特許第6062894号(P6062894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062894基板構造、およびフレキシブル電子デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062894
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】基板構造、およびフレキシブル電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20170106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170106BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20170106BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20170106BHJP
   B32B 9/04 20060101ALI20170106BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170106BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   B32B27/00 L
   B32B27/28
   B32B17/10
   B32B9/04
   H05K1/03 610N
   H05K3/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-164750(P2014-164750)
(22)【出願日】2014年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-74783(P2015-74783A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2014年8月13日
(31)【優先権主張番号】61/887,033
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】103107366
(32)【優先日】2014年3月5日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 志成
(72)【発明者】
【氏名】呂 奇明
(72)【発明者】
【氏名】郭 育如
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−329282(JP,A)
【文献】 特開2010−221523(JP,A)
【文献】 特開2008−302569(JP,A)
【文献】 特開2010−217777(JP,A)
【文献】 特開2010−067957(JP,A)
【文献】 特開2010−111853(JP,A)
【文献】 特開2014−218056(JP,A)
【文献】 特表2015−522451(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/168404(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/071145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
C09D1/00〜C09D201/10
B32B1/00〜B32B43/00
H01L21/00〜H01L21/98
H05K1/00〜H05K3/46
CAPlus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、
前記支持層を第1の面積で覆う離型層であって、第1の芳香族ポリイミドからなる離型層と、
前記離型層および前記支持層を第2の面積で覆うフレキシブル層と、を含む基板構造であって、前記第2の面積が前記第1の面積より大きく、かつ、前記フレキシブル層と前記支持層との間の密着性が、前記離型層と前記支持層との間の密着性よりも高く、前記フレキシブル層が第2の芳香族ポリイミドおよび第2の芳香族ポリイミドに混合された粉末を含み、前記第1の芳香族ポリイミドが、p−フェニレンジアミン(PPD)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が重合された芳香族ポリイミドであり、前記第の芳香族ポリイミドが、p−フェニレンジアミン(PPD)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が重合された芳香族ポリイミドである基板構造。
【請求項2】
前記支持層がガラス担体またはシリコンウエハを含む、請求項1記載の基板構造。
【請求項3】
前記フレキシブル層上に形成された素子をさらに含む、請求項1または2に記載の基板構造。
【請求項4】
支持層を提供する工程と、
前記支持層を第1の面積で覆うように離型層を形成する工程であって、前記離型層が第1の芳香族ポリイミドである工程と、
前記離型層および前記支持層を第2の面積で覆うようにフレキシブル層を形成する工程であって、前記第2の面積が前記第1の面積より大きく、かつ、前記フレキシブル層と前記支持層との間の密着性が、前記離型層と前記支持層との間の密着性よりも高く、前記フレキシブル層が第2の芳香族ポリイミドおよび第2の芳香族ポリイミドに混合された粉末を含む工程と、
前記フレキシブル層上に素子を形成する工程と、
前記支持層と前記離型層とを分離する工程であって、前記支持層から分離される前記離型層および前記フレキシブル層が、前記第2の面積と実質的に同じ面積を有する工程と、
を含むフレキシブル電子デバイスを製造する方法であって、前記第1の芳香族ポリイミドが、p−フェニレンジアミン(PPD)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が重合された芳香族ポリイミドであり、前記第の芳香族ポリイミドが、p−フェニレンジアミン(PPD)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が重合された芳香族ポリイミドであるフレキシブル電子デバイスを製造する方法。
【請求項5】
前記フレキシブル層上に前記素子を形成する工程が、250℃〜450℃の間の温度で行われる請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記支持層と前記離型層とを分離する工程が、前記フレキシブル層と重なりあっている前記離型層の縁部を、前記支持層の表面に対して垂直な方向で切断する工程を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記支持層と前記離型層とを分離する工程の後に、前記フレキシブル層と前記離型層とを分離する工程をさらに含む請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年3月5日に出願され、出願番号第103107366である台湾特許出願の優先権、および、2013年10月4日に出願され、出願番号第61/887,033の米国仮出願の利益を主張すると共に、これら出願に基づいており、これら出願の開示は参照によってその全てが本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本技術分野は、離型層、これを含む基板構造、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
移動通信は急速に発展し、2011年からはコンテンツサービスと組み合わせた形で利用可能となった。また、フレキシブルディスプレイは次世代ディスプレイの新たなトレンドになることが期待されている。主要IT企業は、厚く、重く、そして割れ易いガラス基板を、非ガラス(例えば軽量かつフレキシブルなプラスチック)基板に置き換えている。さらに、アクティブ型フルカラーTFTディスプレイパネルも発展してきている。スマートフォンおよびタブレットにはフラットディスプレイが望ましいが、それらのプロダクトデザインは薄型および軽量という要求を満たすものでなければならない。別の新たな展開としては、フレキシブル/ソフトディスプレイ技術があるが、これはディスプレイデザインの新たな時代を拓き得るものである。中型または小型パネルの大量生産技術が成熟したことに伴って、軽量、薄型、かつ、より大きいセル空間をもつようなフレキシブルディスプレイを量産することが可能となってきた。
【0004】
フレキシブル層の製造工程は、バッチタイプとロール・ツー・ロール(roll-to-roll)タイプに分類される。
【0005】
特許文献1には、プラスチック基板をガラス基板から剥離する方法として、a)1μm未満の薄い層であるポリイミド(PI)層にレーザー放射を行い、PI層を直接レーザー剥離させ、この剥離プロセスの後にPIを溶解させる(したがって、付加的な離型層を必要としない)方法、および、b)a−Si離型層を用いてレーザー剥離プロセスを使用する方法、が開示されている。任意の黄色プラスチック基板が、レーザー光を吸収することにより直接レーザー剥離され得る。しかしながら、このプロセスはレーザー設備を必要とし、時間がかかり、かつ大面積に対しての歩留まりが低い。
【0006】
特許文献2には、可溶性環状オレフィン共重合体をフレキシブル電子機器の離型層として使用できることが開示されている。該共重合体(単一のブロックまたは複数のブロック)が、ガラス基板上に離型層として塗布され、そしてその離型層を覆うように塗布可能な(coatable)基板材料が塗布され得る。しかしながら、該共重合体は低温プロセス(<250℃)にしか適しておらず、高温ではその剥離効果を失うか、または黄変してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0091062号明細書
【特許文献2】米国特許第8273439号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
TFT素子のための従来の装置は、バッチタイプのTFT素子を製造するために使用することができる。しかし、バッチタイプでは、フレキシブルディスプレイをガラス基板から他のプラスチック基板へと転写する、またはフレキシブルディスプレイをガラス基板から直接剥離するための基板の転写(substarate transfer)および膜剥離(film-separation)技術の開発が必要とされる。また、ロール・ツー・ロールタイプでは、新たな装置が必要となり、かつ、回転および接触に起因するいくつかの問題が克服されなければならない。
【0009】
LTPSなどのTFT素子を製造するためにバッチタイプが選択される場合、高いプロセス温度のため(400℃を超える)、耐高温材料が必要とされる。バッチタイプでは既存のガラス基板のための装置を用いることができるため、装置に関するコストは節減できるが、素子製造のあいだのガラス上のフレキシブル層の剥離の防止、および、素子製造後の(ガラス上への付着なしの)フレキシブル層の簡便な剥離が、主な重要なポイントである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、芳香族ポリイミドである離型層(release layer)であって、フレキシブル電子デバイスの製造に適用される離型層を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態は、支持層と、支持層を第1の面積で覆う離型層であって芳香族ポリイミドからなる離型層と、離型層および支持層を第2の面積で覆うフレキシブル層と、を含む基板構造であって、前記第2の面積が前記第1の面積より大きく、かつ、フレキシブル層と支持層との間の密着性が、離型層と支持層との間の密着性よりも高い基板構造を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態は、支持層を提供する工程と、支持層を第1の面積で覆う離型層を形成する工程であって、前記離型層が芳香族ポリイミドである工程と、離型層および支持層を第2の面積で覆うフレキシブル層を形成する工程であって、前記第2の面積が前記第1の面積より大きく、かつ、フレキシブル層と支持層との間の密着性が、離型層と支持層との間の密着性よりも高い工程と、フレキシブル層上に素子を形成する工程と、支持層と離型層とを分離する工程であって、支持層から分離される離型層およびフレキシブル層が、前記第2の面積と実質的に同じ面積を有する工程と、を含むフレキシブル電子デバイスを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板構造は高温に耐え得るものである。耐高温離型層材料は、支持層とフレキシブル層との間に塗布され得る。フレキシブル層と支持層とが離型層で分離されているため、後工程の高温プロセスの後に、フレキシブル層がガラス上に付着すること(例えば、フレキシブル層の全体を剥離できないなど)が回避される。したがって、本発明の基板構造は、工程歩留まりを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面を参照しながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。添付の図面を参照し、後続の詳細な説明および実施例を読むことによって、本発明をより十分に理解することができる。
【0015】
図1A】本発明の一実施形態による基板構造の断面図を示す。
図1B】本発明の実施形態による基板構造の上面図を示す。
図1C】本発明の実施形態による基板構造の上面図を示す。
図2A】本発明の一実施形態による、製造プロセスのあいだのフレキシブル電子デバイスの断面図を示す。
図2B】本発明の一実施形態による、製造プロセスのあいだのフレキシブル電子デバイスの断面図を示す。
図2C】本発明の一実施形態による、製造プロセスのあいだのフレキシブル電子デバイスの断面図を示す。
図2D】本発明の一実施形態による、製造プロセスのあいだのフレキシブル電子デバイスの断面図を示す。
図2E】本発明の一実施形態による、製造プロセスのあいだのフレキシブル電子デバイスの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明では、例示を目的として、開示される実施形態が十分に理解されるよう多数の具体的詳細を記載する。しかしながら、1または複数の実施形態がこれら具体的詳細無しに実施できることは明らかであろう。また、図面を簡潔にすべく、既知の構造および装置は図面に概略的に示される。
【0017】
図1Aに示されるように、本発明の一実施形態は、フレキシブル電子デバイス製造に適用され得る基板構造10を提供する。基板構造10は、支持層12、離型層14、およびフレキシブル層16を含む。支持層12は、ガラスまたはシリコンウエハを含み得る。支持層12は、面積A1を有するパターン(例えば、図1Bまたは1Cに示される1つまたは複数のブロックなど)で離型層14により覆われる。図1Bおよび1Cにおける離型層14のパターンは例示に過ぎず、当業者が必要に応じて、離型層14のパターンの形状、サイズおよび配置を変更することが可能であることは明らかであろう。離型層14は、ジアミンおよび二酸無水物が重合された芳香族ポリイミドである。ジアミンとしては、例えば、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジアミノベンジジン、またはこれらの組み合わせなどが好ましい。二酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、またはこれらの組み合わせなどが好ましい。式1に示されるように、先ずジアミンおよび二酸無水物が重合されてポリアミック酸(PAA)が形成され、次いでこれが脱水されてポリイミド(PI)が形成される。
【0018】
【化1】
【0019】
式1中、Ar1およびAr2はそれぞれ独立して芳香族基を表し、nは繰り返し単位数である。実際には、ポリアミック酸を形成するためにジアミンおよび二酸無水物が始めに重合され得る。非プロトン性極性溶媒(例えばジメチルアセトアミド(DMAc)など)が、ポリアミック酸溶液の固体成分含有量を調整するためにポリアミック酸溶液に添加されてもよい。ポリアミック酸溶液がその後、支持層12上に塗布される。塗膜がその後加熱され、塗膜のポリアミック酸がポリイミドの離型層14を形成するように反応される。本発明の一実施形態において、離型層14の厚さは、0.1μm〜4μmである。過度に厚い離型層14は、コスト増加につながり、かつ加熱乾燥後の膜表面が不良となり易い。過度に薄い離型層14は、塗布工程のあいだに不均一になり得、この結果、離型層14の一部がその剥離効果を失ってしまう。
【0020】
続いて、離型層14および支持層12を覆うようにフレキシブル層16が形成され、ここでフレキシブル層16は面積A2を有する。面積A2が面積A1より大きい点に留意されたい。一実施形態において、フレキシブル層16と支持層12との間の密着性は、2Bから5B(密着性クロスカットテスターにより測定)であり得、フレキシブル層16と支持層12との間の密着性は、離型層14と支持層12との間の密着性よりも高い。実際には、フレキシブル層16の材料溶液が、塗膜を形成するために支持層12および離型層14上に塗布されてもよい。フレキシブル層16の組成は、離型層14の組成とは異なる。フレキシブル層16としては、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリル酸(PA)、ポリノルボルネン(PNB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、またはポリエーテルイミド(PEI)が挙げられ得る。一実施形態において、フレキシブル層16の材料溶液に例えばシリカ、有機質粘土、またはこれらの組み合わせなどの粉末がさらに添加され、これによりフレキシブル層16と支持層12との間の密着性がより高められ得る。例えば、いくつかの芳香族ポリイミドが離型層14となるよう選択され、そして、この同じ芳香族ポリイミドと前記粉末との混合物がフレキシブル層16とされてもよい。この実施形態では、フレキシブル層16中の芳香族ポリイミドおよび粉末の重量比は、1:0.11〜1:0.43であり、そして、粉末のサイズは200nm未満である。粉末の比率が高すぎると、フレキシブル層16の柔軟性が低下し、ひいてはフレキシブル層16が割れてしまう可能性がある。粉末の比率が低すぎると、フレキシブル層16と支持層12との間の密着性が不十分となることがあり、これによって高温プロセスのあいだに剥離の問題が生じる恐れがある。また粉末のサイズが大き過ぎると、膜が不透明または非常に曇った(hazy)したものとなってしまう。別の実施形態において、離型層14の芳香族ポリイミドは、フレキシブル層16の組成とは異なる。フレキシブル層16の厚さは、5μm〜40μmである。過度に厚いフレキシブル層16は、コストを増加させる。過度に薄いフレキシブル層16は、製品に十分な機械的強度を付与することができない。
【0021】
図2A〜2Eは、本発明の一実施形態による、製造プロセスのあいだのフレキシブル電子デバイスの断面図を示している。始めに、図1Aに示される基板構造10が提供され、そして、素子(図示せず)が、基板構造10のフレキシブル層16上に形成される。前記素子は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、微小電気機械システム(MEMS)、光電変換素子(optoelectronic conversion devices)、有機発光ダイオード(OLED)のようなエレクトロルミネセンス素子、その他の素子、またはこれらの組み合わせであり得る。一実施形態において、素子を製造するためのプロセスは、250℃〜450℃の温度で行われる。すなわちここで、他の組成が離型層14を形成するために選ばれた場合、素子製造のための処理温度で離型層14が変形するまたは割れる可能性がある。
【0022】
素子の形成後、支持層12と離型層14とが分離される。理想的な場合において、分離工程は、図2Aに示されるように、離型層14の端部(A’)で切断されるように実行される。実際の操作では、分離工程は、フレキシブル層16と重なりあっている離型層14の縁部(例えば図2Bにおける切断部B’)を、支持層12の表面に対して垂直な方向で切断するように実行され、これによって、切断工程後に、図2Cに示されているようにフレキシブル層16と支持層12との間にフレキシブル層16が残ってしまうことが避けられる。支持層12から分離されたフレキシブル層16および離型層14は、面積A2と実質的に同じ面積を有する。支持層12を貫通して切断する切断工程が例示されているが、実際の操作においては、支持層12を完全に切断することなく、支持層12の表面のみをカットするように工程が行われてもよい。
【0023】
切断工程の後、フレキシブル層16と支持層12との間には離型層14のみが配置されており、支持層12に接続されているフレキシブル層16は無い。故に、図2Dに示されるように、離型層14と支持層12とは容易に分離され得る。一実施形態においては、上記工程の後、図2Eに示されるように、離型層14とフレキシブル層16とが分離され得る。
【0024】
離型層14は、製品の保護膜として機能してもよく、そして、支持層12と離型層14とを分離する工程の後、直ちに除去されなくてもよい。例えば、離型層14とフレキシブル層16は、製品がユーザーへ届けられた後にユーザーによって分離されてもよい。離型層14は、フレキシブル層16から容易に剥がされ得る。一方、その上に素子が形成されているフレキシブル層16が半製品である場合は、それは次の処理地点まで運ばれ、そこで離型層14が除去されてもよい。
【0025】
当業者がより容易に理解できるよう、以下に例示的な実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。本発明の概念は、ここに記載される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形式で具体化することができる。説明を明確なものとするため、公知の部分の説明は省かれている。
【実施例】
【0026】
実施例1(ポリアミック酸の合成)
p−フェニレンジアミン(PPD)16.53g(0.153mol)をジメチルアセトアミド(DMAc)246.13gに溶解した。このPPD溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物(BPDA)45g(0.153mol)を、30分の間隔で3回に分けて加えた。全てのBPDAをPPD溶液に加えた後、混合物を室温で少なくとも8時間撹拌し反応させて粘性液を得た。反応は発熱反応であった。次いで、粘性液を希釈するために、反応物にDMAc102.54gを添加し、均一に撹拌した。希釈された液体は、固形分15%、および5000cps〜100000cpsの粘度であった。反応は以下の式2に示される。
【0027】
【化2】
【0028】
実施例2(離型層の形成)
DMAc275gを実施例1のポリアミック酸溶液100gに添加し、そしてその後、均一に撹拌し、これにより固形分4%の希釈されたポリアミック酸溶液を得た。希釈されたポリアミック酸溶液を、厚さ60μmの湿潤膜を形成させるために、ガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、および400℃で30分ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、ガラス担体上にポリイミドの離型層(P1)を形成した。反応を以下の式3に示す。
【0029】
【化3】
【0030】
大気下加熱速度10℃/分で熱重量分析(TGA)により離型層(P1)を分析したところ、その熱劣化温度(Td)は614.19℃と測定された。
【0031】
実施例3(基板構造)
実施例1の固形分15%のポリアミック酸溶液30gおよび20%シリカゾルゲル(NCT(Nissan Chemical Taiwan 台湾日産化学) DMAc溶液)5.63gを、均一に分散させるため機械的撹拌により混合した。混合終了後、フレキシブル層に用いるシリカ/ポリアミック酸分散液を得た。
【0032】
次いで、そのシリカ/ポリアミック酸分散液を、厚さ400μmの湿潤膜を形成させるために、実施例2の離型層およびガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、300℃で30分、および400℃で1時間ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、シリカ/ポリイミドのフレキシブル層(P1+SiO2)を形成した。これにより、フレキシブル層(P1+SiO2)が離型層(P1)およびガラス担体を覆っている耐高温基板構造が完成した。離型層と重なりあっているフレキシブル層の端部がナイフでカットされ、そして、剥離力(release force)(g)を測定するために幅2cmでストリップとして剥離された。結果が表1および2に示されている。
【0033】
実施例4(ポリアミック酸の合成)
4,4’−オキシジアニリン(ODA)30.63g(0.153mol)をDMAc302.52gに溶解した。このODA溶液に、BPDA45g(0.153mol)を30分の間隔で3回に分けて加えた。全てのBPDAをODA溶液に加えた後、混合物を室温で少なくとも8時間撹拌し反応させて粘性液を得た。反応は発熱反応であった。次いで、粘性液を希釈するために、反応物にDMAc126.05gを添加し、均一に撹拌した。希釈された液体は、固形分15%、および5000cps〜100000cpsの粘度であった。反応は以下の式4に示される。
【0034】
【化4】
【0035】
実施例5(離型層の形成)
DMAc275gを実施例4のポリアミック酸溶液100gに添加し、そしてその後、均一に撹拌し、これにより固形分4%の希釈されたポリアミック酸溶液を得た。希釈されたポリアミック酸溶液を、厚さ60μmの湿潤膜を形成させるために、ガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、および400℃で30分ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、ガラス担体上にポリイミドの離型層(P2)を形成した。反応を以下の式5に示す。
【0036】
【化5】
【0037】
大気下加熱速度10℃/分でTGAにより離型層(P2)を分析したところ、その熱劣化温度(Td)は576.67℃と測定された。
【0038】
実施例6(基板構造)
実施例3で調製されたシリカ/ポリアミック酸分散液を、厚さ400μmの湿潤膜を形成させるために、実施例5の離型層およびガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、300℃で30分、および400℃で1時間ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、シリカ/ポリイミドのフレキシブル層(P1+SiO2)を形成した。これにより、フレキシブル層(P1+SiO2)が離型層(P2)およびガラス担体を覆っている耐高温基板構造が完成した。離型層と重なりあっているフレキシブル層の端部がナイフでカットされ、そして、剥離力(g)を測定するために幅2cmでストリップとして剥離された。結果が表1に示されている。
【0039】
実施例7(ポリアミック酸の合成)
PPD16.35g(0.153mol)をDMAc236.72gに溶解した。このPPD溶液に、BPDA35.98g(0.122mol)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)6.67g(0.03mol)を、30分の間隔で3回に分けて加えた。全てのBPDAおよびPMDAをPPD溶液に加えた後、混合物を室温で少なくとも8時間撹拌し反応させて粘性液を得た。反応は発熱反応であった。次いで、粘性液を希釈するために、反応物にDMAc98.63gを添加し、均一に撹拌した。希釈された液体は、固形分は15%、および5000cps〜100000cpsの粘度であった。反応は以下の式6に示される。
【0040】
【化6】
【0041】
実施例8(離型層の形成)
DMAc275gを実施例7のポリアミック酸溶液100gに添加し、そしてその後、均一に撹拌し、これにより固形分4%の希釈されたポリアミック酸溶液を得た。希釈されたポリアミック酸溶液を、厚さ60μmの湿潤膜を形成させるために、ガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、および400℃で30分ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、ガラス担体上にポリイミドの離型層(P3)を形成した。反応を以下の式7に示す。
【0042】
【化7】
【0043】
大気下加熱速度10℃/分でTGAにより離型層(P3)を分析したところ、その熱劣化温度(Td)は601.59℃と測定された。
【0044】
実施例9(基板構造)
実施例3で調製されたシリカ/ポリアミック酸分散液を、厚さ400μmの湿潤膜を形成させるために、実施例8の離型層およびガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、300℃で30分、および400℃で1時間ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、シリカ/ポリイミドのフレキシブル層(P1+SiO2)を形成した。これにより、フレキシブル層(P1+SiO2)が離型層(P3)およびガラス担体を覆っている耐高温基板構造が完成した。離型層と重なりあっているフレキシブル層の端部がナイフでカットされ、そして、剥離力(g)を測定するために幅2cmでストリップとして剥離された。結果が表1に示されている。
【0045】
実施例10(ポリアミック酸の合成)
PPD10.81g(0.1mol)およびODA5g(0.025mol)をDMAc207.72gに溶解した。このPPDおよびODA溶液に、BPDA29.42g(0.1mol)およびPMDA5.45g(0.025mol)を30分の間隔で3回に分けて加えた。全てのBPDAおよびPMDAをPPDおよびODA溶液に加えた後、混合物を室温で少なくとも8時間撹拌し反応させて粘性液を得た。反応は発熱反応であった。次いで、粘性液を希釈するために、反応物にDMAc1013.6gを添加し、均一に撹拌した。希釈された液体は、固形分4%、および500cps〜50cpsの粘度であった。反応は以下の式8に示される。
【0046】
【化8】
【0047】
実施例11(基板構造)
実施例10の固形分4%である希釈されたポリアミック酸溶液を、厚さ60μmの湿潤膜を形成させるために、ガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、および400℃で30分ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、ガラス担体上にポリイミドの離型層(P4)を形成した。反応を以下の式9に示す。
【0048】
【化9】
【0049】
大気下加熱速度10℃/分でTGAにより離型層(P4)を分析したところ、その熱劣化温度(Td)は603.62℃と測定された。
【0050】
実施例3で調製されたシリカ/ポリアミック酸分散液を、厚さ400μmの湿潤膜を形成させるために、離型層およびガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、300℃で30分、および400℃で1時間ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して、シリカ/ポリイミドのフレキシブル層(P1+SiO2)を形成した。これにより、フレキシブル層(P1+SiO2)が離型層(P4)およびガラス担体を覆っている耐高温基板構造が完成した。離型層と重なりあっているフレキシブル層の端部がナイフでカットされ、そして、剥離力(g)を測定するために幅2cmでストリップとして剥離された。結果が表1に示されている。
【0051】
実施例12(基板構造)
実施例4の固形分15%であるポリアミック酸30gおよびテトラエトキシシラン(TEOS)0.18gを、均一に分散させるため機械的撹拌により混合した。反応完了後、フレキシブル層に用いるTEOS/ポリアミック酸混合溶液を得た。
【0052】
TEOS/ポリアミック酸混合溶液を、厚さ400μmの湿潤膜を形成させるために、実施例2の離型層(P1)およびガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、300℃で30分、および400℃で1時間ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して(式5)、シリカ/ポリイミドのフレキシブル層(P2+TEOS SiO2)を形成した。これにより、フレキシブル層(P2+TEOS SiO2)が離型層(P1)およびガラス担体を覆っている耐高温基板構造が完成した。離型層と重なりあっているフレキシブル層の端部がナイフでカットされ、そして、剥離力(g)を測定するために幅2cmでストリップとして剥離された。結果を表2に示す。
【0053】
実施例13(基板構造)
実施例7の、固形分15%であるポリアミック酸30gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Z−6040)0.18gを、均一に分散させるため機械的撹拌により混合した。反応完了後、フレキシブル層に用いるZ−6040/ポリアミック酸混合溶液を得た。
【0054】
Z−6040/ポリアミック酸混合溶液を、厚さ400μmの湿潤膜を形成させるために、実施例2の離型層(P1)およびガラス担体上に塗布した。湿潤膜を50℃で30分、150℃で30分、210℃で30分、300℃で30分、および400℃で1時間ベークし、湿潤膜のポリアミック酸を脱水し、そして環化して(式7)、シリカ/ポリイミドのフレキシブル層(P3+Z−6040 SiO2)を形成した。これにより、フレキシブル層(P3+Z−6040 SiO2)が離型層(P1)およびガラス担体を覆っている耐高温基板構造が完成した。離型層と重なりあっているフレキシブル層の端部がナイフでカットされ、そして、剥離力(g)を測定するために幅2cmでストリップとして剥離された。結果を表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1および2に示されるように、離型層は15g未満の剥離力(幅2cm)で容易に剥離された。この結果は、離型層P1、P2、P3およびP4のそれぞれが、顕著な効果を奏していたことを示している。さらに、離型層P1は異なる基板材料に対しても良好に機能することが見出され、異なる基板材料に対する剥離試験の結果は類似していた。
【0058】
上に開示した方法および材料に様々な変更および修飾が加え得ることは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として考慮されることが意図されており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲の記載およびその均等物により示される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E