特許第6062848号(P6062848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062848顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料着色剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062848
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料着色剤
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20170106BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20170106BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170106BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20170106BHJP
   B01F 17/16 20060101ALN20170106BHJP
   B01F 17/22 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
   C09B67/20 L
   C09B67/20 F
   C09B67/46 B
   G02B5/20 101
   C09D11/00
   !B01F17/16
   !B01F17/22
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-265410(P2013-265410)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-120826(P2015-120826A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100098213
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】柳本 宏光
(72)【発明者】
【氏名】一柳 俊之
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 尚人
(72)【発明者】
【氏名】井口 和紀
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−127749(JP,A)
【文献】 特開昭56−032146(JP,A)
【文献】 特開2008−202021(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025325(WO,A1)
【文献】 特開平08−048890(JP,A)
【文献】 特開昭60−088185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
C09B 67/46
C09D 11/00
G02B 5/20
B01F 17/16
B01F 17/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料をビヒクル中に混合分散させるための顔料分散剤であって、下記一般式(1)で表される化合物(但し、少なくとも1個のCOOMまたはSO3M(Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アミン基または4級アンモニウム基を表す。)で表される置換基を有するものを除く。)であることを特徴とする顔料分散剤。
(前記一般式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、メルカプト基、又はニトロ基のいずれかであり、Yは置換基を有していてもよい芳香族環であり、R1及びR2は、相互に独立に、塩基性窒素原子を有する炭素数2〜30の、脂肪族、脂環族、又はヘテロ脂環族の、アミン化合物の、前記塩基性窒素に置換する水素が除かれた反応残基を示す。)
【請求項2】
顔料と、請求項1に記載の顔料分散剤と、を含有してなることを特徴とする顔料組成物。
【請求項3】
前記顔料100質量部に対する、前記顔料分散剤の配合量が、0.5〜40質量部である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の顔料組成物と、皮膜形成材料と、を含有してなることを特徴とする顔料着色剤。
【請求項5】
画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用、又は塗料用のいずれかである請求項4に記載の顔料着色剤。
【請求項6】
カラーフィルター用である請求項4に記載の顔料着色剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料着色剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗料、グラビアインキ、オフセットインキなどのビヒクル中に顔料(粒子)を安定した状態で混合分散させることは困難である。例えば、ビヒクル中に一旦分散した微細な顔料粒子は、そのビヒクル中で凝集する傾向がある。顔料粒子が凝集したビヒクルは、その粘度が上昇してしまうといった問題がある。また、凝集した顔料粒子が分散されたビヒクルを用いた場合は、インキや塗料の着色力が低下したり、塗膜のグロスが低下したりするなどの種々の問題が生じやすい。
【0003】
ところで、液晶カラーディスプレイや撮像素子などを製造するために使用されるカラーフィルターは、顔料分散液を用いて、例えば、以下のような方法で製造されている。まず、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の三色の顔料をそれぞれ、感光性樹脂液中に分散させて、カラーフィルター用の顔料分散液(カラーフィルター(CF)用顔料着色剤)を用意する。これらのCF用顔料着色剤を、スピンコート法によってカラーフィルター用の基板に塗布して着色皮膜を形成する。次いで、フォトマスクを介して形成した着色皮膜を露光した後、現像して着色皮膜をパターン化し、基板に所望の画素を形成させればカラーフィルターを得ることができる。
【0004】
カラーフィルターを製造するための顔料としては、下記に挙げるような、緑色顔料、赤色顔料及び青色顔料などがある。緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン(以下、「PG」と記す)36、PG7、PG58などのフタロシアニングリーンが一般的である。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(以下、「PR」と記す)254などのジケトピロロピロール系レッド;PR177などのアントラキノン系レッド;PR242などのアゾ系レッドが一般的である。また、青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(以下、「PB」と記す)15:6などのフタロシアニンブルーが一般的である。
【0005】
なお、これらの顔料の色相と、液晶ディスプレイに要求される色特性には差があるため、補色用の顔料を併用することが行われている。例えば、緑色顔料及び赤色顔料に対しては、C.I.ピグメントイエロー(以下、「PY」と記す)138、PY139、PY150などの黄色顔料が補色用の顔料として少量使用されている。また、青色顔料に対しては、C.I.ピグメントバイオレット(以下、「PV」と記す)23などの紫色顔料が補色用の顔料として少量使用されている。そして、カラーフィルターの良好な画素を形成するために、主となる顔料と補色用の顔料とは、CF用顔料着色剤に均一な状態で存在することが望まれる。
【0006】
しかし、顔料を併用する場合は勿論、通常の分散機を使用して上記の顔料を、感光性樹脂液などの分散媒体中に分散させることは困難であり、顔料の分散状態が良好ではない顔料分散液しか得られない場合がある。顔料の分散状態が良好ではないCF用顔料着色剤を用いて形成されたカラーフィルターの画素は光透過性が不十分になってしまい、カラーフィルターの画素としての光透過率が不足してしまう。すなわち、通常の分散機を使用して顔料を分散させて得られるCF用顔料着色剤は、カラーフィルターの画素を形成するための着色剤としては、十分なものでない場合があった。
【0007】
一方、顔料の分散媒体であるフォトレジスト用の感光性樹脂としては、露光後の着色皮膜が、現像液であるアルカリ水溶液で容易に現像可能となるように、酸価の高いアクリル系ポリマーが主として採用されている。しかしながら、前述の顔料と、酸価の高いアクリル系ポリマーとを含有する顔料着色剤は、顔料が凝集しやすく、粘度が高くなりやすいといった問題がある。また、経時的に顔料の凝集が進行して増粘するので、貯蔵安定性が低いといった問題もある。さらに、粘度が高い、或いは、顔料が凝集してチクソトロピックな粘性を示す顔料着色剤を用いてカラーフィルターを製造しようとすると、露光前の着色皮膜の中央部が盛り上がってしまうことが起こる。このため、基板の中央部に位置する画素と、周辺部に位置する画素とでは、色相にむらや濃度差が発生するという問題が生ずる。そして、この問題は、より大画面のカラーフィルターを製造しようとする際により顕著になる。
【0008】
したがって、CF用顔料着色剤(フォトレジスト)は、高濃度に顔料を含みながらも、顔料の分散媒体である感光性樹脂への分散状態が良好であるとともに、一般的な常乾塗料や焼き付け塗料に比して低粘度であることが要求される。一般的には、顔料濃度が5〜20質量%であっても、顔料が凝集せず、その粘度が5〜20mPa・s程度であり、しかも貯蔵安定性が良好であることが要求される。
【0009】
上記の要求を満たすべく、従来、顔料誘導体を顔料の分散剤として添加する方法や、顔料を顔料誘導体で処理して用いる方法などが提案されている。具体的には、顔料としてPR254などのジケトピロロピロール系レッドを用いる場合には、顔料分散剤としてジケトピロロピロールの置換誘導体を用いることが提案されている。また、顔料としてPR177などのアントラキノン系レッドを用いる場合には、顔料分散剤としてアントラキノンの置換誘導体を用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−26767号公報
【特許文献2】特開平9−272812号公報
【特許文献3】特開2001−174616号公報
【特許文献4】特開2009−29886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、カラーフィルターの性能をさらに向上させたいとの要望がある。具体的には、着色画素の透明性をさらに改善する、着色画素の透過光のコントラストをアップさせる、或いは着色画素の顔料濃度を高めることが求められている。しかしながら、特許文献1〜3等で提案されたような従来の技術では、上記の性能を満足させるカラーフィルターを製造しうる顔料着色剤を得ることは困難であった。さらに、従来の技術で得られた顔料着色剤は、カラーフィルター用に限らず、これを用いた場合に、塗膜(着色皮膜)中に異物が発生することがあり、改善が要望されている。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、顔料を含有するインキや塗料などの流動性を著しく改善可能であるとともに、顔料の粒子凝集を防止することができ、かつ、異物の発生を防止しつつ、優れた光沢及び鮮明性を示す着色物品を製造可能な顔料分散剤を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記顔料分散剤を用いて得られる顔料組成物及び顔料着色剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、以下に挙げる顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料着色剤を提供する。
【0014】
本発明は、以下に示す顔料組成物を提供する。
[1]下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする顔料分散剤。
(前記一般式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、メルカプト基、又はニトロ基のいずれかであり、Yは、置換基を有していてもよい芳香族環であり、R1及びR2は、相互に独立に、塩基性窒素原子を有する炭素数2〜30の、脂肪族、脂環族、又はヘテロ脂環族の、アミン化合物の反応残基を示す。)
【0015】
また、本発明は、上記の本発明の顔料分散剤を利用した、以下に挙げる顔料組成物を提供する。
[2]顔料と、前記[1]に記載の顔料分散剤と、を含有してなることを特徴とする顔料組成物。
[3]前記顔料100質量部に対する前記顔料分散剤の配合量が、0.5〜40質量部である前記[2]に記載の顔料組成物。
【0016】
さらに、本発明は、上記の本発明の顔料組成物を利用した、以下に挙げる以下に示す顔料着色剤を提供する。
[4]前記[2]又は[3]に記載の顔料組成物と、皮膜形成材料と、を含有してなることを特徴とする顔料着色剤。
[5]画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用、又は塗料用のいずれかである前記[4]に記載の顔料着色剤。
[6]カラーフィルター用である前記[4]に記載の顔料着色剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明の顔料分散剤は、顔料を含有するインキや塗料などの流動性を著しく改善可能であるとともに、顔料の粒子凝集を防止することができ、かつ、該顔料分散剤を含む顔料組成物で着色被膜を形成した場合に、異物の発生を防止しつつ、優れた光沢及び鮮明性を示す着色物品を製造可能なものである。このため、本発明の顔料分散剤は、オフセットインキやグラビアインキなどの印刷インキ、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式又は湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどに用いられるビヒクルに対して好適に使用することができる。また、本発明の顔料分散剤を用いれば、各種の塗料などの流動性が著しく改善し、顔料の粒子凝集が防止でき、着色被膜を形成した場合に、異物の発生が有効に防止される顔料組成物及び顔料着色剤を提供することができる。さらに、本発明の顔料着色剤は、貯蔵時の増粘やゲル化が生じにくいとともに、優れた光沢と鮮明性を有する着色物を製造することができる。このため、本発明の顔料着色剤は、カラーフィルター用の顔料着色剤等として、特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<顔料分散剤>
以下、好ましい実施形態を例に挙げて本発明の詳細について説明する。本発明の顔料分散剤は、下記一般式(1)で表される化合物であることを主要な特徴とする。このような特徴を有する本発明の顔料分散剤は、種々の顔料に対して優れた親和性を有しており、有機・無機を問わず、様々な顔料を分散させるための顔料分散剤として、好適に使用することができる。また、本発明の顔料分散剤は、優れた顔料分散効果を有しているので、種々の用途の顔料着色剤を調製するための材料として使用することができる。
【0019】
【0020】
上記一般式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、メルカプト基、又はニトロ基のいずれかであり、Yは、置換基を有していてもよい芳香族環であり、R1及びR2は、相互に独立に、塩基性窒素原子を有する炭素数2〜30の、脂肪族、脂環族、又はヘテロ脂環族の、アミン化合物の反応残基を示す。
【0021】
本発明の顔料分散剤は、少量であっても顔料の分散剤として優れた作用を示す。また、本発明の顔料分散剤を用いて調製される顔料組成物及び顔料着色剤は、貯蔵時の増粘やゲル化が生じにくく、これらを用いて形成される塗膜中に異物が発生しにくいという効果を実現できる。
【0022】
本発明の顔料分散剤は、上記した一般式(1)を満足する化合物であることを特徴とするが、その具体例としては、下記式(A)〜(F)で表される化合物等を挙げることができる。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
本発明の顔料分散剤は、上記した一般式(1)を満足する化合物であるが、具体例として、下記式(1−1)〜(1−6)で表される化合物等を挙げることができる。なお、本発明の顔料分散剤は、先に挙げた式で表される化合物や、下記の式で表される化合物に限定されるものではない。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
本発明の顔料分散剤を構成する、上記に列挙したような一般式(1)で表される化合物は、例えば、以下のようにして合成することができる。
まず、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の酸クロライド化物と、4−ニトロアニリンのような含窒素芳香族化合物とを、ニトロベンゼン等の不活性な溶媒中で、130〜140℃で反応させてニトロ体を得る。そして、この場合は、得られたニトロ体を、塩酸および還元鉄を用いて常法により還元し、アミノ体を得る。また、上記の含窒素芳香族化合物としてp−フェニレンジアミンなどを用いた場合は、アミノ体を得る。次いで、このようにして得られたアミノ体と塩化シアヌルとをジオキサン等の溶媒中、50〜60℃で反応させ、次いで、塩基性窒素原子を有するアミン化合物と、90〜100℃で反応させることにより、カップラーを得る。一方、1−アミノアントラキノンのようなアミノ基を有するアントラキノンを常法によりジアゾ化し、前記カップラーとカップリングすることにより、一般式(1)で表される顔料分散剤を得ることができる。
【0037】
上記合成方法において使用することのできる、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の酸クロライド化物と反応させる含窒素芳香族化合物としては、以下のものが挙げられる。例えば、4−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、2−ニトロアニリン、2−アミノ−4−クロロ−5−ニトロフェノール、2−アミノ−4−クロロ−6−ニトロフェノール、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロベンゾニトリル、4−アミノ−3−ニトロベンゾニトリル、2−アミノ−3−ニトロフェノール、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、4−アミノ−2−ニトロフェノール、4−アミノ−3−ニトロフェノール、2−ブロモ−6−クロロ−4−ニトロアニリン、4−ブロモ−2−メチル−6−ニトロアニリン、2−ブロモ−5−ニトロアニリン、4−ブロモ−2−ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、2−クロロ−5−ニトロアニリン、4−クロロ−2−ニトロアニリン、4−クロロ−3−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,4−ジブロモ−6−ニトロアニリン、2,6−ジブロモ−4−ニトロアニリン、2,5−ジクロロ−4−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、4,5−ジクロロ−2−ニトロアニリン、4,5−ジフルオロ−2−ニトロアニリン、2,5−ジメトキシ−4−ニトロアニリン、2−フルオロ−4−ニトロアニリン、2−フルオロ−5−ニトロアニリン、3−フルオロ−4−ニトロアニリン、4−フルオロ−2−ニトロアニリン、4−フルオロ−3−ニトロアニリン、5−フルオロ−2−ニトロアニリン、2−ヨード−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−5−ニトロアニリン、4−メトキシ−2−ニトロアニリン、5−メトキシ−2−ニトロアニリン、2−メチル−3−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、2−メチル−5−ニトロアニリン、2−メチル−6−ニトロアニリン、3−メチル−4−ニトロアニリン、4−メチル−2−ニトロアニリン、4−メチル−3−ニトロアニリン、6−ニトロ−2,3−キシリジン、2,3,4−トリフルオロ−6−ニトロアニリン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、2−シアノ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、6−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、5−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノクロロベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、o−トリジン、m−トルイレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−9,10−アントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロアントラキノン、1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン、などが挙げられる。これらのうちで、4−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、2−ニトロアニリンが好ましい。
【0038】
また、先の合成方法において使用することのできる、塩基性窒素原子を有するアミン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。例えば、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジエチルアミノメチルアミン、N,N−ジプロピルアミノメチルアミン、N,N−ジブチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジプロピルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジメチルアミノラウリルアミン、N,N−ジエチルアミノラウリルアミン、N,N−ジブチルアミノラウリルアミン、N,N−ジメチルアミノステアリルアミン、N,N−ジエチルアミノステアリルアミン、N,N−ジエタノールアミノエチルアミン、N,N−ジエタノールアミノプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、N−アミノプロピルピロリジン、N,N−ジエチルアミノエトキシプロピルアミン、N,N,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラエチルジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(n−プロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(i−プロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(n−ブチル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(i−ブチル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(t−ブチル)ジエチレントリアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジエチルプロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(n−プロピル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(n−ブチル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(i−ブチル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(t−ブチル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、2,9−ジメチル−2,5,9−トリアザデカン、2,10−ジメチル−2,10−トリアザデカン、2,12−ジメチル−2,6,12−トリアザトリデカン、2,12−ジメチル−2,5,12−トリアザトリデカン、2,16−ジメチル−2,9,16−トリアザヘプタデカン、3−エチル−10−メチル−3,6,10−トリアザウンデカン、5,13−ジ(n−ブチル)−5,9,13−トリアザヘプタデカン、ジ−(2−ピコリル)アミン、ジ−(3−ピコリル)アミンなどを挙げることができる。これらのうちで、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)シクロヘキシルアミンが好ましい。
【0039】
また、先の合成方法において使用することのできる、アミノ基を有するアントラキノンとしては、以下のものが挙げられる。例えば、1−アミノアントラキノン、1−アミノ−2−メチルアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、4−アミノ−1,2−ジヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−2,4−ジヒドロキシアントラキノン、4−アミノ−1−ヒドロキシ−3−メルカプトアントラキノン、4−アミノ−1,8−ジヒドロキシ−5−ニトロアントラキノン、1−アミノ−7−ニトロアントラキノン、1−アミノ−6−ニトロアントラキノン、1−アミノ−2,4−ジブロモ−6−ニトロアントラキノン、1−アミノ−2,4−ジブロモ−7−ニトロアントラキノン、1−アミノ−2−ブロモアントラキノン、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン、1−アミノ−2−クロロ−4−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1−アミノ−2,4−ジメトキシアントラキノン、1−アミノ−5−クロロアントラキノン、1−アミノ−2,4−ジブロモアントラキノン、1−アミノ−2−ブロモ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−メトキシアントラキノン、8−アミノ−1,5−ジヒドロキシ−4−メチルアミノアントラキノン、1−アミノ−5−クロロ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−2−メトキシアントラキノンなどを挙げることができる。これらのうちで、1−アミノアントラキノンが好ましい。
【0040】
本発明の顔料分散剤の使用方法は特に制限されないが、以下に示すような使用方法が例示される。いずれの方法であっても、目的とする顔料分散効果を得ることができる。
(1)顔料と顔料分散剤とを予め公知の方法で混合し、得られた顔料組成物をビヒクルなどに添加して顔料をビヒクル中に分散させる。
(2)ビヒクルなどに顔料と顔料分散剤を所定の割合で別々に添加して、顔料をビヒクル中に分散させる。
(3)顔料と顔料分散剤をそれぞれビヒクルなどに別々に分散させた後、得られた各分散液を所定の割合で混合し、顔料をビヒクル中に分散させる。
(4)ビヒクルなどに顔料を分散させて得られた分散液に、顔料分散剤を所定の割合で添加して、顔料をビヒクル中に分散させる。
【0041】
<顔料組成物>
本発明の顔料組成物は、顔料と、前述した本発明の顔料分散剤とを含有してなることを特徴とする。本発明の顔料組成物は、例えば、上記の顔料分散剤の配合量が、顔料100質量部に対して、0.5〜40質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがさらに好ましい。顔料分散剤の配合量が上記した範囲内よりも少なすぎると、目的とする分散剤の効果が十分に得られなくなる場合があるので好ましくない。一方、上記した範囲内よりも顔料分散剤の配合量が多すぎると、分散剤の効果が頭打ちになり、それ以上の効果が期待できず、材料がコスト高になるなど、生産性の面で不利になる場合があるので好ましくない。さらには、このような顔料分散剤を過剰に含有する顔料組成物を用いた塗料やインキにおいて、ビヒクルの諸物性が低下したり、顔料分散剤自体の色によって、顔料のもつ色相が大きく変化したりする場合もあるので、これらの点からも好ましくない。
【0042】
本発明の顔料分散剤を用いることによって、有効な分散効果が得られる顔料の具体例としては、溶性・不溶性アゾ顔料、高分子量アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、メチン・アゾメチン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、金属錯体顔料などを挙げることができる。これらの中でも特に、色相が赤である顔料に使用した場合に、より顕著な効果が得られるので好ましく、特にアントラキノン顔料であるPR177及びジケトピロロピロール顔料であるPR254が好ましい。
【0043】
本発明の顔料組成物を製造する方法は特に限定されない。例えば、顔料と顔料分散剤を従来公知の方法により混合すれば、本発明の顔料組成物を得ることができる。なお、本発明の顔料組成物を製造する方法の具体例としては、以下に示す(1)〜(4)の方法を挙げることができる。
(1)顔料の粉末と顔料分散剤の粉末とを、分散機を使用せずに混合する方法。
(2)顔料と顔料分散剤とを、ニーダー、ロール、アトライター、横型ビーズミルなどの各種分散機で機械的に混合する方法。
(3)顔料の水系又は有機溶剤系のサスペンションに、顔料分散剤を溶解又は微分散させた液を添加及び混合し、顔料の表面に顔料分散剤を均一に沈着させる方法。
(4)硫酸などの強い溶解力を持った溶媒に顔料及び顔料分散剤を溶解させた後、水などの貧溶媒によって共析出させる方法。
【0044】
顔料組成物を調製するのに用いる顔料分散剤の性状は、溶液、スラリー、ペースト、及び粉末のいずれであってもよい。いずれの性状の顔料分散剤を用いた場合であっても、所望の効果を得ることができる。
【0045】
<顔料着色剤>
本発明の顔料着色剤は、前述の顔料組成物と、皮膜形成材料とを含有してなる。本発明の顔料着色剤は、例えば、微細化した前述の顔料組成物と、その用途に応じて選択された樹脂((共)重合体)、オリゴマー、又はモノマーなどの皮膜形成材料とを混合することで得ることができる。本発明の顔料着色剤は、画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用、塗料用などの着色剤として広範な分野で用いることができる。特に、着色画素の透明性が問題となる画像表示材料として、なかでもカラーフィルター用顔料着色剤として好適である。勿論、本発明の顔料着色剤は、電子写真用乾式又は湿式トナー、インクジェット記録用インキ、電着記録液、熱転写記録用インキ、筆記具用インキなどの画像記録剤用の材料としても有用である。これらの画像記録剤用の材料は、それぞれ、インクジェット記録方法、電着記録方式、電子写真方式などの各種の画像記録方法に使用される。本発明の顔料着色剤を用いれば、いずれの画像記録方法であっても高品位な画像を提供しうる画像記録剤用の材料を調製することができる。
【0046】
以下、本発明の顔料着色剤のさらなる詳細について、その代表として、画像表示用の顔料着色剤であるカラーフィルター用顔料分散液(カラーフィルター(CF)用顔料着色剤)を例に挙げて説明する。カラーフィルター用顔料分散液(フォトレジスト)を調製するには、まず、前述の顔料組成物を、皮膜形成材料を含有する液に添加し、プレミキシングする。次いで、分散処理すれば、カラーフィルター用顔料分散液を得ることができる。より具体的には、縦型媒体分散機、横型媒体分散機、ボールミルなどの分散機械を使用して均一に摩砕した顔料組成物を、皮膜形成性材料を含有する液に添加及び混合することで、カラーフィルター用顔料分散液を得ることができる。また、顔料と顔料分散剤を硫酸などに溶解させて得られた溶液と水を混合して、顔料と顔料分散剤とを含む顔料組成物を固溶体又は共析体として析出させて分離する。分離した顔料組成物を、皮膜形成材料や高分子分散剤などを含有する液に添加して混合した後、ダイノミルなどの横型湿式媒体分散機(ビーズミル)を使用して摩砕分散しても、カラーフィルター用顔料分散液を得ることができる。
【0047】
さらに、本発明の顔料着色剤は高分子分散剤を添加してもよく、下記に述べるように、その際に使用する高分子分散剤としては、酸性の高分子分散剤が好適である。本発明の顔料組成物中の顔料表面は、本発明を特徴づける前記一般式(1)で表される塩基性の顔料分散剤で処理されているため、酸性の高分子分散剤を添加することで、低粘度かつ高コントラストであるカラーフィルター用顔料分散液を得ることができる。一方、塩基性の高分子分散剤を使用した場合は、顔料が凝集し、顔料分散液が増粘してしまうので好ましくない。
【0048】
カラーフィルター用顔料分散液を調製するために用いる、皮膜形成材料を含有する液としては、従来公知のカラーフィルター用顔料分散液に含有される皮膜形成性重合体の溶液をいずれも用いることができる。また、皮膜形成材料を含有する液に用いられる液媒体としては、有機溶剤、水、及び有機溶剤と水との混合液などを挙げることができる。なお、カラーフィルター用顔料分散液には、必要に応じて、例えば、分散助剤、平滑化剤、密着化剤などの従来公知の添加剤を添加することができる。
【0049】
本発明の顔料着色剤に含有される顔料組成物の量は、皮膜形成材料100質量部に対して5〜500質量部であることが好ましく、50〜250質量部であることがさらに好ましい。また、皮膜形成材料を含有する液としては、用途に応じて適宜に選択して、感光性の皮膜形成材料を含有する液、又は非感光性の皮膜形成材料を含有する液を用いることができる。感光性の皮膜形成材料を含有する液の具体例としては、紫外線硬化性インキや電子線硬化インキなどに用いられる感光性の皮膜形成材料を含有する液などを挙げることができる。また、非感光性の皮膜形成材料を含有する液の具体例としては、凸版インキ、平版インキ、グラビアインキ、スクリーンインキなどの印刷インキに使用するワニス;常温乾燥又は焼き付け塗料に使用するワニス;電着塗装に使用するワニス;熱転写リボンに使用するワニスなどを挙げることができる。
【0050】
カラーフィルター用顔料分散液は、高濃度に顔料を含みながらも、顔料の分散状態が良好であるとともに、一般的な常乾塗料や焼き付け塗料に比して低粘度であることが要求される。一般的には、顔料濃度が5〜20質量%であっても、顔料が凝集せず、その粘度が5〜20mPa・s程度であり、貯蔵安定性が良好であることが要求される。したがって、カラーフィルター用とする場合は、本発明の顔料分散液は、上記の粘度条件を満たすことが好ましい。より好ましくは、粘度が5〜15mPa・sであり、25℃で1ヶ月間放置した後(放置後)の粘度増加率が10%以内にするとよい。粘度が増加してしまうと、一定の膜厚に製膜することが困難になる。
【0051】
感光性の皮膜形成材料の具体例としては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などの感光性樹脂を挙げることができる。なお、これらの感光性樹脂を含有する液には、反応性希釈剤として各種のモノマーを添加してもよい。
【0052】
皮膜形成材料として感光性樹脂を含有する顔料着色剤に、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノンなどの光重合開始剤を添加し、従来公知の方法により練肉すれば、光硬化性の感光性顔料分散液とすることができる。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を用いれば、熱硬化性顔料分散液とすることができる。
【0053】
一方、非感光性の皮膜形成材料の具体例としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体の水溶性塩、水溶性アミノポリエステル系樹脂などの樹脂及びその水溶性塩を挙げることができる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」とあるのは特に断らない限り質量基準である。
【0055】
[顔料分散剤の調整]
<実施例1>
常法に従って、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸56.5部をニトロベンゼン400部中、塩化チオニル40部を用いて酸クロライド化し、4−ニトロアニリン41.5部を加え130〜140℃で5時間撹拌した。冷却後、メタノール200部を加え、ろ過しメタノール、次いで水で洗浄し、その後に乾燥して、反応物(ニトロ体)83部を得た。メタノール1000部中に、前記反応物(ニトロ体)83部を入れ、水酸化ナトリウムを加えて溶解した後、濃塩酸を滴下して析出させ、微細に分散した。鉄粉還元の常法に従い、還元鉄93部を加え、濃塩酸を滴下し、10時間攪拌、還流して還元した。常温に冷却し、さらに濃塩酸を滴下し、30分攪拌した。ろ過し、メタノールで洗浄し、反応物(アミノ体塩酸塩)のメタノールペーストを得た。次いで、メタノール2000部に、攪拌しながら前記反応物(アミノ体塩酸塩)のペーストを入れ、水酸化ナトリウムを加えて溶解後、濃塩酸を加え、酸析し、ろ過した。次いで、水1000部に分散し、28%アンモニア水でpH9〜10に調整し、ろ過、水洗し、乾燥することにより反応物(アミノ体)62部を得た。
【0056】
ジオキサン250部に、上記反応物(アミノ体)28部、及び塩化シアヌル18部を加え、50〜60℃で1時間撹拌した。次いで、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン40部を加え、90〜100℃で2時間撹拌した。冷却後、2%水酸化ナトリウム溶液800部に投入し、1時間撹拌した。これに1−アミノアントラキノン22部を常法によりジアゾ化したものを加え、20〜30℃で4時間カップリングさせた。ろ過、水洗し、乾燥することにより、下記式(A)で表される赤色の顔料分散剤(A)75部を得た。
【0057】
【0058】
<実施例2>
実施例1で使用したN,N−ジメチルアミノプロピルアミン40部に代えて、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン51部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして下記式(B)で表される赤色の顔料分散剤(B)81部を得た。
【0059】
【0060】
<実施例3>
実施例1で使用したN,N−ジメチルアミノプロピルアミン40部に代えて、N−(3−アミノプロピル)シクロヘキシルアミン63部を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして下記式(C)で表される赤色の顔料分散剤(C)85部を得た。
【0061】
<実施例4>
実施例1で使用した4−ニトロアニリン41.5部に代えて、3−ニトロアニリン41.5部を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして下記式(D)で表される赤色の顔料分散剤(D)74部を得た。
【0062】
<実施例5>
実施例1で使用した4−ニトロアニリン41.5部に代えて、3−ニトロアニリン41.5部を用いたこと、及びN,N−ジメチルアミノプロピルアミン40部に代えて、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン51部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして下記式(E)で表される赤色の顔料分散剤(E)82部を得た。
【0063】
<実施例6>
実施例1で使用した4−ニトロアニリン41.5部に代えて、3−ニトロアニリン41.5部を用いたこと、及びN,N−ジメチルアミノプロピルアミン40部に代えて、N−(3−アミノプロピル)シクロヘキシルアミン63部を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして下記式(F)で表される赤色の顔料分散剤(F)84部を得た。
【0064】
CHNの元素分析及びMALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法の略称)による質量分析により、調製した顔料分散剤(A)〜(F)が目的とする組成になっていることを確認した。なお、顔料分散剤(A)〜(F)についての元素分析の結果を表1に示した。表1に示したように、C、H及びNのいずれの元素についても、ほぼ計算値(理論値)に近い値が得られ、よい一致をみた。また、顔料分散剤(A)については、質量分析によりm/z=791のピークが検出された。このため、使用した原材料、元素分析、及び質量分析の結果から、目的とする組成の化合物が得られたことが確認された。
【0065】
【0066】
[顔料組成物(1)〜(12)の調製]
<実施例7>
顔料分が100部になるように秤量したPR254のプレスケーキ(固形分濃度26%)に水2000部を加えて、十分にリスラリー化してスラリーを得た。得られたスラリーに実施例1で得た顔料分散剤(A)の5%希酢酸溶液100部を加えて1時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液をpH9〜10になるまで徐々に滴下した後、ろ過して十分に水洗した。次いで、80℃で乾燥して顔料組成物(1)105部を得た。
【0067】
<実施例8〜12>
顔料分散剤(A)に代えて顔料分散剤(B)〜(F)を用いたこと以外は、前述の実施例7と同様にして顔料組成物(2)〜(6)を得た。
【0068】
<実施例13>
PR254のプレスケーキに代えてPR177のプレスケーキ(固形分濃度23%)を用いたこと以外は、前述の実施例7と同様にして顔料組成物(7)を得た。
【0069】
<実施例14〜18>
顔料分散剤(A)に代えて顔料分散剤(B)〜(F)を用いたこと以外は、前述の実施例13と同様にして顔料組成物(8)〜(12)を得た。
【0070】
顔料組成物(1)〜(12)を調製する際に用いた顔料と顔料分散剤の組み合わせを表2に示す。
【0071】
【0072】
[顔料分散液(カラーフィルター(CF)用顔料着色剤)の調製]
<実施例19>
メタクリル酸/ベンジルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエルアクリレートを、25/50/15/10のモル比で共重合させて得た、平均分子量が12000、固形分濃度が40%のアクリル樹脂ワニスを使用し、以下に示す方法に従って顔料分散液を調製した。上記のアクリル樹脂ワニス50部、顔料組成物(1)20部、及び溶剤としてプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート20部を混合し、プレミキシングした後、横型ビーズミルを使用して分散処理してCF用顔料着色剤(実施例19)を得た。
【0073】
<実施例20〜30>
実施例19で使用した顔料組成物(1)に代えて顔料組成物(2)〜(12)をそれぞれに用いたこと以外は、前述の実施例19と同様にしてCF用顔料着色剤(実施例20〜30)を得た。
【0074】
<比較例1>
実施例19で使用した顔料組成物(1)に代えて、顔料分散剤で処理していないPR254を用いたこと以外は、前述の実施例19と同様にしてCF用顔料着色剤(比較例1)を得た。
【0075】
<比較例2>
実施例7で使用した顔料分散剤(A)に代えて、特許文献1に記載された下記式(G)で表される顔料分散剤(G)を用いたこと以外は、前述の実施例7と同様にして顔料組成物(13)を得た。そして、実施例19で使用した顔料組成物(1)に代えて、上記で得た顔料組成物(13)を用いたこと以外は、前述の実施例19と同様にしてCF用顔料着色剤(比較例2)を得た。
【0076】
<比較例3>
実施例19で使用した顔料組成物(1)に代えて、顔料分散液で処理していないPR177を用いたこと以外は、前述の実施例19と同様にしてCF用顔料着色剤(比較例3)を得た。
【0077】
<比較例4>
実施例13で使用した顔料分散剤(A)に代えて、特許文献2に記載された下記式(H)で表される顔料分散剤(H)を用いたこと以外は、前述の実施例13と同様にして顔料組成物(14)を得た。そして、実施例19で使用した顔料組成物(1)に代えて、上記で得た顔料組成物(14)を用いたこと以外は、前述の実施例19と同様にしてCF用顔料着色剤(比較例4)を得た。
【0078】
【0079】
[評価]
実施例19〜30及び比較例1〜4の各CF用顔料着色剤について、以下に示した評価方法及び評価基準で(1)流動性(貯蔵安定性)、(2)展色面のグロス、(3)塗膜中の異物の有無、及び(4)コントラストをそれぞれ評価した。その評価結果を表3に、まとめて示した。
【0080】
(1)流動性(貯蔵安定性)
E型粘度計を使用し、調製直後(初期)と、25℃で1ヶ月間放置した後(放置後)のCF用顔料着色剤の粘度(mPa・s)をそれぞれ測定して流動性の評価基準とした。なお、測定条件は、温度:室温(25℃)、ローターの回転数:6rpmとした。また、「放置後粘度/初期粘度(%)」を算出するとともに、得られた算出値を用い、以下に示す基準に従って貯蔵安定性を評価した。
○:「放置後粘度/初期粘度」が110%以下
×:「放置後粘度/初期粘度」が110%超
【0081】
(2)展色面のグロス
バーコーター(巻線の太さ0.45mm)を使用して、CF用顔料着色剤をポリプロピレンフィルムに展色して展色面を形成した。形成された展色面のグロスを、目視観察、及びグロスメーターを使用して観察し、以下に示す基準に従って「展色面のグロス」を評価した。なお、展色面のグロスが高いものほど良好であると判定することができる。
◎:非常に良好
○:良好
×:不良
【0082】
(3)塗膜中の異物の有無
スピンナーを使用してCF用顔料着色剤をガラス基板に塗布し、90℃で2分間乾燥後、270℃で30分間加熱して塗膜を形成した。顕微鏡を使用し、形成された塗膜の表面(塗布面)を200倍で観察して異物の有無を確認し、以下に示す基準に従って「塗膜中の異物の有無」を評価した。
◎:異物なし
○:わずかに異物あり
×:異物あり
【0083】
(4)コントラスト
スピンナーを使用してCF用顔料着色剤をガラス基板に塗布し、90℃で2分間乾燥後、230℃で30分間加熱して塗膜を形成した。また、スピンナーの速度を変えて3枚の塗膜を形成した。コントラストメーター(アイシステム社製)を使用して形成した塗膜の明輝度と暗輝度を測定し、コントラスト(明輝度/暗輝度)を測定した。さらに、分光光度計(商品名「U−2000A」、日立製作所社製)を使用して塗膜を測色し、色度xを測定した。色度xに対してコントラストをプロットして作成したグラフに近似直線を引き、色度x=0.650のコントラストを読み取った。比較例2又は比較例4のコントラストを「100%」として、各実施例及び比較例のコントラスト比(%)を算出した。そして、得られた算出値を用い、以下に示す基準に従って「コントラスト」を評価した。
○:110%以上
△:90%以上110%未満
×:90%未満
【0084】
【0085】
表3に示すように、実施例のCF用顔料着色剤は、比較例のCF用顔料着色剤に比して、粘度が低く、貯蔵安定性が良好で、展色面のグロスが良好で、塗膜中に異物が発生せず、かつ、高コントラストであることが明らかとなった。以上より、実施例の顔料分散剤が優れた効果を有することが明らかとなった。
【0086】
さらに、実施例の顔料組成物を、オフセットインキなどの印刷インキ;ニトロセルロースラッカー、メラミンアルキッド塗料などの各種塗料;塩化ビニール樹脂などの合成樹脂の着色剤などに使用した。その結果、いずれの場合にも顔料は凝集せず、良好な分散性を示した。また、最近、高分散性であることが特に要求されている電子写真用乾式又は湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、筆記具用インキなどの調製に実施例の顔料分散剤を用いた。その結果、いずれの場合にも優れた分散性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の顔料分散剤は、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式又は湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどに配合される分散剤として有用であり、その利用が期待される。