【実施例】
【0105】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0106】
以下に説明する実施例において、硫酸化反応の停止は、酢酸または塩酸を添加して硫酸化反応溶液をpH6〜8に中和することにより行った。
【0107】
以下に説明する実施例において、添加した硫酸化剤の量における当量は、モル当量を意味する。
【0108】
以下に説明する実施例において使用したGAGのうち、HAとCSは市販品(生化学工業社製)を使用し、それら以外のGAG(CH、dCH、NAH)は以下に説明する<参考例1>〜<参考例3>に記載の方法に従って調製したものを使用した。
【0109】
<参考例1>コンドロイチンの調製
コンドロイチン(CH)は、公知の文献(特表2013−520995号公報)に記載の方法に従い、大腸菌MSC702株(大腸菌W3110株(ATCC 27325)に、大腸菌K4株のkfoA、kfoB、kfoC、kfoF、kfoG遺伝子を各4コピー、大腸菌K4株のkpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsC、kpsS、kpsM、kpsT遺伝子を各1コピー、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のxylS遺伝子を1コピー導入して構築)を培養し、培養上清を精製して得た。
【0110】
<参考例2>脱硫酸化コンドロイチン硫酸の調製
脱硫酸化コンドロイチン硫酸(dCH)は、公知の文献(J. Am. Chem. Soc., 1957, 79 (1), pp 152-153)に記載の方法に従い、コンドロイチン硫酸C(CSC)を脱硫酸化して得た。dCHの調製手順を以下に示す。
【0111】
メタノール塩酸溶液(メタノール93mLに塩化アセチルを7mL添加して調製)にCSC(サメ軟骨由来、生化学工業社製)を10g添加し、マグネチックスターラー(以下単に「スターラー」という。)で20時間撹拌した後、遠心分離して沈殿を回収した。この沈殿を100mLの精製水に溶解し、NaOH水溶液を添加して中和した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液を凍結乾燥して得た乾燥粉末に0.1M NaOHを添加し、20g/Lとなるように調製した溶液をスターラーで一晩撹拌した。この溶液にHClを添加して中和した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液を凍結乾燥してdCHの凍結乾燥品を得た。このようにして得られたdCHは、二糖組成比において、CH−0Sが99.8%かつCH−6Sが0.2%であり、他の二糖は検出されないGAGであった。
【0112】
<参考例3>N−アセチルヘパロサンの調製
N−アセチルヘパロサン(NAH)は、公知の文献(特開2004−018840号公報)に記載の方法に従い、大腸菌K5株(Serotype O10:K5(L):H4, ATCC 23506)を培養し、培養上清を精製して得た。
【0113】
<参考例4>グリコサミノグリカンの分子量測定(1)
CH、硫酸化CH、HPN、硫酸化HPNの分子量は、以下の条件に従ったゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量である。
【0114】
CH、硫酸化CH、HPN、硫酸化HPNの分子量の測定は、カラムとしてTSKgelのG4000PWXL、G3000PWXL、G2500PWXL(内径:7.8mm×長さ:300mm、東ソー社製)を順に連結して用い、カラム温度を40℃に設定して行った。移動相には0.2M NaClを用い、流速は0.6mL/minとした。検出は示差屈折率検出器で行い、分子量は1mg/mLに溶解した試料を100μLアプライして得られるピークの保持時間から較正曲線を用いて算出した。較正曲線は、CSC(サメ軟骨由来、生化学工業社製)を段階的にエタノール分画して調製し、静的光散乱法(SLS)により絶対分子量を測定した標準品(分子量:52.2kDa、31.4kDa、20.0kDa、10.2kDa、6.57kDa)を用いて作成した。
【0115】
<参考例5>グリコサミノグリカンの分子量測定(2)
HA、硫酸化HAの分子量は、以下の条件に従ったゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量である。
【0116】
HA、硫酸化HAの分子量の測定は、カラムとしてUltrahydrogel Linear(内径:7.8mm×長さ:300mm、Waters社製)を用い、カラム温度を40℃に設定して行った。移動相には0.2M NaClを用い、流速は0.6mL/minとした。検出は示差屈折率検出器で行い、分子量は1mg/mLに溶解した試料を50μLアプライして得られるピークの保持時間から較正曲線を用いて算出した。較正曲線はプルラン(5.9kDa、11.8kDa、22.8kDa、47.3kDa、112kDa、212kDa、404kDa、788kDa、1.22MDa、2.35MDa、昭和電工社製)を用い、公知文献(Yomota C, Miyazaki T, Okada S., Kokuritsu Iyakuhin Shokuhin Eisei Kenkyusho Hokoku. 1999; 117: 135-9.)に記載の方法に従ったマークホーインク補正を行って作成した。マークホーインク補正は、流体力学的体積が固有粘度[η]と重量平均分子量[Mw]の積の値に比例すること、言い換えると、ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて同一の溶出位置(保持時間)を示す2種類の高分子ポリマーにおいては[η]と[Mw]の積の値が等しくなること、を利用して異種ポリマー間の分子量を補正する方法である。よって、マークホーインク補正を行うことにより、例えば、プルランを標準試料とした場合においても、HAや硫酸化HAの分子量を測定することができる。マークホーインク補正は、プルランは下記の式1で示される数式を、HAは下記の式2で示される数式を用いて、固有粘度[η]をそれぞれ算出して行った。
【0117】
【数1】
【0118】
【数2】
【0119】
上記の数式において、Mwは各物質の重量平均分子量を示す。マークホーインク補正は、HPLCシステム(Prominence GPC、島津製作所社製)に付属のソフトウェアを用いて行った。
【0120】
<参考例6>硫酸化コンドロイチンの組成分析
硫酸化CHの組成分析は、硫酸化CHを酵素で分解して得られる二糖の組成分析(以下「二糖分析」という。)により行った。二糖の検出は、HPLCポストカラム誘導体化法により行った。硫酸化CHの二糖分析の手順を以下に示す。
【0121】
(1)硫酸化コンドロイチンの分解
硫酸化CHに精製水を添加して10mg/mLとなるように調製した溶液に対し、1/2容量の100mM Tris−HCl(pH7.4)と1/2容量のコンドロイチナーゼ溶液(コンドロイチナーゼABC(生化学工業社製)に0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加して0.1U/μLとなるように調製)を添加した溶液を37℃で3時間静置した。この溶液を沸騰水中に1分間静置した後、4倍容の精製水を添加した溶液を遠心ろ過デバイス(マイクロコン−10、ミリポア社製)にアプライし、遠心後のろ液を二糖分析用の試料として回収した。
【0122】
(2)HPLCポストカラム誘導体化法による分析
二糖分析は、カラムとしてSenshu Pak DOCOSIL SP100(内径:4.6mm×長さ:150mm、センシュー科学社製)を用い、カラム温度を55℃に設定して行った。溶離液には溶媒A(精製水)、溶媒B(200mM NaCl)、溶媒C(10mMテトラブチルアンモニウム)、溶媒D(50%アセトニトリル)をオンライン混合した溶液を用い、流速は1.1mL/minとした。カラムの溶出液と0.7mL/minで送液した誘導体化試薬の溶液(0.5% 2−シアノアセトアミドと0.25M NaOHを1:1の割合でオンライン混合させた溶液)を三方ジョイントに通して混合させた後、この混合液を反応コイル(内径:0.5mm×長さ:10m)、冷却コイル(内径:0.25mm×長さ:3m)、蛍光検出器の順に通液させた。反応コイルは、125℃に加温して使用した。冷却コイルは、室温の蒸留水に浸して使用した。蛍光検出器は、励起波長を346nmに、蛍光波長を410nmに設定して使用した。
【0123】
溶離はリニアグラディエントにより行い、溶媒Bの混合比率を分析開始後から10分後までの間に1%から4%に増加させ、10分後から11分後までの間に4%から15%に増加させ、11分後から20分後までの間に15%から25%に増加させ、20分後から22分後までの間に25%から53%に増加させ、22分後から29分後までの間は53%で維持させた。また、溶媒Cと溶媒Dは混合比率の変更を行わず、溶媒Cの混合比率は12%、溶媒Dの混合比率は17%で維持させた。
【0124】
(3)二糖組成の比率の算出
二糖組成の比率(以下「二糖組成比」という。)は、上記(1)で調製した試料を10μLアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いて各二糖のモル数を算出し、各二糖のモル数を全二糖のモル数を総和した値で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料としてコンドロイチン硫酸由来の不飽和二糖(ΔDi−0S(以下「0S」という。)、ΔDi−6S(以下「6S」という。)、ΔDi−4S(以下「4S」という。)、ΔDi−2S(以下「2S」という。)、ΔDi−diS
D(以下「diS
D」という。)、ΔDi−diS
E(以下「diS
E」という。)、ΔDi−triS(以下「triS」という。)、いずれも生化学工業社製)を用いて作成した。
【0125】
<参考例7>硫酸化コンドロイチンの硫酸化度の算出
硫酸化CHの硫酸化度は、上記<参考例6>で算出した二糖組成比を下記の式3で示される数式に代入して算出した。
【0126】
【数3】
【0127】
上記の数式において、S
1は6S、4S、2Sの二糖組成比の合計を、S
2はdiS
D、diS
Eの二糖組成比の合計を、S
3はtriSの二糖組成比をそれぞれ示す。
【0128】
<参考例8>硫酸化ヒアルロン酸の硫酸化度の測定
硫酸化HAの硫酸化度は、硫酸化HAを酸加水分解して得られる試料を測定対象としたキャピラリー電気泳動により測定した。具体的には、硫酸化HAを酸加水分解して得られる試料に含まれるグルコサミン(GlcN)と硫酸イオンのモル濃度をキャピラリー電気泳動により測定し、硫酸イオンのモル濃度をGlcNのモル濃度で除した値を百分率換算して硫酸化度を算出した。硫酸化HAの硫酸化度測定の手順を以下に示す。
【0129】
(1)グリコサミノグリカンの分解
硫酸化HAに精製水を添加して1mg/mLとなるように調製した溶液に対し、3倍容の6N HClを添加した溶液を115℃で3時間静置して酸加水分解した。この溶液を遠心エバポレーターに供して乾固させた後、硫酸化HAに添加した時と等量の精製水を添加して再溶解した。この溶液を遠心して不溶物を沈殿させた後、上清をGlcNと硫酸イオンのモル濃度測定用の試料として回収した。
【0130】
(2)キャピラリー電気泳動による分析
GlcNと硫酸イオンのモル濃度の測定は、キャピラリーとしてUncoated fused silica capillary(内径:50μm×長さ:104cm、アジレント社製)を用い、温度を25℃に設定して行った。移動相にはBasic Anion Buffer(アジレント社製)を用い、印加電圧を−30kVに設定した。検出は分光光度検出器で行い、測定波長を350nm、対照波長を230nmに設定した。
【0131】
(3)硫酸化度の算出
硫酸化度は、上記(1)で調製した試料を100mbarで8秒間加圧してアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いてGlcNと硫酸イオンのモル濃度を算出し、硫酸イオンのモル濃度をGlcNのモル濃度で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料としてGalNAcと硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)を用い、上記(1)に従った酸加水分解等の処理に供した後の試料を用いて作成した。
【0132】
<参考例9>硫酸化グリコサミノグリカンの硫黄含量の算出
硫酸化GAGの硫黄含量は、硫酸化度を下記の式4で示される数式に代入して算出した。
【0133】
【数4】
【0134】
上記の数式において、0Sの分子量は379.3、SO
3の分子量は80.1、硫黄の原子量は32.1とした。
【0135】
<参考例10>硫酸化ヒアルロン酸の組成分析
硫酸化HAの組成分析は、硫酸化HAを酵素で分解して得られる二糖の組成分析(二糖分析)により行った。硫酸化HAの二糖分析の手順を以下に示す。
【0136】
(1)硫酸化ヒアルロン酸の分解
硫酸化HAに精製水を添加して10mg/mLとなるように調製した溶液に対し、1/2容量の100mM Tris−HCl(pH7.4)と1/2容量のコンドロイチナーゼ溶液(コンドロイチナーゼABC(生化学工業社製)に0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加して0.1U/μLとなるように調製)を添加した溶液を37℃で3時間静置した。この溶液を沸騰水中に1分間静置した後、4倍容の精製水を添加した溶液を遠心ろ過デバイス(マイクロコン−10、ミリポア社製)にアプライし、遠心後のろ液を二糖分析用の試料として回収した。
【0137】
(2)HPLC分析
二糖分析は、カラムとしてUK−Amino(内径:4.6mm×長さ:150mm、センシュー科学社製)を用い、カラム温度を60℃に設定して行った。溶離液には、溶媒A(精製水)、溶媒B(0.8M NaH
2PO
4)をオンラインで混合した溶液を用い、流速は1mL/minとした。検出は分光光度検出器で行い、測定波長を232nmに設定した。
【0138】
溶離はリニアグラディエントにより行い、溶媒Bの混合比率を分析開始後から20分後までの間に2%から65%に増加させた。
【0139】
(3)二糖組成比の比率の算出
二糖組成比は、上記(1)で調製した試料を10μLアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いて各二糖のモル数を算出し、各二糖のモル数を全二糖のモル数を総和した値で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料として硫酸化ヒアルロン酸由来の不飽和二糖(ΔDiHA−0S(以下「0S」という。)、ΔDiHA−6S(以下「6S」という。)、ΔDiHA−4S(以下「4S」という。)、ΔDiHA−2S(以下「2S」という。))を用いて作成した。硫酸化ヒアルロン酸由来の不飽和二糖は、本発明の硫酸化方法により硫酸化したHAを上記(1)の方法により二糖に分解した後、陰イオン交換およびゲルろ過クロマトグラフィーを行って調製し、質量分析およびNMRによって硫酸基の結合位置を同定したものを使用した。
【0140】
<参考例11>硫酸化ヘパロサンの組成分析
硫酸化ヘパロサンの組成分析は、硫酸化ヘパロサンを酵素で分解して得られる二糖の組成分析(二糖分析)により行った。二糖の検出は、HPLCポストカラム誘導体化法により行った。硫酸化ヘパロサンの二糖分析の手順を以下に示す。
【0141】
(1)硫酸化ヘパロサンの分解
硫酸化ヘパロサンに精製水を添加して10mg/mLとなるように調製した溶液に対し、1/2容量の20mM酢酸ナトリウム水溶液(pH7.0)/2mM酢酸カルシウムと1/2容量のEMII溶液(3mU/μL ヘパリチナーゼI、2mU/μL ヘパリチナーゼII、5mU/μL ヘパリナーゼ(いずれも生化学工業社製)となるように0.1%BSAを添加して調製)を添加した溶液を37℃で3時間静置した。この溶液を沸騰水中に1分間静置した後、4倍容の精製水を添加した溶液を遠心ろ過デバイス(マイクロコン−10、ミリポア社製)にアプライし、遠心後のろ液を二糖分析用の試料として回収した。
【0142】
(2)HPLCポストカラム誘導体化法による分析
二糖分析は、<参考例6>の「(2)HPLCポストカラム誘導体化法による分析」に記載の方法と同じ条件により行った。
【0143】
(3)二糖組成比の比率の算出
二糖組成比は、上記(1)で調製した試料を10μLアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いて各二糖のモル数を算出し、各二糖のモル数を全二糖のモル数を総和した値で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料としてヘパリンまたはヘパラン硫酸由来の不飽和二糖(ΔDiHS−0S(以下「0S」という。)、ΔDiHS−NS(以下「NS」という。)、ΔDiHS−6S(以下「6S」という。)、ΔDiHS−diS
1(以下「diS
1」という。)、ΔDiHS−diS
2(以下「diS
2」という。)、ΔDiHS−triS(以下「triS」という。)、いずれも生化学工業社製)を用いて作成した。
【0144】
<参考例12>アルキル化された硫酸化コンドロイチンの硫黄含量の算出
アルキル化された硫酸化CHの硫黄含量は、当該硫酸化CHを酸加水分解して得られる試料を測定対象としたキャピラリー電気泳動により測定した。具体的には、アルキル化された硫酸化CHを酸加水分解して得られる試料に含まれる硫酸イオンのモル濃度をキャピラリー電気泳動により測定した後、下記の式5で示される数式により硫黄含量を算出した。
【数5】
【0145】
上記の式において、硫黄の原子量は32.1、硫酸イオンの分子量は96.1とした。また、上記の式において、GAGの濃度は、アルキル化された硫酸化CHの乾燥重量を試料溶液の液量で除した値である。
【0146】
上記の方法において、酸加水分解とキャピラリー電気泳動による測定は、<参考例8>に記載の方法と同じ条件により行った。
【0147】
<参考例13>硫酸化ヘパロサンの硫酸化度の算出
硫酸化HPNの硫酸化度は、上記<参考例11>で算出した二糖組成比を下記の式6で示される数式に代入して算出した。
【0148】
【数6】
【0149】
上記の数式において、S
1はNS、6S、2Sの二糖組成比の合計を、S
2はdiS
1、diS
2、diS
3の二糖組成比の合計を、S
3はtriSの二糖組成比をそれぞれ示す。
【0150】
<実施例1>強塩基のモル濃度の検討(1)
CH(35.8kDa)にNa
2SO
4と0.1M〜4MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量(重量濃度(w/v)でCHと同じ濃度となる量)の三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(TMA−SO
3)(シグマアルドリッチ社製)を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表1及び
図1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
本発明の硫酸化方法により得られた硫酸化CHは、いずれもCH−diS
Bの二糖組成比が0.1%未満であったため表への記載を省略している。以後の実施例においてもCH−diS
Bの表への記載を省略する。
【0153】
表1に示した通り、強塩基性の溶液中でGAGと硫酸化剤を共存させることにより、GAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。また、強塩基のモル濃度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。
【0154】
<実施例2>強塩基のモル濃度の検討(2)
HA(800kDa)にNa
2SO
4と0.5M〜4MのNaOH水溶液を添加し、HAが10mg/mL(1% w/v)、Na
2SO
4が100mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、58当量(重量濃度(w/v)でHAの20倍の濃度となる量)のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に等量の精製水を添加した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0157】
<実施例3>強塩基のモル濃度の検討(3)
CH(35.8kDa)にNa
2SO
4と0.05M〜2MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで5分間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表3に示す。
【0158】
【表3】
【0159】
表3に示したpHは、反応終了時(硫酸化剤を添加してから5分後)に測定した硫酸化反応溶液のpHである。表3に示したとおり、pH11.5以上の溶液中でGAGと硫酸化剤を共存させることにより、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0160】
<実施例4>反応温度の検討
CH(41.8kDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を0〜60℃に加温または冷却し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表4に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
表4に示した通り、任意の反応温度においてGAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、反応温度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。また、CHを硫酸化して得られる硫酸化CHは、一態様において、二糖組成比においてCH−6Sを最も多く有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸C(CSC)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSC様多糖の調製が可能であることも分かった。
【0163】
<実施例5>グリコサミノグリカンの濃度の検討(1)
CH(30.2kDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが10〜66.7mg/mL(1〜6.67% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表5に示す。
【0164】
【表5】
【0165】
表5に示した通り、任意のGAGの濃度においてGAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。また、GAGの濃度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。
【0166】
<実施例6>グリコサミノグリカンの濃度の検討(2)
精製水に溶解したHA(2.7MDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1〜10mg/mL(0.1〜1% w/v)HA、80mg/mL Na
2SO
4、1M NaOHとなるように溶液を調製した。これらの溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。また、硫酸化HAの分子量を測定した。結果を表6に示す。
【0167】
【表6】
【0168】
表6に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、任意のGAGの濃度においてGAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、本発明の硫酸化方法により調製される硫酸化HAは、一態様において、硫酸化反応後においても2MDa以上の分子量を有するGAGであることを確認した。
【0169】
<実施例7>反応時間の検討(1)
CH(41.8kDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間〜9時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表7に示す。
【0170】
【表7】
【0171】
表7に示した通り、任意の反応時間においてGAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。
【0172】
<実施例8>反応時間の検討(2)
精製水に溶解したHA(2.7MDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1% w/v)HA、80mg/mL Na
2SO
4、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1日間〜7日間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表8に示す。
【0173】
【表8】
【0174】
表8に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、任意の反応時間においてGAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0175】
<実施例9>硫酸化剤の添加量の検討(1)
CH(41.8kDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、0.3〜2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで20時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に1.5倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表9に示す。
【0176】
【表9】
【0177】
表9に示した通り、任意の量の硫酸化剤を添加することによりGAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。また、硫酸化剤の添加量を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。
【0178】
<実施例10>硫酸化剤の添加量の検討(2)
精製水に溶解したHA(2.7MDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1% w/v)HA、80mg/mL Na
2SO
4、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、29〜116モル当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表10に示す。
【0179】
【表10】
【0180】
表10に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、任意の量の硫酸化剤を添加することによりGAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0181】
<実施例11>強塩基の種類の検討
HA(800kDa)にNa
2SO
4と1Mの強塩基性水溶液(NaOH水溶液、KOH水溶液、またはLiOH水溶液)を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1%w/v)HA、100mg/mL Na
2SO
4となるように溶液を調製した。これらの溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表11に示す。
【0182】
【表11】
【0183】
表11に示した通り、強塩基性の溶液としてKOH水溶液やLiOH水溶液を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0184】
<実施例12>硫酸化剤の種類の検討(1)
CH(41.8kDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量の三酸化硫黄ピリジン錯体(Pyr−SO
3、東京化成工業社製)を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表12に示す。
【0185】
【表12】
【0186】
表12に示した通り、硫酸化剤としてPyr−SO
3を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0187】
<実施例13>硫酸化剤の種類の検討(2)
CH(41.8kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量の三酸化硫黄ジメチルエチルアミン錯体(DMEA−SO
3)(ジメチルエチルアミン100mLとクロロホルム100mLの混合溶媒にクロロスルホン酸10mLとクロロホルム20mLの混合溶媒を氷冷下で添加して調製)を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表13に示す。
【0188】
【表13】
【0189】
表13に示した通り、硫酸化剤としてDMEA−SO
3を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0190】
<実施例14>強塩基のモル濃度の検討(4)
HA(800kDa)にNa
2SO
4と2Mまたは3MのNaOH水溶液を添加し、HAが10mg/mL(1% w/v)、Na
2SO
4が80mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表14に示す。
【表14】
【0191】
表14に示した通り、反応温度を4℃とした場合のNaOH濃度は、1M(反応温度を40℃とした場合において最も高い硫酸化反応効率を示した濃度。表2参照)よりも2Mや3Mにおいて高い硫酸化反応効率を示した。
【0192】
<実施例15>硫酸ナトリウムの添加量の検討
CH(41.8kDa)にNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、Na
2SO
4が200〜600mg/mLとなるように溶液を調製した。また、CHに2MのNaOH水溶液のみを添加し、Na
2SO
4を含まない溶液も調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表15に示す。
【0193】
【表15】
【0194】
表15に示した通り、硫酸ナトリウムの添加量によらず、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、硫酸化反応に伴う分子量の低下を抑制するためには、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩を共存させない態様が好ましいことを確認した。
【0195】
<実施例16>硫酸基を有するGAGの硫酸化の検討(1)
コンドロイチン硫酸A(CSA)(20.1kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CSAが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CSを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表16に示す。
【0196】
【表16】
【0197】
表16に示した通り、強塩基性の溶液中で硫酸基を有するGAGと硫酸化剤を共存させることにより、硫酸基を有するGAGを硫酸化してさらに硫酸化度を増加させることが可能であることをCSAを用いて確認した。また、CSAを硫酸化して得られる硫酸化CSAは、一態様において、二糖組成比においてCH−diS
Eを最も多く有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸E(CSE)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSE様多糖の調製が可能であることも分かった。
【0198】
<実施例17>硫酸基を有するGAGの硫酸化の検討(2)
コンドロイチン硫酸C(CSC)(14.8kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CSCが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CSを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表17に示す。
【0199】
【表17】
【0200】
表17に示した通り、強塩基性の溶液中で硫酸基を有するGAGと硫酸化剤を共存させることにより、硫酸基を有するGAGを硫酸化してさらに硫酸化度を増加させることが可能であることをCSCを用いて確認した。また、CSCを硫酸化して得られる硫酸化CSCは、一態様において、二糖組成比においてCH−diS
Dを20%以上の割合で有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸D(CSD)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSD様多糖の調製が可能であることも分かった。
【0201】
<実施例18>混合溶媒を用いた硫酸化の検討(1)
dCH(8.2kDa)に5%(v/v)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む2MのNaOHの溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表18に示す。
【0202】
【表18】
【0203】
表18に示した通り、有機溶媒を含む混合溶媒を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることをDMFを用いて確認した。
【0204】
<実施例19>混合溶媒を用いた硫酸化の検討(2)
dCH(8.2kDa)に5%(v/v)の有機溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド(FA)、ピリジン(Pyr)、アセトニトリル(MeCN)、エタノール(EtOH)、またはテトラヒドロフラン(THF))を含む2MのNaOHの溶液を添加し、dCHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表19に示す。
【0205】
【表19】
【0206】
表19に示した通り、DMF以外の有機溶媒を含む混合溶媒を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0207】
<実施例20>混合溶媒を用いた硫酸化の検討(3)
dCH(8.2kDa)に10〜40%(v/v)の有機溶媒(DMSOまたはEtOH)を含む2MのNaOHの溶液を添加し、dCHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表20に示す。
【0208】
【表20】
【0209】
表20に示した通り、有機溶媒を含む混合溶媒を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、有機溶媒の濃度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。また、有機溶媒としてDMSOを含む混合溶媒を用いた場合には、DMSOを有機溶媒として含まない溶液を用いた場合と比較して、得られる硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸化度が増加する傾向が認められた。具体的には、この傾向は10%〜30%(v/v)のDMSOを含む混合溶媒を用いた場合において認められた。さらに、30%(v/v)程度のDMSOを含む混合溶媒を用いた場合に、得られる硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸化度が最も高くなることが分かった。よって、本発明の硫酸化方法においては有機溶媒としてDMSOを含む態様を好ましく例示できることが分かった。
【0210】
<実施例21>従来の硫酸化方法との比較(1)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
CHにNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、CHが66.7mg/mL(6.67% w/v)、Na
2SO
4が500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0211】
(2)有機溶媒中での硫酸化
CHにホルムアミド(FA)を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液に5当量の三酸化硫黄トリエチルアミン錯体(TEA−SO
3)を添加した後、スターラーで2時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0212】
上記(1)と(2)で得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表21に示す。
【0213】
【表21】
【0214】
表21に示した通り、本発明(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)によって得られる硫酸化CHは、従来技術(有機溶媒中での硫酸化)によって得られる硫酸化CHに比して、二糖組成比においてCH−2Sを多く含むことを特徴としたGAGであることを確認した。
【0215】
<実施例22>従来の硫酸化方法との比較(2)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
CHに2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0216】
(2)有機溶媒中での硫酸化
CHにホルムアミド(FA)を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、5当量のTEA−SO
3を添加した後、スターラーで2時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0217】
上記(1)と(2)で得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表22に示す。
【0218】
【表22】
【0219】
表22に示した通り、本発明(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)によって得られる硫酸化CHは、従来技術(有機溶媒中での硫酸化)によって得られる硫酸化CHに比して、二糖組成比においてCH−2Sを多く含むことを特徴としたGAGであることを改めて確認した。
【0220】
<実施例23>従来の硫酸化方法との比較(3)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
精製水に溶解したHAにNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1% w/v)HA、80mg/mL Na
2SO
4、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0221】
(2)有機溶媒中での硫酸化
HAのトリブチルアミン(TBA)塩にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加し、HAが10mg/mL(1% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を60℃に加温し、12当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで48時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2.5倍容のアセトンを添加して30分間撹拌した後、3時間静置した。この溶液から沈殿物を回収してHAが8mg/mL(0.8% w/v)となるように精製水に溶解した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0222】
上記(1)と(2)で得た硫酸化HAを二糖分析した。結果を表23に示す。
【0223】
【表23】
【0224】
表23に示した通り、従来技術(有機溶媒中での硫酸化)によって得られる硫酸化HAが二糖組成比においてHA−6Sを多く含み、HA−4SやHA−2Sを実質的に含まないことを特徴とするGAGであるのに対し、本発明(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)によって得られる硫酸化HAはHA−4SやHA−2Sを含むことを特徴とするGAGであることを確認した。
【0225】
<実施例24>ヘパロサンの脱アセチル化と硫酸化のワンポット反応
NAH(33.1kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、NAHが40mg/mL(4% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を60℃に加温し、スターラーで4時間撹拌して脱アセチル化反応を行った。温度を40℃に変更し、7当量または12当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで20時間撹拌して硫酸化反応を行った。この溶液にHClを添加して中和した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化ヘパロサンを前記<参考例11>の方法に従って二糖分析した。結果を表24に示す。
【0226】
【表24】
【0227】
表24に示した通り、強塩基性の溶液中でGAGと硫酸化剤を共存させることにより、GAGの硫酸化が可能であることをNAHを用いて確認した。また、強塩基性の溶液中でGAGの脱アセチル化と硫酸化をワンポット合成により行うことが可能であることを確認した。
【0228】
<実施例25>コンドロイチンのアルキル化と硫酸化のワンポット反応
(1)メチル化された硫酸化コンドロイチンの調製
CHに2MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、0.5倍容のヨードメタン(CH
3I)を添加した後、スターラーで2時間撹拌してメチル化反応を行い、一部をメチル基の導入率(メチル化度)の測定用試料として分取した。その後、この溶液に2.9当量のTMA−SO
3を添加し、室温においてスターラーで2時間撹拌して硫酸化反応を行った。メチル化度の測定用試料と反応停止後の溶液それぞれに3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得たメチル化されたコンドロイチン(硫酸化反応に供する前のコンドロイチン)とメチル化された硫酸化コンドロイチンを以下の分析に供した。
【0229】
(2)メチル化度の測定
メチル化度の測定は、
1H−NMRにより行った。上記(1)で得たメチル化されたコンドロイチン5mgに0.01%の3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム−2,2,3,3−d
4(TSP)を含有する重水を添加して調製した溶液を
1H−NMRに供し、CHに導入したメチル基由来のシグナル(2.9ppm、3.1ppm、3.2ppm、3.4ppm、3.5ppm)の積分比をGalNAc残基のアセチル基由来のシグナル(2.0ppm)の積分比で除した値を百分率換算してメチル化度を算出した。その結果、メチル化されたコンドロイチンのメチル化度は58%であった。
【0230】
(3)硫黄含量の測定
硫黄含量の測定は、<参考例12>に記載の方法により行った。その結果、上記(1)で得たメチル化された硫酸化コンドロイチンの硫黄含量は3.8%であった。
【0231】
以上の結果より、強塩基性の溶液中でGAGのアルキル化と硫酸化をワンポット合成により行うことが可能であることを確認した。
【0232】
<実施例26>従来の硫酸化方法との比較(4)
CH(5.0kDa、28.0kDa、30.2kDa、32.0kDa、35.8kDa、または41.8kDa)に溶媒を添加し、CHが10〜200mg/mL(1〜20% w/v)となるように溶液を調製した。これらの溶液を0〜60℃に加温または冷却し、0.9〜10当量の硫酸化剤(TMA−SO
3、TEA−SO
3、Pyr−SO
3、または三酸化硫黄N,N−ジメチルホルムアミド錯体(DMF−SO
3))を添加した後、スターラーで0.5〜20時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0233】
上記の反応条件において、本発明の硫酸化方法(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)を行う場合には、溶媒として0.1〜2MのNaOH水溶液を用いた。また、上記の反応条件において、従来の硫酸化方法(有機溶媒中での硫酸化)を行う場合には、溶媒としてホルムアミド(FA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。
【0234】
上記に従って得られた硫酸化CHを二糖分析し、CH−4Sに対するCH−2Sの割合(2S/4S比)、およびCH−6Sに対するCH−2Sの割合(2S/6S比)を算出した。本発明の硫酸化方法により得られた硫酸化CH(29検体)を二糖分析した結果を表25に、従来の硫酸化方法により得られた硫酸化CH(26検体)を二糖分析した結果を表26に、それぞれ示す。また、動物から抽出して得られるCSを二糖分析した結果を表27に示す。表27において、コンドロイチン硫酸A(CSA)はチョウザメの脊索から、コンドロイチン硫酸B(CSB)はブタの皮膚から、コンドロイチン硫酸C(CSC)とコンドロイチン硫酸D(CSD)はサメの軟骨から、コンドロイチン硫酸E(CSE)はイカの軟骨から、それぞれ抽出して得られたCSである。
【0235】
【表25】
【0236】
【表26】
【0237】
【表27】
【0238】
表25に示した通り、本発明の硫酸化方法により得られた硫酸化CHは、2S/4S比として3.50〜9.75の値を、2S/6S比として0.15〜0.50の値を、それぞれ示した。一方、表26に示した通り、従来の硫酸化方法により得られた硫酸化CHは、2S/4S比として0.00〜3.00の値を、2S/6S比として0.00〜0.10の値を、それぞれ示した。また、表27に示した通り、動物から抽出して得られるCS(自然界に存在するCS)からはCH−2Sが検出されず、2S/4S比と2S/6S比はどちらも0.00の値を示した。
【0239】
<実施例27>低分子ヒアルロン酸の硫酸化
HA(20kDa、または100kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、HAが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、8.7当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表28に示す。
【0240】
【表28】
【0241】
表28に示した通り、本発明の硫酸化方法に供して硫酸化が行われるHAは、高分子のHAには限定されず、低分子のHA(分子量100kDa以下)であってもよいことを確認した。
【0242】
<実施例28>硫酸化ヘパロサンの調製(1)
【0243】
(1)ヘパロサンの脱アセチル化
NAH(33.1kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、NAHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を60℃に加温し、スターラーで4時間撹拌して脱アセチル化反応を行った。この溶液にH
2SO
4を添加して中和した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして脱アセチル化HPNを得た。
【0244】
(2)脱アセチル化ヘパロサンの硫酸化
上記(1)で得た脱アセチル化HPNに20%(v/v)のDMSOを含む2MのNaOHの溶液を添加し、脱アセチル化HPNが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、18当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで20時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0245】
上記(2)で得た硫酸化されたHPN(硫酸化HPN)を二糖分析した結果を表29に示す。
【0246】
【表29】
【0247】
<実施例29>硫酸化ヘパロサンの抗凝固活性の測定
HEPと実施例28で得た硫酸化HPNを測定対象試料とし、下記の方法に従って活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定した。
【0248】
SD系雄性ラットからベノジェクトII真空採血管(3.2%クエン酸ナトリウム入り、テルモ社製)を用いて採血して血漿を得た。0.1mg/mLとなるように蒸留水で溶解した試料(硫酸化NAHまたはHEP)の溶液25μLと血漿225μLを混合して測定用試料を調製した。また、蒸留水25μLと血漿225μLを混合して陰性対照を調製した。APTTの測定には全自動血液凝固線溶測定装置STA Compact(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用い、添付文書に記載の方法に従って試験を実施した。
【0249】
結果を表30に示す。
【0250】
【表30】
【0251】
表30に示した通り、実施例28で得た硫酸化HPNはHEPと同程度のAPTTを示した。よって、本発明の硫酸化方法により得られる硫酸化GAGは、一態様において、ヘパリン様の抗凝固活性を有する硫酸化GAGであることが確認された。
【0252】
<実施例30>硫酸化ヘパロサンの調製(2)
(1)異性化ヘパロサンの調製
文献(WO2014/200045)に記載の方法を参照してNAH(33.1kDa)の異性化反応を行い、一部のGlcA残基がIdoA残基に異性化されたHPN(EpHPN)を得た。EpHPNのIdoA含量は32.8%であった。
【0253】
(2)異性化ヘパロサンの脱アセチル化と硫酸化
NAHに代えて上記(1)で得たEpHPNを用い、実施例28に記載の方法に従って行った。
【0254】
上記(2)で得た硫酸化されたEpHPN(硫酸化EpHPN)を二糖分析した結果を表31に示す。
【0255】
【表31】
【0256】
表31に示した通り、本発明の硫酸化方法に供して硫酸化が行われるGAGは、HexA残基としてGlcA残基のみを有するGAGには限定されず、IdoA残基を有するGAGであってもよいことを確認した。また、本発明者らは、上記の硫酸化EpNAHが実施例28に記載の硫酸化NAHと同様にヘパリン様の抗凝固活性を有するGAGであることを確認している。したがって、本発明によれば、HexN残基としてGlcN残基を、HexA残基としてGlcA残基とIdoA残基を有し、かつ抗凝固活性を示す硫酸化多糖であるHPNと同様の組成および性質を有するGAGを調製できることが確認された。
【0257】
<実施例31>硫酸化コンドロイチンの調製(1)
CH(113kDa)に2M〜4MのNaOH水溶液を添加し、CHが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、14.5当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表32に示す。
【0258】
【表32】
【0259】
<実施例32>硫酸化コンドロイチンの調製(2)
CH(113kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CHが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、8.7当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応終了時(硫酸化剤を添加してから24時間後)に測定した硫酸化反応溶液のpHは13.8であった。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0260】
上記により得た乾燥粉末を上記と同じ条件に従った硫酸化反応に供して、再度乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表33に示す。
【0261】
【表33】
【0262】
<実施例33>硫酸化コンドロイチンの調製(3)
CH(27kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CHが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、8.7当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0263】
上記により得た乾燥粉末を上記と同じ条件に従った硫酸化反応に供して、再度乾燥粉末を得た。この乾燥粉末を再度上記と同じ条件に従った硫酸化反応に供して、再々度乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表34に示す。
【0264】
【表34】
【0265】
表32〜表34に示した通り、CHを硫酸化して得られる硫酸化CHは、一態様において、二糖組成比においてCH−diS
Dを20%以上の割合で有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸D(CSD)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSD様多糖の調製が可能であることを確認した。
【0266】
<実施例34>従来の硫酸化方法との比較(5)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
精製水に溶解したHAにNa
2SO
4と2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で10mg/mL(1% w/v)HA、80mg/mL Na
2SO
4、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SO
3を添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化ヒアルロン酸の硫黄含量は2.9%であった。
【0267】
(2)有機溶媒中での硫酸化
HAのトリブチルアミン(TBA)塩にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加し、HAが1mg/mL(0.1% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、1当量のPyr−SO
3を添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に等量の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化ヒアルロン酸の硫黄含量は3.0%であった。
【0268】
(3)NMRによる硫酸基の測定
硫酸基の測定は、
13C−NMRにより行った。上記に従って得た硫酸化ヒアルロン酸5mgに0.01%のテトラメチルシラン(TMS)を含有する重水を添加して調製した溶液を
13C−NMRに供し、GlcNAc残基の4−O−硫酸基に由来するシグナル(77.5ppm)の有無を確認した。本発明の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸を測定した結果を
図2に、従来の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸を測定した結果を
図3に、それぞれ示す。
【0269】
図2に示した通り、本発明の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸は77.5ppmのシグナルを示したことから、GlcNAc残基に4−O−硫酸基を有することが確認された。一方、
図3に示した通り、従来の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸は77.5ppmのシグナルを示さなかったことから、GlcNAc残基に4−O−硫酸基を有しないことが確認された。