特許第6063014号(P6063014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063014溶接チップおよびノズルを交換するためのチャック装置、およびロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6063014
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】溶接チップおよびノズルを交換するためのチャック装置、およびロボット
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/26 20060101AFI20170106BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20170106BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20170106BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B23K9/26 Z
   B25J15/08 C
   B23K9/32 Z
   B23K9/29 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-171378(P2015-171378)
(22)【出願日】2015年8月31日
【審査請求日】2016年7月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】五日市 隆
(72)【発明者】
【氏名】犬竹 博
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−149145(JP,A)
【文献】 特開平06−262357(JP,A)
【文献】 特開平07−164147(JP,A)
【文献】 特開平07−132408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00−10/02
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチ本体に螺着された溶接チップと、該溶接チップを環囲するノズルとを交換するためのチャック装置であって、
回転可能に設けられたチャックベースと、
前記チャックベースと一体となって回転するように該チャックベースに固定され、前記溶接チップの外周面に形成された係合面と係合可能な係合部であって、前記係合面と係合した状態で前記チャックベースが回転されたときに前記溶接チップを前記チャックベースともに回転させる、係合部と、
前記チャックベースに開閉可能に設けられ、前記溶接チップおよび前記ノズルの各々を挟持可能な複数の指部であって、前記係合部に対して接近および離反する方向へ移動可能であり、前記係合部に接近する方向へ移動して閉状態となり、前記係合部から離反する方向へ移動して開状態となる、複数の指部と、を備える、チャック装置。
【請求項2】
前記複数の指部は、前記チャックベースの回転軸線を基準として、互いに回転対称となる位置に、配置されている、請求項1に記載のチャック装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記溶接チップを回転不能に受容する穴を画定する壁面を含む、請求項1または2に記載のチャック装置。
【請求項4】
前記チャックベースは、
前記複数の指部および前記係合部が設けられた本体部と、
前記本体部を前記チャックベースの回転軸線に沿って移動可能に支持する支持部と、
前記本体部と前記支持部との間に介挿され、前記回転軸線の方向に伸縮可能な弾性部材と、を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチャック装置。
【請求項5】
前記本体部が、前記支持部から予め定められた距離だけ前記回転軸線の方向に離隔したストローク端位置に配置されたことを検出する位置検出部をさらに備える、請求項4に記載のチャック装置。
【請求項6】
前記複数の指部の開閉を検出する開閉検出部をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のチャック装置。
【請求項7】
前記チャックベースを回転駆動する回転駆動部と、
前記複数の指部を移動させる指部駆動部と、をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のチャック装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のチャック装置と、
前記チャックベースが取り付けられるロボットアームと、を備える、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチ本体に装着された溶接チップおよびノズルを交換するためのチャック装置、およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接トーチ本体に装着された溶接チップおよびノズルの各々を挟持して、溶接トーチ本体に着脱する装置が知られている(例えば、特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−089125号公報
【特許文献2】特開2010−149145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、より効率的に多数の溶接チップおよびノズルの交換を実行可能とする装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様において、溶接トーチ本体に螺着された溶接チップと、該溶接チップを環囲するノズルとを交換するためのチャック装置は、回転可能に設けられたチャックベースを備える。
【0006】
また、チャック装置は、チャックベースと一体となって回転するように該チャックベースに固定され、溶接チップの外周面に形成された係合面と係合可能な係合部であって、係合面と係合した状態でチャックベースが回転されたときに溶接チップをチャックベースともに回転させる、係合部を備える。
【0007】
また、チャック装置は、チャックベースに開閉可能に設けられ、溶接チップおよびノズルの各々を挟持可能な複数の指部であって、係合部に対して接近および離反する方向へ移動可能であり、係合部に接近する方向へ移動して閉状態となり、係合部から離反する方向へ移動して開状態となる、複数の指部を備える。
【0008】
複数の指部は、チャックベースの回転軸線を基準として、互いに回転対称となる位置に、配置されてもよい。係合部は、溶接チップを周方向へ回転不能に受容する穴を画定する壁面を含んでもよい。
【0009】
チャックベースは、複数の指部および係合部が設けられた本体部と、本体部をチャックベースの回転軸線に沿って移動可能に支持する支持部と、本体部と支持部との間に介挿され、回転軸線の方向に伸縮可能な弾性部材とを有してもよい。
【0010】
チャック装置は、本体部が、支持部から予め定められた距離だけ回転軸線の方向に離隔したストローク端位置に配置されたことを検出する位置検出部をさらに備えてもよい。チャック装置は、複数の指部の開閉を検出する開閉検出部をさらに備えてもよい。
【0011】
チャック装置は、チャックベースを回転駆動する回転駆動部と、複数の指部を移動させる指部駆動部とをさらに備えてもよい。本発明の他の態様において、ロボットは、上述のチャック装置と、チャックベースが取り付けられるロボットアームとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットシステムの図である。
図2図1に示すチャック装置の斜視図である。
図3図2に示すチャック装置の要部を拡大した拡大図である。
図4図1に示すロボットシステムのブロック図である。
図5図1に示すロボットシステムの動作フローの一例を示すフローチャートである。
図6図5中のステップS1のフローチャートである。
図7図5中のステップS2のフローチャートである。
図8図7中のステップS22のフローチャートである。
図9図5中のステップS3のフローチャートである。
図10図5中のステップS4のフローチャートである。
図11】チャック装置が溶接トーチ本体の軸方向後方に配置された状態を示す図である。
図12】ノズルが溶接トーチ本体から引き抜かれた状態を示す図である。
図13】溶接チップがアダプタ部に形成された穴内に受容された状態を示す図である。
図14】溶接チップが指部によって挟持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1図4を参照して、本発明の一実施形態に係るロボットシステム10について説明する。
【0014】
なお、以下の説明において、軸方向とは、後述するチャックベース64の回転軸線Oに沿う方向に相当し、便宜上、図中の矢印Bに示す方向を軸方向前方とする。また、径方向とは、軸線Oを中心とした円の半径方向に相当し、周方向とは、軸線Oを中心とした円の円周方向に相当する。
【0015】
ロボットシステム10は、後述する溶接トーチ本体に装着された溶接チップおよびノズルの各々を交換するためのシステムであって、制御部12およびロボット14を備える。制御部12は、例えば、CPU(中央演算処理装置)および記憶部(ともに図示せず)等を有し、ロボット14の各構成要素を、直接的または間接的に制御する。
【0016】
ロボット14は、例えば垂直多関節ロボットであって、ロボットベース16、旋回胴18、ロボットアーム20、およびチャック装置50を備える。ロボットベース16は、ワークセルAの床に固定されている。旋回胴18は、ロボットベース16に鉛直軸周りに旋回可能に取り付けられている。
【0017】
ロボットアーム20は、旋回胴18に回転可能に取り付けられた後腕部22と、該後腕部22の先端に回転可能に取り付けられた前腕部24とを有する。前腕部24の先端には、手首部26が設けられており、チャック装置50は、該手首部26を介して、前腕部24の先端に取り付けられている。
【0018】
制御部12は、ロボットアーム20に内蔵されたサーボモータ(図示せず)に指令を送り、ロボットアーム20を動作させる。チャック装置50は、ロボット14によって移動される。
【0019】
図2に示すように、チャック装置50は、連結部52、主ベース部54、回転駆動部56、ジョイント部58、およびチャック機構60を備える。
【0020】
連結部52は、軸線Oと直交する方向へ延びる円柱状の部材であって、その一端にフランジ部52aが形成され、その他端にフランジ部52bが形成されている。フランジ部52aは、手首部26に連結される一方、フランジ部52bは、主ベース部54の頂壁54aに固定されている。
【0021】
主ベース部54は、頂壁54a、前壁54c、および後壁54dを有する。前壁54cは、頂壁54aの軸方向前方の端縁に固定されている一方、後壁54dは、頂壁54aの軸方向後方の端縁に固定されている。
【0022】
回転駆動部56は、主ベース部54の後壁54dに固定されている。回転駆動部56は、例えばサーボモータを有し、制御部12からの指令に応じ、軸方向に延びるロータ(図示せず)を、軸線Oの周りに(すなわち、周方向へ)回転駆動する。
【0023】
主ベース部54には、前壁54cと後壁54dとの間で延在するロータ収容部62が設けられている。ロータ収容部62は、軸線Oを中心として軸方向に延在する円筒状部材であって、回転駆動部56のロータを回転可能に受容する。
【0024】
ジョイント部58は、主ベース部54の前壁54cに取り付けられている。ジョイント部58は、前壁54cに固定された外筒部58aと、外筒部58aの内部に配置され、軸線O周りに回転可能な回転部(図示せず)とを有する、回転継手である。
【0025】
回転駆動部56のロータは、回転駆動部56から軸方向前方へ延出し、ロータ収容部62の内部を通過して、その軸方向先端にて、ジョイント部58の回転部に連結されている。これにより、回転駆動部56のロータが回転されるとともに、ジョイント部58の回転部が回転される。
【0026】
チャック機構60は、ジョイント部58の回転部に連結されており、回転駆動部56によって、軸線Oの周りに回転駆動される。図3に示すように、チャック機構60は、チャックベース64と、該チャックベース64に開閉可能に設けられた複数の指部66、68、および70と、指部66、68、および70を駆動する指部駆動部71(図4)とを有する。
【0027】
チャックベース64は、支持部72および本体部74を有する。支持部72は、平板状の部材であって、ジョイント部58の回転部に固定されている。本体部74は、支持部72の軸方向前方に配置され、該支持部72に軸方向に移動可能に支持されている。
【0028】
本体部74は、ベース板部76と、ベース板部76の軸方向前方の端面76aから軸方向前方へ突出する三叉状のベースブロック部78と、ベースブロック部78の軸方向前側に固定されたアダプタ部79とを有する。
【0029】
ベースブロック部78は、ベース板部76に一体に固定されており、軸線Oから径方向外側へ向かって各々延在する第1ブロック80、第2ブロック82、および第3ブロック84を有する。
【0030】
第1ブロック80、第2ブロック82、および第3ブロック84は、軸線Oの周りに120°の間隔で周方向に配列されており、軸線Oを基準として互いに回転対称となる位置に、配置されている。
【0031】
指部66は、第1ブロック80の軸方向前方の端面80aに、可動に取り付けられている。具体的には、指部66は、基部66aと、該基部66aから軸方向前方へ延びるアーム部66bと、該アーム部66bの軸方向前端から径方向内側へ突出する爪部66cとを含む。
【0032】
基部66aは、第1ブロック80の延在方向(すなわち、径方向)へ移動可能に端面80aに取り付けられている。これにより、指部66は、回転軸線Oに対して接近および離反する方向へ、移動可能である。
【0033】
指部68は、第2ブロック82の軸方向前方の端面82aに、可動に取り付けられている。具体的には、指部68は、基部(図示せず)と、該基部から軸方向前方へ延びるアーム部68bと、該アーム部68bの軸方向前端から径方向内側へ突出する爪部68cとを含む。
【0034】
指部68の基部は、第2ブロック82の延在方向(すなわち、径方向)へ移動可能に端面82aに取り付けられている。これにより、指部68は、回転軸線Oに対して接近よび離反する方向へ、移動可能である。
【0035】
指部70は、第3ブロック84の軸方向前方の端面84aに、可動に取り付けられている。具体的には、指部70は、基部70aと、該基部70aから軸方向前方へ延びるアーム部70bと、該アーム部70bの軸方向前端から径方向内側へ突出する爪部70cとを含む。
【0036】
基部70aは、第3ブロック84の延在方向(すなわち、径方向)へ移動可能に端面84aに取り付けられている。これにより、指部70は、回転軸線Oに対して接近および離反する方向へ、移動可能である。
【0037】
アダプタ部79は、三又状の部材であって、ベースブロック部78の軸方向前側に配置されている。本実施形態においては、アダプタ部79は、ベースブロック部78とは別体の部材として作製され、計3個のボルト86によって、該ベースブロック部78に着脱可能に取り付けられている。
【0038】
アダプタ部79には、該アダプタ部79の軸方向前方の端面79aから軸方向後方へ凹む穴79bが形成されている。この穴79bは、後述する溶接チップの外周面に形成された係合面に対応する多角形の外形を有しており、該溶接チップを周方向へ回転不能に受容することができる。
【0039】
穴79bは、軸線Oを中心とするように配置され、軸線Oを取り囲むように配置された複数の壁面によって画定されている。これら壁面は、溶接チップが穴79b内に受容されたときに、溶接チップの対応する係合面と係合する。
【0040】
このように、本実施形態においては、穴79bを画定する壁面は、溶接チップの係合面と係合する係合部として機能する。なお、この係合部の機能については、後述する。
【0041】
指部駆動部71は、ベースブロック部78の内部に配置されている。指部駆動部71は、例えばエアシリンダまたはサーボモータであって、制御部12の指令の下、指部66、68、および70を開閉するように移動させる。
【0042】
具体的には、指部駆動部71は、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)に接近するように同期して移動させ、これにより、指部66、68、および70が閉状態となる。
【0043】
また、指部駆動部71は、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)から離反するように同期して移動させ、これにより、指部66、68、および70が開状態となる。
【0044】
このような指部66、68、および70の開閉動作によって、溶接チップおよびノズルの各々を挟持したり、開放したりすることができる。
【0045】
上述したように、支持部72は、本体部74を軸方向へ移動可能に支持している。より具体的には、支持部72には、軸方向に延びる複数の支持シャフト88が固定されている。一方、本体部74のベース板部76には、支持シャフト88を摺動可能に受容する貫通孔(図示せず)が形成されている。この構成により、本体部74は、支持シャフト88に沿って移動可能となるように、支持部72に支持される。
【0046】
支持部72とベース板部76との間には、弾性部材90が介挿されている。弾性部材90は、例えばコイルスプリングを含み、軸方向に伸縮可能である。本体部74が軸方向後方へ押されて、これにより弾性部材90が圧縮された場合、弾性部材90は、その反力として、本体部74を軸方向前方へ付勢する。
【0047】
チャック装置50は、位置検出部92および開閉検出部94(図4)をさらに備える。位置検出部92は、本体部74がストローク端位置に配置されたことを検出する。ここで、ストローク端位置とは、支持部72に対する本体部74の移動ストロークの軸方向前端に相当する位置である。
【0048】
本体部74は、このストローク端位置に配置されているとき、支持部72から予め定められた距離だけ、軸方向前方に離隔して配置される。一例として、本体部74がストローク端位置に配置されているとき、弾性部材90は、圧縮または伸張されておらず、本体部74に対して弾性力を実質付加していない状態となる。
【0049】
位置検出部92は、例えば、変位センサまたは近接スイッチを含み、本体部74がストローク端位置に配置されたときに、位置検出信号を制御部12へ送信する。
【0050】
開閉検出部94は、指部66、68、および70の開閉を検出する。具体的には、開閉検出部94は、変位センサまたは近接スイッチを含み、指部66、68、および70が、閉状態となったときに、閉状態検出信号を制御部12へ送信する一方、指部66、68、および70が、開状態となったときに、開状態検出信号を制御部12へ送信する。
【0051】
ここで、「閉状態」とは、指部66、68、および70が、軸線O(穴79b)に対して、予め定められた距離(例えば10mm)以内に接近した状態を示す。指部66、68、および70は、この閉状態に配置されたとき、後述する溶接チップおよびノズルの各々を挟持することができる。
【0052】
一方、「開状態」とは、指部66、68、および70が、軸線O(穴79b)から予め定められた距離(例えば30mm)以上離反した状態を示す。指部66、68、および70は、この開状態に配置されたとき、溶接チップおよびノズルの各々を解放する。
【0053】
次に、図5図14を参照して、ロボットシステム10の機能について説明する。上述したように、ロボットシステム10は、溶接トーチ本体100に装着された溶接チップ102およびノズル104を交換するためのシステムである。
【0054】
ここで、溶接トーチ本体100の構成について簡単に説明する。溶接トーチ本体100の先端には、溶接チップ102(図12)が螺着されている。溶接チップ102は、軸線O図11)に沿って延在する細長い部材であって、その外周面には、係合面が形成されている。
【0055】
この係合面は、例えば多角形の外形を有する。上述したように、アダプタ部79の穴79bを画定する壁面は、溶接チップ102の係合面に対応する多角形の外形を有し、該係合面と係合可能である。
【0056】
ノズル104は、軸線Oに沿って延在する円筒状部材であって、溶接チップ102を環囲するように、溶接トーチ本体100に取り付けられている。ロボットシステム10によって溶接チップ102およびノズル104を交換する場合、溶接トーチ本体100は、予め定められた場所に設置される。
【0057】
以下、ロボットシステム10の動作フローの一例について説明する。図5に示すフローは、制御部12が、使用者または上位コントローラから、溶接トーチ本体100に装着された溶接チップ102およびノズル104を交換する指令を受け付けたときに、開始する。
【0058】
ステップS1において、制御部12は、使用済みのノズル104を溶接トーチ本体100から取り外すスキームを実行する。このステップS1について、図6を参照して説明する。ステップS1の開始後、ステップS11において、制御部12は、チャック装置50の指部66、68、および70を、使用済みのノズル104の周囲に配置させる。
【0059】
具体的には、制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させ、図11に示すように、チャック装置50の軸線Oとノズル104の軸線Oとが略一致するように、チャック装置50を移動させる。
【0060】
次いで、制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させ、指部66、68、70の爪部66c、68c、70cがノズル104の径方向外側に配置されるように、チャック装置50を、図11に示す位置から軸方向前方へ移動させる。
【0061】
なお、上述のロボットプログラムは、ロボット14に対する動作指令を含むプログラムであって、チャック装置50を移動させるべき経路をロボット14に教示することによって、構築され得る。ロボットプログラムは、制御部12に内蔵された記憶部に予め記憶される。
【0062】
ステップS12において、制御部12は、指部66、68、70を閉状態となるように移動させる。具体的には、制御部12は、指部駆動部71に指令を送り、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)に接近するように、同期して移動させる。
【0063】
ステップS13において、制御部12は、指部66、68、70の移動が完了したか否かを判定する。具体的には、制御部12は、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信したか否かを判定する。
【0064】
制御部12は、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信した(すなわちYES)と判定した場合、ステップS14へ進む。一方、制御部12は、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信していない(すなわちNO)と判定した場合、ステップS13をループする。
【0065】
このステップS13にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は閉状態となって、ノズル104を外側から挟持する。
【0066】
ステップS14において、制御部12は、使用済みのノズル104を溶接トーチ本体100から離脱させる。具体的には、制御部12は、指部66、68、および70を閉状態に維持したまま、ロボット14を動作させて、チャックベース64を軸方向後方へ移動させる。その結果、ノズル104は、溶接トーチ本体100から引き抜かれる。この状態を、図12に示す。
【0067】
ステップS15において、制御部12は、ノズル104を予め定められた廃棄場所へ移動させる。具体的には、制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させ、ノズル104を廃棄場所の上方へ配置させるように、チャック装置50を移動させる。
【0068】
ステップS16において、制御部12は、指部66、68、70を開状態となるように移動させる。具体的には、制御部12は、指部駆動部71に指令を送り、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)から離反するように同期して移動させる。
【0069】
ステップS17において、制御部12は、指部66、68、70の移動が完了したか否かを判定する。具体的には、制御部12は、開閉検出部94から開状態検出信号を受信したか否かを判定する。
【0070】
制御部12は、開閉検出部94から開状態検出信号を受信した(すなわちYES)と判定した場合、図6に示すステップS1を終了し、図5に示すステップS2へ進む。このステップS17にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は開状態となり、指部66、68、および70に挟持されていたノズル104が放出され、廃棄場所へ収容される。
【0071】
一方、制御部12は、開閉検出部94から開状態検出信号を受信していない(すなわちNO)と判定した場合、ステップS17をループする。
【0072】
再度、図5を参照して、ステップS1の後、ステップS2において、制御部12は、使用済みの溶接チップ102を溶接トーチ本体100から取り外すスキームを実行する。このステップS2について、図7を参照して説明する。
【0073】
ステップS2の開始後、ステップS21において、制御部12は、ロボット14を動作させて、図11に示すように、チャック装置50の軸線Oと溶接チップ102の軸線Oとが略一致するように、チャック装置50を移動させる。
【0074】
ステップS22において、制御部12は、チャックベース64に形成された係合部と、溶接チップ102の外周面に形成された係合面とを係合させる。このステップS22について、図8を参照して説明する。
【0075】
ステップS22の開始後、ステップS221において、制御部12は、溶接チップ102の先端に、チャックベース64を押し当てる。具体的には、制御部12は、ロボット14を動作させて、チャックベース64に設けられたアダプタ部79の端面79aが、溶接チップ102の先端に押圧される位置まで、チャック装置50を軸方向前方へ移動させる。
【0076】
ここで、上述したように、アダプタ部79に形成された穴79bは、溶接チップ102の係合面に対応する外形を有しており、溶接チップ102を周方向へ回転不能に受容可能である。
【0077】
したがって、仮に、ステップS221の実行時に、穴79bの外形と溶接チップ102の係合面の外形とが互いに周方向に一致するような配置となっていた場合、溶接チップ102の先端は、アダプタ部79の端面79aに突き当てられることなく、穴79b内に挿入されることになる。
【0078】
その一方で、仮に、ステップS221の実行時に、穴79bの外形と溶接チップ102の係合面の外形とが、互いに周方向にずれているような配置となっていた場合、溶接チップ102の先端は、アダプタ部79の端面79aに突き当てられ、これにより、アダプタ部79の端面79aに押圧されることになる。
【0079】
そうすると、アダプタ部79が、溶接チップ102の先端によって軸方向後方へ相対的に押されることになり、本体部74が支持部72へ向かって変位する。その結果、弾性部材90が軸方向に圧縮されて、その反力として、本体部74を軸方向前方へ付勢することになる。こうして、アダプタ部79の端面79aは、弾性部材90による弾性力等によって、溶接チップ102の先端に押圧されることになる。
【0080】
ステップS222において、制御部12は、本体部74が、ストローク端位置に配置されているか否かを判定する。具体的には、制御部12は、位置検出部92から位置検出信号を受信したか否かを判定する。
【0081】
制御部12は、位置検出部92から位置検出信号を受信した(すなわちYES)と判定した場合、図8に示すフローを終了する。例えば、ステップS221の終了時に、溶接チップ102が穴79b内に挿入された場合、本体部74は、溶接チップ102によって押されて変位することがないので、ストローク端位置に配置されたままの状態となる。
【0082】
したがって、この場合は、このステップS222においてYESと判定されることになる。このとき、溶接チップ102は、穴79b内に相対回転不能に受容され、穴79bを画定する壁面が、溶接チップ102の係合面と係合する。
【0083】
一方、制御部12は、位置検出部92から位置検出信号を受信していない(すなわちNO)と判定した場合、ステップS223へ進む。
【0084】
例えば、ステップS221の終了時に、溶接チップ102が、穴79b内に挿入されず、アダプタ部79の端面79aに押し当てられている場合、本体部74は、支持部72へ向かって変位し、ストローク端位置よりも軸方向後方に配置されることになる。したがって、この場合、位置検出部92が位置検出信号を発信しないので、このステップS222においてNOと判定される。
【0085】
ステップS223において、制御部12は、チャックベース64を軸線Oの周りに回転させる。具体的には、制御部12は、回転駆動部56に指令を送り、チャック機構60を周方向へ回転させる。
【0086】
チャック機構60が回転された結果、アダプタ部79の穴79bの外形と溶接チップ102の係合面の外形とが互いに周方向に一致した場合、本体部74が弾性部材90による付勢力によって軸方向前方へ変位し、溶接チップ102が穴79b内に受容される。そして、本体部74は、ストローク端位置に再度配置されることになる。
【0087】
ステップS224において、制御部12は、上述のステップS222と同様に、位置検出部92から位置検出信号を受信したか否かを判定する。制御部12は、YESと判定した場合、S225へ進む。
【0088】
例えば、ステップS223において溶接チップ102が穴79b内に受容された場合は、このステップS224にてYESと判定されることになる。一方、制御部12は、NOと判定した場合、ステップS224をループする。
【0089】
ステップS225において、制御部12は、チャックベース64の回転を停止する。具体的には、制御部12は、回転駆動部56の動作を停止し、これにより、チャックベース64の回転を停止する。図8に示すステップS22によって、溶接チップ102は、アダプタ部79の穴79b内に相対回転不能に受容される。この状態を、図13に示す。
【0090】
再度、図7を参照して、ステップS22の後、ステップS23において、制御部12は、溶接トーチ本体100と溶接チップ102との間の締結を緩める。具体的には、制御部12は、回転駆動部56に指令を送り、チャック機構60を軸線Oの周りに、溶接トーチ本体100と溶接チップ102との間の締結を緩める方向へ、回転させる。
【0091】
チャック機構60が回転されると、溶接チップ102の係合面と穴79bの壁面との係合によって、溶接チップ102も、チャック機構60と一体となって回転され、これにより、溶接トーチ本体100と溶接チップ102との間の締結が緩められる。
【0092】
このステップS23において、制御部12は、溶接チップ102が溶接トーチ本体100から完全に離脱しない程度に、チャック機構60を予め定められた回転数だけ回転させる。この予め定められた回転数は、使用者によって設定され、制御部12の記憶部に予め記憶され得る。
【0093】
ステップS24において、制御部12は、チャック装置50の指部66、68、および70を、溶接チップ102の周囲に配置させる。具体的には、制御部12は、ロボット14を動作させ、図13に示す位置から、チャック装置50を軸方向後方へ移動させて、指部66、68、70の爪部66c、68c、70cを、溶接チップ102の径方向外側に配置させる。
【0094】
ステップS25において、制御部12は、ステップS12と同様に、指部駆動部71に指令を送り、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)に接近するように、同期して移動させる。
【0095】
ステップS26において、制御部12は、上述のステップS13と同様に、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信したか否かを判定する。開閉検出部94から閉状態検出信号を受信した(すなわちYES)と判定した場合、ステップS27へ進む。
【0096】
一方、制御部12は、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信していない(すなわちNO)と判定した場合、ステップS26をループする。このステップS26にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は閉状態となって、溶接チップ102を外側から挟持する。この状態を、図14に示す。
【0097】
ステップS27において、制御部12は、溶接チップ102を溶接トーチ本体100から離脱させる。具体的には、制御部12は、回転駆動部56に指令を送り、チャック機構60を軸線Oの周りに、溶接トーチ本体100と溶接チップ102との間の締結を緩める方向へ回転させる。その結果、溶接チップ102は、指部66、68、および70によって挟持された状態で回転され、溶接トーチ本体100から取り外される。
【0098】
ステップS28において、制御部12は、取り外された溶接チップ102を、予め定められた廃棄場所へ移動させる。具体的には、制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させ、溶接チップ102を廃棄場所の上方へ配置させるように、チャック装置50を移動させる。
【0099】
ステップS29において、制御部12は、上述のステップS16と同様に、指部66、68、70を開状態となるように移動させる。
【0100】
ステップS30において、制御部12は、上述のステップS17と同様に、指部66、68、70の移動が完了したか否かを判定する。制御部12は、YESと判定した場合、図7に示すステップS2を終了し、図5に示すステップS3へ進む。
【0101】
このステップS30にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は開状態となり、指部66、68、および70に挟持されていた溶接チップ102が放出され、廃棄場所へ収容される。一方、制御部12は、NOと判定した場合、ステップS30をループする。
【0102】
再度、図5を参照して、ステップS2の後、ステップS3において、制御部12は、新しい溶接チップを溶接トーチ本体100に装着するスキームを実行する。このステップS3について、図9を参照して説明する。
【0103】
ステップS3の開始後、ステップS31において、制御部12は、チャック装置50の指部66、68、および70を、新しい溶接チップ(図示せず)の周囲に配置させる。ここで、新しい溶接チップは、予め定められた場所に設置されている。
【0104】
制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させ、指部66、68、70の爪部66c、68c、70cが、新しい溶接チップの径方向外側に配置されるように、チャック装置50を移動させる。
【0105】
ステップS32において、制御部12は、上述のステップS25と同様に、指部駆動部71に指令を送り、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)に接近するように、同期して移動させる。
【0106】
ステップS33において、制御部12は、上述のステップS26と同様に、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信したか否かを判定する。開閉検出部94から閉状態検出信号を受信した(すなわちYES)と判定した場合、ステップS34へ進む。
【0107】
一方、制御部12は、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信していない(すなわちNO)と判定した場合、ステップS33をループする。このステップS33にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は閉状態となって、新しい溶接チップを外側から挟持する。
【0108】
ステップS34において、制御部12は、挟持した溶接チップを、溶接トーチ本体100に対して位置決めする。具体的には、制御部12は、ロボット14を動作させて、新しい溶接チップに形成された螺子端部が、溶接トーチ本体100に形成された螺子穴に配置されるように、チャック装置50を移動させる。
【0109】
ステップS35において、制御部12は、新しい溶接チップを溶接トーチ本体100に仮止めする。具体的には、制御部12は、回転駆動部56に指令を送り、チャック機構60を軸線Oの周りに、新しい溶接チップの螺子端部が溶接トーチ本体100の螺子穴に回し込まれる方向へ、回転させる。
【0110】
このとき、制御部12は、新しい溶接チップが溶接トーチ本体100に堅く締結されない程度に、チャック機構60を予め定められた回転数だけ回転させる。この予め定められた回転数は、使用者によって設定され、制御部12の記憶部に予め記憶され得る。
【0111】
ステップS36において、制御部12は、上述のステップS29と同様に、指部66、68、70を開状態となるように移動させる。その結果、指部66、68、および70が、新しい溶接チップから径方向外側へ離反する。
【0112】
ステップS37において、制御部12は、上述のステップS30と同様に、指部66、68、70の移動が完了したか否かを判定する。制御部12は、YESと判定した場合、図9中のステップS22へ進む。一方、制御部12は、NOと判定した場合、ステップS37をループする。
【0113】
ステップS37にてYESと判定されたとき、制御部12は、上述のステップS22を実行する。これにより、新しい溶接チップは、アダプタ部79の穴79b内に相対回転不能に受容される。
【0114】
ステップS22の後、ステップS38において、制御部12は、新しい溶接チップを溶接トーチ本体100に締結する。具体的には、制御部12は、回転駆動部56に指令を送り、新しい溶接チップの螺子端部が、溶接トーチ本体100の螺子穴に堅く締結されるまで、チャック機構60を周方向へ回転させる。このように、図9に示すステップS3によって、新しい溶接チップは、溶接トーチ本体100に締結される。
【0115】
再度、図5を参照して、ステップS3の後、ステップS4において、制御部12は、新しいノズルを溶接トーチ本体100に装着するスキームを実行する。このステップS4について、図10を参照して説明する。
【0116】
ステップS4の開始後、ステップS41において、制御部12は、チャック装置50の指部66、68、および70を、新しいノズル(図示せず)の周囲に配置させる。ここで、新しいノズルは、予め定められた場所に設置されている。
【0117】
制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させ、指部66、68、70の爪部66c、68c、70cが、新しいノズルの径方向外側に配置されるように、チャック装置50を移動させる。
【0118】
ステップS42において、制御部12は、上述のステップS32と同様に、指部駆動部71に指令を送り、指部66、68、および70を、回転軸線O(すなわち、穴79b)に接近するように、同期して移動させる。
【0119】
ステップS43において、制御部12は、上述のステップS33と同様に、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信したか否かを判定する。開閉検出部94から閉状態検出信号を受信した(すなわちYES)と判定した場合、ステップS44へ進む。
【0120】
一方、制御部12は、開閉検出部94から閉状態検出信号を受信していない(すなわちNO)と判定した場合、ステップS43をループする。このステップS43にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は閉状態となって、新しいノズルを外側から挟持する。
【0121】
ステップS44において、制御部12は、新しいノズルを溶接トーチ本体100に対して位置決めする。具体的には、制御部12は、ロボットプログラムに従ってロボット14を動作させて、チャック装置50の軸線Oと、溶接トーチ本体100に装着された新しい溶接チップの軸線Oとが互いに一致するように、チャック装置50を移動させる。
【0122】
ステップS45において、制御部12は、新しいノズルを溶接トーチ本体100に装着する。具体的には、制御部12は、ロボット14を動作させて、チャック装置50を軸方向前方へ移動させる。これにより、指部66、68、70に挟持された新しいノズルが、溶接トーチ本体100に押し込まれて装着される。
【0123】
ステップS46において、制御部12は、上述のステップS29と同様に、指部66、68、70を開状態となるように移動させる。
【0124】
ステップS47において、制御部12は、上述のステップS30と同様に、指部66、68、70の移動が完了したか否かを判定する。制御部12は、YESと判定した場合、ステップS4を終了し、以って、図5に示すフローを終了する。
【0125】
ステップS47にてYESと判定されたとき、指部66、68、および70は、新しいノズルから径方向外側へ離反し、これにより、新しいノズルを解放する。一方、制御部12は、NOと判定した場合、ステップS47をループする。
【0126】
このように、図10に示すステップS4によって、新しいノズルが、新しい溶接チップを環囲するように、溶接トーチ本体100に装着される。
【0127】
上述のように、本実施形態においては、チャック装置50は、溶接チップ102を挟持可能な指部66、68、70と、溶接チップ102の係合面と係合可能な係合部(すなわち、穴79b)とを、双方とも具備している。
【0128】
この構成によれば、使用済みの溶接チップ102を溶接トーチ本体100から取り外す動作と、取り外した溶接チップ102を所定の廃棄場所まで運搬する動作とを、1つのチャック装置50によって連続的に実行することが可能となる。
【0129】
また、所定の場所から新しい溶接チップを運搬する動作と、該新しいチップを溶接トーチ本体100に装着する動作とを、1つのチャック装置50によって連続的に実行することが可能となる。
【0130】
同様に、使用済みのノズル104を溶接トーチ本体100から取り外して所定の廃棄場所まで運搬する動作と、所定の場所から新しいノズルを運搬して溶接トーチ本体100に装着する動作とを、1つのチャック装置50によって連続的に実行することが可能となる。
【0131】
したがって、多数の溶接チップおよびノズルの交換を高効率に実行することができるので、交換工程のサイクルタイムを縮減することができる。
【0132】
また、本実施形態によれば、上述のような複数の動作を1つのチャック装置50によって実行できるので、例えば、溶接チップまたはノズルを運搬するための装置等を別途設ける必要がない。このため、装置を簡単化することができるので、チャック装置50に掛かるコストを低減できる。
【0133】
また、本実施形態においては、指部66、68、70が軸線Oを基準として互いに回転対称となる位置に配置されている。また、アダプタ部79に形成された係合部(穴79b)が、軸線Oを中心とするように配置されている。
【0134】
この構成によれば、ステップS23にて係合部(穴79b)によって溶接チップ102を緩めた後、ステップS24を実行するときに、制御部12は、チャックベース64を軸方向に移動するだけでよい。したがって、チャックベース64の移動量を小さくすることができるとともに、このような動作を実行させるロボットプログラムも簡単化することができる。
【0135】
また、本実施形態においては、本体部74が支持部72に可動に支持され、且つ、本体部74と支持部72との間には、弾性部材90が介挿されている。この構成によれば、ステップS22のような動作を実行することによって、溶接チップ102を係合部(穴79b)と確実に係合させることができる。
【0136】
また、本実施形態によれば、制御部12は、位置検出部92から送信される位置検出信号に基づいて、溶接チップ102と係合部とが係合したか否かを判断できる。これにより、制御部12は、ステップS22の動作を自動的且つ迅速に実行することができる。
【0137】
なお、上述の実施形態においては、チャック装置50がロボット14によって移動される場合について述べた。しかしながら、これに限らず、他の運搬装置または手動で移動されてもよい。
【0138】
また、上述の実施形態においては、制御部12が、ロボット14を制御するロボットコントローラとして構成された場合について述べた。しかしながら。これに限らず、制御部は、例えば工作機械を制御する工作機械コントローラとして構成されてもよい。または、制御部は、ロボットコントローラおよび工作機械コントローラとは別の要素として構成されてもよい。
【0139】
また、上述の実施形態においては、開閉検出部94が、指部66、68、および70が、軸線O(穴79b)に予め定められた距離(例えば10mm)以内に接近した場合に、制御部12へ閉状態検出信号を送信するように構成された場合について述べた。
【0140】
しかしながら、これに限らず、開閉検出部94は、指部66、68、および70の軸線O(穴79b)に対する距離を計測し、該距離に係るデータを制御部12へ送信してもよい。この場合において、制御部12は、ステップS13,26,33,43において、該距離が予め定められた閾値よりも小さくなったときに、YESと判断してもよい。
【0141】
また、開閉検出部94は、ノズルを挟持するとき(ステップS13,S43)に用いられる第1の開閉検出部と、溶接チップを挟持するとき(ステップS26,S33)に用いられる第2の開閉検出部とを有していてもよい。
【0142】
この場合において、第1の開閉検出部は、指部66、68、および70が、軸線O(穴79b)に予め定められた第1の距離(例えば12mm)以内に接近した場合に、制御部12へ閉状態検出信号を送信するように構成されてもよい。
【0143】
一方、第2の開閉検出部は、指部66、68、および70が、軸線O(穴79b)に予め定められた第2の距離(例えば8mm)以内に接近した場合に、制御部12へ閉状態検出信号を送信するように構成されてもよい。
【0144】
また、上述の実施形態においては、アダプタ部79がベースブロック部78とは別体である場合について述べた。しかしながら、これに限らず、アダプタ部79がベースブロック部78に一体に設けられてもよいし、穴79bを、ベースブロック部78に直接形成してもよい。この場合、穴79bは、ベースブロック部78の軸方向前方の端面から内方へ凹むように、形成され得る。
【0145】
また、溶接チップ102の係合面と係合する係合部としては、穴79bのみならず、複数の凸部であってよい。例えば、アダプタ部79は、端面79aから軸方向前方へ突出し、周方向へ整列する複数の凸部を有し得る。
【0146】
これら凸部の各々は、溶接チップ102がチャックベース64に対して周方向に回転不能となるように、溶接チップ102の係合面と係合する。この場合において、これら凸部は、軸線Oを基準として、互いに回転対称となる位置に配置されてもよい。
【0147】
また、上述の実施形態においては、支持部72と本体部74との間に弾性部材90を介挿し、本体部74を軸方向前方へ付勢する場合について述べた。しかしながら、弾性部材90の代わりに、例えば磁石を適用し、磁力によって本体部74を軸方向前方へ付勢してもよい。
【0148】
また、上述の実施形態においては、計3個の指部66、68、および70が設けられる場合について述べた。しかしながら、2個、または4個以上の指部が設けられてもよい。
【0149】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0150】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」、「次いで」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0151】
10 ロボットシステム
12 制御部
14 ロボット
50 チャック装置
64 チャックベース
66,68,70 指部
【要約】
【課題】より効率的に多数の溶接チップおよびノズルの交換を実行可能とする装置が求められている。
【解決手段】チャック装置50は、回転可能に設けられたチャックベース64と、チャックベース64と一体となって回転するように該チャックベース64に固定され、溶接チップの係合面と係合可能な係合部であって、係合面と係合した状態でチャックベース64が回転されたときに溶接チップをチャックベース64ともに回転させる、係合部と、チャックベース64に開閉可能に設けられ、溶接チップおよびノズルの各々を挟持可能な複数の指部66,68,70であって、係合部に対して接近および離反する方向へ移動可能であり、係合部に接近する方向へ移動して閉状態となり、係合部から離反する方向へ移動して開状態となる、複数の指部66,68,70とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14