特許第6062922号(P6062922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062922エッジライト型バックライト装置及び光拡散性部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062922
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】エッジライト型バックライト装置及び光拡散性部材
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20170106BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   F21S2/00 431
   G02B5/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-507933(P2014-507933)
(86)(22)【出願日】2013年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2013058869
(87)【国際公開番号】WO2013146822
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-78591(P2012-78591)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】高井 雅司
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−179475(JP,A)
【文献】 特表2013−503364(JP,A)
【文献】 特開2008−091287(JP,A)
【文献】 実開平07−029532(JP,U)
【文献】 特開2004−126016(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/038754(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、前記導光板の一端部に配置された光源と、前記導光板の光出射面上に光拡散性シートとプリズムシートとを順に有してなるエッジライト型バックライト装置であって、
前記プリズムシートの屈折率が、1.60を超え、
前記導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面における、前記光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して48°〜58°の角度範囲内にあり、
前記光拡散性シートの光出射面の出射光が、前記出射光分布のピークの角度範囲から前記法線方向に対して−90°または90°の出射角度に向かうにつれて漸減することを特徴とするエッジライト型バックライト装置。
【請求項2】
請求項1記載のエッジライト型バックライト装置であって、
前記光拡散性シートが、透明樹脂フィルムの一方の面に拡散層を備えたものであり、
前記拡散層が、バインダー樹脂及び平均粒径5μm以下の粒子を含み、前記粒子の含有割合が、前記バインダー樹脂100重量部に対して50〜150重量部であることを特徴とするエッジライト型バックライト装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエッジライト型バックライト装置であって、
前記光拡散性シートが、前記透明樹脂フィルムの前記拡散層を備えた面とは反対面にバックコート層を備えたものであり、
前記バックコート層が、ナイロン樹脂粒子及び/又はシリコーン樹脂粒子を含有してなることを特徴とするエッジライト型バックライト装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のエッジライト型バックライト装置であって、
前記光拡散性シートが、前記透明樹脂フィルムの前記拡散層を備えた面とは反対面に拡散性バックコート層を備えたものであり、
前記拡散性バックコート層のヘーズが、前記拡散層のヘーズより低いことを特徴とするエッジライト型バックライト装置。
【請求項5】
導光板と、前記導光板の一端部に配置された光源を含んで構成されてなるエッジライト型バックライト装置の、前記導光板の上に配置される光拡散性部材であって、
前記光拡散性部材は、プリズムシートと光拡散性シートを含み、
前記プリズムシートの屈折率が、1.60を超え、
前記導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面における、前記光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して48°〜58°の角度範囲内にあり、
前記光拡散性シートの光出射面の出射光が、前記出射光分布のピークの角度範囲から前記法線方向に対して−90°または90°の出射角度に向かうにつれて漸減することを特徴とする光拡散性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に液晶表示装置等に用いられるエッジライト型バックライト装置に関し、従来のバックライト装置と比較して高い正面輝度及び拡散性が発揮されるバックライト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶表示装置が、ノート型パソコン、デスクトップ型パソコン、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、PDA、カーナビゲーション装置、PND、ゲーム機器、携帯音楽プレーヤなど様々な分野で用いられている。カラー液晶表示装置は、液晶セルとバックライトとを備えており、バックライトの構造としては、光源を拡散板を介して液晶セルの直下に設けた直下型の構造、あるいは光源を導光板の側面に設けたエッジライト方式の構造などが知られている。
【0003】
このようなバックライトには、光源からの光を均一にするために導光板或いは拡散板の光出射面上に光拡散性シート、その他に正面輝度を高めるためにプリズムシートなどの光学部材が積層されている(特許文献1)。
【0004】
特に近年、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話等の分野においては、より高精細な映像が視認可能な環境下にある。このような高精細な映像を視認可能とするため、液晶表示装置に備えられる液晶セルの液晶画素がますます小さくなる傾向にある。液晶画素が小さい液晶表示装置では、液晶の開口率が低下することになるため、従来に比べ光源からの光の透過率が激しく低下し、正面輝度に乏しいものとなってしまう。
【0005】
かかる正面輝度の低下を改善するため、光学部材の改良がなされている(特許文献2)。例えば特許文献2では、プリズムシートに関して従来よりも屈折率が高い設計とすることで、正面輝度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−127314号公報(請求項1、段落番号0034)
【特許文献2】特表2008−503774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2には、屈折率の高いプリズムシート(以下、「高屈折率プリズムシート」という場合もある)とそれを用いたディスプレイデバイスが開示されているが、高屈折率プリズムシートと組み合わせる光拡散性シートに関して具体的な記載はない。高屈折率プリズムシートは、プリズムシートに入射した光が出射する出射角特性が従来のプリズムシートと異なるため、従来の光拡散性シートを単純に用いるのでは高屈折率プリズムシートの出射角特性を十分に有効利用することができず、バックライト装置としての正面輝度及び拡散性が十分に発揮されないことになる。
【0008】
そこで本発明は、高屈折率プリズムシートの特性に適応した高い正面輝度及び拡散性が発揮される光拡散性シートを用いたエッジライト型バックライト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究をした結果、光拡散性シートに入射した光の出射光の出射光分布のピークが特定範囲となるように制御することで、高屈折率プリズムシートと併用した際に、エッジライト型バックライト装置として高い正面輝度及び拡散性が発揮されることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明のエッジライト型バックライト装置は、導光板と、前記導光板の一端部に配置された光源と、前記導光板の光出射面上に順に配置された光拡散性シートと、プリズムシートとを有してなるものであって、プリズムシートの屈折率が、1.60を超えるものであり、前記導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面における、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して+48〜+58°の角度範囲内にあり、光拡散性シートの光出射面の出射光が、出射光分布のピークの角度範囲から法線方向に対して−90°または+90°の出射角度に向かうにつれて漸減することを特徴とするものである。
なお本発明において、出射光の角度は、導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面において、光出射面の法線方向を0°としたとき、法線方向よりも光源が配置されている側に向かう出射光の角度を「−」、その反対側に向かう出射光の角度を「+」と定義する。
【0011】
また、本発明のエッジライト型バックライト装置は、好ましくは光拡散性シートが透明樹脂フィルムの一方の面に拡散層を備えたものであり、前記拡散層がバインダー樹脂及び平均粒径5μm以下の粒子を含み、前記粒子の含有割合が前記バインダー樹脂100重量部に対して50〜150重量部であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のエッジライト型バックライト装置は、好ましくは前記光拡散性シートが前記透明樹脂フィルムの前記拡散層を備えた面とは反対面にバックコート層を備えたものであり、前記バックコート層がナイロン樹脂粒子及び/又はシリコーン樹脂粒子を含有してなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のエッジライト型バックライト装置は、好ましくは前記光拡散性シートが、前記透明樹脂フィルムの前記拡散層を備えた面とは反対面に拡散性バックコート層を備えたものであり、前記拡散性バックコート層のヘーズが、前記拡散層のヘーズよりも低いことを特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明におけるヘーズとは、JIS K7136:2000に基づくヘーズ値をいう。
【0015】
また、本発明の光拡散性部材は、導光板と、前記導光板の一端部に配置された光源を含んで構成されてなるエッジライト型バックライト装置の、前記導光板上に配置されるものであり、プリズムシートと光拡散性シートを含み、前記プリズムシートの屈折率が、1.60を超え、前記導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面における、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して+48〜+58°の角度範囲内にあり、光拡散性シートの光出射面の出射光が、出射光分布のピークの角度範囲から法線方向に対して−90°または+90°の出射角度に向かうにつれて漸減することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のエッジライト型バックライト装置よりも正面輝度及び拡散性に優れたエッジライト型バックライト装置が提供される。
【0017】
また本発明のエッジライト型バックライト装置は、効率良く正面輝度及び拡散性を向上させることができるため、液晶表示装置の低消費電力化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明で用いられるプリズムシートの一実施形態を示す断面拡大図
図2】光拡散性シートからの出射光の出射例を示す図
図3】本発明のエッジライト型バックライト装置の一実施形態を模式的に示す断面図
図4】本発明の評価方法を補足する参考図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のエッジライト型バックライト装置及び光拡散性部材の実施形態を説明する。まずエッジライト型バックライト装置に用いられる光拡散性部材について説明する。
本発明の光拡散性部材は、高屈折率のプリズムシートと光拡散性シートを含むものであり、導光板と、導光板の一端部に配置された光源を含んで構成されてなるエッジライト型バックライト装置において、導光板上に光拡散性シート、プリズムシートの順に配置される。
本発明の光拡散性部材は、プリズムシートの屈折率が1.60を超えるものであり、光源が配置される導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面における、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して+48°〜+58°の角度範囲内にあり、光拡散性シートの光出射面の出射光が、出射光分布のピークの角度範囲から法線方向に対して−90°または+90°の出射角度に向かうにつれて漸減する。
以下、光拡散部材20を構成する各要素、プリズムシートと光拡散性シート、について説明する。
【0020】
本発明のプリズムシートは、屈折率が1.60を超えるものを用いる。一般的なプリズムシートの屈折率は1.50〜1.60程度であるのに対し、本発明ではこれよりも屈折率の高いものを用いる。このように高屈折率のものを用いることにより、導光版からの光を効率よく正面方向に立ち上げることができるだけでなく、本発明で用いる光拡散性シートと組み合わせることで、従来よりも正面輝度及び拡散性に優れたバックライト装置とすることができる。
【0021】
本発明のプリズムシートは、一方の面に、断面が略三角形状の構造列が複数並列して構成されている。これら略三角形状の構造列の頂角は、80〜105°の範囲内であることが好ましい。略三角形状の構造列の形状は、ピークが先鋭な形状であっても、構造列の先端部に若干のRを持たせたものであっても構わない。図1に、プリズムシートの一例を示す。
【0022】
構造列のピーク間のピッチは、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。また、構造列のピーク高さは、5〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明のプリズムシートの構成としては、略三角形状の構造列が形成された樹脂層単層からなるものでもよいし、構造列が形成された樹脂層を平坦な支持体上に積層したものであってもよい。
【0024】
後者の場合、支持体としては、光学的透明性の高いプラスチックフィルムを用いることができ、後述する光拡散性シートの支持体として用いられるものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、延伸加工、特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れているために好適に使用される。このような支持体はプラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、下引き易接着層の形成等の易接着処理が施されたものを用いることが好ましい。
【0025】
また、支持体の屈折率を向上させるため、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、シリカ等の無機ナノ粒子(粒径が1〜100nm程度の無機粒子)を練り込んで形成しても構わない。
【0026】
支持体の厚みは特に限定されず、適用される材料に対して適宜選択することができるが、一般に25〜500μmであり、好ましくは50〜300μmとする。
【0027】
次に、断面が略三角形状の構造列が構成されてなる樹脂層は、主に高分子樹脂により構成される。高分子樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられ、後述する光拡散性シートの拡散層に用いられるバインダー樹脂として列挙するものと同様のものが用いられる。
【0028】
本発明のプリズムシートは屈折率が1.60を超えるものであるが、樹脂層単体としての屈折率(支持体を有する場合には、支持体を除く樹脂層の屈折率)が1.60を超えることが好ましい。また、光学的透明性を阻害しない範囲内において、上述した支持体中に添加可能な無機ナノ粒子と同様の無機ナノ粒子を含有分散させて、所望の屈折率に調整することもできる。この場合、無機ナノ粒子は、樹脂層全組成物中10重量%以下含有させることが好ましい。
【0029】
樹脂層の厚みは、本発明のプリズムシートを樹脂層単層で形成する場合には、当該層の十分な塗膜強度や平滑性を得る観点から、25〜300μmとすることが好ましい。一方、樹脂層を支持体上に形成してプリズムシートとする場合では、1〜10μmとすることが好ましい。なお、ここでいう樹脂層の厚みとは、構造列が形成されていない樹脂部分のみの厚み(図1に符号pで示す部分)をいう。
【0030】
本発明のプリズムシートの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、所望の断面三角形状の構造列が形成されるよう特殊工具により樹脂層を切削して製造する切削加工技術や、2P法(Photo−Polymer法)、2T法(Thermal−Transformation法)やエンボス加工法等のような転写賦形技術により形成することができる。転写賦形技術に関しては、例えば上述したような樹脂層を構成する高分子樹脂等を、要求する樹脂層の表面形状とは相補的な形状を有する型内に充填し、形状パターンを転写賦形させた後、当該高分子樹脂等を硬化させ、型から剥離することで、構造列が賦形された樹脂層を備えたプリズムシートが得られる。一方、支持体を用いる場合には、型内に高分子樹脂等を充填し、その上に支持体を重ね合わせた後、当該高分子樹脂等を硬化させ、型から剥離することで、支持体上に構造列が賦形された樹脂層を備えたプリズムシートが得られる。なお、2P法により樹脂層の構造列を形成する場合には、電離放射線硬化性樹脂を用い、2T法やエンボス加工法により樹脂層の構造列を形成する場合には、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を用いる。
【0031】
次に上述した高屈折率プリズムシートと組み合わせる光拡散性シートについて説明する。従来の光拡散性シートは、導光板及び光源からなるエッジライト型バックライトに組み込んだ場合に、光源が配置される導光板の一端部に沿った方向に対し直交する面において、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して略45°の角度範囲内となるように設計されている。このような従来の光拡散性シートを、正面方向に光を立ち上げる効果が高い高屈折率プリズムシートと組み合わせた場合には、十分な正面輝度や拡散性を得ることができない。
【0032】
これに対し、本発明の光拡散性シートは、前述の直交面における出射光分布のピークが光出射面の法線方向に対して48°〜58°の角度範囲内にシフトしている。また出射光はピークとなる角度範囲から、光出射面の法線方向に対して−90°または90°の出射角度に向かうにつれて漸減する。このような特定の出射角特性を持つ光拡散性シートを組み合わせることにより、高屈折率プリズムシートの特性の光指向性との相乗効果により、拡散性を維持しつつ従来よりも正面輝度に優れたバックライト装置とすることができる。
【0033】
本発明の光拡散性シートの出射角特性について、図2を参照して、さらに説明する。図2(a)に示すように、光拡散性シート12上の任意の点rを通り、光源11の長手方向A(光源が複数のLED素子を配列したものである場合にはその配列方向)と直交する断面Bにおいて、点rから出射する光(出射光)は分散し互いに角度を持つ。この出射光の角度分布が出射光分布である。図2(b)は断面Bを示したものである。この断面Bにおいて、光拡散性シートの光出射面に対する法線方向を基準(0度)とし、法線方向と出射光の出射方向とがなす角度θを出射角度としている。法線の位置より光源奥側(光源から離れる側)に出射する光の出射角度を「+」、光源側に出射する光を「−」と定義し、法線方向からそれぞれ光出射面に至るまでを、0〜+90°或いは0〜−90°としている。また本発明の光拡散性シートにおいて、出射光分布のピークが存在する角度範囲(+48°〜+58°)を、図中、斜線で示している。ここでは、便宜上、光拡散性シート12の任意の点rにのみ着目し、点rを通る断面Bを規定し、その断面における出射光の角度を説明したが、出射光分布は光拡散性シート12の各位置で同様の出射光分布となる。
【0034】
次に上述した出射光分布(出射角特性)を実現するための光拡散性シートの構成について説明する。光拡散性シートは、バインダー樹脂及び拡散剤として粒子を含む拡散層を備える。光拡散性シートは、拡散層単層でもよいし、支持体上に拡散層が積層されてなるものでもよい。
【0035】
拡散層のバインダー樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0036】
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマーを用いることができ、この光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用できる。さらにこれらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させレンズ層の硬度をより向上させるために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0037】
光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0038】
上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの他、紫外線照射によって硬化させる場合には、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を用いることが好ましい。
【0039】
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0040】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。
【0041】
熱硬化性樹脂としては、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、グアナミン系樹脂、ケトン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらは単独でも使用可能であるが、架橋性、架橋硬化塗膜の硬度をより向上させるためには、硬化剤を加えることが望ましい。
【0042】
硬化剤としては、ポリイソシアネート、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、カルボン酸などの化合物を、適合する樹脂に合わせて適宜使用することができる。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ノルボルネン樹脂、シリコーン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、スルフォン系樹脂、イミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0044】
なお、これら熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂のうち、樹脂層とした際の塗膜強度や、良好な透明性が得られる観点から、アクリル系樹脂の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、これら熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂は、それぞれ熱硬化性樹脂どうし或いは熱可塑性樹脂どうしを複数種組み合わせた複合樹脂として用いることもできる。
【0045】
拡散剤として用いる粒子としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機粒子の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの樹脂粒子を用いることもできる。これらのうち、輝度性能を向上させる観点から、樹脂粒子を用いることが好ましく、特にアクリル樹脂からなる樹脂粒子を用いることが好ましい。これら粒子は、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。なお、ここでいう「無機粒子」とは、上述した「無機ナノ粒子」とは平均粒径の点で異なるものである。
【0046】
粒子の大きさは、平均粒径が1〜10μmのものが好ましく、特に、平均粒径が1〜5μmのものが好ましい。このように、拡散層に平均粒径が比較的低い粒子を含ませることで、本発明の光拡散性シートの必須性能である特有の出射角特性(出射光分布)を発揮させ易くなる。
【0047】
また、粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状粒子であることが好ましい。粒子の粒径分布の変動係数は、本発明の光拡散性シートの上述した所望の出射角特性を得易くする観点から、5〜55%程度とすることが好ましく、10〜30%とすることがより好ましい。なお、上述した粒子の平均粒径や粒子径分布の変動係数は、コールターカウンター法(重量分布)により測定したものである。
【0048】
バインダー樹脂に対する粒子の含有割合は、必要とする拡散性を発揮させ、かつ、上述した所望の出射角特性を得易くする観点から、バインダー樹脂100重量部に対し50〜150重量部含有させることが好ましい。さらなる正面輝度向上の観点からは、50〜120重量部含有させることがより好ましい。
【0049】
拡散層中には、上述したバインダー樹脂や粒子の他、レベリング剤・消泡剤などの界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0050】
拡散層の厚みは、本発明の光拡散性シートを拡散層単層で構成する場合には、10〜500μmとすることが好ましく、10〜250μmとすることがより好ましい。厚みを10μm以上とすることにより、塗膜強度を十分なものとし、また、ハンドリング性を良好なものとすることができる。一方、厚みを500μm以下とすることにより、拡散層の透明性を良好なものとすることができる。また、支持体上に拡散層を形成する場合には、光拡散性能を発揮しつつ本発明の所望の出射角特性を得易くする観点から、5〜60μmとすることが好ましく、7〜30μmとすることがより好ましい。なお、拡散層の厚みとは、拡散層の凹凸面の凸部の先端から、凹凸面とは反対面の拡散層表面までの厚みをいう。
拡散層のヘーズは、75〜90%、好ましくは78〜86%である。
【0051】
本発明の光拡散性シートが支持体を有する場合には、支持体は光学的透明性の高いプラスチックフィルムであれば特に制限されることなく使用することができる。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリ塩化ビニル、ノルボルネン化合物等が使用できる。このうち、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度や寸法安定性に優れる点で好ましい。また、拡散層との接着性を向上させるために、表面にコロナ放電処理を施したり、易接着層を設けたものも好適に用いられる。なお、支持体の厚みは、通常10〜400μm程度であることが好ましい。
【0052】
また、本発明の光拡散性シート表面の凹凸面とは反対側の面には、他の部材との密着を防ぐために微マット処理を施したり、光透過率を向上させるために反射防止処理を施してもよい。さらには、下記のような塗布乾燥方法により、バックコート層や帯電防止層や粘着層を設けてもよい。
【0053】
バックコート層の基本的な機能は、対向する部材との密着を防止することであり、さらに対向する部材への傷つき防止性や、拡散性を併せ持つことができる。このようなバックコート層は、表面に凹凸形状を有するものであり、例えばバインダー樹脂及び粒子等を含んで構成される。バインダー樹脂及び粒子は、上述した光拡散性シートの拡散層で用いられるバインダー樹脂及び粒子と同様のものを用いることができ、バックコート層に付与する機能に応じて、適切な材料、適切な量を用いることが好ましい。
【0054】
例えば、密着防止性に加えて、対向する部材への傷つき防止性をも兼用するバックコート層の場合には、拡散層で列挙されたものの中でもナイロン樹脂粒子及び/又はシリコーン樹脂粒子が下記の観点から好ましい。これらの樹脂粒子は、単独だけでなく適宜組み合わせて用いてもよい。またバインダー樹脂としては、ガラス転移温度Tgが15〜100℃の熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。バックコート層中におけるバインダー樹脂に対する粒子の含有割合は、バインダー樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部とすることが好ましい。
【0055】
傷つき防止性のうち、バックライト装置使用時に光拡散性シートが導光板に密着し、当該部材どうしが擦り合わされることで生じる導光板の磨耗傷を防止するという観点からは、特にナイロン樹脂粒子が好ましい。ナイロン樹脂粒子は、平均粒子径が1〜10μmであることが好ましい。ナイロン樹脂ビーズを熱硬化型樹脂100重量部に対して0.5〜2重量部含有させることが特に好ましい。
【0056】
また、バックライト装置を指等で加圧した際に光拡散性シートと導光板とが密着して起こりうる導光板の傷付き(加圧傷)を効果的に防止するという観点からは、シリコーン樹脂粒子が好ましい。シリコーン樹脂粒子は、平均粒子径が1〜10μmであることが好ましい。シリコーン樹脂粒子は、シリコーンゴムからなる球状芯部がシリコーン樹脂膜により覆われた二重構造であることが特に好ましい。加圧時の傷付きを防止するため、シリコーン樹脂粒子を当該熱硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部含有させることが特に好ましい。
【0057】
また、バックコート層には、上述したように、密着防止性に加えて拡散性を付与することができる。この場合、拡散性バックコート層のヘーズは、正面輝度を維持しつつ光拡散性を向上する観点から、拡散層のヘーズよりも低いものとすることが好ましい。具体的にはヘーズは50%〜70%程度であることが好ましい。また、拡散性バックコート層中におけるバインダー樹脂と粒子との含有割合に関しては、拡散層中におけるバインダー樹脂と粒子との含有割合よりも粒子の割合を低いものとすることが、正面輝度が低下するのを防止する観点から好ましい。
【0058】
バックコート層の厚みは、一般的に1〜6μmとすることが好ましい。また、必要に応じて、分散剤、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤を適宜含有させることもできる。
【0059】
本発明の光拡散性シートは、上述したバインダー樹脂や粒子などの材料を適当な溶媒に溶解させた拡散層用塗布液や、必要に応じて設けたバックコート層用塗布液等を、従来から公知の方法、例えば、バーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ダイコーター、スプレー、スクリーン印刷等により支持体上に塗布し、乾燥することにより作製することができる。また、拡散層を支持体上に形成したものから、当該支持体を剥離除去することで、拡散層単層からなる光拡散性シートとすることもできる。
【0060】
次に、本発明のエッジライト型バックライト装置について説明する。本発明のバックライト装置は、導光板と、導光板の一端部に配置された光源とを含むものである。さらに上述したように、導光板の光出射面上に光拡散性シートとプリズムシートとを順に含んで構成されてなる。光拡散性シートとプリズムシートから構成される光拡散部材は、上述した本発明の光拡散部材である。
【0061】
以下、図面を参照して、本発明のエッジライト型バックライト装置の実施の形態について説明する。図3に、エッジライト型バックライト装置の一実施形態を示す。このバックライト装置は、主な構成として、導光板10と、その一端部に配置された光源11と、導光板10の上に配置された光拡散部材20とを備えている。光拡散部材20は、光拡散性シート12及びプリズムシート13とからなる。なお図3では、光拡散性シート12及びプリズムシート13は、それぞれ1枚のみ用いられている場合を示しているが、複数枚重ねて用いてもよい。
【0062】
導光板10は、少なくとも一つの側面を光入射面とし、これと略直交する一方の面を光出射面とするように成形された略平板状からなるものであり、主としてポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートや非晶質オレフィン系樹脂などの高透明な樹脂から選ばれるマトリックス樹脂からなる。必要に応じてマトリックス樹脂と屈折率の異なる樹脂粒子が添加されていてもよい。導光板の各面は、一様な平面ではなく複雑な表面形状をしているものでも、ドットパターンなどの拡散印刷が設けられていてもよい。
【0063】
光源11は、導光板10の少なくとも一端部に配置されるものであり、主として冷陰極管、LED光源等が使用される。光源の形状としては点状、線状、L字状のもの等が挙げられる。
【0064】
エッジライト型バックライト装置には、上述したプリズムシート、光拡散性シート、導光板及び光源の他に、目的に応じて反射板、偏光フィルム、電磁波シールドフィルム等が備えられる。
【0065】
本発明のバックライト装置は、導光板10と、導光板10の一端部に配置された光源11を備えたものに加え、導光板10の光出射面上に上述した本発明の光拡散性シート12とプリズムシート13とを順に有するため、従来のバックライト装置に比べて正面輝度及び光拡散性とのバランスに特に優れたものとすることができる。また光源として、LED光源、特に光度が1000〜2000mcd程度の高輝度LED光源を用いた場合、従来はバックライト装置としての正面輝度及び光拡散性とのバランスを取ることが困難であったが、本発明のプリズムシートと光拡散性シートとを組み合わせることにより、正面輝度及び光拡散性のバランスに優れたものとすることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0067】
1.光拡散性シートの作製
[実施例1]
下記処方の拡散層用塗布液を混合し撹拌した後、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60:東レ社)からなる支持体上に、乾燥後の厚みが6μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して拡散層を形成した。次いで、当該支持体の拡散層が形成された面とは反対面に、下記処方のバックコート層用塗布液を乾燥後の厚みが4μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して、バックコート層を形成し、実施例1の光拡散性シートを得た。
【0068】
<実施例1の拡散層用塗布液>
・アクリルポリオール 10部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 2部
(タケネートD110N:三井化学社、固形分60%)
・ポリメチルメタクリレート真球状粒子 6部
(平均粒径2μm、変動係数20%)
・希釈溶剤 25部
【0069】
<実施例1のバックコート層用塗布液>
・アクリルポリオール 10部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 2部
(タケネートD110N:三井化学社、固形分60%)
・ナイロン樹脂粒子 0.1部
(ガンツパールGPA-550:ガンツ化成社、平均粒径5μm)
・希釈溶剤 38部
【0070】
[実施例2]
実施例1のバックコート層用塗布液のうち、ナイロン樹脂粒子をシリコーン樹脂粒子(平均粒子径2μm)に変更し、重量部を0.06部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光拡散性シートを得た。
【0071】
[実施例3]
実施例1の拡散層用塗布液のうち、アクリルポリオールをアクリルポリオール(アクリディックA-811:DIC社、固形分50%)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の光拡散性シートを得た。
【0072】
[実施例4]
実施例2の拡散層用塗布液のうち、ポリメチルメタクリレート真球状粒子をポリメチルメタクリレート真球状粒子(ケミスノーMX300:綜研化学社、平均粒径3μm、変動係数8%)に変更し、重量部を5部とした以外は実施例2と同様にして、実施例4の光拡散性シートを得た。
【0073】
[実施例5]
下記処方の拡散層用塗布液を混合し撹拌した後、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60:東レ社)からなる支持体上に、乾燥後の厚みが6μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して拡散層を形成した。次いで、当該支持体の拡散層が形成された面とは反対面に、下記処方の拡散性バックコート層用塗布液を乾燥後の厚みが5μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して、拡散性バックコート層を形成し、実施例5の光拡散性シートを得た。
【0074】
<実施例5の拡散層用塗布液>
・アクリルポリオール 10部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 2部
(タケネートD110N:三井化学社、固形分60%)
・ポリメチルメタクリレート真球状粒子 5部
(平均粒径2μm、変動係数20%)
・希釈溶剤 25部
【0075】
<実施例5の拡散性バックコート層用塗布液>
・アクリルポリオール 10部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 2部
(タケネートD110N:三井化学社、固形分60%)
・ポリメチルメタクリレート真球状粒子 2.5部
(平均粒径2μm、変動係数20%)
・希釈溶剤 38部
【0076】
[比較例1]
実施例2の拡散層用塗布液を下記の拡散層用塗布液に変更し、拡散層の乾燥後の厚みが10μmとなるように形成する以外は実施例2と同様にして、比較例1の光拡散性シートを得た。
【0077】
<比較例1の拡散層用塗布液>
・アクリルポリオール 10部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 2部
(タケネートD110N:三井化学社、固形分60%)
・ポリメチルメタクリレート真球状粒子 7部
(平均粒径8μm、変動係数20%)
・希釈溶剤 32部
【0078】
[比較例2]
実施例1の拡散層用塗布液を下記の拡散層用塗布液に変更し、拡散層の乾燥後の厚みが11μmとなるように形成する以外は実施例1と同様にして、比較例2の光拡散性シートを得た。
【0079】
<比較例2の拡散層用塗布液>
・アクリルポリオール 10部
(アクリディックA-807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 2部
(タケネートD110N:三井化学社、固形分60%)
・ポリメチルメタクリレート真球状粒子 9部
(平均粒径8μm、変動係数30%)
・希釈溶剤 33部
【0080】
2.評価
(1)光拡散性シート(プリズムシートは含まず)の出射角特性
実施例1〜5及び比較例1〜2の光拡散性シートを、4インチのエッジライト型バックライト装置(光度1300mcdのLED光源8灯、厚さ0.5mmのポリカーボネート製の導光板内蔵)において、当該光拡散性シートのバックコート層(実施例5については光拡散性バックコート層)が当該バックライト装置の導光板と対向するように組み込み、実施例1〜5及び比較例1〜2の光拡散性シートを用いたバックライト装置を作製し、当該バックライト装置の出射角特性を測定した。測定結果を表1に示す。併せて、各シートの最も高い照射量であった出射角度を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
3.バックライト装置の作製
次いで、上述のバックライト装置の当該光拡散性シートの拡散層上に、厚み65μmの第一のプリズムシート(TBEF2−GT:住友スリーエム社)を、当該プリズムシートのプリズム面の反対面が向くように重ね合わせた。さらに、この第一のプリズムシートのプリズム面と厚み68μmの第二のプリズムシート(TBEF2−GM:住友スリーエム社)のプリズム面の反対面とが対向するように重ね合わせ、実施例1〜5及び比較例1〜2のバックライト装置を作製した。なお、2枚のプリズムシートは、構造列それぞれの稜線が直交するように配置した。
【0083】
4.評価
(1)正面輝度
実施例1〜5及び比較例1〜2のバックライト装置を点灯し、図4に示すようなバックライト5の光出射面の中央付近のP点の正面輝度を測定した。測定結果を表2に示す(単位は「cd/m2」)。
【0084】
(2)光拡散性(バックライト全体における光の均一性)
また、実施例1〜5及び比較例1〜2のバックライト装置について、図4に示すような光源11付近のA〜C点(何れも隣り合う2つの光源11間上に位置する)における正面輝度を測定した。次いで、PA点間の正面輝度の変位(A点の正面輝度を、P点の正面輝度で割った際の割合)、同様にPB点間の正面輝度の変位、PC点間の正面輝度の変位を算出し、当該3つの変位の平均値(バックライト全体における光の均一性)を算出した。A〜C点及びP点における正面輝度の測定結果を表2に、並びに、各PA点間、PB点間、PC点間の変位及びその平均値(バックライト全体における光の均一性)の算出結果を表3に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5の光拡散性シートは、バックライト装置に組み込んだときに、導光板に対する光源の配置方向に対して直交する面における、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが、光出射面の法線方向に対して48〜58°の角度範囲内にあり、光拡散性シートの光出射面の出射光が、出射光分布のピークの角度範囲から法線方向に対して−90°または90°の出射角度に向かうにつれて漸減するものであった。また表2、3に示すように、実施例1〜5のエッジライト型バックライト装置は、このような出射角特性を持つ光拡散性シートを屈折率が1.60を超える高屈折率プリズムシートと組み合わせたものであり、拡散性に優れ高い正面輝度を有するものであった。
なお実施例1〜4の光拡散性シートの光拡散層と同様の光拡散層を有し、バックコート層を設けない光拡散性シートを作製し、同様に出射角特性を測定したところ、実施例1〜4の光拡散性シートとほぼ同様の結果が得られた。
【0088】
なお、実施例1及び3のバックライト装置は、光拡散性シートのバックコート層にナイロン樹脂粒子を用いるものであったため、下記の試験法による耐磨耗傷性に優れるものであった。
【0089】
<耐磨耗傷性試験>
JIS−H8682−1:1999に準拠し、磨耗試験機(NUS−ISO−1:スガ試験機社)を用いて耐磨耗性試験を行なった。耐磨耗性試験では、実施例1及び3の光拡散性シートの拡散層面を当該試験機の回転輪上に固定し、当該光拡散性シートのバックコート層上に導光板と同じ素材である厚み1mmのポリカーボネート板を配置し、300gfの荷重で15往復させた。かかる試験後、ポリカーボネート板を目視にて観察したが、当該ポリカーボネート板に傷は形成されていなかった。
【0090】
また、実施例2及び4のバックライト装置は、光拡散性シートのバックコート層にシリコーン樹脂粒子を用いるものであったため、下記の試験法による加圧による傷付き防止性に優れるものであった。
【0091】
<加圧による傷付き防止性試験>
厚み1mmのポリカーボネート板上に、実施例2及び4の光拡散性シートのバックコート層面を密着させ、当該光拡散性シートの拡散層上から表面性試験機(HEIDON−14:新東科学社)を用いて加圧による傷付き防止性試験を実施した。試験では、当該光拡散性シートの拡散層上に断面積が1cm2の荷重部材(素材)を密着させ、1500gの荷重重さにて10秒間加圧した。その後、荷重をかけた箇所のポリカーボネート板を目視にて観察したが、特に凹み等もなくポリカーボネート板に傷は発見できなかった。
【0092】
一方、比較例1のバックライト装置は、導光板に対する光源の配置方向に対して直交する方向における、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが46.2°であったため、正面輝度が乏しく、拡散性も低いものであった。
【0093】
また、比較例2のバックライト装置は、導光板に対する光源の配置方向に対して直交する方向における、光拡散性シートの光出射面の出射光分布のピークが39.4°であったため、拡散性は良好であったものの正面輝度に特に乏しいものであった。
【符号の説明】
【0094】
1・・・バックライト装置
10・・・導光板
11・・・光源
12・・・光拡散性シート
13・・・プリズムシート
20・・・光拡散性部材
図1
図2
図3
図4