【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,中央アームによりコイル支持部を構成するE字状の磁気コアに基づくものである。磁石が,磁気コアの外側における第1アーム及び中央アームに亘って第1磁気回路を形成する第1位置から,磁気コアの外側における第2アーム及び中央アームに亘って第2磁気回路を形成する第2位置まで変位すると,磁気コアの中央アーム内における磁束方向が変化し,コイルの電気接点間に電圧を生じさせる。この電圧は電気的な装置,例えば無線スイッチにおける無線インターフェースの作動に利用することができる。磁石はスイッチ(例えば無線スイッチ)を作動させて再び変位させることができる。
【0007】
上述した原理に基づく発電機は,簡単な電気回路の作動に十分な電気エネルギを発生させるものであり,そのために必要とされる機械的エネルギが低レベルである。従って,本発明に係る発電機は効率が極めて高い。更に,本発明に係る発電機によれば,コイルコア及び磁石間の機械的分離領域における磁束密度を最適化することでき,磁気回路における磁束密度の分布を改善することができる。加えて,本発明に係る発電機の構造は,製造コストを削減可能とするものである。
【0008】
本発明は,無線スイッチ用の誘導発電機を提供するものであり,該誘導発電機は,
・第1脚部,該第1脚部に隣接して配置された第2脚部及びこれら両脚部を結合する結合領域を有するU字状の磁束転向素子と,
・磁束転向素子の両脚部間に配置され,かつ磁束転向素子の結合領域に結合されたコイルコアと,
・磁束転向素子の両脚部間におけるコイルコア上に配置された誘導コイルと,
・第1接点領域及び第2接点領域を有すると共に,第1位置及び第2位置間で可動に配置された磁石素子と,
を備え,
・該磁石素子は,第1位置において第1接点領域が第1脚部に接触すると共に第2接点領域がコイルコアに接触し,第2位置においては第1接点領域がコイルコアに接触すると共に第2接点領域が第2脚部に接触する。
【0009】
無線スイッチは,例えば自動車のキーや照明スイッチ用に使用することができる。本発明の誘導発電機は,無線スイッチの作動により必要な電気エネルギを供給し,これにより無線スイッチの作動に関する情報を,無線インターフェースを経て伝達するよう構成することが可能である。この場合の無線スイッチの使用分野は,単なる例示に過ぎない。原則として,本発明に係る誘導発電機は,機械的エネルギから電気エネルギへの変換が必要又は適切とされる箇所に使用することができる。磁束転向素子及びコイルコアは,高い導磁性を有する材料,特に強磁性材料から製造可能である。磁束転向素子は1個の素子,例えばU字状に曲げられたプレートとして構成することができる。磁束転向素子が複数個の素子で構成されている場合,これら素子を結合して磁束転向素子内における磁束が途切れないものとする。即ち,各素子が互いに隣接する構成とする。磁束転向素子における第1脚部の長手方向は,磁束転向素子における第2脚部の長手方向と同一とすることが可能である。従って,脚部の双方を互いに平行に配置することができる。磁束転向素子及びコイルコアは,同一平面上に配置してもよい。このコイルコアは,磁束転向素子と剛固に結合することができる。コイルコア及び磁束転向素子の間の結合は,高い導磁性を有するものとする。誘導コイルは,コイルコア周りにガイドされている巻回部を有する。その巻回部は,コイルコア及び磁束転向素子の脚部の間における空間を満たす。誘導コイルには,発生させた電圧を印加可能な電気接点を設けることができる。これら接点は,誘導発電機における電気的インターフェースを構成する。磁石素子は,永久磁石とするか又は永久磁石を含むものとする。永久磁石の代わりとして,必要な磁界を発生させる他の適切な素子を使用してもよい。磁石素子の接点領域は,磁石素子の互いに対向するエッジに配置された突出部を含むことが可能である。これら接点領域は,磁石素子における面とするか,又は磁石素子の磁極に配置された磁極片とすることができる。各磁極片は,強磁性物質で構成することが可能である。磁石素子の第1接点領域はS極を,第2接点領域はN極を構成することができる。この磁石素子は,適切なガイド手段により,第1位置及び第2位置間で変位可能とされている。この場合の変位は,線形とすることができる。コイルコア及び磁束転向素子の脚部には,磁石素子の接点領域用にストッパ面を設けることができる。誘導発電機が備える磁石素子は,操作部への機械的な結合部を有する。この操作部は,例えばスイッチとして構成する。磁石素子の第1位置では,磁石素子の第1接点領域が第1脚部に,また第2接点領域がコイルコアに結合している。ここに「結合」とは,磁石素子の接点領域が,対応する脚部及びコイルコアに対して直に接触するか,又は僅かしか離間していない状態を意味しており,この場合には接点領域と,対応する脚部及びコイルコアとの間における磁気抵抗が最小化される。磁石素子が第1位置を占める場合には,磁気抵抗の小さい第1磁気回路が形成される。第1磁気回路は,第1接点領域,磁束転向素子における第1脚部と結合領域の一部,コイルコア,及び第2接点領域を通過する。磁石素子の第2位置では,第2接点領域が第2脚部に,また第1接点領域がコイルコアに結合している。磁石素子が第2位置を占める場合には,磁気抵抗の小さい第2磁気回路が形成される。第2磁気回路は,第1接点領域,コイルコア,磁束転向素子における第2脚部と結合領域の一部及び第2接点領域を通過する。接点領域と各脚部及びコイルコアとの間において対応する各接点面は,形状を互いに適合させることが可能である。例えば,各接点面は平坦に形成することができる。有利には,磁石素子が第1位置から第2位置に変位した場合の磁束方向は,コイルコア内でのみ変化し,磁束転向素子内では不変とする。
【0010】
一実施形態において,磁石素子には,第1接点領域を構成する第1磁極片と,第2接点領域を構成する第2磁極片とを設けることができる。両磁極片の各遊端は,コイルコアの遊端及び両脚部の遊端と互いに重なり合う構成とすることが可能である。この場合,コイルコア及び脚部の遊端とは,結合領域に対向する側のコイルコア及び脚部の端部とすることができる。磁極片の各遊端は,磁石素子を構成する永久磁石を越えて延在させることが可能である。これにより,第1磁極片は,第1脚部及びコイルコアの間における中間スペース内に突入し,また第2磁極片は,第2脚部及びコイルコアの間における中間スペース内に突入する。各磁極片における遊端の長手方向は,各脚部及びコイルコアにおける遊端の長手方向と同一とすることができる。磁石素子及び脚部又はコイルコアの間における各接点面は,互いに重なり合うため,大面積を有することができる。これにより,接点面における磁束密度の最適化が可能となるため,接点面における磁束を望ましい値に調整できるだけでなく,磁石素子の変位により接点面が互いに容易に分離可能となる。
【0011】
磁石素子のS極及びN極を結ぶ線分は,コイルコアの長手方向に直交させることができる。この場合,例えばS極を第1脚部と対向する側に配置し,N極は第2脚部と対向する側に配置する。その結果,両磁極片は極めて単純な直線状とすることができる。これに加えて,両磁極片は少なくとも基本形状を同一とすることができる。これにより,軽量化及びコストダウンが可能となる。
【0012】
コイルコアは,誘導コイルを支持する支持部分と,第1及び第2接点領域に接触する接点部分とを有することができる。接点部分は,支持部分よりも大断面とすることができる。更に,接点部分は,互いに対向する2つの接点面を有することができる。誘導コイルの回旋部は,コイルコアの支持部分に沿って配置される。この支持部分の断面は僅かであるため,コイルコアの断面もやはり僅かとすることができる。これに対して,接点部分における断面は大きいため,磁石素子の接点領域における結合部の磁束密度は僅かである。このことにより,コイルコアから磁石素子の接点領域を分離することが容易になる。
【0013】
これに関連して,第1及び第2脚部は,誘導コイルの覆い部分と,第1及び第2接点領域に接触する接点部分とを有することができる。覆い部分は,接点部分よりも大断面とすることができる。覆い部分は,誘導コイルをその全長に亘って覆う構成とすることができる。覆い部分を接点部分よりも大断面とすることにより,覆い部分の幅を誘導コイルの幅と同一とすることが可能である。これに対して,接点部分は,磁石素子におけるより小さな幅の接点領域に合わせることができる。
【0014】
一実施形態において,結合領域には,コイルコアの端部を収める開口が設けられている。この場合にコイルコアは,その端部を開口に差し込むことにより磁束転向素子に結合可能である。
【0015】
本発明に係る誘導発電機は,磁石素子を第1位置と第2位置との間で変位させるための操作部を更に備えることができる。この操作部により,磁石素子を第1位置から第2位置まで変位させるのみならず,第2位置から第1位置まで変位させることができる。即ち,操作部の操作に伴い,磁石素子を第1位置から第2位置まで変位させ,又は第2位置から第1位置まで変位させることができる。この目的のために,操作部は適切な機構を有することができる。操作部は,手動操作可能としてもよい。
【0016】
更に,本発明は無線スイッチを提供するものであり,該無線スイッチは,
・スイッチ素子と,
・本発明の一実施形態に係る誘導発電機と,を備え,誘導発電機における磁石素子がスイッチ素子に結合され,該スイッチ素子の作動により磁石素子を第1位置から第2位置まで変位させるよう構成されており,更に,
・スイッチ素子の作動に関する情報をワイヤレス伝送するために,誘導発電機における誘導コイルの電気接点に接続する電気接点を有するトランスミッタを備える。
【0017】
上述のスイッチ素子は,手動又はセンサ等の作動装置で作動するスイッチに加えて,スイッチ素子を磁石素子に結合するための適切な機構を含むことができる。このため,スイッチ素子を切り替えることにより,磁石素子の変位が生じる。トランスミッタは,アンテナを含むと共に,誘導コイルで発生させた電圧の分析・評価,及び発生させた電圧に応じてアンテナを制御するための電子部品を含むことができる。このため,誘導コイルの電気接点は,アンテナ又電子部品の接点に接続可能である。
【0018】
更に,本発明は,誘導発電機を使用して電圧を発生させる電圧発生方法を提供するものである。本発明に係る電圧発生方法において使用する誘導発電機は,第1脚部,該第1脚部に隣接して配置されている第2脚部及びこれら両脚部を結合する結合領域を有するU字状の磁束転向素子と,磁束転向素子の両脚部間に配置され,かつ磁束転向素子の結合領域に結合されたコイルコアと,磁束転向素子の両第2脚部間におけるコイルコア上に配置された誘導コイルと,第1接点領域及び第2接点領域を有すると共に第1位置及び第2位置の間で可動に配置された磁石素子とを備え,該磁石素子は,第1位置において第1接点領域が第1脚部に接触すると共に第2接点領域がコイルコアに接触し,第2位置においては第1接点領域がコイルコアに接触すると共に第2接点領域が第2脚部に接触するよう構成されている。この場合において,本発明に係る電圧発生方法は,磁石素子を第1位置から第2位置まで変位させるステップを含むものである。
【0019】
更に本発明は,無線スイッチ用誘導発電機の製造方法を提供するものであり,該製造方法は,
・誘導コイルをコイルコア上に配置するステップと,
・第1脚部,該第1脚部に隣接する第2脚部,及びこれら両脚部を結合する結合領域を有するU字状の磁束転向素子を用意するステップと,
・コイルコアを磁束転向素子の結合領域に結合することにより,誘導コイルを第1及び第2脚部の間に配置するステップと,
・第1接点領域及び第2接点領域を有する磁石素子を用意するステップと,
・該磁石素子をコイルコア及び磁束転向素子の脚部に隣接して配置するステップと,
を含み,磁石素子を可動とし,第1位置において第1接点領域を第1脚部に接触させると共に第2接点領域をコイルコアに接触させ,第2位置においては第1接点領域をコイルコアに接触させると共に第2接点領域を第2脚部に接触させる。
【0020】
コイルコアは,磁束転向素子に摩擦力により,形状密着結合又は材料適合結合により結合することができ,例えば差し込み結合部を介して磁束転向素子に結合する。先にコイルコアを誘導コイルに結合しておくことにより,誘導発電機を極めて簡単かつ安価に構成することができる。