(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062918
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】皮膚科的病理の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20170106BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P17/06
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-502901(P2014-502901)
(86)(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公表番号】特表2014-509662(P2014-509662A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012031803
(87)【国際公開番号】WO2012135812
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年4月2日
(31)【優先権主張番号】61/470,538
(32)【優先日】2011年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510312617
【氏名又は名称】エックスバイオテク,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XBIOTECH,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シマール,ジョン
【審査官】
春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−510443(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/148575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尋常性乾癬治療用薬剤の製造における、抗IL−1α抗体の使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用において、前記抗IL−1α抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項2に記載の使用において、前記モノクローナル抗体が、IgG1であることを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項2に記載の使用において、前記モノクローナル抗体が、MABp1の相補性決定領域を含むことを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項2に記載の使用において、前記モノクローナル抗体が、MABp1であることを特徴とする使用。
【請求項6】
被験体における尋常性乾癬を治療するための医薬組成物であり、前記医薬組成物が、抗IL−1α抗体を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の医薬組成物において、前記抗IL−1α抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の医薬組成物において、前記モノクローナル抗体が、MABp1の相補性決定領域を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の医薬組成物において、前記モノクローナル抗体が、MABp1であることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年4月1日に出願された米国仮特許出願第61/470,538号明細書からの優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府により支援された研究に関する声明
該当せず。
【0003】
本発明は、全般的には、医学、皮膚病学、及び免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の炎症を低減するため並びに尋常性乾癬及び尋常性座瘡を含む炎症性皮膚疾患を治療するためのインターロイキン−1α(IL−1α)に特異的に結合する抗体(Abs:antibodies)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
炎症性皮膚疾患の座瘡、酒さ(赤鼻)、及び乾癬は、何百万人もの人々を悩ましている。これらは通常致命的ではないが、これらの病状は、肉体的不快感を引き起こし、情緒的な健康に影響を及ぼす。現在、コルチコステロイド類、ビタミンD同類体類、コールタール、紫外線、レチノイド類、メタトレキセート、シクロスポリン、ヒドロキシ尿素、抗生剤、及びTNFα阻害剤等の生物学的薬剤を含む、炎症性皮膚疾患のための非常に多くの異なる治療法がある。これら療法は多くの患者に有用であることは証明されているが、望ましくない副作用を引き起こし、全ての病状に適するものはない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、IL−1αに特異的に結合するmAbが皮膚の炎症を低減するために並びに尋常性乾癬及び尋常性座瘡を含む炎症性皮膚疾患を治療するために有用であるという発見に基づく。IL−1αレベルが乾癬性皮膚において減少するという過去の報告(例えば、Bonifatiら著、J Biol Regul Homeost Agent.1997年10月〜12月;11(4):133−6)及び乾癬の発症における原因物質としてのアナキンラ(IL−1受容体拮抗薬)を示唆する報告(Gonzalez−Lopezら著、British Journal of Dermatology,158:1146−1148,2008年)を含む多くの理由のために、この発見は意外なものであった。
【0006】
したがって、本発明は、ヒト被験者における皮膚の炎症を低減する方法を特徴とする。この方法は、被験者において皮膚炎症を低減するために効果的な、薬学的に許容可能な担体及びIL−1αに選択的に結合する薬剤の量を含む医薬組成物を被験者に投与するステップを含むことができる。この薬剤は、モノクローナル抗体(例えば、IgG1イソタイプの)、MABp1の相補性決定領域を含むモノクローナル抗体、又はMABp1等の抗−IL−1α抗体であり得る。この皮膚炎症は、尋常性座瘡及び/又は尋常性乾癬に関連し得る。
【0007】
例えば、本発明の一態様は、任意の標準皮膚医学試験によって測定されるような、被験者における皮膚炎症の症状(例えば、発赤、腫れ、白血球侵潤、又は病巣の発達)を、少なくとも約10%まで(例えば、少なくとも8、9、10、15、17、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%)低減するために効果的な、薬学的に許容可能な担体及び抗−IL−1αAb(又はIL−1αに特異的及び/又は選択的に結合する他の薬剤)の量を含む医薬組成物を被験者に投与することによって、ヒト被験者の皮膚炎症を低減する方法を特徴とする。この抗−IL−1αAbは、IgG1等のmAbであり得る。抗―IL−1αAbは、MABp1として示されるmAb又はMABp1の1つ以上の相補性決定領域(CDRs:complementarity determining regions)を含むmAbであることができる。この皮膚炎症は、座瘡又は乾癬に関連し得る。この医薬組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、又は皮内注射によって被験者に投与され得る。この方法において、投与量は少なくとも0.25(例えば、少なくとも0.2、0.5、0.75、1、2、3、4、又は5)mg/mlであり得る。
【0008】
他の態様では、本発明は、被験者における皮膚炎症を処置するためのIL−1αに選択的に結合する薬剤及び被験者における皮膚炎症を治療するための医薬組成物の使用を含み、この医薬組成物は、IL−1αに選択的に結合する薬剤を含む。前述において、この薬剤は、モノクローナル抗体(例えば、IgG1イソタイプの)、MABp1の相補性決定領域を含むモノクローナル抗体、又はMABp1等の抗−IL−1α抗体であり得、皮膚炎症は、尋常性座瘡及び/又は尋常性乾癬に関連し得る。
【0009】
異なる旨を特記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。生物学的用語の一般的に理解される定義は、Riegerら著、Glossary of Genetics:Classical and Molecular,第5版、Springer−Verlag:New York,1991年;及びLewin著、Genes V,Oxford University Press:New York,1994年で見ることができる。医学用語の一般的に理解される定義は、Stedman’s Medical Dictionary,第27版、Lippincott,Williams & Wilkins,2000年で見ることができる。
【0010】
本明細書で使用するとき、「抗体」又は「Ab」とは、免疫グロブリン(Ig)、同一又は異種のIgs、若しくはIgsの混合物の溶液である。「Ab」はまた、Fab、Fab’及びF(ab’)
2断片;並びにscFv’s等の断片及び操作されたIgsの変種、ヘテロ結合Abs、並びに抗原特異性を付与するためにIg由来のCDRsを使用する同様な人工分子も指す。「モノクローナル抗体」又は「mAb」とは、1つのクローンB細胞系によって発現されたAb又は特定の抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位の1つの種のみを含有するAb分子の集団である。「ポリクローナルAb」とは、異種Absの混合物である。典型的には、ポリクローナルAbは、特定の抗原を、抗原の異なるエピトープと免疫反応する少なくともいくつかの異なるAbsと結合させる無数の異なるAb分子を含み得る。本明細書で使用するとき、ポリクローナル抗体Abとは、2つ又はそれ以上のmAbsの混合物であり得る。
【0011】
Abの「抗原結合部分」とは、AbのFab部分の可変領域内に含まれ、これは抗原特異性をAbに付与するAbの部分(即ち、典型的には、Abの重鎖及び軽鎖のCDRsによって形成される三次元ポケット)である。「Fab部分」又は「Fab領域」とは、パパインで消化したIgのタンパク質分解性断片で、そのIgの抗原結合部分を含有するものである。「非Fab部分」とは、Fab部分内にはないAbの部分であり、例えば、「Fc部分」又は「Fc領域」である。Abの「不変領域」とは、可変領域の外側のAbの部分である。不変領域内に一般的に包含されるものは、Abの「エフェクタ部分」であり、これは、免疫応答を促進する他の免疫系成分に結合する役割を果たすAbの部分である。したがって、例えば、補体成分又はFc受容体に結合する(その抗原結合部分を介することなく)Ab上の部位は、そのAbのエフェクタ部分である。
【0012】
Ab等のタンパク質分子を指すとき、「精製された」とは、かかる分子に天然状態で随伴する成分から分離されていることを意味する。典型的には、非Abタンパク質又は天然状態で付随する他の天然の有機分子を含まず、Ab又はタンパク質が重量で少なくとも約10%(例えば、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、及び100%)である場合、Ab又はタンパク質は精製されている。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、又はHPLC分析法によって測定され得る。化学的に合成されたタンパク質又は天然に生じた細胞型以外の細胞型において生成された他の組換え体タンパク質も「精製される」。
【0013】
「結合」、「結合する」、又は「反応する」とは、試料中で1つの分子が特定の第2の分子を認識しそれに付着するが、その試料中で他の分子を実質的に認識せず又は付着しないことを意味する。一般的に、別の分子に「特異的に結合する」Abは、他の分子に関して、約10
5、10
6、10
7、10
8、10
9、10
10、10
11、又は10
12リットル/モルを超えるK
dを有する。第1の分子に「選択的に結合する」Abは、第1のエピトープでこの第1の分子に特異的に結合するが、この第1のエピトープを有さない他の分子には特異的に結合しない。例えば、IL−1αに選択的に結合するAbは、IL−1α上のあるエピトープに特異的に結合するが、IL−1β(このエピトープを有さない)には特異的に結合しない。
【0014】
「治療的有効量」とは、処置された動物又はヒトにおいて医学的に望ましい効果(例えば、疾患又は疾患の症状の軽減又は予防)を発揮することが可能な量である。
【0015】
本明細書に記載されるものと同様又は等価な方法及び材料が、本発明の試験又は実施において使用され得るが、好適な方法及び材料は以下に記載されている。本明細書に記載される全ての出願及び出版物は、その全体が参照により組み込まれる。コンフリクトの場合には、定義を含めた本明細書が優先するだろう。これに加えて、以下に説明される特定の実施形態は、例示にすぎず、限定的であることを意図してはいない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、被験者における皮膚科的病理の1つ以上の症状を軽減することを含む皮膚炎症を低減するための組成物及び方法を包含する。以下に記載される好ましい実施形態は、これら組成物及び方法の適応を例示する。しかしながら、これら実施形態の記載から、以下に提供された記載に基づいて、本発明の他の態様を実施し及び/又は実行することができる。
【0017】
一般的方法
従来の免疫学的及び分子生物学的技法を含む方法が本明細書で記載される。免疫学的方法(例えば、抗原−Ab複合体の検出及び位置確認のためのアッセイ、免疫沈降法、イムノブロッティング等)は、一般的に当該技術分野で既知であり、Current Protocols in Immunology、Coliganら著、John Wiley & Sons,New York等の方法論学術論文に記載されている。分子生物学の技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、第1〜3巻、Sambrookら編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press編集,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001年;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編集、Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York等の学術論文に詳細に記載されている。Ab法は、Handbook of Therapeutic Abs,Dubel,S.編集,Wiley−VCH,2007年に記載されている。医学的処置の一般法は、McPhee及びPapadakis著,Current Medical Diagnosis and Treatment 2010年,第49版,McGraw−Hill Medical,2010年;及びFauciら著,Harrison‘s Principles of Internal Medicine,第17版,McGraw−Hill Professional,2008年に記載されている。皮膚病学における方法は、Jamesら著,Andrews’ Diseases of the Skin:Clinical Dermatology−Expert Consult,第11版,Saunders著,2011年;及びBurnsら著,Rook’s Textbook of Dermatology,第8版,Wiley−Blackwell,2010年に記載されている。
【0018】
皮膚炎症の治療
本明細書に記載の組成物及び方法は、哺乳類被験体における皮膚炎症(例えば、酒さ、湿疹、乾癬、乾燥症、皮膚炎、座瘡、壊疽性膿皮症、蕁麻疹、類苔癬病、水疱性類天疱瘡等の水疱性疾患、皮膚血管炎、及び肉芽腫性皮膚疾患)を治療するために有用であり、この方法は、被験体の炎症の少なくとも1つの特性を改善する(例えば、病巣の数又は寸法における低減、発赤の低減、及び痒みの低減)ために効果的な抗−IL−1αAbの量を含む医薬組成物を被験体に投与することによる。哺乳類被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及びブタを含む皮膚炎症を患ういずれかであり得る。ヒト被験者は、男性、女性、成人、子供、年長者(65歳以上)、及び他の疾患を有するヒトである。特に好ましい被験者は、レチノイド、抗生剤、ステロイド又はTNFα阻害剤等のサイトカイン阻害剤等の他の抗炎症剤又は抗菌剤による治療後に彼らの疾患が進行したか又はこれらに反応しなかった被験者である。抗−IL−1αAbが、MABp1等の真のヒトAbである場合(例えば、ヒト被験者において天然に発現されるもの)、治療用抗体の過去の投与のためにヒトの抗ヒト抗体応答を発症した被験者が好ましい。抗−IL−1αAbによる治療に感受性を示すいかなるタイプの炎症性皮膚疾患も標的にされ得る。抗−IL−1αAbの投与は、尋常性座瘡及び尋常性乾癬を治療するために特に有効であると考えられる。
【0019】
IL−1αを標的にする抗体及び他の薬剤
IL−1αに特異的に結合しかつ被験体において皮膚炎症の特徴及び/又は尋常性座瘡又は尋常性乾癬等の炎症性皮膚疾患を低減する任意の好適なタイプのAbが、本発明において使用され得る。例えば、使用される抗−IL−1αAbは、mAb、ポリクローナルAb、mAbsの混合物、若しくはAb断片又はscFv等の操作されたAb様分子であり得る。AbのKaは、少なくとも1×10
9M
−1又はそれより大きい(例えば、9×10
10M
−1、8×10
10M
−1、7×10
10M
−1、6×10
10M
−1、5×10
10M
−1、4×10
10M
−1、3×10
10M
−1、2×10
10M
−1、又は1×10
10M
−1を超える)ことが好ましい。好ましい実施形態では、本発明は、(i)ヒトIL−1αに対して非常に高い結合親和性(例えば、少なくともナノモル又はピコモルの)を呈する抗原結合可変領域及び(ii)不変領域を含有する完全なヒトmAbを利用する。ヒトAbは、IgG1であることが好ましいが、これはIgM、IgA、又はIgE等の異なるイソタイプのもの、若しくはIgG2、IgG3、又はIgG4等のサブクラスのものであってもよい。特に有用なmAbの一例はMABp1であり、これは2009年6月1日に出願された米国特許出願第12/455,458号明細書に記載されるIL−1αに特異的なIgG1 mAbである。他の有用なmAbsは、MABp1の少なくとも1つのCDRsを含有するが、好ましくはMABp1の全てのCDRsを含有するようなmAbsである。
【0020】
ヒトIL−1αに特異的なIgを発現するBリンパ球は、ヒトにおいて自然に生じるために、mAbsを発生させる現在好まれている方法は、まず初めに被験者からかかるBリンパ球を単離し、次いでこれが培養中で連続して複製され得るように不死化することである。ヒトIL−1αに特異的なIgを発現する、多数の自然発生するBリンパ球が欠乏する被験者は、かかるBリンパ球の数を増加させるために、1つ以上のヒトIL−1α抗原で免疫化されてもよい。ヒトmAbsは、ヒトAb分泌細胞(例えば、ヒト血漿細胞)を不死化することによって調製される。例えば、米国特許第4,634,664号明細書を参照されたい。
【0021】
例示的方法において、1人以上の(例えば、5、10、25、50、100、1000人又はそれ以上の)ヒト被験者が、彼らの血液中のかかるヒトIL−1αに特異的なAbの存在についてスクリーニングされる。次いで所望のAbを発現するこれら被験者が、Bリンパ球ドナーとして用いられることができる。1つの可能な方法において、ヒトIL−1αに特異的なAbを発現するBリンパ球を所有するヒトドナーから末梢血液が採取される。かかるBリンパ球は、次いで、ヒトIL−1αに特異的なIgを発現するBリンパ球を選択するために、例えば細胞選別法(例えば、蛍光活性化細胞選別法、「FACS(fluorescence activated cell sorting)」、又は磁気ビーズ細胞選別法)によって血液試料から単離される。次いで、これら細胞は、既知の技法に従って、ウイルス形質転換(例えば、EBVを使用して)によって、又はヒト骨髄腫等の別の不死化細胞に融合することによって不死化され得る。ヒトIL−1αに特異的なIgを発現するこの集団内のBリンパ球が、次いで限界希釈法によって単離され得る(例えば、ヒトIL−1αに特異的なIgに関して陽性であるマイクロタイタープレートのウェル内の細胞が選択され、継代培養され、所望のクローン細胞系が単離され得るまで、このプロセスが繰り返される)。例えば、Goding著、MAbs:Principles and Practice,59−103頁,Academic Press,1986年を参照されたい。ヒトIL−1αに対して少なくともナノモル又はピコモルの結合親和性を有するIgを発現するこれらクローン細胞系が好ましい。これらクローン細胞系によって分泌されたMAbsは、塩カット、サイズ排除、イオン交換分離、及び親和性クロマトグラフィー等の従来のIg精製法によって、培養基又は体液(例えば、腹水)から精製され得る。
【0022】
不死化Bリンパ球は、mAbsを直接的に生成するために、インビトロ培養において使用され得るが、ある場合には、異種発現システムを使用してmAbsを生成することが望ましい可能性がある。例えば、米国特許出願第11/754,899号明細書に記載される方法を参照されたい。例えば、ヒトIL−1αに特異的なmAbをコード化する遺伝子がクローンされ、異種宿主細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、骨髄腫細胞、及び大腸菌(E.coli)細胞)中での発現のために、発現ベクター(例えば、プラスミド系発現ベクター)に導入されることもできる。Igsは重(H)鎖及び軽(L)鎖をH
2L
2構造で含有するために、それぞれをコード化する遺伝子が別個に単離され、異なるベクターにおいて発現され得る。
【0023】
被験者が抗−Ab応答を発症する可能性がより高いために、通常あまり好ましくないが、異なる動物種に由来の異なる部分を有する(例えば、ヒトIgの不変領域に融合されたマウスIgの可変領域)抗原結合分子であるキメラmAbs(例えば、「ヒト化」mAbs)が、本発明で使用されてもよい。かかるキメラAbsは、当該技術分野で既知の方法によって調製され得る。例えば、Morrisonら著,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81:6851,1984年;Neubergerら著,Nature,312:604,1984年;Takedaら著,Nature,314:452,1984年を参照されたい。同様に、Absは、当該技術分野で既知の方法によってヒト化され得る。例えば、所望の結合特異性を備えるmAbsは、種々の製造販売業者によって、若しくは米国特許第5,693,762号明細書、同第5,530,101号明細書、又は同第5,585,089号明細書に記載されるようにヒト化され得る。
【0024】
本明細書に記載のmAbsは、VH及びVLドメインシャッフリング(Marksら著,Bio/Technology 10:779−783,1992年)、高度可変領域(HVRs:hypervariable regions)及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異生成(Barbasら著,Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813,1994年;Schierら著,Gene 169:147−155,1995年;Yeltonら著,J.Immunol.155:1994−2004年,1995年;Jacksonら著,J.Immunol.154(7):3310−9,1995年;及びHawkinsら著,J.Mol.Biol.226:889−896,1992年)等の既知の方法によって、これらの結合特異性を増強又は別の方法で変更するために、親和性成熟されてもよい。Abのアミノ酸配列変異体は、Abをコード化するヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって調製され得る。これに加えて、mAbsをコード化する核酸配列への修飾は、ある発現システムにおけるmAbの生成を増強させるために、(例えば、mAbのアミノ酸配列を変更することなく)改変され得る(例えば、所与の発現システムに対するイントロン削除及び/又はコドン最適化)。本明細書に記載のmAbsは、別のタンパク質(例えば、別のmAb)又は非タンパク質分子への抱合によって修飾されることができる。例えば、mAbは、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマー又はカーボンナノチューブに抱合され得る(例えば、Kamら著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600−11605,2005年を参照)。米国特許出願第11/754,899号明細書を参照されたい。
【0025】
好ましくは、ヒトIL−1αに特異的なmAbの高力価が、最低限の副作用で被験者に投与され得ることを保証するために、本発明のmAb組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.9重量%又はそれ以上の重量%で純粋(いずれの賦形剤も排除して)である。本発明のmAb組成物は、単一タイプのmAb(即ち、単一のクローンBリンパ球系から生成されたmAb)のみを含有してもよく、又は2つ又はそれ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の)異なるタイプのmAbsの混合物を含有してもよい。
【0026】
ヒトIL−1α mAbsの機能を変更又は増強するために、ヒトIL−1α mAbsは、サイトトキシン等の別の分子と抱合されてもよい。ヒトIL−1αに特異的なmAbは、1つ以上のサイトトキシンと抱合され、IL−1αを発現する細胞をより効果的に殺傷する。本発明での使用のためのサイトトキシンは、ヒトIL−1αに特異的なmAbに抱合され得る任意の細胞障害剤(例えば、細胞と接触後にその細胞を殺傷することが可能な分子)であることができる。サイトトキシンの例としては、限定されるものではないが、放射線核種(例えば、
35S、
14C、
32P、
125I、
131I、
90Y、
89Zr、
201Tl、
186Re、
188Re、
57Cu、
213Bi、及び
211At)、結合放射線核種、及び化学療法剤が挙げられる。サイトトキシンの更なる例としては、低代謝剤(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキサート(MTX)、フルダラビン等)、抗微小管剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、タキサン(パクリタキセル及びドセタキセルなどの)等)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソウレア(BCNU)等)、プラチナ剤(例えば、シスプラチン(cDDPとも呼ばれる)、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM−216、CI−973等)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、抗生剤(例えば、ミトマイシン−C)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、テノポシド、及びカンプトテシン)、或いはリシン、ジフテリア毒(DT)、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、サポリン、アメリカヤマゴボウウイルスタンパク質、臭化エチジウム、グルココルチコイド、炭疽毒素及びその他の他の細胞障害剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第5,932,188号明細書を参照されたい。
【0027】
上記記載のIL−1αに特異的なAbsは、本発明における使用に好ましいが、場合によっては、IL−1αを特異的に標的とする他の薬剤が、それらの投与が炎症性皮膚疾患の特性の改善に導く限りにおいて、使用されてもよい。これら他の薬剤としては、抗−IL−1α Absの生成を引き起こすワクチン、IL−1αに結合するタンパク質又はペプチド、及びIL−1αを特異的に標的とする小有機分子を挙げることができる。IL−1βを特異的に標的とする他の薬剤に特異的に結合しないものが好ましい。
【0028】
医薬組成物及び方法
抗−IL−1α Ab組成物(及びIL−1αを特異的に標的とする他の薬剤)は、投与のモード及び経路並びに標準的薬務を基準として選択される薬学的に許容可能な担体(例えば、無菌生理食塩水)中で、動物又はヒトに投与され得る。薬学的に許容可能な担体、並びに医薬処方物の列挙は、本分野における標準的なテキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciencesで、又はUSP/NFで見ることができる。他の物質がこの組成物に添加されてもよく、この組成物を安定化し及び/又は保存するために、及び/又は被験体へのそれらの投与を容易にするために、他のステップが取り入れられてもよい。
【0029】
例えば、Ab組成物は、凍結乾燥されてもよく(Draberら著,J.Immunol.Methods.181:37,1995年;及びPCT/US90/01383号明細書を参照)、ナトリウム及び塩化物イオンを含有する溶液中に溶解され、アルブミン、グルコース、マルトース、スクロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール、及びグリシン等の1つ以上の安定化剤を含有する溶液中に溶解され、濾過され(例えば、0.45及び/又は0.2ミクロンのフィルターを使用して)、β−プロピオラクトンと接触され、及び/又は殺菌剤(例えば、洗剤、有機溶媒、及び洗剤と有機溶媒の混合物)を含有する溶液に溶解されてもよい。
【0030】
Ab組成物は、任意の好適な技法によって、動物又はヒトに投与され得る。典型的には、かかる投与は、非経口(例えば静脈内、皮下、筋肉内、又は腹腔内投入)であるだろう。この組成物はまた、例えば、局所塗布によって標的部位(例えば、皮膚)に直接的に投与されてもよい。送達の他の方法、例えば、リポソーム送達又はこの組成物で含浸させたデバイスから拡散が、当該技術分野で既知である。この組成物は、単回ボーラスで、複数回注射で、又は連続輸注によって(例えば静脈内で又は腹腔透析によって)投与され得る。
【0031】
治療的有効量は、処置された動物又はヒトで医学的に望ましい結果を生むことが可能な量である。抗−IL−1α Ab組成物の有効量は、皮膚炎症の1つ以上の症状における改善によって測定されるような、患者における臨床的有効性を示す量である。医学分野で周知のように、任意の1匹の動物又は1人のヒトのための投与量は、被験体のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の組成物、性別、投与の時間及び経路、全身の健康状態、及び同時に投与される他の薬剤を含む多くの因子に依存する。好ましい投与量は、約0.1〜5(例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、又は6)mg/kg体重の範囲である。場合によっては、単回投与が皮膚炎症の発症の解決で有効である。他の場合には、投与は、必要に応じて(皮膚の炎症が繰り返す場合は)、例えば半週、毎週、週2回、週3回、半月、3週毎に1回、毎月、隔月で繰り返して行われる。
【0032】
実施例
実施例1−Xilonix(商標)
Xilonix(商標)は、安定化等張緩衝液(pH6.4)中の15mg/mLのMABp1の無菌の注射可能な液体処方物である。5mLの処方物を含有する各10mLのタイプIホウケイ酸ガラス製血清バイアルを、20mmのDaikyo Flurotecブチルゴムストッパ及びフリップオフアルミニウムシールで密閉する。生成物を、室温までの可動域が許容されて、5±3℃で保管する。薬剤生成物の正確な組成を以下に示す。
【0033】
投与の方法
好適な注射器を使用して、計算された容量を薬剤(mAb)含有バイアル(複数可)から吸引する。次いで、薬剤を被験者に皮下注射する。
【0034】
実施例2−尋常性座瘡の治療
18歳の男性は、患者の腕、背中、胸及び顔に発症する中等度〜重度の尋常性座瘡を発現した。特に背中に病変部の著しい硬変があった。患者は、これが急性的に発生したと説明したが、15歳からの進行性尋常性座瘡疾患と報告された。局所的レチノイド及びコルチコステロイドがある程度の効果で過去に使用された。更に日焼け促進器具の使用による限定的UV治療を用いたが、結果は限定的であった。患者に、Xilonix(商標)(MABp1;15mg/ml)の単回3mlの皮下注射(0.6mg/kgの投与量を示す)を投与した。
【0035】
患者を注入後2時間観察した。明確な注入反応、又は薬剤に対する有害反応はなかった。24時間後、患者を再評価した。肩及び背中上の大きな病変部は、大きさで劇的に減少した。顔面病変部の炎症性浸潤の減少は、投与前と比べての病変部のより少ない発赤及び減少した病変部サイズによって立証された。病変部は乾燥しているように見えた。
【0036】
72時間後に、患者を再試験した。改善は驚くべきものであった。大部分の病変部では炎症が劇的に減少し、或いは多くが完全に見えなくなった。著しい硬変を有した肩及び背中の病変部は回復し、僅かに変色し感触が柔らかいだけであった。患者の顔面は、殆ど完全に正常に見え、患者は彼の皮膚の外見に非常に満足であると述べた。注射後1週間で、患者は継続的改善を示し、皮膚の全ての領域には顕著な病変部がないように見えた。
【0037】
実施例3−皮下注射のためのMABp1の処方物
T2−18C3は、安定化等張処方物緩衝液(pH 6.4±0.1)中の100±5mg/mLのMABp1の無菌液体処方物である。1.4±0.1mLのこの処方物を、20mmのDaikyo Flurotecブチルゴムストッパ及びフリップオフアルミニウムシールで密閉した2mLのタイプIホウケイ酸ガラス血清バイアル中に封入した。この生成物を室温までの可動域が許容されて、5±3℃で、直立で保管した。薬剤生成物の正確な組成を、以下の表2に示す。
【0038】
実施例4−乾癬の治療
I型尋常性乾癬の既往歴を有する(5歳で診断された)48歳の男性を、T2−18C3で処置した。患者は、彼の兄弟姉妹、父親、及び祖母が同様に発症して、尋常性乾癬の陽性の家族歴を有した。患者は、局所的レチノイド及びビタミンD3調製物で、以前に治療されていたが、改善は最小であった。局所的ステロイド及びUV療法による以前の治療は、効果を示した。T2−18C3の投与の前には、患者は生物学的薬剤による治療履歴はなかった。
【0039】
患者は、0日目に、下腹部にMABp1の皮下注射を2回投与した(合計で160mgのMABp1)。患者は注射を耐え、合併症もなかった。患者の背中を、投与後17時間、41時間、5日、6日及び10日に評価した。17時間では、病変部に関連する発赤で中等度の改善が観察された。41時間では、病変部のサイズ及び発赤での明確に観察可能な減少で、継続的改善が認められた。5日までには、病変部の顕著な回復が観察された。この改善は、6日間を通して継続した。病変部は10日までにほぼ完全に回復した。
【0040】
実施例5−乾癬の治療
True Human(商標)モノクローナル抗体RA−18C3(IL−1αに特異的)の非盲検試験を、中等度〜重度の慢性尋常性乾癬を有するヒト被験者で行った。試験被験者は、0日、21日、及び42日に合計で3回の皮下注射を介して、200mgのRA−18C3の投与を受ける。PASI(Psoriasis Area and Severity Index Assessment:乾癬面積及び重度指標の評価)スコアを、異なる時点で各被験者から得た。最初の5人の評価可能な被験者試験の全ては、56日目にPASIスコアの減少を示した(即ち、疾患の改善)。56日目の最初の5人の評価可能な被験者のPASIスコアの平均減少は、ほぼ50%であった。
【0041】
他の実施形態
本発明がその詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は、例示を意図するもので、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、このことは添付された請求項の範囲によって定義されることが理解されるべきである。他の態様、利点、及び変更は、以下の請求項の範囲内にある。