特許第6062925号(P6062925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062925圧電素子、圧電振動モジュールおよびそれらの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062925
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】圧電素子、圧電振動モジュールおよびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   H04R17/00
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-508995(P2014-508995)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2012067971
(87)【国際公開番号】WO2013150667
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2015年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-86278(P2012-86278)
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 善幸
(72)【発明者】
【氏名】水野 豪
(72)【発明者】
【氏名】嶋 博司
(72)【発明者】
【氏名】山口 将央
(72)【発明者】
【氏名】池沢 紀研
(72)【発明者】
【氏名】熊坂 克典
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−221532(JP,A)
【文献】 特開2010−283141(JP,A)
【文献】 特開昭59−193497(JP,A)
【文献】 特開2008−005056(JP,A)
【文献】 特開2007−028469(JP,A)
【文献】 特開2010−177867(JP,A)
【文献】 特開2008−022371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
前記圧電素子に接続され外部に引き出された配線部材と、
前記圧電素子の一面に取り付けられる弾性板と、
前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うように設けられたハウジング部材と、
音圧調整手段とを備え、
前記音圧調整手段は、前記ハウジング部材の表面に突出して設けられた突起部を有し、
前記突起部は、圧電振動モジュールを取り付ける被取り付け部材の前記圧電振動モジュールによって励起される共振の節となる部分に設けられていることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項2】
請求項に記載の圧電振動モジュールにおいて、
前記圧電素子の前記弾性板を取り付けられた前記一面に対向する他面に設けられた電極取出部を有し、
前記配線部材は、前記電極取出部に導電接続されたフレキシブル配線基板及び弾性を備えた導電性部材の内のいずれかであることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項3】
圧電素子と、
前記圧電素子に接続され外部に引き出された配線部材と、
前記圧電素子の一面に取り付けられる弾性板と、
前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うように設けられたハウジング部材と、
前記圧電素子の前記弾性板を取り付けられた前記一面に対向する他面に設けられた電極取出部と、
音圧調整手段とを有し、
前記配線部材は、前記電極取出部に導電接続されたフレキシブル配線基板及び弾性を備えた導電性部材の内のいずれかであり、
前記音圧調整手段は、前記圧電素子と並行に前記ハウジング部材に一体に設けられた複合化材を有し、前記複合化材は、前記圧電素子の自身の振動と、被取り付け部材の圧電振動モジュールによって励起される振動とを互いに打ち消すことを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の圧電振動モジュールにおいて、
前記配線部材は、前記導電性部材であり、
前記導電性部材は、前記電極取出部から、前記圧電素子の他面に交差する方向に前記ハウジング部材を貫通して突出していることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項5】
請求項に記載の圧電振動モジュールにおいて、
前記積層体は、底部に位置づけられた底部圧電素子部と、
最上部に位置づけられた最上部圧電素子部と有し、
前記最上部圧電素子部の分極方向は、前記底部圧電素子部を含む他の圧電素子の分極方向と異なっていることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項6】
請求項に記載の圧電振動モジュールにおいて、
前記最上部圧電素子部の圧電体層と、前記最上部圧電素子部以外の前記底部圧電素子部の圧電体層を除く圧電体層とは、互いに逆の伸縮振動を励起するような電極構造を有しているように構成されていることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項7】
請求項乃至の内のいずれか一項に記載の圧電振動モジュールにおいて、
前記圧電素子を構成する圧電素子部を複数枚、第1の方向に積層した積層体を有し、
前記各圧電素子部は、
圧電体層と、
前記各圧電体層上に、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に形成された表面電極層と、
前記圧電体層の前記第2の方向の端部に形成され、前記表面電極層に接続された第1及び第2の引き出し電極とを有し、
前記第1及び第2の引き出し電極は、前記表面電極層から前記積層体の積層位置に応じた前記各圧電体層の前記端部に引き出されていることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至6いずれか1項に記載の圧電振動モジュールにおいて、
前記配線部材は、前記フレキシブル配線基板であり、
前記フレキシブル配線基板は、前記電極取出部から、前記圧電素子の前記一面又は他面に沿う方向に前記ハウジング部材を貫通して前記圧電素子の長手方向に引き出されていることを特徴とする圧電振動モジュール。
【請求項9】
圧電体層、表面電極層、及び、端部に形成された端部電極層を有し、互いに異なる端部電極層を有する複数の圧電素子部を用意する工程と、
前記複数の圧電素子部を第1の方向に順次積層することによって構成された積層体を形成する工程と
前記圧電素子に外部に取り出すための配線部材を接続する工程と、
前記圧電素子の一面に、弾性板を取り付ける工程と、
前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うハウジング部材を設ける工程と、
音圧調整手段を形成する工程とを備え、
前記積層体を形成する工程では、各圧電体素子部の前記端部電極層が、前記積層体における前記各圧電素子部の積層位置に応じた前記端部側に引き出されるように、積層され
前記音圧調整手段は、前記ハウジング部材の表面に突出した突起部を形成することを含むことを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【請求項10】
圧電体層、表面電極層、及び、端部に形成された端部電極層を有し、互いに異なる端部電極層を有する複数の圧電素子部を用意する工程と、
前記複数の圧電素子部を第1の方向に順次積層することによって構成された積層体を形成する工程と
前記圧電素子に外部に取り出すための配線部材を接続する工程と、
前記圧電素子の一面に、弾性板を取り付ける工程と、
前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うハウジング部材を設ける工程と、
音圧調整手段を形成する工程とを備え、
前記積層体を形成する工程では、各圧電体素子部の前記端部電極層が、前記積層体における前記各圧電素子部の積層位置に応じた前記端部側に引き出されるように、積層され
前記音圧調整手段を形成する工程では、前記ハウジング部材に一体に前記圧電素子と平行して複合化材を形成することを含むことを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の圧電振動モジュールの製造方法において、
前記積層体は、
底部に位置づけられた底部圧電素子部と、
最上部に位置づけられた最上部圧電素子部と有し、
前記最上部圧電素子部の分極方向が、前記底部圧電素子部を含む他の圧電素子部の分極方向と異なるように分極する工程をさらに有することを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の圧電振動モジュールの製造方法において、
前記最上部圧電素子部の圧電体層と、前記最上部圧素子部以外の前記底部圧電体層を除く圧電体層とは、互いに逆の伸縮振動を励起するような電極構造を有していることを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の圧電振動モジュールの製造方法において、前記配線部材は、電極取出部に導電接続されたフレキシブル配線基板又は弾性を備えた導電性部材であること
を特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の圧電振動モジュールの製造方法において、前記配線部材は、前記フレキシブル配線基板であり、前記フレキシブル配線基板を前記電極取出部から、前記圧電素子の前記一面又は他面に沿う方向に前記ハウジング部材を貫通して前記圧電素子の長手方向に引き出されるように形成することを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の圧電振動モジュールの製造方法において、前記配線部材は、前記導電性部材であり、前記導電性部材を、前記電極取出部から、前記圧電素子の他面に交差する方向に前記ハウジング部材を貫通して突出するように形成することを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を搭載した圧電振動モジュールに関し、詳しくは、携帯端末、タッチパネル全般、ゲームコントローラ、遊技機等に用いられるパネル音響用圧電振動モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に用いられる圧電スピーカ等の圧電音響モジュールは、音声信号の拡声を目的とし、圧電素子は大振幅で振動する為、機械的コンプライアンスの大きな材料で支持されていた。この構造の課題として、水密性を保つためにモールドすることがなされているが、モールドした場合には、温度特性が悪かった。特に、ポリウレタン等の可撓性の高い材料を用いてモールドした場合、低温では可撓性材料が硬くなるためモールド体としての共振周波数は上昇する。一方、高温では可撓性材料が柔らかくなるため、モールド体として共振周波数は下降し、結果として共振周波数の温度依存性が高く実使用としては困難であった。
【0003】
特許文献1には、真鍮製の金型を用いてバイモルフ素子の全面にシリコーンゴムの溶液を流し込み、硬化処理によって厚み方向二面に厚さ2mm、幅方向に厚さ1mmのゴム皮膜が覆う構造とすることで、温度依存性を改善した音響振動発生素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−228610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のバイモルフ素子において、耐衝撃性の緩和と温度依存性を改善するために、シリコーンゴムでモールドしていたが、シリコーンゴム溶液を熱硬化させる場合には熱硬化温度70〜250℃によって、バイモルフ素子の分極が喪失し、バイモルフ素子が機能しなくなる。
【0006】
また、特許文献1のバイモルフ素子において、分極処理を行った後、金型内に流し込むシリコーンゴム溶液として、湿度硬化タイプを使用すると、硬化までに時間がかかりすぎる。
【0007】
さらに、特許文献1のような、積層構造を有するバイモルフ素子の夫々の電極層は、各層の電極層を接続するために電極層一層につき、互いに絶縁された複数個の電極部を有するパターンを形成しなければならなかった。そのために、バイモルフ素子を駆動するために、各電極部に通電するように、複数箇所に配線ケーブルからの各配線を半田付け等のろう接等によって接続しなければならず、作業が複雑であり、この配線を設けた状態でモールドするような場合に、バイモルフ素子の振動を拘束することとなり、特性に悪影響を及ぼした。
【0008】
そこで、本発明の一技術的課題は、電気接続が容易である配線電極のパターン構造を備えた圧電素子を提供することにある。
【0009】
また、本発明のもう一つの技術的課題は、圧電素子の水密性を有するとともに、温度変化の影響を受けにくく、優れた変位伝播特性を備えた圧電振動モジュールとそれに用いる圧電素子を提供することにある。
【0010】
また、本発明のさらにもう一つの技術的課題は、表面実装の容易な圧電振動モジュールとそれに用いる圧電素子を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の技術的課題は、音圧を増加でき、被取り付け部材との共振や、振動を打ち消すことができる音圧調整手段を有する圧電振動モジュールとそれに用いる圧電素子とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、圧電素子と、前記圧電素子に接続され外部に引き出された配線部材と、前記圧電素子の一面に貼り付けられる弾性板と、前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うように設けられたハウジング部材と、音圧調整手段とを備え、前記音圧調整手段は、前記ハウジング部材の表面に突出して設けられた突起部を有し、前記突起部は、圧電振動モジュールを取り付ける被取り付け部材の前記圧電振動モジュールによって励起される共振の節となる部分に設けられていることを特徴とする圧電振動モジュールが得られる。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、圧電素子と、前記圧電素子に接続され外部に引き出された配線部材と、前記圧電素子の一面に取り付けられる弾性板と、前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うように設けられたハウジング部材と、前記圧電素子の前記弾性板を取り付けられた前記一面に対向する他面に設けられた電極取出部と、音圧調整手段とを有し、前記配線部材は、前記電極取出部に導電接続されたフレキシブル配線基板及び弾性を備えた導電性部材の内のいずれかであり、前記音圧調整手段は、前記圧電素子と並行に前記ハウジング部材に一体に設けられた複合化材を有し、前記複合化材は、前記圧電素子の自身の振動と、被取り付け部材の圧電振動モジュールによって励起される振動とを互いに打ち消すことを特徴とする圧電振動モジュールが得られる。
【0014】
発明の第3の態様によれば、圧電体層、表面電極層、及び、端部に形成された端部電極層を有し、互いに異なる端部電極層を有する複数の圧電素子部を用意する工程と、前記複数の圧電素子部を第1の方向に順次積層することによって構成された積層体を形成する工程と、前記圧電素子に外部に取り出すための配線部材を接続する工程と、前記圧電素子の一面に、弾性板を取り付ける工程と、前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うハウジング部材を設ける工程と、音圧調整手段を形成する工程とを備え、前記積層体を形成する工程では、各圧電体素子部の前記端部電極層が、前記積層体における前記各圧電素子部の積層位置に応じた前記端部側に引き出されるように、積層され、前記音圧調整手段は、前記ハウジング部材の表面に突出した突起部を形成することを含むことを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法が得られる。
【0015】
発明の第4の態様によれば、圧電体層、表面電極層、及び、端部に形成された端部電極層を有し、互いに異なる端部電極層を有する複数の圧電素子部を用意する工程と、前記複数の圧電素子部を第1の方向に順次積層することによって構成された積層体を形成する工程と、前記圧電素子に外部に取り出すための配線部材を接続する工程と、前記圧電素子の一面に、弾性板を取り付ける工程と、前記圧電素子及び前記配線部材の前記圧電素子との接続部分を覆うハウジング部材を設ける工程と、音圧調整手段を形成する工程とを備え、前記積層体を形成する工程では、各圧電体素子部の前記端部電極層が、前記積層体における前記各圧電素子部の積層位置に応じた前記端部側に引き出されるように、積層され、前記ハウジング部材に一体に前記圧電素子と平行して複合化材を形成することを含むことを特徴とする圧電振動モジュールの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧電素子をシリコーンゴムの弾性板及びハウジング部材で覆ったので、耐衝撃性は勿論、温度特性を安定化するとともに、シリコーンゴムの硬度を特定することで、振動変位を向上させ効率よく振動を伝播することができる圧電振動モジュールを提供することが出来る。
【0017】
また、本発明によれば、圧電素子の取り出し端子の電極パターンを一面に集中させることで、FPC基板等で配線部材を簡略化できる圧電振動モジュールを提供することが出来る。
【0018】
また、本発明によれば、配線部材を弾性を有する導電性部材とすることで、実装が容易である圧電振動モジュールを提供することが出来る。
【0019】
さらに、本発明においては、音圧調整手段を設けることで、音圧を増加させ、音圧分布を調整し、また、周波数特性もフラット化する等の音圧を調整することができることができる圧電振動モジュールを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は、本発明の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図である。(b)は、(a)の1B−1B’線に沿う断面図である。(c)は、(a)の1C−1C’線に沿う断面図である。
図2図1(a)、図1(b)、及び図1(c)の圧電振動モジュールの要部を示す部分斜視図である。
図3】(a)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程の説明に供せられる図で積層体の斜視図である。(b)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程の説明に供せられる図で、電極層の電極パターンを示す平面図である。
図4】(a)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる積層体の両端に側面電極を形成する工程を示す斜視図である。(b)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる積層体の両端に側面電極を形成する工程を示す斜視図である。
図5】(a)は本発明の実施の形態による圧電素子の分極工程を示す斜視図である。(b)は本発明の実施の形態による電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す平面図である。(c)は、本発明の実施の形態による第1の側面電極の分極電圧の極性を示す斜視図である。(d)は本発明の実施の形態による圧電素子の分極工程を示す断面図である。
図6】(a)は本発明の実施の形態による圧電素子に駆動電圧の極性パターンを示す斜視図である。(b)は(a)の圧電素子の電極層の駆動電圧の極性パターンを示す平面図である。(c)は(a)の圧電素子の第1の側面電極の駆動電圧の極性パターンを示す斜視図である。(d)は(a)の圧電素子の駆動電圧の極性パターン及び動作を示す断面図である。
図7】(a)は圧電素子にFPC基板を取付ける工程を示す斜視図で、取付け前の状態を示している。(b)は圧電素子にFPC基板を取付ける工程を示す斜視図で、取付け後の状態を示している。
図8】(a)は本発明の実施の形態による圧電素子の変形例を示す斜視図である。(b)は(a)の圧電素子の電極層を示す平面図である。
図9】(a)は本発明の実施例1による圧電振動モジュールの変位の温度特性を示す図である。(b)は本発明の実施例1による圧電振動モジュールの変位変化率の温度特性を示す図である。
図10】本発明の実施例2に係る圧電振動モジュールのシリコーンゴムの硬度による温度特性を示す図である。
図11】本発明の実施例3に係る圧電振動モジュールの硬度70を有するシリコーンゴムの厚みと変位との関係を示す図である。
図12】本発明の第1の実施の形態による圧電振動モジュールの実装方法を示す断面図である。
図13】(a)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図である。(b)は(a)の13B−13B’線に沿う断面図である。(c)は(a)の13C−13C’線に沿う断面図である。(d)は、圧電素子の導電性部材25への接続状態を示す平面図である。
図14】(a)は本発明の第2の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程を示す図で、圧電素子を構成する積層体を示す斜視図である。(b)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程を示す図で、積層体の平面電極層の電極パターンを示す平面図である。
図15】(a)は図13(a)、図13(b)、図13(c)に示す本発明の第2の実施の形態による圧電素子の分極工程を示す平面図である。(b)は図15(a)の圧電素子の電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図15(a)の15B−15B′線に沿う断面図である。(c)は図15(a)の圧電素子の電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図15(a)の15C−15C′線に沿う断面図である。
図16】(a)は図15(a)及び図15(b)に示す圧電素子に駆動電圧の極性パターンの一例を示す平面図及び断面図である。(b)は圧電素子の電極層の駆動電圧の極性パターンの他一例を示す平面図及び断面図である。
図17】(a)は、他の例に係る圧電素子の分極工程を示す平面図である。(b)は電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す(a)の17B−17B′線に沿う断面図である。(c)は電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す(a)の17C−17C′線に沿う断面図である。
図18】(a)及び(b)は図17(a)に示す圧電素子に直流電圧を印加したときの極性パターンの一例を示す平面図及び断面図である。(c)及び(d)は、圧電素子の平面電極層の駆動電圧の極性パターンの他一例を示す平面図及び断面図である。
図19】本発明の実施例4に係る圧電体層の積層枚数(16層)を備えた圧電素子と、比較例に係る圧電体層(15枚積層)を備えた圧電素子との音圧の周波数特性を示している。
図20】(a)は、本発明の第2の実施の形態による圧電振動モジュールの変形例を示す斜視図である。(b)は図20(a)の20B−20B′線に沿う断面図である。(c)は図20(a)の20C−20C′線に沿う断面図である。(d)は導電性部材の接続状態を示す平面図である。
図21】(a)は図13(a)、図13(b)及び図13(c)に示された第2の実施の形態による圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装状態を示す断面図である。(b)は図20(a)の第2の実施の形態の変形例に係る圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装状態を示す断面図である。
図22】(a)は図21(a)の第2の実施の形態による圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装方法を示す断面図である。(b)は、図22(a)の第2の実施の形態の変形例に係る圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装方法を示す断面図である。
図23】(a)は本発明の第3の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図である。(b)は、図23(a)の圧電振動モジュールの23B−23B′線に沿う断面図である。(c)は、図23(a)の圧電振動モジュールの23C−23C′線に沿う断面図である。(d)は、図23(a)の第3の実施の形態による圧電振動モジュールの変形例に係る圧電振動モジュールの図23(c)と同じ位置である23C−23C′線に沿う断面図である。
図24】本発明の実施例4に係る圧電振動モジュールのハウジング部材への複合化材の効果を示す図である。
図25】(a)は本発明の第4の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図である。(b)は、図25(a)の圧電振動モジュールの25B−25B′線に沿う断面図である。(c)は、図25(a)の圧電振動モジュールの25C−25C′線に沿う断面図である。
図26】(a)は本発明の実施例5に係る圧電振動モジュールの突起部の振動分布(水平分布)への作用効果を示す平面図である。(b)は本発明の実施例5に係る圧電振動モジュールの突起部の振動分布(垂直分布)への作用効果を示す正面図である。
図27】(a)は従来例に係る圧電振動モジュールの作用効果を示す平面図である。(b)は従来例に係る圧電振動モジュールの作用効果を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の第1の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図、図1(b)は図1(a)の1B−1B’線に沿う断面図、図1(c)は図1(a)の1C−1C’線に沿う断面図である。図2図1(a)、図1(b)、および図1(c)の圧電振動モジュールの要部を示す部分斜視図である。図2において、ハウジング部材3は取り除いてある。
【0023】
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示すように、圧電振動モジュール10は、矩形状の圧電素子1と、圧電素子1の一表面に接続された引き出し用の配線部材4としてのフレキシブル配線(FPC)基板(以下、同じ参照符号4で示す)と、前記圧電素子1の他の表面を接着剤5を介して張り付けた弾性板2と、弾性板2とともに圧電素子を覆うハウジング部材3とを有している。
【0024】
図2図3に示すように、圧電素子1は、矩形状の圧電セラミックス板からなる圧電体層21、22、23と導電体膜からなる平面電極層11、12、13、14とを交互に積層し、積層方向(第1の方向)に交差する第2の方向の両端面に第1及び第2の側面電極15、16をそれぞれ形成してなる。
【0025】
本発明の第1の実施の形態において、圧電体層21、22、23として、PZT系材料の圧電セラミック板を用いているが、圧電効果を有する材料であるならば、どのような材料であっても良いことは勿論である。
【0026】
弾性板2は、温度安定特性の向上、及び振動変位の向上を図るために、JIS K 623で示すデュロメータ硬度が30−130で、振動変位の上昇と落下衝撃耐久性両立のために、厚さ0.1〜0.9mmのシリコーンゴムからなる。
【0027】
配線部材4としてのフレキシブル配線基板(FPC基板)4は、圧電素子1の一表面の端部寄りに設けられている。
【0028】
後に詳細に説明する図7(a)に最もよく示されるように、FPC基板4は、フレキシブル基材4cの一表面(図では裏面)の長さ方向両側に互いに平行に導体パターン4a、4bが形成されている。
【0029】
図2を再び参照すると、弾性板2は、圧電素子1のFPC基板4が設けられている表面と対向する反対側の表面に、常温硬化型接着剤もしくはシリコーン系両面テープのような接着材5を介して貼り付けられている。この接着材5の硬度は、弾性板2と同一か、もしくは弾性板2よりも柔らかいことが好ましい。
【0030】
弾性板2は、図示の例においては、タッチパネルの振動板6に貼り付けて使用されているが、スマートフォン等のスピーカとしての使用や、可聴域の他に、バイブ等の低周波の振動発生も可能である。
【0031】
次に、図3乃至図7を参照しながら、本発明の実施の形態による圧電振動モジュールの製造工程について説明する。
【0032】
図3(a)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程を示す図で、圧電素子を構成する積層体の斜視図を示し、図3(b)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程を示す図で、積層体の平面電極層の電極パターンを示している。
【0033】
図3(a)に示すように、第1の方向の一端の底部平面電極層11上に、圧電体層21、第1の中間部平面電極層12、圧電体層22、第2の中間部平面電極層13、圧電体層23、第1の方向の他端の最上部平面電極層14をこの順に積層してなる。各圧電体層は、両面に位置する平面電極層とともに、一つの圧電振動部を構成している。
【0034】
底部平面電極層11は、矩形の電極膜を絶縁部11cで電気的に分離することによって形成されている。絶縁部11cは、一端側の上辺から端辺に沿って下方に延び、一端辺の中央部側から右側に向かって延び、さらに下方に折れ曲がっ底辺にいたるように、形成されている。この絶縁部11cによって、下側の角部付近が、4角形に残されて第1の電極部11aを形成している。絶縁部11cによって、第1の電極部11aから電気的に分離された残りの電極膜からなる第2の電極部11b図6(b)参照)が形成されている。この第2の電極部11bは、駆動の際に、接続電極膜11dが追加されて、以下に説明する最上部平面電極層14のように、第2電極部14b及び第2電極の右側端部14bが、接続電極膜14eと接続されたものと実質的に同じ構造となる。
【0035】
第1の中間部平面電極層12は、矩形の電極膜2つの絶縁部12c、12dによって電気的に分離することで形成されている。絶縁部12cは、一端辺の中央から、右側に延び、さらに上方に折れ曲がって上辺にいたるように電極膜を分離し、電極膜の上側の角部付近が4角形に残されて第2の電極部12bを形成している。また、絶縁部12cによって、電極膜は、第2の電極部12bとは互いに電気的に分離された第1の電極部1aを形成している。また、第1の電極部12aに対して、縦方向に貫通して形成された絶縁部12dによって、第1の電極部12aと第2の電極部の右側端部(第2の電極と同じ参照符号で示す)2bが電気的に分離形成されている。
【0036】
第2の中間部平面電極層13は、第1の中間部平面電極層と同様に、電極膜を絶縁部13cを介して電気的に分離することで、左上側の第2の電極部13b及びL字形状の第1の電極部13aが形成されている。第1の電極部13aの右端と第2の電極部の右側端部(第2の電極と同じ参照符号で示す)13bとは、縦に細長い絶縁部13によって、電気的に分離形成されている。
【0037】
最上部平面電極層14は、矩形の電極膜を絶縁部14c、14dを介して電気的に分離することで形成されている。絶縁部14cは、一端辺の中央部側から右側に向かって延び、さらに下方に折れ曲がっ底辺にいたることで、電極膜の下側の角部付近が、4角形に残されて第1の電極部14aを形成している。また、絶縁部1cによって、第1の電極部14aから互いに電気的に分離された第2の電極部14bが形成されている。第2の電極部14bの右端と第2の電極部の右側端部(第2の電極と同じ参照符号で示す)14bとは、縦に細長い絶縁部14によって、電気的に分離形成されている。
【0038】
積層体20の形成の際に、底部平面電極層11の裏面側と、最上部平面電極層14の表面側が露出する。
【0039】
図4(a)及び図4(b)は積層体の両端に側面電極を形成する工程を示す斜視図である。
【0040】
図4(a)及び図4(b)に示すように、積層体20の第1の方向交差する第2の方向(長さ方向)の一端面の一側に、導電膜からなる第1の外部電極15a、他側に第2の外部電極15bを絶縁部15cを介して第及び第2の方向に交差する第3の方向(積層体の幅方向)に並設した第1の側面電極15が形成されている。
【0041】
一方、積層体20の他端面には、全面を覆うように導電膜からなる第2の側面電極16を形成する。
【0042】
第1の側面電極15の第1の外部電極15aによって、各平面電極層11、12、13、14の第1の電極部11a、12a、13a、14aは、夫々の一端部を介して電気接続され、第2の外部電極15bによって、第2の電極部12b、13b、14bは、夫々の端部を介して電気接続される。
【0043】
第2の側面電極16によって、第2の電極部11bの他端部及び第2の電極部の右側端部12b、13b、14bの端部が電気接続される。
【0044】
図5(a)は圧電素子の分極工程を示す斜視図で、図5(b)は平面電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図、図5(c)は第1の側面電極の分極電圧の極性を示す図、図5(d)は圧電素子の分極工程を示す断面図である。
【0045】
図5(a)乃至図5(d)に示すように、最上部第2の電極部14bが(−)、底部第2の電極部11bが(+)、第1の中間部平面電極層及び第2の中間部平面電極層の第1の電極部12a、13aが(GND)となるように、分極電圧が印加されて最上層及び底部圧電体層23、1が、矢印31、32に示される第1の方向に沿って分極される。
【0046】
図6(a)は圧電素子に直流電圧による極性パターンを示す斜視図、図6(b)は図6(a)の圧電素子の平面電極層の直流電圧の極性パターンを示す平面図、図6(c)は図6(a)の圧電素子の第1の側面電極15の直流電圧の極性パターンを示す斜視図、及び図6(d)は圧電素子の直流電圧の極性パターン及び動作を示す断面図である。
【0047】
図6(b)に示すように、圧電素子1の積層体20の最上部平面電極層の第2の電極部14b、第2の電極部の右側端部14b間の絶縁部14d上に接続電極膜14eを追加して、第2の電極部14b、第2の電極部の右側端部14b間が導電接続されている。一方、底部平面電極層の第2の電極部11bの一端部側の絶縁部11cも接続電極膜11dを追加することで、底部平面電極層の一端まで導電接続されている。
【0048】
図6(a)乃至図6(d)に示すように、直流電圧の極性は、最上部第1の電極部14a、第1及び第2中間部第1の電極部12a、13a、底部第2の電極部11及び第1の外部電極15aの全てを(+)としている。
【0049】
また、最上部第2の電極部14b、第1及び第2中間部第2の電極部12b、13bとこれらとは電気的に分離された第2電極部の右側端部12b、13b、底部第2の電極部11b、及び第の外部電極15の全てを(−)としている。
【0050】
図6(d)に示すように、第1の電極部12a、13aを駆動内部電極とし、第2の電極部1b、1bを駆動外部電極として、図示する極性で駆動電圧を印加すると、最上部圧電層及び底部圧電層23、21(図5参照)に積層方向(分極方向)と、分極方向に逆方向に夫々電圧が印加されて、最上部圧電体層23を有する圧電素子部は、圧電効果によって、第1の方向に交差する第2の方向(圧電板の長さ方向)に伸長する方向の応力が働いて伸長し(矢印33)、底部圧電体層21を有する圧電素子部は、圧電効果によって長さ方向に沿って収縮する方向に応力が働き、収縮する(矢印34、35)
【0051】
一方、上記直流電圧の極性を逆にすると、最上部圧電体層23を有する圧電素子部は、圧電効果によって第2の方向(圧電板の長さ方向)に沿って収縮方向に応力が働いて収縮し、底部圧電体層21を有する圧電素子部は、圧電効果によって第2の方向(圧電板の長さ方向)に沿って伸長する方向に応力が働き、伸長する。
【0052】
したがって、圧電素子1は、交流駆動電圧を印加することで、屈曲振動を行うバイモルフ素子として働く。
【0053】
図7(a)及び図7(b)は圧電素子1にFPC基板を取付ける工程を示す斜視図である。
【0054】
図7(a)及び図7(b)に示すように、圧電素子1の上面の一端側の第1の電極部14a及び第2の電極部14bの一端側部分を電極取出部としての素子用電極として、これらの素子用電極FPC基板4の裏面形成された導体パターン4a、4bを重ねて接触させるだけで電気接続が可能となる。
【0055】
なお、圧電素子1へのFPC基板の取り付けは、圧電素子1の電極部とFPC基板4の導体パターンとの接合を半田付けすることで行われているが、導電性接着剤等の接着剤による接合や、導電性粘着テープによる接合なども用いることができ、その固定方法には限定されるものではない。
【0056】
図8(a)は本発明の実施の形態による圧電素子の変形例を示す斜視図、図8(b)は図8(a)の圧電素子の平面電極層を示す平面図である。
【0057】
図8(a)及び図8(b)に示す変形例に係る圧電素子30は、中間部平面電極層及び圧電体層が図3(a)に示すものよりも1枚ずつ少ない他は同様の構造を有している。即ち、図8(a)に示すように、積層方向(第1の方向)一端底部平面電極層11上に、圧電体層21、中間部平面電極層12、圧電体層22、第1の方向他端に最上部平面電極層14をこの順に積層してなる。即ち、圧電体層21、22を夫々有する圧電素子部の積層体として構成される。
【0058】
底部平面電極層11は、一枚の電極膜を絶縁部11cで分離することによって形成されている。絶縁部11cは、電極膜の一端側の縁部から下方に移動し、一端辺の中央部側から右側に向かって延び、さらに下方に折れ曲がっ底辺にいたるように電極膜を分離して、下側の角部付近が、4角形に残されて第1の電極部11aを形成している。絶縁部11cによって、第1の電極部11aから互いに電気的に分離された第2の電極部11bが形成されている。
【0059】
第1の中間部平面電極層12は、電極膜を絶縁部12c、12dによって互いに電気的に分離している。絶縁部12cは、電極膜の一端辺の中央から、右側に延び、さらに上方に折れ曲がって上辺にいたるように形成され、電極膜の上側の角部付近が4角形に残されて第2の電極部12bを形成している。また、絶縁部12cによって、第2の電極部12bから互いに電気的に分離された第1の電極部1aが形成されている。また、第1の電極部12aに対して、縦方向に貫通して形成された絶縁部12dによって、第1の電極部12aと第2の電極部の右側端部(第2の電極と同じ参照符号で示す)12bが形成されている。
【0060】
最上部平面電極層14は、電極膜を絶縁部14c、14dによって電気的に分離された3つの電極を有する。絶縁部14cは、一端辺の中央部側から右側に向かって延び、さらに下方に折れ曲がっ底辺にいたるように電極膜を互いに分離し、下側の角部付近が4角形に残されて第1の電極部14aを形成している。絶縁部1cによって、第1の電極部14aから互いに電気的に分離された第2の電極部14bが形成されている。第2の電極部14bの右端と第2の電極部の右側端部(第2の電極と同じ参照符号で示す)14bとは、縦に細長い絶縁部14によって、電気的に分離形成されている。
【0061】
積層体の形成の際に、積層方向の底部平面電極11の裏面側と、最上部平面電極層14の表面側が露出する。
【0062】
積層体の両端面には、図4(a)及び図4(b)に示すものと同様に、第1の側面電極15及び第2の側面電極16が設けられている。
【0063】
第1の側面電極15の第1の外部電極15aによって、各平面電極層11、12、14の第1の電極部11a、12a、14aは、夫々の一端部を介して接続され、第2の外部電極15bによって、第2の電極部12b、14bは、夫々の端部を介して電気接続される。
【0064】
また、第2の側面電極16によって、第2の電極部11bの他端部及び第2の電極部の右側端部12b、14bの端部が電気接続されている。
【0065】
本発明の第1の実施の形態による変形例に係る圧電素子30も、図5に示すものと同様に、最上部圧電体層2を有する圧電素子部、底部圧電体層21が同様の極性パターンの分極電圧を印加されて、圧電体層の第1の方向(厚み方向)に沿って分極される。
【0066】
また、変形例に係る圧電素子30も、図6に示すように、底部平面電極層11及び最上部平面電極層14に夫々接続電極膜11d及び14eを追加図6に示すものと同様な極性パターンの直流電圧を印加することで、最上部圧電体層2を有する圧電素子部及び底部圧電体層21を有する圧電素子部に積層方向(分極方向)と、分極方向に逆方向に夫々電圧が印加されて、最上部圧電体層2を有する圧電素子部は、圧電効果によって第2の方向(長さ方向)に伸長する方向の応力が働いて伸長し、底部圧電体層21を有する圧電素子部は、圧電効果によって第2の方向(長さ方向)に沿って収縮する方向に応力が働き、収縮する。
【0067】
一方、上記直流電圧の極性を逆にすると、最上部圧電体層2の圧電素子部は、圧電効果によって、第2の方向(長さ方向)に沿って収縮方向に応力が働いて収縮し、底部圧電体層21を有する圧電素子部は、圧電効果によって、第2の方向(長さ方向)に沿って伸長する方向に応力が働き、伸長する。
【0068】
したがって、圧電素子30は、交流駆動電圧を印加することで、屈曲振動を行うバイモルフ素子として働く。
【0069】
図12は本発明の第1の実施の形態による圧電振動モジュールの実装方法を示す断面図である。図12に示すように、圧電振動モジュール10は、その端面から取り出したFPC基板4を駆動回路基板(PWB)50に搭載されたコネクタ24に差し込むことでPWB50に実装される。
【0070】
図13(a)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図、図13(b)は図13(a)の13B−13B’線に沿う断面図、図13(c)は図13(a)の13C−13C’線に沿う断面図、図13(d)は、圧電素子の導電性部材25への接続状態を示す平面図である。
【0071】
図13(a)、図13(b)、及び図13(c)に示すように、圧電振動モジュール10は、矩形状の圧電素子1と、圧電素子1の一表面に接続された引き出し用の配線部材としての弾性を有する導電性部材25である、圧電素子1の厚み方向に導電性を持ち、圧電素子1の面内方向は絶縁する異方性導電ゴム(以下、同じ参照符号25で示す)と、前記圧電素子1の他の表面接着剤5を介して張り付けた弾性板2と、弾性板2とともに圧電素子を覆うハウジング部材3とを有している。導電性ゴム25は、ハウジング部材3を貫通して、圧電振動モジュール10の一面側に突出している。
【0072】
弾性板2は、図に示した第1の実施の形態と同様に、温度安定特性の向上、及び振動変位の向上を図るために、JIS K 623で示すデュロメータ硬度が30−130で、振動変位の上昇と落下衝撃耐久性両立のために、厚さ0.1〜0.9mmのシリコーンゴムからなる。
【0073】
導電性部材25としての導電性ゴム25は、圧電素子1の一表面の端部寄りに設けられている。
【0074】
弾性板2は、圧電素子1の導電性部材25が設けられている表面と対向する反対側の表面に、常温硬化型接着剤もしくはシリコーン系両面テープのような接着材5を介して貼り付けられている。この接着材5の硬度は、弾性板2と同一か、もしくは弾性板2よりも柔らかいことが好ましい。
【0075】
弾性板2は、図2で示す第1の実施の形態と同様に、タッチパネルの振動板6に貼り付けて使用されているが、スマートフォン等のスピーカとしての使用や、可聴域の他に、バイブ等の低周波の振動発生も可能である。
【0076】
図14(a)は本発明の第2の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程を示す図で、圧電素子を構成する積層体の斜視図を示し、図14(b)は本発明の実施の形態による圧電振動モジュールに用いられる圧電素子の製造工程を示す図で、積層体の平面電極層の電極パターンの平面図を示している。
【0077】
図14(a)及び図14(b)図15(b)に示すように、圧電素子1は、矩形状の圧電セラミックス板からなる圧電体層41、42、43、44、45、45、47、48と導電体膜からなる平面電極層51、52、53、54、55、56、57、58、59とを交互に積層し、積層方向(第1の方向)に交差する第2の方向の両端面に第1及び第2の側面電極61A、61B及び61A′、61B′をそれぞれ形成してなる。それぞれの圧電体層41、42、43、44、45、45、47、48は夫々の表面に形成された平面電極層で、それぞれ圧電素子部を構成し、夫々の圧電素子部が第1の方向に積層されて、積層体40を構成している。
【0078】
即ち、積層体の積層方向である第1の方向の一端の底部平面電極層51上に、圧電体層41、第1の中間部平面電極層52、圧電体層42、第2の中間部平面電極層53、圧電体層43、第3の中間部平面電極層54、圧電体層44、第4の中間部平面電極層55、圧電体層45、第5の中間部平面電極層56、圧電体層46、第6の中間部平面電極層57、圧電体層47、第7の中間部平面電極層58、圧電体層48、最上部平面電極層59をこの順に積層してなる。各々の圧電体層41乃至48は表裏面にそれぞれ平面電極層を備えて夫々圧電素子部を構成する。
【0079】
本発明の第2の実施の形態において、圧電体層41乃至48として、第1の実施の形態と同様なPZT系材料の圧電セラミック板を用いているが、圧電効果を有する材料であるならば、どのような材料であっても良いことは勿論である。
【0080】
底部平面電極層51は、圧電体層41の表面の中央部に形成された矩形の電極膜とその一端側とは反対の他端側に引き出された第2の引き出し電極51B′を有する。
【0081】
第1乃至第7の中間部平面電極層52乃至58は、長手方向(第1の方向に交差する第2の方向)の端面に、第1の方向に進むにつれて、一端及び他端に互い違いに引き出されるように形成された一端側の第1の引き出し電極52A、54A、56A、58A及び他端側の第2の引き出し電極53A′、55A′、57A′とを有する。
【0082】
最上部平面電極層59は、電極部(同じ符号59で示す)と、一端側に引き出された第1の引き出し電極5Bと、これと電気的に絶縁されて一端側に設けられた第1の端子用電極59Aとを有する。また、他端側には、電極部と絶縁された一対の第2の端子用電極59A′、59B′とを有する。
【0083】
中間部平面電極層の第1の引き出し電極52A、54A、56A、58Aは、第1の側面電極61Aによって、電気的接続されている。また、最上部第1の端子用電極59Aは、第1の側面電極61Aと電気接続されている。また、最上部第1の引き出し電極59Bは、第1の側面電極61Bと電気接続されている。また、最上部第2の端子用電極59A′及び中間部の第2の引き出し電極53A′、55A′、57A′は、第2の側面電極61A′によって、電気的接続されている。最上部第2の端子用電極59B′及び底部第2の引き出し電極51B′は、第2の側面電極61B′によって、電気的接続されている。
【0084】
図15(a)は図13(a)、図13(b)、図13(c)に示す本発明の第2の実施の形態による圧電素子の分極工程を示す平面図で、図15(b)は図15(a)の圧電素子の電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図15(a)の15B−15B′線に沿う断面図、図15(c)は図15(a)の圧電素子の電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図15(a)の15C−15C′線に沿う断面図である。
【0085】
図15(a)乃至図15(c)に示すように、最上部平面電極層59の極性が(−)、底部平面電極部51及び積層方向に一つ置きの平面電極層53、55、57の極性が(+)、積層方向の最層よりも一つ上層の平面電極層52から一つ置きの平面電極層54、56、58が(GND)となるように、分極電圧が印加されて、圧電体層41、43、45、47、48を有する圧電素子部が、矢印65aに示すように、圧電体層42、44、46を有する圧電素子部が、矢印65bに示される第の方向に沿って夫々分極される。
【0086】
図16(a)は図15(a)及び(b)に示す圧電素子に駆動電圧の極性パターンの一例を示す平面図及び断面図、図6(b)は圧電素子の平面電極層の駆動電圧の極性パターンの他一例を示す平面図及び断面図である。
【0087】
図16(a)に示すように、圧電素子1は、圧電体層を有する圧電素子部の積層体の最上部平面電極層の第2の端子用電極59A′と電極部59とを接続電極部59cを追加して、第2の側面電極61A′と接続電極部59Cとが導電接続されている。一方、第1の端子用電極59Aと第1の側面電極61Aとが導電接続されている。
【0088】
図16(a)に示すように、印加される直流電圧の極性は、最上部平面電極59から一つ置きに平面電極層57、55、53を(−)、最上部第1の端子用電極59A、及び最上部平面電極部59よりも一つ下層の平面電極層58及び平面電極層58から一つおきの平面電極層56、54、52を(+)としている。
【0089】
図16(a)に示すような極性で、直流電圧を印加すると、図16)に示すように、圧電体層42、44、46、48を有する圧電素子部に矢印66cで示される方向に電圧が印加され、圧電体層43、45、47を有する圧電素子部に矢印66dで示される方向に電圧が印加され、最上部の圧電体層48を有する圧電素子部のみが矢印66に示すように、第2の方向に伸張し、最上部の圧電体層48及び底部圧電体層41を有する圧電素子部を除いた残りの圧電体層42、43、44、45、46、47を有する圧電素子部が矢印66で示す第2の方向に収縮する。なお、底部平面電極層51及び圧電体層41は、収縮振動には、寄与しない。
【0090】
したがって、図6(a)に示す極性で、交流駆動電圧を印加すると、最上部の圧電体層48を有する圧電素子部のみが第2の方向に伸し、圧電体層42、43、44、45、46、47、48を有する圧電素子部は、第2の方向に伸縮振動し、その振動方向は、矢印66a及び66bに示すように、互いに反対方向であるので、併せて圧電素子1に屈曲振動が生じる。
【0091】
図16(b)に示すように、圧電素子1の積層体の最上部平面電極層の第2の端子用電極59A′及び59B′と電極部59とを接続電極部59C、59C′を追加して、第2の側面電極61A′及び61B′と接続電極部59C、59C′とが導電接続されている。一方、第1の端子用電極59A、第1の引き出し電極59Bと第1の側面電極61A、61Bとが導電接続されている。
【0092】
図16(b)に示すように、印加される電圧の極性を、最上部電極部59から一つ置きに電極層57、55、53、及び底部電極層51の極性を(−)、最上部第1の端子用電極59A、及び最上部電極部59よりも一つ下層の電極部58及び電極部58から一つおきの平面電極層56、54、52を(+)としている。
【0093】
図16(b)に示すような極性で、直流電圧を印加すると、図16(b)に示すように、圧電体層41、43、45、7を有する圧電素子部に夫々矢印67cで示される方向に電圧が印加され、圧電体層42、44、46、48を有する圧電素子部に夫々矢印67dで示される方向に電圧が印加され、最上部の圧電体層48を含む圧電素子部のみが矢印67aで示されるように第2の方向に伸張し、最上部の圧電体層48を有する圧電素子部を除いた残りの圧電体層41、42、43、44、45、46、47を有する圧電素子部が矢印67bで示す第2の方向に収縮する。
【0094】
したがって、図6(b)に示す極性で、交流駆動電圧を印加すると、最上部の圧電体層48を有する圧電素子部のみが第2の方向に伸縮振動し、圧電体層41、42、43、44、45、46、47、48を有する圧電素子部は、第2の方向に伸縮振動し、その振動方向は、矢印67a及び67bに示すように、互いに反対方向であるので、併せて圧電素子1に屈曲振動が生じる。
【0095】
図17(a)は、他の例に係る圧電素子の分極工程を示す平面図で、図17(b)は電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図で、(a)の17B−17B′線に沿う断面図、図17(c)は電極層の電極パターンに対する分極電圧の極性を示す図で、(a)の17C−17C′線に沿う断面図である。
【0096】
図17(a)乃至図17(c)に示すように、圧電素子は、4層の圧電体層有する積層体を有し、最上部電極部59が(−)、底部電極部51及び積層方向に一つ置きの電極層53に(+)、積層方向の底部よりも一つ上層の平面電極層52及び平面電極層52から一つ置きの平面電極層54が(GND)となるように、分極電圧が印加されて圧電体層41と圧電体層43、44が、矢印68aに示すように分極され、圧電体層42が、矢印68bに示される第の方向に沿って分極される。
【0097】
図18(a)及び(b)は図17(a)に示す圧電素子に直流電圧を印加したときの極性パターンの一例を示す平面図及び断面図、図18(c)及び(d)は、圧電素子の平面電極層の駆動電圧の極性パターンの他一例を示す平面図及び断面図である。
【0098】
図18(a)及び(b)に示すように、圧電素子1は、圧電体層の積層体の最上部平面電極層の第2の端子用電極59A′と電極層59とを接続電極部59Cを追加して、導電接続している。第2の側面電極61A′と第2の端子用電極59A′とが導電接続されている。一方、第1の端子用電極59Aと第1の側面電極61Aとが導電接続されている。
【0099】
図18(a)及び図18(b)に示すように、印加される直流電圧の極性は、最上部面電極層59から一つおき平面電極層53を(−)、最上部第1の端子用電極59A、及び最上部平面電極層59よりも一つ下層の平面電極層54及び平面電極層54から一つおきの平面電極層52を(+)としている。
【0100】
図18(a)及び図18(b)に示すような極性パターンで、直流電圧を印加すると、図18(b)に示すように、圧電体層2、4を有する圧電素子部に矢印69cで示される方向に電圧が印加され、圧電体層43を有する圧電素子部に矢印69dで示される方向に電圧が印加され、最上部の圧電体層44を有する圧電素子部のみが矢印69aで示すように第2の方向に伸張し、最上部圧電体層4を有する圧電素子部及び底部圧電体層41を有する圧電素子部を除いた残りの圧電体層42、43を有する圧電素子部が矢印69bに示すように、第2の方向に収縮する。なお、底部平面電極層51及び圧電体層41を有する圧電素子部は、収縮振動には、寄与しない。
【0101】
したがって、図18(a)及び図18(b)に示すような極性パターンで、交流駆動電圧を印加すると、最上部圧電体層44を有する圧電素子部のみが第2の方向に伸縮振動し、最上部圧電体層を有する圧電素子部及び底部圧電体層41を有する圧電素子部を除いた残りの圧電体層42、43を有する圧電素子部が第2の方向に伸縮振動するが、矢印69a及び矢印69bに示すように、互いに逆方向に振動するので、合成されて圧電素子1は屈曲振動を行う。
【0102】
図18(c)及び図18(d)に示すように、他の一例に係る圧電素子1の積層体の最上部平面電極層の第2の端子用電極59A′及び59B′と平面電極層59とを接続電極部59C、59C′を夫々追加して、第2の側面電極61A′及び61B′は、第2の端子用電極59A′及び59B′、及び接続電極部59C、59C′を介して、平面電極部59と導電接続されている。一方、第1の端子用電極59A、第1の引き出し電極59Bと第1の側面電極61A、61Bとが導電接続されている。
【0103】
図18(c)及び(d)に示すように、印加される直流電圧の極性パターンは、最上平面電極59から一つおきに平面電極層53、底部平面電極層51の極性を(−)、最上部第1の端子用電極59A、及び最上部平面電極層59よりも一つ下層の平面電極層5び平面電極層5から一つおきの平面電極層52を(+)としている。
【0104】
図18(c)及び(d)に示すような極性で、直流を印加すると、図18(d)に示すように、圧電体層42、44を有する圧電素子部に矢印70cで示される方向に電圧が印加され、圧電体層41、43を有する圧電素子部に矢印70dで示される方向に電圧が印加され、最上部の圧電体層44のみが矢印70aに示す第2の方向に伸張し、最上部の圧電体層44を除いた残りの圧電体層41、42、43が矢印70bに示す第2の方向に収縮する。
【0105】
したがって、図18(c)及び図18(d)に示すような極性で、交流駆動電圧を印加すると、最上部の圧電体層44を有する圧電素子部のみが第2の方向に伸縮振動し、最上部圧電体層を有する圧電素子部を除いた残りの圧電体層41、42、43を有する圧電素子部が第2の方向に伸縮振動するが、矢印70a及び矢印70bに示すように、互いに逆方向に振動するので、合成されて圧電素子は屈曲振動を行う。
【0106】
図20(a)は、本発明の第2の実施の形態による圧電振動モジュールの変形例を示す斜視図、図20(b)は図20(a)の20B−20B′線に沿う断面図、図20(c)は図20(a)の20C−20C′線に沿う断面図、図20(d)は導電性部材の接続状態を示す平面図である。
【0107】
図20(a)、図20(b)、図20(c)、及び図20(d)を参照すると、第2の実施の形態の変形例に係る圧電振動モジュールは、第2の実施の形態によるものとは、弾性を有する導電性部材25の個数が異なる。即ち、変形例に係る圧電振動モジュール10は、圧電素子1の最上部平面電極層の第2の方向の一端側の導電性部材25にさらに、第2の方向の他端に第2の端子用電極59A′、59B′に跨って設けられた導電性部材25と同様な導電性ゴムからなる導電性部材26を有している。
【0108】
図21(a)は図13(a)、図13(b)及び図13(c)に示された第2の実施の形態による圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装状態を示す断面図、図21(b)は図20(a)の第2の実施の形態の変形例に係る圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装状態を示す断面図である。
【0109】
図21(a)及び図21(b)に示すように、第2の実施の形態及び変形例に係る圧電振動モジュール10は、導電性ゴムよりなる導電性部材25、26の突出部を介して、駆動回路基板50に実装される。
【0110】
図22(a)は図21(a)の第2の実施の形態による圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装方法を示す断面図、図22(b)は、図2)の第2の実施の形態の変形例に係る圧電振動モジュールの駆動回路基板への実装方法を示す断面図である。
【0111】
図22(a)及び図22(b)に示すように、第2の実施の形態及びその変形例に係る圧電振動モジュール10は、筐体75によって矢印73及び74に示すように、圧力をかけ、夫々導電性ゴムよりなる導電性部材25、26の突出部を10−50%押し込むことによって、駆動回路基板50に電気接続されて、筐体75内に収容されて実装される。
【0112】
図23(a)は本発明の第3の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図、図23(b)は、図23(a)の圧電振動モジュールの23B−23B′線に沿う断面図、図23(c)は、図23(a)の圧電振動モジュールの23C−23C′線に沿う断面図、図23(d)は、図23(a)の第3の実施の形態による圧電振動モジュールの変形例に係る圧電振動モジュールの図23(c)と同じ位置である23C−23C′線に沿う断面図である。
【0113】
図23(a)、図23(b)、及び図23(c)に示される第3の実施の形態による圧電振動モジュールは、図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示される第1の実施の形態による圧電振動モジュールとは、音圧調整手段が設けられている点で異なる。
【0114】
即ち、図23(a)、図23(b)、及び図23(c)に示すように、圧電振動モジュール10は、矩形状の圧電素子1と、圧電素子1の一表面に接続された引き出し用の配線部材4としてのフレキシブル配線(FPC)基板4と、前記圧電素子1の他の表面接着剤5を介して張り付けた弾性板2と、弾性板2とともに圧電素子を覆うハウジング部材3とを有している。
【0115】
圧電素子1は、図2図3に示すものと同様に、矩形状の圧電セラミックス板からなる圧電体層21、22、及び23と導電体膜からなる電極層11、12、13、及び14とを交互に積層し、積層方向(第1の方向)に交差する第2の方向の両端面に第1及び第2の側面電極15及び16をそれぞれ形成してなる。
【0116】
本発明の第3の実施の形態において、本発明の第1の実施の形態と同様に、圧電体層21、22、23として、PZT系材料の圧電セラミック板を用いているが、圧電効果を有する材料であるならば、どのような材料であっても良いことは勿論である。
【0117】
弾性板2は、温度安定特性の向上、及び振動変位の向上を図るために、JIS K 623で示すデュロメータ硬度が30−130で、振動変位の上昇と落下衝撃耐久性両立のために、厚さ0.1〜0.9mmのシリコーンゴムからなる。
【0118】
配線部材4としてのフレキシブル配線基板(FPC基板)4は、圧電素子1の一表面の端部寄りに設けられている。
【0119】
図7(a)のところで示したものと同様に、FPC基板4は、フレキシブル基材4cの一表面(図では裏面)の長さ方向両側に互いに平行に導体パターン4a、4bが形成されている。
【0120】
図2で示したものと同様に、弾性板2は、圧電素子1のFPC基板4が設けられている表面と対向する反対側の表面に、常温硬化型接着剤もしくはシリコーン系両面テープのような接着材5を介して貼り付けられている。この接着材5の硬度は、弾性板2と同一か、もしくは弾性板2よりも柔らかいことが好ましい。
【0121】
弾性板2は、図2の例と同様に、タッチパネルの振動板6に貼り付けて使用されているが、スマートフォン等のスピーカとしての使用や、可聴域の他に、バイブ等の低周波の振動発生も可能である。
【0122】
以上までは第1の実施の形態と同様である。
【0123】
図23(a)、図23(b)、及び図23(c)に示すように、本発明の第3の実施の形態による圧電振動モジュール10は、第1の実施の形態による圧電振動モジュールとは、ハウジング部材3に埋設されてハウジング複合部材を構成する複合化材80を有する点で異なる。複合化材80は、音圧周波数特性フラット化する音圧調整手段として機能する。
【0124】
図23(d)に示す変形例に係る複合化材80のように、ハウジング部材3から一面が露出して設けられても良いことは勿論である。
【0125】
図25(a)は本発明の第4の実施の形態による圧電振動モジュールを示す斜視図、図25(b)は、図25(a)の圧電振動モジュールの25B−25B′線に沿う断面図、図25(c)は、図25(a)の圧電振動モジュールの25C−25C′線に沿う断面図である。
【0126】
図25(a)、図25(b)、及び図25(c)に示される第4の実施の形態による圧電振動モジュールは、図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示される第1の実施の形態による圧電振動モジュールとは、音圧調整手段が設けられている点で異なる。音調整手段は、ハウジング部材3の表面に突出して、一列に間隔を置いて並んで設けられた3個の突起部3aからなり、この突起部3aは、表面振動分布を平坦化するとともに、ガラスパネルの共振モードの節となる部分に設けられている。これによって、スピーカー等の音質が低下することとなるガラスパネルとの共振を避けることができる。
【0127】
以上説明した本発明の第2、第3、及び第4の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、圧電振動モジュールは、弾性板2及びハウジング部材3によって、圧電素子を覆うように構成したが、シリコーンゴム等の弾性を有する材料であるならば、モールドによって一体に形成しても良いことは勿論である。
【実施例】
【0128】
次に、本発明の実施の形態による圧電振動モジュールの諸特性について説明する。
【0129】
(実施例1)
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示す構造の圧電素子1と、圧電振動モジュール10を用意した。本発明の実施例に係る圧電振動モジュールの圧電素子の弾性板2及びハウジング部材3には、シリコーンゴムを用いている。
【0130】
本発明の実施例に係る圧電振動モジュールは、長さ27mm、厚さ1.0mm、幅5.0mmの圧電素子1に対して、全体の長さ30mm、厚さ1.8mm、幅3.0mmを有している。
【0131】
比較のために、同じ寸法でこの圧電振動モジュールの弾性板及びハウジング部材として、ポリウレタンでモールドした圧電振動モジュールを用いた。
【0132】
変位の測定は、ファンクションジェネレータと高周波アンプとを用いて、20Vpp、300〜3400Hzの駆動電圧を入力し、変位をレーザー変位計によって測定した。
【0133】
本発明の実施例による圧電振動モジュール、比較例に係る圧電振動モジュールを恒温槽中にて温度を−40℃から100℃に変化させて、変位の温度特性及び変位変化率の温度特性を調べた。その結果を図9(a)及び図9(b)に示す。
【0134】
図9(a)に示すように、変位(nm単位で、Peak to Peakの変位振幅のこと、以下nmppと呼ぶ)は、−30〜80℃の間で、1700〜2400の範囲内で、素子の変位及び比較例に比べて明らかに変位の変動が少ないことが判明した。
【0135】
図9(b)に示すように、変位変化率(nmpp)は、−30〜80℃の間で、10〜−8の範囲内で、素子の変位変化率及び比較例に比べて明らかに変位の変化率が少ないことが判明した。
【0136】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同様の本発明の圧電振動モジュールにおいて、室温にて、実施例1と同様の変位計を用いて、圧電振動モジュールのハウジング部材及び弾性板のシリコーンゴムのデュロメータ硬度(JIS K 6253)を10から16まで変化させて、硬度に対する変位を測定した。その結果を、図10に示す。図10に示すように、硬度30−130のシリコーンゴムにおいては、変位(nmpp)が1500−2000の最適値であることが判明した。デュロメータ硬度を30〜130とすることで振動変位の大きさを増大させることができる。
【0137】
(実施例3)
実施例1で使用したものと同様の構造で、シリコーンゴムの厚み(片側厚み)のみ異なる圧電振動モジュールと、同じ厚みの圧電振動モジュールを用いて、夫々室温にて、実施例1と同様な変位測定によって、シリコーンゴムの厚み(片側厚み)に対する変位を測定した。また、本発明の圧電振動モジュールを高さを変化して落下させ、圧電素子の破損、ひびわれ、欠け等の有無に基いて、許容落下高さを測定した。
【0138】
その結果を、図11に示す。図11に示すように、厚みが0.1〜0.8mmの範囲内で変位(nmpp)は、1500から2300の範囲内であり、許容落下高さ1.5m〜2.2mであることが判明した。このことから、シリコーンゴムの片側厚みを0.1〜0.8mmとすることで、振動変位と落下衝撃耐久性の両方を図ることが出来る。
【0139】
(実施例4)
図13及び図20に示す圧電振動モジュール10であって、図14に示すものと同様に最上部及び最下部平面電極層及び中間部平面電極層を形成し、圧電体層を有する圧電素子部を16層積層した本発明によるもの、および、通常品である圧電体層を有する圧電素子部を15層積層した比較例に係るものとを作製し、その音圧の周波数特性を調べた。なお、本発明の実施例4に係る圧電素子モジュールは、圧電素子の幅2.4mm、長さ27mm、厚さ1.0mmで、あった。その結果を図19に示す。図19において、横軸は駆動電圧の周波数(Hz)、縦軸は音圧(dBspl)を示している。図19に示すように、曲線91に示す圧電素子部(圧電体層)を15層積層した比較例に係るものよりも、曲線92で示される圧電素子部(圧電体層)を16層積層した本発明によるものの方が、音圧が上昇していることが分かる。
【0140】
(実施例5)
図23(A)、(b)、及び(c)に示すハウジング部材の複合化材として、厚さ50μmのステンレスであるSUS304よりなる複合化板材A及び厚さ200μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)である複合化板材Bを夫々ハウジング部材と一体化して、圧電振動モジュールを作製した。また、比較のために、図1(a)、図1(b)及び図1(c)に示す第1の実施の形態による圧電振動モジュールを作製した。なお、圧電素子は、幅2.4mm、長さ27mm、厚さ1.0mmで、弾性板及びハウジング部材は、厚さ1.8mm、幅2.4mm、長さ30mmであった。この圧電振動モジュールの音圧の周波数依存性を調査した。その結果を図24に示す。図24において、横軸は駆動周波数(Hz)、縦軸は音圧(dBspl)を示している。図24に示すように、曲線93に示す第1の実施の形態による圧電振動モジュールは、周波数に対して起伏が激しい、本発明の複合化材A及びBを用いたいずれの圧電振動モジュールも、曲線95及び94に示すように音圧の周波数特性がフラット化していることがわかる。これは、複合化された板材によって、圧電素子の共振と取り付けられる被取り付け物の共振とが相殺されるためである。
【0141】
(実施例6)
図25(a)、図25(b)、及び図25(c)に示される圧電振動モジュールをガラ
ス板81の振動の共振を避ける目的で、ガラス板81の共振の節もしくはその付近に突起
部3aが位置するように取り付けてその振動分布を調べた。なお、圧電素子は、幅2.4
mm、長さ27mm、厚さ1.0mm、圧電振動モジュールのハウジング部材及び弾性
の外装部材は、長さ30mm、幅3.0mm、厚さ1.8mmである。
【0142】
図26(a)は図25(a)に示す圧電振動モジュールの突起部側にガラス板を載せてその振動の平面分布を調査した平面図、図26(b)は図25(a)に示す圧電振動モジュールの突起部側にガラス板を載せてその振動の垂直分布を調査した正面図である。比較のために、図27(a)は図1(a)に示す圧電振動モジュールガラス板を載せてその振動の平面分布を調査した平面図、図27(b)は図1(a)に示す圧電振動モジュールの突起部側にガラス板を載せてその振動の垂直分布を調査した正面図である。
【0143】
図26(a)及び図27(a)の比較において、本発明に係る突起部3aを有するものの振動の平面分布82は、突起部のないものの平面分布83よりも、その変動が大きいことが分かる。また、図26(b)及び図27(b)の比較から、本発明に係る突起部3aを有するものの振動の垂直分布82は、比較例に係る突起部のないものの振動の垂直分布83よりも、その変動が大きいことが分かる。
【0144】
なお、突起部3aの位置を圧電素子の振動の腹におけば、振動の伝播がより大きくなり、振動の平面分布及び振動の垂直分布もより大きく変化が大きくなることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
以上述べた通り、本発明の圧電振動モジュールは、携帯端末、タッチパネル全般、ゲームコントローラ、遊技機等パネル音響用圧電振動モジュールに適用される。
【0146】
この出願は、2012年4月5日に出願された日本出願特願第2012−86278号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【符号の説明】
【0147】
1、30 圧電素子
2 弾性板
3 ハウジング部材
3a 突起部
4 配線部材(FPC基板)
4a、4b 導体パターン
4c フレキシブル基材
5 接着剤
6 振動板
10 圧電振動モジュール
11、12、13、14 平面電極層
11a、12a、13a、14a 第1の電極部
11b、12b、13b、14b 第2の電極部
11c、12c、12d、13c、13d、14c、14d 絶縁部
15 第1の側面電極
15a 第1の外部電極
15b 第2の外部電極
15c 絶縁部
16 第2の側面電極
20、40 積層体
21、22、23 圧電体層
25、26 導電性部材(導電性ゴム)
41、42、43、44、45、46、47、48 圧電体層
50 駆動回路基板
51、52、53、54、55、56、57、58、59 平面電極層
51B′、53A′、55A′、57A′ 第2の引き出し電極
52A、54A、56A、58A、59B 第1の引き出し電極
59A 第1の端子用電極
59A′、59B′ 第2の端子用電極
61A、61B 第1の側面電極
61A′、61B′ 第2の側面電極
65a、65b、68a、68b 分極方向を示す矢印
66a、67a、69b 収縮方向を示す矢印
66b、67b、69a 伸長方向を示す矢印
66c、66d、67c、67d、69c、69d、70c、70d 電圧印加方
向を示す矢印
73、74 圧力方向を示す矢印
75 筐体
80 複合化材
81 ガラスパネル
82、83 振動分布
図1
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