(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものである。本発明は、薬液、薬品等の曝露を防止する曝露防止カバー、これを備える曝露防止カバーモジュール、薬液供給システム、及び薬液供給方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の曝露防止カバーによれば、薬液容器を保持する保持部と、前記薬液容器の周囲を囲んで閉塞するためのカバー本体1、31と、前記カバー本体1、31を懸吊する懸吊部と、薬液容器の接続口と接続可能な接続部を備える曝露防止カバーであって、前記カバー本体1、31には、その一面に開口部1B、31Bを設けると共に、該開口部1B、31Bを閉塞する閉塞部が設けられている。これにより、カバー本体内に薬液容器を挿入後にカバー本体を閉塞することで、液滴の飛散をカバー本体内に封じ込め、また薬液容器をカバー本体で覆った状態のまま廃棄することができる。
【0008】
また、本発明の第2の曝露防止カバーによれば、前記カバー本体1、31を、透光性、ガスバリア性、防水性、光線遮断性の少なくともいずれか一を有する素材で構成することができる。上記構成により、カバー本体内に懸吊された薬液容器の視認性を確保し、前記薬液容器の接続口と接続部の接続作業をカバー本体の外からでも容易に行えるようにすると共に、酸素などの外部から薬液に与える影響を防ぎ、また、内部からの気化した薬液もしくは薬液そのものの通過を防ぐことで飛散を阻止し、使用者への曝露を回避できる。
【0009】
さらに、本発明の第3の曝露防止カバーによれば、前記閉塞部を、前記開口部1B、31Bを両面から押圧するクリップで構成することができる。上記構成により、クリップで容易に開口部を閉塞できる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の曝露防止カバーによれば、前記閉塞部を、前記開口部1B、31Bを閉塞可能なチャックで構成することができる。上記構成により、別部材を用いることなく開口部を閉塞できる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の曝露防止カバーによれば、前記カバー本体1、31の少なくとも一部分に吸水性を有する素材を組み合わせて構成することができる。上記構成により、薬液容器からの薬液の漏洩による溜まりを吸水することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の曝露防止カバーによれば、前記薬液容器を収納したカバー本体1、31を懸吊する前記懸吊部を、カバー本体1、31の上部に少なくとも一つ設けることができる。これにより、曝露防止カバーを点滴台に懸吊する際に安定させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の曝露防止カバーによれば、前記カバー本体31を、前記薬液容器を一つだけ収納可能な容積を備えて構成することができる。これにより、薬液容器が一つのとき薬液容器を一つ収納可能な前記カバー本体31が容積を備えることができる。これにより、多数の薬液容器に対しても使用することが出来る。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の曝露防止カバーによれば、前記保持部を、前記カバー本体31に収納される前記薬液容器から突出された接続口を挿入できる大きさで、かつ該接続口近傍の肩口を挿入できない大きさに開口された下保持部32とすることができる。これにより、薬液容器を下方から支持してカバー本体内に安定的に保持できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第9の曝露防止カバーによれば、前記保持部を、カバー本体1、31の内部で薬液容器に形成された吊り穴に係止して該薬液容器を懸吊可能な容器ホルダ2とすることができる。これにより、複数の薬液容器を吊り穴で懸吊して保持できる。
【0016】
さらにまた、本発明の第10の曝露防止カバーによれば、前記容器ホルダ2が、薬液容器に形成された吊り穴に挿入して該薬液容器を懸吊可能な上保持部2Dを備えており、前記上保持部2Dの上面を凹凸状に形成することができる。これにより、容器ホルダで薬液容器を懸吊した状態で保持し、薬液容器が曝露防止カバー内で位置ズレすることを回避できる。
【0017】
さらにまた、本発明の第11の曝露防止カバーによれば、前記接続部は、薬液容器の接続口に穿刺するための針体3、33と、前記針体3、33の周囲を囲む筒状であって、該針体3、33の高さよりも高く延長されてなる針カバー4、34を備えることができる。これにより、針体の周囲を針カバーで覆うことで、針体の先端が露出することを防止し、針体によってカバー本体を破損する事態を回避できる。
【0018】
さらにまた、本発明の第12の曝露防止カバーによれば、前記針体3、33は、薬液容器の接続口に該前記針体3、33を穿刺した後、該針体3、33が脱落するのを防止するための脱落防止構造を備えることができる。これにより、薬液容器の接続口に穿刺された針体が、薬液投与ラインの不用意な牽引等により脱落することを防止することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第13の曝露防止カバーによれば、前記針カバー4、34を、可撓性を有する素材で構成することができる。これにより、薬液容器の接続口を針体で穿刺する際、針カバーの内径に薬液容器の接続口が挿入できなくとも、針カバーを潰すようにして穿刺することが可能となる。
【0020】
さらにまた、本発明の第14の曝露防止カバーによれば、前記カバー本体1、31内において前記針体3、33及び前記針カバー4、34を封止する簡易仕切部38を設けることができる。これにより、簡易仕切部38を開封して曝露防止カバーを使用するまでは、針先及び針カバーは外気との接触を避けることができ、無菌状態を保つことができる。
【0021】
また、本発明に係る曝露防止カバーモジュールは、上述したいずれかに記載の曝露防止カバーと、前記曝露防止カバーの前記接続部に取り付けられ、液体の逆流を制限する逆流制限部材と、前記逆流制限部材を介して前記接続部に取り付けられる薬液排出ラインとを備えている。逆流制限部材とは、液体の逆流を防止できるものであれば、特には限定されないが、例えば、逆止弁、クリップ、点滴筒などを用いることができる。
【0022】
上記薬液排出ラインには、液体を注入可能な少なくとも一つのポートを設けることができる。例えば、フラッシュ用の液体を注入するポートや、他の曝露防止カバーモジュールの薬液排出ラインを接続するための連結用のポートを設けることができる。特に、連結用のポートを設けると、複数の薬液を一つのラインで供給することができ、装置を簡素化することができる。
【0023】
また、本発明に係る薬液供給システムは、上述した、いずれかに記載の曝露防止カバーと、前記曝露防止カバーに収容される少なくとも一つの薬液容器と、輸液が収容された輸液容器と、一端部が前記輸液容器に接続され、当該輸液容器から輸液を排出する輸液排出ラインと、一端部が前記曝露防止カバーの接続部に接続され、当該曝露防止カバーに収容されている薬液容器内の薬液を排出する薬液排出ラインと、前記薬液排出ラインの他端部と前記輸液排出ラインの他端部とを連結する連結部と、前記連結部に接続され、前記輸液排出ライン及び薬液排出ラインの少なくとも一方からの液体を排出する供給ラインと、前記各ラインの少なくとも1つにおいて、液体の流れを制御する制御部材と、を備えている。
【0024】
上記システムによれば、いずれかの制御部材を調整することで、薬液を排出するのに先立って、輸液容器から薬液排出ラインへ輸液を送ることができる。したがって、薬液排出ラインに残留する気体を曝露防止カバーへ排出することができる。すなわち、このとき、曝露防止カバー内では、接続部と薬液容器とが接続されていないため、気体は、カバー内へ収容される。なお、輸液とは、例えば生理食塩液、リンゲル液等の基礎輸液を用いることができる。
【0025】
上記システムでは、前記薬液排出ラインにおいて前記接続部との接続部分の近傍に取付けられ、輸液を当該薬液排出ラインに注入する輸液注入部材をさらに設けることができる。これにより、薬液排出ラインに残留する薬液を、輸液を注入することで押し出すことができるため、予定された量のすべての薬液を供給することができる。
【0026】
上記システムでは、前記薬液排出ラインに取付けられ、前記薬液容器側から流れる薬液は通過するが、空気が通過しない空気除去フィルターをさらに設けることができる。このような空気除去フィルターを設けると、輸液容器から薬液排出ラインへ輸液を送って、薬液排出ラインに残留する気体を排出する作業が不要となる。したがって、気体の排出作業を行うことなく、薬液を排出できるため、作業時間を短縮することができる。
【0027】
上記システムでは、上述した空気除去フィルターの代わりに次のような構成を設けることができる。すなわち、前記薬液排出ラインに取付けられ、前記薬液容器側から流れる薬液は通過するが、空気を外部に排出する空気排出フィルターと、前記空気排出フィルターから排出される空気を密封する空気収集容器と、をさらに設けることができる。このようにしても、薬液排出ラインに残留する気体を排出する作業が不要となる。また、空気排出フィルターから排出される空気は、薬液によって変質される場合があるため、空気収集容器に密封するように構成されている。
【0028】
上述したシステムには、複数の薬液を供給するための、追加モジュールをさらに設けることができる。この追加モジュールは、上述したいずれかに記載の少なくとも一つの曝露防止カバーと、前記各曝露防止カバーに一つずつ収容される薬液容器と、一端部が前記各曝露防止カバーの接続部に接続された追加薬液排出ラインと、を備えている。そして、追加薬液排出ラインの一つが、追加排出ラインとして、上述した薬液排出ラインに接続することができる。これにより、上述した薬液排出ラインと、この追加モジュールの追加薬液排出ラインとが直列的に接続されるため、一つの経路で、複数の薬液を供給することができる。
【0029】
追加モジュールには、複数の曝露防止カバーを設けることができ、複数の追加薬液排出ラインは、上述した追加排出ラインが先頭になるように直列的に接続することができる。このようにすると、追加モジュールに複数の薬液容器を収容することができ、且つそれらを直列的に接続して一つの経路で供給することができる。
【0030】
本発明に係る薬液供給方法は、薬液が収容され、当該薬液を排出可能な接続口を有する少なくとも1つの薬液容器を準備する、第1準備ステップと、薬液を排出可能な接続部を有する曝露防止カバーに、前記薬液容器を収容して密閉する、第2準備ステップと、前記接続部に、薬液ラインを接続する、第3準備ステップと、前記接続部を前記薬液容器の接続口に接続し、前記薬液容器の薬液を、前記接続部を介して前記薬液ラインへ排出する、排出ステップと、を備えている。
【0031】
また、上記薬液供給方法においては、輸液が収容された輸液容器を準備する、第4準備ステップと、前記輸液容器に、当該輸液容器から輸液を排出する輸液ラインを接続する、第5準備ステップと、前記薬液ラインと輸液ラインとを三股状に接続することで、前記輸液及び薬液の少なくとも一方を排出可能な供給ラインを形成するステップと、を備え、前記排出ステップに先立って、前記輸液容器から、供給ラインに向かって輸液を排出する第1プライミングステップと、前記輸液容器から、前記曝露防止カバーの接続部へ向かって輸液を流す第2プライミングステップと、さらに設けることができる。
【0032】
また、上記薬液供給方法においては、前記排出ステップの後に、前記薬液ラインにおける前記接続部の近傍から、輸液を供給し、前記薬液ラインへ排出するフラッシュステップをさらに設けることができる。
【0033】
上記薬液供給方法においては、複数の薬液を供給することができる。すなわち、前記第1準備ステップにおいて、複数の薬液容器を準備し、前記第2準備ステップにおいて、前記複数の薬液容器をそれぞれ前記曝露防止カバーに収容して密閉し、前記第3準備ステップにおいて、前記各曝露防止カバーの接続部に、前記薬液ラインをそれぞれ接続するとともに、当該複数の薬液ラインを直列的に接続し、前記排出ステップでは、前記各薬液容器から順に薬液を排出することができる。
【0034】
上記薬液供給方法においては、輸液が収容された輸液容器を準備する、第4準備ステップと、前記輸液容器に、当該輸液容器から輸液を排出する輸液ラインを接続する、第5準備ステップと、前記輸液ラインと先頭に配置された前記薬液ラインとを三股状に接続することで、前記輸液及び薬液の少なくとも一方を排出可能な供給ラインを形成するステップと、を備え、前記先頭の薬液ラインへ排出するステップに先立って、前記輸液容器から、供給ラインに向かって輸液を排出する第1プライミングステップを実行し、前記各薬液ラインへ排出するステップに先立って、前記輸液容器から、前記各曝露防止カバーの接続部へ向かって輸液を流す第2プライミングステップを実行することができる。
【0035】
上記薬液供給方法においては、前記排出ステップにおける前記各薬液容器からの薬液の排出の後それぞれに、前記各薬液ラインにおける前記接続部の近傍から、輸液を供給し、前記各薬液ラインへ排出するフラッシュステップをさらに設けることができる。
【0036】
上記第2準備ステップでは、前記曝露防止カバーに、複数の前記薬液容器を収容して密閉し、前記各薬液容器に対し、前記排出ステップを実行することができる。すなわち、一つの曝露防止カバーの中に、複数の薬液容器を収容して、薬液の供給を行うことができる。
【0037】
このとき、輸液が収容された輸液容器を準備する、第4準備ステップと、前記輸液容器に、当該輸液容器から輸液を排出する輸液ラインを接続する、第5準備ステップと、前記薬液ラインと輸液ラインとを三股状に接続することで、前記輸液及び薬液の少なくとも一方を排出可能な排出部を形成するステップと、を備え、前記先頭の薬液ラインへ排出するステップに先立って、前記輸液容器から、排出部に向かって輸液を排出する第1プライミングステップを実行し、前記各薬液容器から薬液を排出するステップの前にそれぞれ、前記輸液容器から、前記曝露防止カバーの接続部へ向かって輸液を流す第2プライミングステップを実行することができる。
【0038】
また、前記排出ステップにおける前記各薬液容器からの薬液の排出の後それぞれに、前記各薬液ラインにおける前記接続部の近傍から、輸液を供給し、前記各薬液ラインへ排出するフラッシュステップをさらに設けることができる。
【0039】
また、上記薬液供給方法においては、第2プライミングステップを実行する代わりに、次のように構成することができる。すなわち、輸液が収容された輸液容器を準備する、第4準備ステップと、前記輸液容器に、当該輸液容器から輸液を排出する輸液ラインを接続する、第5準備ステップと、前記薬液ラインと輸液ラインとを三股状に接続することで、前記輸液及び薬液の少なくとも一方を排出可能な供給ラインを形成するステップと、前記薬液排出ラインに、前記薬液容器側から流れる薬液は通過するが、空気が通過しないフィルターを取付けるステップと、をさらに備え、前記排出ステップに先立って、前記輸液容器から、前記供給ラインに向かって輸液を排出する第1プライミングステップ、をさらに備えることができる。
【0040】
このようにすると、第2プライミングステップが不要になり、第1プライミングステップ後、直ちに薬液を排出することができる。したがって、薬液の排出に要する作業時間を短縮することができる。このようなフィルターは、第2プライミングの代わりに、上述したすべての薬液供給方法に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための曝露防止カバーを例示するものであって、本発明の曝露防止カバーを以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
<1.第1実施形態>
(1−1 曝露防止カバーの構成)
【0043】
抗がん剤等の薬液が充填された容器を封入する第一実施形態に係る曝露防止カバーについて、
図1の外観斜視図により構成を説明する。まず、曝露防止カバーは、薬液容器の周囲を囲んで閉塞するためのカバー本体1を備えている。また、曝露防止カバーは、保持部および懸吊部として薬液容器を懸吊できるハンガー状の容器ホルダ2と、薬液容器の接続口へ穿刺しうる針体3と、鋭利な針体3の周囲を囲む筒状であって、該針体3の高さよりも高く延長されてなる針カバー4とを備えている。さらに、このカバー本体1は、薬液容器を挿入可能な開口部1Bを設けている。薬液容器は当該開口部1Bから挿入され、容器ホルダ2に懸吊された後、開口部1Bを閉塞部材(閉鎖部)でカバー本体1を閉塞する。
【0044】
(1−2 曝露防止カバーの製造方法)
カバー本体1は、容器ホルダ2と針体3の一部分を挟み込み、開口部1Bを残し、周縁を熱溶着することにより一体形成している。カバー本体の溶着に関しては、熱溶着に限るものではなく、接着剤等も利用可能である。図において熱溶着部分に関しては、認識しやすいように網目模様にて表記している。なお、図示はしないが、溶着部はカバー本体の端部とせず、端部から若干離間させた部位とすることで、カバー本体の端部を接着しないで残すこともできる。このようにすることで、カバー本体の端縁が溶着によって堅い状態となることを防ぎ、角部のエッジによって医療従事者の手などを当接する事態を回避することもできる。
【0045】
(1−3 カバー本体1)
この実施形態に係るカバー本体1の形状は、図に示すように全体を略長方形の形状としつつ、その右側上部に、突出部1Aを有している。この突出部1Aは、薬液容器を挿入する開口部1Bを、後述する閉塞部材にて閉塞するために設けている。この開口部1Bを、上述の通り突出部1Aの端縁に設けることで、カバー本体の端縁の全体でなく、カバー本体1の一部のみを部分的に閉塞しやすくできる。カバー本体は、開口部以外の周縁を、上述したように熱溶着で接合している。なお、カバー本体は、上記形状に限るものではなく、収容する薬液容器に合わせることができ、例えば、正方形、楕円形、台形等の形状とすることもできる。一方、カバー本体1は、
図10に示すように、針先及び針カバーの上部に容易に開封可能な簡易仕切部を設けることもできる。この簡易仕切部は、カバー内面同士を熱溶着によりイージーピールシールとして作成している。これにより、曝露防止カバーを使用するまでは、針先及び針カバーが外気との接触を避けることができ、無菌状態を保つことができる。
【0046】
上記カバー本体1の素材としては、透光性、ガスバリア性、防水性、光線遮断性の少なくともいずれか一つの機能を有するものであることが好ましい。透光性を有する素材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が利用できる。透光性を有することにより、後述するカバー本体1内における薬液容器の接続口と針体3の接続作業をカバー本体の外からでも容易に行うことができる。なお、薬液への品質影響を避けるため、特定の波長の光が透過しないよう、波長選択的な光線遮断性や、部分的または全体的な光線遮断性を備えた素材でカバー本体1を構成することもできる。このような素材としては、アルミラミネート、UV吸収剤を混合または塗布したもの、遮光インキ層を設けたもの等をあげることができる。またガスバリア性を有する素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアミドに無機物を蒸着させたもの、アルミ箔等を利用できる。特に、蒸着する金属を酸化アルミニウムやケイ素にすることで透光性も兼ね備えることができる。ガスバリア性を備えることによって、気化した薬液や薬液自体がカバー本体1の外部へ漏洩することを防止できる。また、防水性を有する素材としては、上記素材の他、ポリアミド(PA)等が使用できる。防水性を有することで、抗がん剤などの強い作用を生じさせる薬が使用者への曝露することを回避できる。また、カバー本体内側には滑りをよくして薬液容器が挿入しやすいよう、酸化ケイ素を混入した構成にしてもよい。なお、本カバー本体1の素材としては蒸気滅菌やγ線滅菌や電子線滅菌が可能であることが好ましい。
【0047】
(1−4 容器ホルダ2)
また、曝露防止カバーは、薬液容器を懸吊するための保持部として容器ホルダ2を備えており、また、容器ホルダ2は、曝露防止カバーを点滴台等に懸吊させる懸吊部を兼ねている。
図1に示す容器ホルダ2は、カバー本体1の内部にハンガー状の形状で薬液容器を懸吊可能な構成としている。曝露防止カバーは、カバーの内部にハンガー状の幅をもった支持体2Aを備えており、この支持体2Aは、
図1に示すようにその左側にU字型に湾曲された上保持部2Dを形成している。また、支持体2Aの右端部は、図の右側に示すように下方に直角に屈折させ、さらに一定の長さで支持体2Aに直交する形で手前に直角に突出させた係止部2Bを形成している。上保持部2Dは、長さを支持体2Aの上部の幅より若干長く形成し、上保持部2Dの右端が係止部2Bに係止できるようになっている。この上保持部2Dは、薬液容器を保持する保持部として機能する。さらに、係止部2Bの端縁には、上保持部2Dの係止が外れないように突出片2Cを上向きに形成している。上保持部2Dの長さを長くすることで、容器ホルダ2に複数の薬液容器を懸吊し保持することができる。さらにまた、上保持部が二箇所以上ある薬液容器を保持できるように上保持部2Dを二本以上とすることもできる。
【0048】
また上保持部2Dには、懸吊された薬液容器の位置ズレを防止する位置ズレ防止機構として、凹凸部を上面に形成している。これにより、薬液容器が上保持部2Dに複数懸吊した状態において、懸吊後の位置ズレを低減することができる。なおこの図に示す上保持部2Dは、凹凸部を波状としているが、これに限るものではなく、矩形状や三角状等とすることもできる。さらに、上保持部の形状に止まらず、材質を変更して当該防止機構を形成してもよい。例えば、滑り難い素材や表面加工により、薬液容器の位置ズレを防止する機構を持たせることができる。
【0049】
さらに、容器ホルダ2の支持体2Aは、容器ホルダ2をカバー本体1に固定するための固定部2Fを備える。
図1の例では、固定部2Fを支持体2Aと一体成型している。これにより、容器ホルダ2は、固定部2Fをカバー本体1間に熱溶着で固定することにより、曝露防止カバーの内部を後述する閉塞部材で密封状態にすることができる。
【0050】
さらにまた、容器ホルダ2の固定部2Fは、懸吊部として点滴台に懸吊可能なリング2Eを一体成型している。これにより、曝露防止カバーを、リング2Eにより点滴台に懸吊することができる。ただ、この例では容器ホルダ2を、リング2Eまで一体成型とした形状としているが、これに限るものではなく、点滴台に懸吊するリングを別部材として、リングがカバー本体1に固定された固定部2Fを挟み込む形状とし、後付けとすることもできる。さらにリングも、
図1の例では一個としているが、これに限定されるものではなく、二個以上とすることもできる。
【0051】
容器ホルダ2は、複数本の薬液容器を懸吊可能とする程度の強度を有するプラスチック素材とすることが好ましい。ただし、素材はプラスチックに限るものではなく、アルミニウム等の金属素材とすることもできる。
【0052】
(1−5 針体3)
次に、針カバー4付き針体3の構成を
図2の拡大斜視図により説明する。この針体3は、曝露防止カバー内に懸吊された薬液容器の接続口と接続可能な接続部である。針体3は、針先3A、突出管3B及びカバー本体1に固定される固定部3Cを備えている。この針先3Aは、カバー本体1の内部に配置されている。また針体3は、針先3Aの縦方向の中央部付近に針先口があり、その針先口から突出管3Bの下端部へ空洞を形成している。これにより、針体3は、抗がん剤等の薬液を通過させることができる。
【0053】
また、針体3は、針先3Aに脱落防止構造を設けることもできる。例えば、表面に凹凸を形成することもできるし、また、針体は針先の先端から一定の距離まで円錐形を形成させ、さらに針先の根本に向かって円筒形を細く形成させることもできる。このような脱落防止構造を針先に設けることにより、薬液容器の接続口に穿刺後、薬液ライン等の不用意な牽引による針先の脱落を防止することができる。
【0054】
この針体3は、薬液容器の接続口のゴム体等に穿刺する程度の強度を有するプラスチック素材としている。ただ、素材はプラスチックに限るものではなく、ステンレス等の金属素材とすることもできる。また、カバー部本体1の誤刺対策としてフレキシブルな針を用いることもできる。例えば、土台部分を舟型とし、土台部分と針先の間をチューブ等の弾性体で連結した構造とすることができる。
【0055】
(1−6 針カバー4)
また、上記針体3には、針先3Aの周囲を覆う形状で針カバー4を装着している。この針カバー4は、上方を開口した有底筒状の形状をなし、底面のほぼ中心が針先3Aの根元の部分で固定されている。また、針カバー4は、針先3Aの高さより高く形成されている。これにより、針体3の鋭利な先端がカバー本体1で覆われるため、この先端がカバー本体1に接触することを阻止し、先端がカバー本体1に刺さって破損することを防止できる。また、針体3周辺の無菌性を担保するため、針カバー4の上端を封止してカバー内部から隔離することもできる。
【0056】
ここで、針体3を薬液容器の接続口に穿刺する前の状態を
図3(a)として拡大断面図を示し、穿刺した状態を
図3(b)として拡大断面図を示している。ここで示す針カバー4は、外部からの力によって変形する柔軟性を備えている。このため針体3を薬液容器の接続口へ穿刺した際には、
図3(b)に示すように変形し、薬液容器10の接続口11と針先3Cとの間で押圧されて収縮する。これにより、使用前には針カバー4で針先3Aを覆いつつも、使用時には針カバー4を変形させることで、薬液容器10の接続口11への穿刺を妨げない。さらに、薬液容器10の接続口11から針先3Cを抜いた時点で、
図3(a)に示す状態のように針カバー4が延伸し使用前の状態となる。
【0057】
この針カバー4は、可撓性のあるシリコンゴム等の部材で形成している。ただし、針カバーを構成する材質及び針カバーの形状はこれに限らず、例えば筒状を蛇腹状とし縦方向への伸縮性を持たせたプラスチック等で形成することもできる。あるいは、円筒状に限らず角柱状としたり、また口径も長さ方向に沿って一定とせず、針体の先端に向かって幅広となるような形状も採用できる。
【0058】
(1−17 曝露防止カバーの閉塞方法)
次に、曝露防止カバー内に薬液容器を懸吊し開口部をクリップにて閉塞した状態の外観斜視図を
図4にて示す。薬液容器10は、カバー本体1の開口部1Bより挿入され、上保持部2Dに懸吊させる。この図の曝露防止カバーは、内部に薬液容器10を三本、上保持部2Dに懸吊し、上保持部2Dを係止部2Bに係止し固定させている。これにより、容器ホルダ2は、上保持部2Dにより三本の薬液容器を懸吊し、係止部2Bに係止させたことにより、薬液容器を安定的に保持することができる。
【0059】
また、この曝露防止カバーは、カバー本体1内部に薬液容器10を懸吊した後、カバー本体1の突出部1Aを閉じる閉塞部としてのクリップ5にて閉塞している。このクリップ5は、V型の形状をし、嵌合体5A、5Bと底辺の回転軸5C及び継合部5Dを備えている。このクリップ5は、突出部1Aを挟み込み、嵌合体5A、5Bを回転軸5Cで回転させ嵌合させている。さらに、クリップ5は、嵌合した状態で嵌合体5A側の継合部5Dが嵌合体5Bに係止することにより固定される。これにより、曝露防止カバーは、内部の薬液容器10を外部環境より隔離することができ、薬液による曝露被害を防ぐことができる。
【0060】
なお上記曝露防止カバーでは、突出部1Aを閉じる閉塞部としてクリップ5にて閉塞したが、これに限るものではない。例えば、チャックにて閉塞する状態の外観斜視図を
図5にて示す。この曝露防止カバーは、カバー本体1’の突出部1A’に、予め凹凸を嵌合させるチャック6を形成している。曝露防止カバーは、薬液容器10を開口部1B’より挿入し、上保持部2Dに懸吊した後に、閉塞部であるチャック6を閉じることにより密封することができる。これにより、クリップ5にて閉塞した場合と同様、内部の薬液容器10を外部環境より隔離することができ、薬液による曝露被害を防ぐことができ、さらに、クリップ5の分の部材を減らすことがきる。一方、カバー本体1’の突出部1A’を設けず、予めカバー本体1’の右側面側にチャックを設けておくこともできる。
【0061】
曝露防止カバーの一次使用例を示す模式図を
図6にて説明する。この例は、点滴台20に生理食塩水が充填された輸液容器21と薬液容器10A、10B、10Cが封入された曝露防止カバーを懸吊している状態を示している。使用の際には、薬液ライン24A、24B、24Cを三方活栓25に接続し、薬液ライン24Aの他端に針体23を、薬液ライン24Bの他端に針体3を、薬液ライン24Cの他端に穿刺針22を接続する。この後、輸液容器21に針体23を、薬液容器10Aに曝露防止カバーの針体3を穿刺する。この時点で三方活栓25を操作し、全ての薬液ライン24A、24B、24Cに輸液容器内21内部の生理食塩水を満たし気体を取り除く。その後、穿刺針22を人体へ穿刺し、さらに三方活栓25を操作して、薬液容器10A薬液の投与を行う。
【0062】
この使用例では、曝露防止カバーの内には、三種類の抗がん剤である薬液容器10が懸吊されている。この図は、三本の内の一本である第一薬液容器10Aの接続口11Aに針体3を穿刺している状態を示している。針体3は、第一薬液容器10Aの接続口11Aに針先3Aが穿刺された時点で、周囲の針カバー4が収縮している。これにより、第一薬液容器10Aの接続口11Aと針先3Aとは、針カバー4により密封した状態となり、薬液の漏洩を防ぐことができる。
【0063】
次に一次使用例の後に実施する曝露防止カバーの二次使用例を示す模式図を
図7にて説明する。この
図7に示す曝露防止カバーは、三方活栓を備えた針体3’を有しており、他の構成は上記
図6と同様であり、
図6と対応する部材には
図6と同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図7は、第一薬液容器10Aの点滴が終了した後に行われる例を示している。この曝露防止カバーのカバー本体1内において、第一薬液容器10Aの接続口11Aから針体3’を取り外し、次に第二薬液容器10Bの接続口11Bへ針体3’の針先3A’を穿刺した状態を示している。この図の第一薬液容器10Aの接続口11Aからは、針体3’を外した微細な穴から薬液が漏洩している状態を示している。この状態で、曝露防止カバーでは、漏洩した薬液がカバー本体1の内部に溜まり、カバー本体1により外部への漏洩を防ぐことができる。さらに、図示しないが、第二薬液容器10Bの投与終了後、針体3’を取り外し、第三薬液容器10Cの接続口11Cに針体3’の針先3A’を穿刺した際には、上記同様、第二薬液容器10Bの接続口11Bから漏洩があってもカバー本体1の内部に溜まり、外部への漏洩を防止することができる。
【0064】
本発明の実施の形態に係る曝露防止カバーは、全ての薬液容器の点滴が終了した時点で、薬液容器を封入した状態のままで、医療廃棄物として処理することができる。このため、薬液容器の廃棄時における医療従事者の曝露も避けることができる。
【0065】
(1−8 吸収材)
また本発明の曝露防止カバーの底部には、吸水シート等の吸水材を設けてもよい。一実施形態として、吸収材を設けた暴露防止カバーの外観斜視図を
図8にて示す。この曝露防止カバーのカバー本体1には、内部の底部に吸水シート7を設けている。この吸水シート7は、吸水紙、澱粉膜及びポリエチレン等による多層構造体で形成可能である。また、当該シートは透明であることが好ましいが、不透明であっても、曝露防止カバー内の目視を妨げない箇所に設けることで好適に使用できる。
図8のようにカバー本体1の底部に吸水シート7を設けることによって、不透明な吸水シートを使用する場合でも薬液容器全体としての透明性を確保することができる。このカバー本体1は、薬液容器10より漏洩した薬液の溜まりを吸水シート7により吸水することができる。さらに、医療廃棄物として排出時の取り扱い時に万が一カバー本体を損傷したとしても、薬液は吸水シート内に貯留しているため、薬液を外部に飛散させることを避けることができる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、別の実施形態として、抗がん剤等の薬液が充填された容器を封入する第二実施形態に係る曝露防止カバーについて、
図9の外観正面図により構成を説明する。この曝露防止カバーは、薬液容器を個別に収納できるように、仕切りを設けた複数のカバー本体31により構成している。なお、このカバー本体31は、上記第一実施形態と同様の材質等を使用することができることから、以下の説明を第二実施形態の特有な点に関してのみ行い、第一実施形態と共通の部材については詳細説明を省略する。
【0067】
(2−1 破断線39)
この図に示すカバー本体31は、3つの連結した形状の曝露防止カバーを表している。各カバー本体は薬液容器を1つのみ収納可能な大きさとしている。なお、連結される枚数は、3枚に限定されるものではなく、必要な薬液の量や種類等に応じてさらに複数のカバー本体31を連結させておくことができる。このような曝露防止カバーは、例えば複数を予め連結したシート状に構成すると共に、各連結部分において切り離しが可能な破断線39を形成しておき、使用される薬液容器の数に応じて破断線にて破断することにより、連結数を任意に調整することができる。例えば、一個の薬液容器を用いる場合には、カバー本体31を1枚のみ判断線39により切り離して利用することができる。
【0068】
(2−2 簡易仕切部38)
このカバー本体31は、
図9の網目模様で示す部分を熱溶着等で接合している。この底部には、針体33の一部を熱溶着している。さらに、カバー本体31内部には、針体33と一体化している針先33A及び針カバー34が封入されている。このカバー本体31は、針先33A及び針カバー34の上部に容易に開封可能な簡易仕切部38を設けている。この簡易仕切部38は、カバー内面同士を熱溶着によりイージーピールシールとして作成している。これにより、曝露防止カバーを使用するまでは、針先33A及び針カバー34を外気との接触を避けることができ、無菌状態を保つことができる。なお、この例では簡易仕切部38を、カバー本体同士を部分的に溶着して線状に形成しているが、別部材で面状に形成することもできる。さらに、図示しないが、上述の通り、溶着部をカバー本体の端部から離間させることで、エッジ部分が堅くなることを防ぎ医療従事者の作業性を妨げないようにすることもできる。
【0069】
また、カバー本体31には、点滴台への懸吊の際に利用される懸吊孔37を三個形成している。ただ、懸吊孔37の数は、これに限るものではない。さらにまた、懸吊孔37の下方には、薬液容器を挿入後、カバー本体31を閉塞させるための閉塞部としてチャック36を備えている。ただ、第一実施形態と同様、チャックではなくクリップ等を閉塞部として利用することもできる。なお、懸垂孔37には全薬液容器の重量を支持する必要があることから、懸垂孔37周辺部を補強することが好ましい。図示はしていないが、例えば、当該部分を構成するシート前後に別途シートを張り付けることで補強することができる。
【0070】
次に薬液容器を挿入した状態の曝露防止カバーについて、
図10の正面図に基づいて説明する。この図に示す曝露防止カバーは、
図9に示した3枚のカバー本体31のそれぞれに、薬液容器を各1個ずつ収納している。各カバー本体31は、薬液容器を保持する保持部として、下保持部32を備えている。ここでは、接続口の部分を突出させたボトル状の薬液容器を、下保持部32で下方から支持する。すなわち、図においてハッチングで示すようにカバー本体31を構成する2枚のシートを熱溶着して薬液容器の収納空間を形成する際、下方の熱溶着部分を幅広くし、中間から上方の熱溶着部分を狭くしている。言い換えると、薬液容器の収納空間は、下方が狭く、上方が広くなるように形成している。この狭くした薬液容器空間を下保持部32とする。下保持部32の開口幅は、薬液容器の接続口部分であれば挿入できるものの、薬液容器全体は肩口でつかえて挿入できない大きさとしている。これにより、薬液容器の接続口近傍の肩口の部分を、下保持部32で支持することができ、薬液容器をカバー本体31に保持できる。このような下保持部32は、カバー本体によって形成できるので、上述した上保持部のような別部材を必要とせず、安価に形成できる。また下保持部32は、容量が異なるサイズの薬液容器であっても、突出する接続口のサイズがほぼ一定であれば、薬液容器本体の肩口を保持できる。また、肩口と当接して支承する下保持部32の形状は、当接部分を傾斜させることで、様々なサイズの薬液容器を安定的に保持できる。ただ、当接部分を直線状としても保持可能であることはいうまでもない。
【0071】
一方、曝露防止カバーは、三連結されたカバー本体31のそれぞれの針体33に三方活栓40が接続されている。また、三方活栓40の下方には、中継チューブ41を備えている。この中継チューブ41の他端には、連結コネクタ42を備えている。この図では、三連結したカバー本体31のそれぞれの三方活栓40は、連結コネクタ42付き中継チューブ41を介して、隣の三方活栓40へ接続されている。またこの図の左端の連結コネクタ42は、図示はしていないが、メインの薬液ラインと接続されている。
【0072】
(2−3 薬液容器への接続)
次に、各連結コネクタ42を接続した後で、針体33の針先33Aと薬液容器50の接続口51を接続することにより、順次それぞれの薬液容器50の薬液を送出することができる。また針体33には、各薬液容器50への逆流を防ぐために、逆止弁を有することが好ましい。一方、三方活栓40及び連結コネクタ42には、誤った連結を防止するために、色分けを施している。
【0073】
次に、カバー本体31には、薬液容器50の接続口51周縁を外部から挟み込むことができる狭持孔35を2箇所に形成している。これにより、作業者が狭持孔35に指を挿入して、薬液容器50の接続口51周縁を指で挟み込むことができる。この結果、医療従事者は、指で固定した接続口51に、針体33をもう一方の手の指で挟み込み押し込むことにより、針先33Aの穿刺を確実に行うことができる。なお、この実施形態では狭持孔35の形状を菱形としているが、これに限るものではなく、指が挿入できる形状であれば長方形や楕円形等とすることもできる。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、一つの薬液容器に対して、一つのカバーを用いるため、薬液の曝露を効率的に防止することができる。例えば、
図1のカバーでは、薬液容器の数が増えたときに備えて、大きいカバーが必要となるが、上記のように一つの薬液容器に対して一つのカバーを用いると、この問題を解決することができる。
【0075】
(2−4 変形例)
また、狭持孔35を設けずに薬液容器50の接続口51周縁を指で挟むことのできる変形例のカバー本体31’を
図11に示す。このカバー本体31’には、上記カバー本体31と同様に、接続口51近傍の薬液容器50を保持する下保持部32’を2箇所に形成している。このカバー本体31’は、下保持部32’下方の外形を予め細く形成しておくことができる。これにより、カバー本体31’に収納された薬液容器の接続口周縁を外部より手で挟み込み狭持することができる。
【0076】
なお、第二実施形態におけるカバー本体31は上記に限られるものではなく、例えば、針先33Aおよび針カバー34をカバー本体外部に接続する形態や、カバー本体の上部を堅く、下部を柔らかくするように、下部の溶着部分をパウチ状とする形態を採用することによって、カバー本体を固定した状態を維持しつつ針体33Aと薬液容器の接続口51を接続することができ、操作性を向上させることができる。
【0077】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について、
図12を参照しつつ説明する。
図12は、本実施形態に係るカバーモジュールの正面図である。
【0078】
(3−1 カバーモジュール)
図12に示すように、本実施形態の曝露防止カバー40には、後述する逆止弁47及び中継チューブ46が取り付けられており、これらを含めたカバーモジュール4として使用される。曝露防止カバー40は、上部に開口を有するカバー本体41を備えており、この開口をスライド式のチャック42によって閉じることができるように構成されている。すなわち、チャックのスライド部材を移動させることで、開口が閉じるように構成されている。また、カバー本体41は、上部開口の径が大きく、下部411は収容される薬液容器の外形にフィットするような内径を有している。これにより、カバー本体41の上部開口から挿入された薬液容器は、カバー本体41の下部において固定され、薬液容器内の薬液の水面が水平に保持される。このようなカバー本体41の下部411の形態が、本発明の保持部に相当する。したがって、薬液の残量を正確に視認することができる。また、カバー本体41の上部には、懸吊孔43が形成されている。
【0079】
カバー本体41の下端部には、薬液容器の接続口が挿入される小径の挿入部412が設けられている。挿入部412は、カバー本体41の下方から突出するように筒状に形成されている。挿入部412には、第2実施形態で説明したのと同様の機能を有する、針体44及び針カバー45が設けられている。なお、針カバー45は、
図3のように針体の基端部側から上方に延びるように構成してもよいし、
図12に示すように挿入部412の上端から針体44を覆うように下方に延びるように構成することもできる。また、針体44には、後述するように、薬液容器10Aの接続口11Aに刺通されたときに、接続口11Aの内部に入り込んでいない基端部付近に、針体44の内部通路と連通する連通口(図示省略)が形成されている。この連通口は、カバー本体41の内部と連通するように構成されており、これによって、薬液容器10Aから薬液が排出されるときに、カバー本体41内の空気が上記連通口から針体44の内部を通って薬液容器10A内に流入するようになっている。その結果、薬液容器10Aから薬液が排出されやすくなる。
【0080】
そして、針体44には、逆止弁47を介して、中継チューブ46(薬液ライン、薬液排出ライン)が連結されている。逆止弁47としては、後述するプライミングを行うために、例えば、公知の逆流防止フロートタイプ一方弁を用いることができる。これにより、カバー本体41から中継チューブ46に対して、空気及び液体の流出は可能である一方、中継チューブ46からカバー本体41内へ空気の流入は可能であるが液体は流入しないようにすることができる。中継チューブ46の先端開口には、薄膜のカバー(図示省略)を有する接続アダプタ461が取り付けられており、このカバーが破られない限り、中継チューブ46内を流れる薬液が先端開口から流出するのを防止している。また、一旦取り付けられると外れないロック機構を取り付けることもできる。一方、中継チューブ46において、逆止弁47の近傍には、一対のポートが設けられている。逆止弁47に近い側に生理食塩水を注入するフラッシュ用ポート462が設けられ、逆止弁47から遠い側に他の曝露防止カバーの中継チューブ46を連結するための連結用ポート463が設けられている。
【0081】
後述するように、フラッシュ用ポート462には、生理食塩水を注入するためのシリンジ(輸液注入部材)が連結される。そして、このポート462の内部には、シリンジの先端がポート462に連結され、生理食塩水が注入されると、注入圧によって開く逆止弁が内蔵されている。一方、連結用ポート463の内部には、他の中継チューブを挿入することで開く逆止弁、及び中空の針体が内蔵されている。これにより、他の中継チューブの先端を連結ポートに挿入すると、カバーが破れ、他の中継チューブから連結用ポート463内へ薬液が注入されるようになっている。尚、連結用ポート463から薬液が注入される場合、逆止弁47の作用により、曝露防止カバー40への針体44からの薬液の流入は遮断される。これらフラッシュ用ポート462及び連結用ポート463は、使用前は蓋部材65によって閉じられており、蓋部材65を取り外して使用される。
【0082】
(3−2 輸液容器及び付属品)
次に、生理食塩水等の輸液が収容された輸液容器21について、
図13を参照しつつ説明する。
図13は、本実施形態に係る生理食塩水用の薬液容器及びその付属品の正面図である。ここで用いられる輸液容器21は、第1実施形態の
図6で示されたものとほぼ同じである。第1実施形態と相違する点は、
図13に示すように、三方活栓26(連結部)の構成であり、上述した中継チューブ46の先端の接続アダプタ461を取り付け可能になっている。すなわち、中継チューブ46を取り付けたときに、接続アダプタ461の薄膜のカバーを破ることができるように中空の針体(図示省略)が取り付けられている。
【0083】
(3−3 薬液の供給方法)
次に、上記のように構成された曝露防止カバー40を用いた薬液の供給方法について、
図14から
図18も参照しつつ説明する。まず、必要な数の薬液が収容された薬液容器10A,10Bと、これを収容するカバーモジュール4,5を準備する。そして、各薬液容器10A,10Bをカバーモジュール4,5の曝露防止カバー40,50に収容し、密閉する。各薬液容器10A,10Bは曝露防止カバー40,50の下部411,511に保持され、カバー内で液面が水平となるように固定される。このとき、曝露防止カバー40,50の針体44,54が、薬液容器10A,10Bの接続口11A,11Bに刺入しないように注意する。ここでは、2つの薬液容器10A,10Bを用いた例を示し、はじめに接続するカバーモジュールを第1カバーモジュール4、2つ目に接続するカバーモジュールを第2カバーモジュール5(追加モジュール)と称して説明を行う。
【0084】
まず、第1カバーモジュール4の薬液を供給する手順について説明する。はじめに、
図13に示す状態で、輸液容器21から輸液を排出し、上流側薬液ライン24A(輸液排出ライン)、三方活栓26、下流側薬液ライン24C(供給ライン)を介して穿刺針22から輸液を排出する。これにより、両薬液ライン24A,24C内の空気が取り除かれる(第1プライミング)。この状態で、穿刺針22を患者に穿刺する。次に、下流側薬液ライン24Cに第1クリップ27(制御部材)を取り付け、輸液の患者への投与を一時的に遮断する。なお、薬液の流れを遮断できるものであれば、クリップ以外を用いても構わない。続いて、
図14に示すように、三方活栓26に、第1カバーモジュール4の中継チューブ46を接続する。上述したように、三方活栓26には針体が設けられているため、中継チューブ46の先端を接続すると、接続アダプタ461のカバーが破られ、三方活栓26と中継チューブ46が連通する。これにより、輸液容器から輸液が中継チューブ46に流入する。その結果、中継チューブ46内の気体は、輸液により曝露防止カバー40側へ押し出され、逆止弁47を介して、カバー本体41内へ流れ込む。但し、逆止弁47により輸液がカバー本体41内へ流入するのは防止される。こうして、中継チューブ46は、輸液によって満たされ、気体が取り除かれる(第2プライミング)。
【0085】
次に、輸液容器21と接続されている上流側薬液ライン24Aに第2クリップ28(制御部材)を取り付け、輸液の流通を遮断する。つまり、輸液容器21から三方活栓26への生理食塩水の流れを遮断する。続いて、曝露防止カバー40においては、針体44を薬液容器10Aの接続口11Aに差し込み中継チューブ46内に薬液が流れるようにする。この状態で、第1クリップ27を取り外すと、薬液が中継チューブ46、三方活栓26、下流側薬液ライン24Cを介して患者に投与される。
【0086】
こうして、薬液容器10A内の薬液の残量がゼロになると、
図15に示すように、中継チューブ46に設けられたフラッシュ用ポート462のカバー65を取り外し、生理食塩水が注入されたシリンジ100を取り付ける。そして、シリンジ100のピストンを押し込み、生理食塩水をフラッシュ用ポート462から中継チューブ46内に注入する。この生理食塩水は、逆止弁47によって曝露防止カバー40内へは流入せず、三方活栓26側に流れる。これにより、中継チューブ46内に残留していた薬液が生理食塩水によって押し出され、患者に投与される(フラッシュ)。こうして、生理食塩水の注入が完了すると、シリンジ100を取り外す。
【0087】
次に、第2カバーモジュール5の薬液を供給する。まず、第1クリップ27により下流側薬液ライン24Cを遮断する。続いて、
図16に示すように、第2カバーモジュール5の中継チューブ(追加薬液排出ライン、追加排出ライン)56を、第1カバーモジュール4の中継チューブ46の連結用ポート463に接続する。これにより、両カバーモジュール4,5の中継チューブ46,56が連通する。この状態で、第2クリップ28を取り外し、輸液容器21から輸液を排出する。この輸液は、三方活栓26から、第1カバーモジュール4の中継チューブ46を介して、第2カバーモジュール5の中継チューブ56に流れ込む。これにより、この中継チューブ56内の気体が曝露防止カバー50内に押し出される(第2プライミング)。こうして、中継チューブ56から気体が取り除かれると、第2クリップ28を閉じ、第2カバーモジュール5において、針体44を薬液容器10Bの接続口11Bに刺入する。続いて、第1クリップ27を取り外すと、薬液容器10Bから排出された薬液が、2つの中継チューブ46,56、三方活栓26、及び下流側薬液ライン24Cを介して、患者に投与される。
【0088】
こうして、薬液容器内の薬液がゼロになると、第1カバーモジュール4において行ったのと同様に、
図17に示すように、シリンジ100を第2カバーモジュール5のフラッシュ用ポート562に取り付け、生理食塩水を中継チューブ56に注入する。これにより、中継チューブ56内に残留する薬液を押し出して、患者に投与する。最後に、
図18に示すように、第1及び第2クリップ27,28を取り外し、輸液容器21内の輸液をすべて患者に投与する。こうして、薬液の投与がすべて完了すると、穿刺針22を患者から取り外す。その後、輸液容器21とその付属品24A,26,24C、第1及び第2カバーモジュール4,5をすべて廃棄する。
【0089】
以上のように、本実施形態によれば、第1及び第2実施形態と同様に、薬液の曝露を防止しつつ、複数の薬液の投与が可能である。また、複数の薬液を投与する場合に、複数のカバーモジュール4,5を準備し、中継チューブ46,56を直列的に接続することで、それぞれのカバーモジュール4,5から個別の薬液を投与する必要がなく、一つの経路を用いて薬液を投与することができる。また、この経路を用いてプライミングも行うことができる。さらに、中継チューブ46,56にフラッシュ用ポート462,562を設け、生理食塩水を注入することで、予定されていた量の薬液をすべて患者に投与することが可能となる。したがって、正確な量の薬液の投与が可能となる。
【0090】
(3−4 変形例)
この実施形態では、2つのカバーモジュールを用いたが、その数は特には限定されない。また、中継チューブ、逆止弁の構成は特には限定されず、公知のものを適宜使用可能である。3以上のカバーモジュールを用いる場合には、それぞれの中継チューブを直列的に接続する。すなわち、上述したように、一方の中継チューブの先端部を、他方の中継チューブの基端部、つまり暴露防止カバーの近傍の連結用ポートに接続し、すべての薬液容器の薬液が、1つの経路を通過して三方活栓に流れるようにする。
【0091】
上記カバーモジュールでは、逆止弁47を設けているが、これに限定されるものではなく、薬液容器10Aから中継チューブ46に排出される薬液が、曝露防止カバー41側に逆流しないようにするための逆流防止部材が設けられていればよい。このような逆流防止部材としては、クリップ、点滴筒などを例示することができる。なお、プライミング時に輸液を中継チューブ46に供給すると、曝露防止カバー41側に空気が移動するが、この空気を中継チューブ46から除去するには、例えば、目視で液体が逆流するのを防止しながら、クリップを開閉することで、空気のみを曝露防止カバー41内に入れることが可能となる。また、点滴筒を用いると、点滴筒内に空気を溜めることができる。
【0092】
また、上記実施形態では、各ライン24A,24C,46,56において液体の流れを制御する制御部材27、28として、クリップを用いているが、これに限定されるものではない。例えば、ローラークランプのようなラインを押圧して液体の流れを遮断するもののほか、機械的、電気的な弁機構などで液体の流れを制御するようにすることもできる。
【0093】
ここで、
図12とは異なるカバーモジュールの例を
図19に示す。この例では、逆流防止部材80として点滴筒を採用し、制御部材81として、ローラークランプを採用しており、カバー41側からこの順で中継チューブ46に取り付けられている。また、ローラークランプ81の下流側には、フラッシュ用ポートと連結用ポートとを兼ねたポート480が、取り付けられている。さらに、針体44としては、エア導入部441を備えた公知の2穴針が採用され、薬液容器10Aが硬質ボトルの場合にも対応できるようになっている。エア導入部441には、疎水フィルタと逆止弁が設けられ、薬液が外部に漏洩しないようになっている。そして、針体44には、チューブ状の針カバー45が設けられている。このカバーモジュールの使用方法も、上記各実施形態と基本的に変わらない。但し、異なる点は、第1および第2プライミングの際に、目視で中継チューブ46内の気体が取り除かれるのを確認してローラークランプ81を操作する点、フラッシュ用ポートと連結用ポートとが兼用であるため、フラッシュ操作が終わってシリンジを取り外した同じポート480に第2カバーモジュール50の中継チューブ56を連結するようにした点である。
【0094】
また、上記第3実施形態では、輸液容器21から中継チューブ46に輸液を供給することで中継チューブ46のプライミングを行っているが、例えば、
図20に示すように構成することができる。この例では、中継チューブ46の下流側に空気排出フィルター200を設けている。このような空気排出フィルター200としては、液体を通過させる一方、空気を外部に排出するように構成された公知のフィルターを用いることができる。空気排出フィルター200は、種々の構成にすることができるが、例えば、
図20の拡大図に示すように、フィルター200内の流路201に親水性膜202と疎水性膜203とを設けることができる。親水性膜202は、中継チューブ46の上流側と下流側とを仕切っており、疎水性膜203は、フィルター200内の流路201と外部とを仕切っている。これにより、液体は、親水性膜202を通って中継チューブ46の下流側に流れ、気体は疎水性膜203を通って外部に排出される。これにより、プライミグを行うことなく、空気が中継チューブ46から薬液ライン24Cに排出されないようにすることができる。さらに、薬液がなくなると流れが止まるとともに、親水性膜202により液体の流れがゆっくりになる。また、この空気排出フィルター200は、袋などの容器(空気収集容器)300で密封される。すなわち、疎水性膜203から排出された空気は薬液によって変質されているおそれがあるため、これが曝露しないように容器300内に密封する。
【0095】
このような空気排出フィルター200を用いる代わりに、単純に、空気が通過しないような公知の空気除去フィルターを中継チューブ46に設けることもできる。このフィルターは、液体のみを通し、空気は通さないため、空気はフィルターの上流側に留まることになる。
【0096】
第3実施形態で用いる暴露防止カバーの構成は、特には限定されず、第1または第2実施形態で用いたものを利用することもできる。その他の構成についても、第1〜第3実施形態の構成を適宜組み合わせることができる。そして、例えばチャック42をカバー本体41の側部に設ける等の設計変更も、ニーズに応じて適宜採用することができる。
【0097】
また、上記各実施形態では、抗がん剤等の医療用の薬液を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は曝露を防止すべき薬液全般に適用することができる。