【実施例】
【0030】
図1に示すように、射出成形装置10は、ベッド11と、このベッド11に載せられる型締機構20と、ベッド11に載せられる射出機30とを主要素とする。
型締機構20は、金型21を型締めする機構である。金型21は、固定型22と可動型23とからなり、固定型22は固定盤24に固定される。
射出機30は、先端にノズル31を備え上部に樹脂材料を投入するホッパ32を備える加熱筒33を主要素とする。
【0031】
ベッド11にレール12が敷かれ、このレール12に射出機30が載せられている。この射出機30と固定盤24とに、図面表と裏に各々配置される左右の射出機移動シリンダ35、36(奥の右シリンダは隠れて見えない。)が渡されており、左右2本の射出機移動シリンダ35、36により、ノズルタッチとノズルアンタッチ状態とがつくり出される。
固定盤24の上面に、製品取り出し機構39が載せられ、この製品取り出し機構39で出来上がった製品を金型21から取り出す。
【0032】
樹脂材料の種類や色を変更するときに、ノズル31に残留している樹脂を強制的に排出する。このパージ作業はノズルアンタッチ状態(固定盤24からノズル31が離れている状態)で実施する。よって、ノズル31から樹脂が飛散する。
本発明では、ノズル31を囲う樹脂飛散防止カバー40を、固定盤24に取付けて樹脂の飛散を防止する。樹脂はノズル31の下に設けたトレイ41で受けられる。
【0033】
樹脂飛散防止カバー40の詳細な構造を以下に説明する。
図2に示すように、樹脂飛散防止カバー40は、正面板42と、この正面板42の上辺から水平に延びる天板43と、この天板43の左右辺から下へ延びる左右側板44、45とからなる。ただし、天板43は、正面板42に固定されている固定部43aと、この固定部43aに第1ヒンジ46、46を介して上下にスイング可能に取付けられている可動部43bとに区分される。
【0034】
側板44、45の一方(この例では左側板44。右側板45であっても差し支えない。)は、第2ヒンジ47、47を介して可動部43bに連結された昇降板44(便宜的に左側板と同じ符号を付す。)とされる。第2ヒンジ47は折り曲げ抵抗が小さな普通の蝶番(ちょうつがい)である。
【0035】
昇降板44には、大きな透明樹脂製の点検窓48が嵌められている。昇降板44の下部に、取っ手49が設けられ、下へ延びる検知プレート51が設けられ、内側へ延びるピース52が折り曲げ形成されている。
正面板42の左辺に縦に延びるガイド溝53が設けられており、このガイド溝53に頭付きピン55が嵌められ、このピン55の先端がピース52に連結される。ピン55はガイド溝53の幅より小径である。2枚のワッシャ56、56でガイド溝53を挟むため、ピン55はガイド溝53に沿って移動自在となる。
【0036】
第1ヒンジ46は、ばね板などの摩擦抵抗力を発生する部品が内蔵されており、折り曲げ抵抗が任意に設定される。本発明では、昇降板44の自重と可動部43bの自重に基づいて発生する偶力よりも、第1ヒンジ46の折り曲げ抵抗が大きくなるように設定した。
【0037】
以上に述べた構成の樹脂飛散防止カバー40は、
図3に示すように、固定盤24に取付けられる。
図3に示すように、ノズル31が天板43と左右側板44、45とトレイ41で囲われているため、飛散する樹脂が外へ飛び出る心配はない。左側板である昇降板44に点検窓48が設けられているため、この点検窓48を介してノズル31を常時点検することができる。
【0038】
この例では、樹脂飛散防止カバー40の左右に、左の射出機移動シリンダ35及び右の射出機移動シリンダ36が配置されている。
作業員は、取っ手49に指を掛けて昇降板44を上げる。
【0039】
第2ヒンジ47で連結されているため、
図4に示すように、昇降板44と可動部43bはV字状に折り畳まれる。結果、水平線に対する可動部43bの開度θ1は90°になる。このときであっても可動部43bが固定盤24の上辺から上へ突出しない。よって、可動部43bが想像線で示す製品取り出し機構39に当たる心配はない。
【0040】
図5に示すように、可動部43bは、最大で開度θ2が90°を超えた角度、例えば100°になるまで開けられる。この状態であれば、可動部43bの自重が第1ヒンジ46に対して図面時計回りの偶力を発生する。昇降板44の自重は第1ヒンジ46に図面反時計回りの偶力を発生する。両方の偶力が相殺しあうため、第1ヒンジ46に加わる、昇降板44が閉じる方向での偶力は小さくなる。よって、第1ヒンジ46の摩擦抵抗力が、劣化等で低下しても、昇降板44が簡単に下がる心配はない。
【0041】
その上、昇降板側の射出機移動シリンダ35は、ノズル31より低い位置に設けられているため、昇降板44を上げ開放して実施するノズル31の点検が、射出機移動シリンダ35に邪魔されることなく、容易に実施できる。
好ましくは、左右2本の射出機移動シリンダ35、36は、ノズル31を中心に点対称となるように配置される。2本の射出機移動シリンダ35、36の引き点の中心が、ノズル31の中心に一致するため、より正確なノズルタッチが行える。
【0042】
以上に述べた
図4、
図5の状態、すなわち、昇降板44が上がっているときには、安全上の理由から、射出成形装置10の運転を行うことはできない。そこで、
図3の状態、すなわち、昇降板44が所定の位置まで下がっていることが射出成形装置10の運転条件の一つとなる。
【0043】
そこで、
図6に示すような安全確認スイッチ57が昇降板44の下方に配置される。安全確認スイッチ57は固定盤24に固定されているため移動しない。一方、検知プレート51は昇降板44と一緒に昇降する。
【0044】
図4の状態から、ピン55がガイド溝53に沿って下降することを想定する。
図3に近づくように、ピン55がガイド溝53の下部に到達するときは、昇降板44は、
図3と同様に垂直になる。
【0045】
図6では、固定部43aに対して可動部43bは、角度δだけ上方に回転している。この角度δがゼロになるときに、安全確認スイッチ57の検知穴58に検知プレート51が十分に嵌り、昇降板44が所定位置に下がっていることが検知される。
【0046】
角度δが減少する間、
図3に近似するように昇降板44は、ほぼ垂直姿勢になる。結果、
図6にて、検知プレート51は、傾くことなく真っ直ぐ下がり、安全確認スイッチ57の検知穴58へ進入する。
仮に、検知プレート51が円弧運動を行うときには検知穴58は大きくする必要があるが、本実施例ではその必要はなく、検知穴58を十分に小さくすることができる。この結果、検知エラーも起こりにくくなる。
【0047】
尚、請求項1〜3記載の発明は、左右2本の射出機移動シリンダを備える射出成形装置の他、中央に1本の射出機移動シリンダを備える射出成形装置に適用することは差し支えない。
また、請求項5記載の発明は、ノズルの上下に各射出機移動シリンダを備える射出成形装置の他、ノズルの下に2本の射出機移動シリンダを備える射出成形装置に適用することは差し支えない。