(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062926
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】使用者が1地点において随意の方向に歩行または走行することを可能にする装置の制御方法およびそのための装置
(51)【国際特許分類】
A63B 24/00 20060101AFI20170106BHJP
A63B 22/06 20060101ALI20170106BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
A63B24/00
A63B22/06 Z
A63B69/00 A
A63B69/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-509714(P2014-509714)
(86)(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公表番号】特表2014-512926(P2014-512926A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2012058480
(87)【国際公開番号】WO2012152806
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】11165490.1
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513278334
【氏名又は名称】エムエスエー オムニフィニティー アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】MSE Omnifinity AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,ミーケル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,ダニエル
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第96/035481(WO,A1)
【文献】
米国特許第07399258(US,B1)
【文献】
国際公開第2010/089618(WO,A1)
【文献】
特表2000−516829(JP,A)
【文献】
特開平07−204359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00−26/00
A63B 69/00−71/16
A63G 31/00−31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者(25)が1地点において随意の方向に歩行または走行することを可能にする装置(1)の制御方法であって、前記装置(1)は定置された中心のプラットホーム(9)を含み、前記プラットホーム(9)は、それと同じ高さの凸多角形のデッキ(6)によって囲繞され、前記デッキ(6)は複数の台形のローラコンベヤ(7)に分割され、各コンベヤ(7)は前記台形の底辺と平行なローラ(8)を有し、前記底辺のうちの短辺は前記プラットホーム(9)に隣接し、前記底辺のうちの長辺は前記多角形の1辺を形成し、さらに、前記コンベヤ(7)のローラ(8)は、その上を歩く使用者(25)を前記中心のプラットホーム(9)に連れ戻すように駆動される、制御方法において、次のステップ、すなわち、
前記装置(1)の上部に、その使用者(25)よりかなり高い位置において複数個のビデオカメラ(24)を装着するステップであって、前記カメラ(24)は、規定されたマトリックスに配置されると共に下向きに向けられる、ステップと、
前記使用者(25)の頭部に方向指示マーカー(26)を装着するステップと、
前記マーカー(26)の位置およびサイズを前記カメラ(24)によって監視するステップと、
前記ローラコンベヤ(7)の速度を、前記カメラ(24)によって上から見た前記中心のプラットホーム(9)からの前記マーカー(26)の距離に応じて、前記距離が大きい場合には高速で、前記距離が小さい場合には低速で制御するステップと、
前記距離がゼロになると前記ローラコンベヤ(7)を停止するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記カメラ(24)によって上から見た前記マーカー(26)のサイズがかなり減少したとき、または、前記マーカー(26)を前記カメラ(24)から全く見ることができなくなったときには、前記ローラコンベヤ(7)を停止するステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記使用者(25)が見ることができるビデオディスプレーまたはスクリーンを装着するステップと、前記ビデオディスプレーまたはスクリーン上に示される内容を、前記ローラコンベヤ(7)の速度と、前記マーカー(26)の実際の位置およびサイズ並びにその方向とに適応させるステップとをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記ビデオディスプレーまたはスクリーン上に示されるべき主題を、使用されるマーカー(26)のタイプに応じて選択するステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法において、前記使用者(25)の頭上のマーカー(26)の方向が、前記デッキ(6)の上に踏み出した前記使用者(25)が前記中心のプラットホーム(9)に対して非半径方向に向いていることを示す場合には、前記ローラコンベヤ(7)の速度を低下させるステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
使用者(25)が1地点において随意の方向に歩行または走行することを可能にする装置(1)であって、前記装置(1)は定置された中心のプラットホーム(9)を含み、前記プラットホーム(9)は、それと同じ高さの凸多角形のデッキ(6)によって囲繞され、前記デッキ(6)は複数の台形のローラコンベヤ(7)に分割され、各コンベヤ(7)は前記台形の底辺と平行なローラ(8)を有し、前記底辺のうちの短辺は前記プラットホーム(9)に隣接し、前記底辺のうちの長辺は前記多角形の1辺を形成し、前記コンベヤ(7)の前記ローラ(8)は、その上を歩く使用者(25)を前記中心のプラットホーム(9)に連れ戻すように駆動され、前記ローラ(8)は連続的な円形の円筒であり、各コンベヤ(7)の下側には、下側から前記ローラ(8)と摩擦駆動係合する駆動手段(14)が設けられる、装置(1)において、
前記駆動手段(14)が、前記ローラコンベヤ(7)に沿って延びるエンドレスのベルト(15)を含み、前記エンドレスのベルト(15)は、前記ローラコンベヤ(7)のすべてのローラ(8)と摩擦駆動係合していること、および、
前記駆動手段(14)が、前記コンベヤローラ(8)の中心部分において前記コンベヤローラ(8)と摩擦係合し、前記ローラ(8)は、その端部において、弾性的に取り付けられる軸受(13)内に枢支されること、
を特徴とする装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(1)において、前記駆動手段(14)の駆動軸(18)が、フレキシブルジョイント(19)によって相互に連結され、かつ、単一モータ(20)によって駆動される、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項8】
請求項6または7に記載の装置(1)において、前記デッキ(6)が、その周囲を、それと同じ高さの定置型のフロアプレート(2)によって取り囲まれる、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項9】
請求項8に記載の装置(1)において、前記フロアプレート(2)が前記駆動手段(14)の部品をカバーする、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項10】
請求項8または9に記載の装置(1)において、前記デッキ(6)が正凸多角形であり、かつ、そのローラコンベヤ(7)は長方形以外の等脚台形である、ことを特徴とする装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が1地点において(on the spot)随意の方向に歩行または走行することを可能にする装置の制御方法に関する。この装置は定置された中心のプラットホームを含み、そのプラットホームは、それと同じ高さの凸多角形のデッキによって囲繞されている。前記デッキは複数の台形のローラコンベヤに分割され、各コンベヤはその台形の基線と平行な複数のローラを有し、その基線の短辺は前記プラットホームに隣接し、その基線の長辺は前記多角形の1辺を形成する。ここで、前記コンベヤのローラは、その上を歩く使用者を前記中心のプラットホームに連れ戻すように駆動される。さらに、本発明は、このような方法によって制御される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類の問題となっている装置は、国際公開第96/35481A2号パンフレットから既に知られている。この出願においては、装置の一実施形態が開示されているが、この装置は台形のローラコンベヤを含み、このローラコンベヤは、2つの等しい長さの円形の円筒部分であって、その中間に中央のウエスト部分を含む2つの円筒部分に分割されたローラを有する。さらに、この国際出願においては、装置の使用者が装着する加速度計からのデータに基づいて前記装置を制御する方法が開示されている。
【0003】
この既知の装置および方法は安全に関するいくつかの懸念を喚起する。懸念の1つは、ローラのウエスト部分を、提示されているように皿頭のカバー帯片によって部分的にカバーするとしても、前記ウエスト部分が、使用者の衣服を危険な形で巻き込むリスクを高める点にある。さらに、この既知の方法に用いる加速度計は、使用者が躓くのを検出する場合に殆ど役に立たない。使用者の躓きは、安全上の理由から、例えば指が挟まれるリスクを避けるために、コンベヤを直ちに停止する必要を生じるだろう。
【0004】
次に、この既知の装置にはいくつかの実際的な欠点もある。ベルトを用いるにしろ、あるいは、歯車を用いるにしろ、ローラ駆動のために選択される方法によって、ローラの組み込みがきわめて複雑になっている。ベルトの場合は、ローラを取り巻くので、ローラの装着または取り外しが妨げられ、歯車の場合は、隣のローラを反対方向でなく同方向に回転させるために中間ギヤの使用が必要になる。
【0005】
別の先行技術の装置が国際公開第2010/089618A2号パンフレットに開示されている。この装置も、台形のローラコンベヤから構成されるプラットホームを備えているが、このコンベヤのローラは安全設計である。このローラは連続的な円形の円筒であって、下側から摩擦ホイールによって駆動される。この構造は、使用者の衣服を巻き込むリスクを最小化している。装置を制御し、かつ使用者をプラットホームの中央部に維持するために、使用者を一定距離に取り囲む円形のレールが用いられる。このレールは、レールからの使用者の距離を測定するセンサー手段を担持でき、その距離データは、ローラコンベヤを制御するための入力として用いられる。
【0006】
上記の後者の装置は、前者の装置より組み立てが遥かに容易であるが、装置に使用される非常に多数の摩擦ホイールがいくらかの改善の余地を残している。さらに、周囲レール上に配置される距離測定センサー手段を使用しているので、例えば、使用者がひざまずき、あるいは躓いて倒れたときに、装置を安全に制御できなくなる。
【0007】
以上の技術的な背景に対して、本発明の第1の目的は、冒頭に述べたタイプの装置を有利に制御する方法を考案することにある。本発明の第2の目的は、改良された台形のローラコンベヤを備えた装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、上記第1の目的は、冒頭に述べた方法であって、さらに、以下のステップ、すなわち、装置の上部に、その使用者よりかなり高い位置において複数個のビデオカメラを装着するステップであって、前記カメラは、規定されたマトリックスに配置されると共に下向きに向けられる、ステップと、前記使用者の頭部に方向指示マーカーを装着するステップと、前記マーカーの位置およびサイズを前記カメラによって監視するステップと、ローラコンベヤの速度を、前記カメラによって上から見た前記中心のプラットホームからの前記マーカーの距離に応じて、前記距離が大きい場合には高速で、その距離が小さい場合には低速で制御するステップと、前記距離がゼロになるとローラコンベヤを停止するステップと、を含むことを特徴とする方法によって実現される。先行技術の装置の場合のように、加速度計の代わりにビデオカメラを使用することによって、使用者は、装置に接続されるために、簡単なマーカーを、例えば帽子またはヘルメットの頂部に着用する必要があるだけである。従って、電池パックなどを配線または装着する必要はなく、これによって、便宜性と安全性とが向上する。さらに、マーカーを、歩行または走行の間前後に動く使用者の腕または脚ではなく頭上に配置することによって、使用者の実際の位置の監視と、それに対するローラコンベヤ速度の調整とが一層確実かつ遥かに容易になる。
【0009】
本発明による方法は、前記カメラによって上から見た前記マーカーのサイズがかなり縮小したとき、または、マーカーを前記カメラから見ることができなくなったときには、ローラコンベヤを停止するステップをさらに含むことが望ましい。このステップは別の重要な安全上の特徴を示している。その理由は、使用者がひざまずくか、横になるか、よろめいて倒れるか、単にマーカーを紛失した場合に、本発明による装置のローラコンベヤは直ちに停止することが保証されるからである。
【0010】
本発明による方法は、さらに、使用者が見ることができるビデオディスプレーまたはスクリーンを装着するステップと、前記ビデオディスプレーまたはスクリーン上に示される内容を、ローラコンベヤの速度と、前記マーカーの実際の位置およびサイズ並びにその方向とに適応させるステップとをさらに含むことが望ましい。これによって、前記ビデオディスプレーまたはスクリーンが映し出す仮想現実環境を使用者が全体的に認識することが大幅に強化することが可能となる。さらに、好ましい一実施形態によれば、前記ビデオディスプレーまたはスクリーン上に示される主題を、使用されるマーカーのタイプに応じて選択できる。これによって、例えば、単に、ある1つのタイプのマーカーをその上に有する帽子から別のタイプのマーカーをその上に有する別の帽子に変えることによって、本発明による装置を、一層使用者親和的かつ使用者に順応可能なものにすることができる。
【0011】
本発明による方法は、使用者の頭上のマーカーの方向が、デッキの上に踏み出した使用者が中心のプラットホームに対して非半径方向に向いていることを示す場合には、ローラコンベヤの速度を低下させるステップをさらに含むことが望ましい。このステップは、使用者が例えば歩行中に頭を回した場合、使用者は通常その歩行速度を落とすので、本発明による装置のローラコンベヤによって速く動かされるとバランスを崩す可能性があることを考慮している。
【0012】
本発明によれば、第2の目的は、使用者が1地点において随意の方向に歩行または走行することを可能にする装置であって、定置された中心のプラットホームを含み、そのプラットホームは、それと同じ高さの凸多角形のデッキによって囲繞され、前記デッキは複数の台形のローラコンベヤに分割され、各コンベヤはその台形の基線と平行なローラを有し、その基線の短辺は前記プラットホームに隣接し、その基線の長辺は前記多角形の1辺を形成し、さらに、前記コンベヤのローラは、その上を歩く使用者を前記中心のプラットホームに連れ戻すように駆動され、前記ローラは連続的な円形の円筒であり、各コンベヤの下側には、下側から前記ローラと摩擦駆動係合する駆動手段が設けられる、装置において、前記駆動手段が、ローラコンベヤに沿って延びるエンドレスのベルトを含み、そのエンドレスのベルトは、ローラコンベヤのすべてのローラと摩擦駆動係合していること、および、前記駆動手段が、コンベヤローラの中心部分においてコンベヤローラと摩擦係合し、前記ローラは、その端部において、弾性的に取り付けられる軸受内に枢支されること、を特徴とする装置である。国際公開第96/35481A2号パンフレットに記載される設備に比べると、この設備の場合は、台形のローラコンベヤおよびそのローラの製作と組込みとが簡単になるだけでなく、例えば、コンベヤを持ち上げて取り外すために駆動ベルトを脱着させる必要がないので、維持管理も容易になる。さらに、本発明によるこの装置は、ローラコンベヤの表面が以前より平滑になり、かつ凹凸が少なくなるので、衣服の巻き込みまたは指の挟み込みのリスクを低減するという点で安全性を改善する。さらに、本発明による装置は、国際公開第2010/0896182号パンフレットの装置に比べると、個別のゴムホイールを含む駆動方式より完成するのが遥かに容易であり、本発明による装置の組み込み弾性方式によって、ローラコンベヤが、若干の弾性を有するスポーツフロアと同様に、より快適にその上を歩行または走行できるものになり、使用者がロールの中心部分から外れたロールの位置を踏んでも、コンベヤのロールと前記駆動手段との間の良好な駆動接触が確保される。
【0013】
前記駆動手段の駆動軸は、フレキシブルジョイントによって相互に連結し、単一モータによって駆動することが望ましい。ある角(かど)の角度が合理的な限界内にあれば、その角を回って回転動作を伝達するために、ユニバーサルジョイントとも呼称されるフレキシブルジョイントを用いることはよく知られている。従って、本発明による装置においては、単一モータからすべてのコンベヤに、いかなる遮断問題をも惹起しないような小角度のステップにおいて動力を伝達するために、2つの隣接するローラコンベヤの間の移行ごとに、1つのこのようなジョイントを用いることができる。
【0014】
本発明による装置のデッキは、その周囲を、それと同じ高さの定置型のフロアプレートで取り囲むことが望ましい。このフロアプレートは、装置の外側の限界を形成し、例えば、装置のローラコンベヤの速度が使用者を中心のプラットホームに連れ戻すには遅すぎる場合の安全退避場所として用いることができる。
【0015】
前記フロアプレートは、前記駆動手段の部品をカバーすることが望ましい。これは、それによって駆動手段へのアクセスが簡略化されるので非常に有利である。さらに、これによって装置の高さを最小化できる。その理由は、例えば、好ましい単一モータはかなりのサイズにならざるを得ないが、そのモータを、どちらかといえば厚いローラコンベヤの下部ではなく、薄いフロアプレートの下部に隠すことができるからである。
【0016】
本発明による装置の好ましい実施形態によれば、前記デッキは正凸多角形であり、そのローラコンベヤは均等な二等辺四辺形である。このような方式は、随意の方向における歩行または走行をなんらの制限なしに可能にする装置が創出される場合、最も有利である。これは、いくつかのローラコンベヤの外側の限界が中心のプラットホームに近接しているが、その他のコンベヤはそうでないような場合に該当する可能性がある。
【0017】
図面には、本発明による装置の好ましい実施形態が示され、本発明による方法の好ましい実施形態が説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明による装置の好ましい実施形態を斜視図で示す。
【
図3】
図3は、
図2の部分Aの、いくつかの部分が分解された詳細図である。
【
図6】
図6は、装置の使用者と、装置そのものと、本発明による方法を実施するのに必要な他の手段とを斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態による装置1は上から見ると略円形である。円形の周囲は、水平のリング形状のフロアプレート2によって作出され、このリング形状のフロアプレート2は、半径方向の線によっていくつかの扇形部分3に分割される。合計16個の同一のフロア扇形部分3があり、そのすべてが、分割線の下側の半径方向のビーム5を含むフレーム構造4の上に載っている。半径方向のビーム5を含むフレーム構造4は、
図3に最もよく見ることができる。
図3においては、装置1の下部構造を明らかにするために、2つのフロア扇形部分3が取り外されている。リング形状のフロアプレート2の内周においては、各フロア扇形部分3が、1本の分割線から次の分割線まで直線的に延びる線を形成する。これによって、16個のフロア扇形部分3が正16角形のリング状開口を構成する。
【0020】
リング形状のフロアプレート2のリング状開口の内側に、フロアプレート2と同じ高さの水平デッキ6が設けられる。このデッキ6もリング形状であり、フロアプレート2と同心である。デッキ6は、合計16個の同一のローラコンベヤ7、すなわち、それぞれ、台形の基線に平行なローラ8を備えた1つの二等辺四辺形の台形から構成される。16個のローラコンベヤ7は、それぞれ、16個のフロア扇形部分3の1つと半径方向において同心に配列され、かつ、それぞれ、当該ローラコンベヤ7の長い方の基線に沿うローラ8によって、いかなる大きな中断もなくそのフロア扇形部分3に接続される。ローラコンベヤ7の短い方の基線に沿う反対側のローラ8は、デッキ6の内側の周囲を形成する正16角形の開口を規定する。
【0021】
最後に、リング形状のデッキ6のリング状開口の内側に、フロアプレート2およびデッキ6の両者と同じ高さの水平の中心プラットホーム9が設けられる。このプラットホーム9は、定置型であり、正16角形の形状と、デッキ6の内周にいかなる大きな中断個所をも残すことなく適合するサイズとを有する。この中心のプラットホーム9は、フロアプレート2と同様に、円形の装置1の中心に全長にわたって延び込む半径方向のビーム5を有する前記フレーム構造4の上に載っている。
【0022】
デッキ6もフレーム構造4の上に載っているが、半径方向のビーム5の上に直接載っているのではなく、
図5の詳細図に見られるように、このビーム5の頂部に装着される弾性のエラストマー帯10の上に載っている。前記エラストマー帯10の上に、ローラコンベヤ7の側板11が載っている。この側板11はスタッド12によって所定位置に保持されるが、このスタッド12は、半径方向のビーム5に取り付けられ、前記側板11におけるオリフィス開口を自在に通過する。これによって、前記支持された側版の若干の動きが、前記オリフィス開口の頂部に突き出るスタッド12のヘッドによって規定される限界内において可能になる。
【0023】
ローラコンベヤ7のローラ8は、前記側板11が保持する軸受13内に枢支されると共に、相互に接触することなく、相互にできるだけ近接して取り付けられる。この取り付けは、1つの同じローラコンベヤ7の範囲内において平行に、かつ、前記フレーム構造4の半径方向のビーム5の頂部において隣接する2つのローラコンベヤ7の間において横向きに行われる。従って、ローラ8は、ローラ8の下部に配置されかつそれぞれのローラ8と摩擦接触する駆動手段14がなければ、自在に回転し得るであろう。
【0024】
図3に見られるように、本発明の好ましい実施形態によれば、すべてのローラコンベヤ7の駆動手段14は、エンドレスのベルト15を備えている。このベルト15は、当該ローラコンベヤ7の中心において、装置1の中心に向かって半径方向に延びている。各エンドレスベルト15の上部ベルト(upper course)の下部の摺動支持体16によって、これらの上部ベルトが、ローラコンベヤ7のすべてのローラ8と摩擦係合するように押し付けられる。ここで、ローラコンベヤ7が弾性支持されているので、ローラ8が偏心負荷を受ける状況においても、完全なベルト−ローラの接触が確保される。
【0025】
各エンドレスベルト15は終端プーリ16、17の回りに動くが、このプーリのうち、内側のプーリ16が従動プーリであり、外側のプーリ17が駆動プーリであることが望ましい。さらに、駆動プーリ17はカルダン軸装置18によって駆動される。このカルダン軸装置18は、駆動プーリ17の両側にフレキシブルジョイント19を含み、単一の電気モータ20から第1駆動プーリ17まで延びており、さらにそれから次の駆動プーリ17まで延び、以下同様に延びている。
【0026】
図3によく見られるように、カルダン軸装置18は、フロアプレート2の下に十分に隠れるが、選択されたフロア扇形部分3を単に取り外すことによって簡単にアクセス可能である。同じことがローラコンベヤ7にも当てはまるが、ローラコンベヤ7は、それが摩擦駆動され、従って、固定用スタッド12を取り外すと簡単に持ち上げることができるという点から、極めて取り外しが簡単である。
【0027】
図6には、上記の好ましい実施形態による装置1が、装置1の制御方法を可能にするために用意されるいくつかの付加的な特徴と共に示されている。
図6においては、装置1の斜視図そのものは
図1と同じなので、先行の参照符号は殆ど省略されている。
【0028】
図6の構成は、装置1の他に、装置1を取り囲むケージ21を含む。ケージ21は、垂直の柱22と、対角線上に延びるレール23を含む屋根部とを有する。柱22は、それ自体既知の仮想現実環境の作出を可能にするビデオディスプレーまたはスクリーン(図示されていない)を取り付けるために用いることが望ましい。レール23は、下向きに向けられるビデオカメラ24を担持している。図から分かるように、ビデオカメラ24は、装置1の使用者25のかなり上部の高さにおいて、好適に規定されたマトリックスに配置される。使用者は帽子を着用しており、その帽子の頂部に、方向を指示する規定されたパターンのマーカー26が設けられる。
【0029】
本発明による方法においては、ビデオカメラ24が、マーカー26の位置と、そのサイズと、その方向とを追跡し、その情報を、装置1の使用者25が現在どこにいるか、および、使用者がどこを指向しているかまたは向いているかを決定するために用いる。使用者が、定置型プラットホーム9上の装置1の中心にいないか、あるいはプラットホーム9から離れると、電気モータ20を作動させ、ローラコンベヤ7を駆動して、ローラコンベヤ7がその上に踏み出した使用者25をプラットホーム9に連れ戻すようにさせる。この方法によれば、使用者25をプラットホーム9に連れ戻す速度は、使用者25がプラットホームから遠くに離れている程速くなる。これは、使用者25が定置型プラットホーム9に近付くか、あるいは近接していると、その速度を落とすことをも意味している。使用者25が定置型プラットホーム9の上に戻ると、電気モータ20は再停止され、従って、ローラコンベヤ7が停止される。本発明による方法においては、ローラコンベヤ7は、使用者25の頭上のマーカー26が認識し難くなるかあるいは検出不能になった場合にも、同様に停止される。このような状況は、使用者25が躓いて倒れるか、または、デッキ6を通り過ぎてフロアプレート4の上に踏み込んでいるか、あるいは、何らかの理由でマーカー26が脱落しているかに起因する可能性がある。さらに、マーカー26の認識されたサイズの変化を検出した場合は、使用者25がひざまずくかまたは横になったことによる可能性があるが、このような場合も、安全のためにローラコンベヤ7を直ちに停止する指標として用いることが可能である。
【0030】
本発明による方法に基づくさらに改良された制御モードにおいては、ローラコンベヤ7の速度が、中心のプラットホーム9に対する使用者25の位置に基づいており、この場合、それに加えて、場合によっては、使用者の位置変化が生じる時間を明らかにし、それに従ってローラコンベヤ7の速度を適応させる微分要素(delivating elements)と、時間とともにより速い最大コンベヤ速度を可能にする積分要素とを備えている。
【0031】
本発明による方法は、使用者25が見ることができるビデオディスプレーまたはスクリーン(図示されていない)を装着するステップと、その表示内容、すなわち、そのビデオディスプレーまたはスクリーン上に示される内容の観察角度または移動速度を、ローラコンベヤ7の速度と、前記マーカー26の実際の位置およびサイズ並びにその方向とに適応させるステップとをさらに含むことができる。また、前記ビデオディスプレーまたはスクリーン上に示される主題を、使用するマーカー26のタイプに応じて選択することが好適に可能である。すなわち、例えば、軍隊ヘルメット上のマーカー26の場合には、戦闘シーンが開始され、あるいは、駅長の帽子上のマーカー26の場合には列車のプラットホームのシーンが開始されるような例が挙げられる。
【0032】
最後に、本発明による方法は、使用者25の頭上のマーカー26の方向が、デッキ6の上に踏み出した使用者25が中心のプラットホーム9に対して非半径方向に向いていることを示す場合には、ローラコンベヤ7の速度を低下させるステップをさらに含むことができる。これは、使用者25が歩行中に頭を回した場合、使用者25は通常その歩行速度を落とすので、装置1のローラコンベヤ7によって速く動かされるとバランスを崩す可能性があることを考慮している。