して30質量%よりも多い量を含めることができる。衣粉に含めるパン粉の量が30質量%以下になると、最終生成物であるミルフィーユカツレツ風食品において、カツレツ特有のサクサクとした食感を有する衣を得ることは困難である。好ましくは、衣粉にはパン粉を、衣粉の全質量(乾燥質量)に対して50質量%以上、かつ100質量%以下の量で、さらに好ましくは60質量%〜100質量%含めることができる。
【0023】
衣粉にはパン粉に加えて、必要に応じてさらに、澱粉を配合することができる。衣粉に含まれる澱粉は、衣粉を食品(結着させた薄片状の畜肉)の表面に付着させやすくする機能を有する。澱粉としては特に限定されることなく、上記澱粉の一種又は複数種を使用することができる。衣粉を食品の表面に十分に付着させることができ、また衣粉に含まれるパン粉が肉汁を吸着することを抑えることができることから、リン酸架橋α化澱粉を使用することが好ましい。
【0024】
衣粉には澱粉を、衣粉の全質量(乾燥質量)に対して70質量%未満の量を含めることができる。衣粉に含める澱粉の量を70質量%以上とすると、食品の表面全体にパン粉を付着させることができず、最終生成物であるミルフィーユカツレツ風食品において、カツレツ特有のサクサクとした食感を有する衣を得ることは困難である。好ましくは、衣粉には澱粉を、衣粉の全質量(乾燥質量)に対して10質量%〜50質量%の量で、さらに好ましくは10質量%〜40質量%の量で含めることができる。
【0025】
衣粉にはパン粉に加えて、必要に応じてさらに、トレハロースを配合することができる。衣粉に含まれるトレハロースは、糊を出すことなく高い保水効果を示すため、ベタベタせずに肉汁を保持し衣粉が肉汁を吸着することを抑えることが出来ることから、サクサクしたパン粉の食感を引き立たせることが出来る。
【0026】
衣粉にはトレハロースを、衣粉の全質量(乾燥質量)に対して好ましくは20質量%以下の量を、さらに好ましくは5質量%〜20質量%の量を含めることができる。
【0027】
衣粉には上記成分に加えて、必要に応じてさらに、食塩、糖(上記糖類を除く)、調味料、香辛料、油脂、着色料等の副原料を適宜配合することができる。
【0028】
3.キット
本発明のキットは、上記結着粉及び上記衣粉を含み、以下に詳述するミルフィーユカツレツ風食品の製造に利用することができる。本発明のキットにおいて、結着粉と衣粉とは相互に混じり合わないように、例えば異なる容器に封入されている等の物理的に隔てられた形態でキット中に含まれる。各々容器に封入された結着粉及び衣粉は1つの容器に収納されてもよいし、各別に提供されてもよい。
【0029】
4.ミルフィーユカツレツ風食品の製造方法
本発明においてミルフィーユカツレツ風食品とは、複数の薄片状の畜肉が互いに結着してなる層構造を有する成型肉の表面に衣粉をまぶして、油中でフライせずに焼成して調理することにより得られるカツレツ様食品である。「薄片状の畜肉」としては、豚肉、牛肉、鶏肉などの畜肉を例えば、0.1mm〜数mm程度の厚さに切削したものを利用することができる。例えば、小間肉、スライス肉、薄切り肉、切り落としとして販売されている畜肉が挙げられる。
【0030】
本発明のミルフィーユカツレツ風食品の製造方法は、(a)複数の薄片状の畜肉と、上記結着粉とを混合して、薄片状の畜肉同士を結着させる工程、(b)工程aにて結着した畜肉を成型し、上記衣粉で被覆する工程、および(c)工程bにて衣付けされた結着した畜肉を、加熱体に直接接触させて焼き調理する工程、を含む。
【0031】
工程aにおいて混合される結着粉の量は、薄片状の畜肉100gに対しておよそ1g〜10g、好ましくはおよそ2g〜5gの範囲から選択することができる。複数の薄片状の畜肉に対して結着粉を均一になるように混合することで、結着粉は加湿され薄片状の畜肉同士を結着し、まとめることができる。
【0032】
次いで工程bにおいて、結着粉の働きにより結着した畜肉を適当な大きさ及び形状に成形し、その表面を衣粉で均等に被膜する。衣粉で被覆された畜肉は、工程cに移る前に比較的短時間、例えば5〜15分間放置するとより好ましい。放置することにより、浸透圧の影響により畜肉より滲出した水分を衣粉が吸水し、衣粉の畜肉への付着性をより高めることができる。
【0033】
次いで工程cにおいて、衣粉で被覆された畜肉を加熱体に直接接触させて焼成する。工程cにおいて加熱体に接触させて焼成すると、使用する油の量はごく少量となり、廃油をほとんど生じないため、環境保護の観点からも好ましい。また、得られたミルフィーユカツレツ風食品に残存する油の量も比較的少なくなり、健康志向に即した食品とすることができる。本発明の方法を家庭内で行う場合、加熱体とはフライパンなどの家庭用の直接加熱可能な調理用具を意味する。本発明を工業的に行う場合、加熱体とは、例えば大面積を有する加熱金属板などである。家庭内でフライパンを用いて焼成を行う場合は、例えば次のような手順で行う。フライパンに適量のサラダ油を熱して、衣粉で被覆された畜肉の各表面を中火でそれぞれ約1分間焼き色がつくまで焼く。次いで、畜肉を返しながら火が通り、表面がきつね色の外観になるまで中火で焼く。加熱時間は用いた畜肉の大きさ、形状等に応じて適宜調節することができる。本発明によれば、油で揚げたようなサクサクとした食感を有する衣部と、ジューシーで柔らかな食感を有する肉部分からなる、ミルフィーユカツレツ風食品を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
1.結着粉中の熱不可逆性ゲル化剤及び澱粉の種類の比較
(1−1)結着粉の調製
表1に記載の配合量に従って各原料を攪拌混合し、実施例1〜3ならびに比較例1及び2の結着粉を調製した。なお、表1中、各原料の配合量は質量%にて示す。
【0036】
【表1】
【0037】
(1−2)ミルフィーユカツレツ風食品の調理及び評価
豚小間肉100gに対して、実施例1〜3及び比較例1及び2の各結着粉3.4gをそれぞれ混合し小判型に成型したのち、パン粉をまぶして衣付けし、大さじ4杯程度の油を入れたフライパンにて中火で10分間程度、両面を焼き調理して、ミルフィーユカツレツ風食品を得た。
【0038】
それぞれのミルフィーユカツレツ風食品の肉部分の食感及び結着性について評価した。
評価結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
以上の結果より、熱凝固剤として乾燥卵白を結着粉に配合することによって、肉部分の食感及び結着性に優れたミルフィーユカツレツ風食品が得られることが確認された(実施例1、ならびに比較例1及び2)。また、結着粉に配合する澱粉はいずれの澱粉を用いても、良好な肉部分の食感及び結着性が得られることが確認された(実施例1〜3)。
【0041】
2.結着粉中の乾燥卵白及び澱粉の配合比率の比較
(2−1)結着粉の調製
表3に記載の配合量に従って各原料を攪拌混合し、実施例4〜8ならびに比較例3及び4の結着粉を調製した。なお、表3中、各原料の配合量は質量%にて示す。
【0042】
【表3】
【0043】
(2−2)ミルフィーユカツレツ風食品の調理及び評価
実施例4〜8ならびに比較例3及び4の各結着粉を用いて、上記(1−1)に示す方法にてミルフィーユカツレツ風食品を得た。
【0044】
それぞれのミルフィーユカツレツ風食品の肉部分の食感及び結着性について評価した。
評価結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
以上の結果より、結着粉に乾燥卵白を80質量%未満の量で配合することによって、また、澱粉を35質量%未満の量で配合することによって、肉部分の食感及び結着性に優れたミルフィーユカツレツ風食品が得られることが確認された。
【0047】
3.衣粉中のパン粉及び澱粉の配合比率の比較
(3−1)衣粉の調製
表5に記載の配合量に従って各原料を攪拌混合し、実施例9〜14ならびに比較例5の衣粉を調製した。なお、表5中、各原料の配合量は質量%にて示す。
【0048】
【表5】
【0049】
(3−2)ミルフィーユカツレツ風食品の調理及び評価
豚小間肉100gに対して、実施例1の結着粉3.4gをそれぞれ混合し小判型に成型したのち、実施例9〜14ならびに比較例5の各衣粉をまぶして衣付けし、上記(1−1)に示す方法にてミルフィーユカツレツ風食品を得た。
【0050】
それぞれのミルフィーユカツレツ風食品の衣部分の外観及び食感について評価した。
評価結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
以上の結果より、衣粉にパン粉を30質量%よりも多く配合することによって、またその際に、澱粉を70質量%未満の量で配合することによって、衣部分の外観及び食感に優れたミルフィーユカツレツ風食品が得られることが確認された。さらに、トレハロースを配合することで、衣のサクサクとした食感が強くなることが確認された。