特許第6062927号(P6062927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062927
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】注射器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20170106BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61M5/00
   A61M5/20
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-509841(P2014-509841)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公表番号】特表2014-516667(P2014-516667A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】GB2012051062
(87)【国際公開番号】WO2012153150
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】1107943.1
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/485,451
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501410160
【氏名又は名称】オウエン マンフォード リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】トビー カウェ
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−284389(JP,A)
【文献】 特表2010−535564(JP,A)
【文献】 特表2005−537116(JP,A)
【文献】 特表2010−506680(JP,A)
【文献】 特表2013−512703(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0193109(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0276329(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0270777(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器具であって、
所定の投薬量の薬剤をシリンジ又はカートリッジから送達するように動作可能であり、かつ規定温度条件下でのその動作を阻止するための温度感受性装置を含
ハウジング内部に含有されるシリンジ又はカートリッジから所定の投薬量を放出するように解放可能な駆動機構を含み
前記駆動機構は加えて、前記シリンジ又はカートリッジの前端部に位置するニードルを、使用時に前記投薬量を放出する前に注射部位に貫入するように前記ハウジングから突出させるために、前記ハウジングに対して前記シリンジ又はカートリッジを移動させるように動作可能であり
前記駆動機構は、駆動ばねの影響により前進移動するように初期位置から解放可能なプランジャを含んでおり、
前記温度感受性装置は前記駆動機構の解放を阻止し
さらに、前記プランジャを解放するために動かされる発射エレメントを含み、
前記温度感受性装置は前記発射エレメントの発射のための移動を阻止する、
ことを特徴とする注射器具。
【請求項2】
前記温度感受性装置は、検出された温度が規定の閾値温度の下限を下回ると、前記器具の動作を阻止するように動作可能である、
請求項1に記載の注射器具。
【請求項3】
前記温度感受性装置は、検出された温度が規定の閾値温度の上限を上回ると、前記器具の動作を阻止するように動作可能である、
請求項1又は2に記載の注射器具。
【請求項4】
前記温度感受性装置は、検出された温度が所定範囲外であるならば、前記器具の動作を阻止するように動作可能である、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の注射器具。
【請求項5】
前記プランジャは、相互に協働するラッチ当接部を含むラッチ装置によって前記作動準備位置に解放可能に保持され、
前記温度感受性装置はそのラッチ解除を阻止するように動作可能である、
請求項1に記載の注射器具。
【請求項6】
前記温度感受性装置は熱応答性部材を含み、
前記熱応答性部材は、規定温度を超えると、前記自動注射器の動作を阻止する位置へ移動する、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の注射器具。
【請求項7】
2つの熱応答性部材を含み、一方の熱応答性部材は、第1規定温度を下回ると前記器具の動作を阻止するように形成されており、また他方の熱応答性部材は、第2規定温度を上回ると前記器具の動作を阻止するように形成されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の注射器具。
【請求項8】
前記熱応答性部材はバイモルフ又はバイメタルストリップである、
請求項6又は7に記載の注射器具。
【請求項9】
前記熱応答性部材は形状記憶合金エレメントを含む、
請求項6又は7に記載の注射器具。
【請求項10】
前記温度感受性装置は、前記自動注射器の動作を阻止するように、熱センサの出力に応答する電気駆動式阻止エレメントを含む、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の注射器具。
【請求項11】
規定温度条件下で視覚的表示を提供するように動作可能な、外から見ることのできる感熱性インジケータを含む、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の注射器具。
【請求項12】
前記感熱性インジケータは、規定温度条件下で色が変わる、
請求項11に記載の注射器具。
【請求項13】
前記感熱性インジケータは、規定温度条件下で前記自動注射器の動作状態に関連する記号又は表示を明示するようにされたサーモクロミック材料のコーティングを含む、
請求項11に記載の注射器具。
【請求項14】
前記感熱性インジケータは、規定温度条件下で前記自動注射器の動作状態に関連する記号又は表示を隠すサーモクロミック材料のコーティングを含む、
請求項10又は11に記載の注射器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器具に関するものであり、そして具体的には、注射サイクルの全て又は一部が自動化されている自動注射器に関するものであるが、しかしこれに限らない。本発明はまた、シリンジ及び他の手動式注射器具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射器が幅広い温度範囲にわたって一貫して機能を発揮することが一般には望ましい。このことを達成し得る場合はあるものの、その他の場合、具体的には注射されるべき物質の流体特性又は材料特性が温度とともに著しく変化する場合では、極めて低い温度又は極めて高い温度で、或いは所与の温度範囲外で一貫して機能を発揮する自動注射器具を提供することができないおそれがある。例えば、薬剤の粘度は温度とともに著しく変わる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
従って、自動注射器の温度が動作温度範囲と一致しない場合に、使用者に警告を与える注射器具が設計された。この警告は、器具の動作を阻止することにより能動的であってもよく、視覚インジケータを提供することにより受動的であってもよく、あるいはその両方の組み合わせであってもよい。
【0004】
従って、1つの態様において本発明は、注射器具であって、所定の投薬量の薬剤をシリンジ又はカートリッジから送達するように動作可能であり、規定温度条件下でのその動作を阻止するための温度感受性装置を含む、注射器具を提供する。
【0005】
このようにして、使用者が、不都合な温度条件下で器具を使用することを防止することができる。
【0006】
例えば、
検出された温度が規定の閾値温度を下回るとき、又は、
検出された温度が規定の閾値温度を上回るとき、又は、
検出された温度が所定範囲外にあるときに、
動作を阻止することができる。
【0007】
自動注射器は、ハウジング内部に含有されるシリンジ又はカートリッジから所定の投薬量を放出するように解放可能な駆動機構を含むと好都合であり、また、前記駆動機構は加えて、前記シリンジ又はカートリッジの前端部に位置するニードルを、使用時に前記投薬量を放出する前に注射部位に貫入するように前記ハウジングから突出させるために、前記ハウジングに対して前記シリンジ又はカートリッジを移動させるように動作可能であってもよい。この場合、前記駆動機構は、駆動ばねの影響により前進移動するように作動準備位置(cocked position)から解放可能なプランジャを含んでもよく、そして前記温度感受性装置は前記駆動機構の解放を阻止することができる。発射エレメントの移動を阻止することによって、或いは、プランジャを作動準備位置に保持するラッチ装置(latch arrangement)のラッチ解除(unlatching)を防止することによって、前記駆動機構の解放を阻止することができる。
【0008】
典型的には、既存の自動注射器は、2つ又は3つ以上の動作が器具を発射するために実施されることを必要とする。例えば器具が注射部位に押し付けられたときに安全スリーブが器具に対してシフトされている場合にのみ、又は安全装置(safety catch)が解放された後で初めて、発射トリガを動かすことができる。本発明の実施態様では、熱応答性部材は、発射トリガの移動を直接に阻止することができ、或いは発射トリガが作動状態になることを許容するために動かさなければならない安全装置などの移動を阻止することができる。
【0009】
前記温度感受性装置は熱応答性部材を含み、前記熱応答性部材は、規定温度を超えたときに、前記自動注射器の動作を阻止する位置を取ると有利である。この規定温度は上限温度であってもよく又は下限温度であってもよい。
【0010】
熱応答性部材の位置は、温度とともに連続的に変化してもよく、或いは、熱応答性部材は規定温度で不連続に動かされてもよい。
【0011】
2つの熱応答性部材が設けられ、一方の熱応答性部材は、第1規定温度を下回ると前記器具の動作を阻止するように形成されており、また他方の熱応答性部材は、第2規定温度を上回ると前記器具の動作を阻止するように形成されていると好都合である。
【0012】
前記熱応答性部材は、温度とともに形状を変化させる任意の好適な部材、例えばバイモルフ(bi−morph)若しくはバイメタルストリップ(bimetallic strip)、又は形状記憶合金エレメントであってもよい。
【0013】
別の実施態様の場合、前記温度感受性装置は、前記自動注射器の動作を阻止するように熱センサの出力に応答する電気駆動式阻止エレメントを含んでもよい。
【0014】
動作を能動的に阻止することに加えて、自動注射器は、規定温度条件下で視覚的表示を提供するように動作可能な、外から見ることのできる感熱性インジケータを含んでもよい。例えば、前記感熱性インジケータは、規定温度条件下で色を変えることができる。或いは、前記感熱性インジケータは、規定温度条件下で前記自動注射器の動作状態に関連する記号又は表示を明示するか又は隠すように適合されたサーモクロミック材料(thermochromic material)のコーティングを含んでもよい。
【0015】
別の態様において、本発明は、注射器具であって、規定温度条件下で、前記器具の動作状態を視覚的に表示するように動作可能な、外から見ることのできる感熱性インジケータを含む、注射器具を提供する。
【0016】
本発明を上述したが、本明細書中又は下記説明又は図面に開示された本発明の特徴を任意の組み合わせたものまで、発明の範囲が及ぶ。
【0017】
本発明は種々の形式で実施することができ、一例として、添付の図面を参照しながらその実施態様を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明による自動注射器の実施態様を示す水平方向断面図である。
図2図2は、自動注射器のバレルの一部を示す詳細図である。
図3図3は、感熱性エレメントによって阻止された、トリガボタンの前進移動を示す、後端部の詳細図である。
図4図4は、トリガボタンの前進移動を許容するようにシフトされた感熱性エレメントを示す図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図示された自動注射器は、螺合によって互いに結合されたほぼ円筒形の前方ハウジング部分及び後方ハウジング部分10’,10’’を含む二部分のハウジングを含んでいる。ピストン14とニードル16とを有するシリンジ12が、ニードルが前方ハウジング部分10’内部に位置する図1に示された後退位置と、ニードル16が前方ハウジングから突出する伸長位置との間で、ばね18の付勢に抗して移動させて前方ハウジング部分10’に取り付けられている。
【0020】
後方ハウジング部分10’’は細長いプランジャ20を含んでいる。プランジャは、シリンジ12のバレル内部に嵌め込まれた前端部と、分割矢尻構造(split arrowhead formation)22を有する後端部とを有している。分割矢尻構造は、後方ハウジング部分10’’の後端部に固定された肩部24の背後から係合している。プランジャ20は主駆動ばね26によって前方に向かって付勢されている。ハウジング10’,10’’の後端部には、発射ボタン28が襟状部30によって保持されている。発射ボタン28は内側シェル32を有している。内側シェルは、ボタン28が前方に向かって押されると、分割矢尻22を押し合わせるので、分割矢尻は肩部24から解放されて、プランジャが主駆動ばね26により前方移動することを可能にする。トリガボタン28、襟状部30,及び後方ハウジング部分10’’のうちの1つ又は2つ以上の相対回転を必要とする安全連動装置(インターロック)が設けられてもよい。
【0021】
器具を発射させると、プランジャ20が前方移動することによりピストン14と接触し、シリンジが最前方位置に達して、ニードル16が器具から前方に向かって伸びて注射部位に貫入する状態になるまで、まずはシリンジをハウジング内で前方移動させる。その後、ばねの拡張が続けられると、ピストン14がシリンジを通って動かされることにより、投薬量を送達する。
【0022】
自動注射器具は特に、温度が規定閾値未満である場合に器具の動作を阻止するための温度感受性装置を含むように構成されている。温度感受性装置は、直径方向に対向する2つのバイメタルストリップ34を含んでいる。これらのストリップの前端部は、後方ハウジング部分10’’の内壁に片持ち梁式に固着されているので、ストリップは温度の上昇に伴って内方に向かって撓むことができる。低温位置(図3)では、バイメタルストリップ34は、ハウジング部分10’,10’’の内壁に係止されていて、プランジャボタン38の前方フランジ36と整列しているので、ボタンが前方移動することを防止され、従って器具を発射させることができない。しかしながら、バイメタルストリップが被る温度が規定温度を上回る程度に上昇すると、バイメタルストリップ34は図4に示された位置へ内方に向かって撓む。この位置では、ストリップは前方フランジ36をもはや妨げることはなく、従ってトリガボタン38を押し下げることによって器具を発射させることができる。
【0023】
バイメタルストリップはこの機能を達成する1つの形式にすぎない。規定温度になると、又は規定温度を超えると同様に形状を変化させられる他の「スマートメタル」又は温度感受性形状記憶合金を代わりに使用してもよい。さらに、温度が特定閾値温度を超えると発射ボタン28の前方移動を阻止するように形状を変化させるが、しかし他の場合にはボタンの前方移動を許容する、別の一連の温度感受性ストリップを提供してもよい。これらのストリップを、下方リミットストリップ対(the pair of lower limit strip)に対して90度の間隔を置いて配置することができる。こうして、器具の操作はこれが規定温度範囲外にあるときには阻止される。
【0024】
再び図1を参照すると、前方ハウジング部分10’は感熱性インジケータ領域38を含む。感熱性インジケータ領域は、特定動作温度限界を超えるとその状態を変化させる。具体的な実施態様では、感熱性領域は、サーモクロミック材料のコーティングを含む。コーティングは例えば、当該閾値温度で色を変化させられるように選択してもよい。或いは、コーティングは、特定の温度変化時に透明から不透明へ、又はその逆に状態を変化させ、これにより、適切な記号40などを明示するか又は隠すようになっていてもよい。ここでもやはり、表示は温度が特定範囲外になったときに、透明から不透明へ、又はその逆に変化してもよい。好適なこのようなサーモクロミック材料の選択及び設計は当業者によく知られている。
【0025】
連続的に又は不連続に変化する温度で、位置及び/又は形状を変化させる感熱性エレメントが好ましいが、図示していないさらに別の実施態様では、ハウジング内に又はハウジング上に温度センサを設けてもよく、そしてセンサによって検出された温度に応じて器具の発射を許容又は防止するために、電動式ラッチなどを動かすことができる。
図1-2】
図3
図4