(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
従って、本発明の主題は、対象のガン感受性を評価し、及び/又は対象のガン死亡率のリスクを評価するための方法であり、ここで対象が臨床的に明確なガンに罹患したことがなく、及び/又は本方法を適用する際に、臨床的に明確なガンに罹患しておらず、以下のステップ:
・ 前記対象から取得したサンプル中の、pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルを決定し、ここで前記断片のいずれかが、少なくとも12アミノ酸長を有する、
・ 前記pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルと、前記対象のガンに罹るリスク及び/又は前記対象のガン死亡率のリスクとをそれぞれ関連付けること
を含む、方法である。
【0008】
感受性及び/又はガン死亡率のリスクを評価した後、対象は、予防手段の必要性に依拠して階層化してもよい。
【0009】
本発明の主題は、対象のガンの予防のための方法、及び/又は予防モニタリングのための方法であり、ここで対象が臨床的に明確なガンに罹患したことがなく、及び/又は本方法を適用する際に、臨床的に明確なガンに罹患しておらず、以下のステップ:
・ 前記対象から取得したサンプル中の、pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルを決定し、ここで前記断片のいずれかが、少なくとも12アミノ酸長を有する、
・ 前記対象がガンに罹る感受性、及び/又はガン死亡率のリスクを有しているか否かの評価に依拠して、当該対象がガンの予防方法の必要性があるかどうかについて、対象を階層化するために、pro−ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片の前記レベルを使用し、又は
・ pro‐ANP若しくはその断片、プロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベル、ここで前記断片のいずれかが、少なくとも12アミノ酸長を有する、の決定を繰り返すことにより、前記対象のガン感受性、及び/又は前記対象のガン死亡率のリスクをモニターすること
を含む、方法である。
【0010】
本発明の主題は、対象のガン感受性を評価し、及び/又は対象のガンの死亡率のリスクを評価するための方法であり、以下のステップ:
・ 前記対象から取得したサンプル中の、pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルを決定し、ここで前記断片のいずれかが、少なくとも12アミノ酸長を有する、
・ 前記pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルと、前記対象のガンに罹るリスク及び/又は前記対象のガン死亡率のリスクとをそれぞれ関連付けること
を含む、方法である。
【0011】
対象のガン感受性を評価し、及び/又は対象のガンの死亡率のリスクを評価するための上記方法の具体的な実施態様では、前記対象は、ガンに罹患しているとまだ診断されていない、及び/又はガンに罹患していない。
【0012】
ガンに罹患しているとまだ診断されていない対象は、以前にガンに罹患していない。以前又は現在のガンは、組織病理(生検又は手術後の組織検査)により確認されるであろう。これは、ガンに罹患したことがなく又はガンに罹患していない対象が、好ましくは組織病理(生検又は手術後の組織検査)により診断され及び/又は確認されたガンを有していない対象であることを意味する。
【0013】
本発明の方法は、対象が男性対象である場合、特に好ましい。収集したデータによれば、本発明の方法は、特に白人対象、より好ましくはヨーロッパの白人対象、最も好ましくは北ヨーロッパ白人対象に有用である。上述したように、本発明の方法は、対象のガン感受性を評価するための文脈において特に有益であり、従って特に好ましい。
【0014】
本発明による上記方法では、対象は、(増加した)ガン感受性を有する又は(増加した)感受性を有しないいずれかとして、(増加した)ガン死亡率のリスクを有する又は有しないいずれかとして階層化されてもよい。リスク及び/又は感受性による、対象のそのようなはい(yes)/いいえ(no)階層化の代わりに、本発明の方法に従って階層化は、リスク及び/又は感受性の上昇に伴い、2超のリスク/感受性群、好ましくは3超のリスク/感受性群になってもよい。バイオマーカー及び/又はバイオマーカーの数学的組み合わせ、他の検査値、及び臨床的指標に対する特定の閾値は、特定のリスク/感受性に対する相関関係で定義してもよい。特定のリスク群への階層化の代わりに、リスク階層化は、連続的なスケーリングにより達成してもよい。
【0015】
(増加した)ガン感受性を有する、又は(増加した)ガン死亡率のリスクを有するとして対象を階層化した後、いくつかの手段が、ガンの臨床症状を予防し及び/又は遅らせるために行うことができる。
【0016】
これらの手段は、限定されないが、以下の手段、
診断測定の頻度の増大及び/又は促進、予防内服、運動活動の変化、生活様式の変化、栄養の変化
を包含してもよい。
【0017】
一旦対象が、(増加した)ガン感受性を有する、又は(増加した)ガン死亡率のリスクを有する対象であると階層化されると、前記対象のガン感受性を評価する及び/又は前記対象のガン死亡率のリスクを評価する方法が、予防の進展をモニターするために再度及び/又は何回か実施されてもよい。
【0018】
臨床的に明確にガンに罹患したことがない、及び/又は臨床的に明確にガンに罹患していない対象群は、しかしながら臨床的に明確なガンでないガンの予備形成を有する対象を包含してもよい。臨床的に明確にガンに罹患したことがない対象は、臨床及び組織病理診断により定義されるガンに以前に罹患していない対象であり、臨床的に明確にガンに罹患していない対象は、ガンが、実施例に従って身体検査及びアンケートを介してベースライン試験により排除される対象である。どんな場合でも、前記対象は、ガンに罹患していると診断されたことがなく、及び/又はガンに罹患していない。
【0019】
本発明の主題は、また治療階層化及び/又は臨床的に明確にガンに罹患していない対象の予防手段の成功のモニタリングのための方法であって、以下のステップ:
・ 前記対象から取得したサンプル中の、pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はコペプチン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルを決定し、ここで前記断片のいずれかが、少なくとも12アミノ酸長を有する、
・ 前記pro‐ANP若しくはその断片、及び/又はコペプチン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片のレベルを、治療階層化及び/又は予防手段の成功のモニタリングのために使用すること
を含む、方法である。
【0020】
本発明の上記方法の具体的な実施態様では、前記対象はガンに罹患していると診断されたことがなく、及びガンに罹患していない。
【0021】
実施例で示された分析では、本発明の方法に従って使用されるマーカー、すなわちpro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片、及び/又はpro‐ADM若しくはその断片は、ここで前記断片のいずれかが、少なくとも12アミノ酸長を有し、すべての起こりそうなガンが、バイオマーカー試験後、次の15年以内に発生することが考えられる場合、及び重要なことには、また15年の追跡調査期間の最初の4年が、分析から除外される場合の両方とも、起こりそうなガンを予測する。仮に本発明の方法が、ガンの予備形成を有する対象に関してのみ有用であるなら、その後、起こりそうなガンの予測が、追跡調査期間の5‐15年についてガンを予測するために機能しないであろう。従って、本発明の方法が、ガンの特定の予備形成を有するかもしれない対象に関してだけでなく、またガンの予備形成を有しない対象に関しても同様に予測可能であることを明確に示す。好ましい実施態様では、前記対象は男性である。
【0022】
本発明による方法の他の好ましい実施態様では、前記方法は、対象に関するスクリーニング方法で使用され、男性集団の対象が好ましい。
【0023】
前記断片は、アドレノメデュリン、バソプレッシン及びANP(プロアドレノメデュリン、プロバソプレッシン、pro‐ANP)のプロホルモン由来の任意の断片である。pro‐ADMの公知の断片は、PAMP、MR‐pro‐ADM、ADM、CT‐pro‐ADM(アドレノテンシン)を含む。プロバソプレッシンの公知の断片は、バソプレッシン(AVP、抗利尿ホルモン、ADH)、ニューロフィシンII、コペプチンを含む。pro‐ANPの公知の断片は、ANP、NT‐pro‐ANP、MR‐pro‐ANPが含まれる。
【0027】
特に好ましい実施態様では、配列番号4を有するMR‐pro‐ADMのレベルが決定される。他の特に好ましい実施態様では、配列番号5を有するコペプチンのレベルが決定される。他の特に好ましい実施態様では、配列番号6を有するMR‐pro‐ANPのレベルが決定される。
【0031】
マーカーの組み合わせは、追加情報を与えるかもしれない。従って、またpro‐ANP若しくはその断片、及び/又はプロバソプレッシン若しくはその断片を使用する本発明の方法に従った実施態様が好ましく、本発明の方法に関してMR‐pro‐ANP及びコペプチンの使用が特に好ましい。
【0032】
pro‐ADM及びその断片、並びにpro‐ANP又はその断片のレベルを使用することもまた、本発明の方法に従った好ましい実施態様であり、マーカーの組み合わせとして、MR‐pro‐ANP及びMR‐pro‐ADMの使用が特に好ましい。
【0033】
Cox比例ハザードモデルでは、2つのマーカーが、起こりそうなガンの進行についての独立した及び有意な予測情報を提供するであろうかを分析し、及び従って、2つのマーカーの組み合わせが、どちらか1つ単独よりも多くの情報を与えるであろう。分析は、すべての男性に関して、例示的に行った。
【0036】
本発明の方法による他の好ましい実施態様では、pro‐ANP又はその断片、コペプチン又はその断片、及びpro‐ADM又はその断片のレベルが決定される。配列番号4を有するMR‐pro‐ADM、配列番号5を有するコペプチン、及び配列番号6を有するMR‐pro‐ANPのレベルが決定され、本発明による方法で使用される。
【0037】
さらにマーカーは、早期肺ガン検出のための新規な血液マーカーとして公表された結合組織活性化ペプチドIII(Yee et al., Connective Tissue-Activating Peptide III: A Novel Blood Biomarker for Early Lung Cancer Detection, J. Clin Onco 2009, Vol. 27:17, 2786-2792)について本発明の方法中に含んでもよい。さらにマーカーは、好中球活性化プロテイン‐2(NAP‐2)及びハプトグロビン、同様にプロカルシトニン及びその断片(欧州特許第09011073.5号)及びC反応性タンパク質レベル(Zhang et al., C-Reactive Protein Level Are Not Associated with Increased Risk For Colorectal Cancer in Women, Annals Int. Med 2005, 142:6, 425-432)でもよい。これらのマーカーの少なくとも1つを、本発明による方法に追加してもよく、又は結合組織活性化ペプチドIII、好中球活性化プロテイン‐2、ハプトグロビン、プロカルシトニン及びその断片並びにC反応性タンパク質を含む群から選択される2以上を追加してもよい。
【0038】
本発明の方法の精度を改善するために、さらにマーカー/リスク因子を前記方法中に含んでもよい。前記マーカーは、喫煙、ガン遺伝、pro‐BNP又はその断片、シスタチンC又はその断片、年齢を含む群から選択してもよい。
【0039】
本発明の好ましい実施態様では、前記対象(複数)は、60歳よりも若い。他の好ましい実施態様では、スクリーニング方法は、60歳よりも若い対象に対して行われる。本発明の方法中に年齢のリスク因子を含めることが、特に好ましい。
【0040】
以下において、具体的な例を示し、ここでいくつかのパラメータが、ガンに罹患する個人のリスクを計算するために使用される。当業者は、本発明の方法が以下の具体的な計算に限定されないことを理解するであろう。この計算の変化が、当業者によって行われてもよい。例えば、マーカー/リスク因子が、以下の計算例と比較して追加又は除外されてもよい。
【0041】
式:
Cox比例ハザードモデルに基づいて式を導くことができ、そしてそれはガンに罹患する個人のリスクを計算するために使用できる。そのような手順は、将来において心血管系事象を患う個人のリスクの計算のためのフラミンガム リスク スコア(Framingham Risk Score)を開発するために、従来同じように使用されてきた。特定の計算式は、Coxモデルにおいて、どの及びどのくらいの変数が解析されたかに依拠して異なってもよく、追跡調査期間を考慮してもよい。
【0042】
主に式は以下のように読む:
一定の期間において目的のエンドポイントに至る個人のリスク[%]=
【0044】
この式において、S0は、この一定の期間において目的のエンドポイントに至らない集団中のすべての個人の割合を表し、又はより正確には、S0(T)は、それぞれの予測変数が、研究中の対象全体の変数の平均値と等しい対象に関する、T年における生存関数である。この式において、xbは、対応するCox比例ハザードモデル由来の変数の重み付き(weighted)β係数の合計を表し、又はより正確には、Xbは、すべてのリスク因子からCox比例ハザード回帰モデル由来の回帰係数により重み付けされた集団におけるそのような変数の平均を引いた合計である。
【0045】
例では、ここで変数の評価の後、16年の期間にわたってガンに罹患する個人のリスクを計算するための式は、Cox比例ハザードモデル1に基づいて研究におけるすべての男性に関して開発してきた。
【0046】
以下の変数:
smoke=現在の喫煙者(current smoker)(1/0)
her_cancer=ガン遺伝:1又は2以上の一等親血縁者がガンに罹患した(1/0)
LNNTBNP=NT‐BNP[pg/mL](対数変換)
CYSTC=シスタチンC[mg/L](対数変換)
AGE=年齢
LNCOPEPTIN=コペプチン[pmol/L](対数変換)
MRADM=MR‐pro‐ADM[nmol/L]
LNMRANP=MR‐pro‐ANP[pmol/L](対数変換)
を本モデル中に導入した。
【0047】
Cox比例ハザードモデル由来のこられの変数のβ係数は、以下:
b_smoke=0.15546
b_her_cancer=0.09054
b_LNNTBNP=0.00965
b_CYSTC=−0.02697
b_AGE=0.07018
b_LNCOPEPTIN=0.17058
b_MRADM=0.96756
b_LNMRANP=−0.39251
であった(βは、連続変数についての1ユニット増加のために、及び二分変数(dichotomous variable)に存在する条件のために与えられる)。
【0051】
結果に対するそれぞれの変数の定量的な貢献度は、変数が乗じられる係数の絶対的な大きさに直接反映する。S0(16年の追跡調査期間中にガンに罹患しなかった集団における全ての個人の割合)は、0.8であった。男性に関して16年のリスクは、1−0.80exp(?β(X−mean(X))として計算できる。
【実施例】
【0052】
方法:
調査集団及びベースライン試験手順
マルモ食事及びガン(MDC)研究は、ベースライン試験を1991年〜1996年の間に受けた南スウェーデンのマルモ市に住む28449人の男性(1923年〜1945年生まれ)及び女性(1923年〜1950年生まれ)の集団に基づく前向き疫学コホートである。このコホートから、6103人の対象が、MDC心血管コホート(MDC‐CC)に参加するために1991年〜1994年から無作為に選択され、そしてそれらを頸動脈疾患の疫学を調査するために設計した。空腹時血漿サンプルが全体で5543人の対象について使用でき、ベースライン試験の前に336人の対象がガンに罹患していた(男性84人、女性252人)。以前にガンに罹患したことがなく又はガンに罹患していない使用できる空腹時血漿を有し、及びモデル2(統計的方法を参照)中に含まれる完全な共変量に関するデータを有したMDC‐CCにおける対象を、分析された今回の研究におけるデータセット中に含んだ(4061人の個人:1768人の男性及び2293人の女性)。ベースライン試験における発症している臨床的に明確なガンを、身体検査及びアンケートにより除外した。
【0053】
本研究に従って、本明細書で要点を述べたように、以前にガンに罹患したことがないすべての対象は、スウェーデンガン登録に報告されていない対象である。スウェーデンガン登録は、1958から始まり、国全体の全てのガンの99%を網羅している。98%が組織病理学的(形態学的)証拠を有しているので、登録は質のよいものである。
【0054】
不顕性ガン:
全ての被験者は、注意深い病歴インタビューとヘモグロビン及び血球数、脂質並びにグルコースを含む標準的な血液サンプルを受けた。ガンを含む病歴インタビューを、看護師により行った。異常な血液サンプルの結果又は兆候があれば、病院での医師の診断となり、医師はその後、専門家などの助言を求め、さらなる評価に進むかどうかを決定した。従って、異常な血液試験又は兆候に基づいて指示される場合、設定は、医師の診断を有する看護師に基づいたスクリーニングである。
【0055】
血圧は、仰臥位での安静状態の10分後に、水銀柱血圧計を使用して測定した。喫煙、ガン遺伝、並びに降圧剤及び糖尿病薬の使用のデータを、アンケートから確認した。ガン遺伝を、ガンと診断された少なくとも1人の一等親血縁者を有することとして定義した。現在の喫煙を、過去1年以内になんらかのタバコを喫煙したこととして定義した。糖尿病を、>6.0mmol/Lの空腹時全血グルコース、自己申告の医師の糖尿病診断、又は抗糖尿病薬の使用を有することとして定義した。ボディマス指数(BMI)を、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った値として定義した。ベースライン試験前に心筋梗塞を定義し、前述のように取得した。
【0056】
絶食状態でのEDTA血漿検査サンプルを、MDC‐CCベースライン試験で採取後、迅速に凍結し、本発明者等は、前述のようにイムノルミノメトリック(immunoluminometric)サンドイッチアッセイを使用してMR‐pro‐ANP、MR‐Pro‐ADM、及びコペプチンを測定した(BRAHMS, AG, Germany)(Morgenthaler et al., Measurement of Midregional Proadrenomedullin in Plasma with an Immunoluminometric Assay, Clinical Chemistry 51:10, 1823-1829 (2005))。N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(N‐BNP)を、Dimension RxL自動化N‐BNP方法(Siemens Diagnostics, Nuremberg, Germany)を使用して測定し、シスタチンCを、粒子増強免疫比濁アッセイ(particle-enhanced immuno-nephelometric assey)(N Latex Cystatin C, Dade Behring Deerfield, Illinois)で測定した。
【0057】
本発明者等は、マルモ大学病院の臨床化学部門で標準手法に従って、空腹時高比重リポタンパク(HDL)、インスリン及び中性脂肪を測定し、低比重リポタンパク(LDL)を、Friedwaldの式に従って計算した。
【0058】
全ての被験者から書面によるインフォームドコンセントを得て、試験は、スウェーデン、ルンド市のルンド大学(Lund University, Lund, Sweden)で倫理委員会による承認を受けた。
【0059】
成果
ガン事象を、子宮頸ガンはインサイチュ(in situ)で、ガン事象でないと見なされたことを除いて、ガン及び栄養に関する欧州前向き調査(EPIC)定義に従って定義し、細分した。ガン事象に関する情報(発症及び起こりそうな事象の両方)を、固有の10桁の住民登録番号を使用して、スウェーデンガン登録(SCR)と記録連動により、2007年12月31日までに取得した。SCRは、1958年に始められ、全ての悪性腫瘍が報告されるようにしている。腫瘍部位を、ICD‐7及び診断で使用されたICDのバージョンに従って登録した。病理組織の種類を、C24分類(REF)に従ってコード化した。スウェーデンの病院で診断された全ての腫瘍の約99%をSCR中に登録し、98%を形態学的に確認している(REF)。
【0060】
追跡調査の間の全死亡率及びガン死亡率に関する情報を、ガン死亡率を定義する死亡の主な原因としてICD10コードC00‐D48(又は前のICDバージョンにおいて対応するコード)を有するスウェーデン国立死因登録(SNCDR)と固有の10桁の住民登録番号とをリンクすることにより取得した。
【0061】
統計分析
男女間の臨床的特徴の比較を、連続変数に対する正規性に依拠してt検定又はマン‐ホイットニー検定を行い、二分変数に関してカイ2乗検定を行った。本発明者等は、時間尺度(time scale)変数としてベースライン年齢を有するCox比例ハザードモデルを使用して、ベースラインバイオマーカーレベルに関して最初の事象までの時間を分析した。この年齢調整とは別に、明細書中に特別の定めのない限り、3つのバイオマーカー単独及び組み合わせを、現在の喫煙、ガン遺伝、シスタチンC(糸球体の濾過速度のマーカーとして)及びN‐BNP(無症状の心疾患のマーカーとして)(モデル1共変量)と共にモデル内に常に加えた。シスタチンCに関する調整のためのモチーフは、3つのマーカーの全てが、糸球体濾過により血漿から主に除去される小さな分子であることであった。無症状の心疾患及び左心室機能不全に関する感受性マーカーとしてモデル内にN‐BNPを入れた理由は、3つのバイオマーカーのすべてが、以前に心疾患において上昇することが見出されていたので、心疾患とガンの間の任意の潜在的な関係を試験及び調整するためであった。
【0062】
歪んだ分布を有するバイオマーカー(MR‐pro‐ANP、コペプチン及びN‐BNP)を、分析前に対数的に変換し、バイオマーカーレベルと起こりそうなガン、ガン死亡率及び全死亡率との間の関係を、それぞれのバイオマーカーにおいて1標準偏差増加あたりのハザード比として、及び四分位数分析においてリファレンス(ハザード比1.0)として定義される最も低い四分位数を有するそれぞれの四分位数に対するハザード比として、及び四分位数にわたるトレンドP(P for trend)を得るために四分位数増加あたりのハザード比として表した。
【0063】
3つのバイオマーカーと起こりそうなガン、ガン死亡率、及び全死亡率との間の関係の加算効果推定値を得るために、本発明者等は、対応するCox比例ハザードモデル(モデル1共変量と共に同時に入れられたMR−pro−ADM、MR−pro−ANP及びコペプチン)由来の3つのバイオマーカーのそれぞれのβ係数で重み付けされたそれらに対するZ‐スコアを合計し、Zスコアの加重和を「バイオマーカースコア」と呼ぶ。
【0064】
モデル1調整後の有意であったすべてのCox比例ハザードモデルを、BMI、収縮及び拡張期血圧、抗項血圧治療、ベースライン前の心筋梗塞、糖尿病、LDL、HDL及び空腹時インスリンと共に全てのモデル1共変量を含むモデル2共変量(ガンのサブタイプの分析は別として)に関してさらに調整をした。
【0065】
ガンのサブタイプの分析のためのCox比例ハザードモデルでは、具体的に分析されたものより起こりそうなガンの他のサブタイプを有する対象を、「対照群」から除外したので、サンプルサイズは全サンプルサイズと異なり、及び異なるガンサブタイプ分析の間で変化し、最初のガンサブタイプ事象を、打ち切りなしでガンの他のサブタイプにより先行されることを可能にしたので、それぞれのサブタイプに対する事象の数は、最初の事象の全体にわたる分布と異なる(表2)。
【0066】
すべてのCox比例ハザードモデルでは、対象を死亡、スウェーデンから移住又は追跡調査の終了という事象の時点で打ち切った。ハザード仮説の比例を、Schoenfeldのグローバルテストを使用して確認した。
【0067】
累積発生率(ベースラインから開始)の粗カプラン マイヤー(Kaplan-Meier)曲線を、起こりそうなガンの分析におけるバイオマーカースコア四分位数の比較のために作成した。
【0068】
すべての分析をスタータ(Stata)ソフトウェアバージョン8.0(Stata Corp)を使用して行い、両側P値<0.05を通じて統計的に有意であると見なした。
【0069】
結果
追跡調査の間のベースライン特性及びガンの進行
ベースライン試験の前およびベースライン試験時にガンを有しない調査集団の特性を、表1に示す。男性と比較して、コペプチンが、女性においてより低かったのに対して、N‐BNP、MR‐pro‐ANP及びMR‐pro‐ADMのベースライン血漿濃度は、有意に高かった。追跡調査期間(男性において中央値(四分位範囲)14.6(13.6‐15.2)年、女性において14.8(14.1‐15.6))の間に、男性において366の最初のガン事象が起こり、女性において368の最初のガン事象が起こった。起こりそうなガン事象の様々なサブタイプの完全な範囲を表2に示す。男性では、起こりそうなガンの最も一般的な形態は、前立腺ガン(40.4%)、大腸ガン(10.4%)、肺及び気管癌(8.5%)並びに尿路ガン(7.7%)であったのに対し、女性では、乳ガン(37.5%)、大腸ガン(12.0%)、肺及び気管ガン(7.1%)、尿路ガン(3.8%)、子宮体ガン(5.2%)、子宮頸ガン(3.5%)並びに卵巣ガン(3.8)が優位であった。
【0070】
バイオマーカー及び起こりそうなガン
すべての分析において、ハザード仮説の比例を満たした。男性では、MR‐pro‐ANP及びコペプチンそれぞれと起こりそうなガンとの間で独立した関係があり、MR‐ADMと起こりそうなガンとの間で境界有意関係があった(表4)。四分位数の分析中で示したように、起こりそうなガンとの関連は、MR‐pro‐ANP、コペプチン、及びMR‐ADMの分布にわたって、等級別になっているように思われる。その一方、N‐BNPは、1.01(0.90‐1.13;P=0.931)のN‐BNPにおける標準偏差増加あたりのハザード比(95%信頼区間)を有し、起こりそうなガンと無関係であった。MR‐pro‐ANP、コペプチン及びMR‐ADMを、モデル1共変量と共にモデル中に同時に入れ、0.1>の保持P値で変数減少を適用した場合、3つのバイオマーカーは、MR‐pro‐ANPに関して0.83(0.75‐0.93;P=0.001)、コペプチンに関して1.14(1.01‐1.29;P=0.028)、及びMR‐pro‐ADMに関して1.12(1.00‐1.24;P=0.042)の1標準偏差増加あたりのバイオマーカーにおけるハザード比を全て保持し、将来のガンの進行と有意に関連した。3つのバイオマーカーと起こりそうなガンとの間の関係の加算効果推定値を得るために、バイオマーカースコア(MR‐pro‐ANPに対して負の成分を有するが、コペプチン及びMR‐pro‐ADMに対して正である)を、モデル1共変量と共にCox比例ハザードモデル中に入れた。起こりそうなガンに対する1標準偏差増加あたりのバイオマーカースコアのハザード比は非常に有意であり、バイオマーカースコアの最上位対最下位の四分位数が、将来のガンのリスクについて約2倍異なることを特定した(表4及び
図1)。モデル2における追加調整では、これらの結果は変化しなかった(未記載)。その一方で、本発明者等は、女性間で任意の3つのバイオマーカー間又はバイオマーカースコアの関連性の証拠を見出せなかった(表6)。なぜバイオマーカーの関連性が男性では機能するが、女性では機能しないのかに関して直接の及び妥当な説明がないので、この知見が一般的に真実かどうかを、有効性を確認する試験において分析する必要がある。
【0071】
バイオマーカー及びガンのサブタイプ
男性におけるバイオマーカーとガン感受性との関係が、ガンの特定のサブタイプによって生じるのかを試験するために、本発明者等は、主要なガン形態の部分分析を行った。個々のバイオマーカーは、バイマーカーが一般的なガン感受性に関連することを示唆している男性における任意の主なガンのサブタイプ(前立腺、大腸、尿路及び肺/気管ガン)とどれも有意には関連しなかった(表7)。そういうわけで、ガンサブタイプ特異的バイオマーカースコアに対する標準偏差あたりのハザード比の点推定値は、すべて1以上であり(1.13〜1.25の間)、最も一般的な男性のガンの形態、すなわち前立腺ガンは、有意であった(P=0.041)(表7)。女性では、バイオマーカーと一般的なガン感受性との間の関連性の分析において、本発明者等は、女性におけるガンの主要なサブタイプとの関連の証拠を見出せなかった(表3)。
【0072】
集団の若年及び高齢対象におけるバイオマーカーと起こりそうなガンとの関連性
ガンのスクリーニング及び任意の予防可能性は、相対的に寿命が長く残っている対象で最も意味がありそうである。加えて、心不全及び高血圧、同様に降圧薬の使用など、試験されたバイオマーカーのレベルに影響を与える心臓血管の状態は、加齢とともに急激に増加し、バイオマーカーとガンとの間の任意の関連性を分かりにくくするかもしれない。本発明者等は、従って、年齢の中央値(男性に関して範囲45.9‐57.9歳、及び女性に関して45.9‐57.7歳)(「若年男性」及び「若年女性」)未満の対象、並びに年齢の中央値(男性に関して範囲57.9‐68.0歳、女性に関して57.7‐67.9歳)(「高齢の男性」及び「高齢の女性」)超の対象について、別々に3つのバイオマーカーと起こりそうなガンとの関連性を試験した。
【0073】
若年男性(n=844の対象で、追跡調査の間にn=133の最初の起こりそうなガンを発症)では、1標準偏差バイオマーカー増加あたりのハザード比は、3つのバイオマーカー全てに関して有意であり、総じて男性集団中よりも著しく高かった(表4)。バイオマーカースコアのハザード比は、全ての男性間よりも約2倍高かった。四分位数分析では、ガンのリスクは、バイオマーカースコアで徐々に増加することを示し、最上位対最下位の四分位数の間のガンリスクの差は、3倍超であった。モデル2における追加調整では、これらの結果は変化しなかった(未記載)。高齢の男性(n=884の対象で、追跡調査の間にn=233の最初の起こりそうなガンを発症)では、本発明者等は、バイオマーカーと起こりそうなガンとの間に有意な関連性を見出さなかった(表4)。従って、3つの試験したバイオマーカーのそれぞれ、及び特に3つの組み合わせは、強力に及び独立して男性試験集団の半分である若年でガンを予測し、関連性を生じさせると思われる関係が全男性群で見られた。全ての男性でのガンの主要なサブタイプとバイオマーカーの関連性の分析の結果と同様に、中央値年齢未満の男性での対応する分析では、一般的なガン感受性で観察されたバイオマーカーの関連性を生じさせるガンの任意の特定のサブタイプを明らかにしなかった。しかしながら、期待したように、バイオマーカースコアにおける標準偏差あたりのハザード比の点推定値は、より高く(1.27‐2.57の間の範囲)、ガンの主要な4つのサブタイプの全てに対する対応するP値は、<0.10であった(0.031‐0.093の間の範囲)(表7)。
【0074】
女性では、本発明者等は、若年(n=1147の対象で、追跡調査の間にn=150の最初の起こりそうなガンを発症)又は高齢(n=1146の対象で、追跡調査の間にn=218の最初の起こりそうなガンを発症)の女性をいずれも試験したが、任意のバイオマーカーのガンとの関連性を検出できなかった(表6)。
【0075】
初期の事象の除外
仮に男性における3つのバイオマーカーと起こりそうなガンとの関連性が、ガン発症を予測するための方法に関連し、又は不顕性及びまだ診断されていないガンにより実際生じるのかを試験するために、本発明者等は、全ての男性(366事例から67事例を除外)及び若年男性(133事例から20事例を除外)の分析について追跡調査の最初の4年内に診断されたすべてのガン事象を除外した。これらの除外後、結果は、全ての男性において、MR‐pro‐ANPに関して0.82(0.71‐0.95;P=0.009)、コペプチンに関して1.16(1.02‐1.33;P=0.023)、MR‐pro‐ADMに関して1.13(0.99‐1.29;P=0.081)、及びバイオマーカースコアに関して1.28(1.13‐1.44;P<0.001)の1標準偏差増加あたりのハザード比を有し、初期の事象を除去せずに取得した結果と同様であった。若年男性では、対応する1標準偏差増加あたりのハザード比は、MR‐pro‐ANPに関して0.71(0.58‐0.86;P=0.001)、コペプチンに関して1.24(1.01‐1.54;P=0.037)、MR‐pro‐ADMに関して1.19(0.99‐1.44;P=0.069)、及びバイオマーカースコアに関して1.49(1.24‐1.79;P<0.001)であった。従って、本発明者等の結果は、低下したMR‐pro‐ANPのレベル並びに増加したコペプチン及びMR‐pro‐ADMのレベルが、既に存在しているが診断されないガンのマーカーというよりもガンの発症を予測することを示す。
【0076】
バイオマーカー及びガン死亡率
次に本発明者等は、バイオマーカーが、ガン死亡率のリスクと関連するかどうかを試験した(表8)。1768の男性間で、追跡調査の間に107の対象が、ガンで死亡した。MR‐pro‐ANP及びコペプチンは、ガン死亡率と有意に関連しなかったのに対して、MR‐pro‐ADMの1標準偏差の増加は、ガン死亡率の1.25倍増加したリスクと関連し、MR‐pro‐ADMの最上位の四分位数中の男性対最下位の四分位数中の男性では、ガン死亡率のほぼ2倍のリスクを有した(表8)。関連性は主にMR‐pro‐ADMよって構成されるが、バイオマーカースコアはまた、男性においてガン死亡率のリスクと関連した(表8)。モデル2調整後、バイオマーカースコアはまだ有意(P=0.031)であったのに対して、男性でのMR‐pro‐ADMとガン死亡率との間の関連性は、境界有意(P=0.085)であった。
【0077】
男性では、追跡調査の間に、合計259の死亡(原因に関わらず)が起こり、モデル2調整後、MR‐pro‐ADMレベルの1標準偏差の増加は、1.16(1.01‐1.34;P=0.035)のハザード比で全死亡率を有意に予測したのに対して、MR‐pro‐ANP(1.04(0.89‐1.21);P=0.655)、コペプチン(1.02(0.89‐1.16);P=0.790)、及びバイオマーカースコア(1.06(0.93‐1.21);P=0.404)では、予測しなかった。
【0078】
男性集団の半分である若年では、追跡調査の間、33の対象がガンで死亡した。MR‐pro‐ADMの1標準偏差の増加は、ガン死亡率の1.55倍増加したリスクと関連し、ガンで死亡するリスクは、MR‐prp‐ANP及びコペプチンでは、ガン死亡率とそれぞれ有意に関連しなかったのに対して(表8)、MR‐pro‐ADMの最下位の四分位数と比べて最上位の四分位数では2.5倍高く、バイオマーカースコアの最下位の四分位数と比べて最上位の四分位数では4倍高かった(表8)。モデル2調整後、MR‐pro‐ADM(P=0.003)及びバイオマーカースコア(P=0.002)は、ガン死亡率と有意な関連性を維持した。
【0079】
若年男性の間では、追跡調査の間に合計66の死亡(原因にかかわらず)が起こり、モデル2調整後、MR‐pro‐ADMレベルの1標準偏差の増加は、1.35(1.04‐1.75)(P=0.023)のハザード比で全死亡率を予測したのに対して、MR‐pro‐ANP(1.04(0.78‐1.38);P=0.792)、コペプチン(1.05(0.81‐1.37);P=0.702)、及びバイオマーカースコア(1.17(0.91‐1.52);P=0.227)で予測しなかった。
【0080】
男性集団の半分である高齢及び女性(全ての女性、若年女性及び高齢の女性)の間では、MR‐pro‐ADMの四分位数分析を除いて、バイオマーカーレベルとガン死亡率との間に関連性がなく(表8及び表5)、任意のこれらの集団における全死亡率との有意な関連性はなかった(未記載)。
【0081】
表1:ベースラインでの男性及び女性試験サンプルの臨床特性
表2:男性及び女性における最初の起こりそうなガン事象のサブタイプ
表3:女性におけるバイオマーカーと起こりそうなガンの主要なサブタイプとの関連性
表4:全男性における及び年齢の中央値未満及び超の男性におけるバイオマーカーと起こりそうなガンとの関連性
表5:全女性における及び年齢の中央値未満及び超の女性におけるバイオマーカーレベルとガン死亡率との関連性
表6:全女性における及び年齢の中央値未満及び超の女性におけるバイオマーカーと起こりそうなガンとの関連性
表7:ベースラインでの全男性における及び年齢の中央値未満の男性におけるバイオマーカーと起こりそうなガンの主要なサブタイプとの関連性
表8:全男性における及び年齢の中央値未満及び超の男性におけるバイオマーカーレベルとガン死亡率との関連性
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】