特許第6062874号(P6062874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062874
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/648 20060101AFI20170106BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   H01R13/648
   H05K9/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-25920(P2014-25920)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-153591(P2015-153591A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年3月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草牧 治樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】楯 拓也
(72)【発明者】
【氏名】内田 善己
(72)【発明者】
【氏名】中本 純平
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福本 康治
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−264040(JP,A)
【文献】 特開2013−222876(JP,A)
【文献】 特開2013−176279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648 −13/6599
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド材で少なくとも一部が覆われた電線が接続される端子と、
端子を収容するハウジングと、
ハウジングに固定され、シールド材を保持するシールドブラケットと、
を有する端子台において、
シールドブラケットは、
二つ折りに折り曲げられており、その間にシールド材の端部が挟み込まれている断面U字状の折り曲げ部と、
折り曲げ部の折れ線に形成されており、シールド材の端部を挟み込む部分を残して、折れ線を含むU字状の湾曲部を切り欠く切欠穴と、
を備えていることを特徴とする端子台。
【請求項2】
請求項1に記載の端子台において、
折り曲げ部の折れ線には、前記切欠穴が所定の間隔を空けて複数形成されている、
ことを特徴とする端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド材を有する電線が接続される端子台に関し、特に、端子台がシールド材を保持する構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用の高圧配線として、少なくとも一部が編組線等のシールド材で覆われた電線が用いられている。そして、この電線の端部を機器の端子台に接続する技術が、下記特許文献1,2に開示されている。
【0003】
下記特許文献1には、編組線により外周が覆われた電線が接続される端子と、端子を収容するハウジングとを有する電気機器の端子台が記載されている。編組線の端部は、ハウジングに固定される筒状部材の外周面を覆うように配置される。そして、編組線の端部がその外周側からリング状の固定部材により締め付けられ、編組線が筒状部材に保持される。
【0004】
下記特許文献2には、車両のモータジェネレータとインバータとを接続する、シールド部に覆われた電線が、ハウジング内の端子に接続される構造が開示されている。シールド部の端部は、ハウジングに固定される2つの部材、すなわち内側筒部材と外側筒部材に挟まれて保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−344398号公報
【特許文献2】特開2012−135167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においてシールド材付き電線を端子に接続する場合、上記2つの特許文献に開示されるように、シールド材の端部が2つの部材で挟まれて保持され、それらの部材の少なくとも一方をハウジングに固定している。このように、シールド材の保持構造には2つの部材が用いられていたが、この構造よりも部品点数を削減し、作業効率を向上させたいという要求がある。
【0007】
部品点数の削減の観点から、シールド材の保持に使用される部材を、ハウジングに固定されるシールドブラケットの1部材とし、このシールドブラケットを折り曲げて、その間にシールド材の端部を挟んでかしめることにより、シールド材を保持する構造が考えられる。しかしながら、単に、シールドブラケットを折り曲げただけでは、曲げ加工後にスプリングバックが生じ、かしめが緩んでしまうので、シールド材を確実に保持することができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、シールド材を有する電線が接続される端子台において、端子台に固定される1つの部材を折り曲げて、その間にシールド材の端部を挟んでかしめることにより、シールド材を確実に保持することができる端子台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シールド材で少なくとも一部が覆われた電線が接続される端子と、端子を収容するハウジングと、ハウジングに固定され、シールド材を保持するシールドブラケットと、を有する端子台において、シールドブラケットは、二つ折りに折り曲げられており、その間にシールド材の端部が挟み込まれている断面U字状の折り曲げ部と、折り曲げ部の折れ線に形成されており、シールド材の端部を挟み込む部分を残して、折れ線を含むU字状の湾曲部を切り欠く切欠穴と、を備えていることを特徴とする。

【0010】
また、折り曲げ部の折れ線には、前記切欠穴が所定の間隔を空けて複数形成されていることが好適である。

【発明の効果】
【0011】
本発明のシールド材を有する電線が接続される端子台によれば、端子台に固定される1つの部材を折り曲げて、その間にシールド材の端部を挟んでかしめることにより、シールド材を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る端子台の構成を示す図である。
図2図1のA−A線による端子台の断面図である。
図3図1のB−B線による端子台の断面図である。
図4】電線に取り付ける前のシールド材を示す図である。
図5図4のC方向から見た図である。
図6】電線の外周に覆うシールド材の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る端子台の実施形態について、図1−3を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る端子台の構成を示す図であり、図2は、図1のA−A線による端子台の断面図であり、図3は、図1のB−B線による端子台の断面図である。なお、図2においては、シールド材の描写を省略している。
【0014】
端子台10は、シールド材12で覆われた電線14が接続される端子16と、端子16を収容するハウジング18と、ハウジング18に固定され、シールド材12を保持するシールドブラケット20とを有する。
【0015】
端子台10は、車両に搭載される電気機器に設けられる。本実施形態の電気機器はインバータ(図示せず)であり、電線14はインバータと回転電機(図示せず)を接続する高圧配線である。
【0016】
本実施形態の車両ではインバータと回転電機が2組搭載され、電線14が、2組のU相、V相、W相の電線、すなわち計6本の電線を含む。しかし、本発明は電線14の数6本に限定されず、電線14が少なくとも1本の電線を含んでいればよい。
【0017】
電線14は、導体の周囲を、絶縁性の樹脂によって覆われた部材である。本実施形態では、図2に示されるように、電線14は断面円形である。なお、絶縁性の樹脂は、シールドブラケット20内で終端しており、圧着端子24に接続されるのは絶縁性の樹脂が除去された電線14である。しかし、本発明はこの構成に限定されず、電線14が断面矩形であってもよい。また、電線14は、これの先端に圧着された圧着端子24を有し、この圧着端子24がハウジング18内の端子16に電気的及び機械的に接続される。なお、電線14と端子16との接続構造は、この構成に限定されず、オス端子とメス端子との挿入接続によって構成されてもよい。
【0018】
シールド材12は、柔軟な導電性のシート状の部材によって構成される。本実施形態のシールド材12は、銅、ステンレス、アルミニウム等で形成された細金属線を、シート状に編むことにより形成された部材であり、いわゆる編組線である。シールド材12は、6本の電線14の全体の外周を覆っており、シールドブラケット20を介してアース接続されることで、電線14と外部との間を電磁的に遮断できるようになっている。なお、本実施形態では、シールド材12が電線14の外周を覆うように構成される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、シールド材12により電磁的な遮断の効果が発揮されるのであれば、シールド材12が電線14の外周の少なくとも一部を覆うように構成されてもよい。また、この例において、端子台10に接続される電線14は、6本の電線が一列に並んでいるが、複数列でもよい。さらに、シールドブラケット20は、上面、下面が平板状であることが好ましく、従って電線14も、シールド材12がシールドブラケット20と接続される部分では、上面、下面が平面状であることが好ましいが、それ以外の部分では、円筒状でも構わず、また複数の電線に分割されていてもよい。
【0019】
ハウジング18は、インバータの筺体にねじ止等で固定される。ハウジング18は、銅、ステンレス、アルミニウム等の導電性部材により形成され、アース用導電路を介して、車体等にアース接続される。ハウジング18には、この内部に設けられた端子16と、電線14の圧着端子24とを工具を用いて接続するための作業穴26が形成されている。また、ハウジング18には、ボルト28とナット30を用いてシールドブラケット20を固定するための固定部32が、電線14がハウジング18から露出する方向へと突出するように設けられる。
【0020】
本実施形態のシールドブラケット20は、折り曲げられ、その間にシールド材12の端部12aを挟み込んで保持する折り曲げ部36を有し、折り曲げ部36には、その一部を切り欠く切欠穴38が形成されている。
【0021】
このように、シールドブラケット20の折り曲げ部36の間にシールド材12の端部12aを挟み込むことにより、1つの部材のみでシールド材12を保持することができる。そして、折り曲げ部36に切欠穴38が形成されることにより、折り曲げ部36の剛性が低下し、折り曲げ部36を成形する曲げ加工後に生じるスプリングバックを抑制させることができる。その結果、曲げ加工後における、シールド材12に対するかしめの緩みが抑制されるので、シールド材を確実に保持することができる。
【0022】
シールド材12の保持構造について、図4−6を用いて具体的に説明する。図4は、電線14に取り付ける前のシールド材12を示す図であり、図5は、図4のC方向から見た図であり、図の中央部から図5における反時計回りに折り曲げて断面略長方形状とされる。図6は、電線14の外周に覆うように折り曲げた後のシールド材12の状態を示す図である。本実施形態の端子台10においては、シールド材12で電線14が覆われる前に、各電線14は、圧着端子24を介して、予め端子16に接続されている。
【0023】
シールド材12は、図4に示されるように、シート状であり、電線14の外周を覆うのに十分な幅を有する。シールド材12の端部12aには、2つのシールドブラケット20が所定の間隔を空けて取り付けられる。
【0024】
2つのシールドブラケット20は、図5に示されるように、中央が窪んで形成され、互いに対向するよう重ねることで、図6に示されるように、中央に電線14が貫通可能な筒状の空間を有するように形成される。また、各シールドブラケット20の幅方向の両端には、ボルト28・ナット30を介してハウジング18の固定部32に固定されるフランジ20aが形成される。
【0025】
また、シールドブラケット20は、折れ線34に沿って断面U字状に折り曲げられた折り曲げ部36を有する(図3参照)。そして、図4に示されるように、折り曲げ部36の折れ線34に切欠穴38が3箇所、所定の間隔を空けて形成される。
【0026】
シールド材12は、これの端部12aがシールブラケット20に挟まれて保持される。具体的には、予め断面U字状に折り曲げられた折り曲げ部36内の隙間に、シールド材12の端部12aを挿入してかしめることにより、シールド材12がシールドブラケット20に保持される。このとき、折り曲げ部36には折れ線34上に切欠穴38が形成されているので、上述したように、曲げ加工後に生じるスプリングバックを抑制させるので、かしめが緩むことなくシールド材を確実に保持することができる。
【0027】
また、3つの切欠穴38が、図4に示されるように、折れ線34に沿って所定の間隔を空けて配置されている。そして、各切欠穴38から、折り曲げ部36内のシールド材12の端部12aが折れ線34に付き当たっているか否かをそれぞれ目視できる状況になっている。この構成により、各切欠穴38を通じて、端部12aが幅方向に沿って折れ線34に付き当たることを確認しながら、折り曲げ部36内の隙間に、シールド材12の端部12aを挿入することができ、折り曲げ部36内における端部12aの挿入不足を未然に防ぐことができる。その結果、シールド材12の端部12aと折り曲げ部36との所定の接触面積を確保することができ、シールドブラケット20からのシールド材12の抜け防止を図ることができる。
【0028】
本実施形態においては、切欠穴38が折り曲げ部36に3箇所形成される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。折り曲げ部36の剛性、特に折れ線34領域の剛性を低下させて、かしめ時のスプリングバックを抑制するとともに、折り曲げ部36内におけるシールド材12の端部12aの挿入状況をシールド材12の幅方向において目視することができるのであれば、切欠穴38が折れ線34に沿って所定の間隔を空けて複数個所形成されてもよい。
【0029】
シールド材12が2つのシールドブラケット20にそれぞれ保持されると、図6に示されるように、電線14の外周を覆うように2つのシールドブラケット20を対向させて接続する。このとき、シールド材12は、2つシールドブラケット20によって形成される内部空間に、電線14の外周を覆いつつ収容される。そして、シールドブラケット20のフランジ20aと、ハウジング18の固定部32とをボルト28・ナット30で締め付けることにより、シールド材12はシールドブラケット20を介してハウジング18に固定される。
【0030】
この構成によれば、電線14を端子台10に接続したのちに、シールド材12を端子台10に固定することができ、これらの工程を明確に分けることができるので、端子台10に対する電線14の組み付けが容易になる。
【0031】
本実施形態においては、シールド材12が2つのシールドブラケット20にそれぞれ保持される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、1つのシールドブラケット20のみに保持されてもよい。この場合、シールド材12は、電線14の外周全てを覆うように構成されず、その一部(周方向の半分程度)を覆うように構成される。
【符号の説明】
【0032】
10 端子台、12 シールド材、14 電線、16 端子、18 ハウジング、20 シールドブラケット、24 圧着端子、26 作業穴、28 ボルト、30 ナット、32 固定部、34 折れ線、36 折り曲げ部、38 切欠穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6