【実施例】
【0032】
以下、実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
タイヤサイズが195/65R15である空気入りラジアルタイヤを試作した。カーカス及びベルトの構成は、実施例及び比較例の各タイヤについて、下記表1,2に示す通りであり、カーカス及びベルト以外の構成は、全て共通の構成とした。なお、ベルトを構成するベルトプライの枚数はいずれも2枚とし、コードの傾斜角度はタイヤ周方向に対して互いに22°(+22°/−22°)とした。
【0034】
表1,2中のカーカスコード材質における「PET」は、ポリエチレンテレフタレートを意味し、「1100dtex/2」は繊度1100dtexのPETフィラメントからなる下撚りしたヤーンを2本撚り合わせて得られた双撚り構造であることを意味し、「1100dtex/1」は繊度1100dtexのPETフィラメント束からなる片撚り構造であることを意味する。各PETコードに対するディップ処理は、処理液として公知のものが使用でき、この例では、ポリエステルコードに対し、まず、下記表3に示す第1処理液で1回処理し、その後、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)からなる第2処理液で1回処理する方法で、実施例1〜3では樹脂付着率が約4%となるように行った。なお、実施例1〜3におけるPETコードの繊度及びコード曲げ硬さの違いは、この樹脂付着率のバラツキによるものである。実施例4及び比較例2、3では、樹脂付着率を変えることで、表中のコード曲げ硬さとした。
【0035】
ベルトのスチールコードとしては、JIS G3502に規定のピアノ線材SWRS82A材の5.5mmロッドから、パテンティング、伸線加工を繰り返し所定径の中間線に乾式伸線し、この中間線にブラスめっき(銅比率64%、めっき付着量4.5g/kg)を施した後、通常の湿式伸線機を用いて所定径に最終伸線して得たフィラメントを通常のチューブラー式撚線機を用いて常法に従い下記の撚りピッチで撚り合わせ製造したものである。なお、2層構造コードはコアが無撚りの場合は(−)で示した。
・2+2×0.25:撚りピッチ=−/S14mm
・2+1×0.27:撚りピッチ=−/S15mm
・2+3×0.24:撚りピッチ=−/S10mm
・2+7×0.175:撚りピッチ=S5/S10mm
・2+7×0.20:撚りピッチ=S6/S12mm
・2+7×0.25:撚りピッチ=S7/S14mm
・1×3×0.28:撚りピッチ=S11mm
・1×2×0.32:撚りピッチ=S15mm
【0036】
表1,2中の各物性、およびタイヤ性能等についての各測定・評価方法は以下の通りである。
【0037】
・カーカスコードの繊度、コード径、強力、強度:JIS L1017に準じ、20℃、65%RHの恒温条件で24時間以上放置後、コード径、繊度、及び引張試験機(島津製作所(株)製オートグラフ)で強伸度を測定した。
【0038】
・カーカスのコード曲げ硬さ:引張試験機(島津製作所(株)製オートグラフ)を用いてコードを曲げたときの最大荷重であり、次のようにして測定した。すなわち、常温下にて、長さ50〜80mmのコード(10)を、
図2に示すように、両端がフリーの状態で、中央部を25.4mm間隔の位置で吊り下げた状態に支持具(12)で支持するとともに、その中点(10M)を逆U字状の固定された治具(14)の直線状の上辺部(14A)に対して、下側から直角に交差するように当てる。ここで、上辺部(14A)は断面円形(直径=3.0mm)の棒状をなす。この状態から、前記支持具(12)を引張速度300mm/分で上方に引き上げて、コード(10)を治具(14)により曲げながら、支持具(12)にかかる荷重を測定する。そのときの最大荷重が該コード(10)の最大曲げ荷重(cN)であり、n=5の平均値をもってコード曲げ硬さとする。
【0039】
・カーカスのトータルコード曲げ硬さ:コード曲げ硬さに打ち込み本数を乗じて算出される幅25mm当たりの曲げ硬さ。
【0040】
・プライ枚数:タイヤのカーカスを構成するカーカスプライの枚数。
【0041】
・カーカスのプライ厚み:被覆ゴムによってポリエステルコードを被覆してなるカーカスプライとしての厚みであり、ダイヤルゲージ(脚の直径9.5mm、荷重1670mN)により測定した。
【0042】
・カーカスのトータルプライ強力:コード強力にコード打ち込み本数とプライ枚数を乗じて算出されるカーカス25mm幅当たりの引張強力。
【0043】
・カーカスのコード占有率:コード占有率(%)=(コード径(mm)×コード打ち込み本数(本/25mm))×100/25(mm)により算出した。
【0044】
・ベルトのコード径、強力:JIS G3510に準じて測定した。
【0045】
・ベルトのコード曲げ硬さ:カーカスのコード曲げ硬さと同じ方法で測定した。
【0046】
・ベルト強力:コード強力に打ち込み本数を乗じて算出される幅25.4mm当たりの引張強力。
【0047】
・ベルト曲げ剛性:コード曲げ硬さに打ち込み本数を乗じて算出される幅25.4mm当たりの曲げ硬さ。
【0048】
・ベルトのプライ厚み:被覆ゴムによってスチールコードを被覆してなるベルトプライとしての厚みであり、ダイヤルゲージ(脚の直径9.5mm、荷重1670mN)により測定した。
【0049】
・カーカスプライ質量(指数):タイヤ1本当たりのカーカスプライ質量を、比較例1を100とした指数で表示したものであり、指数が小さいほど軽量であることを意味する。
【0050】
・タイヤ質量(指数):タイヤ1本当たりの質量を、比較例1を100とした指数で表示したものであり、指数が小さいほど軽量であることを意味する。
【0051】
・タイヤ荷重耐久性:FMVSS109(UTQG)に準拠し、表面が平滑な鋼製の直径1700mmの回転ドラムを有するドラム試験機により、次のようにして測定した。タイヤ内圧は200kPaで、試験速度は80km/hで一定とした。JATMA規定の最大荷重の85%で4時間、次に最大荷重の90%で6時間、さらに最大荷重の100%で24時間走行させた後、最大荷重の120%で24時間走行させる。このとき外観及び内面に異常が無ければさらに最大荷重の140%で、故障が起きるまで走行させる。故障が発生するまでの走行距離を、比較例1のタイヤを100として指数表示した。指数大きいほど荷重耐久性が良好である。
【0052】
・実車操縦安定性:内圧200kPaで組み込んだ試験タイヤを排気量2000ccの試験車両に装着し、訓練された3名のテストドライバーにてテストコースを走行し、フィーリング評価した。採点は10段階評価で、比較例1のタイヤを6点とした相対比較にて行い、3人の平均点を比較例1のタイヤを100として指数表示した。指数大きいほど操縦安定性が良好である。
【0053】
・乗り心地:各タイヤをJIS規格の標準リムを用いて内圧200kPaに調整し、2000ccの国産乗用車に同種タイヤ4本を装着し、良路と悪路のテストコースにて3名のテストドライバーにより乗り心地を官能評価し、比較例1を基準として評価した。比較例1と同等を「△」、劣るを「×」、優れるを「○」で示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
結果は、表1,2に示す通りである。カーカスプライに1100dtex/2からなる双撚り構造のPETコードを用いた比較例1に対し、1100dtex/1からなる片撚り構造のPETコードを用いた比較例2であると、タイヤの軽量化効果には優れるものの、カーカスのコード曲げ硬さが3cNと低かったため、サイドウォール部の剛性不足により、操縦安定性に劣っていた。1100dtex/1からなる片撚りPETコードを用いたものの、そのコード曲げ硬さが17cNと大きすぎた比較例3では、カーカスコードが剛直になりすぎて、乗り心地の向上が困難になるとともに、耐疲労性が低下したことによりタイヤの荷重耐久性が低下した。1100dtex/1からなる片撚りPETコードを用いたものの、そのコード占有率が37%と低い比較例4では、サイドウォール部の剛性不足により操縦安定性に劣っていた。1100dtex/1からなる片撚りPETコードを用いたものの、そのコード占有率が69%と高い比較例5では、サイドウォール部の剛性が高くなって乗り心地が悪化し、また、サイドウォール部での接着破壊から耐久性が低下し、また隣接するコード同士が接近していたことによりセパレーション発生して耐久性が低下した。1670dtex/1からなる片撚りPETコードを用いた比較例6では、そのコード曲げ硬さが16cNと大きすぎたため、カーカスコードが剛直になりすぎて、乗り心地の向上が困難になるとともに、耐疲労性が低下したことによりタイヤの荷重耐久性が低下した。
【0058】
カーカスプライとしてはコード曲げ硬さ及びコード占有率ともに満足する片撚りPETコードを用いたものの、ベルトプライを構成するスチールコードの曲げ硬さが125cNと小さすぎた比較例7では、ベルトコードが柔軟になりすぎてタイヤ周方向のベルト剛性が低下したことにより操縦安定性が低下した。また、ベルトプライを構成するスチールコードの曲げ硬さが515cNと大きすぎた比較例8では、乗り心地が悪化した。ベルトプライを構成するスチールコードのフィラメント径が0.32mmと大きすぎた比較例9では、乗り心地が悪化し、コード疲労性低下し、荷重耐久性が低下した。
【0059】
これに対し、カーカスプライについて所定のコード曲げ硬さを持つ片撚りPETコードを用いて所定のコード占有率に設定するとともに、ベルトのスチールコードとして所定の曲げ硬さに設定した実施例1〜8であると、比較例1に対して荷重耐久性が向上するとともに、タイヤ剛性を最適化したことで操縦安定性と乗り心地がバランスよく向上しており、更にタイヤの軽量化効果も大きかった。