(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062867
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】耐亀裂性で低放射性の浮設フィルムを備えた絶縁ガラスユニット
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20170106BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20170106BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20170106BHJP
E06B 3/67 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
C03C27/06 101K
B32B9/00 A
B32B7/02 106
E06B3/67 A
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-543180(P2013-543180)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-500223(P2014-500223A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】US2011060846
(87)【国際公開番号】WO2012082288
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】12/966,469
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513142024
【氏名又は名称】サウスウォール テクノロジーズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ロニー クラインヘンペル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリウス ジー.コザック
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ツェー.ティールシュ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ティー.ウィプフラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン エイチ.ストッセル
(72)【発明者】
【氏名】リー シー.ボーマン
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−223255(JP,A)
【文献】
実開平06−025332(JP,U)
【文献】
特開2009−234913(JP,A)
【文献】
特表2005−516818(JP,A)
【文献】
特表平04−504388(JP,A)
【文献】
特開昭56−092140(JP,A)
【文献】
特開昭63−183164(JP,A)
【文献】
特表平05−502487(JP,A)
【文献】
特開2011−242094(JP,A)
【文献】
特開2012−036076(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/140980(WO,A1)
【文献】
米国特許第05983593(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
B32B 9/00
B32B 7/02
E06B 3/66 − 3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて平行な関係で設けられた一対のガラスペインと、
フレームによって張力下で支持され、前記ガラスペインの間に間隔を隔てて平行な関係で設けられた少なくとも1の透明なポリマーシートであって、少なくとも1のポリマーシートの少なくとも1の表面が、誘電体層及び金属層の複合多層積層体の形態である実質的に透明なコーティングを有し、前記積層体が、ポリマーシートと接触した非晶質酸化インジウム誘電体層と、非晶質酸化インジウム誘電体層上に蒸着した最大15nmの厚みの酸化亜鉛シード層と、酸化亜鉛シード層に蒸着した少なくとも1の低放射金属層を含む前記ポリマーシートと
を備える、絶縁ガラスユニット。
【請求項2】
前記低放射金属層が、銀、並びに、ニッケル、パラジウム及び金のいずれか1又は2以上を最大25%含有する銀合金から選択された金属を含む、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項3】
前記酸化亜鉛シード層が5〜15nmの厚みを有する、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項4】
前記低放射金属層が、ニクロム、チタニウム、亜鉛アルミニウム合金又はニクロム窒化物で構成された、最大5nmの厚みのキャップ層を有する、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項5】
前記多層積層体が、酸化インジウム、酸化亜鉛インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛スズ、又はこれらの酸化物の混合物からなる少なくとも1の非晶質誘電体層をさらに含む、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項6】
前記ポリマーシートがポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項7】
2又は3以上の透明なポリマーシートが、前記ガラスペインの間に互いに間隔を隔てて平行な関係で、フレームによって張力下で支持されている、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項8】
前記複合多層積層体が、少なくとも1のポリマーシートの両表面をコーティングしている、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項9】
前記複合多層積層体が、最大15nmの厚みの複数の酸化亜鉛シード層のそれぞれに蒸着した複数の低放射金属層を含み、全ての金属層の累積厚みが最大60nmである、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項10】
前記フレームが2又は3以上のスペーサーを含み、前記フレーム及び前記スペーサーが、その周縁部において、各ガラスペイン及び少なくとも1の透明なポリマーシートと結合している、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項11】
前記低放射性金属層が少なくとも1の銀層を含み、前記複合多層積層体が前記銀層上に蒸着した酸化インジウム保護層をさらに含む、請求項1に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項12】
前記ポリマーシート上の前記非晶質酸化インジウム誘電体層が20〜80nmの厚みを有する、請求項11に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項13】
前記銀層が5〜60nmの厚みを有する、請求項11に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項14】
前記酸化インジウム保護層が20〜60nmの厚みを有する、請求項11に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項15】
前記積層体が、酸化亜鉛シード層、銀層及び酸化インジウム保護層の配列を1又は2以上含み、各酸化亜鉛シード層の厚みが最大15nmであり、全ての銀層の累積厚みの合計が最大60nmである、請求項11に記載の絶縁ガラスユニット。
【請求項16】
絶縁ガラスユニット内に張力下で浮設するための透明なポリマーシートであって、前記ポリマーシートの少なくとも1の表面が、誘電体層及び金属層の複合多層積層体の形態である実質的に透明なコーティングを有し、前記積層体が、ポリマーシートと接触した非晶質酸化インジウム誘電体層と、非晶質酸化インジウム誘電体層に蒸着した最大15nmの厚みの酸化亜鉛シード層と、酸化亜鉛誘電体シード層に蒸着した少なくとも1の低放射金属層を含む、前記ポリマーシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ガラスユニット(IGU:insulating glass unit)に関し、該IGUは、該IGU内において張力下で浮設されたフィルムのための低放射(Low−E)コーティング積層体を備え、コーティング積層体中に形成された赤外線反射性層の品質と、低放射コーティング積層体の亀裂又はひび割れに対する耐性の両方に重点が置かれている。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,335,166号(Lizardo等)には、フレームと、間隔を隔てて実質的に平行な一対のガラスペインの間に設けられた熱収縮性プラスチックシートを支持するスペーサーとを備え、一体ユニットを実現する絶縁ガラスユニット(IGU)が記載されている。アセンブリされたユニットが加熱されることにより、プラスチックシートが収縮し、ピンと張られてシワがなくなる。プラスチックシートは、赤外線反射性材料で片側又は両側がコーティングされていてもよいポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることができる。
【0003】
米国特許第4,799,745号(Meyer等)には、IGU(例えば、Lizardo等の上記特許に記載されたIGU等)において有用である、視覚的に透明な赤外線(IR)反射性の複合フィルムが記載されている。透明な支持体は、硬質又は非硬質であるが最低限の伸縮性を有する固体(例えば、ガラス及びPETを含む様々なポリマー)の中から選択することができる。支持体の1つの表面には、誘電体層及び金属層が交互に積層された積層体5又は7がスパッタリング蒸着されている。誘電体層は、屈折率が1.75〜2.25の無機金属又は半金属酸化物又は塩(例えば、酸化インジウム、酸化スズ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ビスマス、酸化クロム、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、又はそれらの混合物)で構成することができる。ポリマー誘電体についても開示されている。金属層は、銀、金、白金、パラジウム、アルミニウム、銅、ニッケル、又はそれらの合金(例えば、最大25%の金と合金された銀)で構成することができる。2つ又は3つの金属層の間に設けられたスペーサー誘導体層は、40〜200nm、好ましくは50〜110nm、特に70〜100nmの厚みを有する。積層体の外側の境界誘電体層は、20〜150nm、好ましくは25〜90nm、特に30〜70nmの厚みを有する(これらの厚みは、無機誘電体材料に関するものである。低屈折率を有するポリマー誘電体層は、それよりも若干厚いことが開示されている)。金属層の組み合わせられた合計の厚みは、12〜80nmであり、各金属層の厚みは、4〜40nm、好ましくは4〜17nm、特に5〜13nmであり、2つの金属層の積層部分の厚みは10〜12nmであり、3つの金属層の積層部分の厚みは5〜10nmである。
【0004】
様々なウインドウアセンブリは、一対のガラスペインの間に間隔を置いてシートが浮設されているのではなく、1つ又は2つ以上のガラス基体に直接ラミネート又は蒸着されたフィルムコーティングを有する。
【0005】
米国特許第6,503,636号(Le Masson等)には、熱放射を反射する少なくとも1つの銀層を含む積層体が設けられた透明なポリマー(例えば、ポリエステル)基体が記載されている。この積層体は、ストレスによる層剥離又は歪曲の発生を防止するように構成されている。特に、引張応力下でのAlN層の存在が、銀層に隣接する厚み15nm未満のZnO層において、圧縮応力を補い、その結果、フィルムはラミネートされているとき平坦となる。
【0006】
米国再発行特許第RE37,446号及び米国特許第5,532,062(ともにMiyazaki等)には、酸化物フィルム及び金属フィルムが交互に積層された積層体でコーティングされたガラス基体を含む低放射フィルムが記載されている。基体から最も離れた酸化物フィルムは、湿害による表面フィルムのその下側の金属層からの剥離、及びそれに続いて生じる濁り又はヘイズを防止するために、1.1×10
10dyne/cm
2以下の内部応力を有する。この内部応力の低減を実現するために、厚み20〜70nmの最も外側のZnOフィルムには、Si、B、Ti、Mg、Cr、Sn又はGaのうちの少なくとも1つが、Zn総含有量に対して合計で最大10原子%、好ましくは2〜6原子%ドープされている。それよりも基体に近いその他の酸化物層は、ZnO、SnO
2、ZnO−SnO
2多層、又は最も外側の酸化物層と同様のドープZnOから選択することができる。金属フィルム層の少なくとも1つは、Ag、又は主要成分がAgであり、Au、Cu及びPdのうちの少なくとも1つを含む合金で構成されるIR反射性層であることができる。
【0007】
酸化亜鉛は、銀成長のための周知のシード層である。ZnOシード層が厚くなるほど、シード上での銀のエピタキシャル成長が良好となる。この結果、所定の領域特異的量の銀に関して、銀の品質が向上し、それにより放射性が低下する。しかしながら、フィルム層が、ウインドウペインを直接コーティングしているのではなく、ウインドウペインの間に張力下で浮設されている場合、高結晶質酸化亜鉛の脆弱性が問題となる。フィルムの収縮又は緊張は、酸化亜鉛層に、ひび割れを生じさせ、多数の目に見える網目状の亀裂を形成させる傾向にある。過大な収縮(≧約1.0%)は、フィルムの亀裂の原因となる。しかしながら、過少な収縮(≦約0.5%)は、ウインドウ内のフィルムから反射された像の歪みとしても見える、フィルムのたるみ又はしわの原因となる。フィルムの熱膨張係数はガラスペインの熱膨張係数よりも高いため、張力の低いフィルムの歪みは、IGUが上昇した周囲温度に曝されたときに誇張される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、In
2O
3がシード層材料として使用されており、In
2O
3は非晶質又はガラス質構造は比較的高度であり、ひび割れが生じにくいので、このことは問題とならなかった。しかしながら、In
2O
3は、高品質(低放射性)の銀の蒸着のためのシードとして、あまり良好ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
張力下で浮設された被覆フィルムが最大厚み15nmのZnOシード層を有するIGUが提供される。ZnOは、薄いほど、ひび割れを生じることなく、張力を受けたフィルムの歪みに耐えることができる一方、依然として、高品質な銀の蒸着に十分なシードとしての役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1A及び1Bは、フレーム内に組み込まれた本発明の絶縁ガラスユニット(IGU)の2つの実施形態における角部の斜視図である。
図1AのIGUでは、1つのフィルムが浮設されている一方、
図1BのIGUでは、2つのフィルムが浮設されている。
【
図3】
図3は、
図1A及び1BのIGUの実施形態で使用可能な、本発明の被覆フィルムの第1実施形態の側断面図である。
【
図4】
図4A〜4Dは、張力下で浮設されたフィルムをIGUに取り付ける工程を示す、
図2に対応する側断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の被覆フィルムの第2実施形態の側断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の被覆フィルムの第3実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1Aを参照すると、IGU11は、オプションであるフレーム13内に組み込まれたものとして示される。IGU11それ自体は、一対のガラスペイン15及び17と、一対のスペーサー19及び21と、ペイン15及び17の間に浮設された被覆シート23とを備える。スペーサー19及び21は、ペイン15及び17とシート23とを、間隔を隔てて実質的に平行な関係で支持する。被覆シート23は、可視光を透過(transparent)するが、低放射コーティングによって赤外光(又は熱的な光(thermal light))は反射する。加えて、シート23は、所望の低放射特性を維持したまま、耐亀裂性の改良を実現する。
【0012】
別の実施形態が、
図1Bに示され、この実施形態において、IGU31は、一対のガラスペイン35及び37と、3つのスペーサー39〜41と、ペイン35及び37の間に浮設された一対の被覆シート43及び45とを備える。第1の実施形態と同様、スペーサー39〜41は、ペイン35及び37と一対のシート43及び45とを、互いに間隔を隔てて実質的に平行な関係で支持する。両シートは透明であり、張力下において耐亀裂性を有する。シート43及び45の少なくとも一方、好ましくは両方が、シート23の赤外光反射性、すなわち低放射特性を示す。
【0013】
同様に、IGU31は、オプションであるフレーム33内に組み込まれたものとして示される。フレーム13又は33は、本発明それ自体にとって不可欠な要素ではなく、一次的なIGU製造者からIGU11又は31を購入した二次的なウインドウ製造業者によって、例えば、彼らが消費者に直接販売するウインドウに装飾的な特徴を付与する目的で、設けられてもよい。
【0014】
図2を参照すると、
図1Aの断面図に示されるように、スペーサー19及び21は、ペイン15及び17並びにシート23(単数又は複数)のそれぞれの周縁部又は端部にのみ配置されている。ペイン15及び17並びにシート23は、ポリイソブチレン(PIB)接着剤等の接着性シール剤(図示しない)を使用してスペーサー19及び21と結合させることができる。二次シール剤25(例えば、ポリウレタン又はシリコーン)は、IGUの内部が水分から密閉されることを保証する。さらに、スペーサー19及び21は、乾燥剤材料で満たされてもよく、これにより、ペイン間に残存する水分を除去し、IGUの曇り(fogging)を防止することができる。
【0015】
図3を参照すると、シート23(同様に、
図1Bにおけるシート43及び45のうちの少なくとも1つ)は、視覚的に透明で赤外線反射性の複合フィルムであり、この複合フィルムにおいて、一連の層53〜59がポリマー基体51の表面にコーティングされている。特に、シート23は、誘電体層及び金属層53〜59の積層体でコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム51であることができる。アセンブリ後にフィルムに張力をかける(ピンと張る)ことを可能とする熱収縮特性を有する様々なPETフィルムが利用可能である。この基体は、典型的には、25〜125μm又はそれ以上の厚みを有する。
【0016】
ポリマー基体51に直接隣接する第1の層53は、非晶質誘電体(例えば、酸化インジウム(In
2O
3))であることができる。その厚みは、典型的には、約20〜80nmである。
【0017】
第2の層55は、酸化インジウム層53よりも高結晶質の誘電体で構成されるシード層であることができる。特に、本発明におけるシード層55は、最大15nm、典型的には5〜10nmの厚みの亜鉛系酸化物層である。亜鉛系酸化物層は、典型的には、様々な銀シード層、例えば、ZnO、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al最大量は約2%)(一般的にZAOとして知られている)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga最大量は約2%)(一般的にZGOとして知られている)、ZnO/SnO
2(Sn量は亜鉛及びスズの総量の1%〜10%)、及びZnO/In
2O
3(In量は亜鉛及びインジウムの総量の約10%)のいずれかから選択される。選択された亜鉛系酸化物材料は、セラミック又は金属ターゲットからスパッタリングすることができる。このZnO層55には、その薄さによって、張力を受けたシートの歪みに対して亀裂を生じることなく耐える能力が付与される。5nmという最小厚みは、ZnO層55の外表面が高品質な銀蒸着のために十分なシードとしての役割を果たすことができることを保証する。
【0018】
第3のコーティング層57は、赤外線反射性で低放射性の金属コーティングであり、このコーティングは、銀で、あるいはパラジウム、銅及び/又は金を含む銀合金で構成することができる。金属層57の厚みは、典型的には、5〜60nmであり、それによって、この層には十分な可視光透過性が付与される。
【0019】
極めて薄い(<5nm)キャップ層(図示しない)(例えば、ニクロム(NiCr)、Ti、ZAO又はニクロム窒化物(NiCrNx))は、外側の誘電体の蒸着の間に、銀品質を保つために、銀層上にコーティングすることができる。
【0020】
外側の誘電体層59は、金属層57上に形成される。この層は、酸化インジウムで構成することができ、その厚みは、典型的には、20〜50nmである。誘電体層53及び59のための酸化インジウムの選択は、非晶質特性に起因する耐亀裂性によって動機付けられる一方、酸化亜鉛は、低放射のための高品質な銀蒸着が保証されるように、シード層のために使用される。しかしながら、酸化亜鉛シード層は、ストレス下の亀裂に対する脆弱性を最小限化するのに十分な薄さに維持される。
【0021】
図4Aに示されるように、IGUのアセンブリは、接着性シール剤を使用して、ウインドウペイン17を複数のスペーサー21のうちの1つに結合させることにより開始される。同様に、ウインドウペイン15は、その他のスペーサー19と結合する。シート23は、スペーサー19及び21の両方と結合し、
図4Bに示される構造となるが、一般的には、全てのシワ23bが除去されるように十分にピンと張られない。
図4Cに示されるように、アセンブリされたユニットは、シート23のPET基体を収縮させる熱処理49に供される。これにより、シワ23bのいずれも除去され、
図4Dに示されるように、ペイン15及び17に対して、実質的に平行な関係で浮設された、ほぼ平坦なシート23の状態となる。プラスチックシートの収縮によりピンと張られてシワのない状態とするための、アセンブリされたユニットの加熱は、シート23に張力をかける1つの方法であり、その他の張力付与方法を使用することもできる。いずれの場合も、張力がかけられても、コーティング材料(例えば、酸化亜鉛シード層55)は、耐亀裂性である。
【0022】
図5を参照すると、別の実施形態において、浮設されたシートは、両表面がコーティングされたポリマー基体61を有する。
図3に示されるように、コーティングは、一般的に、厚みが通常20〜80nmの非晶質誘電体コーティング62及び63(例えば、In
2O
3)を有する両表面上で開始される。シード層64及び65は、厚みが最大15nmの薄いZnOで構成される。赤外線反射性金属層66及び67(典型的には銀又は銀合金で構成され、厚みが5〜60nmである)は、それぞれのシード層上に蒸着する。酸化亜鉛の使用により、高品質な銀蒸着が保証され、これにより、顕著な低放射性がシートに付与される。最後に、別の非晶質誘電体コーティング68及び69(例えば、20〜60nmのIn
2O
3)は、銀の保護コーティング外層としての役割を果たす。
【0023】
図6を参照すると、さらに別の実施形態において、浮設されたフィルムシートは、複数の赤外線反射性層77及び87を有する、厚みが増加した積層体を有する。例えば、PET基体71は、非晶質誘電体層、結晶質誘電体シード層、赤外線反射性金属層、及び非晶質誘電体層73〜79の第1のセットでコーティングされ、次いで、シード誘電体層85、赤外線反射性金属層87、及び非晶質誘電体外層89の別の配列によってコーティングされる。これは、IGUを通じて視覚的に十分に透明であるように全ての金属層の累積厚みが60nmを超えない限り、任意の回数繰り返すことができる。上記の通り、様々なシード層が酸化亜鉛であるとき、非晶質誘電体としてIn
2O
3を選択することができるが、十分な耐亀裂性のために、各シード層の厚みは15nmを超えない。
本開示は以下も包含する。
[1]
間隔を隔てて平行な関係で設けられた一対のガラスペインと、
フレームによって張力下で支持され、前記ガラスペインの間に間隔を隔てて平行な関係で設けられた少なくとも1の透明なポリマーシートであって、少なくとも1のポリマーシートの少なくとも1の表面が、誘電体層及び金属層の複合多層積層体の形態である実質的に透明なコーティングを有し、前記積層体が、最大15nmの厚みの酸化亜鉛シード層に蒸着した少なくとも1の低放射金属層を含む前記ポリマーシートと
を備える、絶縁ガラスユニット。
[2]
前記低放射金属層が、銀、並びに、ニッケル、パラジウム及び金のいずれか1又は2以上を最大25%含有する銀合金から選択された金属で構成される、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[3]
前記酸化亜鉛シード層が5〜15nmの厚みを有する、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[4]
前記低放射金属層が、ニクロム、チタニウム、亜鉛アルミニウム合金又はニクロム窒化物で構成された、最大5nmの厚みのキャップ層を有する、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[5]
前記多層積層体が、酸化インジウム、酸化亜鉛インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛スズ、又はこれらの酸化物の混合物からなる少なくとも1の非晶質誘電体層をさらに含む、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[6]
前記ポリマーシートがポリエチレンテレフタレートである、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[7]
2又は3以上の透明なポリマーシートが、前記ガラスペインの間に互いに間隔を隔てて平行な関係で、フレームによって張力下で支持されている、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[8]
前記複合多層積層体が、少なくとも1のポリマーシートの両表面をコーティングしている、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[9]
前記複合多層積層体が、最大15nmの厚みの各酸化亜鉛シード層に蒸着した複数の低放射金属層を含み、全ての金属層の累積厚みが最大60nmである、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[10]
前記フレームが2又は3以上のスペーサーを含み、前記フレーム及び前記スペーサーが、その周縁部において、各ガラスペイン及び少なくとも1の透明なポリマーシートと結合している、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[11]
誘電体層及び金属層の前記複合多層積層体が、前記ポリマーシート上の非晶質酸化インジウム誘電体層と、最大15nmの厚みの結晶質酸化亜鉛シード層と、前記酸化亜鉛シード層上で成長した少なくとも1の銀層と、前記銀層上に蒸着した酸化インジウム保護層とを含む、上記態様1に記載の絶縁ガラスユニット。
[12]
前記ポリマーシート上の前記非晶質酸化インジウム誘電体層が20〜80nmの厚みを有する、上記態様11に記載の絶縁ガラスユニット。
[13]
前記銀層が5〜60nmの厚みを有する、上記態様11に記載の絶縁ガラスユニット。
[14]
前記酸化インジウム保護層が20〜60nmの厚みを有する、上記態様11に記載の絶縁ガラスユニット。
[15]
前記積層体が、酸化亜鉛シード層、銀層及び酸化インジウム保護層の配列を1又は2以上含み、各酸化亜鉛シード層の厚みが最大15nmであり、全ての銀層の累積厚みの合計が最大60nmである、上記態様11に記載の絶縁ガラスユニット。
[16]
絶縁ガラスユニット内に張力下で浮設するための透明なポリマーシートであって、前記ポリマーシートの少なくとも1の表面が、誘電体層及び金属層の複合多層積層体の形態である実質的に透明なコーティングを有し、前記積層体が、最大15nmの厚みの酸化亜鉛誘電体シード層に蒸着した少なくとも1の低放射金属層を含む、前記ポリマーシート。