(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体クロマトグラフィーシステムが、少なくとも1つの被検成分を、選択被検成分に特別な一つ又は複数の液体クロマトグラフィーシステムパラメーターを変えることによって精製するように構成されている、請求項1に記載の方法。
液体クロマトグラフィーシステムパラメーターが、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
液体クロマトグラフィーシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
一つの水性移動相緩衝溶液及び一つの非水性の移動相緩衝溶液がそれぞれアンモニウムイオン源を含み、アンモニウムイオン源がギ酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
該制御システムが、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、及びそれらの組合せの少なくとも一つを制御又は変化させるように構成されている、請求項1に記載の方法。
二つの被検成分が、ビタミンD、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、タンパク質、ペプチドホルモン、ペプチド、細菌毒素、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項10に記載の方法。
LC−MSシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、請求項10に記載の方法。
LC−MSシステムが、LC−MSシステムに結合され、LC−MSシステムパラメーターを制御又は変化させるように構成された制御システムをさらに含む、請求項10に記載の方法。
液体クロマトグラフィーシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、請求項16に記載の装置。
約−1.2〜約6のlogP範囲にわたる被検成分が、ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項16に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.序論及び定義
本発明は、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による、広範囲の疎水性を有する被検成分の精製及び検出のための方法、システム、及びキットに関する。単一の液体クロマトグラフィーカラム(例えば、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム)又は単一組の液体クロマトグラフィーカラム(例えば、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムと、その上流にあってそれと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラム)、一組の移動相緩衝液、及び任意に単一のイオン化法(例えば、エレクトロスプレーイオン化(“ESI”)、大気圧化学イオン化(“APCI”)及び当該技術分野で公知のその他のイオン化法)を用いて、広範囲の被検成分を液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)システムで精製及び分析することができる。広範囲の疎水性を有する被検成分のLC−MS精製及び分析は、異なる被検成分に特別なLC運転パラメーター(例えば、流速、一つの緩衝液対別の緩衝液の比率、温度など)及びMSシステムパラメーター(例えば、イオン化電圧、脱溶媒和温度など)を選択することによって、カラムもしくは緩衝液の変更又はLC−MSシステムに対する何らかのその他のハードウェア構成の変更をする必要なしに達成される。異なる被検成分タイプを用いる実験の間にカラム、緩衝液などを変更する必要がないという事実のために、本明細書中に記載の方法、システム、及びキットは、これまでに報告された方法と比べて、個別の被検成分に対する特異性に本質的な妥協をすることなく、広範囲の被検成分に対して実質的に増大された速度及び使いやすさを提供する。
【0025】
本明細書において使用されている用語“分配係数”及び“logP”は、平衡状態で二つの非混和性溶媒(例えばオクタノールと水)間における化合物の濃度比のことを言う。従って、第一の近似として、LogPは、化学物質がいかに親水性(hydrophilic又は"water loving")であるか又は疎水性(hydrophobic又は"water fearing")であるかの尺度となる。logPは指数関数であるので、一般に、1単位の変化は疎水性における10倍の差を表すことに注意すべきである。
【0026】
広範囲の疎水性(logPの測定によって推定される)を有する被検成分の精製及び分析は、現在のLC−MS技術に特別な難題をもたらしている。これは、主にそのような広範囲の化合物のクロマトグラフィー分離の達成に関連する難題によるものである。典型的には、LC−MSシステムは、質量分析計での分析のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを用いて化合物を分離する。HPLCは、固定相と移動相間の分配の変化を利用し、化合物をそれらの疎水性に基づいて分離する。疎水性に大きな差があると、HPLCでのリテンション特性に大きな差をもたらしがちである。
【0027】
一般的に、この結果、異なる化学クラス(例えば異なる及び広範囲のlogP)の化合物を用いて作業する場合に所望のクロマトグラフィー分離を達成するには、移動相(すなわち液体緩衝溶液)、固定相(カラムの選択)、又はその両方の変更が必要になる。つまり、液体クロマトグラフィーのハードウェア(例えばカラム)、消耗品(例えば移動相緩衝液)、MSのセットアップ(例えばイオン化のタイプ)、及びシステムパラメーター(例えば流速、グラジエントなど)は、一般的にそれぞれ異なる被検成分のタイプ又は被検成分のクラスに対して最適化される。この場合のクラスは、それぞれ所与のクラス内でかなり狭い範囲のlogPによって定義される。
【0028】
その結果、分析されるサンプルは、現在、関心被検成分の特徴に従って一緒にグループ分けされ、類似のサンプルが、関心被検成分に特有のカラム、緩衝液、及び運転パラメーターの特別なセットを備えた装置でバッチ式に一緒に実験される。第二の異なる関心被検成分を含有するサンプルを実験するには、カラム、移動相緩衝液、又は運転パラメーターの一つ又は複数を、LC−MSオペレーターが一般的に変更し、最適化せねばならない。この方式は、LC−MSシステムのセットアップに対する実験ごとの変更の数を減らすかもしれないが、各サンプルの結果が出るまでの時間を著しく増大する。さらに、この状況は、同じサンプルに対して複数の分析を実施することを困難にしている。その結果、サンプルは、それらのバッチが分析されるまでに数時間又はさらには数日間も待たねばならず、複数の関心被検成分を含有するサンプルは別の分量(アリコート)に分割されるか、又は異なる被検成分のアッセイのたびに待ち行列に戻されねばならない。一刻を争う分析の場合(例えば、救急科の患者の場合、又は不安定な被検成分を含有するサンプルの場合)、そのような遅れは容認しがたい。
【0029】
本発明は、複数の及び広範囲の化学クラス(例えば広範囲の対数分配係数)の被検成分のLC−MS精製及び分析を、単一組の液体クロマトグラフィーカラム(例えば浄化カラム及び分析カラム)及び単一組の移動相緩衝液(例えば水性緩衝液及び非水性緩衝液)を用いて広範囲の疎水性を有する化合物をアッセイ(すなわち精製及び分析)するために構成された方法、システム、装置、及びキットを提供することによって単純化することを追求している。LC−MS精製及び分析は、一つの化学クラスから別のクラスに切り替える際に、カラム及び緩衝液を変更するのではなく、各異なる被検成分又は被検成分のクラスに特別なLC運転パラメーター(例えば、流速、一つの緩衝液対別の緩衝液の比率、温度など)及びMSシステムパラメーター(例えば、イオン化電圧、脱溶媒和温度など)を選択することによって達成される。
【0030】
LC−MSによって広範囲のlogPを有する化合物を精製及びアッセイするのに使用できる統合されたLC−MS法を開発することの難しさは、表1(以下)を参照することによって示すことができる。
【0033】
表1に掲載された化合物は、様々な臨床目的及び薬物モニター目的のために、LC−MSによって分析されることがある。しかしながら、現在の慣例では、LC−MS分析は、異なる被検成分のクラスに特別なプロトコルを用いることに依拠している。表1に掲載された化合物は、約−1.2(ブスルファン)から約6(25OHビタミンD
2)の範囲のlogPを有するが、これは疎水性に約7桁をわずかに上回る差があることを表している。これは非常に広範囲の疎水性なので、そのように広範囲の被検成分が、一組の液体クロマトグラフィーカラム、一組の移動相緩衝液、及び任意に単一のイオン化法を用いてLC−MSによって精製及び分析できることは驚くべきことであり、予期せぬことである。
【0034】
本明細書において使用されている“精製”という用語は、サンプルから関心被検成分以外のすべての物質を除去することを意味しない。その代わりに、一側面において、精製は、サンプルの一つ又は複数の他の成分に比べて一つ又は複数の関心被検成分の量を富化する手順のことを意味しうる。別の側面において、精製は、一つ又は複数の妨害物質、例えば質量分析による被検成分イオンの検出を妨害するような一つ又は複数の物質を除去するのに使用することができる。
【0035】
本明細書において“サンプル”とは、固体材料の抽出又は環境表面からの拭き取り物(スワブ)を含む任意の流体又は液体サンプルのことを言い、“生物学的サンプル”とは、生物源、例えば、これらに限定されないが、毛髪、体組織(例えば皮膚又は組織生検)、血液、血漿、除タンパク血漿、血清、除タンパク血清、痰、胆汁、唾液、尿、糞便、涙液、汗、身体部位からの拭き取り物(スワブ)、微生物懸濁液など由来の任意のサンプルのことを言う。
【0036】
本明細書において“キット”とは、共通法を実施するための、試薬、デバイス、キャリブレーター、対照、標準、又はそれらのいずれかの組合せを含む二つ以上の構成要素のことを言う。二つ以上の構成要素が単一の包装内に提供されているか、複数の包装内に提供されているかどうかに関わりない。
【0037】
本明細書において“クロマトグラフィー”とは、液体、ガス又は超臨界流体によって運ばれる化学混合物が、固定相の周囲を又はそれを越えて流れるにつれて又は液相もしくは固相と化学的に相互作用するにつれて、溶質の差別的分布の結果、成分に分離される過程のことを言う。
【0038】
本明細書において“液体クロマトグラフィー”(LC)とは、流体が微粉砕物質のカラム又はキャピラリー通路に均一に浸透するにつれて流体溶液の一つ又は複数の成分が選択的にリテンションされる過程を意味する。リテンションは、この流体が固定相に対して移動するにつれて、一つ又は複数の固定相とバルク流体(すなわち移動相)との間で混合物の成分が分配される結果である。“液体クロマトグラフィー”は、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)及びイオンクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書において使用されている“HPLC”又は“高速液体クロマトグラフィー”という用語は、分離の程度が、移動相を加圧下で強制的に固定相(典型的には密に充填されたカラム)に通すことによって増大されている液体クロマトグラフィーのことを言う。
【0040】
本明細書において使用されている“UHPLC”又は“超高速液体クロマトグラフィー”という用語は、運転圧がHPLCより高い(例えば約100MPa対約40MPa)、カラムの直径が典型的には小さい、充填剤料の粒子が一般的に小さい、及び分解能がおそらく高いという以外はHPLCに類似した液体クロマトグラフィー技術のことを言う。
【0041】
本明細書において“質量分析(法)”(MS)とは、化合物をそれらの質量電荷比、“Da/e”(通常、記号“m/z”でも表記される)によって、フィルタリング、検出、識別及び/又は測定するための分析技術のことを言う。MS技術は、一般的に、(1)化合物のイオン化及び化合物の電位的フラグメント化;及び(2)荷電化合物及び/又はフラグメントイオンの分子量の検出及び質量電荷比(Da/e)の計算を含む。化合物は任意の適切な手段によってイオン化及び検出できる。“質量分析計”は、一般的にイオン化装置及びイオン検出器を含む。
【0042】
“ESI”又は“エレクトロスプレーイオン化”という用語は、質量分析でイオンを製造するために使用される技術のことを言う。ESIは高分子からイオンを製造するのに特に有用である。なぜならば、ESIはこれらの分子がイオン化された場合にフラグメント化する傾向を克服するからである。ESIでは、流体のストリームがノズル、コーン又はその他の指向性装置から放出される。これは帯電されていてもいなくてもよい。分子イオン(例えば[M+H]+)は、液相で、又は被検成分周囲の溶媒シェル(solvent shell)の蒸発中に発生する物理化学的過程に応じて、又は気相で形成されうる。
【0043】
本明細書において使用されている“イオン化”という用語は、正味電荷を有する被検成分イオンを発生させる過程のことを言う。負イオンは正味の負電荷を有するイオンで、正イオンは正味の正電荷を有するイオンである。
【0044】
“負イオンモードで運転する”という用語は、負イオンを検出する質量分析法のことを言う。同様に、“正イオンモードで運転する”とは、正イオンを検出する質量分析法のことを言う。
【0045】
本明細書において使用されている“脱離(desorption)”という用語は、表面からの被検成分の剥離及び/又は被検成分の気相への進入のことを言う。
本明細書において定量的測定に関連して使用されている“約”という用語は、表示値のプラス又はマイナス10%を意味する。
【0046】
II.広範囲の疎水性を有する被検成分のLC−MS精製及び検出のためのシステム及び装置
図1を参照すると、広範囲の化学クラスからの被検成分のLC−MS精製及び検出のためのシステム100が図式的に示されている。システム100は、広範囲の化学クラスからの被検成分の精製を実行できる液体クロマトグラフィーシステム102と、各関心被検成分に特異的な一つ又は複数のプリカーサーイオン又はプロダクトイオンのイオン化、フラグメント化、及び検出ができる質量分析計150を含む。
【0047】
図1に図式的に示されている液体クロマトグラフィーシステム102は、サンプル110、サンプル110からの様々な関心被検成分を液体クロマトグラフィーによって精製するための試薬120、広範囲の疎水性を有する被検成分の分離を実行できる液体クロマトグラフィーカラム140、及びサンプル110、試薬120、及び液体クロマトグラフィーカラム140と流体連結されている流体管理(fluid handling)ポンプ130を含む。液体クロマトグラフィーカラム140は、単一の液体クロマトグラフィーカラム(例えば、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム)又は単一組の液体クロマトグラフィーカラム(例えば、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムと、その上流にあってそれと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラム)を含みうる。
【0048】
一態様において、試薬120は、単一の液体クロマトグラフィー緩衝液を含む。別の態様において、試薬120は、単一の実質的に水性の緩衝液、単一の実質的に非水性の緩衝液、及び少なくとも一つの洗浄緩衝液を含みうる。一態様において、単一の実質的に水性の緩衝液及び単一の実質的に非水性の緩衝液は、アンモニウムイオン源を含む(例えばギ酸アンモニウム又は酢酸アンモニウム)。試薬120は、サンプル調製のための一つ又は複数の試薬を含んでいてもよい。例えば、関心被検成分のアッセイを妨害しうるタンパク質を除去するために選ばれるタンパク質沈殿剤などである。
【0049】
図1に示されているように、システム100はさらに、リンケージ170a〜170dを通じてシステム100の様々な構成要素を連結できる任意の制御装置160を含む。例えば、制御装置160は、サンプルの適用を制御するためにサンプル110に、各種試薬の適用を制御するために試薬120に、流体の管理、流速などを制御するためにポンプ130に、そして質量分析のパラメーターを制御するために質量分析計150に連結できる。示された態様では、制御装置160は、例えば、質量分析計150からのデータを処理するためのデータ処理装置としての役割も果たしうる。
【0050】
一部の態様において、システム100は、サンプル調製、LC−MS操作、及び/又はLC−MS法開発のすべての側面において必ずしも熟練者でない臨床医又は一般の検査技師によって使用されるように設計されている。従って、制御装置160は、サンプル110のアッセイの本質的にすべての側面を、使用者にシステム100の全体的なハードウェア及び制御システムとの対話(interact)を求めることなく、開始及びモニターするために使用できる単純化された適用インターフェースを使用者に提供することによって、LC/MSデータシステム環境をカプセル化するように設計できる。従って、制御装置160は、使用者と、デバイス、データファイル、及びデータを使用者可読形に翻訳するためのアルゴリズムを制御する基本的サービスとの間に、ある程度の分離を提供するように構成される。つまり、制御装置160は、使用者が臨床サンプルを分析するためのハードウェアを承知又は制御する必要性を排除し、質量分析計と情報をやり取りするだけの単純化されたインターフェースを提供する。
【0051】
制御装置160は、各サンプルの分析リクエストを内部的にモニターするように構成できるので、システム100を通じて開始から終了までの分析リクエストを追跡することができる。サンプル110のデータがシステム100によって取得されたら、制御装置160は、使用者が選択したアッセイのタイプに基づいてデータの後処理を自動的に開始するように構成できる。さらに、制御装置160は、使用者が選択したアッセイのタイプに基づいて後処理パラメーターを自動的に選択するように構成することもできるので、アッセイが選択され、分析が開始されると、使用者がシステムと対話する必要性はさらに削減される。制御装置160は、取得のためのサンプルアッセイのセットアップに必要な複雑さを削減するために、LC/MSシステム100と使用者との間に適合する層(layer)として設計できる。また、制御システム160は、使用者を無関係な情報で圧倒することを避けるために、最も関係のあるデータのみを使用者に戻すように構成することもできる。
【0052】
制御装置160は、システム100の情報の流れを制御するように構成することができる。以下のリストに、様々な態様におけるシステム100の情報の流れの略式概要を提供する。
【0053】
i.使用者はサンプル110をシステム100に提出する。システム100は、使用者が次に制御システム160を通じてアッセイリクエストを提出するようにセットアップできる。あるいは、制御システム160を、サンプルの存在及び注文された分析のタイプを検出し、制御システム160を通じてアッセイリクエストを自動的に提出するサンプル検出装置(例えばバーコードスキャナ又はRFIDスキャナ)に連結することもできる。
【0054】
ii.制御システム160は、アッセイデータを翻訳し、それをLC−MSシステム100に提出する。特に、システム100はこれを使用して、アッセイパラメーター(例えば、流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、様々な質量分析計の電極に印加される電圧のタイミング及び大きさ、衝突エネルギー、衝突ガス温度、衝突ガス圧など)を設定し、開始することができる。
【0055】
iii.制御システム160は、LC/MSシステムからのサンプル収集の状況をモニターでき、完了したら、データ処理を開始して、使用者が選択したアッセイタイプに特異的な結果を生み出す。
【0056】
iv.アッセイ及びデータ分析が完了したら、制御システム160は、提出されたサンプルについて結果が完了したことを使用者に告知し、結果を使用者に送ることができる。次に、使用者は典型的にはアッセイされた化合物に関する結果を数値的に又はグラフ的に表示することができる。
【0057】
一態様において、システムはさらに、複数のサンプルを管理するために構成されたサンプル管理装置115を含むことができる。サンプル管理装置115は、多数のサンプルラックを備えた回転棚又はトレイを含む。次に、各サンプルラックは、管などのサンプル容器を保持できる一つ又は複数のサンプル容器位置を含みうる。
【0058】
一態様において、システム100はさらに、サンプル管理装置115と動作的に結合された又は統合されたサンプル検出装置(図示せず)を含みうる。サンプル検出装置は、サンプル管理装置115と共に、又はサンプル管理装置115とは独立に動作して、以下の機能の少なくとも一つを実施することができる。
【0059】
i.システムに入るサンプルの識別;
ii.システムに入るサンプル中の関心被検成分の識別;
iii.関心被検成分に基づいてアッセイプロトコルの選択;
iv.サンプル管理装置及び/又は制御システムに、サンプル中の関心被検成分の分析を開始するよう指示;
v.制御システムに、関心被検成分のために選択されたアッセイプロトコルに基づいて一つ又は複数の試薬を選択するよう指示;
vi.制御システムに、関心被検成分のために選択されたアッセイプロトコルに基づいて液体クロマトグラフィーの移動相条件を選択し、液体クロマトグラフィーシステムに関心被検成分を精製するよう指示;
vii.制御システムに、関心被検成分のために選択されたアッセイプロトコルに基づいて質量分析計の設定を選択し、質量分析計に選択された関心被検成分に関連する質量スペクトルデータを生み出すよう指示;又は
viii.制御システムに、関心被検成分の存在及び/又は濃度を同定するために、選択された関心被検成分に関連する質量スペクトルデータを分析するよう指示。
【0060】
自動LC−MSシステムの例に関する追加の解説は、2010年10月29日出願の米国仮特許出願第61/408,180号、発明の名称“サンプル調製及び分析のための自動化システム(AUTOMATED SYSTEM FOR SAMPLE PREPARATION AND ANALYSIS)”、発明者:Robert DeWitte、Juhani Siidorov、Vesa Nuotio、Raimo Salminen、Jarmo Vehkomaki、Jukka Saukkonen、Bill Ostman、Joe Senteno、John Edward Brann III、Joseph L.Herman、及びJeffrey A.Zondermanに見出すことができ、この全文は引用によって本明細書に組み込まれる。
【0061】
適切なサンプル110は、関心被検成分を含有しうる任意のサンプル、例えば、生物学的サンプル及び適切な溶媒中に溶解された関心被検成分(一つ又は複数)を含有するいわゆる“純(neat)”サンプルなどであるが、これらに限定されない。例えば、被検成分の製造中に得られるサンプルを分析すれば、組成及び製造法の収率を決定することができる。環境由来のサンプルは、水、毒素、及び環境表面からの拭き取り物(スワブ)などであるが、これらに限定されない。一定の態様において、サンプルは生物学的サンプルである。すなわち、任意の生物源、例えば動物、細胞培養物、臓器培養物などから得られたサンプルである。特に好適なのは、ヒトから得られたサンプル、例えば、血液、血漿、除タンパク血漿、血清、痰、筋肉、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、身体部位からの拭き取り物(スワブ)、微生物懸濁液又は組織サンプルである。そのようなサンプルは、例えば、患者、すなわち疾患又は状態の診断、予後、又は治療のために臨床施設に姿を見せる生きた人間から得ることができる。
【0062】
サンプルは、所望タイプのクロマトグラフィー及び/又は質量分析による分析に適切な調製物(preparations)を得るために処理又は精製してよい。この目的のために、様々な手段がサンプルのタイプ又はクロマトグラフィーのタイプに応じて使用できる。例を挙げると、ろ過、抽出、沈殿、遠心分離、希釈、それらの組合せなどである。タンパク質沈殿は、血清又は血漿のような液体の生物学的サンプルをクロマトグラフィー用に調製するための一つの方法例である。一態様において、一定量の液体サンプルを十分な量のメタノールに加えることにより、サンプル中の大部分のタンパク質の沈殿を起こす一方で、関心被検成分は得られた上清中に残る。次いで、サンプルを遠心分離して、液体上清をペレットから分離する。得られた上清は、次に液体クロマトグラフィー及び質量分析に適用することができる。一部の態様において、システム100は、関心被検成分の管理、分離、イオン化、フラグメント化、又は検出の少なくとも一つを追跡するために使用できる品質管理基準を含む。例えば、ヘキサジュウテリウム化25−OH D
3(d
6−25−OH D
3)は、ビタミンD及びビタミンD代謝産物のアッセイにおける品質管理基準又は内部標準として使用できる。当業者であれば、本明細書中に記載の関心被検成分と共に使用するための適切な品質管理基準又は内部標準を選択することができる。
【0063】
サンプル又は処理サンプルは、質量分析による分析の前に精製されてもよい。そのような精製又はサンプルの浄化は、一つ又は複数の関心被検成分をサンプルの一つ又は複数の他の成分と比べて富化する手段のことを言う。典型的には、これらに限定されないが、液体クロマトグラフィー、HPLC、UHPLC、沈殿、透析、アフィニティー・キャプチャー(affinity capture)、電気泳動、又は当該技術分野で公知のその他の適切な方法を含む一つ又は複数の方法が精製のために使用される。
【0064】
質量分析前のサンプル浄化のためにHPLCの使用を含む様々な方法が報告されている。例えば、Taylorら、Therapeutic Drug Monitoring 22:608−12(2000)(血液サンプルの手動式沈殿、続いて手動式C18固相抽出、C18分析カラム上でのクロマトグラフィーのためにHPLCへの注入、及びMS/MS分析(manual precipitation of blood samples, followed by manual C18 solid phase extraction, injection into an HPLC for chromatography on a C18 analytical column, and MS/MS analysis));及びSalmら、Clin.Therapeutics 22 Supl.B:B71−B85(2000)(血液サンプルの手動式沈殿、続いて手動式C18固相抽出、C18分析カラム上でのクロマトグラフィーのためにHPLCへの注入、及びMS/MS分析(manual precipitation of blood samples, followed by manual C18 solid phase extraction, injection into an HPLC for chromatography on a C18 analytical column, and MS/MS analysis))参照。当業者であれば、本発明で使用するのに適切なHPLC機器及びカラムを選ぶことができる。クロマトグラフィーカラムは、典型的には、化学部分の分離(すなわち分画)を容易にするための媒体(すなわち充填材料)を含む。媒体は微粒子を含んでいてもよい。粒子は、様々な化学部分と相互作用して関心被検成分の分離を容易にする結合表面を含みうる。一つの適切な結合表面は、アルキル結合表面のような疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C−4、C−8、又はC−18結合アルキル基、好ましくはC−18結合基を含みうる。クロマトグラフィーカラムは、サンプルを受容するための入口ポートと、分画されたサンプルを含む流出液を放出するための出口ポートを含む。例えば、試験サンプルは、入口ポートでカラムに適用され、溶媒又は溶媒混合物で溶出され、出口ポートで放出されうる。別の例では、二つ以上のカラムを使用してもよい。その場合、試験サンプルは入口ポートで第一のカラム(例えば、Cyclone Pカラムなどのような浄化カラム)に適用され、溶媒又は溶媒混合物で第二のカラム(例えば、Hypersil Gold PFP、Accucore PFP(登録商標)、Haloなどのような分析カラム)上に溶出され、溶媒又は溶媒混合物で第二のカラムから出口ポートに溶出されうる。被検成分の溶出に異なる溶媒モードを選択することもできる。例えば、液体クロマトグラフィーは、グラジエントモード、アイソクラチック(定組成)モード、又は多型(polytyptic)(すなわち混合)モードを用いて実施することができる。
【0065】
近年、高速乱流液体クロマトグラフィー(“HTLC”)(高スループット液体クロマトグラフィーとも呼ばれる)が、質量分析による分析の前にサンプル調製物に適用されている。例えば、Zimmerら、J.Chromatogr.A 854:23−35(1999)参照;また、米国特許第5,968,367号;5,919,368号;5,795,469号;及び5,772,874号も参照。これらのそれぞれは、引用によってその全文を本明細書に援用する。従来のHPLC分析は、カラムを通過するサンプルの層流が試験サンプルからの関心被検成分の分離の基礎となるカラム充填の上に成り立っている。当業者は、そのようなカラムにおける分離は拡散プロセスであることは理解しているであろう。これに対し、HTLCのカラム及び方法によって提供されるような乱流は、物質移動の速度を増強しうるので、提供される分離特性を改良すると考えられている。一部の態様では、高速乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を、単独で又は一つもしくは複数の精製法と組み合わせて、関心被検成分の精製に使用することができる。そのような態様では、サンプルは、被検成分を捕獲するHTLC抽出カートリッジを用いて抽出され、次いで溶出され、HPLC又はその他のカラム上でのクロマトグラフィーにかけられた後、イオン化される。これらの二つのカラム精製段階が関与する工程は自動的に連結できるので、被検成分精製中のオペレーター関与の必要性は最小化できる。
【0066】
本明細書において使用されている“質量分析”又は“MS”という用語は、イオンを、それらの質量電荷比、又は“Da/e”に基づいてフィルタリング、検出、及び測定する方法のことを言う。一般に、一つ又は複数の関心分子、例えばビタミンD代謝産物はイオン化され、そのイオンはその後、質量分析装置に導入され、そこで、磁場と電場の組合せにより、イオンは、質量(“m”又は“Da”)及び電荷(“z”又は“e”)に応じた空間内の通路をたどる。
【0067】
質量分析計150は、分画されたサンプルをイオン化し、更なる分析のために荷電分子を作り出すイオン源を含む。例えば、サンプルのイオン化はエレクトロスプレーイオン化(ESI)によって実施できる。他のイオン化技術は、大気圧化学イオン化(ACPI)、光イオン化、電子衝撃イオン化、化学イオン化、高速原子衝突(FAB)/液体二次イオン質量分析(LSIMS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、及びパーティクルビームイオン化などであるが、これらに限定されない。当業者であれば、イオン化法の選択は、測定される被検成分、サンプルのタイプ、検出器のタイプ、正対負モードの選択などに基づいて決定できることは分かるであろう。
【0068】
サンプルがイオン化されたら、それによって生成した正に帯電又は負に帯電したイオンを分析して質量電荷比(すなわちDa/e)を決定できる。質量電荷比を決定するための適切な分析計は、四重極型分析計、イオントラップ型分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)質量分析計、静電トラップ型分析計、磁場セクター型分析計及び飛行時間型分析計などである。イオンは、いくつかの検出モードを用いることによって検出できる。例えば、選択されたイオンが検出できる(すなわち選択イオンモニタリングモード(SIM)を使用する)、あるいは、イオンは、選択反応モニタリング(SRM)又は多重反応モニタリング(MRM)を用いて検出することもできる(MRMとSRMは本質的に同じ実験である)。イオンは、質量分析計をスキャンして、全プリカーサーイオンを同時に、又は特定プリカーサーイオンの全プロダクトイオンを同時に、又はその両方を検出することによって検出することもできる。
【0069】
一態様において、質量電荷比は、四重極型分析計を用いて決定される。例えば、“四重極”又は“四重極イオントラップ”装置において、振動高周波電場(oscillating radio frequency field)内のイオンは、電極間に印加されるDC電位、RF信号の振幅、及びDa/eに比例する力を経験する。電圧及び振幅を、特定のDa/eを有するイオンのみが四重極の長さを通過し、他のすべてのイオンは屈折(偏向)するように選べばよい。こうして、四重極装置は、装置に注入されたイオンの“マス(質量)フィルター”、“マスセパレーター(質量分離器)”又はイオンレンズとして働くことができる。
【0070】
MS技術の分解能は、例えばトリプル四重極型質量分析計の使用により“タンデム質量分析”又は“MS/MS”を採用することによって増強できることが多い。この技術では、関心分子から生成した第一、又は親、又はプリカーサーイオンはMS装置でフィルターにかけられ、これらのプリカーサーイオンはその後フラグメント化されて、一つ又は複数の第二、又はプロダクト、又はフラグメントイオンになり、次いで第二のMS手順で分析される。プリカーサーイオンの注意深い選択によって、一定の被検成分によって製造されたイオンのみがフラグメント化チャンバ(例えばコリジョンセル(衝突室、collision cell))へと移動する。そこで不活性ガスの原子との衝突によって、これらのプロダクトイオンが製造される。プリカーサーイオンもプロダクトイオンも、所与セットのイオン化/フラグメント化条件下で再現可能な様式で製造されるので、MS/MS技術は極めて有力な分析ツールを提供できる。例えば、イオンの選択又はフィルタリングとその後のフラグメント化の組合せを使用すれば妨害物質が排除できるので、生物学的サンプルのような複合サンプルに特に有用となりうる。
【0071】
例えば、おそらくは一つ又は複数の関心被検成分を含有しているクロマトグラフィーカラムからの液体溶媒流は、LC−MS/MS分析計の加熱噴霧器インターフェースに入り、溶媒/被検成分混合物はインターフェースの加熱管内で蒸気に変換される。関心被検成分由来のイオンは液相で形成され、その後ESI源での噴霧化によって、又は被検成分が気相に入るときに中性被検成分と反応性イオン(例えばアンモニウムイオン)間の反応によって、気相に放出されうる。
【0072】
イオンは、装置のオリフィスを通過し、第一の四重極に入る。四重極1及び3(Q1及びQ3)は質量フィルターで、イオンをそれらの質量電荷比(Da/e)に基づいて分離することができる。四重極2(Q2)はコリジョンセルで、イオンはそこでフラグメント化される。質量分析計の第一の四重極(Q1)は、分析される各関心被検成分に特異的なイオンの質量電荷比(“Da/e”)を有する分子を選択する。選択された関心被検成分の正確なDa/eを有するイオンはコリジョンセル(Q2)に入ることができるが、何らかのその他のDa/eを有する望まざるイオンは排出されるか又は四重極(Q1)の側部と衝突して排除される。Q2に入ったイオンは中性ガス分子(例えばアルゴン)と衝突し、フラグメント化する。この過程は衝突活性化解離(Collision Activated Dissociation,CAD)と呼ばれる。生成したフラグメントイオンは四重極3(Q3)に入り、そこで選択された関心被検成分のフラグメントイオンは選択されるが、他のイオンは排除される。イオンは検出器と衝突すると電子のパルスを生成し、それがデジタル信号に変換される。
【0073】
質量分析装置は、所与の被検成分の質量の決定においてわずかに変動しうる。従って、イオンの質量又はイオンのDa/eの文脈において“約”という用語は、±0.2、±0.3、又は±0.5原子質量単位又はドルトン(Da)を意味する。
【0074】
取得されたデータはコンピュータに送られ、電圧対時間がプロットされる。得られたマスクロマトグラムは、従来のHPLC法で作成されたクロマトグラムと同様である。関心被検成分の濃度は、クロマトグラムのピーク下面積を計算することによって決定できる。サンプル中の関心被検成分(一つ又は複数)の濃度は、典型的には、ピーク下面積を検量線と比較するか、又は内部標準(例えばジュウテリウム化25−ヒドロキシビタミンD
3)対試験サンプルの比を比較するかのいずれかによって決定される。
【0075】
III.広範囲の化学クラス由来の被検成分のLC−MS精製及び検出のためのキット
一態様において、少なくとも一つの関心被検成分を含有するサンプルのLC−MSを実施するためのキットを開示する。該キットは、LC−MSシステムを用いて複数の関心被検成分を精製、溶出及び分析するための試薬と、LC−MSシステムを用いて約−1〜約6の範囲の分配係数(logP)を有する複数の関心被検成分を精製及び分析するための説明書を含むプロトコルとを含む。
【0076】
本明細書中に記載の方法システム及びキットを用いて精製、溶出及び分析できる関心被検成分の適切な例は、ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート(アヘン剤)及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0077】
一態様において、プロトコルは、サンプルの管理及び調製、液体クロマトグラフィー条件(例えば、流速、グラジエント、カラム、温度など)、LC−MS用緩衝液の組成、質量分析計の設定(例えば、スプレー電圧、脱溶媒和温度、シースガス圧、電圧及び質量分析器のスキャン設定など)に関する説明書を含みうる。
【0078】
キットに含まれるプロトコルは、約−1.2〜約6の範囲のlogPを有する被検成分を、約−1.2〜約6のlogP範囲の各被検成分について診断品質基準が満たされるように精製及び分析するための説明書も含みうる。
【0079】
本明細書において使用されている“診断品質基準”という用語は、特定の検出限界内の各被検成分について、再現性のある定量を特定の精度で及び実質的にサンプルからサンプルへのキャリーオーバーなしに達成することを含む分析性能側面のことを言う。
【0080】
本明細書において“検出限界”とは、所与の被検成分の参考範囲(reference range)に少なくともまたがる限界のことを言い、定量下限は参考範囲の下限より高くなく、定量上限は参照範囲の上限より低くない。ここで言う参考範囲は、これらに限定されないが、臨床的、工業的及び環境的適用を含む特定の適用に関連している。
【0081】
本明細書中に記載の多くの化合物の下限及び上限臨床参考範囲を表2(以下)の“低”及び“高”の欄にそれぞれ掲載する。大部分の臨床関連の関心被検成分の下限及び上限参考範囲の追加例は、
Tietz Textbook of Clinical Chemistry and Molecular Diagnostics(Burtisら、Saunders;第4版(2005年7月1日)、ISBN:0721601892)に見出すことができ、その全文を引用によって本明細書に援用する。しかしながら、表2及び
Tietzには、臨床業務において現在認められている臨床参考基準が記載されているが、検出限界及び臨床参考範囲は絶えず進化していることに注意する。また、臨床参考範囲は、医療行為におけるケアの基準及び又は異なる国の規制機関(例えば米国対フランス)によって変動しうることにも注意する。同様に、異なる年齢集団、性別及び民族集団は、一部の薬物に対して異なる反応を示すことが知られているので、臨床参考範囲は試験される集団によっても変動しうる。
【0082】
また、臨床参考範囲の下端及び上端は、必ずしも検出限界及び定量限界を表していないことにも注意する。例えば、検出及び定量の限界は、下限臨床参考範囲より桁違いに低いこともある。同様に、本明細書中に記載の方法及び装置によって提供できる濃度範囲の上限は、上限臨床参考範囲よりずっと高いこともある。
【0083】
本明細書において使用されている“精度(precision)”という用語は、特定の測定の再現性のことを言い、単一サンプルの繰り返し測定の変動係数によって測定される。精度は、慣例的にアッセイ開発の一段階として決定されており、変動係数は、同じ日における、異なる日にまたがる、などの繰り返し測定から誘導される。精度の要件は、現在の医療行為に応じて被検成分ごとに変動するが、一般的に15%未満の変動係数が好適であると理解されている。
【0084】
本明細書において使用されている“実質的にキャリーオーバーがない”という用語は、分析と分析の間で前の分析由来のサンプル汚染がシステム(すなわちLC−MSシステム)に本質的に残留していない状況のことを言う。分析装置におけるキャリーオーバーの程度は、いくつかの方法で査定することができる。一つの方法は、きれいなベースラインを確立するためにいくつかのブランクサンプルを実験し、高濃度の関心被検成分(例えば25OHビタミンD
3)を有するいくつかのサンプルを実験し、次いで、再度ブランクサンプルをアッセイしてベースラインへの戻りを保証することを含む。キャリーオーバーは、低及び高濃度の対照サンプル(例えば、定量の下限及び上限を表すサンプル)を連続的に分析することによって査定することもできる。一例において、“キャリーオーバー”は、高濃度の関心被検成分を有するサンプルの分析直後にブランクの0.1%以下である。別の例において、“キャリーオーバー”は、定量上限(ULOQ)のサンプルの分析後に定量下限(LLOQ)の20%以下である。
【0085】
一態様において、キットはさらに、生物学的マトリックス及び/又は“純”サンプルからのさまざまな被検成分の分離を実行できる単一の液体クロマトグラフィーカラム(例えば、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム)又は単一組の液体クロマトグラフィーカラム(例えば、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムと、その上流にあって使用時にそれと流体連結される単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラム)のいずれか、アンモニウムイオン源を含有する少なくとも一つの液体クロマトグラフィー緩衝溶液、及び少なくとも一つの関心被検成分の分離、イオン化、フラグメント化、又は検出の少なくとも一つを追跡するための少なくとも一つの品質管理基準又は内部標準を含む。
【0086】
クロマトグラフィーカラムは、典型的には、サンプルを受容するための入口ポートと、分画されたサンプルを含む流出液を放出するための出口ポートを含む。例えば、試験サンプルは、入口ポートでカラムに適用され、溶媒又は溶媒混合物で溶出され、出口ポートで放出されうる。別の例では、二つ以上のカラムを使用してもよい。その場合、試験サンプルは入口ポートで第一のカラム(例えば浄化カラム)に適用され、溶媒又は溶媒混合物で第二のカラム(例えば分析カラム)上に溶出され、溶媒又は溶媒混合物で第二のカラムから出口ポートに溶出されうる。
【0087】
多くのタイプのHPLC及びUHPLCカラムが市販されており、当業者に公知の様々な基準に基づいて選ぶことができる。例えば、市販のHPLC及びUHPLCカラムは、順相(極性の固定相及び非極性の移動相)、逆相(固定相が非極性で移動相が極性)、イオン交換(固定相上に荷電種及び移動相内に荷電種)、及びアフィニティークロマトグラフィー(被検成分とマトリックス結合リガンドとの間に鍵と鍵穴の理論的枠組(lock-and-key paradigm)の特定相互作用に基づく)を含む。一態様において、液体クロマトグラフィーは逆相である。適切な逆相カラムは、C−4、C−8、C−18、Hypersil Gold PFP、Accucore PFP(登録商標)、Haloなどであるが、これらに限定されない。
【0088】
一態様において、一つの水性移動相緩衝溶液及び一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液は、アンモニウムイオン源を含む。容認できるアンモニウムイオン源の例は、ギ酸アンモニウム及び/又は酢酸アンモニウムを含む。一態様において、ギ酸アンモニウム及び/又は酢酸アンモニウムは、移動相緩衝液中に、約2mM〜約10mM、又は約4mM〜約8mMの範囲、又は約10mMの量で含まれうる。それより少ない又は多い量のギ酸アンモニウム及び/又は酢酸アンモニウムも使用できるが(例えば、約0.1mM〜約20mM、50mM、又は100mM)、約2mMを下回ると、溶液及び/又は気相中のアンモニウムインの数は関心被検成分のイオン化を促進するのに不十分であり得;約10mMを上回る量は、溶液及び/又は気相中のアンモニウムイオンの電荷電荷反発が雑音(artifacts)を生じ、感度を低下させうるというリスクを増大させる。
【0089】
ギ酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムは、LC−MSで使用するための容認できるアンモニウムイオン源である。ギ酸アンモニウムのpKaは、酢酸アンモニウムのそれより低いので、関心被検成分は緩衝溶液中でより十分にイオン化されることが期待され、このことは場合によっては望ましいことでありうる。ギ酸アンモニウムも酢酸アンモニウムも揮発性イオン源であり、質量分析の結果を妨害しないと予想されるので、容認可能である。これに対し、塩化アンモニウムは、これもアンモニウムイオン源であるが、一般的にLC−MSでの使用には容認できないと考えられている。なぜならば、塩化物は揮発性でないので、質量分析計を汚染することが予想されるからである。
【0090】
一態様において、一つの水性移動相緩衝溶液は水溶液を含む(例えば、水、ギ酸アンモニウム、及びギ酸)。一態様において、一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液は非水性溶液を含む(例えば、メタノール、ギ酸アンモニウム、及びギ酸)。使用できるその他の有機相は、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。一つ又は複数の関心被検成分を含有するサンプルは、水性緩衝液を用いて充填及び洗浄され、水性から非水性へのグラジエント又はアイソクラチック(例えば100%非水性緩衝液を用いて)溶離にて溶出できる。一態様において、キットに含まれる試薬はさらに、システムをサンプルの合間に洗浄するように構成されたクロマトグラフィー洗浄緩衝液を含んでいてもよい。一例において、洗浄緩衝液は、イソプロピルアルコール(“IPA”)、アセトニトリル(“ACN”)及びアセトンを含みうる。別の態様において、洗浄緩衝液は、pH約8.0〜10の高pH水性洗浄緩衝液でありうる。任意に、洗浄緩衝液は、これに限定されないが、EDTAのようなキレート剤を含有していてもよい。
【0091】
IV.広範囲の疎水性を有する被検成分の精製及び分析法
次に
図2を参照すると、広範囲の疎水性を有する被検成分を液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)を用いて精製及び分析するための方法200が図示されている。図示された方法200は、第一の化学クラスから少なくとも第一の被検成分を準備する行為210及び第一の化学クラスとは異なる第二の化学クラスから少なくとも第二の関心被検成分を準備する行為220を含む。第一及び第二の関心被検成分は、約−1.2〜約6の範囲にわたる対数分配係数(logP)を有している。方法はさらに、第一及び第二の関心被検成分のそれぞれを少なくとも部分的に精製するように構成された単一の分析カラムと、質量分析計(MS)と、単一の水性移動相緩衝溶液と、そして単一の実質的に非水性の移動相緩衝溶液とを含むLC−MSシステムを準備する行為230を含む。一態様において、移動相緩衝溶液は、それぞれアンモニウムイオン源を含有する。方法はさらに、MSでの分析のために第一の関心被検成分を精製及び溶出する行為240と、MSでの分析のために第二の関心被検成分を精製及び溶出する行為250を含む。
【0092】
一態様において、第一の関心被検成分は第一のlogPを有し、第二の関心被検成分は第一のlogPとは異なる第二のlogPを有する。一態様において、第一及び第二のlogPは、少なくとも約4.5logP単位離れうる。方法200を用いて精製及び分析できる関心被検成分の適切な例は、ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート(アヘン剤)及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。これらの被検成分は、約−1.2(ブスルファン)から約6(25−OHビタミンD
2)の範囲のlogPを有する(表1参照)。
【0093】
一態様において、行為210及び220は、第一の群及び第二の群から選ばれる二つ以上の被検成分を準備することを含みうる。ここで、第一及び第二の群の対数分配係数(logP)は、少なくとも約4.5logP単位離れている。別の態様において、行為210及び220は、ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート(アヘン剤)及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、又はそれらの代謝産物からなる群から選ばれる第一の被検成分及び第二の被検成分を準備することを含みうる。ここで、第一及び第二の被検成分の対数分配係数(logP)は、少なくとも約4.5logP単位離れている。なおさらに別の態様において、行為210及び220は、第一の被検成分、第二の被検成分、及び第三の被検成分を準備することを含むことができ、ここで、第一の被検成分は約−1.2〜約0の範囲の対数分配係数(logP)を有し、第二の被検成分は約0〜約5の範囲のlogPを有し、そして第三の被検成分は約5より大きく約6以下のlogPを有する。
【0094】
第一の関心被検成分の精製及び分析(240)と、その後の第二の関心被検成分の精製及び分析(250)は、流速、移動相緩衝溶液の組成、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、レンズ振幅、衝突ガス温度、衝突ガス圧、衝突エネルギー、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも一つのLC−MSシステムパラメーターを変えることによって達成される。注目すべきは、第一の関心被検成分の精製及び分析(240)と、その後の第二の関心被検成分の精製及び分析(250)は、カラム又は緩衝液の選択を変更する必要がないことである。
【0095】
一態様において、移動相緩衝液に包含される添加剤は、アンモニウムイオン源を含む。一態様において、アンモニウムイオン源は、ギ酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムである。一態様において、水性及び非水性移動相緩衝液中の添加剤は、約2mM〜約15mMのアンモニウム、約2mM〜約10mMのアンモニウム、又は約10mMのアンモニウムを、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、又は別の適切なアンモニウムイオン源の形態で含む。
【0096】
一態様において、行為230で提供される液体クロマトグラフィーシステムは、高速液体クロマトグラフィー(“HPLC”)システム又は超高速液体クロマトグラフィー(“UHPLC”)システムである。一態様において、行為230で提供される液体クロマトグラフィーシステムは、単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラム(例えば、Cyclone P カラム)及び分析用液体クロマトグラフィーカラム(例えば、Hypersil Gold PFP、Accucore PFP(登録商標)、Halo カラム)を含む。サンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムと分析用液体クロマトグラフィーカラムは互いに流体連結されており、サンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムは分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にある。一態様において、質量分析計はエレクトロスプレーイオン化(ESI)及び/又はAPCIイオン源を含む。
【0097】
ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、又は別の適切なアンモニウムイオン源の形態のアンモニウムイオンは、各関心被検成分に特異的なイオンの形成に関与できる。一部の被検成分の場合、アンモニウムイオンは、液相又は気相いずれかの被検成分にプロトンを供与することによって関心被検成分のプロトン化イオン形の形成を促進できる。一部の他の被検成分の場合(例えばステロイド)、アンモニウムイオンはアンモニア化イオンの形成を促進できる。一般に、プロトン化及び/又はアンモニア化分子イオンは、一部のイオン化技術によく見られる脱水イオン(water loss ions)よりも好ましい。なぜならば、関心被検成分は、水を失う多くの可能性ある経路を有しているがゆえに、質量分析計で脱水イオンの追跡が困難になりうるからである。
【0098】
一態様において、行為230で提供されるLC−MSシステムはさらに、複数のサンプルを管理するために構成されたサンプル管理装置と、LC−MSシステムに結合されて下記の少なくとも一つを制御又は変化させるように構成された制御システムを含む。すなわち、第一のサンプルと第二のサンプルの分析の優先順位、流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、レンズ振幅、衝突ガス温度、衝突ガス圧、及びそれらの組合せの少なくとも一つである。サンプル管理装置と制御システムは、本願の他の場所においてシステムとの関連でより詳細に解説されている。
【0099】
次に
図3を参照すると、広範囲の分配係数を有する被検成分を液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)を用いて検出及び/又は定量するための別の方法300が図示されている。方法300は、約−1〜約6の範囲にわたる分配係数(logP)を有する複数の関心被検成分を精製及び分析するように構成されたLC−MSシステムを準備する行為310、選択された関心被検成分を含有するサンプルを選択する行為320、選択された関心被検成分に基づいて分析プロトコルを選択する行為330、及び選択された関心被検成分をLC−MSによって精製、溶出、及び分析する行為340を含む。
【0100】
一態様において、行為300は、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)システムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、LC−MSシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及びLC−MSの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を準備することを含む。LC−MSシステムは、約−1.2〜約6の範囲にわたる対数分配係数(logP)を有する複数の被検成分を、少なくとも一つのLC−MSシステムパラメーターを変化させることによって精製及び分析するように構成されている。LC−MSシステムパラメーターは、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、電極電圧、衝突ガス温度、衝突ガス圧、衝突エネルギー、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0101】
実施例1:25−OHビタミンD
2及び25−OHビタミンD
3の精製及び分析
25−ヒドロキシビタミンD
3及び25−ヒドロキシビタミンD
2をSigma社(ミズーリ州セントルイス)から購入した。25−ヒドロキシビタミンD
3及び25−ヒドロキシビタミンD
2をメタノールに溶解することによって2mg/mLのストック溶液を製造した。他のすべての濃度は、メタノール(原液)又は活性炭処理(charcoal-stripped)ウシ胎仔血清(Sigma Aldrich社、カタログ番号F6765)もしくは抗体処理(antibody-stripped)ヒト血清のような処理血清(stripped serum)(マトリックス)中への連続希釈によって製造した。標準及びQCは処理血清中に製造した。標準は、1〜300ng/mLの範囲で、QCは、2、120及び240ng/mLで製造した。ヘキサジュウテリウム化25−ヒドロキシビタミンD3(d6−25−OH D3)をMedical Isotopes社(カタログ番号D2831)から購入し、内部標準(IS)として使用した。1mg/mLのISストック溶液をメタノール中に製造し、メタノールで140ng/mLに希釈して、使用ISストック溶液(working IS stock solution)とした。ストック溶液及び使用溶液(working solution)はすべて−80℃で保管した。
【0102】
サンプルは、200μLの使用内部標準を100μLのサンプルに加えた後、15秒間最高速度で渦混合し、4000rcfで2分間遠心分離することによって調製した。次に、150μLの上清を分析のために自動サンプラーバイアルに移した。
【0103】
HPLCは、Thermo Scientific Transend TX システム(Thermo Fisher Scientific社)にて、オンラインサンプル浄化用として0.5×50mmのCyclone Pカラム(Thermo Fisher Scientific社)及び2.1×50mm、1.9μmのHypersil Gold PFP又は2.1×50mm、2.6μmのAccucore PFP(登録商標)分析カラム(Thermo Fisher Scientific社)を用いて実施した。このシステムは超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)を実施できるデュアルカラムシステムで、オンライン浄化を実施するためにターボフロー(TurboFlow)技術を利用している。質量スペクトルは、Thermo Scientific Vantageトリプル四重極型質量分析計(Thermo Fisher Scientific社)で取得した。移動相Aは、水中10mMギ酸アンモニウムと0.01%ギ酸であった。移動相Bは、メタノール中10mMギ酸アンモニウムと0.01%ギ酸であった。移動相Cは、カラムの洗浄に使用される45:45:10のイソプロパノール:アセトニトリル:アセトンであった。
【0104】
10μLのサンプルを乱流クロマトグラフィー(“TFC”)カラムに80%の移動相Aを用いて1.5mL/分で注入した。タンパク質などの大型分子は洗浄廃棄されるが、小分子(>1000Da)はカラムに保持される。サンプルが大部分の生体マトリックスから分離されたら、バルブを切り替え、サンプルをTFCカラムから100%の移動相Bを用いて0.2mL/分で溶出する。TFCカラムからの流れは、80%の移動相Aが0.5mL/分で流れる第二のUHPLCポンプにT字配管される。両ポンプからの混合流は分析カラムで見られる有機体の量を削減する結果、関心被検成分が分析カラムのヘッドに集まる。関心被検成分が分析カラムに移動したら、バルブを再度切り替え、二つのカラムを互いに分離する。TFCカラムは次のサンプルのために洗浄及び平衡化される。分析カラムには20〜100%の移動相Bグラジエントを流し、関心被検成分を分析のために質量分析計に溶出する。
【0105】
質量分析計のパラメーターは次の通りである。スプレー電圧5000、蒸発器(ベーパライザ)温度400、シースガス圧60、補助ガス圧35、キャピラリー温度199、S−レンズ振幅55。試験された方法の相対的イオン存在量(relative ion abundances)を見るためにフルスキャンQ1データを取得し、定量的比較のために選択反応モニタリング(SRM)を用いた。
【0106】
使用されたSRMトランジションは次の通りである。25−ヒドロキシビタミンD
3:401.352 親、91.122、105.133、159.139、365.425 プロダクトイオン。25−ヒドロキシビタミンD
2:91.089、95.158、105.104、159.149 プロダクトイオン。d
6−25−OH D
3:407.380 親、107.115、133.105、147.199、159.190 プロダクトイオン。四重極1(Q1)(半値全幅、FWHM)を0.2に設定し、四重極3(Q3)(FWHM)を0.7に設定した。スキャン幅(Da/e)0.01、スキャン時間(s)0.05。衝突ガス圧は1.5mTorrに設定した。
【0107】
移動相中にギ酸アンモニウムを用いた[M+H]+イオンと、例えば移動相中にギ酸を用いたビタミンD
2の[M+H−H
2O]+イオンのフルスキャンデータの比較を
図4A〜4Bに示す。アンモニウム源の添加は検出の感度を著しく増大し、信号対雑音比を著しく改良することに注意する。また、[M+H]+イオンは、アンモニウムイオンなしでは検出されないことにも注意する。
【0108】
MS/MSを用いる定量にとってさらに重要なことは、プリカーサーイオンとして[M+H]+及び[M+H−H
2O]+を使用することによるSRMデータの比較である。これらの比較を25−OH D
2に関して
図5A及び5Bに示す。移動相中にアンモニウムイオンが存在することによってエレクトロスプレーによって形成される[M+H]+イオンの使用は、APCIによる[M+H−H
2O]+イオンを使用するよりも高感度を有することが明らかである。
図5A及び5Bのデータは、ESIによる[M+H]+イオンを用いた25−ヒドロキシビタミンD
2の検出及び定量は、APCIによる[M+H−H
2O]+を用いた検出よりも約3.5倍高感度であることを示す。
【0109】
ビタミンD代謝産物のLC−MS精製及び分析に関する更なる解説は、2010年10月29日出願の米国仮特許出願第61/408,385号、発明の名称“ビタミンD代謝産物のLC−MS分離及び検出(LC-MS SEPARATION AND DETECTION OF VITAMIN D METABOLITES)”、発明者:Joseph L.Herman 及び Dayana Argotiに見出すことができる。その全文は引用によって本明細書に援用する。
【0110】
実施例2:純サンプル及び血清中の関心被検成分の精製及び分析
図6〜15に、純サンプル中の40の別個の関心被検成分の、Cyclone P浄化カラムとその後のHypersil Gold PFP分析カラムでの精製及び分析を示すMRMクロマトグラムを示す。様々な量の有機移動相のアイソクラチック溶離を用いて、各被検成分のリテンション特性を特徴付けした。これらの結果に基づいて、選択された最終移動相は、溶液A:10mMのギ酸アンモニウム、0.01%のギ酸、水、及び溶液B:10mMのギ酸アンモニウム、0.01%のギ酸、メタノールであった。
図6〜15に、約7logPにわたる疎水性を有する化合物のベースライン分離が、本明細書中に記載の方法、システム、及びキットを用いて達成できることが示されている。logPがこれほど広範囲の化合物を、本明細書中に記載の方法システム及びキットを用いて分離できたことは予期せぬことであった。様々な化合物によって変えたパラメーターは、LC運転パラメーター(例えば、流速、一つの緩衝液対別の緩衝液の比率、温度など)及びMSシステムパラメーター(例えば、イオン化電圧、脱溶媒和温度など)だけであった。カラムと緩衝液は変えなかった。
【0111】
図16〜20に、logPが約0.1(ノルコデイン)〜約5.01(エベロリムス)の範囲のいくつかの別個の関心被検成分の精製及び分析を示すMRMクロマトグラムを示す。関心被検成分を抗体処理ヒト血清中に溶解し、Cyclone P浄化カラムとその後のAccucore PFP(登録商標)分析カラムで精製した。これらの結果に基づいて、上記の最終移動相(すなわち、溶液A:10mMのギ酸アンモニウム、0.01%のギ酸、水、及び溶液B:10mMのギ酸アンモニウム、0.01%のギ酸、メタノール)はこれらの条件下で有効であることが示された。
図16〜20に示された関心被検成分の場合、リカバリー(recovery)又はマトリックス効果(matrix effect)(すなわち、“純”サンプルと比較した場合のマトリックス由来の干渉)は検出されなかった。さらに、例えば、
図11と20を比較すると、抗体処理ヒト血清、Cyclone P浄化カラム、及びAccucore PFP(登録商標)分析カラムは、Cyclone P浄化カラムに続いてHypersil Gold PFP分析カラムで分離された“純”サンプルで見られるより、良好な分離を提供できることが分かる。
図6〜15の場合と同様、
図16〜20に示された様々な化合物によって変えたパラメーターは、LC運転パラメーター(例えば、流速、一つの緩衝液対別の緩衝液の比率、温度など)及びMSシステムパラメーター(例えば、イオン化電圧、脱溶媒和温度など)だけであった。カラムと緩衝液は変えなかった。
【0112】
次に表2を参照すると、関心被検成分に関する追加のデータが示されている。表2に示された化合物は、本明細書中に記載の方法、システム、及びキットを用いて、様々な臨床及び薬物モニタリング目的のためにLC−MSによって分析できる。表2に掲載された化合物は、約−1.2(ブスルファン)から約6(25OHビタミンD
2)の範囲のlogPを有するが、これは疎水性に約7桁をわずかに上回る差があることを表している。
【0113】
表2はまた、表2に掲載された化合物の多くの下限及び上限の臨床参考範囲をそれぞれ“低”及び“高”の欄に示すほか、本明細書中に記載の方法、システム、装置、及びキットを用いるおよその定量限界(LOQ)も示す。下限及び上限の臨床参考範囲は、臨床状況において化合物に予想される各化合物のダイナミックレンジを表す。しかしながら、本質的にすべての場合において、検出限界及びLOQは下限臨床参考範囲よりずっと低い。
【0114】
表2に掲載されたLOQは、アンフェタミンの約50ng/mLという高さから一部のステロイドの約10pg/mLという低さにまで及ぶ。これは、各被検成分に対して最適化されている現行法のLOQと少なくとも同等、場合によってはずっと良好である。しかしながら、それぞれ別個の被検成分に対して最適化されている方法は、疎水性に約7桁をわずかに上回る差を有する被検成分の精製及び分析には適応できない。すなわち、ビタミンD代謝産物のような被検成分又は被検成分のクラスに対して最適化されている典型的なLC−MS法は、一般的に、その特定の被検成分又は被検成分のクラスの精製及び分析にしか使用することができない。これに対し、本明細書中に記載の方法、キット、システム、及び装置は、疎水性に約7桁をわずかに上回る差を有する被検成分の精製及び分析に有用である。さらに、極めて思いがけないことに、エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、大気圧化学イオン化(APCI)に比べて、本明細書中に記載の方法システム及びキットを用いて試験された被検成分の多くで感度を改良したことが観察された。APCIは、多くの一般的な関心被検成分の容認されたイオン化法として認識されている。
【0115】
【表2-1】
【0116】
【表2-2】
【0117】
実施例3:生体マトリックス溶液中の免疫抑制剤、25−ヒドロキシビタミンD
2及びD
3、並びに化学療法薬の結果
図21〜26に、マトリックス(例えば血液又は血清)中の免疫抑制剤、25−ヒドロキシビタミンD
2及びD
3、並びに化学療法薬ドセタキセル及びブスルファンの結果を示す。生体マトリックス溶液中の免疫抑制剤、25−ヒドロキシビタミンD
2及びD
3、ドセタキセル又はブスルファンに関し、リカバリー又はマトリックス効果(すなわち、“純”サンプルと比較した場合のマトリックス由来の干渉)は検出されなかった。ブスルファン(logP≒−1.15)及び25−ヒドロキシビタミンD
2(logP≒5.69)は、本明細書中に記載の方法を用いて試験した被検成分の下限及び上限のlogP範囲を表していることに気付くのは興味深い。ブスルファンと25−ヒドロキシビタミンD
2ほど異なる化合物を本明細書中に記載の方法システム及びキットを用いて分離できるとは予想外であった。ブスルファンから25−ヒドロキシビタミンD
2までに変えたパラメーターは、LC運転パラメーター(例えば、流速、一つの緩衝液対別の緩衝液の比率、温度など)及びMSシステムパラメーター(例えば、イオン化電圧、脱溶媒和温度など)だけであった。カラムと緩衝液は変えなかった。
【0118】
実施例4:関心被検成分の精製及び分析に関する方法の詳細
表3〜11に、本明細書中に記載された各種関心被検成分の精製及び分析に関する様々な方法詳細を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】
【表10】
【0127】
【表11】
【0128】
表4〜7を参照すると、バルブ1の移送(transfer)ループ内の有機体の量を選択すること(化合物を乱流カラムから妥当な時間枠で得るために必要なこと)は、ループは最適に予備充填されているので、移送に顕著な効率をもたらしたことが分かった。この値は、各化合物のクラスに特有であることも分かった。
【0129】
同様に表4〜7を参照すると、浄化溶出段階(すなわち乱流クロマトグラフィーの溶出段階)と分析カラム充填段階(全部を移送段階と呼ぶことができる)との間の流速比は、浄化カラムから溶出する全てが確実に分析カラムのヘッドに集まるように(すなわち移送段階中に分析溶出はない)、各化合物クラスごとに最適化されていることも分かる。このことは、リカバリー及び分析ピークの形状を著しく改良することが分かった。
【0130】
同様に表4〜7を参照すると、分析溶出段階は、同重体干渉、化合物間のクロストーク、及びマトリックス妨害を分離するために、各化合物クラスについて最適化できることも分かった。
【0131】
本発明の態様
態様1 方法であって、
第一の群及び第二の群から選ばれた二つ以上の被検成分を準備し、ここで、第一の群及び第二の群から選ばれた二つ以上の被検成分の対数分配係数(logP)は、少なくとも約4.5logP単位離れており;
第一及び第二の群のそれぞれからの少なくとも一つの被検成分を、液体クロマトグラフィーシステムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、液体クロマトグラフィーシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及び液体クロマトグラフィーシステムの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を用いて精製し;そして
第一及び第二の群からの被検成分を質量分析計を用いて分析する
ことを含む方法。
態様2 二つ以上の被検成分が異なるサンプルに含有されている、態様1に記載の方法。
態様3 二つ以上の被検成分が単一のサンプルに含有されている、態様1に記載の方法。
態様4 二つ以上の被検成分が異なる時間に精製及び分析される、態様1に記載の方法。
態様5 二つ以上の被検成分が単一の実験で精製及び分析される、態様1に記載の方法。
態様6 液体クロマトグラフィーシステムが、二つ以上の被検成分のそれぞれを、各選択被検成分に特別な一つ又は複数の液体クロマトグラフィーシステムパラメーターを変えることによって精製するように構成されている、態様1に記載の方法。
態様7 液体クロマトグラフィーシステムパラメーターが、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様6に記載の方法。
態様8 液体クロマトグラフィーシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、態様1に記載の方法。
態様9 第一の群及び第二の群から選ばれた二つ以上の被検成分が、約4.5〜6logP単位離れている、態様1に記載の方法。
態様10 第一の群及び第二の群から選ばれた二つ以上の被検成分が、約6〜7logP単位離れている、態様1に記載の方法。
態様11 一つの水性移動相緩衝溶液及び一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液がそれぞれアンモニウムイオン源を含む、態様1に記載の方法。
態様12 アンモニウムイオン源がギ酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムである、態様9に記載の方法。
態様13 質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化(ESI)又は大気圧化学イオン化(APCI)のイオン源を含む、態様1に記載の方法。
態様14 液体クロマトグラフィーが高速液体クロマトグラフィー(“HPLC”)である、態様1に記載の方法。
態様15 液体クロマトグラフィーが超高速液体クロマトグラフィー(“UHPLC”)である、態様1に記載の方法。
態様16 液体クロマトグラフィーシステムが、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、及びそれらの組合せの少なくとも一つを制御又は変化させるように構成された制御システムをさらに含む、態様1に記載の方法。
態様17 方法であって、
液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)システムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、LC−MSシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及びLC−MSの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を準備し、
ここで、LC−MSシステムは、約−1.2〜約6の範囲にわたる対数分配係数(logP)を有する複数の被検成分を、下記からなる群から選ばれる少なくとも一つのLC−MSシステムパラメーター:すなわち
移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、電極電圧、衝突ガス温度、衝突ガス圧、衝突エネルギー、及びそれらの組合せ
を変えることによって精製及び分析するように構成され;
対数分配係数の範囲が約−1.2〜約6にわたる少なくとも二つの被検成分を選択し;
選択された被検成分に基づいて少なくとも一つの分析プロトコルを選択し、ここで、少なくとも一つの分析プロトコルの選択は、少なくとも一つのLC−MSシステムパラメーターを変えることを含み;そして
選択された被検成分を、LC−MS及び少なくとも一つの選択された分析プロトコルを用いて、二つの被検成分それぞれについて診断品質基準が満たされるように精製及び分析する
ことを含む方法。
態様18 少なくとも二つの被検成分が、ビタミンD、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、タンパク質、ペプチドホルモン、ペプチド、細菌毒素、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様17に記載の方法。
態様19 LC−MSシステムが、
HPLC、UHPLC、HTLC、及びそれらの組合せからなる群から選ばれるLCシステム、及び
シングル四重極型、トリプル四重極型、イオントラップ型、飛行時間型(TOF)、四重極−飛行時間型(Q−TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)、静電トラップ型、磁場セクター型及びそれらの組合せからなる群から選ばれる質量分析計
を含む、態様17に記載の方法。
態様20 LC−MSシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、態様17に記載の方法。
態様21 LC−MSシステムが、複数のサンプルを管理するために構成されたサンプル管理装置をさらに含む、態様17に記載の方法。
態様22 LC−MSシステムが、LC−MSシステムに結合され、LC−MSシステムパラメーターを制御又は変化させるように構成された制御システムをさらに含む、態様17に記載の方法。
態様23 方法であって、
ビタミンD、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、タンパク質、ペプチドホルモン、ペプチド、細菌毒素、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、又はそれらの代謝産物からなる群から選ばれる第一の被検成分及び第二の被検成分を準備し、ここで、第一及び第二の被検成分の対数分配係数(logP)は、少なくとも約4.5logP単位離れており;
第一の被検成分及び第二の被検成分を、液体クロマトグラフィーシステムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、液体クロマトグラフィーシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及び液体クロマトグラフィーシステムの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を用いて精製し;そして
第一の被検成分及び第二の被検成分を、液体クロマトグラフィーシステムと流体連結されている質量分析計を用いて分析する
ことを含む方法。
態様24 液体クロマトグラフィーシステムが、第一の被検成分及び第二の被検成分を、第一の被検成分及び第二の被検成分に特別な一つ又は複数の液体クロマトグラフィーシステムパラメーターを変えることによって精製するように構成されており、ここで液体クロマトグラフィーシステムパラメーターは、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様23に記載の方法。
態様25 ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、及びそれらの代謝産物からなる群が約−1.2〜約6の範囲のlogPを有する、態様23に記載の方法。
態様26 質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化(ESI)又は大気圧化学イオン化(APCI)のイオン源を含む、態様23に記載の方法。
態様27 液体クロマトグラフィーが高速液体クロマトグラフィー(“HPLC”)である、態様23に記載の方法。
態様28 液体クロマトグラフィーが超高速液体クロマトグラフィー(“UHPLC”)である、態様23に記載の方法。
態様29 方法であって、
第一の被検成分、第二の被検成分、及び第三の被検成分を準備し、ここで、第一の被検成分は約−1.2〜約0の範囲の対数分配係数(logP)を有し、第二の被検成分は約0〜約5の範囲のlogPを有し、そして第三の被検成分は約5より大きく、約6以下のlogPを有しており;
液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)システムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、LC−MSシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及びLC−MSの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液、及び質量分析計を準備し;
第一の被検成分をLC−MSシステムで精製及び分析し;
第二の被検成分をLC−MSシステムで精製及び分析し;そして
第三の被検成分をLC−MSシステムで精製及び分析する
ことを含む方法。
態様30 液体クロマトグラフィーシステムが、第一、第二、及び第三の被検成分を、各選択被検成分に特別な一つ又は複数の液体クロマトグラフィーシステムパラメーターを変えることによって精製するように構成されており、ここで液体クロマトグラフィーシステムパラメーターは、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様29に記載の方法。
態様31 第一及び第二の被検成分が、ビタミンD、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、タンパク質、ペプチドホルモン、ペプチド、細菌毒素、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様29に記載の方法。
態様32 ビタミンD、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、タンパク質、ペプチドホルモン、ペプチド、細菌毒素、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、及びそれらの代謝産物からなる群が約−1.2〜約6の範囲のlogPを有する、態様29に記載の方法。
態様33 関心被検成分をLC−MSによって精製及び分析するためのシステムであって、
液体クロマトグラフィーシステムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、液体クロマトグラフィーシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及び液体クロマトグラフィーシステムの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を含み、
ここで、液体クロマトグラフィーシステムは、ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せのそれぞれの精製及び溶離を、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、一つの水性移動相緩衝溶液、及び一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を用いて実行することができるシステム。
態様34 液体クロマトグラフィーシステムが、HPLC、UHPLC、HTLC、及びそれらの組合せからなる群から選ばれ、
システムはさらに、
液体クロマトグラフィーシステムから精製及び溶出された各被検成分に特異的な一つ又は複数の親イオン又はプロダクトイオンをイオン化、フラグメント化、及び検出することができる質量分析計を含み、
質量分析計は、シングル四重極型、トリプル四重極型、イオントラップ型、飛行時間型(TOF)、四重極−飛行時間型(Q−TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)、静電トラップ型、磁場セクター型及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様33に記載のシステム。
態様35 液体クロマトグラフィーシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、態様33に記載のシステム。
態様36 被検成分が約−1.2〜約6の範囲の対数分配係数(logP)を有する、態様33に記載のシステム。
態様37 複数のサンプルを管理するために構成されたサンプル管理装置と;
液体クロマトグラフィーシステム及び質量分析計のそれぞれに結合され、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、レンズ振幅、衝突ガス温度、衝突ガス圧、及びそれらの組合せの少なくとも一つを制御又は変化させるように構成された制御システムとをさらに含む、態様33に記載のシステム。
態様38 サンプル管理装置及び/又は制御システムと動作的に結合されたサンプル検出装置をさらに含み、サンプル検出装置は、
i.システムに入るサンプルの識別;
ii.システムに入るサンプル中の被検成分の識別;
iii.被検成分に基づいてアッセイプロトコルの選択;
iv.サンプル管理装置及び/又は制御システムに、サンプル中の被検成分の分析を開始するよう指示;
v.制御システムに、被検成分のために選択されたアッセイプロトコルに基づいて一つ又は複数の試薬を選択するよう指示;
vi.制御システムに、被検成分のために選択されたアッセイプロトコルに基づいて液体クロマトグラフィーの移動相条件を選択し、液体クロマトグラフィーシステムに被検成分を精製するよう指示;
vii.制御システムに、被検成分のために選択されたアッセイプロトコルに基づいて質量分析計の設定を選択し、質量分析計に選択された被検成分に関連する質量スペクトルデータを生み出すよう指示;又は
viii.制御システムに、被検成分の存在及び/又は濃度を同定するために、選択された被検成分に関連する質量スペクトルデータを分析するよう指示
の少なくとも一つを行うように構成されている、態様37に記載のシステム。
態様39 関心被検成分を液体クロマトグラフィー-質量分析(LC−MS)によって精製及び分析するためのキットであって、
少なくとも一つの分析用液体クロマトグラフィーカラムと;
液体クロマトグラフィーシステムを用いて複数の被検成分を精製するための試薬(試薬は、少なくとも一つの水性移動相緩衝溶液及び少なくとも一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を含む)と;そして
質量分析計を用いて複数の被検成分を分析するためのプロトコルと
を含み、
プロトコルは、約−1.2〜約6の範囲の分配係数(logP)を有する被検成分を、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、単一の水性移動相緩衝液、及び単一の実質的に非水性の移動相緩衝液を用いて精製及び分析するための説明書を含むキット。
態様40 プロトコルが、約−1.2〜約6の範囲のlogPを有する被検成分を、約−1.2〜約6のlogP範囲の各被検成分について診断品質基準が満たされるように精製及び分析するための説明書をさらに含む、態様39に記載のキット。
態様41 単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流に、それと流体連結して配置されるように構成された単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、態様39に記載のキット。
態様42 複数の被検成分の精製及び/又は質量分析を追跡するための少なくとも一つの品質管理基準をさらに含む、態様39に記載のキット。
態様43 一つの水性移動相緩衝溶液及び一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液がそれぞれアンモニウムイオン源を含む、態様39に記載のキット。
態様44 アンモニウムイオン源がギ酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムである、態様43に記載のキット。
態様45 複数の被検成分が、ビタミンD、ステロイドホルモン、タンパク質ホルモン、タンパク質、ペプチドホルモン、ペプチド、細菌毒素、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様39に記載のキット。
態様46 関心被検成分を精製及び分析するための装置であって、
液体クロマトグラフィーシステムの単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、液体クロマトグラフィーシステムの一つの水性移動相緩衝溶液、及び液体クロマトグラフィーシステムの一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液と、
ここで、液体クロマトグラフィーシステムは、約−1.2〜約6の対数分配係数(logP)範囲にわたる被検成分の精製及び溶出を、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラム、一つの水性移動相緩衝溶液、及び一つの実質的に非水性の移動相緩衝溶液を用いて実行することができ;
液体クロマトグラフィーシステムから精製及び溶出された各被検成分に特異的な一つ又は複数の親イオン又はプロダクトイオンをイオン化、フラグメント化、及び検出することができる質量分析計と;
複数のサンプルを管理するために構成されたサンプル管理装置と;そして
液体クロマトグラフィーシステム及び質量分析計のそれぞれに結合され、移動相緩衝液の流速、水性移動相緩衝溶液対非水性移動相緩衝溶液の比率、水性及び非水性移動相緩衝溶液のグラジエント変動比率、イオン化電圧、脱溶媒和温度、レンズ振幅、衝突ガス温度、衝突ガス圧、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも一つのLC−MSシステムパラメーターを制御又は変化させるように構成された制御システムと
を含む装置。
態様47 液体クロマトグラフィーシステムが、HPLC、UHPLC、HTLC、及びそれらの組合せからなる群から選ばれ、
質量分析計が、シングル四重極型、トリプル四重極型、イオントラップ型、飛行時間型(TOF)、四重極−飛行時間型(Q−TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)、静電トラップ型、磁場セクター型及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様46に記載の装置。
態様48 液体クロマトグラフィーシステムが、単一の分析用液体クロマトグラフィーカラムの上流にあって、それと流体連結されている単一のサンプル浄化用液体クロマトグラフィーカラムをさらに含む、態様46に記載の装置。
態様49 約−1.2〜約6のlogP範囲にわたる被検成分が、ビタミンD、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、化学療法薬、三環系抗うつ薬、アゾール系抗真菌薬、抗てんかん薬、抗レトロウィルス薬、オピエート及び/又はオピオイド、乱用薬物、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、それらの代謝産物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、態様46に記載の装置。
本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することもできる。記載された態様は、全ての点において単なる例示であって、制限ではないと見なされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味及び等価の範囲内に入るすべての変更は、本発明の範囲内に包含されるものとする。