【文献】
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【文献】
GARG T,LONG TERM TOPICAL APPLICATION OF LACTIC ACID/LACTATE LOTION 以下備考,INDIAN JOURNAL OF DERMATOLOGY,VENEREOLOGY AND LEPROLOGY,IN,2002年 5月 1日,V68 N3,AS A PREVENTIVE TREATMENT FOR ACNE VULGARIS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微生物の過剰増殖が関与すると考えられる皮膚疾患であって、過角化皮膚の存在と関連する疾患の処置に使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の局所用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
乾皮症およびクラックドヒール(亀裂のあるかかと)の治療用として入手できる大部分の製品は一般的な保湿剤(化粧品)であり、乾燥に対する効果の程度はさまざまであって、それらが感染症のリスクを低下させる能力および皮膚を正常化する能力に関しては潜在的な欠点がある。さらに、これらの製品は皮膚の治癒を促進せず、その領域の血流の正常化には寄与しない。
【0018】
本発明は、3方向からのアプローチを用いる局所用製剤に関する:成分の組合わせにより(a)過角化症を標的とし、(2)次いで皮膚表面での微生物の潜在的な過剰増殖を標的とし、最後に(3)さらに他の問題を阻止するために皮膚バリヤーの正常化を促進する。
【0019】
過角化症の治療および予防は、剥離を容易にすることが知られている物質を含有させることによって剥離を助成するほか、皮膚の水和の増強を伴う。本発明の局所用製剤は、既知の角質溶解物質とそれらの水和特性で知られている成分との最適な混合物を含有する。角質溶解物質は、過角化性障害の治療に以前から用いられてきた。角質溶解という用語は角質溶解作用を示すが、それらの物質は必ずしもケラチンの溶解を誘発するわけではなく、細胞が互いに分離するのを助成する。ある角質溶解物質、たとえばアルファ−ヒドロキシ酸(AHA)は、特にpH3付近で、角層細胞間の凝集を低下させ、細胞間の結合を妨害し、それによって細胞代謝回転を高めると思われる。表皮の顕著な変化がみられ、これが角質化プロセスに対する速やかな影響を仲介している可能性がある。異常な角質層(SC)全体が急速に失われ、これはおそらく最下部の新たに形成されつつあるレベルのSCにおいてそれと顆粒層との接合部で角層細胞間の細胞凝集が低減するためであると思われる。したがってAHA、特にグリコール酸および乳酸は、魚鱗癬の局所処置に有益である。当技術分野で、魚鱗癬患者において10%尿素を5%乳酸と組み合わせたもので治療した後の角質層の層数の減少も見出されている。さらに、他の研究で、重篤な魚鱗癬を伴う7人の患者において10%尿素配合物で治療した後に柔軟な曲げやすい皮膚が得られた。
【0020】
当技術分野で、グリセリンは、角質デスモゾーム(接着斑)の消化を助成することによって乾燥皮膚を伴う対象の乾燥した鱗状皮膚を改善することが示唆された。他の薬剤はケラチンを開放およびアンフォールディングすることができる(たとえば、尿素)。本発明において、3つのタイプはすべて高濃度で用いられ、AHAの濃度は少なくとも15%、グリセリンの濃度は少なくとも5%、尿素の濃度は少なくとも15%である。
【0021】
サリチル酸も、角質溶解を促進しかつ配合物の抗微生物特性をさらに強化するために、低濃度、たとえば0.1〜4%で含有させることができる。
【0022】
本発明は、少なくとも5%の量のパンテノールも用いる。パンテノールはアルコール類であり、組織内でD−パントテン酸(ビタミンB5)、すなわち人体における補酵素Aの構成要素に変換される。
【0023】
好ましい態様において、本発明組成物は、皮膚バリヤーおよび皮膚血流の正常化を助成するために、ビタミンA(レチノール)、またはその誘導体、たとえばパルミチン酸レチニル、レチノイン酸、レチノイン酸レチニルを含有することもできる。ビタミンAは適正な上皮機能に必須の脂溶性ビタミンであり、それを含有させると皮膚の正常化が促進される。レチノールまたはその誘導体が存在する場合、それは好ましくは組成物の0.01〜2重量%の量で含有される。
【0024】
本発明配合物は、血流刺激剤、たとえばニコチンアミド(ナイアシンアミドとしても知られる)、ニコチン酸のエステル(たとえば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチルおよびベンジルエステル)、ならびにバリヤーを再構築して皮膚の正常化を助成するためのL−アルギニンを含有することもできる。
【0025】
AHAの吸収を助成して製品の有効性を高めるために、配合物のpHは低く維持されるであろう(一般に、約4のpH)。
【0026】
少量の通常の保存剤、たとえば参考文献1に述べられたもの(たとえば、1%のフェノキシエタノール)も、脂肪アルコール、特に一価または二価脂肪アルコール(たとえば、1%のカプリリルグリコール)、好ましくはC8〜C12一価または二価脂肪アルコールと共に、抗微生物特性をもつ追加の保湿剤として配合物中に使用できる。そのような保存剤と脂肪アルコールの組合わせは抗微生物効果に関して相乗的であると考えられる。
【0027】
セチルアルコール、セテアリルアルコールおよびベヘニルアルコールは、増粘剤として一般に用いられる脂肪アルコールの例である。これらの脂肪アルコールのうち、ベヘニルアルコールが本発明配合物における増粘剤として好ましい。セチルアルコールは皮膚感作剤であることも知られており、一方、ベヘニルアルコールについてはそのような報告はない。ベヘニルアルコールはウイルス(単純ヘルペス)に対して有効であることも報告されている。したがって、ベヘニルアルコールは損傷を受けた皮膚におけるウイルス感染の可能性を低下させることができ、この理由からも本発明組成物に含有させることが好ましい。
【0028】
メントールは細菌による有効成分取込みを増大させ、これによって抗微生物効果をさらに改善すると考えられるので、これも本発明配合物に含有させることができる。
【0029】
予想外に、全般的に高濃度(少なくとも40%)の物質の本発明による組合わせ(保湿剤、角質溶解剤および正常化剤)によって、配合物は重要な抗微生物効果に関して著しく有効になる。表3の試験結果(それについては後記にさらに詳細に記載する)から分かるように、試験した市販配合物は一般に本発明配合物よりはるかに低い抗微生物効果を示した。いずれか特定の理論に拘束されたくはないが、この所見は、本発明によるAHA類と高濃度の保湿剤の組合わせが卓越した抗微生物活性をもたらすことに基づくと考えられる。
【0030】
限定ではない好ましい態様において、本発明組成物はさらに最高2重量%の一般的な保存剤に分類されるもの、たとえば参考文献1のものを含む。
【0031】
角質溶解剤および吸湿剤
AHAは、炭素鎖の2位またはアルファ(α)位にヒドロキシ基がある有機カルボン酸である。AHAグループの重要なメンバーは食品中にみられ、他のものは天然の生物由来である。乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸およびクエン酸は、AHAグループに属する物質の例である。ラクテートも角質層の天然の吸湿性物質の構成要素であり、この物質の約12%を構成する
2。モルモットの足裏角質(footpad corneum)において、乳酸および乳酸ナトリウムは両方とも水分保持容量および皮膚伸展性を高めることが示された
3。pHが上昇すると、乳酸のイオン化のため乳酸の吸着が低下する
3。
【0032】
サリチル酸はベータ−ヒドロキシ酸であり、詰まった孔を開くためにアクネ製剤中にしばしば用いられ、これによって皮脂の排出が助成され、アクネのリスクが低下する。
【0033】
尿素はヒトの皮膚にみられる天然の保湿剤であり、バリヤー改善物質であることも見出された。尿素による最も良く知られている皮膚作用は、一般に認められているそれのタンパク質アンフォールディング特性から生じ、したがってタンパク質を可溶化し、および/またはそれらを変性させる
4−6。飽和尿素溶液中に保持された上表皮片は力学的変化を生じ、それらの元の四次構造を失う
4。尿素は形成異常の爪を取り除くためにも使用でき、40%の尿素を含む製剤は爪の除去において22%を含む配合物よりわずかに有効性が高いけれども刺激性もより大きいことが示された。尿素は、爪真菌症(onychomytosis)の処置に際して薬物の生物学的利用能を高めるための角質柔軟剤としても用いられる(40%で)。
【0034】
尿素は一般に、魚鱗癬および過角化皮膚障害の処置のために10%クリームとして用いられ、より低い濃度で乾燥皮膚の処置に用いられている。尿素は分解されてアンモニアになり、したがってしばしば乳酸と結合して配合物のpHを制御する;たとえば、GB 1,232,569Aに開示。爪真菌症の処置に際して、尿素は薬物の生物学的利用能を高めるための角質柔軟剤として医薬配合物に40%で添加された
7。
【0035】
魚鱗癬および他の過角化状態の療法には、高濃度(約10%)の尿素がクリーム中に用いられる。重篤な魚鱗癬を伴う7人の患者において、顕著な角質溶解効果が認められ、皮膚は柔軟で曲げやすくなった
8。最近の研究で、ある尿素配合物が皮膚バリヤー機能を改善し、湿疹を予防できることも示された
9−10。
【0036】
パンテノールはビタミンB5の前駆物質であり、保湿剤であることも見出された。局所適用したパンテノールは皮膚および毛を透過してパントテン酸を形成すると報告されている
11−12。パンテノールは局所処置において鼻炎、結膜炎、日焼け、および創傷の治癒のために見出された(潰瘍、火傷、床ずれ、および擦過傷);通常は2%が用いられる
11,13。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)誘発性の皮膚刺激をパンテノールで処置すると、皮膚バリヤーの修復および角質層の水和が促進される
14。さらに、パンテノール処置によって皮膚の発赤(炎症)がより速やかに軽減した
14。
【0037】
尿素およびAHAを含む関連配合物についての過角化状態に対する臨床試験
保湿剤および角質溶解剤の有効性を乾燥皮膚においてモニターするための多数の臨床試験がある。たとえば、2つの対照付き二重盲検試験において、2種類の乳酸アンモニウム乳液(12%および5%の乳酸に相当する)の有効性を、ワセリン系の治療用クリーム
15の有効性および対照ローション
16の有効性と比較した。これらの製品を、乾皮症を伴う被験者129人の左側または右側にランダムに適用した。乾皮症の重症度を、スケーリング、荒れ(roughness)、紅斑(erythema)および裂溝(fissure)の程度として臨床評価した。約1週間後、ラクテート乳液で処置した領域は対照製品
16で処置した領域より統計的に有意に優れていた。回復期間(2〜4週間)全体を通して、平均重症度スコアも有意に低下した。
【0038】
両足の外側面に乾皮症を伴う41人の患者についての他の二重盲検試験において、12%乳酸アンモニウムローションを、5%の乳酸および2.5%のピロリドンカルボン酸ナトリウムを含有するローションと比較した
17。この試験は、乾燥皮膚の重症度軽減において12%乳酸アンモニウムが参照ローションより有効であることを示した。7つの微小な苦情が患者により報告された。
【0039】
しかし、乾皮症を伴う11人の乾癬患者についての他の二重盲検試験において、7.5%乳酸ローションと12%乳酸ローションの間には効果に差がみられなかった
18。3週間の治療コース中の0、14および21日目、ならびに35日目(処置後2週目)に臨床格付を行なった。両製剤ともわずかな灼熱感/刺痛感(stinging sensation)を生じたが、非病変部位では生じなかった。5%乳酸製剤は治療に際して12%ラクテートローションと全く同じ程度に有効であることが証明されたが、後者の効果の方が有意に長く持続した
19。
【0040】
乾燥皮膚に対する効果を評価するために非侵襲法が用いられている
20−21。12%乳酸アンモニウムローションによる1日2回、1か月間の処置によって、24人の女性において足の皮膚の乾燥についての重症度スコアが低下した
20−21。さらに、水和値が上昇し(コルネオメーターで測定)、他の幾つかのパラメーターの改善も認められた。粘着テープで剥離した鱗屑(squame)のイメージ分析も、AHAを含有する配合物と含有しない配合物を識別するために効果的に利用できた
20−21。
【0041】
40%尿素クリームによる足底表面の乾皮症の2週間の処置は、皮膚の荒れ、裂溝および乾燥において、12%乳酸アンモニウムローションによるものより顕著な改善をもたらした
22。尿素処置によって皮膚バリヤー機能に対する影響は認められなかった。両療法ともその後2週間、持続的な有益性を示した。
【0042】
適量の前記添加剤(すなわち、AHA、尿素、パンテノールおよびグリセリン)を含有することにより、本発明組成物は上記に述べた臨床試験において有益な特性を示すと考えられる。
【0043】
上記の試験はいずれも、配合物の抗微生物効果、および皮膚血流に対する潜在的影響を伴う皮膚正常化に取り組むものではない。
【0044】
AHA
本発明者らは、乳酸およびグリコール酸が、単独で用いた場合および組み合わせて用いた場合の両方において特に抗微生物性配合物をもたらすことを見出した。したがって本発明配合物は、乳酸、グリコール酸、またはその組合わせを含む。本発明によれば、本発明配合物に他のAHA類をさらに含有させることができる。そのような他のAHA類は、好ましくは酒石酸、リンゴ酸、メチル乳酸、1−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプリル酸、およびクエン酸から選択される。その塩類、たとえばアルカリ金属塩、特にナトリウム塩およびカリウム塩、アンモニウム塩、ならびにトリ−エタノールアミン塩も、pHを部分的に中和するために使用できる。
【0045】
本発明配合物は、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも13重量%、より好ましくは少なくとも14.5重量%の量の、特に好ましくは少なくとも15重量%の量の乳酸および/またはグリコール酸を含む。
【0046】
1種類以上のAHAが、酸として計算して最大で好ましくは40重量%、より好ましくは最大で約30重量%、最も好ましくは最大で約22.5重量%の量で含有される。
【0047】
局所適用に最も一般的に用いられるAHA類は、一般にグリコール酸、乳酸、リンゴ酸およびクエン酸である。グリコール酸は最も小さい分子サイズをもち、したがって生物学的利用能が最も大きく、乳酸がこれに続く。これに対し、酒石酸はより大きい分子であり、より低い生物学的利用能をもち、ビヒクルに溶解しにくい可能性もある。したがって、組成物中に用いる場合、たとえば酒石酸は一般に、より低い量で含有されるであろう。
【0048】
AHA類は、その組成物にAHA類が溶解するように選択されるであろう。AHA類の塩類、たとえばナトリウム塩およびカリウム塩も使用できる。個々のAHAの塩は、得られる組成物にその塩が可溶性でありかつ皮膚用として許容できるpH値を得ることができる限り、それの酸形のAHAと互換性をもって使用できる。
【0049】
尿素
本発明によれば、尿素は最大で好ましくは40重量%、より好ましくは最大で約25重量%、最も好ましくは最大で約22.5重量%の量で含有される。
【0050】
パンテノール
本発明によれば、パンテノールは最大で20重量%、より好ましくは最大で約10重量%、最も好ましくは最大で約7.5重量%の量で含有される。
【0051】
グリセロール
本発明によれば、グリセロールは最大で20重量%、より好ましくは最大で約10重量%、最も好ましくは最大で約7.5重量%の量で含有される。
【0052】
上記4種類の有効薬剤の総量は、組成物の40重量%から好ましくは80重量%まで、より好ましくは40重量%から60重量%までの範囲であってよい。
【0053】
したがって、本発明の局所用組成物において、1種類以上のアルファ−ヒドロキシ酸
の量は最大で40重量%;尿素の量は最大で40重量%;グリセロールの量は最大で20重量%;パンテノールの量は最大で20重量%であってよく;上記成分の総量は最大で組成物の80重量%になる。
【0054】
たとえば手の湿疹、アトピー性湿疹、魚鱗癬、および乾癬における乾燥した過角化皮膚も標的疾患である。さらに、アクネ、および疾患パターンに微生物の過剰増殖が関与すると考えられる他の疾患(たとえば、皮膚粘膜症(skin mucosis))を伴う患者は、特に過角化皮膚の存在に微生物の過剰増殖が関与している場合、本発明組成物による処置が有益であろう。この処置が有益である他のタイプの皮膚障害には、皮膚老化の徴候、たとえば色素沈着過剰および荒れた皮膚が含まれる。
【0055】
刺痛感受性である身体領域(たとえば、アクネの症例における顔面領域)の処置を意図した本発明配合物は、前記に明記した量の有効成分を含有するであろうが、40重量%より多い総量で含有させる場合、刺痛作用の低い薬剤であるグリセリンおよびパンテノールをより多量に用いるために、より少量のAHAおよび尿素が含有されるように、可能な限りそれらの有効成分のバランスをとるべきである。皮膚老化の徴候を標的とする場合、および処置期間がアクネの処置と比較して短い場合には、より高いAHA濃度が採用されるであろう。
【0056】
pH
組成物のpH値は、より多量またはより少量のAHAを用いて調整でき、また適切な塩基、たとえばNaOHおよびアンモニアを含有させることによっても調整できる。
【0057】
ビヒクル
一般に好ましいビヒクルは、エマルジョンの形をとる。これは特に足の処置に当てはまる。エマルジョンの場合、有効成分の送達システムを構成する必須要素は、基礎エマルジョンを形成するための水相および油相であり、植物油、鉱油および他の一般的な油性化粧品基剤が油相として適切である。エマルジョンの場合の組成物には、乳化作用性界面活性剤、たとえばPEG−20メチルグルコースセスキステアレート、グリセリルステアレート、PEG−100ステアレート、ceteareth−21、ceteareth−2、および場合によっては一般的な乳化安定剤、たとえばメチルグルコースセスキステアレート、ソルビタンステアレート、セテアリルアルコール、およびベヘニルアルコールも用いられる。
【0058】
追加要素として、一般的な化粧品添加剤を組成物に添加してもよい。主な添加剤には、香料、抗酸化剤、保存剤、色素または着色剤が含まれる。これらは一般に、希望する効果をもたらすのに必要な量、一般に組成物の0.01〜5重量%の量で存在する。
【0059】
他の可能な送達形態は、有効成分の水性ゲルおよびより硬いスティックである。局所用配合物に一般に用いられる増粘剤には、粘稠な液体、たとえばポリエチレングリコール、合成ポリマー、たとえばカルボマー、植物ゴム(たとえば、キサンタンガム)およびセルロース誘導体(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれる。増粘剤の濃度および組合わせが配合物の粘度を決定し、その際、適切な組合わせによって送達形態を硬くすることもできる;すなわち、スティック製品。スティックは、小さな身体領域、たとえばかかとその他の局在化した過角化/色素沈着領域に用いるのに、より好都合な可能性がある。本発明においては、低いpHで使用できる増粘剤が好ましい(すなわち、カルボマー類ではない)。アクネ患者において顔の皮膚を処置する場合、透明な無脂肪ゲルが好ましい。別の配合物を用いてワイプに含浸させ、次いでそれを用いて体表の処置を助成することもできる。
【0060】
本発明を下記の実施例により以下にさらに開示する。
【実施例】
【0061】
以下の本発明組成物の試験のために、表1に述べる組成をもつ単純なビヒクルD4を調製した。
【0062】
表1.ビヒクルD4、ならびに2種類の本発明組成物C3(実施例1)およびH81(実施例2)それぞれの、全配合物に対する組成(重量%)
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1−C3
ビヒクルD4を用いて、一般的な保存剤または抗微生物剤がいずれも存在しない、表1に述べる組成をもつC3と表示する本発明配合物を調製した。
【0065】
実施例2−H81
より多量の本発明の組合わせを用いた本発明配合物も調製した;その配合物においては、本発明の有効成分の量を実施例1の組成物と比較して50%増加させた。したがって、本発明の有効成分の総含量は60重量%であった。この配合物をH81と表示し、それの組成を表1に述べる。
【0066】
実施例3
本発明組成物C3およびH81それぞれの抗微生物能を、以下の表2に明記する4種類の異なる市販製品のものと比較した。
【0067】
表2.特に足の過角化症の処置を意図した市販の被験組成物
【0068】
【表2】
【0069】
比較の目的で、本発明配合物A1、C3およびH81に用いたビヒクルD4を、同様に抗微生物活性について試験した。
【0070】
被験接種物を調製し、下記のCFU(“コロニー形成単位”または細胞数)/mlに達するように試料に添加した:
・細菌(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)):10
5〜10
6CFU/ml
・酵母(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)):10
5〜10
6CFU/ml
・真菌(アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)):10
5〜10
6CFU/ml
次いで試料をインキュベーターに合計24時間入れておいた。それぞれの接種物を添加した後に種々の時間間隔で、すなわち1、3、6および24時間目に、微生物のCFU量を寒天平板培養により測定した。平板を適宜な条件でインキュベートし、カウント数を読み取った。0時点での初期の読みは接種物を添加した後の厳密な測定時点に対してきわめて敏感であり、その結果、一貫して再現するのはきわめて難しい。したがって、下記の表3に示す結果から初期の読みを除いた。
【0071】
下記の表3に示す結果から分かるように、予想どおりビヒクル(D4)自体は抗微生物効果をもたなかった。
【0072】
【表3】
【0073】
試験した市販製品のうちでは、LacUrexおよびRaxalが最も有効なものであった。しかし、Raxalは本発明による有効成分の組合わせを示さず、したがってそれらの有効成分から得られる前記に述べた有益な効果をもたないと予想される。Raxalの場合にみられた抗微生物効果は、その組成物に含有される一般的な保存剤によるものと思われる。
【0074】
実施例1の本発明組成物C3は、きわめて速やかな死滅速度を示した。実施例2の組成物、すなわちH81は、さらに高い死滅速度を示した。これから分かるように、2種類の本発明組成物のみが完全な被験微生物死滅をわずか1時間以内に達成した。
【0075】
実施例4
この実施例では、LacUrexを実施例1の本発明組成物、すなわちC3と対比して試験した。これら2種類の被験組成物を異なる3人の足全体に、両側ランダム方式で適用した。
【0076】
種々の時間間隔後に、微生物量を求めるために足指間の領域をサンプリングした。皮膚のサンプリング領域は、採取した各試料につき約1cm
2であった。試料を無菌コットンスワブで採取し、次いで好気性細菌(これらの試料中には真菌および糸状菌は検出されなかった)について実験室で検査するためにそれらを無菌液体に入れた。
【0077】
各人の各足の親指と人差指の間の皮膚領域から、0時点、すなわち2種類の異なる配合物を適用する直前に、初期試料を採取した。次いで配合物を適用し、空気中で30分間、すなわち足に靴下を着用せずに、足を自然乾燥させた。
【0078】
30分後、各人の各足の人差指と中指の間の皮膚領域から試料を採取した。その後、被験者は足に清潔な靴下を着用し、靴をはいた。2時間後に被験者No.2および3の各足の次の皮膚領域、中指と第4指の間から試料を採取し、3時間後に被験者No.2および3の第4指と小指の間の皮膚領域から試料を採取し、最後に、4.5時間後に被験者No.1の各足の第4指と小指の間の皮膚領域から試料を採取した。
【0079】
これらの結果を下記の表4にまとめる。
【0080】
【表4】
【0081】
上記の表4から分かるように、本発明配合物の場合には足における細菌のコロニー再形成が顕著に低減し、試験期間(4.5時間)全体を通してゼロ付近のレベルに維持され、一方、LacUrex適用後は約2時間(おそらくそれより早い)の時点で既に細菌数は初期値に戻った。
【0082】
したがって、本発明配合物は長期間の抗微生物効果を示す。この効果は本発明による有効物質の組合わせによるものと考えられる;それは一般的な配合物に用いられる保存剤および微生物剤より揮発性が低い可能性があり、そのため、より持続的な効果をもたらすのであろう。
【0083】
この長期抗微生物効果によって、本発明配合物は開放潰瘍の治癒に適したものとなり、所期の抗微生物効果を達成するために要求される配合物適用頻度が実質的に低減し、これによって本発明配合物は、過敏性皮膚を伴う者、すなわち他の場合には配合物を皮膚に局所適用することによる皮膚治療に対して過敏である者が使用するのにいっそう適したものになるであろう。
【0084】
本発明は前記の好ましい態様に限定されない。多様な変更、改変および均等物を使用できる。したがって、前記の態様は特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0085】
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