特許第6063103号(P6063103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6063103
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】グリコサミノグリカンの硫酸化方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20170106BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 31/737 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08B37/08 Z
   C08B37/00 H
   C08B37/00 Q
   A61K31/737
   A61P7/02
【請求項の数】8
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-552543(P2016-552543)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2016060788
【審査請求日】2016年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-73148(P2015-73148)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】南澤 俊和
(72)【発明者】
【氏名】浅見 長正
(72)【発明者】
【氏名】藤田 寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 喜義
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭38−025652(JP,B1)
【文献】 特開平1−318002(JP,A)
【文献】 特開昭62−027402(JP,A)
【文献】 特開平11−012137(JP,A)
【文献】 特開平9−168384(JP,A)
【文献】 特開2007−016099(JP,A)
【文献】 特開2003−268004(JP,A)
【文献】 特開2008−174642(JP,A)
【文献】 特開平11−147901(JP,A)
【文献】 特開2001−097997(JP,A)
【文献】 米国特許第6388060(US,B1)
【文献】 国際公開第2006/101000(WO,A1)
【文献】 BHATTACHARYYA Sumit et al,Cell-Bound IL-8 Increases in Bronchial Epithelial Cells after Arylsulfatase B Silencing due to Seque,American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology,2010年,42,51-61,ISSN:1535-4989
【文献】 RIGDEN D. J. et al,Structures of Streptococcus pneumoniae Hyaluronate Lyase in Complex with Chondroitin and Chondroitin,The Journal of Biological Chemistry,2003年,278(50),50596-50606,ISSN:1083-351X
【文献】 FULLER K. et al,Heparin Augments Osteoclast Resorption-Stimulating Activity in Serum,Journal of Cellular Physiology,1991年,147,208-214,ISSN:1097-4652
【文献】 HINTZE Vera et al,Sulfated Glycosaminoglycans Exploit the Conformational Plasticity of Bone Morphogenetic Protein-2 (B,BioMacromolecules,2014年,15,3083-3092,ISSN:1526-4602
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B37
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコサミノグリカンと硫酸化剤を共存させたpH11.5以上の強塩基性の溶液中で硫酸化反応を行う、グリコサミノグリカンの硫酸化方法。
【請求項2】
グリコサミノグリカンが、下記(A)〜(D)から選択されるグリコサミノグリカンである、請求項1記載の方法。
(A)ヘキスロン酸残基を有するグリコサミノグリカン。
(B)前記(A)のグリコサミノグリカンに置換基又は官能基の付加又は脱離をしてなるグリコサミノグリカン。
(C)前記(A)のグリコサミノグリカンを脱アセチル化してなるグリコサミノグリカン。
(D)前記(A)のグリコサミノグリカンをアルキル化してなるグリコサミノグリカン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法を行う工程を含む、硫酸化グリコサミノグリカンの製造方法。
【請求項4】
グリコサミノグリカンの脱アセチル化反応を行う工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
グリコサミノグリカンのアルキル化反応を行う工程をさらに含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項6】
硫酸化グリコサミノグリカンが、ヘパリン様の抗凝固活性を有する硫酸化グリコサミノグリカンである、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
硫酸化グリコサミノグリカンが、ヘパリン様の抗凝固活性を有する硫酸化ヘパロサンである、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
硫酸化グリコサミノグリカンが、下記(i)〜(iv)から選択されるコンドロイチン硫酸、又は、下記(v)若しくは(vi)から選択される硫酸化ヒアルロン酸である、請求項のいずれか1項に記載の方法。
(i)二糖組成比において下記構造式で示される構造を含む二糖を3モル%以上有するコンドロイチン硫酸。
[HexA(2S)1−3GalN1−4]
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「2S」は2−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
(ii)二糖組成比において下記構造式(a)で示される構造を含む二糖に対する下記構造式(b)で示される構造を含む二糖の割合が3超であるコンドロイチン硫酸。
[HexA1−3GalN(4S)1−4] (a)
[HexA(2S)1−3GalN1−4] (b)
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「4S」は4−O−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
(iii) 二糖組成比において下記構造式(c)で示される構造を含む二糖に対する下記構造式(d)で示される構造を含む二糖の割合が0.1超であるコンドロイチン硫酸。
[HexA1−3GalN(6S)1−4] (c)
[HexA(2S)1−3GalN1−4] (d)
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「6S」は6−O−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
(iv)二糖組成比において下記構造式で示される構造を含む二糖を25モル%以上有するコンドロイチン硫酸。
[HexA(2S)1−3GalN(6S)1−4]
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「2S」は2−O−硫酸基を、「6S」は6−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
(v)二糖組成において下記構造式で示される構造を含む二糖を有する硫酸化ヒアルロン酸。
[HexA1−3GlcN(4S)1−4]
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GlcN」はグルコサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「4S」は4−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
(vi)以下の(A)及び(B)の特徴を有する硫酸化ヒアルロン酸。
(A)分子量が200万Da以上である。
(B)硫黄含量が2質量%以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコサミノグリカンを硫酸化する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の明細書においては、以下の略号を使用する。
GAG:グリコサミノグリカン
HexN:ヘキソサミン
HexNAc:N−アセチルヘキソサミン
GalN:ガラクトサミン
GalNAc:N−アセチルガラクトサミン
GlcN:グルコサミン
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
GlcNS:N−スルホグルコサミン
HexA:へキスロン酸
GlcA:グルクロン酸
IdoA:イズロン酸
ΔHexA:不飽和ヘキスロン酸
CS:コンドロイチン硫酸
DS:デルマタン硫酸
CH:コンドロイチン
dCH:脱硫酸化コンドロイチン硫酸
HA:ヒアルロン酸
HPN:ヘパロサン
NAH:N−アセチルヘパロサン
HS:ヘパラン硫酸
HEP:ヘパリン
dHEP:脱硫酸化ヘパリン
AS:アカラン硫酸
ACH:アカラン(2−O−脱硫酸化AS)
KS:ケラタン硫酸
KPS:ケラタンポリ硫酸
ΔDi−0S:ΔHexAα1−3GalNAc
ΔDi−6S:ΔHexAα1−3GalNAc(6S)
ΔDi−4S:ΔHexAα1−3GalNAc(4S)
ΔDi−2S:ΔHexA(2S)α1−3GalNAc
ΔDi−diS:ΔHexA(2S)α1−3GalNAc(6S)
ΔDi−diS:ΔHexAα1−3GalNAc(4S,6S)
ΔDi−diS:ΔHexA(2S)α1−3GalNAc(4S)
ΔDi−triS:ΔHexA(2S)α1−3GalNAc(4S,6S)
ΔDiHA−0S:ΔHexAα1−3GlcNAc
ΔDiHA−6S:ΔHexAα1−3GlcNAc(6S)
ΔDiHA−4S:ΔHexAα1−3GlcNAc(4S)
ΔDiHA−2S:ΔHexA(2S)α1−3GlcNAc
ΔDiHS−0S:ΔHexAα1−4GlcNAc
ΔDiHS−NS:ΔHexAα1−4GlcNS
ΔDiHS−6S:ΔHexAα1−4GlcNAc(6S)
ΔDiHS−2S:ΔHexA(2S)α1−4GlcNAc
ΔDiHS−diS:ΔHexAα1−4Glc(NS,6S)
ΔDiHS−diS:ΔHexA(2S)α1−4GlcNS
ΔDiHS−diS:ΔHexA(2S)α1−4GlcNAc(6S)
ΔDiHS−triS:ΔHexA(2S)α1−4Glc(NS,6S)
上記において、α1−3はα1−3グリコシド結合を、α1−4はα1−4グリコシド結合を、6Sは6−O−硫酸基を、4Sは4−O−硫酸基を、2Sは2−O−硫酸基をそれぞれ示す。
【0003】
グリコサミノグリカン(GAG)を硫酸化する方法としては、化学合成法、酵素合成法、これらを組み合わせた化学酵素合成法が知られている。化学合成法において、GAGの水酸基を硫酸化する方法(O−硫酸化法)としては、有機溶媒を用いる方法が知られている。O−硫酸化法としては、第四級アンモニウム塩に変換したGAGを有機溶媒に溶解し、硫酸化剤を添加してO−硫酸化する方法が知られており、例えば、N−アセチルヘパロサンのトリブチルアミン塩をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、三酸化硫黄−ピリジン錯体を添加してO−硫酸化する方法が知られている(特許文献1)。また、O−硫酸化法としては、GAGを極性有機溶媒に溶解し、硫酸化剤を添加してO−硫酸化する方法も知られており、例えば、コンドロイチンをホルムアミドに溶解し、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体を添加してO−硫酸化する方法が知られている(特許文献2)。有機溶媒を用いる方法において硫酸化反応を停止させる方法としては、例えば、硫酸化剤が水によって失活する性質を有することから、pH調整のための塩(例えば、酢酸ナトリウム)を含む水溶液を添加する方法が用いられている(特許文献2)。
【0004】
化学合成法において、GAGのアミノ基を硫酸化する方法(N−硫酸化法)としては、N−脱アセチル化したGAGを炭酸ナトリウム水溶液や炭酸水素ナトリウム水溶液などのpHが10程度の弱塩基性の水溶液に溶解し、硫酸化剤を添加してN−硫酸化する方法が知られている。N−硫酸化法としては、例えば、コンドロイチン硫酸をヒドラジン分解によってN−脱アセチル化した後に炭酸ナトリウム水溶液に溶解し、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体を添加してN−硫酸化する方法や、N−アセチルヘパロサン(K5多糖)をアルカリ加水分解によってN−脱アセチル化した後に中和し、炭酸ナトリウムと三酸化硫黄−ピリジン錯体を添加してN−硫酸化する方法が知られている(非特許文献1、2)。しかしながら、このような弱塩基性の水溶液中で硫酸化反応を行う方法はGAGのアミノ基を特異的に硫酸化する方法であり、GAGの水酸基を硫酸化することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−290383号公報
【特許文献2】特表2013−520995号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nadkarni VD, Toida T, Van Gorp CL, Schubert RL, Weiler JM, Hansen KP, Caldwell EE, Linhardt RJ., Carbohydr Res. 1996 Aug 26; 290(1): 87-96.
【非特許文献2】Leali D, Belleri M, Urbinati C, Coltrini D, Oreste P, Zoppetti G, Ribatti D, Rusnati M, Presta M., J Biol Chem. 2001 Oct 12; 276(41): 37900-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、GAGの水酸基を化学的に硫酸化する方法において有機溶媒が用いられている現状を鑑み、グリーンケミストリーやサスティナブルケミストリーの観点から、有機溶媒の使用量を低減したGAGの硫酸化の方法、好ましくは有機溶媒を使用しないGAGの硫酸化の方法について鋭意検討した。
【0008】
本発明は、非有機溶媒の溶液中でGAGを硫酸化する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、一態様において、非有機溶媒の溶液中でGAGの水酸基を硫酸化する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、GAGと硫酸化剤を共存させた強塩基性の溶液中で硫酸化反応を行うことにより、有機溶媒を使用しない方法(水性溶媒を使用する方法)においてGAGの水酸基の硫酸化が可能であることを見出した。また、本発明者らは、当該方法によって得られる硫酸化GAGは、一態様において有機溶媒中で硫酸化して得られる硫酸化GAGや動物から抽出して得られるGAGとは異なる新規の二糖組成比を有する硫酸化GAGであることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、以下に例示する態様を包含する。
[1]
グリコサミノグリカンと硫酸化剤を共存させた強塩基性の溶液中で硫酸化反応を行う、グリコサミノグリカンの硫酸化方法。
[2]
強塩基性の溶液が、pH11.5以上の溶液である、前記[1]に記載の方法。
[3]
強塩基性の溶液が、強塩基を含む強塩基性の溶液である、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
グリコサミノグリカンが、下記(A)〜(D)から選択されるグリコサミノグリカンである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
(A)へキスロン酸残基を有するグリコサミノグリカン。
(B)前記(A)のグリコサミノグリカンに置換基又は官能基の付加又は脱離をしてなるグリコサミノグリカン。
(C)前記(A)のグリコサミノグリカンを脱アセチル化してなるグリコサミノグリカン。
(D)前記(A)のグリコサミノグリカンをアルキル化してなるグリコサミノグリカン。
[5]
硫酸化剤が、三酸化硫黄錯体である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法を行う工程を含む、硫酸化グリコサミノグリカンの製造方法。
[7]
グリコサミノグリカンの脱アセチル化反応を行う工程をさらに含む、前記[6]に記載の方法。
[8]
グリコサミノグリカンのアルキル化反応を行う工程をさらに含む、前記[6]又は[7]に記載の方法。
[9]
二糖組成比において下記構造式で示される構造を含む二糖を3モル%以上有するコンドロイチン硫酸。
[HexA(2S)1−3GalN1−4]
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「2S」は2−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
[10]
二糖組成比において下記構造式(a)で示される構造を含む二糖に対する下記構造式(b)で示される構造を含む二糖の割合が3超であるコンドロイチン硫酸。
[HexA1−3GalN(4S)1−4] (a)
[HexA(2S)1−3GalN1−4] (b)
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「4S」は4−O−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
[11]
二糖組成比において下記構造式(c)で示される構造を含む二糖に対する下記構造式(d)で示される構造を含む二糖の割合が0.1超であるコンドロイチン硫酸。
[HexA1−3GalN(6S)1−4] (c)
[HexA(2S)1−3GalN1−4] (d)
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「6S」は6−O−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
[12]
二糖組成比において下記構造式で示される構造を含む二糖を25モル%以上有するコンドロイチン硫酸。
[HexA(2S)1−3GalN(6S)1−4]
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GalN」はガラクトサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「2S」は2−O−硫酸基を、「6S」は6−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
[13]
二糖組成において下記構造式で示される構造を含む二糖を有する硫酸化ヒアルロン酸。
[HexA1−3GlcN(4S)1−4]
(式中、「HexA」はヘキスロン酸残基を、「GlcN」はグルコサミン残基を、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「4S」は4−O−硫酸基を、それぞれ示す。)
[14]
以下の(A)及び(B)の特徴を有する硫酸化ヒアルロン酸。
(A)分子量が200万Da以上である。
(B)硫黄含量が2質量%以上である。
[15]
硫酸化グリコサミノグリカンが、ヘパリン様の抗凝固活性を有する硫酸化グリコサミノグリカンである、前記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[16]
硫酸化グリコサミノグリカンが、ヘパリン様の抗凝固活性を有する硫酸化ヘパロサンである、前記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[17]
硫酸化グリコサミノグリカンが、前記[9]〜[12]のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸、又は、前記[13]若しくは[14]に記載の硫酸化ヒアルロン酸である、前記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[18]
硫酸化グリコサミノグリカンが、前記[9]、[10]、[11]及び/又は[12]に記載のコンドロイチン硫酸である、前記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[19]
硫酸化グリコサミノグリカンが、前記[13]及び/又は[14]に記載の硫酸化ヒアルロン酸である、前記[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非有機溶媒の溶液中でGAGを硫酸化することができる。また、本発明によれば、非有機溶媒の溶液中でGAGの水酸基を硫酸化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】NaOH水溶液中にCHと三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(TMA−SO)を共存させて得られる硫酸化CHの硫酸化度とNaOHの濃度の関係を示す図である。
図2】強塩基性の溶液を用いた硫酸化方法により得た硫酸化ヒアルロン酸の13C−NMR測定の結果を示す図である。
図3】有機溶媒中での硫酸化方法により得た硫酸化ヒアルロン酸の13C−NMR測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)本発明の硫酸化方法
前述のとおり、本発明においては、GAGと硫酸化剤を共存させた非有機溶媒の溶液中でGAGの硫酸化反応(GAGを硫酸化する反応)を行うことを特徴としたGAGを硫酸化する方法(以下「本発明の硫酸化方法」という。)が提供される。本発明において「非有機溶媒」とは、有機溶媒以外の溶媒(例えば、無機溶媒)を含む溶媒であることを意味する。ここにいう非有機溶媒の溶液は、具体的には、強塩基性の溶液である。本発明の硫酸化方法において、強塩基性は、pH11.5以上であることが好ましい。本発明の硫酸化方法において、強塩基性は、pH11.6以上、pH11.8以上、pH12以上、pH12.2以上、pH12.4以上、pH12.6以上、pH12.8以上、またはpH13以上であってもよい。
【0014】
本発明の硫酸化方法において、硫酸化反応は、GAGと硫酸化剤を強塩基性の溶液中に共存させることにより行うことができる。共存とは、対象物同士が接触し得る状態にあることを意味する。よって、硫酸化反応は、例えば、GAGを含む強塩基性の溶液に硫酸化剤を添加することや、硫酸化剤を含む強塩基性の溶液にGAGを添加することや、GAGと硫酸化剤を含む溶液を強塩基性にすることによって行うことができる。また、硫酸化反応は、GAGと硫酸化剤を共存させている時間内において溶液が強塩基性となっている時間がある限り進行させることが可能であり、その時間内において溶液が常に強塩基性であることは必要としない。すなわち、本発明の硫酸化方法の実施態様によっては、具体的には、例えば、用いる硫酸化剤の種類や量によっては、GAGと硫酸化剤を共存させている時間内に溶液のpHが変動することがありうるが、GAGと硫酸化剤を共存させている時間内において溶液が強塩基性となっている時間が後述する硫酸化反応を行う時間の範囲内である限りにおいて、本発明の硫酸化方法によってGAGを硫酸化したことになる。
【0015】
強塩基性の溶液は、非有機溶媒の溶液であればよく、具体的には、例えば、無機溶媒の溶液であってもよく、無機溶媒と有機溶媒とを混合した溶液であってもよい。ここにいう有機溶媒は、特に制限されないが、無機溶媒との混和が可能な有機溶媒であることが好ましい。そのような有機溶媒としては、極性有機溶媒が挙げられる。極性有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であってもよく、プロトン性極性溶媒であってもよい。極性有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒としては、エタノール等のアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、テトラヒドロフラン、ピリジン、アセトン、アセトニトリルが挙げられる。また、ここにいう無機溶媒は、特に限定されないが、中性又は塩基性の溶媒であることが好ましい。無機溶媒としては、具体的には水などの水性溶媒が挙げられる。よって、強塩基性の溶液は、一態様において、強塩基性の水溶液であってよい。さらに、硫酸化反応が行われる強塩基性の溶液の量(液量)は制限されず、使用するGAGの量、硫酸化剤の量等に応じて、適宜設定することができる。
【0016】
本発明の硫酸化方法において、硫酸化反応を行う時の溶液(以下「硫酸化反応溶液」という。)は、有機溶媒を含む溶液であってもよく、有機溶媒を含まない溶液であってもよい。硫酸化反応溶液に含まれる有機溶媒の量は特に制限されず、有機溶媒の種類や所望する硫酸化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、有機溶媒は、例えば、硫酸化反応溶液における有機溶媒の体積濃度(v/v)が以下に例示する濃度範囲となるように用いることができる。有機溶媒の体積濃度は、0%超であってよく、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、5%以上であってよい。有機溶媒の体積濃度は、例えば、99%以下、80%以下、60%以下、40%以下、20%以下、10%以下、5%以下であってよい。有機溶媒の体積濃度としては、0%超99%以下、0%超80%以下、0%超60%以下、0%超40%以下、0%超20%以下、0%超10%以下、0%超5%以下等が好ましく例示される。有機溶媒は1種のみであってもよく、2種またはそれ以上の組み合わせであってもよい。有機溶媒が2種またはそれ以上の組み合わせである場合は、ここにいう有機溶媒の体積濃度は、各有機溶媒における有機溶媒の体積濃度の総和を意味する。
【0017】
硫酸化反応溶液は、有機溶媒を実質的に含まない溶液であることが好ましく、有機溶媒を含まない溶液であることがより好ましい。「有機溶媒を実質的に含まない溶液」とは、有機溶媒を含まない溶液(有機溶媒を実質的に含まない溶液の調製時に混合する有機溶媒を水等の無機溶媒に置き換えて調製される溶液)を用いた場合と比較して、得られる硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸化の程度が全く変化(増加または減少)しない、あるいはほとんど変化(増加または減少)しない程度の有機溶媒しか含まない溶液であることを意味する。「硫酸化の程度がほとんど変化しない」とは、具体的には、硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸化度または硫黄含量を指標として比較した場合に20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下の変化しか起こらないことを意味してよい。すなわち、「硫酸化の程度がほとんど変化しない」とは、有機溶媒を含まない溶液を用いて硫酸化反応を行った場合の硫酸化度または硫黄含量がn%である場合に、有機溶媒を実質的に含まない溶液を用いて硫酸化反応を行った場合の硫酸化度または硫黄含量が0.8n%以上かつ1.2n%以下、0.9n%以上かつ1.1n%以下、0.95n%以上かつ1.05n%以下、0.98n%以上かつ1.02n%以下、0.99n%以上かつ1.01n%以下、0.995n%以上かつ1.005n%以下、または0.999n%以上かつ1.001n%以下であることを意味してよい。このような「有機溶媒を実質的に含まない溶液」とは、具体的には、有機溶媒を体積濃度(v/v)として、0%超20%以下、0%超10%以下、0%超5%以下、0%超2%以下、0%超1%以下、0%超0.5%以下、または0%超0.1%以下含む溶液を意味してよい。
【0018】
また、硫酸化反応溶液に含まれる無機溶媒の量は特に制限されず、無機溶媒の種類や所望する硫酸化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、無機溶媒は、例えば、硫酸化反応溶液における無機溶媒の体積濃度(v/v)が以下に例示する濃度範囲となるように用いることができる。無機溶媒の体積濃度は、例えば、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上、40%以上、60%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上、100%であってよい。無機溶媒の体積濃度は、例えば、100%以下、99%以下、95%以下、90%以下、80%以下、60%以下、40%以下、20%以下、10%以下、5%以下であってよい。無機溶媒の体積濃度としては、1%〜100%、20%〜100%、40%〜100%、60%〜100%、80%〜100%、90%〜100%、95%〜100%等が好ましく例示される。無機溶媒は1種のみであってもよく、2種またはそれ以上の組み合わせであってもよい。無機溶媒が2種またはそれ以上の組み合わせである場合は、ここにいう無機溶媒の体積濃度は、各無機溶媒における無機溶媒の体積濃度の総和を意味する。
【0019】
強塩基性の溶液としては、強塩基を含む強塩基性の溶液が挙げられる。強塩基は、水と共存した時に溶液を強塩基性にする化合物である限り特に制限されない。強塩基は、水と共存した時に水酸化物イオンを遊離する化合物であってよく、イオン化した時に水酸化物イオンを遊離する化合物であってよい。すなわち、強塩基はアレニウス塩基であってよい。ここにいう強塩基の種類は、特に制限されない。強塩基としては、金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、グアニジン、アンミン錯体水酸化物が挙げられる。強塩基は、安価で入手が容易な化合物であることが好ましく、金属水酸化物であることが好ましい。金属水酸化物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。金属水酸化物は、廃棄や排水が容易な化合物であることが好ましく、アルカリ金属水酸化物であることが好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。
【0020】
硫酸化反応溶液に含まれる強塩基の量は特に制限されず、強塩基の種類、所望する硫酸化の程度やpH等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、強塩基は、例えば、硫酸化反応溶液における強塩基のモル濃度が以下に例示する濃度範囲となるように用いることができる。強塩基のモル濃度は、例えば、0.005M以上、0.01M以上、0.05M以上、0.1M以上、0.2M以上、0.5M以上、1M以上であってよい。強塩基のモル濃度は、例えば、10M以下、5M以下、4M以下、3M以下であってよい。強塩基のモル濃度としては、0.005M〜10M、0.01M〜5M、0.01M〜4M、0.05M〜5M、0.05M〜4M、0.1M〜5M、0.1M〜4M、0.2M〜5M、0.2M〜4M、0.5M〜5M、0.5M〜4M、1M〜3M等が好ましく例示される。強塩基は1種のみであってもよく、2種またはそれ以上の組み合わせであってもよい。強塩基が2種またはそれ以上の組み合わせである場合は、ここにいう強塩基のモル濃度は、各強塩基における強塩基のモル濃度の総和を意味する。また、ここにいう強塩基のモル濃度は、水酸化物イオンのモル濃度を意味してもよい。
【0021】
強塩基の形状は、気体であってもよく、粉末や顆粒等の固体であってもよく、液体であってもよい。ここにいう液体は、気体や固体の強塩基と溶媒を共存させたものであってよい。ここにいう溶媒は、有機溶媒であってもよく、無機溶媒であってもよく、有機溶媒と無機溶媒の混合溶媒であってもよい。また、ここにいう溶媒は、共存させる強塩基を溶解する溶媒であってもよく、共存させる強塩基を溶解しない溶媒であってもよい。ここにいう強塩基を溶解しない溶媒は、共存させる強塩基を一切溶解しない溶媒であってもよいし、共存させる強塩基を一部溶解するが完全には溶解しない溶媒であってもよい。
【0022】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、本発明の属する技術分野においてGAGとして認識される限り特に制限されない。GAGは、アミノ糖を含む二糖が繰り返し重合した構造を骨格として有する直鎖状の多糖である。アミノ糖は、ヘキソサミン(HexN)であってよく、グルコサミン(GlcN)であってもよく、ガラクトサミン(GalN)であってもよい。ヘキソサミン(HexN)は、N−アセチルヘキソサミン(HexNAc)であってよく、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)であってもよく、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)であってもよい。
【0023】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、硫酸基を有するGAGであってもよく、硫酸基を有しないGAGであってもよい。硫酸基を有するGAGとしては、CS、DS、HS、HEP、AS、KS、KPSが挙げられる。硫酸基を有するGAGは、本発明の硫酸化方法や公知の硫酸化方法等によって硫酸化されたGAGであってもよい。硫酸基を有しないGAGとしては、CH、HA、HPN、テストステロナンが挙げられる。また、本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、脱硫酸化されたGAGであってもよい。脱硫酸化されたGAGとは、脱硫酸化反応を行う前の硫酸基を有するGAGに比して硫酸化の程度が低下したGAGであることを意味し、硫酸基を一切有しないGAGには限定されない。脱硫酸化反応に供されるGAGは、特に制限されず、上記に例示した硫酸基を有するGAGであってよい。脱硫酸化されたGAGとしては、dCH、dHEP、ACHが挙げられる。
【0024】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、酸性糖を含む二糖が繰り返し重合した構造を骨格として有する直鎖状の多糖(すなわち酸性多糖)であることが好ましい。酸性糖はヘキスロン酸(HexA)であってよく、グルクロン酸(GlcA)であってもよく、イズロン酸(IdoA)であってもよい。すなわち、本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、HexA残基を有するGAGであることが好ましい。酸性多糖としては、CS、DS、CH、HA、HS、HEP、HPN、AS、ACH、テストステロナンが挙げられる。
【0025】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、上述の通り、アミノ糖と酸性糖からなる二糖が繰り返し重合した構造を骨格として有する直鎖状の多糖であってよい。本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、構成成分としてアミノ糖とHexAを含む多糖であってよく、アミノ糖とGlcAのみを含む多糖であってもよく、アミノ糖とIdoAのみを含む多糖であってもよく、アミノ糖、GlcA、IdoAを含む多糖であってもよい。構成成分としてアミノ糖とGlcAのみを含む多糖としてはCS、CH、HA、HPN、テストステロナンが挙げられる。構成成分としてアミノ糖とIdoAのみを含む多糖としては、AS、ACHが挙げられる。構成成分としてアミノ糖、GlcA、IdoAを含む多糖としては、DS、HS、HEPが挙げられる。
【0026】
構成成分としてIdoAを含む多糖としては、上記に例示した多糖の他、GlcA残基をIdoA残基に異性化して得られる多糖であってよい。例えば、本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、構成成分としてGlcAを含む多糖のGlcA残基の一部または全てをIdoA残基に異性化して得られる多糖であってよい。そのような多糖としては、GlcA残基の一部または全てがIdoA残基に異性化されたHPNの異性体(異性化ヘパロサン)が挙げられる。HPNの異性化は、例えば、文献(WO2014/200045)に記載された方法を参照して行うことができる。
【0027】
構成成分としてGlcAを含む多糖としては、上記に例示した多糖の他、IdoA残基をGlcA残基に異性化して得られる多糖であってよい。例えば、本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、構成成分としてIdoAを含む多糖のIdoA残基の一部または全てをGlcA残基に異性化して得られる多糖であってよい。そのような多糖としては、IdoA残基の一部または全てがGlcA残基に異性化されたdHEPやHEPの異性体(異性化ヘパリン)、ACHやASの異性体(異性化アカラン)が挙げられる。dHEPやACHの異性化は、例えば、文献(WO2014/200045)に記載された方法を参照して行うことができる。
【0028】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、側鎖の糖残基を有するGAGであってもよく、側鎖の糖残基を有しないGAGであってもよい。側鎖の糖残基としては、フルクトース(Frc)残基が挙げられる。側鎖の糖残基を有するGAGとしては、側鎖としてFrc残基を有するCHであるK4多糖(フルクトシル化コンドロイチン)が挙げられる。本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、側鎖の糖残基を有しないGAGであることが好ましい。
【0029】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、GAGそのものであってもよく、GAGの誘導体であってもよい。GAGの誘導体とは、GAGそのものに対して置換基や官能基の付加や脱離がされたGAGであることを意味する。GAGの誘導体は、本発明の硫酸化方法により硫酸化される部位を有するGAGである限り特に制限されない。本発明の硫酸化方法により硫酸化される部位としては、水酸基やアミノ基が挙げられる。ここにいう水酸基は、GAGが本来的に有する水酸基(GAGの糖残基の水酸基)であってよい。ここにいうアミノ基は、GAGが本来的に有するアミノ基(GAGの糖残基のアミノ基)であってよい。GAGの誘導体としては、アセチル基が脱離(脱アセチル化)されたGAGや疎水基(メチル基等のアルキル基、アセチル基等のアシル基、フェニル基等のアリール基等)が付加されたGAGが挙げられる。
【0030】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGの誘導体としては、GAGのアセチル基を脱離(脱アセチル化)してなるGAG(以下「脱アセチル化GAG」という。)が挙げられる。ここにいう脱アセチル化は、アミノ基の脱アセチル化(N−脱アセチル化)であってよく、脱アセチル化GAGは、一態様において、N−脱アセチル化GAGであってよい。脱アセチル化GAGは、GAGの糖残基のアセチル基が完全または部分的に脱離されたものであってよい。また、本発明の硫酸化方法に供されるGAG誘導体としては、GAGにアルキル基を導入(アルキル化)してなるGAG(以下「アルキル化GAG」という。)が挙げられる。ここにいうアルキル化は、水酸基のアルキル化(O−アルキル化)であってよく、アルキル化GAGは、一態様において、O−アルキル化GAGであってよい。アルキル化GAGは、GAGの糖残基の一級または二級の水酸基やアルデヒド基等の官能基が完全または部分的にアルキル化されたものであってよい。アルキル化としては、メチル化やエチル化が挙げられる。
【0031】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGの由来は特に制限されず、化学的に合成されたもの、酵素により合成されたもの、動物や微生物に由来するもの等を本発明の硫酸化方法に供することができる。本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、公知の方法等により調製されたものであってもよく、市販のものであってもよい。
【0032】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、GAGそのものであってもよく、他の物質と複合体を形成しているGAGであってもよい。ここにいう他の物質としては、特に制限されないが、タンパク質が挙げられる。本発明の硫酸化方法においては、例えば、プロテオグリカン等のGAGとタンパク質との複合体をGAGの硫酸化反応のために供してもよい。本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、他の物質と複合体を形成していないGAGであることが好ましい。
【0033】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGの分子量は特に制限されず、任意の値であってよい。分子量は、例えば、4MDa(メガダルトン)(400万Da)以下、3MDa以下、2MDa以下、1MDa以下、500kDa以下、200kDa以下、100kDa以下、50kDa以下であってよい。分子量は、例えば、5kDa以上、10kDa以上、20kDa以上、30kDa以上、50kDa以上、100kDa以上、500kDa以上、1MDa以上、2MDa以上であってよい。分子量としては、5kDa〜4MDa、5kDa〜3MDa、5kDa〜2MDa、5kDa〜1MDa、5kDa〜500kDa、5kDa〜100kDa、5kDa〜50kDa、10kDa〜3MDa、10kDa〜1MDa、10kDa〜500kDa、10kDa〜100kDa、10kDa〜50kDa、20kDa〜100kDa、20kDa〜50kDa、30kDa〜50kDa、500kDa〜4MDa、500kDa〜3MDa、1MDa〜4MDa、1MDa〜3MDa、2MDa〜3MDa等が好ましく例示される。ここにいう分子量は、重量平均分子量を意味する。GAGが他の物質との複合体である場合は、ここにいう分子量は、GAGそのものの分子量であってよい。GAGの分子量は、例えば、公知の方法により測定することができる。GAGの分子量は、具体的には、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量であってよい。GAGの分子量は、より具体的には、例えば、後述する<参考例4>または<参考例5>に記載の方法により測定することができる。
【0034】
硫酸化反応溶液に含まれるGAGの量は制限されず、強塩基性の溶液の種類や液量、所望する硫酸化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、GAGは、例えば、硫酸化反応溶液におけるGAGの重量濃度(w/v)が以下に例示する濃度範囲となるように用いることができる。GAGの重量濃度は、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上であってよい。GAGの重量濃度は、例えば、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下であってよい。GAGの重量濃度としては、0.001%〜50%、0.01%〜40%、0.1%〜30%、0.1%〜20%、1%〜20%、1%〜10%、0.1%〜10%、0.1%〜1%等が好ましく例示される。GAGは1種のみであってもよく、2種またはそれ以上の組み合わせであってもよい。GAGが2種またはそれ以上の組み合わせである場合は、ここにいうGAGの重量濃度は、各GAGにおけるGAGの重量濃度の総和を意味する。ここにいうGAGの重量濃度は、GAGの乾燥粉末の重量を硫酸化反応溶液の液量で除した値であってもよいし、GAGの濃度の分析法による測定値であってもよい。GAGの濃度の分析法としては、カルバゾール硫酸法(BITTER T, MUIR HM., Anal Biochem. 1962 Oct; 4: 330-4.)が挙げられる。
【0035】
GAGの形状は、真空乾燥物、凍結乾燥物、粉末、顆粒等の固体であってもよく、液体であってもよい。ここにいう液体は、固体のGAGと溶媒を共存させたものであってよい。ここにいう溶媒は、有機溶媒であってもよく、無機溶媒であってもよく、有機溶媒と無機溶媒の混合溶媒であってもよい。また、ここにいう溶媒は、共存させるGAGを溶解する溶媒であってもよく、共存させるGAGを溶解しない溶媒であってもよい。ここにいうGAGを溶解しない溶媒は、共存させるGAGを一切溶解しない溶媒であってもよいし、共存させるGAGを一部溶解するが完全には溶解しない溶媒であってもよい。
【0036】
硫酸化剤は、GAGを硫酸化することが可能な化合物である限り特に制限されない。硫酸化剤は、例えば、硫酸化反応に通常用いられる公知の硫酸化剤であってよい。硫酸化剤は、例えば、三酸化硫黄そのものや三酸化硫黄との複合体、クロロスルホン酸などのハロゲンスルホン酸等であってよい。硫酸化剤は、三酸化硫黄との複合体であることが好ましい。三酸化硫黄との複合体としては、三酸化硫黄錯体が挙げられる。三酸化硫黄錯体は、三酸化硫黄とルイス塩基が配位結合してなる化合物である。ここにいうルイス塩基としては、アミンやピリジンが挙げられる。三酸化硫黄錯体としては、三酸化硫黄とアミンからなる錯体(三酸化硫黄アミン錯体)や三酸化硫黄とピリジンからなる錯体(三酸化硫黄ピリジン錯体)が挙げられる。三酸化硫黄アミン錯体としては、三酸化硫黄トリアルキルアミン錯体が挙げられる。三酸化硫黄トリアルキルアミン錯体としては、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄ジメチルエチルアミン錯体、三酸化硫黄メチルジエチルアミン錯体、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体が挙げられる。
【0037】
硫酸化反応溶液に含まれる硫酸化剤の量は特に制限されず、硫酸化剤の種類や所望する硫酸化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、硫酸化剤は、例えば、硫酸化反応溶液における硫酸化剤の重量濃度(w/v)が以下に例示する濃度範囲となるように用いることができる。硫酸化剤の重量濃度は、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上であってよい。硫酸化剤の重量濃度は、例えば、100%以下、60%以下、40%以下、20%以下であってよい。硫酸化剤の重量濃度としては、0.001%〜100%、0.01%〜60%、0.1%〜40%、1%〜20%等が好ましく例示される。硫酸化剤は1種のみであってもよく、2種またはそれ以上の組み合わせであってもよい。硫酸化剤が2種またはそれ以上の組み合わせである場合は、ここにいう硫酸化剤の重量濃度は、各硫酸化剤における硫酸化剤の重量濃度の総和を意味する。
【0038】
また、本発明の硫酸化方法において、硫酸化剤は、例えば、硫酸化反応溶液に含まれるGAGの構成二糖単位の総数に対する硫酸化剤の量が以下に示す当量の範囲となるように用いることができる。以下に示す硫酸化剤の量における「当量」は、特に断らない限り「モル当量」を意味する。GAGの構成二糖単位の総数に対する硫酸化剤の量は、例えば、0.001当量以上、0.01当量以上、0.1当量以上であってよい。GAGの構成二糖単位の総数に対する硫酸化剤の量は、例えば、200当量以下、120当量以下、60当量以下、30当量以下、10当量以下、5当量以下であってよい。GAGの構成二糖単位の総数に対する硫酸化剤の量としては、0.001当量〜200当量、0.01当量〜120当量、0.1当量〜60当量、0.1当量〜30当量、0.1当量〜10当量、0.1当量〜5当量等が好ましく例示される。硫酸化剤が2種またはそれ以上の組み合わせである場合は、ここにいうGAGの構成二糖単位の総数に対する硫酸化剤の量は、各硫酸化剤におけるGAGの構成二糖単位の総数に対する硫酸化剤の量の総和を意味する。GAGの構成二糖単位の総数は、例えば、公知の方法により測定することができる。GAGの構成二糖単位の総数は、具体的には、例えば、後述する<参考例6>、<参考例10>、<参考例11>に記載の二糖分析法によって測定することができる。また、GAGの構成二糖単位の総数は、例えば、カルバゾール硫酸法(BITTER T, MUIR HM., Anal Biochem. 1962 Oct; 4: 330-4.)によって測定することもできる。
【0039】
硫酸化剤の形状は、気体であってもよく、粉末や顆粒等の固体であってもよく、液体であってもよい。ここにいう液体は、気体や固体の硫酸化剤と溶媒を共存させたものであってよい。ここにいう溶媒は、有機溶媒であってもよく、無機溶媒であってもよく、有機溶媒と無機溶媒の混合溶媒であってもよい。また、ここにいう溶媒は、共存させる硫酸化剤を溶解する溶媒であってもよく、共存させる硫酸化剤を溶解しない溶媒であってもよい。ここにいう硫酸化剤を溶解しない溶媒は、共存させる硫酸化剤を一切溶解しない溶媒であってもよいし、共存させる硫酸化剤を一部溶解するが完全には溶解しない溶媒であってもよい。
【0040】
硫酸化反応溶液は、溶媒以外の成分としてGAGと硫酸化剤のみを含む強塩基性の溶液であってもよく、溶媒以外の成分としてGAG、硫酸化剤、強塩基のみを含む強塩基性の溶液であってもよく、溶媒以外の成分としてこれら以外の他の成分をさらに含む強塩基性の溶液であってもよい。ここにいう他の成分は、硫酸化反応溶液中に含まれていても硫酸化反応が可能な成分である限り特に制限されない。そのような他の成分としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩、硫酸塩、界面活性剤、緩衝剤、GAGを抽出した動物または微生物に由来する成分(核酸、タンパク質、炭水化物、脂質等)が挙げられる。他の成分としては、具体的には、硫酸ナトリウムやエシェリヒア・コリ等の微生物に由来する成分が挙げられる。
【0041】
本発明の硫酸化方法において、硫酸化反応に用いられる物質は、任意の順序または同時に添加して共存させることができる。硫酸化反応は、例えば、GAG、硫酸化剤、無機溶媒に加え、必要に応じて、強塩基、他の成分、有機溶媒を任意の順序で添加して行うことができる。また、本発明の硫酸化方法においては、硫酸化反応溶液の調製後にさらに任意の溶媒を添加することもできる。例えば、調製した硫酸化反応溶液において強塩基や硫酸化剤の一部または全てが溶解しない状態であった場合は、それらを溶解させるために必要な溶媒をさらに添加することで完全に溶解させることができる。硫酸化反応溶液の調製は、用いる物質を添加するごとに適宜撹拌し混合させて行うことが好ましい。
【0042】
本発明の硫酸化方法において、硫酸化反応溶液中のGAGは一切溶解されない状態であってもよいし、一部溶解されるが完全には溶解されない状態であってもよいし、完全に溶解された状態であってもよい。硫酸化反応溶液中のGAGが一切溶解されない状態または一部溶解されるが完全には溶解されない状態である場合は、硫酸化反応溶液を適宜撹拌してGAGを溶媒中に分散させた状態を保つことが好ましい。
【0043】
硫酸化反応を行う温度は特に制限されず、硫酸化剤の種類や所望する硫酸化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、硫酸化反応を行う温度は、例えば、以下に例示する温度範囲となるように設定することができる。硫酸化反応を行う温度は、例えば、0℃以上、4℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、40℃以上であってよい。硫酸化反応を行う温度は、例えば、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下であってよい。硫酸化反応を行う温度としては、0℃〜100℃、0℃〜60℃、4℃〜90℃、4℃〜60℃、10℃〜80℃、20℃〜70℃、20℃〜60℃、30℃〜70℃、40℃〜60℃等が好ましく例示される。
【0044】
硫酸化反応を行う時間は特に制限されず、硫酸化剤の種類や所望する硫酸化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の硫酸化方法において、硫酸化反応を行う時間は、例えば、以下に例示する時間の範囲となるように設定することができる。硫酸化反応を行う時間は、例えば、1分間以上、5分間以上、10分間以上、20分間以上、30分間以上、1時間以上であってよい。硫酸化反応を行う時間は、例えば、168時間以下、48時間以下、24時間以下、18時間以下、6時間以下、3時間以下であってよい。硫酸化反応を行う時間としては、1分間〜168時間、5分間〜168時間、5分間〜48時間、10分間〜24時間、20分間〜18時間、30分間〜6時間、1時間〜3時間等が好ましく例示される。
【0045】
硫酸化反応は静置した状態で行うことができるが、硫酸化反応溶液を適宜撹拌してGAGと硫酸化剤を溶液中に均一に分散させた状態を保つことが好ましい。
【0046】
本発明において、糖残基(HexNやHexAなど)はD体であることが好ましい。
【0047】
本発明の硫酸化方法によれば、GAGを硫酸化することができる。本発明の硫酸化方法において、硫酸化は、アミノ基の硫酸化(N−硫酸化)および/または水酸基の硫酸化(O−硫酸化)であってよい。言い換えると、硫酸化は、N−硫酸化およびO−硫酸化(N,O−硫酸化)、N−硫酸化、またはO−硫酸化であってよい。
【0048】
(2)本発明の硫酸化GAGの製造方法1
本発明の硫酸化GAGの製造方法1(以下「本発明の製造方法1」という。)は、本発明の硫酸化方法を行う工程を含むことを特徴とした、硫酸化GAGの製造方法である。
【0049】
本発明において、硫酸化GAGとは、硫酸化反応を行う前のGAGに比して硫酸化の程度が高まったGAGであること、言い換えると、GAGの硫酸化の程度を示す指標が硫酸化反応を行う前のGAGに比して増加したGAGであることを意味する。
【0050】
GAGの硫酸化の程度を示す指標は、例えば、GAGが有する硫酸基の数を構成二糖単位の数で除して算出される値(構成二糖単位あたりの硫酸基の数の平均値)を百分率換算した値(以下「硫酸化度」という。)として示すことができる。硫酸化度は、例えば、公知の手法により算出することができる。硫酸化度は、具体的には、例えば、<参考例7>、<参考例8>、<参考例13>に記載の方法により算出することができる。
【0051】
また、GAGの硫酸化の程度を示す指標は、例えば、GAGが有する硫黄原子の量(GAGが有する硫黄原子の数と硫黄の原子量を乗じた値)をGAGの分子量で除して算出される値を百分率換算した値(GAGを構成する原子の総重量に対する硫黄原子の総重量を重量パーセント濃度(w/w)で示した値)(以下「硫黄含量」という。)として示すこともできる。硫黄含量は、例えば、公知の手法により測定することができる。硫黄含量は、具体的には、例えば、酸素フラスコ燃焼法によって測定することができる。また、硫黄含量は、具体的には、例えば、<参考例9>、<参考例12>に記載の方法により算出することができる。
【0052】
本発明の硫酸化方法に供されるGAGは、前述の通り、GAGそのものであってもよく、異性化されたGAGであってもよく、側鎖を有するGAGであってもよく、GAGの誘導体であってもよい。すなわち、本発明において、硫酸化GAGは、GAGそのものが硫酸化されたものであってもよいし、異性化されたGAGが硫酸化されたものであってもよいし、側鎖を有するGAGが硫酸化されたものであってもよいし、GAGの誘導体が硫酸化されたものであってもよい。GAGの誘導体としては、脱アセチル化されたGAGや疎水基(メチル基等のアルキル基、アセチル基等のアシル基、フェニル基等のアリール基等)が付加されたGAGが挙げられ、具体的には、脱アセチル化GAGやアルキル化GAGが挙げられる。本発明において硫酸化GAGは、硫酸化されたGAGの誘導体であってよく、具体的には、例えば、硫酸化された脱アセチル化GAGであってよく、硫酸化されたアルキル化GAGであってよい。
【0053】
本発明の製造方法1は、本発明の硫酸化方法を行う工程の他、必要に応じて他の工程をさらに含んでいてよい。ここにいう他の工程としては、硫酸化反応を停止させる工程が挙げられる。硫酸化反応は、例えば、硫酸化反応溶液を硫酸化反応に好適なpHよりも低いpHにすることにより、好ましくは硫酸化反応溶液を中性または弱酸性にすることにより停止させることができる。硫酸化反応は、具体的には、例えば、pHを0〜8に、好ましくはpHを2〜8に、より好ましくはpHを4〜8に、さらに好ましくはpHを6〜8にすることにより停止させることができる。硫酸化反応は、例えば、硫酸化反応溶液に中和成分や酸性成分等を添加することにより停止させることができる。ここにいう酸性成分は、水と共存した時に溶液を酸性にする化合物である限り特に制限されない。酸性成分としては、具体的には、酢酸や塩酸が挙げられる。
【0054】
また、ここにいう他の工程としては、硫酸化GAGのアセチル化を行う工程も挙げられる。硫酸化GAGをアセチル化する方法は特に制限されず、例えば、公知の手法により行うことができる。硫酸化GAGをアセチル化する方法としては、無水酢酸を用いる方法が挙げられる。無水酢酸を用いる方法としては、公知の文献(Purkerson ML, Tollefsen DM, Klahr S., J Clin Invest. 1988 Jan; 81(1): 69-74.)に記載の方法が挙げられる。
【0055】
さらに、ここにいう他の工程としては、硫酸化GAGの精製を行う工程も挙げられる。硫酸化GAGを精製する方法は特に制限されず、例えば、公知の手法により行うことができる。硫酸化GAGを精製する方法としては、エタノール等の溶媒を利用するアルコール沈殿法や、陰イオン交換等のクロマトグラフィーが挙げられる。
【0056】
(3)本発明の硫酸化GAGの製造方法2
本発明の硫酸化GAGの製造方法2(以下「本発明の製造方法2」という。)は、本発明の硫酸化方法によって硫酸化反応を行う工程を含むことの他、GAGの脱アセチル化反応(GAGを脱アセチル化する反応)を行う工程をさらに含むことを特徴とした、硫酸化GAGの製造方法である。本発明の製造方法2によって製造される硫酸化GAGは、硫酸化反応および脱アセチル化反応を行う前のGAGに比してアセチル化の程度が低下したGAGであること、言い換えると、アセチル化の程度を示す指標が硫酸化反応および脱アセチル化反応を行う前のGAGに比して低下したGAGである。アセチル化の程度を示す指標は、例えば、GAGが有するアセチル基の数を構成二糖単位の数で除して算出される値(構成二糖単位あたりのアセチル基の数の平均値)を百分率換算した値(以下「脱アセチル化度」という。)として示すことができる。
【0057】
本発明の製造方法2において、脱アセチル化は、アミノ基の脱アセチル化(N−脱アセチル化)および/または水酸基の脱アセチル化(O−脱アセチル化)であってよい。言い換えると、脱アセチル化は、N−脱アセチル化およびO−脱アセチル化(N,O−脱アセチル化)、N−脱アセチル化、またはO−脱アセチル化であってよい。ここにいうアミノ基は、GAGが本来的に有するアミノ基(GAGの糖残基のアミノ基)であってよい。ここにいう水酸基は、GAGが本来的に有する水酸基(GAGの糖残基の水酸基)であってよい。
【0058】
本発明の製造方法2において、脱アセチル化反応を行う方法は、例えば、アルカリ加水分解法である。本発明の製造方法2において、脱アセチル化反応は、例えば、塩基性の溶液とGAGを共存させることにより行うことができる。よって、脱アセチル化反応は、例えば、塩基性の溶液にGAGを添加することや、GAGを含む溶液を塩基性にすることによって行うことができる。
【0059】
本発明の製造方法2において、脱アセチル化反応と硫酸化反応は同時に行ってもよいし、脱アセチル化反応を行った後に硫酸化反応を行ってもよいし、硫酸化反応を行った後に脱アセチル化反応を行ってもよい。また、本発明の製造方法2において、溶液のpHや溶液に含まれる成分は、脱アセチル化反応を行う時と硫酸化反応を行う時においてそれぞれ同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、脱アセチル化反応を行った後に硫酸化反応を行う場合、脱アセチル化反応を行った後に酸や塩基を添加して溶液のpHを変化させた後に硫酸化反応を行ってもよいし、脱アセチル化反応を行った後に他の成分を添加して溶液に含まれる成分を変化させた後に硫酸化反応を行ってもよい。
【0060】
脱アセチル化反応を行う時の溶液のpH(以下「脱アセチル化反応時のpH」という。)は特に制限されず、所望する脱アセチル化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。脱アセチル化反応時のpHは、例えば、pH11以上、pH11.5以上、pH12以上、pH12.5以上、pH13以上であってよい。脱アセチル化反応時のpHは、例えば、pH14以下、pH13.5以下であってよい。
【0061】
脱アセチル化反応を行う時の溶液の温度(以下「脱アセチル化反応時の温度」という。)は特に制限されず、溶液のpHや所望する脱アセチル化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。脱アセチル化反応時の温度は、例えば、以下に例示する温度の範囲となるように設定することができる。脱アセチル化反応時の温度は、例えば、20℃以上、30℃以上、40℃以上であってよい。脱アセチル化反応時の温度は、例えば、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下であってよい。脱アセチル化反応時の温度としては、20℃〜100℃、20℃〜90℃、30℃〜80℃、30℃〜70℃、40℃〜60℃等が好ましく例示される。
【0062】
脱アセチル化反応を行う時間は特に制限されず、溶液の温度やpH、所望する脱アセチル化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。脱アセチル化反応を行う時間は、例えば、以下に例示する時間の範囲となるように設定することができる。脱アセチル化反応を行う時間は、例えば、1分間以上、5分間以上、10分間以上、30分間以上、1時間以上であってよい。脱アセチル化反応を行う時間は、例えば、72時間以下、48時間以下、24時間以下、8時間以下、4時間以下であってよい。脱アセチル化反応を行う時間としては、1分間〜72時間、5分間〜48時間、10分間〜24時間、30分間〜8時間、1時間〜4時間等が好ましく例示される。
【0063】
本発明の製造方法2は、必要に応じて他の工程をさらに含んでいてよい。ここにいう他の工程としては、例えば、本発明の製造方法1に挙げた他の工程が挙げられる。
【0064】
(4)本発明の硫酸化GAGの製造方法3
本発明の硫酸化GAGの製造方法3(以下「本発明の製造方法3」という。)は、本発明の硫酸化方法によって硫酸化反応を行う工程を含むことの他、GAGのアルキル化反応(GAGをアルキル化する反応)を行う工程をさらに含むことを特徴とした、硫酸化GAGの製造方法である。本発明の製造方法3によって製造される硫酸化GAGは、硫酸化反応およびアルキル化反応を行う前のGAGに比してアルキル化の程度が高まったGAGであること、言い換えると、アルキル化の程度を示す指標が硫酸化反応およびアルキル化反応を行う前のGAGに比して高まったGAGである。アルキル化の程度を示す指標は、例えば、GAGが有するアルキル基の数を構成二糖単位の数で除して算出される値(構成二糖単位あたりのアルキル基の数の平均値)を百分率換算した値(以下「アルキル化度」という。)として示すことができる。ここにいうアルキル化としては、具体的には、メチル化やエチル化が挙げられる。
【0065】
本発明の製造方法3において、アルキル化は、アミノ基のアルキル化(N−アルキル化)および/または水酸基のアルキル化(O−アルキル化)であってよい。言い換えると、アルキル化は、N−アルキル化およびO−アルキル化(N,O−アルキル化)、N−アルキル化、またはO−アルキル化であってよい。ここにいうアミノ基は、GAGが本来的に有するアミノ基(GAGの糖残基のアミノ基)であってよい。ここにいう水酸基は、GAGが本来的に有する水酸基(GAGの糖残基の水酸基)であってよい。
【0066】
本発明の製造方法3において、アルキル化反応は、例えば、GAGとアルキル化剤を塩基性の溶液中に共存させることにより行うことができる。よって、アルキル化反応は、例えば、GAGを含む塩基性の溶液にアルキル化剤を添加することや、アルキル化剤を含む塩基性の溶液にGAGを添加することや、GAGとアルキル化剤を含む溶液を塩基性にすることによって行うことができる。
【0067】
アルキル化剤は、アルキル化反応に通常用いられる公知のアルキル化剤であってよく、GAGをアルキル化することが可能な化合物である限り特に制限されない。アルキル化剤としては、ハロゲン化アルキルが挙げられる。ハロゲン化アルキルとしては、ヨードメタン、ヨードエタンが挙げられる。
【0068】
本発明の製造方法3において、アルキル化反応と硫酸化反応は同時に行ってもよいし、アルキル化反応を行った後に硫酸化反応を行ってもよいし、硫酸化反応を行った後にアルキル化反応を行ってもよい。また、本発明の製造方法3において、溶液のpHや溶液に含まれる成分は、アルキル化反応を行う時と硫酸化反応を行う時においてそれぞれ同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、アルキル化反応を行った後に硫酸化反応を行う場合、アルキル化反応を行った後に酸や塩基を添加して溶液のpHを変化させた後に硫酸化反応を行ってもよいし、アルキル化反応を行った後に他の成分を添加して溶液に含まれる成分を変化させた後に硫酸化反応を行ってもよい。
【0069】
アルキル化反応を行う時の溶液のpH(以下「アルキル化反応時のpH」という。)は特に制限されず、所望するアルキル化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。アルキル化反応時のpHは、例えば、pH11以上、pH11.5以上、pH12以上、pH12.5以上、pH13以上であってよい。アルキル化反応時のpHは、例えば、pH14以下、pH13.5以下であってよい。
【0070】
アルキル化反応を行う時の溶液の温度(以下「アルキル化反応時の温度」という。)は特に制限されず、溶液のpHや所望するアルキル化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。アルキル化反応時の温度は、例えば、以下に例示する温度の範囲となるように設定することができる。アルキル化反応時の温度は、例えば、20℃以上、30℃以上、40℃以上であってよい。アルキル化反応時の温度は、例えば、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下であってよい。アルキル化反応時の温度としては、20℃〜100℃、20℃〜90℃、30℃〜80℃、30℃〜70℃、40℃〜60℃等が好ましく例示される。
【0071】
アルキル化反応を行う時間は特に制限されず、溶液の温度やpH、所望するアルキル化の程度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。アルキル化反応を行う時間は、例えば、以下に例示する時間の範囲となるように設定することができる。アルキル化反応を行う時間は、例えば、1分間以上、5分間以上、10分間以上、30分間以上、1時間以上であってよい。アルキル化反応を行う時間は、例えば、72時間以下、48時間以下、24時間以下、8時間以下、4時間以下であってよい。アルキル化反応を行う時間としては、1分間〜72時間、5分間〜48時間、10分間〜24時間、30分間〜8時間、1時間〜4時間等が好ましく例示される。
【0072】
本発明の製造方法3は、必要に応じて他の工程をさらに含んでいてよい。ここにいう他の工程としては、例えば、本発明の製造方法1に挙げた他の工程が挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法2および本発明の製造方法3において、塩基性の溶液については、本発明の製造方法1における強塩基性の溶液についての記載を準用できる。例えば、塩基性の溶液は、強塩基を含む溶液であってよく、この場合における強塩基については、本発明の製造方法1における強塩基についての記載を準用できる。
【0074】
本発明の製造方法1、本発明の製造方法2、および本発明の製造方法3(以下総称して「本発明の製造方法」という。)は、一態様において、それぞれ独立して、アミノ基および水酸基が硫酸化されたGAG(N,O−硫酸化GAG)の製造方法、アミノ基が硫酸化されたGAG(N−硫酸化GAG)の製造方法、または、水酸基が硫酸化されたGAG(O−硫酸化GAG)の製造方法であってよい。また、本発明の製造方法が2以上の反応を含むことを特徴とした方法である場合は、それらの反応はワンポット合成で行われることを特徴としてもよい。例えば、本発明の製造方法2における硫酸化反応と脱アセチル化反応は、ワンポット合成で行われることを特徴としてもよい。また、例えば、本発明の製造方法3における硫酸化反応とアルキル化反応は、ワンポット合成で行われることを特徴としてもよい。ワンポット合成とは、2以上の反応を伴う多段階合成を行う場合において、反応中間体を精製して単離することなく目的産物を調製する合成方法であることを意味する。本発明の製造方法において、ワンポット合成は、さらに溶媒の置換をすることなく目的産物を調製する合成方法であってもよい。
【0075】
(5)本発明の硫酸化GAG
本発明の製造方法により製造することができる硫酸化GAG(以下「本発明の硫酸化GAG」という。)は、構成二糖単位の組成比(以下「二糖組成比」という。)において特に制限されないGAGであってよい。本発明の硫酸化GAGの二糖組成比は、本発明の硫酸化方法を行う時の諸条件に応じて任意の値に制御することができる。具体的には、GAGの種類や濃度、硫酸化剤や強塩基の種類や量、pH、反応時間、反応温度、有機溶媒の濃度等の諸条件を適宜設定し、反応産物が所望の二糖組成比を有する硫酸化GAGとなる条件に設定すればよい。
【0076】
本発明の硫酸化GAGは、例えば、二糖組成比において以下の特徴を有するGAGであってよい。
【0077】
以下に示す二糖組成比における「%」は、特に断らない限り「モル%」を意味する。本発明の硫酸化GAGにおいて、二糖組成比は任意の値であってよい。本発明の硫酸化GAGは、例えば、二糖組成比において以下の特徴を有するGAGであってよい。本発明の硫酸化GAGの二糖組成比は、例えば、各二糖においてそれぞれ独立して、99.9%以下、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下であってよい。また、本発明の硫酸化GAGの二糖組成比は、例えば、各二糖においてそれぞれ独立して、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上であってよい。本発明の硫酸化GAGの二糖組成比としては、各二糖においてそれぞれ独立して、0.1%〜99.9%、0.1%〜99%、0.1%〜95%、0.1%〜90%、0.1%〜85%、0.1%〜80%、0.1%〜75%、0.1%〜70%、0.1%〜65%、0.1%〜60%、0.1%〜55%、0.1%〜50%、0.1%〜45%、0.1%〜40%、0.1%〜35%、0.1%〜30%、0.1%〜25%、0.1%〜20%、0.1%〜15%、0.1%〜10%、0.1%〜9%、0.1%〜8%、0.1%〜7%、0.1%〜6%、0.1%〜5%、0.1%〜4%、0.1%〜3%、0.1%〜2%、0.1%〜1%、1%〜5%、1%〜6%、1%〜7%、1%〜8%、1%〜9%、1%〜10%、1%〜15%、1%〜20%、1%〜25%、2%〜5%、2%〜6%、2%〜7%、2%〜8%、2%〜9%、2%〜10%、2%〜15%、2%〜20%、2%〜25%、3%〜5%、3%〜6%、3%〜7%、3%〜8%、3%〜9%、3%〜10%、3%〜15%、3%〜20%、3%〜25%、4%〜5%、4%〜6%、4%〜7%、4%〜8%、4%〜9%、4%〜10%、4%〜15%、4%〜20%、4%〜25%、5%〜6%、5%〜7%、5%〜8%、5%〜9%、5%〜10%、5%〜15%、5%〜20%、5%〜25%、5%〜30%、5%〜40%、5%〜50%、5%〜60%、5%〜70%、5%〜80%、5%〜90%、10%〜15%、10%〜20%、10%〜25%、10%〜30%、10%〜40%、10%〜50%、10%〜60%、10%〜70%、10%〜80%、10%〜90%、15%〜20%、15%〜25%、15%〜30%、15%〜40%、15%〜50%、15%〜60%、15%〜70%、15%〜80%、15%〜90%、20%〜25%、20%〜30%、20%〜40%、20%〜50%、20%〜60%、20%〜70%、20%〜80%、20%〜90%、25%〜30%、25%〜40%、25%〜50%、25%〜60%、25%〜70%、25%〜80%、25%〜90%、30%〜40%、30%〜50%、30%〜60%、30%〜70%、30%〜80%、30%〜90%、40%〜50%、40%〜60%、40%〜70%、40%〜80%、40%〜90%等が好ましく例示される。
【0078】
本発明の硫酸化GAGの二糖組成比は、例えば、公知の方法により測定することができる。二糖組成比は、具体的には、例えば、後述する<参考例6>、<参考例10>又は<参考例11>に記載の二糖分析法によって測定することができる。
【0079】
(6)本発明の硫酸化コンドロイチン(本発明のコンドロイチン硫酸)
本発明の硫酸化GAGがCHを硫酸化して得られるGAG(以下「本発明の硫酸化CH」という。)である場合は、例えば、二糖組成比において以下の特徴を有するGAGであってよい。以後の説明において、[HexA1−3GalN1−4]で示される構造を含む二糖をCH−0S、[HexA1−3GalN(6S)1−4]で示される構造を含む二糖をCH−6S、[HexA1−3GalN(4S)1−4]で示される構造を含む二糖をCH−4S、[HexA(2S)1−3GalN1−4]で示される構造を含む二糖をCH−2S、[HexA(2S)1−3GalN(6S)1−4]で示される構造を含む二糖をCH−diS、[HexA1−3GalN(4,6S)1−4]で示される構造を含む二糖をCH−diS、[HexA(2S)1−3GalN(4S)1−4]で示される構造を含む二糖をCH−diS、[HexA(2S)1−3GalN(4,6S)1−4]で示される構造を含む二糖をCH−triSとそれぞれ略記する。前記において、式中、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「6S」は6−O−硫酸基を、「4S」は4−O−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基をそれぞれ示す。「HexA」は、GlcAまたはIdoAであってよい。「1−3グリコシド結合」は、HexAがGlcAである場合はβ1−3グリコシド結合であってよく、HexAがIdoAである場合はα1−3グリコシド結合であってよい。「1−4グリコシド結合」は、β1−4グリコシド結合であってよい。上記において、各二糖は明記された硫酸基以外の硫酸基を有しないものとする。上記において、「含む」という表現は「からなる」場合を包含する。よって、例えば、「[HexA1−3GalN1−4]で示される構造を含む二糖」は、「[HexA1−3GalN1−4]で示される構造からなる二糖」であってもよい。また、例えば、上記において、「GalN」は、GalNAcであってよい。よって、例えば、「[HexA1−3GalN1−4]で示される構造を含む二糖」は、「[HexA1−3GalNAc1−4]で示される構造を含む二糖」であってもよく、「[HexA1−3GalNAc1−4]で示される構造からなる二糖」であってもよい。
【0080】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比において硫酸基を有する二糖(CH−0Sを除く二糖)の中でCH−6Sを最も多く有することを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−6Sが占める割合が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−6Sが占める割合が100%以下、80%以下、60%以下、50%以下であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−6Sが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−6Sが占める割合の範囲としては、具体的には、例えば、10%〜100%、20%〜80%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜50%が挙げられる。
【0081】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−4SをCH−6Sより少なく有することを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−4Sが占める割合が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−4Sが占める割合が0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、1%以上であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−4Sが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−4Sが占める割合の範囲としては、具体的には、例えば、0.1%〜5%、0.2%〜4%、0.2%〜3%、0.2%〜2%、0.5%〜3%、0.5%〜2%、1%〜2%が挙げられる。
【0082】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−2SをCH−4Sより多く有することを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−2Sが占める割合が3%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましく、6%以上であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−2Sが占める割合が25%以下、20%以下、15%以下、10%以下であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−2Sが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−2Sが占める割合の範囲としては、具体的には、例えば、3%〜25%、4%〜20%、4%〜15%、4%〜10%、5%〜15%、5%〜10%、6%〜10%が挙げられる。
【0083】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−4Sに対するCH−2Sの割合(2S/4S比)が以下に例示する範囲であることを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、2S/4S比が3超であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、5以上であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、2S/4S比が20以下、15以下、10以下であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、2S/4S比の範囲としては、3超〜20、3超〜15、3.5〜15、3.5〜10、4〜10、5〜10等が挙げられる。
【0084】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−2SをCH−6Sより少なく有することを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−2Sが占める割合が25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−2Sが占める割合が3%以上、4%以上、5%以上、6%以上であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−2Sが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−2Sが占める割合の範囲としては、具体的には、例えば、3%〜25%、4%〜20%、4%〜15%、4%〜10%、5%〜15%、5%〜10%、6%〜10%が挙げられる。
【0085】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−6Sに対するCH−2Sの割合(2S/6S比)が以下に例示する範囲であることを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、2S/6S比が2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、2S/6S比が0.1超、0.125以上、0.15以上であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、2S/6S比の範囲としては、0.1超〜2、0.125〜2、0.125〜1.5、0.15〜1.5、0.15〜1、0.15〜0.5等が挙げられる。
【0086】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−diSを実質的に有しないことを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、CH−diSが占める二糖組成比が1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。また、本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−diSを有しないことを特徴としたGAGであってもよい。
【0087】
本発明の硫酸化CHは、例えば、二糖組成比においてCH−diSをCH−4Sより多く有することを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−diSが占める割合が10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。本発明の硫酸化CHは、二糖組成比においてCH−diSが占める割合が50%以下、40%以下、35%以下、30%以下であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−diSが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−diSが占める割合の範囲としては、具体的には、例えば、10%〜50%、15%〜40%、15%〜35%、15%〜30%、20%〜35%、20%〜30%、25%〜30%、25%〜40%、25%〜50%が挙げられる。
【0088】
本発明の硫酸化CHにおいて、CH−0S、CH−diS、CH−triSが占める二糖組成比は、各二糖においてそれぞれ独立して任意の値であってよい。本発明の硫酸化CHにおいて、CH−0S、CH−diS、CH−triSが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。
【0089】
本発明の硫酸化CHの二糖組成比は、例えば、後述する<参考例6>に記載の二糖分析法によって不飽和二糖の組成比を測定して算出することができる。具体的には、CH−0Sの二糖組成比はΔDi−0Sの組成比として、CH−6Sの二糖組成比はΔDi−6Sの組成比として、CH−4Sの二糖組成比はΔDi−4Sの組成比として、CH−2Sの二糖組成比はΔDi−2Sの組成比として、CH−diSの二糖組成比はΔDi−diSの組成比として、CH−diSの二糖組成比はΔDi−diSの組成比として、CH−diSの二糖組成比はΔDi−diSの組成比として、CH−triSの二糖組成比はΔDi−triSの組成比として、それぞれ測定することができる。
【0090】
本発明の硫酸化CHの分子量は特に制限されず、任意の値であってよい。分子量は、例えば、前記「(1)本発明の硫酸化方法」に本発明の硫酸化方法に供されるGAGの分子量として例示した分子量であってよい。
【0091】
本発明の硫酸化CHの硫酸化度は特に制限されず、任意の値であってよい。硫酸化度は、例えば、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、50%以上であってよい。硫酸化度は、例えば、400%以下、200%以下、150%以下、125%以下であってよい。硫酸化度としては、1%〜400%、5%〜200%、10%〜200%、10%〜150%、10%〜125%、25%〜200%、25%〜150%、25%〜125%、50%〜200%、50%〜150%、50%〜125%等が好ましく例示される。
【0092】
(7)本発明の硫酸化ヒアルロン酸
本発明の硫酸化GAGがHAを硫酸化して得られるGAG(以下「本発明の硫酸化HA」という。)である場合は、例えば、二糖組成比において以下の特徴を有するGAGであってよい。以後の説明において、[HexA1−3GlcN1−4]で示される構造を含む二糖をHA−0S、[HexA1−3GlcN(6S)1−4]で示される構造を含む二糖をHA−6S、[HexA1−3GlcN(4S)1−4]で示される構造を含む二糖をHA−4S、[HexA(2S)1−3GlcN1−4]で示される構造を含む二糖をHA−2Sとそれぞれ略記する。前記において、式中、「1−3」は1−3グリコシド結合を、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「6S」は6−O−硫酸基を、「4S」は4−O−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基をそれぞれ示す。「HexA」は、GlcAまたはIdoAであってよい。「1−3グリコシド結合」は、HexAがGlcAである場合はβ1−3グリコシド結合であってよく、HexAがIdoAである場合はα1−3グリコシド結合であってよい。「1−4グリコシド結合」は、β1−4グリコシド結合であってよい。上記において、「含む」という表現は「からなる」場合を包含する。よって、例えば、「[HexA1−3GlcN1−4]で示される構造を含む二糖」は、「[HexA1−3GlcN1−4]からなる二糖」であってもよい。また、例えば、上記において、「GlcN」は、GlcNAcであってよい。よって、例えば、「[HexA1−3GlcN1−4]で示される構造を含む二糖」は、「[HexA1−3GlcNAc1−4]で示される構造を含む二糖」であってもよく、「[HexA1−3GlcNAc1−4]からなる二糖」であってもよい。
【0093】
本発明の硫酸化HAは、例えば、二糖組成比においてHA−4Sを有することを特徴としたGAGであってよい。本発明の硫酸化HAにおいて、HA−4Sが占める二糖組成比は任意の値であってよい。本発明の硫酸化HAにおいて、HA−4Sが占める二糖組成比は、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上であってよい。HA−4Sが占める二糖組成比は、例えば、25%以下、20%以下、15%以下であってよい。本発明の硫酸化HAにおいて、CH−4Sが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。本発明の硫酸化HAにおいて、HA−4Sが占める割合の範囲としては、具体的には、例えば、0.1%〜25%、1%〜20%、1%〜15%、2%〜20%、2%〜15%、3%〜20%、3%〜15%、4%〜20%、4%〜15%、5%〜20%、5%〜15%が挙げられる。
【0094】
本発明の硫酸化HAにおいて、HA−0S、HA−6S、HA−2Sが占める二糖組成比は、各二糖においてそれぞれ独立して任意の値であってよい。本発明の硫酸化HAにおいて、HA−0S、HA−6S、HA−2Sが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。
【0095】
本発明の硫酸化HAの二糖組成比は、例えば、後述する<参考例10>に記載の二糖分析法によって不飽和二糖の組成比を測定して算出することができる。具体的には、HA−0Sの二糖組成比はΔDiHA−0Sの組成比として、HA−6Sの二糖組成比はΔDiHA−6Sの組成比として、HA−4Sの二糖組成比はΔDiHA−4Sの組成比として、HA−2Sの二糖組成比はΔDiHA−2Sの組成比として、それぞれ測定することができる。
【0096】
本発明の硫酸化HAの分子量は特に制限されず、任意の値であってよい。分子量は、例えば、前記「(1)本発明の硫酸化方法」に本発明の硫酸化方法に供されるGAGの分子量として例示した分子量であってよい。また、本発明の硫酸化HAは、例えば、高分子であることを特徴としたGAGであってよい。分子量は、例えば、4MDa(メガダルトン)以下、3.5MDa以下、3MDa以下、2.5MDa以下であってよい。分子量は、例えば、1MDa以上、1.5MDa以上、2MDa以上であってよい。分子量としては、1MDa〜4MDa、1MDa〜3.5MDa、1MDa〜3MDa、1MDa〜2.5MDa、1.5MDa〜4MDa、1.5MDa〜3.5MDa、1.5MDa〜3MDa、1.5MDa〜2.5MDa、2MDa〜4MDa、2MDa〜3.5MDa、2MDa〜3MDa、2MDa〜2.5MDa等が好ましく例示される。ここにいう分子量は、重量平均分子量を意味する。硫酸化HAの分子量は、例えば、公知の方法により測定することができる。硫酸化HAの分子量は、具体的には、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量であってよい。硫酸化HAの分子量は、より具体的には、例えば、後述する<参考例5>に記載の方法により測定することができる。
【0097】
以下に示す硫黄含量における「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。本発明の硫酸化HAは、例えば、硫黄含量において以下の特徴を有するGAGであってよい。本発明の硫酸化HAにおいて、硫黄含量は任意の値であってよい。硫黄含量は、例えば、10%以下、8%以下、6%以下、4%以下であってよい。硫黄含量は、例えば、0.5%以上、1%以上、2%以上であってよい。硫黄含量としては、0.5%〜10%、0.5%〜8%、0.5%〜6%、0.5%〜4%、1%〜10%、1%〜8%、1%〜6%、1%〜4%、2%〜10%、2%〜8%、2%〜6%、2%〜4%等が好ましく例示される。
【0098】
(8)本発明の硫酸化ヘパロサン
本発明の硫酸化GAGがHPNを硫酸化して得られるGAG(以下「本発明の硫酸化HPN」という。)である場合は、例えば、二糖組成比において以下の特徴を有するGAGであってよい。以後の説明において、[HexA1−4GlcN1−4]で示される構造を含む二糖をHS−0S、[HexA1−4GlcNS1−4]で示される構造を含む二糖をHS−NS、[HexA1−4GlcN(6S)1−4]で示される構造を含む二糖をHS−6S、[HexA(2S)1−4GlcN1−4]で示される構造を含む二糖をHS−2S、[HexA1−4Glc(NS,6S)1−4]で示される構造を含む二糖をHS−diS、[HexA(2S)1−4GlcNS1−4]で示される構造を含む二糖をHS−diS、[HexA(2S)1−4GlcNAc(6S)1−4]で示される構造を含む二糖をHS−diS、[HexA(2S)1−4Glc(NS,6S)1−4]で示される構造を含む二糖をHS−triSとそれぞれ略記する。前記において、式中、「1−4」は1−4グリコシド結合を、「6S」は6−O−硫酸基を、「NS」はN−硫酸基を、「2S」は2−O−硫酸基をそれぞれ示す。「HexA」は、GlcAまたはIdoAであってよい。「HexAの還元末端側の1−4グリコシド結合」は、HexAがGlcAである場合はβ1−4グリコシド結合であってよく、HexAがIdoAである場合はα1−4グリコシド結合であってよい。「HexAの非還元末端側の1−4グリコシド結合」は、α1−4グリコシド結合であってよい。上記において、各二糖は明記された硫酸基以外の硫酸基を有しないものとする。上記において、「含む」という表現は「からなる」場合を包含する。よって、例えば、「[HexA1−4GlcN1−4]で示される構造を含む二糖」は、「[HexA1−4GlcN1−4]からなる二糖」であってもよい。また、例えば、上記において、「GlcN」は、GlcNAcであってよい。よって、例えば、「[HexA1−4GlcN1−4]で示される構造を含む二糖」は、「[HexA1−4GlcNAc1−4]で示される構造を含む二糖」であってもよく、「[HexA1−4GlcNAc1−4]からなる二糖」であってもよい。
【0099】
本発明の硫酸化HPNにおいて、HS−0S、HS−NS、HS−6S、HS−2S、HS−diS、HS−diS、HS−diS、HS−triSが占める二糖組成比は、各二糖においてそれぞれ独立して任意の値であってよい。本発明の硫酸化HPNにおいて、HS−0S、HS−NS、HS−6S、HS−2S、HS−diS、HS−diS、HS−diS、HS−triSが占める二糖組成比の範囲としては、上記「(5)本発明の硫酸化GAG」に例示した二糖組成比の範囲が挙げられる。
【0100】
本発明の硫酸化HPNの二糖組成比は、例えば、後述する<参考例11>に記載の二糖分析法によって不飽和二糖の組成比を測定して算出することができる。具体的には、HS−0Sの二糖組成比はΔDiHS−0Sの組成比として、HS−NSの二糖組成比はΔDiHS−NSの組成比として、HS−6Sの二糖組成比はΔDiHS−6Sの組成比として、HS−2Sの二糖組成比はΔDiHS−2Sの組成比として、HS−diSの二糖組成比はΔDiHS−diSの組成比として、HS−diSの二糖組成比はΔDiHS−diSの組成比として、HS−diSの二糖組成比はΔDiHS−diSの組成比として、HS−triSの二糖組成比はΔDiHS−triSの組成比として、それぞれ測定することができる。
【0101】
本発明の硫酸化HPNの分子量は特に制限されず、任意の値であってよい。分子量は、例えば、前記「(1)本発明の硫酸化方法」に本発明の硫酸化方法に供されるGAGの分子量として例示した分子量であってよい。
【0102】
本発明の硫酸化HPNの硫酸化度は特に制限されず、任意の値であってよい。硫酸化度は、例えば、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、50%以上であってよい。硫酸化度は、例えば、400%以下、200%以下、150%以下、125%以下であってよい。硫酸化度としては、1%〜400%、5%〜200%、10%〜200%、10%〜150%、10%〜125%、25%〜200%、25%〜150%、25%〜125%、50%〜200%、50%〜150%、50%〜125%等が好ましく例示される。
【0103】
(9)本発明の硫酸化GAGの用途
本発明の硫酸化GAGは、一態様において、HEPやDS等の硫酸基を有するGAGと同様の抗凝固活性を有することを特徴としたGAGである。よって、本発明の硫酸化GAGは、ヘパリン様の抗凝固活性を有することを特徴としたグリコサミノグリカンであってよく、具体的には、ヘパリン様の抗凝固活性を有することを特徴としたヘパロサンであってよい。本発明の硫酸化GAGは、例えば、血液の抗凝固剤として使用することができる。
【0104】
また、本発明の硫酸化GAGは、一態様において、動物由来のGAGや、有機溶媒を用いる方法において硫酸化されたGAGなどの公知のGAGとは二糖組成比が異なることを特徴とするGAGである。よって、本発明の硫酸化GAGは、新規の素材としても有用である。
【実施例】
【0105】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0106】
以下に説明する実施例において、硫酸化反応の停止は、酢酸または塩酸を添加して硫酸化反応溶液をpH6〜8に中和することにより行った。
【0107】
以下に説明する実施例において、添加した硫酸化剤の量における当量は、モル当量を意味する。
【0108】
以下に説明する実施例において使用したGAGのうち、HAとCSは市販品(生化学工業社製)を使用し、それら以外のGAG(CH、dCH、NAH)は以下に説明する<参考例1>〜<参考例3>に記載の方法に従って調製したものを使用した。
【0109】
<参考例1>コンドロイチンの調製
コンドロイチン(CH)は、公知の文献(特表2013−520995号公報)に記載の方法に従い、大腸菌MSC702株(大腸菌W3110株(ATCC 27325)に、大腸菌K4株のkfoA、kfoB、kfoC、kfoF、kfoG遺伝子を各4コピー、大腸菌K4株のkpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsC、kpsS、kpsM、kpsT遺伝子を各1コピー、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のxylS遺伝子を1コピー導入して構築)を培養し、培養上清を精製して得た。
【0110】
<参考例2>脱硫酸化コンドロイチン硫酸の調製
脱硫酸化コンドロイチン硫酸(dCH)は、公知の文献(J. Am. Chem. Soc., 1957, 79 (1), pp 152-153)に記載の方法に従い、コンドロイチン硫酸C(CSC)を脱硫酸化して得た。dCHの調製手順を以下に示す。
【0111】
メタノール塩酸溶液(メタノール93mLに塩化アセチルを7mL添加して調製)にCSC(サメ軟骨由来、生化学工業社製)を10g添加し、マグネチックスターラー(以下単に「スターラー」という。)で20時間撹拌した後、遠心分離して沈殿を回収した。この沈殿を100mLの精製水に溶解し、NaOH水溶液を添加して中和した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液を凍結乾燥して得た乾燥粉末に0.1M NaOHを添加し、20g/Lとなるように調製した溶液をスターラーで一晩撹拌した。この溶液にHClを添加して中和した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液を凍結乾燥してdCHの凍結乾燥品を得た。このようにして得られたdCHは、二糖組成比において、CH−0Sが99.8%かつCH−6Sが0.2%であり、他の二糖は検出されないGAGであった。
【0112】
<参考例3>N−アセチルヘパロサンの調製
N−アセチルヘパロサン(NAH)は、公知の文献(特開2004−018840号公報)に記載の方法に従い、大腸菌K5株(Serotype O10:K5(L):H4, ATCC 23506)を培養し、培養上清を精製して得た。
【0113】
<参考例4>グリコサミノグリカンの分子量測定(1)
CH、硫酸化CH、HPN、硫酸化HPNの分子量は、以下の条件に従ったゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量である。
【0114】
CH、硫酸化CH、HPN、硫酸化HPNの分子量の測定は、カラムとしてTSKgelのG4000PWXL、G3000PWXL、G2500PWXL(内径:7.8mm×長さ:300mm、東ソー社製)を順に連結して用い、カラム温度を40℃に設定して行った。移動相には0.2M NaClを用い、流速は0.6mL/minとした。検出は示差屈折率検出器で行い、分子量は1mg/mLに溶解した試料を100μLアプライして得られるピークの保持時間から較正曲線を用いて算出した。較正曲線は、CSC(サメ軟骨由来、生化学工業社製)を段階的にエタノール分画して調製し、静的光散乱法(SLS)により絶対分子量を測定した標準品(分子量:52.2kDa、31.4kDa、20.0kDa、10.2kDa、6.57kDa)を用いて作成した。
【0115】
<参考例5>グリコサミノグリカンの分子量測定(2)
HA、硫酸化HAの分子量は、以下の条件に従ったゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量である。
【0116】
HA、硫酸化HAの分子量の測定は、カラムとしてUltrahydrogel Linear(内径:7.8mm×長さ:300mm、Waters社製)を用い、カラム温度を40℃に設定して行った。移動相には0.2M NaClを用い、流速は0.6mL/minとした。検出は示差屈折率検出器で行い、分子量は1mg/mLに溶解した試料を50μLアプライして得られるピークの保持時間から較正曲線を用いて算出した。較正曲線はプルラン(5.9kDa、11.8kDa、22.8kDa、47.3kDa、112kDa、212kDa、404kDa、788kDa、1.22MDa、2.35MDa、昭和電工社製)を用い、公知文献(Yomota C, Miyazaki T, Okada S., Kokuritsu Iyakuhin Shokuhin Eisei Kenkyusho Hokoku. 1999; 117: 135-9.)に記載の方法に従ったマークホーインク補正を行って作成した。マークホーインク補正は、流体力学的体積が固有粘度[η]と重量平均分子量[Mw]の積の値に比例すること、言い換えると、ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて同一の溶出位置(保持時間)を示す2種類の高分子ポリマーにおいては[η]と[Mw]の積の値が等しくなること、を利用して異種ポリマー間の分子量を補正する方法である。よって、マークホーインク補正を行うことにより、例えば、プルランを標準試料とした場合においても、HAや硫酸化HAの分子量を測定することができる。マークホーインク補正は、プルランは下記の式1で示される数式を、HAは下記の式2で示される数式を用いて、固有粘度[η]をそれぞれ算出して行った。
【0117】
【数1】
【0118】
【数2】
【0119】
上記の数式において、Mwは各物質の重量平均分子量を示す。マークホーインク補正は、HPLCシステム(Prominence GPC、島津製作所社製)に付属のソフトウェアを用いて行った。
【0120】
<参考例6>硫酸化コンドロイチンの組成分析
硫酸化CHの組成分析は、硫酸化CHを酵素で分解して得られる二糖の組成分析(以下「二糖分析」という。)により行った。二糖の検出は、HPLCポストカラム誘導体化法により行った。硫酸化CHの二糖分析の手順を以下に示す。
【0121】
(1)硫酸化コンドロイチンの分解
硫酸化CHに精製水を添加して10mg/mLとなるように調製した溶液に対し、1/2容量の100mM Tris−HCl(pH7.4)と1/2容量のコンドロイチナーゼ溶液(コンドロイチナーゼABC(生化学工業社製)に0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加して0.1U/μLとなるように調製)を添加した溶液を37℃で3時間静置した。この溶液を沸騰水中に1分間静置した後、4倍容の精製水を添加した溶液を遠心ろ過デバイス(マイクロコン−10、ミリポア社製)にアプライし、遠心後のろ液を二糖分析用の試料として回収した。
【0122】
(2)HPLCポストカラム誘導体化法による分析
二糖分析は、カラムとしてSenshu Pak DOCOSIL SP100(内径:4.6mm×長さ:150mm、センシュー科学社製)を用い、カラム温度を55℃に設定して行った。溶離液には溶媒A(精製水)、溶媒B(200mM NaCl)、溶媒C(10mMテトラブチルアンモニウム)、溶媒D(50%アセトニトリル)をオンライン混合した溶液を用い、流速は1.1mL/minとした。カラムの溶出液と0.7mL/minで送液した誘導体化試薬の溶液(0.5% 2−シアノアセトアミドと0.25M NaOHを1:1の割合でオンライン混合させた溶液)を三方ジョイントに通して混合させた後、この混合液を反応コイル(内径:0.5mm×長さ:10m)、冷却コイル(内径:0.25mm×長さ:3m)、蛍光検出器の順に通液させた。反応コイルは、125℃に加温して使用した。冷却コイルは、室温の蒸留水に浸して使用した。蛍光検出器は、励起波長を346nmに、蛍光波長を410nmに設定して使用した。
【0123】
溶離はリニアグラディエントにより行い、溶媒Bの混合比率を分析開始後から10分後までの間に1%から4%に増加させ、10分後から11分後までの間に4%から15%に増加させ、11分後から20分後までの間に15%から25%に増加させ、20分後から22分後までの間に25%から53%に増加させ、22分後から29分後までの間は53%で維持させた。また、溶媒Cと溶媒Dは混合比率の変更を行わず、溶媒Cの混合比率は12%、溶媒Dの混合比率は17%で維持させた。
【0124】
(3)二糖組成の比率の算出
二糖組成の比率(以下「二糖組成比」という。)は、上記(1)で調製した試料を10μLアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いて各二糖のモル数を算出し、各二糖のモル数を全二糖のモル数を総和した値で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料としてコンドロイチン硫酸由来の不飽和二糖(ΔDi−0S(以下「0S」という。)、ΔDi−6S(以下「6S」という。)、ΔDi−4S(以下「4S」という。)、ΔDi−2S(以下「2S」という。)、ΔDi−diS(以下「diS」という。)、ΔDi−diS(以下「diS」という。)、ΔDi−triS(以下「triS」という。)、いずれも生化学工業社製)を用いて作成した。
【0125】
<参考例7>硫酸化コンドロイチンの硫酸化度の算出
硫酸化CHの硫酸化度は、上記<参考例6>で算出した二糖組成比を下記の式3で示される数式に代入して算出した。
【0126】
【数3】
【0127】
上記の数式において、Sは6S、4S、2Sの二糖組成比の合計を、SはdiS、diSの二糖組成比の合計を、SはtriSの二糖組成比をそれぞれ示す。
【0128】
<参考例8>硫酸化ヒアルロン酸の硫酸化度の測定
硫酸化HAの硫酸化度は、硫酸化HAを酸加水分解して得られる試料を測定対象としたキャピラリー電気泳動により測定した。具体的には、硫酸化HAを酸加水分解して得られる試料に含まれるグルコサミン(GlcN)と硫酸イオンのモル濃度をキャピラリー電気泳動により測定し、硫酸イオンのモル濃度をGlcNのモル濃度で除した値を百分率換算して硫酸化度を算出した。硫酸化HAの硫酸化度測定の手順を以下に示す。
【0129】
(1)グリコサミノグリカンの分解
硫酸化HAに精製水を添加して1mg/mLとなるように調製した溶液に対し、3倍容の6N HClを添加した溶液を115℃で3時間静置して酸加水分解した。この溶液を遠心エバポレーターに供して乾固させた後、硫酸化HAに添加した時と等量の精製水を添加して再溶解した。この溶液を遠心して不溶物を沈殿させた後、上清をGlcNと硫酸イオンのモル濃度測定用の試料として回収した。
【0130】
(2)キャピラリー電気泳動による分析
GlcNと硫酸イオンのモル濃度の測定は、キャピラリーとしてUncoated fused silica capillary(内径:50μm×長さ:104cm、アジレント社製)を用い、温度を25℃に設定して行った。移動相にはBasic Anion Buffer(アジレント社製)を用い、印加電圧を−30kVに設定した。検出は分光光度検出器で行い、測定波長を350nm、対照波長を230nmに設定した。
【0131】
(3)硫酸化度の算出
硫酸化度は、上記(1)で調製した試料を100mbarで8秒間加圧してアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いてGlcNと硫酸イオンのモル濃度を算出し、硫酸イオンのモル濃度をGlcNのモル濃度で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料としてGalNAcと硫酸ナトリウム(NaSO)を用い、上記(1)に従った酸加水分解等の処理に供した後の試料を用いて作成した。
【0132】
<参考例9>硫酸化グリコサミノグリカンの硫黄含量の算出
硫酸化GAGの硫黄含量は、硫酸化度を下記の式4で示される数式に代入して算出した。
【0133】
【数4】
【0134】
上記の数式において、0Sの分子量は379.3、SOの分子量は80.1、硫黄の原子量は32.1とした。
【0135】
<参考例10>硫酸化ヒアルロン酸の組成分析
硫酸化HAの組成分析は、硫酸化HAを酵素で分解して得られる二糖の組成分析(二糖分析)により行った。硫酸化HAの二糖分析の手順を以下に示す。
【0136】
(1)硫酸化ヒアルロン酸の分解
硫酸化HAに精製水を添加して10mg/mLとなるように調製した溶液に対し、1/2容量の100mM Tris−HCl(pH7.4)と1/2容量のコンドロイチナーゼ溶液(コンドロイチナーゼABC(生化学工業社製)に0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加して0.1U/μLとなるように調製)を添加した溶液を37℃で3時間静置した。この溶液を沸騰水中に1分間静置した後、4倍容の精製水を添加した溶液を遠心ろ過デバイス(マイクロコン−10、ミリポア社製)にアプライし、遠心後のろ液を二糖分析用の試料として回収した。
【0137】
(2)HPLC分析
二糖分析は、カラムとしてUK−Amino(内径:4.6mm×長さ:150mm、センシュー科学社製)を用い、カラム温度を60℃に設定して行った。溶離液には、溶媒A(精製水)、溶媒B(0.8M NaHPO)をオンラインで混合した溶液を用い、流速は1mL/minとした。検出は分光光度検出器で行い、測定波長を232nmに設定した。
【0138】
溶離はリニアグラディエントにより行い、溶媒Bの混合比率を分析開始後から20分後までの間に2%から65%に増加させた。
【0139】
(3)二糖組成比の比率の算出
二糖組成比は、上記(1)で調製した試料を10μLアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いて各二糖のモル数を算出し、各二糖のモル数を全二糖のモル数を総和した値で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料として硫酸化ヒアルロン酸由来の不飽和二糖(ΔDiHA−0S(以下「0S」という。)、ΔDiHA−6S(以下「6S」という。)、ΔDiHA−4S(以下「4S」という。)、ΔDiHA−2S(以下「2S」という。))を用いて作成した。硫酸化ヒアルロン酸由来の不飽和二糖は、本発明の硫酸化方法により硫酸化したHAを上記(1)の方法により二糖に分解した後、陰イオン交換およびゲルろ過クロマトグラフィーを行って調製し、質量分析およびNMRによって硫酸基の結合位置を同定したものを使用した。
【0140】
<参考例11>硫酸化ヘパロサンの組成分析
硫酸化ヘパロサンの組成分析は、硫酸化ヘパロサンを酵素で分解して得られる二糖の組成分析(二糖分析)により行った。二糖の検出は、HPLCポストカラム誘導体化法により行った。硫酸化ヘパロサンの二糖分析の手順を以下に示す。
【0141】
(1)硫酸化ヘパロサンの分解
硫酸化ヘパロサンに精製水を添加して10mg/mLとなるように調製した溶液に対し、1/2容量の20mM酢酸ナトリウム水溶液(pH7.0)/2mM酢酸カルシウムと1/2容量のEMII溶液(3mU/μL ヘパリチナーゼI、2mU/μL ヘパリチナーゼII、5mU/μL ヘパリナーゼ(いずれも生化学工業社製)となるように0.1%BSAを添加して調製)を添加した溶液を37℃で3時間静置した。この溶液を沸騰水中に1分間静置した後、4倍容の精製水を添加した溶液を遠心ろ過デバイス(マイクロコン−10、ミリポア社製)にアプライし、遠心後のろ液を二糖分析用の試料として回収した。
【0142】
(2)HPLCポストカラム誘導体化法による分析
二糖分析は、<参考例6>の「(2)HPLCポストカラム誘導体化法による分析」に記載の方法と同じ条件により行った。
【0143】
(3)二糖組成比の比率の算出
二糖組成比は、上記(1)で調製した試料を10μLアプライし、上記(2)に従った分析により得られるピークの面積から較正曲線を用いて各二糖のモル数を算出し、各二糖のモル数を全二糖のモル数を総和した値で除した値を百分率換算して算出した。較正曲線は、標準試料としてヘパリンまたはヘパラン硫酸由来の不飽和二糖(ΔDiHS−0S(以下「0S」という。)、ΔDiHS−NS(以下「NS」という。)、ΔDiHS−6S(以下「6S」という。)、ΔDiHS−diS(以下「diS」という。)、ΔDiHS−diS(以下「diS」という。)、ΔDiHS−triS(以下「triS」という。)、いずれも生化学工業社製)を用いて作成した。
【0144】
<参考例12>アルキル化された硫酸化コンドロイチンの硫黄含量の算出
アルキル化された硫酸化CHの硫黄含量は、当該硫酸化CHを酸加水分解して得られる試料を測定対象としたキャピラリー電気泳動により測定した。具体的には、アルキル化された硫酸化CHを酸加水分解して得られる試料に含まれる硫酸イオンのモル濃度をキャピラリー電気泳動により測定した後、下記の式5で示される数式により硫黄含量を算出した。
【数5】
【0145】
上記の式において、硫黄の原子量は32.1、硫酸イオンの分子量は96.1とした。また、上記の式において、GAGの濃度は、アルキル化された硫酸化CHの乾燥重量を試料溶液の液量で除した値である。
【0146】
上記の方法において、酸加水分解とキャピラリー電気泳動による測定は、<参考例8>に記載の方法と同じ条件により行った。
【0147】
<参考例13>硫酸化ヘパロサンの硫酸化度の算出
硫酸化HPNの硫酸化度は、上記<参考例11>で算出した二糖組成比を下記の式6で示される数式に代入して算出した。
【0148】
【数6】
【0149】
上記の数式において、SはNS、6S、2Sの二糖組成比の合計を、SはdiS、diS、diSの二糖組成比の合計を、SはtriSの二糖組成比をそれぞれ示す。
【0150】
<実施例1>強塩基のモル濃度の検討(1)
CH(35.8kDa)にNaSOと0.1M〜4MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量(重量濃度(w/v)でCHと同じ濃度となる量)の三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(TMA−SO)(シグマアルドリッチ社製)を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表1及び図1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
本発明の硫酸化方法により得られた硫酸化CHは、いずれもCH−diSの二糖組成比が0.1%未満であったため表への記載を省略している。以後の実施例においてもCH−diSの表への記載を省略する。
【0153】
表1に示した通り、強塩基性の溶液中でGAGと硫酸化剤を共存させることにより、GAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。また、強塩基のモル濃度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。
【0154】
<実施例2>強塩基のモル濃度の検討(2)
HA(800kDa)にNaSOと0.5M〜4MのNaOH水溶液を添加し、HAが10mg/mL(1% w/v)、NaSOが100mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、58当量(重量濃度(w/v)でHAの20倍の濃度となる量)のTMA−SOを添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に等量の精製水を添加した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0157】
<実施例3>強塩基のモル濃度の検討(3)
CH(35.8kDa)にNaSOと0.05M〜2MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで5分間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表3に示す。
【0158】
【表3】
【0159】
表3に示したpHは、反応終了時(硫酸化剤を添加してから5分後)に測定した硫酸化反応溶液のpHである。表3に示したとおり、pH11.5以上の溶液中でGAGと硫酸化剤を共存させることにより、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0160】
<実施例4>反応温度の検討
CH(41.8kDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を0〜60℃に加温または冷却し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表4に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
表4に示した通り、任意の反応温度においてGAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、反応温度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。また、CHを硫酸化して得られる硫酸化CHは、一態様において、二糖組成比においてCH−6Sを最も多く有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸C(CSC)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSC様多糖の調製が可能であることも分かった。
【0163】
<実施例5>グリコサミノグリカンの濃度の検討(1)
CH(30.2kDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが10〜66.7mg/mL(1〜6.67% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表5に示す。
【0164】
【表5】
【0165】
表5に示した通り、任意のGAGの濃度においてGAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。また、GAGの濃度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。
【0166】
<実施例6>グリコサミノグリカンの濃度の検討(2)
精製水に溶解したHA(2.7MDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1〜10mg/mL(0.1〜1% w/v)HA、80mg/mL NaSO、1M NaOHとなるように溶液を調製した。これらの溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。また、硫酸化HAの分子量を測定した。結果を表6に示す。
【0167】
【表6】
【0168】
表6に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、任意のGAGの濃度においてGAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、本発明の硫酸化方法により調製される硫酸化HAは、一態様において、硫酸化反応後においても2MDa以上の分子量を有するGAGであることを確認した。
【0169】
<実施例7>反応時間の検討(1)
CH(41.8kDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間〜9時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表7に示す。
【0170】
【表7】
【0171】
表7に示した通り、任意の反応時間においてGAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。
【0172】
<実施例8>反応時間の検討(2)
精製水に溶解したHA(2.7MDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1% w/v)HA、80mg/mL NaSO、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1日間〜7日間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表8に示す。
【0173】
【表8】
【0174】
表8に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、任意の反応時間においてGAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0175】
<実施例9>硫酸化剤の添加量の検討(1)
CH(41.8kDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、0.3〜2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで20時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に1.5倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表9に示す。
【0176】
【表9】
【0177】
表9に示した通り、任意の量の硫酸化剤を添加することによりGAGの硫酸化が可能であることをCHを用いて確認した。また、硫酸化剤の添加量を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。
【0178】
<実施例10>硫酸化剤の添加量の検討(2)
精製水に溶解したHA(2.7MDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1% w/v)HA、80mg/mL NaSO、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、29〜116モル当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表10に示す。
【0179】
【表10】
【0180】
表10に示した通り、GAGとしてHAを用いた場合においても、任意の量の硫酸化剤を添加することによりGAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0181】
<実施例11>強塩基の種類の検討
HA(800kDa)にNaSOと1Mの強塩基性水溶液(NaOH水溶液、KOH水溶液、またはLiOH水溶液)を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1%w/v)HA、100mg/mL NaSOとなるように溶液を調製した。これらの溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表11に示す。
【0182】
【表11】
【0183】
表11に示した通り、強塩基性の溶液としてKOH水溶液やLiOH水溶液を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0184】
<実施例12>硫酸化剤の種類の検討(1)
CH(41.8kDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量の三酸化硫黄ピリジン錯体(Pyr−SO、東京化成工業社製)を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表12に示す。
【0185】
【表12】
【0186】
表12に示した通り、硫酸化剤としてPyr−SOを用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0187】
<実施例13>硫酸化剤の種類の検討(2)
CH(41.8kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量の三酸化硫黄ジメチルエチルアミン錯体(DMEA−SO)(ジメチルエチルアミン100mLとクロロホルム100mLの混合溶媒にクロロスルホン酸10mLとクロロホルム20mLの混合溶媒を氷冷下で添加して調製)を添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表13に示す。
【0188】
【表13】
【0189】
表13に示した通り、硫酸化剤としてDMEA−SOを用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0190】
<実施例14>強塩基のモル濃度の検討(4)
HA(800kDa)にNaSOと2Mまたは3MのNaOH水溶液を添加し、HAが10mg/mL(1% w/v)、NaSOが80mg/mLとなるように溶液を調製した。これらの溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を一晩行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表14に示す。
【表14】
【0191】
表14に示した通り、反応温度を4℃とした場合のNaOH濃度は、1M(反応温度を40℃とした場合において最も高い硫酸化反応効率を示した濃度。表2参照)よりも2Mや3Mにおいて高い硫酸化反応効率を示した。
【0192】
<実施例15>硫酸ナトリウムの添加量の検討
CH(41.8kDa)にNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)、NaSOが200〜600mg/mLとなるように溶液を調製した。また、CHに2MのNaOH水溶液のみを添加し、NaSOを含まない溶液も調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。また、硫酸化CHの分子量を測定した。結果を表15に示す。
【0193】
【表15】
【0194】
表15に示した通り、硫酸ナトリウムの添加量によらず、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、硫酸化反応に伴う分子量の低下を抑制するためには、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩を共存させない態様が好ましいことを確認した。
【0195】
<実施例16>硫酸基を有するGAGの硫酸化の検討(1)
コンドロイチン硫酸A(CSA)(20.1kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CSAが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CSを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表16に示す。
【0196】
【表16】
【0197】
表16に示した通り、強塩基性の溶液中で硫酸基を有するGAGと硫酸化剤を共存させることにより、硫酸基を有するGAGを硫酸化してさらに硫酸化度を増加させることが可能であることをCSAを用いて確認した。また、CSAを硫酸化して得られる硫酸化CSAは、一態様において、二糖組成比においてCH−diSを最も多く有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸E(CSE)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSE様多糖の調製が可能であることも分かった。
【0198】
<実施例17>硫酸基を有するGAGの硫酸化の検討(2)
コンドロイチン硫酸C(CSC)(14.8kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CSCが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CSを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表17に示す。
【0199】
【表17】
【0200】
表17に示した通り、強塩基性の溶液中で硫酸基を有するGAGと硫酸化剤を共存させることにより、硫酸基を有するGAGを硫酸化してさらに硫酸化度を増加させることが可能であることをCSCを用いて確認した。また、CSCを硫酸化して得られる硫酸化CSCは、一態様において、二糖組成比においてCH−diSを20%以上の割合で有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸D(CSD)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSD様多糖の調製が可能であることも分かった。
【0201】
<実施例18>混合溶媒を用いた硫酸化の検討(1)
dCH(8.2kDa)に5%(v/v)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む2MのNaOHの溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表18に示す。
【0202】
【表18】
【0203】
表18に示した通り、有機溶媒を含む混合溶媒を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることをDMFを用いて確認した。
【0204】
<実施例19>混合溶媒を用いた硫酸化の検討(2)
dCH(8.2kDa)に5%(v/v)の有機溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド(FA)、ピリジン(Pyr)、アセトニトリル(MeCN)、エタノール(EtOH)、またはテトラヒドロフラン(THF))を含む2MのNaOHの溶液を添加し、dCHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表19に示す。
【0205】
【表19】
【0206】
表19に示した通り、DMF以外の有機溶媒を含む混合溶媒を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。
【0207】
<実施例20>混合溶媒を用いた硫酸化の検討(3)
dCH(8.2kDa)に10〜40%(v/v)の有機溶媒(DMSOまたはEtOH)を含む2MのNaOHの溶液を添加し、dCHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。これらの溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表20に示す。
【0208】
【表20】
【0209】
表20に示した通り、有機溶媒を含む混合溶媒を用いた場合においても、GAGの硫酸化が可能であることを確認した。また、有機溶媒の濃度を適宜設定することにより、所望の硫酸化度からなる硫酸化GAGを得られることを確認した。また、有機溶媒としてDMSOを含む混合溶媒を用いた場合には、DMSOを有機溶媒として含まない溶液を用いた場合と比較して、得られる硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸化度が増加する傾向が認められた。具体的には、この傾向は10%〜30%(v/v)のDMSOを含む混合溶媒を用いた場合において認められた。さらに、30%(v/v)程度のDMSOを含む混合溶媒を用いた場合に、得られる硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸化度が最も高くなることが分かった。よって、本発明の硫酸化方法においては有機溶媒としてDMSOを含む態様を好ましく例示できることが分かった。
【0210】
<実施例21>従来の硫酸化方法との比較(1)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
CHにNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、CHが66.7mg/mL(6.67% w/v)、NaSOが500mg/mLとなるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0211】
(2)有機溶媒中での硫酸化
CHにホルムアミド(FA)を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液に5当量の三酸化硫黄トリエチルアミン錯体(TEA−SO)を添加した後、スターラーで2時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0212】
上記(1)と(2)で得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表21に示す。
【0213】
【表21】
【0214】
表21に示した通り、本発明(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)によって得られる硫酸化CHは、従来技術(有機溶媒中での硫酸化)によって得られる硫酸化CHに比して、二糖組成比においてCH−2Sを多く含むことを特徴としたGAGであることを確認した。
【0215】
<実施例22>従来の硫酸化方法との比較(2)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
CHに2MのNaOH水溶液を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、2.9当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで1時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0216】
(2)有機溶媒中での硫酸化
CHにホルムアミド(FA)を添加し、CHが200mg/mL(20% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、5当量のTEA−SOを添加した後、スターラーで2時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0217】
上記(1)と(2)で得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表22に示す。
【0218】
【表22】
【0219】
表22に示した通り、本発明(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)によって得られる硫酸化CHは、従来技術(有機溶媒中での硫酸化)によって得られる硫酸化CHに比して、二糖組成比においてCH−2Sを多く含むことを特徴としたGAGであることを改めて確認した。
【0220】
<実施例23>従来の硫酸化方法との比較(3)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
精製水に溶解したHAにNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で1mg/mL(0.1% w/v)HA、80mg/mL NaSO、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0221】
(2)有機溶媒中での硫酸化
HAのトリブチルアミン(TBA)塩にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加し、HAが10mg/mL(1% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を60℃に加温し、12当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで48時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2.5倍容のアセトンを添加して30分間撹拌した後、3時間静置した。この溶液から沈殿物を回収してHAが8mg/mL(0.8% w/v)となるように精製水に溶解した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0222】
上記(1)と(2)で得た硫酸化HAを二糖分析した。結果を表23に示す。
【0223】
【表23】
【0224】
表23に示した通り、従来技術(有機溶媒中での硫酸化)によって得られる硫酸化HAが二糖組成比においてHA−6Sを多く含み、HA−4SやHA−2Sを実質的に含まないことを特徴とするGAGであるのに対し、本発明(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)によって得られる硫酸化HAはHA−4SやHA−2Sを含むことを特徴とするGAGであることを確認した。
【0225】
<実施例24>ヘパロサンの脱アセチル化と硫酸化のワンポット反応
NAH(33.1kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、NAHが40mg/mL(4% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を60℃に加温し、スターラーで4時間撹拌して脱アセチル化反応を行った。温度を40℃に変更し、7当量または12当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで20時間撹拌して硫酸化反応を行った。この溶液にHClを添加して中和した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化ヘパロサンを前記<参考例11>の方法に従って二糖分析した。結果を表24に示す。
【0226】
【表24】
【0227】
表24に示した通り、強塩基性の溶液中でGAGと硫酸化剤を共存させることにより、GAGの硫酸化が可能であることをNAHを用いて確認した。また、強塩基性の溶液中でGAGの脱アセチル化と硫酸化をワンポット合成により行うことが可能であることを確認した。
【0228】
<実施例25>コンドロイチンのアルキル化と硫酸化のワンポット反応
(1)メチル化された硫酸化コンドロイチンの調製
CHに2MのNaOH水溶液を添加し、CHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、0.5倍容のヨードメタン(CHI)を添加した後、スターラーで2時間撹拌してメチル化反応を行い、一部をメチル基の導入率(メチル化度)の測定用試料として分取した。その後、この溶液に2.9当量のTMA−SOを添加し、室温においてスターラーで2時間撹拌して硫酸化反応を行った。メチル化度の測定用試料と反応停止後の溶液それぞれに3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得たメチル化されたコンドロイチン(硫酸化反応に供する前のコンドロイチン)とメチル化された硫酸化コンドロイチンを以下の分析に供した。
【0229】
(2)メチル化度の測定
メチル化度の測定は、H−NMRにより行った。上記(1)で得たメチル化されたコンドロイチン5mgに0.01%の3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム−2,2,3,3−d(TSP)を含有する重水を添加して調製した溶液をH−NMRに供し、CHに導入したメチル基由来のシグナル(2.9ppm、3.1ppm、3.2ppm、3.4ppm、3.5ppm)の積分比をGalNAc残基のアセチル基由来のシグナル(2.0ppm)の積分比で除した値を百分率換算してメチル化度を算出した。その結果、メチル化されたコンドロイチンのメチル化度は58%であった。
【0230】
(3)硫黄含量の測定
硫黄含量の測定は、<参考例12>に記載の方法により行った。その結果、上記(1)で得たメチル化された硫酸化コンドロイチンの硫黄含量は3.8%であった。
【0231】
以上の結果より、強塩基性の溶液中でGAGのアルキル化と硫酸化をワンポット合成により行うことが可能であることを確認した。
【0232】
<実施例26>従来の硫酸化方法との比較(4)
CH(5.0kDa、28.0kDa、30.2kDa、32.0kDa、35.8kDa、または41.8kDa)に溶媒を添加し、CHが10〜200mg/mL(1〜20% w/v)となるように溶液を調製した。これらの溶液を0〜60℃に加温または冷却し、0.9〜10当量の硫酸化剤(TMA−SO、TEA−SO、Pyr−SO、または三酸化硫黄N,N−ジメチルホルムアミド錯体(DMF−SO))を添加した後、スターラーで0.5〜20時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0233】
上記の反応条件において、本発明の硫酸化方法(強塩基性の溶液を用いた硫酸化)を行う場合には、溶媒として0.1〜2MのNaOH水溶液を用いた。また、上記の反応条件において、従来の硫酸化方法(有機溶媒中での硫酸化)を行う場合には、溶媒としてホルムアミド(FA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。
【0234】
上記に従って得られた硫酸化CHを二糖分析し、CH−4Sに対するCH−2Sの割合(2S/4S比)、およびCH−6Sに対するCH−2Sの割合(2S/6S比)を算出した。本発明の硫酸化方法により得られた硫酸化CH(29検体)を二糖分析した結果を表25に、従来の硫酸化方法により得られた硫酸化CH(26検体)を二糖分析した結果を表26に、それぞれ示す。また、動物から抽出して得られるCSを二糖分析した結果を表27に示す。表27において、コンドロイチン硫酸A(CSA)はチョウザメの脊索から、コンドロイチン硫酸B(CSB)はブタの皮膚から、コンドロイチン硫酸C(CSC)とコンドロイチン硫酸D(CSD)はサメの軟骨から、コンドロイチン硫酸E(CSE)はイカの軟骨から、それぞれ抽出して得られたCSである。
【0235】
【表25】
【0236】
【表26】
【0237】
【表27】
【0238】
表25に示した通り、本発明の硫酸化方法により得られた硫酸化CHは、2S/4S比として3.50〜9.75の値を、2S/6S比として0.15〜0.50の値を、それぞれ示した。一方、表26に示した通り、従来の硫酸化方法により得られた硫酸化CHは、2S/4S比として0.00〜3.00の値を、2S/6S比として0.00〜0.10の値を、それぞれ示した。また、表27に示した通り、動物から抽出して得られるCS(自然界に存在するCS)からはCH−2Sが検出されず、2S/4S比と2S/6S比はどちらも0.00の値を示した。
【0239】
<実施例27>低分子ヒアルロン酸の硫酸化
HA(20kDa、または100kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、HAが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、8.7当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化HAの硫酸化度を測定し、硫黄含量を算出した。結果を表28に示す。
【0240】
【表28】
【0241】
表28に示した通り、本発明の硫酸化方法に供して硫酸化が行われるHAは、高分子のHAには限定されず、低分子のHA(分子量100kDa以下)であってもよいことを確認した。
【0242】
<実施例28>硫酸化ヘパロサンの調製(1)
【0243】
(1)ヘパロサンの脱アセチル化
NAH(33.1kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、NAHが100mg/mL(10% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を60℃に加温し、スターラーで4時間撹拌して脱アセチル化反応を行った。この溶液にHSOを添加して中和した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして脱アセチル化HPNを得た。
【0244】
(2)脱アセチル化ヘパロサンの硫酸化
上記(1)で得た脱アセチル化HPNに20%(v/v)のDMSOを含む2MのNaOHの溶液を添加し、脱アセチル化HPNが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、18当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで20時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0245】
上記(2)で得た硫酸化されたHPN(硫酸化HPN)を二糖分析した結果を表29に示す。
【0246】
【表29】
【0247】
<実施例29>硫酸化ヘパロサンの抗凝固活性の測定
HEPと実施例28で得た硫酸化HPNを測定対象試料とし、下記の方法に従って活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定した。
【0248】
SD系雄性ラットからベノジェクトII真空採血管(3.2%クエン酸ナトリウム入り、テルモ社製)を用いて採血して血漿を得た。0.1mg/mLとなるように蒸留水で溶解した試料(硫酸化NAHまたはHEP)の溶液25μLと血漿225μLを混合して測定用試料を調製した。また、蒸留水25μLと血漿225μLを混合して陰性対照を調製した。APTTの測定には全自動血液凝固線溶測定装置STA Compact(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用い、添付文書に記載の方法に従って試験を実施した。
【0249】
結果を表30に示す。
【0250】
【表30】
【0251】
表30に示した通り、実施例28で得た硫酸化HPNはHEPと同程度のAPTTを示した。よって、本発明の硫酸化方法により得られる硫酸化GAGは、一態様において、ヘパリン様の抗凝固活性を有する硫酸化GAGであることが確認された。
【0252】
<実施例30>硫酸化ヘパロサンの調製(2)
(1)異性化ヘパロサンの調製
文献(WO2014/200045)に記載の方法を参照してNAH(33.1kDa)の異性化反応を行い、一部のGlcA残基がIdoA残基に異性化されたHPN(EpHPN)を得た。EpHPNのIdoA含量は32.8%であった。
【0253】
(2)異性化ヘパロサンの脱アセチル化と硫酸化
NAHに代えて上記(1)で得たEpHPNを用い、実施例28に記載の方法に従って行った。
【0254】
上記(2)で得た硫酸化されたEpHPN(硫酸化EpHPN)を二糖分析した結果を表31に示す。
【0255】
【表31】
【0256】
表31に示した通り、本発明の硫酸化方法に供して硫酸化が行われるGAGは、HexA残基としてGlcA残基のみを有するGAGには限定されず、IdoA残基を有するGAGであってもよいことを確認した。また、本発明者らは、上記の硫酸化EpNAHが実施例28に記載の硫酸化NAHと同様にヘパリン様の抗凝固活性を有するGAGであることを確認している。したがって、本発明によれば、HexN残基としてGlcN残基を、HexA残基としてGlcA残基とIdoA残基を有し、かつ抗凝固活性を示す硫酸化多糖であるHPNと同様の組成および性質を有するGAGを調製できることが確認された。
【0257】
<実施例31>硫酸化コンドロイチンの調製(1)
CH(113kDa)に2M〜4MのNaOH水溶液を添加し、CHが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、14.5当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表32に示す。
【0258】
【表32】
【0259】
<実施例32>硫酸化コンドロイチンの調製(2)
CH(113kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CHが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、8.7当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応終了時(硫酸化剤を添加してから24時間後)に測定した硫酸化反応溶液のpHは13.8であった。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0260】
上記により得た乾燥粉末を上記と同じ条件に従った硫酸化反応に供して、再度乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表33に示す。
【0261】
【表33】
【0262】
<実施例33>硫酸化コンドロイチンの調製(3)
CH(27kDa)に2MのNaOH水溶液を添加し、CHが50mg/mL(5% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、8.7当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで24時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に3倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。
【0263】
上記により得た乾燥粉末を上記と同じ条件に従った硫酸化反応に供して、再度乾燥粉末を得た。この乾燥粉末を再度上記と同じ条件に従った硫酸化反応に供して、再々度乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化CHを二糖分析し、硫酸化度を算出した。結果を表34に示す。
【0264】
【表34】
【0265】
表32〜表34に示した通り、CHを硫酸化して得られる硫酸化CHは、一態様において、二糖組成比においてCH−diSを20%以上の割合で有することを特徴としたGAGであり、このような特徴はコンドロイチン硫酸D(CSD)と共通する特徴である。よって、本発明によればCSD様多糖の調製が可能であることを確認した。
【0266】
<実施例34>従来の硫酸化方法との比較(5)
(1)強塩基性の溶液を用いた硫酸化
精製水に溶解したHAにNaSOと2MのNaOH水溶液を添加し、終濃度で10mg/mL(1% w/v)HA、80mg/mL NaSO、1M NaOHとなるように溶液を調製した。この溶液を4℃に冷却し、58当量のTMA−SOを添加した後、スターラーで18時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に2倍容の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化ヒアルロン酸の硫黄含量は2.9%であった。
【0267】
(2)有機溶媒中での硫酸化
HAのトリブチルアミン(TBA)塩にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加し、HAが1mg/mL(0.1% w/v)となるように溶液を調製した。この溶液を40℃に加温し、1当量のPyr−SOを添加した後、スターラーで3時間撹拌して硫酸化反応を行った。反応停止後の溶液に等量の精製水を添加した後、精製水に対して透析を2日間行った。この溶液にNaOH水溶液を添加して中和した後、凍結乾燥して乾燥粉末を得た。このようにして得た硫酸化ヒアルロン酸の硫黄含量は3.0%であった。
【0268】
(3)NMRによる硫酸基の測定
硫酸基の測定は、13C−NMRにより行った。上記に従って得た硫酸化ヒアルロン酸5mgに0.01%のテトラメチルシラン(TMS)を含有する重水を添加して調製した溶液を13C−NMRに供し、GlcNAc残基の4−O−硫酸基に由来するシグナル(77.5ppm)の有無を確認した。本発明の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸を測定した結果を図2に、従来の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸を測定した結果を図3に、それぞれ示す。
【0269】
図2に示した通り、本発明の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸は77.5ppmのシグナルを示したことから、GlcNAc残基に4−O−硫酸基を有することが確認された。一方、図3に示した通り、従来の硫酸化方法に供して得た硫酸化ヒアルロン酸は77.5ppmのシグナルを示さなかったことから、GlcNAc残基に4−O−硫酸基を有しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明によれば、非有機溶媒の溶液中でGAGを硫酸化することができ、よって、硫酸化GAGを製造することができる。
【0271】
日本国特許出願第2015−073148号(出願日:2015年3月31日)の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【要約】
非有機溶媒の溶液中でグリコサミノグリカンを硫酸化する方法を提供することを課題とする。本発明では、グリコサミノグリカンと硫酸化剤を強塩基性の非有機溶媒の溶液中に共存させて硫酸化反応を行う。本発明において強塩基性はpH11.5以上であることが好ましい。本発明によれば、例えば、ヘパリン様の抗凝固活性を有するグリコサミノグリカンをN−アセチルヘパロサンからワンポット合成することができる。また、本発明によって得られる硫酸化グリコサミノグリカンは、一態様において新規の二糖組成比を有する硫酸化グリコサミノグリカンであり、新規の素材として有用である。
図1
図2
図3