特許第6062959号(P6062959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062959印刷版、および無溶剤エポキシ樹脂を有する硬化性組成物を用いた印刷版の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062959
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】印刷版、および無溶剤エポキシ樹脂を有する硬化性組成物を用いた印刷版の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/12 20060101AFI20170106BHJP
   B41N 1/22 20060101ALI20170106BHJP
   B41C 1/05 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B41N1/12
   B41N1/22
   B41C1/05
【請求項の数】3
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2014-548926(P2014-548926)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-506289(P2015-506289A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】US2012071104
(87)【国際公開番号】WO2013096708
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】61/578,322
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー.ワグマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン エス.エム.ルー
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−185296(JP,A)
【文献】 特表平07−504365(JP,A)
【文献】 特開2010−020033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
B41C 1/05
B41N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版の製造方法であって:
a)無溶剤硬化性組成物を塗布して支持基材上に層を形成するステップであって、前記無溶剤硬化性組成物が:
i)エポキシノボラック樹脂と;
ii)ビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と;
iii)一官能性反応性希釈剤と;
iv)多官能性反応性希釈剤と;
v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤と
を含み;
i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で1:3〜3:1となるステップと;
b)前記層を室温から約250℃の範囲内の1つまたは複数の温度で硬化させるステップと;
c)ステップb)で得た層中に少なくとも1つのセルを彫刻するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
印刷版を用いたグラビア印刷方法であって:
a)請求項1に記載の方法により硬化層を有する印刷版を製造するステップと;
b)インクを前記少なくとも1つのセルに塗布するステップと;
c)インクを前記セルから印刷可能な基材に転写するステップとを含み、
前記硬化層が、層の重量を基準として≦12%膨潤する、方法。
【請求項3】
支持基材に隣接する連続印刷面を含む印刷版であって、前記連続印刷面が:
i)60℃未満の軟化点を有するエポキシノボラック樹脂と、
ii)60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と、
iii)一官能性反応性希釈剤と、
iv)多官能性反応性希釈剤と、
v)40g/当量未満のアミン水素当量を有する化学量論量の多官能性アミン硬化剤と
を含む無溶剤硬化性組成物から調製された硬化エポキシ組成物であり;
i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で1:3〜3:1となり;iii)対iv)の比が重量基準で4:1〜1:4となる、印刷版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版、および印刷版の製造方法、特に、特定の無溶剤エポキシ樹脂で置き換えられた1つ以上の従来の金属層を有するグラビア印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法であって、画像領域は、くぼんでおり、インクまたは印刷材料が収容される小さなくぼんだカップまたはウェルからなり非画像領域はフォームの表面である、印刷方法である。たとえば、グラビアシリンダーは、ベースローラー上に銅層を電気めっきし、次に、小さなくぼんだセルまたはウェルで構成される画像をダイヤモンドスタイラスまたはレーザーエッチング機によってデジタル方式で彫刻することによって本質的に作製される。彫刻されたセルを有するシリンダーは、次に、印刷プロセス中の耐久性を付与するためにクロムの非常に薄い層がオーバープレートされる。したがって、グラビア印刷版は費用かかり、製造に多くの時間および材料が必要となる。
【0003】
電気めっきされる銅層およびクロム層の代わりにポリマー系組成物を使用することが、たとえば、Bresslerら(米国特許第5,694,852号明細書)、CampbellおよびBelser(米国特許出願公開第2004/0221756号明細書)、ならびにKellnerおよびSahl(英国特許第2,071,574号明細書)によって探求されている。しかし、ポリマー系組成物を有するグラビア印刷版が成功するためにはいくつかの方法および特性の要件の組み合わせを満たす必要がある。経済的な方法のためには、ポリマー系コーティングは、シリンダーへの塗布が容易であり(「塗工適性」)、適度な速さで硬化することで(「硬化性」)、最小限の研削および研磨の必要性で、グラビア彫刻および印刷に必要な厳格な許容誤差で高品質の表面層が形成できることが必要である。表面層は、彫刻するときに、顕著なチッピングおよび破壊が起こることなく、十分に画定された印刷セル構造が形成されるレベルの硬度を有する必要がある(「彫刻性」)。表面層は、グラビア印刷インク中および洗浄液中に使用される溶剤に対して優れた抵抗性を有する必要もある(「耐久性−耐溶剤性」)。また表面層は、印刷プロセス中に遭遇する機械的摩耗、たとえば、ドクターブレードのかき取りによる摩耗、インク中に存在しうる研磨粒子による摩耗、および画像が印刷される表面による摩耗に耐える必要がある(「耐久性-機械的摩耗」)。さらに、従来の金属で被覆されたグラビア印刷版の代わりにポリマー系組成物を有するグラビア印刷版を使用するために、ポリマー系印刷版は、比較的長期の印刷運転が可能となるべきであり、最低200,000の通し数で均一な印刷画像が得られるべきである。
【0004】
環境に優しくない揮発性有機化合物の発生を最小限、または完全に回避することも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結果として、経済的で環境に優しい方法で、塗工適性、硬化性、彫刻性、耐溶剤性、耐機械的摩耗性、および印刷品質の必要な組み合わせを示す表面層を有する印刷版を製造するために使用できる特殊な組成物を特定する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、i)エポキシノボラック樹脂と、ii)ビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と、iii)一官能性反応性希釈剤と、iv)多官能性反応性希釈剤と、v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤とを含む無溶剤組成物を提供するステップを含む印刷版の製造方法であって、i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で約1:3〜約3:1となる、方法を提供する。本発明の方法は、a)組成物を支持基材上に塗布し、それによって層を形成するステップと;b)層を室温から約250℃の範囲内の1つ以上の温度で硬化させるステップと;c)前のステップで得た層中に少なくとも1つのセルを彫刻するステップとを含む。
【0007】
本発明の別の一態様によると、印刷版を用いたグラビア印刷方法であって、a)前述の方法により印刷版を製造するステップと;b)インクを少なくとも1つのセルに塗布するステップと;c)インクをセルから印刷可能な基材に転写するステップとを含み、硬化した層は、層の重量を基準として≦12%で膨潤する、方法が提供される。
【0008】
本発明の別の一態様によると、支持基材に隣接する連続印刷面を含む印刷版であって、連続印刷面は、i)約60℃未満の軟化点を有するエポキシノボラック樹脂と、ii)約60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と、iii)一官能性反応性希釈剤と、iv)多官能性反応性希釈剤と、v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤とを含む無溶剤硬化性組成物から形成された硬化エポキシ組成物であり、i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で約1:3〜約3:1となり;iii)対iv)の比が重量基準で約4:1〜約1:4となる、印刷版が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示では、多数の用語が使用されることになる。
【0010】
用語「エポキシ樹脂」は、エポキシ基を有する未架橋のモノマーまたはオリゴマーを意味する。
【0011】
用語「エポキシノボラック樹脂」は、以下の構造
【0012】
【化1】
【0013】
を有するエピクロロヒドリンとノボラックとの反応によって得られるエポキシ樹脂の群の任意のものを意味する。用語「ノボラック」は、反応中にフェノールが過剰で生成された任意のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、および反応中にクレゾール過剰で生成された任意のクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂を意味する。
【0014】
用語「ビスフェノール−Aエポキシ樹脂」は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応によって調製される、ビスフェノールA
【0015】
【化2】
【0016】
のグリシジルエーテル誘導体の群の任意のものを意味する。
【0017】
用語「ビスフェノール−Fエポキシ樹脂」は、ビスフェノールF、すなわち、ビス(ヒドロキシフェニル)メタンのp,p’、o,p’、およびo,o’異性体
【0018】
【化3】
【0019】
の混合物とエピクロロヒドリンとの反応によって調製される、ビスフェノールFのグリシジルエーテル誘導体の群の任意のものを意味する。
【0020】
用語「エポキシ反応性希釈剤」は、硬化させるエポキシ組成物の粘度、ならびにぬれ性および含浸などの他の性質を変化させるために使用される低粘度エポキシを意味する。本明細書において、簡潔にするために「エポキシ反応性希釈剤」の代わりに、用語「希釈剤」または「反応性希釈剤」を使用する場合がある。
【0021】
用語「エポキシ/希釈剤成分」は、硬化性組成物中のエポキシ樹脂と反応性希釈剤との混合物を意味する。
【0022】
用語「溶剤」は、組成物の粘度を低下させ、組成物が処理される条件(温度など)において除去されるような揮発性を有する組成物の非反応性成分を意味する。
【0023】
用語「無溶剤」は、前述の定義の溶剤を含有しない、または溶剤を実質的に含有しない組成物を意味する。溶剤を実質的に含有しない組成物は、ある実施形態においては微量または≦1重量%の溶剤を含有することができ、別の実施形態においては0.5%未満の溶剤を含有することができる。
【0024】
用語「グラビア印刷」は、印刷版の表面に1つ以上のくぼみを彫刻またはエッチングすることによって画像が形成され、彫刻またはエッチングされた領域にはインクが満たされ、次に印刷版によって、インク画像が紙または別の材料などの基材に転写されるプロセスを意味する。彫刻またはエッチングされた個別のくぼみは「セル」と呼ばれる。
【0025】
用語「凸版印刷」は、印刷版の表面に1つ以上の窪みを彫刻またはエッチングすることによってレリーフ面が形成され、画像領域は隆起し、非画像領域は窪みであり、インクは隆起した領域に塗布され、次に印刷版によって、インク画像が紙または別の材料などの基材に転写されるプロセスを意味する。彫刻またはエッチングされた個別のくぼみは「セル」と呼ばれる。活版印刷は、凸版印刷の種類の1つである。
【0026】
用語「印刷版」は、印刷のために表面上にインクを塗布するために使用される物体(たとえば、シリンダー、ブロック、または板の形態)を意味する。
【0027】
用語「室温」または、同等の「周囲温度」は、当業者に周知の通常の意味を有し、約16℃(60°F)〜約32℃(90°F)の範囲内の温度を含むことができる。
【0028】
用語「第1級アミン」は、−NH官能基を有する有機化合物の種類の任意のものを意味する。
【0029】
用語「第2級アミン」は、−NH−官能基を有する有機化合物の種類の任意のものを意味する。
【0030】
用語「溶剤インク」は、水性インクとは対照的に、有機溶剤を含み、典型的にはその有機溶剤揮発性であるインクを意味する。
【0031】
用語「硬化」は、化学添加剤、熱、紫外線、または電子ビームによってポリマー鎖を架橋させることによるポリマー材料または樹脂の固化を意味する。固化は、主としてポリマー鎖の架橋によって起こる。分岐および直鎖延長などのポリマー材料または樹脂の他の相互作用も、ポリマー鎖の架橋よりは比較的少ない程度で起こりうる。
【0032】
用語「促進剤」は、硬化剤と併用される触媒を意味する。
【0033】
用語「アミン水素当量」(AHEW)は、アミン基含有分子の分子量を分子中のアミン水素の数で割ったものを意味する。たとえば、トリエチレンテトラアミン(「TETA」)は、分子量が146であり6個のアミン水素を有するので、そのAHEWは146/6=24g/equivである。化合物がアミンの付加物、たとえばエポキシである場合、その有効AHEWはアミン成分が基準となる。
【0034】
用語「エポキシド当量」(EEW)は、1グラム当量のエポキシドを含有するグラムの単位での重量を意味する。
【0035】
用語「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法が約500nm未満である粒子を意味する。
【0036】
本明細書において他の記載のない限り、用語「分子量」は重量平均分子量である。
【0037】
用語「軟化点」は、ASTM D−3104に準拠して測定されるMettler軟化点を意味する。通常これは、温度範囲として報告される。本明細書において使用される場合、「X未満の軟化点を有する」という表現は、ASTM D−3104によって測定された温度範囲の上限が約X未満であることを意味する。指定の温度Yで液体である材料は、Y未満の軟化点を有する。
【0038】
本発明は、硬化性組成物から印刷版を製造する方法、特に硬化性組成物からグラビア印刷版を製造する方法に関する。この硬化性組成物は、i)エポキシノボラック樹脂と、ii)ビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と、iii)一官能性反応性希釈剤と、iv)多官能性反応性希釈剤と、v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤とを含み、i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で約1:3〜約3:1となる。硬化性組成物のほとんどの実施形態においては、i)およびii)を合わせたものは、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの約70〜約95重量%となり、iii)対iv)の比は重量基準で約4:1〜約1:4となる。請求される方法によって、グラビア印刷用の1つ以上の金属層を有する従来の印刷版よりも、はるかに短い時間で、少ないコストで、より環境に優しい方法での印刷版の製造が容易となる。硬化性組成物が無溶剤であることによって、支持基材上に層を形成するための塗布中、および層の熱硬化中に加熱されるときの揮発性有機化合物(VOC)の放出が解消または軽減される。
【0039】
驚くべきことで予期せぬことに、従来のグラビア印刷版と同等の上首尾の性能のためのいくつかの特性要件に適合可能な印刷版が、請求される方法によって特殊な硬化性組成物から製造される。驚くべきことに、容易に組成物を塗布して、比較的均一で最小限の研削または研磨しか必要としない層を支持基材上に形成することができるので、この特殊な硬化性組成物は、溶媒不要で良好な塗工適性を有する。層を形成するための無溶剤硬化性組成物の塗布は、より堅牢な方法であるため:塗布および硬化温度、ならびにコーティング方法における許容範囲をより大きくすることができ;VOCの放出によって生じうる層の欠陥が減少または解消され;溶剤のつやむらが回避される。無溶剤組成物は、溶剤を含有しないか、または溶剤を実質的に含有しない。無溶剤組成物としては、溶剤を含有しない組成物、およびある実施形態においては微量または約1重量%未満の溶剤(成分の全重量を基準とする)を含有し、別の実施形態においては約0.5%未満の溶剤を含有する組成物が挙げられる。無溶剤組成物はある少量、すなわち、1重量%以下で含有することができるが、これによって組成物の使用に影響が生じたり、記載の利点が損なわれたりすることはないと考えられる。溶剤は化学物質の製造において使用されることが多いので、組成物は、組成物の1つ以上の成分に起因する残留溶剤を含有しうる。また、本発明の組成物中への1つ以上の成分の混入を促進するために、1種類以上の溶剤を使用することができるが、本発明の組成物を支持基材に塗布する前に溶剤を除去しても、一部の溶剤は残留しうる。1%以下の溶剤が存在する場合でも、溶剤が積極的に組成物に加えられたのではなく、成分の混入に使用された溶媒は使用前に組成物から接触的に除去されるため、本発明の組成物は無溶剤であると見なされる。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、6時間未満、ほとんどの実施形態においては4時間未満で適度な速さで組成物を硬化させることができるので、良好な硬化性を有する。良好な塗工適性および硬化性のため、最小限の後処理で、グラビア彫刻および印刷に必要となる厳格な許容範囲内で、高品質のエポキシ樹脂のコーティングを得ることができる。さらに、高品質のコーティングおよび硬化を迅速に実現できるので、請求される方法は時間およびコストに関して経済的であるので、グラビア印刷シリンダーのための従来の金属めっきプロセスと競合することができる。
【0041】
本発明の特殊な硬化性組成物の層が硬化した後、層は、彫刻性と耐機械的摩耗性との間での所望のバランスが得られる。彫刻されるときに十分に画定された印刷セル構造が得られるが、ドクターブレードおよび印刷される基材、ならびにインク中に存在しうる研磨粒子との接触による摩耗に耐えるレベルの硬度を、硬化層は示す。特殊な組成物の硬化層は、少なくとも最大200ライン/インチの解像度のセル密度を有し、隣接するセル間の壁の破壊が最小限となる、または全く起こらないように彫刻することができる。それにもかかわらず、特殊な組成物の硬化層は、比較的長期の印刷運転、すなわち100,000を超える通し数で印刷可能であり、さらに好ましくは、セル領域の摩耗減少が10%以下となり、ほとんどの実施形態では5%未満の摩耗となりうる。さらに、特殊な組成物の硬化層は、印刷インクおよび洗浄液に使用される溶剤に対して優れた抵抗性を示すため、比較的長期の印刷運転で高品質の印刷を維持することができる。さらに、本発明の硬化性組成物はそれ自体無溶剤であるため、環境に優しくない揮発性有機化合物を発生しない。
【0042】
エピクロロヒドリンとノボラックとの反応によって生成するエポキシノボラック樹脂は、ペンダントエポキシド基を有するフェノール主鎖を有する。ノボラック樹脂は、非置換フェノールと、クレゾールなどの置換フェノールとから調製することができる。エポキシノボラック樹脂は、エポキシクレゾールノボラック樹脂をも含んでいる、この場合、クレゾールがエポキシノボラック樹脂のフェノール主鎖を形成する。
【0043】
ほとんどの実施形態においては、硬化性組成物は、約60℃未満の軟化点を有するエポキシノボラック樹脂を含む。室温における無溶剤硬化性組成物の支持基材への塗布は、約60℃未満の軟化点を有するエポキシノボラック樹脂によって容易になる。硬化性組成物が2種類以上のエポキシノボラック樹脂を含む実施形態においては、すべてのエポキシノボラック樹脂が約60℃未満の軟化点を有する必要はない。硬化性組成物が(ビスフェノールエポキシ樹脂と比較して)比較的少量のエポキシノボラック樹脂を含む別の実施形態においては、そのエポキシノボラック樹脂は約60℃以上の軟化点を有することができ、組成物の塗布は依然として室温で行うことが可能となりうる。別の実施形態においては、硬化性組成物が室温よりも高い温度の支持基材に塗布される場合、エポキシノボラック樹脂はより高い軟化点、すなわち約60℃以上の軟化点を有することができる。
【0044】
本明細書に記載の方法で使用されるエポキシノボラック樹脂は、以下の値:156、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、および300g/equivの任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含むエポキシド当量(EEW)を特徴とする。一実施形態においては、EEWは約156〜約230g/equivの間である。エポキシド当量が約300を超える場合、そのエポキシノボラック樹脂の組成物の耐薬品性または耐溶剤性が低下すると考えられる。
【0045】
ある実施形態においては、硬化性組成物は、312〜1200の間、以下の値:312、400、600、800、1000、1200、1500、1800、2100、2400、2700、および3000の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む分子量を有するエポキシ−ノボラック樹脂を含む。一実施形態においては、エポキシノボラック樹脂の分子量は約312〜約1000の間である。ほとんどの実施形態においては、エポキシノボラック樹脂は2.0を超える平均官能基数を有し、そのため硬化によってより高い架橋密度が得られる。より高い架橋密度を有するエポキシノボラック樹脂は、良好な靭性および耐薬品性を有するため、DGEBPAおよびDGEBPFなどの他のエポキシ樹脂組成物と比較して、印刷版として使用する場合に好適な耐摩耗性、耐衝撃性、および耐溶剤性が得られる。
【0046】
ある実施形態においては、エポキシノボラック樹脂は、以下の式(I)
【0047】
【化4】
【0048】
(式中、nは約0.1〜約5の範囲となることができ、それらの間の分数を含む)
の樹脂を含む。ある実施形態においては、nは約0.2〜約2.0の範囲である。式(I)のエポキシノボラック樹脂の実施形態の例は、D.E.N.(商標)431 、D.E.N.(商標)438、およびD.E.N.(商標)439(The Dow Chemical Company,Midland,Michigan,U.S.A.より入手可能);ならびにEPON(商標)Resin 160、EPON(商標)Resin 161(Momentive Performance Materials Holdings,Inc.,Columbus,Ohio,U.S.Aの一部であり、以前のHexion Specialty Chemicalsである、Momentive Specialty Chemicals、Inc.であるより入手可能)である。
【0049】
ある別の実施形態においては、エポキシノボラック樹脂は、以下の式(II)
【0050】
【化5】
【0051】
(式中、nは約0.1〜約4の範囲となることができ、それらの間の分数を含む)
のエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む。ある実施形態においては、nは約0.2〜約3の範囲である。式(II)のエポキシノボラック樹脂の一例は、Araldite(登録商標)ECN 9511(Huntsmanより入手可能)である。
【0052】
さらに別の実施形態においては、エポキシノボラック樹脂としては、以下の式(III)
【0053】
【化6】
【0054】
(式中、nは約0〜約4の範囲となることができ、それらの間の分数を含む)
のエポキシノボラック樹脂が挙げられる。ある実施形態においては、nは約0〜約2の範囲である。式(III)のエポキシノボラック樹脂の一例はEPON(商標)Resin SU−2.5である。
【0055】
硬化性組成物中で第2のエポキシ樹脂がエポキシノボラックとブレンドされる。エポキシノボラック樹脂対第2のエポキシ樹脂の比は、重量基準で約1:3〜約3:1であって、以下の値:1.0:3.0、1.2:3.0、1.4:3.0、1.6:3.0、1.8:3.0、2.0:3.0、2.2:3.0、2.4:3.0、2.6:3.0、2.8:3.0、3.0:3.0、3.0:2.8、3.0:2.6、3.0:2.4、3.0:2.2、3.0:2.0、3.0:1.8、3.0:1.6、3.0:1.4、3.0:1.2、および3.0:1.0の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。第2のエポキシ樹脂は、式(IV)
【0056】
【化7】
【0057】
で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBPA)およびそのオリゴマー、あるいは式(V)
【0058】
【化8】
【0059】
ビスフェノールFジグリシジルエーテル(DGEBFA)およびそのオリゴマーであり、式中のnは0〜約4であってよい。DGEBPAおよびDGEBFAの場合、nは0である。DGEBPAおよびDGEBFAのオリゴマーの分子量は最大約1200g/molとすることができる。
【0060】
式(I)〜(V)のそれぞれのエポキシ樹脂は、オリゴマー、すなわち「マー」単位の分布を有し、そのため、nは、前述の式(I)〜(V)のnの値の範囲に従うエポキシノボラック化合物中のマー単位の数を表す。本明細書において使用される場合、用語「マー」または「マー単位」は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、およびヘプタマーを含む2つ以上の繰り返し単位を有するエポキシノボラックオリゴマー化合物を含んでいる。一実施形態においては、エポキシ樹脂中のマー単位の分布は、数種類またはすべての可能なもの(すなわち、ダイマーからヘプタマー)の混合物を含み、そのためnは、樹脂中のマー単位の平均数を表す。別の実施形態においては、エポキシノボラック樹脂中のマー単位の分布は、数種類またはすべての可能なもの(すなわち、ダイマーからヘプタマー)の混合物を含み、そのためnは、混合物中の主要なオリゴマー種を表す。一例として、nが2.4である式(I)のエポキシノボラックは、オリゴマー混合物(すなわち、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、およびヘキサマー、およびおそらくはヘプタマーの混合物)であり、主要な種はテトラマーおよびペンタマーである。式(I)、(II)、および(III)で表されるエポキシノボラック樹脂の場合、nは、前述のnの範囲に準拠して、以下の値:0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。式(IV)および(V)でそれぞれ表されるビスフェノールA樹脂およびビスフェノールF樹脂の場合、nは以下の値:0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、および16.5の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。
【0061】
ほとんどの実施形態においては、硬化性組成物は、約60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Aエポキシ樹脂、または約60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Fエポキシ樹脂を含む。室温における無溶剤硬化性組成物の支持基材への塗布は、約60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Aまたはビスフェノール−Fエポキシ樹脂によって容易になる。硬化性組成物が2種類以上のビスフェノールエポキシ樹脂を含む実施形態においては、すべてのビスフェノールエポキシ樹脂が約60℃未満の軟化点を有する必要はない。硬化性組成物が(ビスフェノールエポキシ樹脂と比較して)比較的少量のエポキシノボラック樹脂を含む別の実施形態においては、そのエポキシノボラック樹脂は約60℃以上の軟化点を有することができ、組成物の塗布は依然として室温で行うことが可能となりうる。別の実施形態においては、硬化性組成物が室温よりも高い温度の支持基材に塗布される場合、ビスフェノール−Aまたはビスフェノール−Fは、より高い軟化点、すなわち約60℃以上の軟化点を有することができる。
【0062】
エポキシノボラック樹脂は、一般に、層として好適な機械的性質を得ることができる高度のエポキシ官能性架橋を有するが、固体または高粘度の液体となる傾向にある。同じ条件において、ビスフェノールエポキシ樹脂は、一般に、エポキシノボラック樹脂よりも低い粘度を有する。エポキシノボラック樹脂とビスフェノールエポキシ樹脂との組み合わせによって、支持基材への塗布を容易にするために、最終用途における機械的性質の利点のバランスがとれ、エポキシ樹脂組成物の粘度が調整される利点を有し、エポキシ反応性希釈剤混合物の制限された添加が行われる、硬化性組成物が得られる。
【0063】
本明細書に記載の方法に使用される硬化剤は、第1級アミンおよび第2級アミンであり、したがってこれらを本明細書ではアミン硬化剤と記載する。アミン硬化剤は、酸および/または無水物などの他の可能性のある硬化剤と比較して硬化性組成物の硬化速度を増加させ、中程度の温度、たとえば室温から約150℃で組成物を硬化させることができるので、本発明の方法に主として好適である。ほとんどの実施形態においては、アミン硬化剤は、約40g/当量以下のアミン水素当量(AHEW)を特徴とする。一実施形態においては、アミン水素当量は、20〜40g/当量の間であり、場合により両端の値を含む。ある実施形態においては、アミン水素当量は、以下の値:20、25、30、35、および40g/当量の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む。アミン硬化剤は、1つ以上の本発明のエポキシ樹脂または反応性希釈剤を付加させたアミン硬化剤の付加物の形態で提供することもできる。約40g/当量以下のアミン水素当量を有するアミン硬化剤は、少なくとも100,000以上の通し数の印刷運転長さで印刷品質を維持するのに十分な程度の耐溶剤性を有する組成物の硬化層を得るのに役立つ。印刷版上の樹脂系層の耐溶剤性は特に重要であるが、その理由は、グラビア印刷に使用される多くのインクは溶剤系インクであり、溶剤による樹脂系層の攻撃によって層が膨潤し、それによって印刷品質および運転長さに悪影響を与えることがあるからである。約40g/当量以下のアミン水素当量(AHEW)を有するアミン硬化剤によって、溶剤系インクに対して最も広く最も一貫した耐溶剤性を有する硬化性組成物が得られる。ある実施形態においては、硬化性組成物は、40g/当量を超えるアミン水素当量を有するアミン硬化剤を含むことができるが、それは、他の態様においては組成物が依然として有用となり、それでもグラビア印刷用のほとんどの溶剤系インクに対して好適な耐溶剤性が得られる場合があるからである。
【0064】
アミン硬化剤は多官能性であり、すなわち2つ以上のアミノ官能基を1分子当たりに有する。アミンは、脂肪族アミン(たとえば、トリエチレンテトラミン(TETA)、ジエチレントリアミン(DETA)、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン);芳香族アミン(たとえば、m−フェニレンジアミン);あるいはアミン官能基がメチレン基−CH−で分離される脂環式または芳香族部分を有するアリーリル(arylyl)アミン(たとえば、m−キシリレンジアミンおよび1,3−ビス(アミノメチルシクロヘキサン))であってよい。市販のアミン硬化剤の広範な一覧が、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,4th ed.,Jacqueline I.Kroschwitz,exec.ed.,John Wiley & Sons,Hoboken,NJ,2004,pp.678−804におけるHa.Q.PhamおよびMaurice J.Marksによる“Epoxy Resins”の730ページの表15に示されている。アミン硬化剤の混合物を使用することもできる。DETAまたはTETAなどのエチレンアミン硬化剤、またはそれらを含有する付加物が特に好ましいが、個別のエポキシ配合物に依存して、特定の他のアミンも、それら自体または他のアミンとの組み合わせで機能する。ある実施形態においては、硬化剤は、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、またはテトラエチレンペンタミンである。「化学量論」量のアミン硬化剤が使用され、すなわち、硬化性組成物中の硬化剤アミン水素と樹脂エポキシ官能基との比が、モル対モルの基準で約0.95:1.0〜約1.1:1.0であり、以下の値:0.95:1.0、0.96:1.0、0.97:1.0、0.98:1.0、0.99:1.0、1.0:1.0、および1.1:1.0〜約1.1:1.0の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。
【0065】
エポキシ樹脂混合物は、硬化剤および「促進剤」(これは当技術分野において硬化剤と併用される触媒に使用される用語である)の存在下で硬化させることができる。エポキシの触媒重合は、種々のルイス塩基および酸、ならびに塩および金属錯体を用いて行われる。エポキシ硬化反応は、Epoxy Resins Chemistry and Technology,Clayton A.May editor,2nd edition,Marcel Dekker,Inc,NYに記載されている。好適な促進剤としては、イミダゾール類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびノニルフェノールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
希釈剤混合物は、硬化性組成物の所望の粘度を実現しながら、硬化した組成物所望の性質を維持するために使用される。特に、本明細書に記載の方法に使用される硬化性組成物は、一官能性エポキシ反応性希釈剤と多官能性エポキシ反応性希釈剤との混合物を含有する。エポキシ反応性希釈剤は、硬化させるエポキシ組成物の粘度、ならびにぬれ性および含浸などの他の性質を変化させるために使用される低粘度エポキシである。エポキシ反応性希釈剤の粘度は、通常、室温において約300cp未満である。一官能性希釈剤の例としては、p−tert−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、C−C14グリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。二官能性希釈剤の例としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、およびシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。三官能性希釈剤の一例はトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルである。
【0067】
希釈剤混合物のほとんどの実施形態においては、一官能性反応性希釈剤と多官能性反応性希釈剤との比は、重量基準で約4:1〜約1:4である。特に希釈剤混合物中の希釈剤の総量が約10重量%以上(エポキシ/希釈剤成分の重量を基準とする)である実施形態において、一官能性反応性希釈剤と多官能性反応性希釈剤との比は、重量基準で約4:1〜約1:4である。希釈剤混合物中の希釈剤の総量が約10重量%未満(エポキシ/希釈剤成分の重量を基準とする)である場合は、一官能性希釈剤と多官能性希釈剤との重量比は、特に約4:1〜1:4に限定されない。一官能性反応性希釈剤と多官能性反応性希釈剤との比は、以下の値:1.0:4.0、1.2:4.0、1.4:4.0、1.6:4.0、1.8:4.0、2.0:4.0、2.2:4.0、2.4:4.0、2.6:4.0、2.8:4.0、3.0:4.0、3.2:4.0、3.4:4.0、3.6:4.0、3.8:4.0、4.0:4.0、4.0:3.8、4.0:3.6、4.0:3.4、4.0:3.2、4.0:3.0、4.0:2.8、4.0:2.6、4.0:2.4、4.0:2.2、4.0:2.0、4.0:1.8、4.0:1.6、4.0:1.4、4.0:1.2、および4.0:1.0の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。希釈剤混合物は、硬化性組成物が、コーティング温度において約200〜約3500cpの範囲の粘度を有し、シリンダー上にコーティング可能となるのに十分多量であるが;が硬化した組成物の耐薬品性および他の性質を損なわないために十分少量で使用される。一実施形態においては、希釈剤混合物は、エポキシ/希釈剤成分の重量(すなわち、エポキシ樹脂(すなわち、エポキシノボラック樹脂、およびビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂)および希釈剤(すなわち、一官能性反応性希釈剤および多官能性反応性希釈剤)の総重量を基準として、約4〜約30重量%の量で硬化性組成物中に存在し、以下の値:4、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、および30重量%の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。
【0068】
本明細書に記載の方法に使用される硬化性組成物中、エポキシ/希釈剤成分は、エポキシ/希釈剤成分およびアミン硬化剤の総重量を基準として約75〜約95重量%で存在する。一実施形態においては、エポキシ/希釈剤成分含有量は、エポキシ/希釈剤成分およびアミン硬化剤の総重量を基準として以下の値:75、80、85、90、および95重量%の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。エポキシ/希釈剤成分中、エポキシ/希釈剤成分の重量を基準として、エポキシノボラック樹脂は約17〜約70重量%で存在し、ビスフェノールAエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂は約17〜約70重量%で存在し、一官能性希釈剤は約1〜約24重量%で存在し、多官能性希釈剤は約1〜約24重量%で存在する。一実施形態においては、エポキシノボラック樹脂含有量は、エポキシ/希釈剤成分の重量を基準として以下の値:17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、および70重量%の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。一実施形態においては、ビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ/希釈剤成分の重量を基準として以下の値:17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、および70重量%の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。一実施形態においては、一官能性希釈剤の含有量は、エポキシ/希釈剤成分の重量を基準として以下の値:1、3、5、7、10、12、14、16、18、20、22、および24重量%の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。一実施形態においては、多官能性希釈剤の含有量は、エポキシ/希釈剤成分の重量を基準として以下の値:1、3、5、7、10、12、14、16、18、20、22、および24重量%の任意の2つの値の間であってよく、場合によりそれら2つの値を含むことができる。
【0069】
場合により、硬化性組成物は、ナノ粒子、すなわち少なくとも1つの寸法が約500nm未満である粒子を最大約30重量%含むことができる。一実施形態においては、少なくとも1つの寸法の値は以下の値:1、10、50、75、100、200、300、400、および500nmの任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む。一実施形態においては、この値は約1〜約100nmの間である。ナノ粒子は、硬化性組成物中の成分およびナノ粒子の総重量を基準として以下の値:0、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む量で存在することができる。ナノ粒子は組成物に硬度および弾性を付与することができ、それによって組成物の硬化層の耐摩耗性を増加させ彫刻性を改善することができる。硬化性組成物の成分の総重量を基準として、一実施形態においては、ナノ粒子は約0.1〜約25重量%の間の量で存在し;ある実施形態においては、ナノ粒子は約0.1〜約15重量%の間で存在し;ある別の実施形態においては、約10〜20重量%の間の量で存在する。
【0070】
場合により、ナノ粒子と樹脂との間の相互作用を改善するために、ナノ粒子は、たとえば有機オニウム種によるコーティングまたは表面処理を行うことができる。
【0071】
好適なナノ粒子の例としては:酸化アルミニウム(たとえば、アルミナ);シリカ(たとえば、コロイダルシリカおよびヒュームドシリカ);酸化亜鉛;酸化ジルコニウム;酸化チタン;酸化マグネシウム;酸化タングステン;炭化タングステン;炭化ケイ素;炭化チタン;窒化ホウ素;二硫化モリブデン;クレー、たとえば、ラポナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、サポナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルホンスコイト(volhonskoite)、ソーコナイト、マガダイト(magadite)、メドモナイト(medmonite)、ケニアイト、バーミキュライト、蛇絞石、アタパルジャイト、クルケアイト、アレタイト(alletite)、セピオライト、アロフェン、イモゴライト;カーボンナノチューブ;カーボンブラック;炭素フィラメント;およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
場合により、硬化性組成物は、硬化した組成物層の摩耗特性を改善するための固体潤滑剤として充填剤を含むことができる。充填剤は、少なくとも1つの寸法が約500nmを超え、一般には約500nm〜約5ミクロンの間である粒子を含む。充填剤の例としては、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、黒鉛、ポリ(テトラフルオロエチレン)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化性組成物は、組成物中の全成分の総重量を基準として最大約50重量%の充填剤を含むことができる。硬化性組成物は、ある実施形態では最大約40重量%;ある別の実施形態では最大約30重量%;別の実施形態では最大約20重量%の充填剤を含むことができる。充填剤は、硬化性組成物中の成分および充填剤の総重量を基準として以下の値:0、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、および50重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む値で存在することができる。場合により、硬化性組成物は樹脂改質剤を含むことができる。樹脂改質剤は、架橋密度の増加および/または架橋網目構造の安定化のために使用することができ、それによって、最終用途特性を改善することができ、たとえば組成物の硬化層の耐溶剤性、耐摩耗性を増加させることができ、および/または彫刻性を改善することができる。樹脂改質剤としては、限定するものではないが、アルコールおよびポリオールのアクリレートモノエステル;アルコールおよびポリオールのアクリレートポリエステル;アルコールおよびポリオールのメタクリレートモノエステル;ならびにアルコールおよびポリオールのメタクリレートポリエステルを挙げることができ;好適なアルコールおよびポリオールとしては、アルカノール、アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、エトキシル化トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびポリアクリロールオリゴマーが挙げられる。一官能性および多官能性のアクリレートまたはメタクリレートの組み合わせを使用することができる。硬化性組成物は、組成物中の全成分の総重量を基準として最大約10重量%の樹脂改質剤を含むことができる。
【0073】
硬化性組成物は、場合により、エポキシ樹脂への添加剤、たとえば、軟化成分、非反応性(および硬化条件において不揮発性の)希釈剤(フタル酸ジブチルなど)、界面活性剤、分散剤、染料、顔料、ならびに、コーティングの均一性および外観のためのぬれ性およびレベリングの添加剤を含むことができる。エポキシは、Epoxy Resins Chemistry and Technology,Clayton A.May editor,2nd edition,Marcel Dekker,Inc,NYに記載されるように軟化させることができる。好適な軟化成分としては、ポリアミド、カルボキシル化ポリマー、脂肪ジアミン、ポリグリコールジエポキシド、およびポリウレタンアミン(ポリエーテルウレタンアミンなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態においては、ポリウレタンアミンまたはポリエーテルウレタンアミン(たとえば、Aradur(登録商標)70BD、Huntsman International LLC,Salt Lake City,Utah,U.S.A.より入手可能)を硬化性組成物中の軟化成分として含めることができる。
【0074】
硬化性組成物は、少なくとも前述のエポキシ/希釈剤成分および多官能性アミン硬化剤を含む。ある実施形態においては、硬化性組成物は、エポキシ/希釈剤成分、アミン硬化剤、および触媒を含むことができる、またはそれらから本質的になることができる。別の実施形態においては、硬化性組成物は、エポキシ/希釈剤成分、アミン硬化剤、触媒、およびナノ粒子を含むことができる、またはそれらから本質的になることができる。さらに別の実施形態においては、硬化性組成物は、エポキシ/希釈剤成分、アミン硬化剤、触媒、および充填剤を含むことができる、またはそれらから本質的になることができる。さらなるある別の実施形態においては、硬化性組成物は、エポキシ/希釈剤成分、アミン硬化剤、触媒、ナノ粒子、および充填剤を含むことができる、またはそれらから本質的になることができる。ある実施形態においては、硬化性組成物は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、希釈剤混合物、およびナノ粒子の総重量を基準として、約40〜90重量%で存在するエポキシ樹脂/希釈剤成分、約4〜25重量%のアミン硬化剤、約3〜30重量%の希釈剤混合物、および約0〜30%のナノ粒子を含む。ある実施形態においては、エポキシ/希釈剤成分は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、希釈剤混合物、およびナノ粒子の総重量を基準として以下の値:40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、および90重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む重量%で存在する。ある実施形態においては、アミン硬化剤は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、希釈剤混合物、およびナノ粒子の総重量を基準として以下の値:4、7、10、12、15、17、20、22、および25重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む重量%で存在する。ある実施形態においては、希釈剤混合物は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、希釈剤混合物、およびナノ粒子の総重量を基準として以下の値:3、7、10、12、15、17、20、22、25、27、および30重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む重量%で存在する。ある実施形態においては、ナノ粒子は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、希釈剤混合物、およびナノ粒子の総重量を基準として:0、4、7、10、12、15、17、20、22、25、27、および30重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む重量%で存在する。ある実施形態においては、充填剤は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、希釈剤混合物、および充填剤の総重量を基準として以下の値:0、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、および50重量%の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む重量%で存在することができる。
【0075】
一実施形態においては、印刷版に使用される硬化性組成物は、a)約172〜約179g/当量のエポキシド当量を有するエポキシノボラック樹脂;b)163〜172g/当量のエポキシド当量を有するビスフェノールFエポキシ樹脂;c)ジエチレントリアミン;d)p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルと1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルとのそれぞれ約3:1の重量比の混合物を含むことができる、またはそれらから本質的になり;エポキシノボラック樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との重量比は約6:7(規格化した比は1:1.17)であり;p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルと1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルとの混合物d)は、エポキシ/希釈剤成分a)+b)+d)の約15〜20重量%である。一実施形態においては、硬化性組成物は、最大約30重量%のナノ粒子、別の一実施形態においては最大20重量%ナノ粒子の、たとえばアルミナナノ粒子またはシリカナノ粒子をさらに含む。
【0076】
一実施形態においては、本発明の印刷版の製造方法は、a)i)エポキシノボラック樹脂と;ii)ビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と;iii)一官能性反応性希釈剤と;iv)多官能性反応性希釈剤と;v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤とを含む無溶剤硬化性組成物を提供するステップであって;i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で約1:3〜約3:1となるステップと;b)組成物を支持基材上に塗布し、それによって層を形成するステップと;c)層を室温から約250℃の範囲内の1つ以上の温度で硬化させるステップと;d)ステップc)で得た層中に少なくとも1つのセルを彫刻するステップとを含む。別の一実施形態においては、本発明の印刷版の製造方法は、前述の無溶剤硬化性組成物を塗布して支持基材上に層を形成するステップと;層を室温から250℃の範囲内の1つ以上の温度で硬化させるステップと;硬化ステップで得た層中に少なくとも1つのセルを彫刻するステップとを含む。
【0077】
本発明の印刷版の製造方法は、硬化性組成物を支持基材上に塗布して、硬化性組成物の層を形成するステップを含む。組成物は当技術分野において周知の種々の手段によって支持基材に塗布することができる。本発明の方法は、輪転グラビア印刷プロセスの印刷ロールまたは印刷シリンダーとして使用できる支持基材への液体としての硬化性組成物の塗布に特に適用可能である。支持基材は、通常は金属で構成される平面支持シートを含むこともできる。支持基材、たとえば印刷ロールまたは印刷シリンダーは、金属(たとえば、アルミニウムまたは鋼)またはポリマー材料でできていてよい。硬化性組成物を支持基材に塗布する前に、組成物を受容する支持基材の外面は、被膜またはコーティングのウェットアウトおよび結合強度を改善するために、支持基材表面を洗浄し、および/または変化させる(すなわち表面張力を低下させる)ために、プラズマまたはコロナ前処理によって前処理することができる。さらに、またはこれとは別に、硬化性(および硬化)組成物の支持基材への接着性を改善するために、エポキシプライマー溶液などのプライマー溶液を支持基材の外面に塗布することができる。
【0078】
硬化性組成物は、限定するものではないが射出、流し込み、液体キャスティング、噴射、浸漬、吹き付け、蒸着、およびコーティングなどのあらゆる好適な方法によって支持基材に塗布することができる。好適なコーティング方法の例としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、ローラーコーティング、押出コーティング、ブラシコーティング、リングコーティング、粉末コーティング、およびブレード(たとえば、ドクターブレード)コーティングが挙げられ、いずれも当技術分野において周知であり、たとえば、英国特許第1,544,748号明細書に記載されている。一実施形態においては、硬化性組成物は、印刷ロールまたはシリンダーなどの支持基材の表面上に硬化性組成物を吹き付けることによって塗布される。吹き付けは、ノズルを使用して当技術分野において周知の技術によって行うことができる。別の一実施形態においては、硬化性組成物は、米国特許第4,007,680号明細書に記載の方法と類似の方法で、ブラシコーティングによって支持基材の外面に塗布される。ほとんどの実施形態においては、円筒形支持基材上に連続、すなわち継ぎ目のない層を形成して、印刷版用の連続印刷面(硬化および彫刻の後)を得るために硬化性組成物が塗布される。ある実施形態においては、硬化性組成物の塗布は室温で行われる。別の実施形態においては、硬化性組成物の塗布は、室温よりも高温で行われる。硬化性組成物を塗布する前に、支持基材をある温度まで予備加熱することができる。硬化性組成物は、支持基材表面に塗布されると、約2〜約300ミル(50.8〜7620μm)の間の厚さの層を形成する。場合により硬化性組成物層の厚さは、以下の厚さ:2、4、8、12、16、20、50、100、150、200、250、および300ミル(50.8、102、203、305、406、508、1270、2540、3810、5080、6350、および7620μm)の任意の2つを含む。
【0079】
本発明の印刷版の製造方法は、室温から約250℃の範囲内の1つ以上の温度で層を硬化させるステップを含む。硬化性組成物を支持基材に塗布した後、組成物の層を硬化させて支持基材上で固化させ、それによって層は彫刻可能となる。樹脂組成物の固化は、アミン硬化剤、場合による触媒、および場合による反応性希釈剤などの組成物中の反応性成分と、樹脂中の反応性基とによって生じるエポキシノボラック樹脂のポリマー鎖の架橋によって起こる。硬化は周囲温度で行うことができるが、本発明の方法のほとんどの実施形態の場合、硬化は、組成物の層を加熱するステップを含む。室温(すなわち、周囲温度)より高温から約250℃までの範囲内の1つ以上の温度に組成物層を加熱することによって、硬化を促進することができる。本明細書に記載の硬化性組成物は、約6時間未満で熱的に(すなわち加熱によって)硬化する。ある実施形態においては、硬化性組成物の層は、4時間未満で熱硬化させ;ある別の実施形態においては、硬化性組成物は約1時間〜約2時間で熱硬化させる。時間および温度は個別の硬化性組成物によって変動し、当業者によって容易に決定される。硬化性組成物の層が十分に硬化するかどうかを調べる好適な方法の1つは、接着性、耐摩耗性、および耐溶剤性などの最終用途の性能特性に基づいて組成物のモデル研究を行うことによる方法である。より具体的には、温度は、以下の値:16、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、および250℃の任意の2つの値の間にあり、場合によりそれら2つの値を含む。硬化は、範囲内の1つの温度、または連続して2つの温度で行うことができ、たとえば、100℃で1時間、次に160℃で4時間行うことができる。一実施形態においては、組成物層は、約100℃で2時間加熱することによって硬化させる。別の一実施形態においては、組成物層は、約100℃で1時間加熱し、次に約150〜160℃でさらに約1時間加熱することによって硬化させる。別の一実施形態においては、組成物層は、約65℃で10分間加熱し、次に約110℃で20分間加熱することによって硬化させる。
【0080】
硬化性組成物の硬化層(支持基材表面に塗布し硬化させた後)は、約2〜約300ミル(50.8〜7620μm)の厚さを有する。硬化層の厚さは以下の厚さ:2、4、8、12、16、20、50、100、150、200、250、および300ミル(50.8、102、203、305、406、508、1270、2540、3810、5080、6350、および7620μm)の任意の2つの厚さの間にあり、場合によりそれら2つの厚さを含む。場合により、米国特許第5,694,852号明細書に開示されるように、彫刻前に、硬化層は、所望の厚さ、円筒度、および/または平滑度まで研削および研磨することができる。硬化層の平滑度は、Rz値として報告することができる。ほとんどの実施形態においては、硬化層の平滑度は約100マイクロインチ未満のRz値を有し、別の実施形態においては、Rz値は約80マイクロインチ未満である。
【0081】
本発明の印刷版の製造方法は、支持基材上の組成物の硬化層中に少なくとも1つのセルを彫刻するステップを含む。硬化性組成物を基材に塗布し硬化させた後、硬化した組成物層を彫刻することによって、固化した組成物が深さ方向に除去されて、層中に複数の個別のセルが形成される。グラビア印刷の場合は、所望の画像の印刷中に、層中の複数の個別のセルの全体または一部が、転写されるインクを保持する。凸版印刷の場合は、所望の画像の印刷中に、層中の複数の個別のセルの上に隆起した表面の全体または一部が、転写されるインクを保持す。支持基材上の硬化層中に複数のセルを彫刻することによって、印刷面を有する印刷版または同等の意味の画像キャリアが得られ、これによって基材上に印刷することによって所望の画像を複製することができる。彫刻は、当技術分野において周知のあらゆる種々の彫刻方法によって行うことができる。例としては、電気機械彫刻(たとえばダイヤモンドスタイラスを使用)およびレーザー彫刻が得られるが、これらに限定されるものではない。これらの彫刻方法は、電子彫刻システムの一部となりうる。一実施形態においては、彫刻はダイヤモンドスタイラス切削工具を用いて行われる。別の一実施形態においては、直接レーザー非接触彫刻が、インクセルの形成に使用される。レーザーは、COレーザー、YAGレーザー、またはダイオードレーザーであってよい。エポキシノボラック組成物の硬化層を有する本発明の印刷版の製造方法は、従来のグラビアシリンダーの場合の銅層の彫刻に使用される標準的または実質的に標準的な条件で従来の彫刻装置を使用して硬化層を彫刻できるという点で好都合である。
【0082】
レーザー彫刻性を向上させるために、1種類以上の顔料を硬化性組成物に加えることができる。顔料は、レーザー彫刻可能な組成物中に約1重量%〜約25重量%の量、一実施形態においては約3重量%〜約20重量%の量で存在することができる。このような顔料の例としては、黒色ケイ素含有顔料(炭素封入シリカ粒子を含有)、およびカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
場合により、彫刻された層は、バリを除去するための研磨、および/または印刷版のインク剥離性を改善するための彫刻された層の上へのフルオロポリマー組成物のコーティング(すなわち、オーバーコート)の塗布によってさらに処理することができる。
【0084】
ある実施形態においては、印刷版は、シリンダーまたは板の形態である。ある実施形態においては、支持基材は、金属またはポリマーである。ほとんどの実施形態においては、印刷版はグラビア印刷に適している。グラビア印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法であって、その画像領域は、くぼんでおり、インクまたは印刷材料を収容するための小さなくぼんだセル(またはウェル)からなり、非画像領域は印刷版の表面である印刷方法である。ほとんどの実施形態においては、印刷面は、彫刻によってグラビア印刷に適したインク受容セル表面が形成されたエポキシ組成物の硬化層である。ある実施形態においては、印刷版は、活版印刷版としての使用も含めた凸版印刷に好適となりうることも考慮される。凸版印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法であって、印刷版の画像領域は隆起し、非画像領域はくぼんでいる。凸版印刷に有用な印刷の場合、少なくとも1つのセルを彫刻することによって、所望の画像を印刷するためのインクを保持しない非画像領域が形成され、セルの上の隆起した表面が、所望の画像を印刷するためのインクを保持する画像領域となる。ある実施形態においては、印刷面は、凸版印刷に好適なレリーフ面である。
【0085】
さらなる一実施形態においては、支持基材に隣接する連続印刷面を含む印刷版であって、連続印刷面は、i)約60℃未満の軟化点を有するエポキシノボラック樹脂と、ii)約60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と、iii)一官能性反応性希釈剤と、iv)多官能性反応性希釈剤と、v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤とを含む硬化性組成物から形成された硬化エポキシ組成物層であり、i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で約1:3〜約3:1となり;iii)対iv)の比が重量基準で約4:1〜約1:4となる、印刷版が提供される。
【0086】
別の一実施形態においては、前述のように製造した印刷版を用いた印刷方法が提供される。ある実施形態においては、印刷方法は、製造した印刷版の硬化層中に彫刻された少なくとも1つのセルにインク、通常は溶剤インクを塗布するステップと、インクをセルから印刷可能な基材に転写するステップとをさらに含む。別の実施形態においては、印刷方法は、製造した印刷版の硬化層中に彫刻されたセルの上方にある少なくとも1つの面にインクを塗布するステップと、隆起した面から印刷可能な基材に転写するステップとをさらに含む。好適な溶剤インクとしては、限定するものではながアルコール、炭化水素(たとえば、トルエン、ヘプタン)アセテート(たとえば、酢酸エチル)、およびケトン(たとえば、メチルエチルケトン)などの有機溶剤を主成分としたインクが挙げられる。
【0087】
硬化層が十分に耐溶剤性ではない場合は、溶剤インクの溶剤を吸収して、硬化層の過度の膨潤が生じうる。過度の膨潤は、印刷品質、および画像キャリアの耐久性に悪影響を与える。本明細書に記載の方法における硬化層の重量増加で見た膨潤量は約10重量%未満である。ある実施形態においては、硬化層の膨潤量は0〜約5重量%の間である。これは、部分的には、アミン硬化剤の選択によって、すなわち約40g/当量以下のアミン水素当量を特徴とするアミン硬化剤を使用することによって実現されうる。さらに、エポキシ樹脂の構造が膨潤量に影響を与える。たとえば、エポキシ樹脂中のポリマー鎖の架橋が増加すると、膨潤が減少することがあり、すなわち硬化層の耐溶剤性が改善されることがある。
【実施例】
【0088】
本発明は、以下の実施例においてさらに規定される。これらの実施例は、本発明好ましい実施形態を示すものであり、説明のみの目的で提供されるものと理解されたい。以上の議論およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、本発明を種々の使用および条件に適合させるために本発明の種々の変更および修正を行うことができる。
【0089】
略語の意味は以下の通りである:「AHEW」はアミン水素当量を意味し;「AEP」はN−(2−アミノエチル)ピペラジンを意味し;「BGE」はベンジルグリシジルエーテルを意味し;「cm」はセンチメートルを意味し;「cp」はセンチポアズを意味し、0.001パスカル・秒に等しい粘度であり;「DACH」は1,2−ジアミノシクロヘキサン(cisおよびtransの混合物)を意味し;「DETA」はジエチレントリアミンを意味し、「EEW」はエポキシド当量を意味し;「equiv」は当量を意味し;「g」はグラムを意味し;「h」は時間を意味し;「IPDA」はイソホロンジアミンを意味し;「lpi」はライン/インチを意味し;「MEK」はメチルエチルケトンを意味し;「mPa・s」はミリパスカル・秒を意味し;「ミリトル」は0.001mm水銀を意味し、0.13332237パスカルに等しい圧力であり;「mg」はミリグラムを意味し;「mL」はミリリットルを意味し;「mm」はミリメートルを意味し;「ミル」は0.001インチを意味し、0.0254ミリメートルに等しい長さであり;「TETA」はトリエチレンテトラアミンを意味し;「重量%」は重量パーセント(値)を意味し;「μm」はマイクロメートルを意味する。
【0090】
方法
粘度
硬化剤を含まないエポキシ樹脂組成物を調製し、約10gをブルックフィールド粘度計(Model LV)のウェルに入れ、25℃で平衡させる。コーティング組成物中につり下げたスピンドルSC4−18を使用して、剪断応力対剪断速度の比としてセンチポアズ(1cp=1mPa・s)の単位での粘度を測定した。スピンドル速度は、%トルクが50〜80%となるように選択した。コーティング温度における粘度が200〜3500cpの範囲内となる場合に、その組成物がシリンダー上にコーティング可能であると見なした。
【0091】
耐溶剤性
エポキシ樹脂組成物を調製し、15〜20ミル(381〜508μm)の間隙でドローダウンバーを用いてアルミニウム箔シート支持体上にコーティングして、ポリマーフィルム(すなわち層)を支持体上に形成した。これらのポリマーフィルムサンプルを実施例の規定により硬化させ、支持体から剥離した。フィルム断片(通常50〜100mg)を10〜20mLの指定の溶剤が入った瓶に量り取った。フィルム断片を1週間(すなわち、7日)浸漬し、次に拭き取って乾燥させ、秤量した。重量%変化は:
100×[重量(7日)−重量(初期)]/重量(初期)
で計算される。溶剤中で7日後に、断片の重量%変化が12%未満であれば、その組成物は良好な耐溶剤性を有した。
【0092】
彫刻性
実施例に示されるように、エポキシ樹脂組成物を調製し、シリンダー上にコーティングし、硬化させ、彫刻した。15%未満のブレークアウトで170〜200ライン/インチのセルを形成するためのサンプルの彫刻を実現できた場合に、硬化樹脂サンプルが良好な彫刻性を有すると考えた。170〜200ライン/インチの彫刻画像解像度は、約115〜140μmのセル幅および25μm未満のセル壁の幅に相当する。ブレークアウトは、2つのセルに隣接する1つの壁に破損があり、それによって2つのセルが連結する欠陥として本明細書において定義される。彫刻領域は顕微鏡で調べ、少なくとも約30〜50個のセルを調べて、ブレークアウトパーセント値を求めた。
【0093】
摩耗
典型的なグラビア印刷方法を模倣するための、社内での摩耗試験を確立した。この摩耗試験では、組成物の硬化層を有する(彫刻した)シリンダーを、部分的にインクトレーに浸漬しながら回転させ、鋼製ドクターブレードと1回転に1回接触させた。試験に使用したインクは、Del Val Ink and Color IncのMultiprint White インクであった。Hirox KH−7700顕微鏡を用いて摩耗の程度を監視するために、300,000回転(他の記載のない限り)の前および後に彫刻したシリンダーのセル領域を評価した。摩耗は、セル領域のパーセント減少として報告される。社内試験機で誘発されるセル領域の減少が10%未満の場合に、硬化層が許容できる耐摩耗性を有すると見なした。
【0094】
印刷品質
印刷品質を長期印刷運転、すなわち100,000を超える通し数で調べ、印刷品質(鮮鋭度、汚れなどの特性を考慮)が視覚的に許容できなくなるまでの通し数で報告される。
【0095】
軟化点
利用可能であれば、ASTM D−3104に準拠して測定された製造元の報告する軟化点を使用した。そうでない場合、ある温度で「液体」と記載される材料は、その温度未満の軟化点を有すると推測した。
【0096】
材料
Araldite(登録商標)DY−P(p−tert−ブチルフェノールのモノグリシジルエーテル、CAS # 3101−60−8)(本明細書ではDY−Pと記載)はHuntsman Advanced Materials(The Woodlands,Texas,U.S.A.)より入手した。EEWは222〜244g/equivである。軟化点は25℃未満であり、25℃における粘度は20〜28cpである。
【0097】
Araldite(登録商標)DY−D(1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、CAS # 2425−79−8)(本明細書ではDY−Dと記載)はHuntsman Advanced Materialsより入手した。EEWは118〜125g/equivである。軟化点は25℃未満であり、25℃における粘度は15〜20cpである。
【0098】
Araldite(登録商標)DY−T(トリメチロールプロパンの鶏グリシジルエーテル、CAS # 30499−70−8)(本明細書ではDY−Tと記載)はHuntsman Advanced Materialsより入手した。EEWは111〜143g/equivである。軟化点は25℃未満であり、25℃における粘度は100〜300cpである。
【0099】
Araldite(登録商標)GY−285(ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、CAS # 2095−03−6)(本明細書ではGY−285と記載)はHuntsman Advanced Materialsより入手した。EEWは163〜172g/equivである。軟化点は25℃未満であり、25℃における粘度は2000〜3000cpである。
【0100】
D.E.R(商標)331(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、CAS # 25085−99−8)(本明細書ではDER 331と記載)はThe Dow Chemical Company(Midland,Michigan,U.S.A.)より入手した。EEWは182〜192g/equivである。結晶融点は約42℃であり、過冷却液体として存在する25℃における粘度は11000〜14000cpである。
【0101】
D.E.N(商標)431(半固体エポキシノボラック樹脂、CAS # 28064−14−4)(本明細書ではDEN 431と記載)はThe Dow Chemical Company(Midland,Michigan,U.S.A.)より入手した。EEWは172〜179g/equivである。軟化点は51.7℃未満であり、51.7°における粘度は1100〜1700cpであり;エポキシ官能基数は±2.8である。
【0102】
Araldite(登録商標)ECN 1273(固体エポキシクレゾールノボラック、CAS # 29690−82−2)(本明細書ではECN 1273と記載)はHuntsman Advanced Materialsより入手した。EEWは217〜233g/equivであり;軟化点は68〜78℃であり;エポキシ官能基数は±4.8である。
【0103】
ベンジルグリシジルエーテル(CAS # 2930−05−4)(本明細書ではBGEと記載)はSigma−Aldrich Co.LLC(St.Louis,Missouri,U.S.A.)より入手した。EEWは164g/equivであり;25℃における粘度は5〜8cpである。
【0104】
ジエチレントリアミン(CAS # 111−40−0)(本明細書ではDETAと記載)はSigma−Aldrich Co.LLC(St.Louis,Missouri,U.S.A.)より入手した。AHEWは20.6である。
【0105】
トリエチレンテトラミン(CAS # 112−24−3)(本明細書ではTETAと記載)はMP Biomedicals LLC(Solon,Ohio,U.S.A.)より入手した。AHEWは約27である。
【0106】
cisおよびtransの混合物の1,2−ジアミノシクロヘキサン(CAS # 694−83−7)(本明細書ではDACHと記載)はSigma−Aldrich Co.LLCより入手した。AHEWは28.5である。
【0107】
Aradur(商標)355(変性脂環式ポリアミン付加物)はHuntsman Advanced Materialsより入手した。この付加物のAHEWは48.5である。これは主要アミン成分としてDETAおよびDACHを含み、それぞれ20.6および28.5のAHEWを有する。これらを明記されていないエポキシ成分と反応させて付加物が形成されている。
【0108】
Jeffamine(商標)T−403(ポリエーテルトリアミン)はHuntsman Advanced Materialsより入手した。AHEWは79である。
【0109】
N−(2−アミノエチル)ピペラジン(CAS # 140−31−8)(本明細書ではAEPと記載)はAlfa−Aesar(Ward Hill,Massachusetts,U.S.A.)より入手した。AHEWは43.1である。
【0110】
イソホロンジアミン(CAS # 2855−13−2)(本明細書ではIPDAと記載)はSigma−Aldrich Co.LLCより入手した。AHEWは42.6である。
【0111】
2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(CAS # 90−72−2)(本明細書ではDMP−30と記載)はSigma−Aldrich Co.LLCより入手した。
【0112】
メチルエチルケトン(CAS # 78−93−3)(本明細書ではMEKと記載)、酢酸n−プロピル(CAS # 109−60−4)(本明細書では酢酸プロピルと記載)、酢酸n−ブチル(CAS # 123−86−4)(本明細書では酢酸ブチルと記載、プロピレングリコールモノメチルエーテル(CAS # 107−98−2)、およびメチルイソブチルケトン(CAS # 108−10−1)はSigma−Aldrich Co.LLCより入手した。
【0113】
トルエン(CAS # 108−88−3)、酢酸エチル(CAS # 141−78−6)、およびイソプロパノール(CAS # 67−63−0)はEMD Chemicals,Inc.(Gibbstown,New Jersey,U.S.A.)より入手した。
【0114】
エポキシ/希釈剤成分およびアミン硬化剤の正確な量は実施例に明記している。他の記載がなければ、実施例中の配合物のアミン水素対エポキシ官能基の比が約0.95〜1.10である。
【0115】
実施例1
この実施例では、化学量論量のアミンで硬化させた82.5%のエポキシ樹脂(エポキシノボラック対ビスフェノールエポキシの重量比が1:1.17)および17.5%の反応性希釈剤(一官能性希釈剤対多官能性希釈剤の重量比が3:1)からなるエポキシ配合物が、塗工適性、彫刻性、耐摩耗性、および耐溶剤性などのグラビア印刷用印刷版としての良好な性能を示すことを実証する。
【0116】
4.594g(13.1重量%のエポキシ/希釈剤成分)のDY−P希釈剤および1.539g(4.4重量%)のDY−D希釈剤をフラスコ中で混合した。13.285g(38.0重量%)のDEN 431エポキシノボラックをこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。15.555g(44.5重量%)のGY−285ビスフェノールFエポキシを加え、その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去した。
【0117】
4.135gのDETAアミンを秤量し、ハウス真空(house vacuum)(約150〜200トル)下で脱気した。このアミンを上記エポキシ混合物に加え、約10分間撹拌した。得られたコーティング溶液を金属シリンジ中に移した。次にこれを45℃にあらかじめ加熱した金属シリンダー上にコーティングして、5.5〜6ミル(140〜152μm)の厚さのコーティングを得た。シリンダーは、シリンジポンプと並進機構(translator mechanism)とを併用するブラシ技術を用いて材料を送出することでコーティングして、所望のコーティング厚さ(6〜10ミル、152〜254μm)を得た。次にコーティングを100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させ、徐々に周囲温度まで冷却した。組成物のコーティングおよび硬化によって、シリンダー上に優れた硬化層が形成された。
【0118】
シリンダー上の硬化層を5ミル(127μm)の均一な厚さまで機械的に研削および研磨し、次にOhio R−7100シリーズ彫刻機上で、セル速度3200Hzにおいて、垂直スクリーン設定に274セル/回転、水平スクリーン設定に80セル/長さ、およびシングルリピート設定(single repeat setting)に800+1/4セルを用いて彫刻した。スクリーンは80ライン/cm、角度60度、トーン100%、およびダイヤモンド面角度120度であった。彫刻品質は優れており、100%セル密度で破壊されたセル壁は<1%であった。
【0119】
前述の方法により、このシリンダーコーティングの摩耗試験を行った。社内の試験機で得られたセル領域の減少は2.7%であり、これは耐摩耗性が良好であることを示している。
【0120】
同じエポキシ−アミン配合物を調製し、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のような耐溶剤性の試験を行った。試験用に選択した溶剤および混合溶剤は、グラビアインク中に存在する典型的なものである。結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
同じエポキシ配合物(アミンは含有しない)を調製し、前述のように粘度の試験を行った。25℃における粘度は1689cpとなり、これは観察される優れた塗工適性に適合する値である。
【0123】
彫刻性、耐摩耗性、耐溶剤性、および粘度に基づくと、この実施例の硬化性組成物は、優れた品質の印刷が得られ長い印刷運転寿命を有すると予想される。
【0124】
比較例AおよびB
これらの比較例では、合計35%の希釈剤を有する配合物はいくつかの点では十分機能するが、耐溶剤性が不十分であるためグラビア印刷用印刷版として使用できないことを示す。
【0125】
各成分が以下の量であることを除けば、実施例1の配合物と同じ方法で2種類のエポキシ配合物を調製した(重量%は、エポキシ/希釈剤成分、すなわちエポキシ樹脂および希釈剤の合計を基準としている):比較例A−10.498g(エポキシ/希釈剤成分の30.0重量%)のDEN 431エポキシノボラック、12.251g(35.0重量%)のGY−285ビスフェノールFエポキシ、9.193g(26.3重量%)のDY−P希釈剤、3.059g(8.7重量%)のDY−D希釈剤、および4.051gのDETAアミン;比較例B−10.503g(30.0重量%)のDEN 431、12.254g(35.0重量%)のGY−285、6.119g(17.5重量%)のDY−P、6.125g(17.5重量%)のDY−D、および4.276gのDETA。
【0126】
これら2つの配合物を、実施例1をコーティングしたシリンダーと同じシリンダーの区画上に同じ手順でコーティングした。すべて実施例1と同じ手順により、これらを硬化させ、5ミル(127μm)の均一な厚さまで研削し、次に彫刻した。組成物のコーティングおよび硬化によって、シリンダー上に優れた硬化層が形成された。彫刻品質は非常に良好であり、100%セル密度で破壊されたセル壁は、比較例AおよびBでそれぞれ3%および2%であった。
【0127】
前述の方法により、これらのシリンダーコーティングに対して摩耗試験を行った。社内の試験機で得られたセル領域の減少は、比較例AおよびBでそれぞれ4.0%および1.7%であり、これらは耐摩耗性が良好であることを示している。
【0128】
実施例1と同じ方法で、MEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤試験のために、これらの配合物のサンプルを作製し、前述のように試験を行った。MEK、酢酸エチル、およびトルエンのそれぞれにおける溶剤中7日後のパーセント重量増加は、比較例Aで25.3、21.8、および1.1であり、比較例Bで22.1、17.5、および2.5であった。MEKおよび酢酸エチルにおける重量増加は、グラビア印刷用途に許容される値よりも大きい。
【0129】
同じエポキシ配合物(アミンは含有しない)を調製し、前述のように粘度試験を行った。比較例AおよびBの25℃における粘度はそれぞれ465および367cpであり、これらの値はこれは観察される優れた塗工適性に適合している。
【0130】
これらの配合物の彫刻性、耐摩耗性、および粘度は、グラビア印刷用印刷版の良好な性能に適合しているが、これらの配合物のMEKおよび酢酸エチルに対する耐溶剤性のために、この用途には適していない。
【0131】
実施例2〜8、比較例C
これらの例では、エポキシノボラック、ビスフェノールエポキシ、一官能性希釈剤、および多官能性希釈剤を有する一連の配合物について、耐溶剤性および粘度がグラビア印刷用印刷版に好適であることを示す。
【0132】
これらの例では、成分のDEN 431エポキシノボラック、GY−285ビスフェノールFエポキシ、DY−P一官能性希釈剤、およびDY−D二官能性希釈剤を、表2に示す量で混合した。最初にDY−PおよびDY−Dをフラスコ中で混合した。次にDEN 431をこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。GY−285ビスフェノールFエポキシを加え、その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0133】
前述のようにして、これらの配合物の粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0134】
耐溶剤性測定のために、表2に示す量のDETAアミンを秤量し、対応するエポキシ混合物に加え、約10分間撹拌した。これらのコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEKに対する耐溶剤性の試験を行った。結果を表2に示す。括弧内のパーセント値は、配合物のエポキシ/希釈剤成分(エポキシ樹脂および希釈剤の合計)を基準とした重量パーセント値である。
【0135】
【表2】
【0136】
これらの結果は、種々の希釈剤量、ならびに各樹脂および希釈剤の種々の分率を有する一連の配合物に関して、使用可能な粘度および良好な耐溶剤性を示している。MEK耐溶剤性は、少なくとも最大25%の全希釈剤の配合物では良好であったが(実施例2および3)、35%の全希釈剤を有する配合物では許容される耐溶剤性を有さなかった(比較例C)。
【0137】
実施例9〜13
これらの実施例では、エポキシノボラック、ビスフェノールエポキシ、一官能性希釈剤、および多官能性希釈剤を有する一連の配合物について、耐溶剤性、粘度、および彫刻性がグラビア印刷用印刷版に好適であることを示す。
【0138】
これらの実施例では、DEN 431エポキシノボラック、GY−285ビスフェノールFエポキシ、DY−P一官能性希釈剤、およびDY−D二官能性希釈剤を、表3に示す量で混合した。最初にDY−PおよびDY−Dをフラスコ中で混合した。次にDEN 431をこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。GY−285ビスフェノールFエポキシを加え、その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0139】
前述のようにして、実施例11および12の配合物の粘度を測定した。実施例9、10、および13と同等の配合物の粘度は、それぞれ実施例4、5、および8で先に測定している。結果を表3に示す。
【0140】
耐溶剤性測定のために、表3に示す量のDETAアミンを秤量し、対応するエポキシ混合物に加え、約10分間撹拌した。これらのコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤性の試験を行った。結果を3に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
耐溶剤性試験用の紙片編の作製に使用したものと同じ配合物を使用して、大型金属シリンダーの区画にもコーティングした。各コーティング溶液を金属シリンジ中に移した。次にこれを37〜45℃の間の温度にあらかじめ加熱したシリンダー上にコーティングして、7.4〜8.5ミル(188〜216μm)の厚さのコーティングを得た。シリンダーは、シリンジポンプと並進機構とを併用するブラシ技術を用いて材料を送出することでコーティングして、所望のコーティング厚さ(6〜10ミル、152〜254μm)を得た。次にコーティングを100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させ、徐々に周囲温度まで冷却した。5つすべての組成物のコーティングおよび硬化によって、シリンダー上に優れた硬化層が形成された。
【0143】
シリンダー上の硬化層を均一な厚さまで機械的に研削および研磨し、次にOhio R−7100シリーズ彫刻機上で、セル速度3200Hzにおいて、垂直スクリーン設定に274セル/回転、水平スクリーン設定に80セル/長さ、およびシングルリピート設定に800+1/4セルを用いて彫刻した。スクリーンは80ライン/cm、角度60度、トーン100%、およびダイヤモンド面角度120度であった。彫刻品質は優れており、実施例9、10、および12の100%セル密度で破壊されたセル壁は<1%であり、実施例11の破壊されたセル壁は2%であり、実施例13の破壊されたセル壁は3%であった。
【0144】
上記のようにコーティングしたシリンダーは、摩耗試験には適合しない大きさであった。したがって、実施例9、10、および11の最良の性能の3つの配合物を、摩耗試験用のより小さなシリンダー上にコーティングした。シリンダーを53〜60℃の間にあらかじめ加熱したことを除けば、コーティング手順は前述のものと同じであり、得られたコーティング厚さは3つのコーティングでそれぞれ7.5、16、および7.9ミル(190、406、および201μm)であった。実施例10の配合物のコーティングがより厚かったのは、コーティング設定が不正確なためであったが、後の試験での顕著な影響はなかった。
【0145】
これらのコーティングを前述のように硬化させ、研削の代わりにサンディングを行い、次に前述のように彫刻した。前述の方法により、これらのシリンダーコーティングに対して摩耗試験を行った。社内の試験機で得られたセル領域の減少は、実施例9、10、および11でそれぞれ1.9、2.4、および4.8%であり、これらは耐摩耗性が良好であることを示している。
【0146】
これらの結果は、各樹脂および希釈剤の種々の分率を有する一連の配合物に関して、使用可能な粘度、優れた耐溶剤性、良好な彫刻性、および良好な耐摩耗性を示している。
【0147】
実施例14〜17、比較例D
これらの例は、エポキシノボラック、ビスフェノールエポキシ、一官能性希釈剤、および多官能性希釈剤からなる無溶剤エポキシ混合物は、6重量%の全希釈剤で配合することができ、グラビアシリンダーのコーティングで使用可能な粘度を依然として有することを示す。
【0148】
これらの例では、成分のDEN 431エポキシノボラック、GY−285ビスフェノールFエポキシ、DY−P一官能性希釈剤、およびDY−D二官能性希釈剤を、表4に示す量で混合した。最初にDY−PおよびDY−Dをフラスコ中で混合した。次にDEN 431をこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。GY−285ビスフェノールFエポキシを加え、その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0149】
前述のようにして、配合物の粘度を測定した。結果を表4に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
わずか6重量%の全希釈剤を有する実施例17でさえも、良好な塗工適性が得られる最大粘度(約3500cp)よりも低い粘度を有した。4重量%の希釈剤を有する比較例Dは、わずかに高い粘度を有したが、コーティング混合物を穏やかに加温するコーティング方法では良好な塗工適性が得られると推測される。
【0152】
実施例18〜20
これらの実施例では、異なる種類のビスフェノールエポキシ、一官能性希釈剤、および多官能性希釈剤を有する配合物が、グラビア印刷用印刷版の場合に使用可能な粘度および良好な耐溶剤性を有することを示す。
【0153】
これらの実施例では、エポキシ/希釈剤成分の成分を表5に示す量で混合した。最初に希釈剤sをフラスコ中で混合した。次にDEN 431をこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。次にビスフェノールエポキシを加え、その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0154】
前述のようにして、配合物の粘度を測定した。結果を表6に示す。
【0155】
耐溶剤性測定のために、表5に示す量のDETAアミンを秤量し、記載の量の各エポキシ混合物に加え、約10分間撹拌した。これらのコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。これらのコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤性の試験を行った。結果を6に示す。
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
これらの結果は、異なる種類のビスフェノールエポキシ樹脂および希釈剤混合物を含有する配合物で、コーティングに使用可能な粘度および優れた耐溶剤性が得られることを示している。
【0159】
比較例E、F、およびG
これらの比較例では、より高い軟化温度を有するエポキシは、グラビア印刷用印刷版としての使用に好適な粘度および耐溶剤性を有する無溶剤エポキシ配合物の主要成分になり得ないことを示す。
【0160】
これらの例では、ECN 1273エポキシクレゾールノボラック、GY−285ビスフェノールFエポキシ、DY−P一官能性希釈剤、およびDY−D二官能性希釈剤を、表7に示す量で混合した。最初にDY−PおよびDY−Dをフラスコ中で混合した。次にECN 1273をこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。GY−285ビスフェノールFエポキシを加え、その混合物を75〜80℃の水浴に入れ、ECN 1273が溶融して溶解して、混合物が完全に均一になるまで撹拌した。水浴温度を50℃まで下げ、混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0161】
前述のようにして、配合物の粘度を測定した。結果を表7に示す。3つの配合物の中で、35%の全希釈剤を有する比較例Gのみが、室温におけるシリンダーのコーティングでの使用範囲となる粘度を有した。
【0162】
【表7】
【0163】
1.986gのDETAアミンを16.546gの比較例Gのエポキシ混合物と混合し、約10分間撹拌した。このコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤性の試験を行った。結果は、7日の浸漬の後、16.2重量%のMEKの吸収、5.1重量%の酢酸エチルの吸収、および3.8重量%のトルエンの吸収となる。
【0164】
これらの結果は、無溶剤エポキシ配合物の主成分として60℃を超える軟化点を有するエポキシクレゾールノボラックを含むと、使用可能な粘度および良好な耐溶剤性を同時に実現することはできないことを示唆している。
【0165】
比較例H、I
これらの比較例では、硬化性組成物のエポキシ/希釈剤成分の構成要素の1つを省略することの盈虚を示す。
【0166】
実施例1の4成分エポキシ/希釈剤配合物をベース配合物として採用した。表8に示す量を使用して、実施例1と同じ方法で、2つの3成分エポキシ/希釈剤配合物を調製した。これらの配合物のすべてで、エポキシ樹脂(82.5%)および反応性希釈剤(17.5%)の総量を一定に維持した。
【0167】
前述のようにして、配合物の粘度を測定した。結果を表9に示す。
【0168】
耐溶剤性測定のために、表8に示す量のDETAアミンを秤量し、記載の量の各エポキシ/希釈剤混合物に加え、約10分間撹拌した。これらのコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤性の試験を行った。結果を表9に示しており、参考のため実施例1のデータも併記している。
【0169】
【表8】
【0170】
【表9】
【0171】
これらすべての配合物で良好な耐溶剤性が得られた。DY−Pを有さない比較例Iは使用可能な粘度を有した。GY 285を有さない比較例Hは、室温において良好な塗工適性を示すには高すぎる粘度を有し、この配合物は半固体のDEN 431エポキシノボラックの量が多すぎた。
【0172】
コーティング中に65〜70℃のシリンダー温度を使用したことを除けば、実施例1と同じ方法で、比較例Iの配合物をシリンダー上にコーティングした。組成物のコーティングおよび硬化によって、シリンダー上に良好な硬化層が形成された。しかし、比較例Iのコーティングは、十分にサンディングできず、4〜10ミル(100〜250μm)の不均一な厚さとなった。対照的に実施例1では、シリンダー上の硬化層は、5ミル(127μm)の均一な厚さまで機械的に研削および研磨され、次に彫刻された。彫刻品質は優れており、100%セル密度で破壊されたセル壁は<1%であった。
【0173】
実施例21〜23、比較例J、K、およびL
これらの例では、グラビア印刷用印刷版に必要となる良好な耐溶剤性の実現において、アミン硬化剤の選択が重要であることを示す。
【0174】
これらの例では、以下の成分量を用いてエポキシ/希釈剤成分の2つのバッチを調製した:バッチ1は、15.241g(38.1重量%)のDEN 431、17.762g(44.4重量%)のGY−285、5.248g(13.1重量%)のDY−P、および1.767g(4.4重量%)のDY−Dからなった。バッチ2は、8.276g(38.1重量%)のDEN 431、9.638g(44.4重量%)のGY−285、2.855g(13.1重量%)のDY−P、および0.958g(4.4重量%)DY−Dからなった。各バッチで、最初にDY−PおよびDY−Dをフラスコ中で混合した。次にDEN 431をこのフラスコに加え、得られた混合物を短時間撹拌した。GY−285ビスフェノールFエポキシを加え、その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0175】
耐溶剤性のために、表10に示す量のアミンを秤量し、記載の量のエポキシ配合物に加え、約10分間撹拌した。これらのコーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤性の試験を行った。結果を表10に示す。
【0176】
【表10】
【0177】
これらの結果は、所定のエポキシ配合物で、アミン硬化剤の選択は耐溶剤性に大きな影響を与えうることを示している。
【0178】
実施例24〜25、比較例M
これらの例では、1,2−ジアミノシクロヘキサン(DACH)を硬化剤として使用して、グラビア印刷用印刷版に必要とされる良好な耐溶剤性を得ることができることを示す。
【0179】
これらの例のエポキシ配合物は、38.1重量%のDEN 431、44.4重量%のGY−285、13.1重量%のDY−P、および4.4重量%のDY−Dからなった。これらの成分をフラスコ中で混合し、50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000mtorr)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0180】
比較例Mの場合、0.866gのDACHを秤量し、5.256gのエポキシ配合物に加え、約10分間撹拌した。コーティング材料を、15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。
【0181】
実施例24および25の場合、DACHの揮発性の作用を最小限にするため、または補償するために硬化剤の配合および条件を修正した。修正は、加熱前に部分的に反応させるためにアミンエポキシ混合物のキャストおよび硬化を遅らせること、低温硬化ステップを行うこと、配合物中のDACH量をわずかに増加させること、および硬化促進剤を加えることを含んだ。
【0182】
実施例24の場合、1.363gのDACHを秤量し、7.625gのエポキシ配合物に加え、約10分間撹拌した。この混合物を室温で3時間維持し、次に15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を50℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させて、冷却した。
【0183】
実施例25の場合、1.419gのDACHアミンおよび0.425gのDMP−30促進剤を秤量し、8.303gのエポキシ配合物に加え、約10分間撹拌した。この混合物を室温で3時間維持し、次に15ミル(381μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、鋼板上に配置したアルミニウム箔上にキャストした。コーティングした箔を50℃で1時間硬化させ、次に110℃で1時間硬化させて、冷却した。
【0184】
箔から剥離したフィルム断片について、前述のようにしてMEK、酢酸エチル、およびトルエンに対する耐溶剤性の試験を行った。結果を表11に示す。
【0185】
【表11】
【0186】
比較例Mは、MEK吸収が幾分多い。この結果は、多少揮発性であるDACHがある程度減少したことで、アミン水素対エポキシ基の比が好ましい化学量論範囲から外れたためと考えられる。実施例24および25は、DACHのような揮発性のより高いアミンは、配合および条件によってアミンの揮発性が最小限となる、または補償されるのであれば、良好な耐溶剤性を有する配合物中に使用できることを示している。
【0187】
実施例26
この実施例では、グラビア印刷用印刷版に必要とされる良好な耐溶剤性が、硬化剤および促進剤の組み合わせをエポキシ配合物に加え、配合物を短い硬化時間で中程度の硬化温度に曝露することによって実現できることを示す。
【0188】
この実施例のエポキシ配合物は、38.1重量%のDEN 431、44.4重量%のGY−285、13.1重量%のDY−P、および4.4重量%のDY−Dからなった。これらの成分をフラスコ中で混合し、50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000mtorr)下で脱気して気泡を除去し、次に室温まで冷却した。
【0189】
0.636gのDETAアミンおよび0.101gのDMP−30促進剤を秤量し、5.169gのエポキシ配合物に加え、約10分間撹拌した。このコーティング材料を、a 20ミル(508μm)の間隙でドローダウンナイフを用いて、65℃に温めたホットプレート上に置いたアルミニウム箔上にキャストした。65℃で10分後、ホットプレートの温度を110℃まで上昇させ、その温度を20分間維持した。コーティングした箔をホットプレートから取り外し、室温まで冷却した。
【0190】
箔から剥離した2つのフィルム断片について、MEKに対する耐溶剤性を試験した。MEK中に7日間浸漬した後の重量増加は、これら2つの試験片で1.7%および1.9%であった。
【0191】
実施例27
この実施例では、本発明により作製した印刷版が、良好な長期印刷試験性能を示すことを実証する。
【0192】
53.345g(エポキシ/希釈剤成分の38.1重量%)のDEN 431エポキシノボラック、62.170g(44.4重量%)のGY−285ビスフェノールFエポキシ、18.340g(13.1重量%)のDY−P希釈剤、および6.162g(4.4重量%)のDY−D希釈剤をフラスコ中で混合した。その混合物を50℃の水浴に入れ、完全に均一になるまで撹拌した。得られた混合物を真空(200〜1000ミリトル)下で脱気して気泡を除去した。
【0193】
16.522gのDETAアミンを133.8gのエポキシ混合物に加え、約10分間撹拌した。得られたコーティング溶液を金属シリンジ中に移した。次にこれを66〜70℃にあらかじめ加熱したシリンダー上にコーティングして、8.65〜9.65(220〜240μm)の厚さのコーティングを得た。シリンダーは、シリンジポンプと並進機構とを併用するブラシ技術を用いて材料を送出することでコーティングして、所望のコーティング厚さを得た。次にコーティングを100℃で1時間硬化させ、次に150℃で1時間硬化させ、徐々に周囲温度まで冷却した。この組成物のコーティングおよび硬化によって、シリンダー上に優れた硬化層が形成された。
【0194】
次にこのシリンダー上の硬化層の機械加工および研磨を行った。次にこの層を、Ohio R−7100シリーズ彫刻機上で、3200Hzのセル速度において、120度のダイヤモンドスタイラスを用いて、CMYK規格に準拠した種々の角度およびlpi密度で電気機械的に彫刻した。次に彫刻したシリンダーを、トルエン系シアンインクによるC1S紙への印刷に使用した。初期の印刷品質は優れていた。約440,000回転(220,000メートル)後、印刷品質は初期印刷と同様に良好であった。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
[1] 印刷版の製造方法であって:
a)無溶剤硬化性組成物を塗布して支持基材上に層を形成するステップであって、前記無溶剤硬化性組成物が:
i)エポキシノボラック樹脂と;
ii)ビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と;
iii)一官能性反応性希釈剤と;
iv)多官能性反応性希釈剤と;
v)化学量論量の多官能性アミン硬化剤と
を含み;
i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で1:3〜3:1となるステップと;
b)前記層を室温から約250℃の範囲内の1つまたは複数の温度で硬化させるステップと;
c)ステップb)で得た前記層中に少なくとも1つのセルを彫刻するステップと
を含む、方法。
[2] 前記層を硬化させるステップが室温で行われる、[1]に記載の方法。
[3] 前記層を硬化させるステップが、前記範囲内の1つの温度で前記層を加熱するステップ、または前記範囲内の2つの温度で前記層を加熱するステップを含む、[1]に記載の方法。
[4] 前記アミン硬化剤が20〜40g/当量のアミン水素当量を有する、[1]に記載の方法。
[5] 前記アミン硬化剤が、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;m−フェニレンジアミン;m−キシリレンジアミン;およびこれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[6] 前記一官能性エポキシ反応性希釈剤が、p−tert−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、およびC8−C14グリシジルエーテルからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[7] 前記多官能性エポキシ反応性希釈剤が、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[8] 前記組成物が促進剤をさらに含む、[1]に記載の方法。
[9] 前記促進剤が、イミダゾール類、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびノニルフェノールからなる群から選択される、[8]に記載の方法。
[10] 前記組成物が、少なくとも1つの寸法が500nm未満であるナノ粒子を最大30重量%でさらに含む、[1]に記載の方法。
[11]前記ナノ粒子が、酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化マグネシウム、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、クレー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素フィラメント、およびこれらの混合物からなる群の少なくとも1つを含む、[10]に記載の方法。
[12] 前記組成物が、少なくとも1つの寸法が500nmを超える充填剤を最大50重量%でさらに含む、[1]に記載の方法。
[13] 前記支持基材が、円筒またはシートの形態である、[1]に記載の方法。
[14] 前記エポキシノボラック樹脂が、312〜1000の分子量および156〜200g/当量のエポキシド当量を有し;前記ビスフェノールAエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂が、312〜1200の分子量および156〜600g/当量のエポキシド当量を有し;前記アミン硬化剤が20〜40g/当量のアミン水素当量を有する、[1]に記載の方法。
[15] 前記硬化性組成物が、イミダゾール類、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびノニルフェノールからなる群から選択される促進剤をさらに含む、[14]に記載の方法。
[16] 少なくとも1つの寸法が500nm未満であり、酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化マグネシウム、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、クレー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素フィラメント、およびそれらの混合物から選択されるナノ粒子を、前記硬化性組成物が最大30重量%でさらに含む、[14]に記載の方法。
[17] 前記硬化性組成物が:
a)約172〜約179g/当量のエポキシド当量を有するエポキシノボラック樹脂と;
b)163〜172g/当量のエポキシド当量を有するビスフェノールFエポキシ樹脂と;
c)ジエチレントリアミン;
d)p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの重量比が約3:1である、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルおよび1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの混合物と
を含み;
前記エポキシノボラック樹脂対前記ビスフェノールFエポキシ樹脂の比が、重量基準で約6:7であり;
p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルおよび1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの混合物d)が、エポキシ/希釈剤成分a)+b)+d)の15〜20重量%である、
[14]に記載の方法。
[18] i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの70〜95重量%となる、[1]に記載の方法。
[19] iii)対iv)の比が、重量基準で4:1〜1:4となる、[1]に記載の方法。
[20] 前記エポキシノボラック樹脂が60℃未満の軟化点を有する、[1]に記載の方法。
[21] 前記ビスフェノール−Aエポキシ樹脂または前記ビスフェノール−Fエポキシ樹脂が60℃未満の軟化点を有する、[1]に記載の方法。
[22] 印刷版を用いたグラビア印刷方法であって:
a)[1]に記載の方法により硬化層を有する前記印刷版を製造するステップと;
b)インクを前記少なくとも1つのセルに塗布するステップと;
c)インクを前記セルから印刷可能な基材に転写するステップとを含み、
前記硬化層が、前記層の重量を基準として≦12%膨潤する、方法。
[23] 支持基材に隣接する連続印刷面を含む印刷版であって、前記連続印刷面が:
i)60℃未満の軟化点を有するエポキシノボラック樹脂と、
ii)60℃未満の軟化点を有するビスフェノール−Aエポキシ樹脂またはビスフェノール−Fエポキシ樹脂と、
iii)一官能性反応性希釈剤と、
iv)多官能性反応性希釈剤と、
v)40g/当量未満のアミン水素当量を有する化学量論量の多官能性アミン硬化剤と
を含む無溶剤硬化性組成物から調製された硬化エポキシ組成物であり;
i)およびii)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも約70重量%となり;i)対ii)の比が重量基準で1:3〜3:1となり;iii)対iv)の比が重量基準で4:1〜1:4となる、印刷版。
[24] iii)およびiv)を合わせたものが、i)、ii)、iii)、およびiv)を合わせたものの少なくとも10重量%となる、[23]に記載の印刷版。
[25] 前記硬化性組成物が最大30重量%のナノ粒子をさらに含む、[23]に記載の印刷版。
[26] 前記硬化性組成物が最大30重量%の充填剤をさらに含む、[23]に記載の印刷版。
[27] 円筒または板の形態である、[23]に記載の印刷版。
[28] 前記基材が金属またはポリマーである、[23]に記載の印刷版。
[29] 前記印刷版がグラビア印刷シリンダーである、[23]に記載の印刷版。
[30] 銅層およびクロム層を有さない、[29]に記載の印刷版。