(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記詰替え工程における詰替え作業を、PCBの封止機能を有するグローブボックスを使用して、又はPCBの封止機能を有する解体処理室内で行なうことを特徴とする請求項1又は2記載のPCB廃棄物の処理方法。
前記破砕機の排出口から前記プラズマ溶融分解炉の供給口までの前記PCB破砕物の供給路が、外部との間で隔壁によって気密封止されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のPCB廃棄物の処理方法。
前記PCB廃棄物を前記プラズマ溶融分解炉で溶融分解処理する際に発生する発生ガスを、1100℃以上の温度に維持された熱滞留室内に2秒間以上滞留させて処理することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のPCB廃棄物の処理方法。
前記破砕処理対象物が、PCB原液、白土、及びPCB原液拭き取りウエスの各高濃度PCB汚染物と比較してPCB濃度が低いものである、請求項1乃至6のいずれかに記載のPCB廃棄物の処理方法。
PCB廃棄物、又はこのPCB廃棄物の保管に使用されていた保管容器を破砕機で破砕してPCB破砕物とし、このPCB破砕物を供給装置によってプラズマ溶融分解炉内に供給してPCBを分解処理するPCB廃棄物の処理設備であって、
前記供給装置は、前記破砕機の排出口から排出される前記PCB破砕物を前記プラズマ溶融分解炉の供給口に供給し、
前記破砕機の排出口から前記供給装置を通って前記プラズマ溶融分解炉の供給口までの前記PCB破砕物の供給路が、外部との間で隔壁によって気密封止されており、
前記供給装置は、前記破砕機から排出される前記PCB破砕物を所定重量範囲内に計量する計量機を有し、この計量機によって計量された前記PCB破砕物を所定時間間隔で前記プラズマ溶融分解炉内に供給するように構成されており、
前記所定重量、又は、前記所定重量と前記所定時間間隔が、前記プラズマ溶融分解炉で発生するガス量が前記PCB破砕物の前記所定時間間隔での供給ごとに略等しくなるように設定されていることを特徴とするPCB廃棄物の処理設備。
前記供給装置が、前記破砕機から排出された前記PCB破砕物を受け取る第1破砕物フィーダと、当該第1破砕物フィーダから受け取った前記PCB破砕物を前記計量機へ供給する第2破砕物フィーダとの2つの振動フィーダを備えており、前記第2破砕物フィーダは前記計量機で計量されている前記PCB廃棄物が前記所定重量となると前記PCB破砕物の供給を停止するように構成されている、請求項8に記載のPCB廃棄物の処理設備。
前記破砕機で破砕される前記PCB廃棄物が、PCB原液、白土、及びPCB原液拭き取りウエスの各高濃度PCB汚染物よりPCB濃度が低いPCB廃棄物である、請求項8又は9に記載のPCB廃棄物の処理設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のPCB廃棄物の処理方法では、保管容器を洗浄するための洗浄作業が必要であり、このような洗浄作業は、手間が掛かり煩雑である。更に、洗浄作業によって、PCBの汚染が拡大する可能性があるし、洗浄作業で生じたPCBを含む洗浄剤を無害化する処理も必要となる。
【0007】
そこで、保管容器を洗浄剤で洗浄処理せずに、保管容器をプラズマ溶融分解炉で溶融することが考えられる。しかし、保管容器が大型である場合は、このような大型の保管容器を溶融するために、プラズマ溶融分解炉を大型にする必要があり費用が嵩む。
【0008】
一方、処理対象物であるPCB廃棄物については、安定器、トランス等を多く処理することを想定しているが、その他にPCBを含む小型電気機器、感圧紙、ウエス、汚泥等の処理も想定している。また、安定器といっても、製造メーカ、製造時期、仕様等により、その形状、重量、内部構成品等は様々である。
【0009】
従って、本願発明者は、それらの種々の処理対象物を安全、適切、かつ、迅速に無害化処理を行なうことを課題の1つとすると共に、人力による作業工程と、機械による作業工程とを合理的に組み合わせることで、汚染拡大防止、安全確保を優先しながらも、処理能力の向上を図ることも課題としている。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、PCB廃棄物、及びこのPCB廃棄物を保管するのに使用されてきた保管容器の大きさに拘わらず、プラズマ溶融分解炉が過大にならないようにすることができ、適切な大きさのプラズマ溶融分解炉を使用して、これらの無害化処理を行うことができるPCB廃棄物の処理方法及びその処理設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係るPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の処理方法は、保管容器に収容されているPCB廃棄物を、プラズマ溶融分解炉内に供給できる大きさの封入容器又は封入用樹脂袋に詰め替える詰替え工程と、前記封入容器又は前記封入用樹脂袋に詰替えられた小型詰替え済みPCB廃棄物を、前記プラズマ溶融分解炉内に供給してPCBを分解処理する溶融分解処理工程とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、まず、保管容器に収容されているPCB廃棄物を、プラズマ溶融分解炉内に供給できる大きさの封入容器又は封入用樹脂袋に詰め替える。次に、封入容器又は封入用樹脂袋に詰替えられた小型詰替え済みPCB廃棄物を、プラズマ溶融分解炉内に供給する。これによって、PCB廃棄物に含まれるPCBの分解処理をすることができる。
【0013】
第2の発明に係るPCB廃棄物の処理方法は、第1の発明において、前記詰替え工程の前に行なわれる前工程であって、保管容器に収容されている保管容器入りPCB廃棄物を、所定以下の大きさの小型保管容器に収容されている小型保管容器入りPCB廃棄物と、それよりも大きい大型保管容器に収容されている大型保管容器入りPCB廃棄物とに分類する分類工程を備えることを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、まず、保管容器に収容されているPCB廃棄物を、小型保管容器入りPCB廃棄物と、それよりも大きい大型保管容器入りPCB廃棄物とに分類する。次に、その分類された小型保管容器入りPCB廃棄物のPCB廃棄物、及び大型保管容器入りPCB廃棄物のPCB廃棄物を、それぞれ別々の作業工程でプラズマ溶融分解炉内に供給できる大きさの封入容器又は封入用樹脂袋に詰め替えることができる。このようにすると、小型保管容器入りPCB廃棄物、及び大型保管容器入りPCB廃棄物のそれぞれの詰替え作業を効率よく行うことができる。例えば小型保管容器入りPCB廃棄物の詰替え作業は、グローブボックスを使用して行うことができ、大型保管容器入りPCB廃棄物の詰替え作業は、解体処理室で行うことができる。
【0015】
第3の発明に係るPCB廃棄物の処理方法は、第1又は第2の発明において、前記詰替え工程における詰替え作業を、PCBの封止機能を有するグローブボックスを使用して、又はPCBの封止機能を有する解体処理室内で行なうことを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、PCB廃棄物を、プラズマ溶融分解炉内に供給できる大きさの封入容器又は封入用樹脂袋に詰め替える詰替え作業は、PCBの封止機能を有するグローブボックスを使用して行なうことによって、PCBの作業者に対する影響を防止できる。また、この詰替え作業をPCBの封止機能を有する解体処理室内で行なうことによって、PCBによる汚染をこの解体処理室内に限定させることができ、汚染の拡大を防止できる。
【0017】
第4の発明に係るPCB廃棄物の処理方法は、第1乃至3のいずれかの発明において、前記PCB廃棄物が取り出されて空になった前記保管容器、又は前記PCB廃棄物が収容された状態の前記保管容器を、破砕機によって破砕してPCB破砕物とする破砕工程と、前記破砕機の排出口と前記プラズマ溶融分解炉の供給口とが供給装置を介して接続され、前記供給装置が、前記破砕機の排出口から排出される前記PCB破砕物を、前記供給口を介して前記プラズマ溶融分解炉内に供給する供給工程と、前記プラズマ溶融分解炉内に供給された前記PCB破砕物を溶融分解処理する溶融分解処理工程とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、PCB廃棄物が取り出されて空になった保管容器、又はPCB廃棄物が収容された状態の保管容器を、破砕機によって破砕してPCB破砕物とし、このPCB破砕物を供給装置によってプラズマ溶融分解炉内に供給して、PCBを分解処理することができる。
【0019】
つまり、保管容器をそのままの大きさではプラズマ溶融分解炉内に供給することができない場合に、この保管容器を破砕機で破砕してプラズマ溶融分解炉内に供給することができる大きさのPCB破砕物にすることができる。これによって、このような保管容器を、適正な大きさ、規模のプラズマ溶融分解炉を使用して溶融分解処理することができる。
【0020】
勿論、保管容器内にPCB廃棄物が収容されていても、破砕機で破砕することができる。また、規格以上の大きさの保管容器は、破砕機に通すことができる大きさに解体した後に、破砕機で破砕することができる。
【0021】
よって、プラズマ溶融分解炉に供給して溶融分解処理することができない大きさであってPCBで汚染された保管容器を、再利用するために洗浄する作業が不要となり、作業者の労力を軽減でき、しかも、洗浄の際のPCB汚染の拡大を防止できる。
【0022】
そして、この供給装置によると、破砕機の排出口から排出されるPCB破砕物を、供給口を介してプラズマ溶融分解炉内に供給することができるので、PCB破砕物を、プラズマ溶融分解炉内に供給するために別の供給用容器に詰替える必要が無い。よって、PCB破砕物を供給用容器に詰替えるための手間が不要であるし、このような供給用容器の費用を削減できる。
【0023】
第5の発明に係るPCB廃棄物の処理方法は、第1乃至4のいずれかの発明において、前記詰替え工程で作られた前記小型詰替え済みPCB廃棄物、又は前記破砕機によって破砕される前の前記保管容器を貯留するための貯留工程を備え、
前記貯留工程で貯留されている前記小型詰替え済みPCB廃棄物を、所定の時間間隔で前記プラズマ溶融分解炉内に供給して、又は
前記貯留工程で貯留されている前記保管容器を前記破砕機によって破砕して、そのPCB破砕物を所定の時間間隔で前記プラズマ溶融分解炉内に供給してPCBを分解処理することを特徴とするものである。
【0024】
第5の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、小型詰替え済みPCB廃棄物を貯留しておくことができるので、この貯留されている小型詰替え済みPCB廃棄物を所定の時間間隔でプラズマ溶融分解炉内に供給することができる。これによって、プラズマ溶融分解炉内で発生するガスの発生量の変動幅が小さくなるようにすることができる。よって、分解炉内の圧力を略一定に保つために、発生ガスをこの分解炉から排気するための例えば排気ファンの回転速度を制御したり、排気口の開口度を変更するためにダンパーの角度調整を行なうが、これら回転速度の制御量や、ダンパーの角度調整量を小さくすることができる。その結果、このプラズマ溶融分解炉、及びこの分解炉と接続される排ガス処理設備を安定して運転することができる。
【0025】
そして、保管容器を破砕機によって破砕して、そのPCB破砕物を所定の時間間隔でプラズマ溶融分解炉内に供給することによっても、上記と同様に、プラズマ溶融分解炉、及びこの分解炉と接続する排ガス処理設備を安定して運転することができる。
【0026】
第6の発明に係るPCB廃棄物の処理方法は、第4又は第5の発明において、前記破砕機の排出口から前記供給装置を通って前記プラズマ溶融分解炉の供給口までの前記PCB破砕物の供給路が、外部との間で隔壁によって気密封止されていることを特徴とするものである。
【0027】
第6の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、破砕機の排出口から排出されるPCB破砕物を、供給装置によってプラズマ溶融分解炉の供給口に自動的に供給することができるので、作業者がPCB破砕物によってPCB汚染することを防止できる。そして、破砕機の排出口から供給装置を通ってプラズマ溶融分解炉の供給口までのPCB破砕物の供給路が、外部との間で隔壁によって気密封止されているので、PCB破砕物によるPCB汚染が隔壁の外側に拡大することを防止できる。
【0028】
第7の発明に係るPCB廃棄物の処理方法は、第1乃至6のいずれかの発明において、前記PCB廃棄物を前記プラズマ溶融分解炉で溶融分解処理する際に発生する発生ガスを、1100℃以上の温度に維持された熱滞留室内に2秒間以上滞留させて処理することを特徴とするものである。
【0029】
第7の発明に係るPCB廃棄物の処理方法によると、PCB廃棄物をプラズマ溶融分解炉で溶融分解処理する際に発生する発生ガスを、1100℃以上の温度に維持された熱滞留室内に2秒間以上滞留させて処理することができる。これによって、PCB廃棄物に含まれるPCBを完全に分解して無害化することができる。
【0030】
第8の発明に係るPCB廃棄物の処理設備は、PCB廃棄物、又はこのPCB廃棄物の保管に使用されていた保管容器を破砕機で破砕してPCB破砕物とし、このPCB破砕物を供給装置によってプラズマ溶融分解炉内に供給してPCBを分解処理するPCB廃棄物の処理設備であって、前記供給装置は、前記破砕機の排出口から排出される前記PCB破砕物を前記プラズマ溶融分解炉の供給口に供給することができ、前記破砕機の排出口から前記供給装置を通って前記プラズマ溶融分解炉の供給口までの前記PCB破砕物の供給路が、外部との間で隔壁によって気密封止されていることを特徴とするものである。
【0031】
第8の発明に係るPCB廃棄物の処理設備によると、第4及び第6の発明に係るPCB廃棄物の処理方法と同様に作用する。
【0032】
第9の発明に係るPCB廃棄物の処理設備は、第8の発明において、前記供給装置は、前記破砕機から排出される前記PCB破砕物を所定重量ずつ計量することができる計量機を有し、この計量機によって前記所定重量ずつ計量された前記PCB破砕物を、所定のタイミングで前記プラズマ溶融分解炉内に供給することを特徴とするものである。
【0033】
第9の発明に係るPCB廃棄物の処理設備によると、供給装置に設けられている計量機によって、破砕機から排出されるPCB破砕物を所定重量ずつ計量することができる。そして、この計量機によって所定重量ずつ計量されたPCB破砕物を、所定のタイミングでプラズマ溶融分解炉内に供給することができる。これによって、プラズマ溶融分解炉内で発生するガスの発生量の変動幅が小さくなるようにすることができる。よって、分解炉内の圧力変動が小さくなるようにするために、発生ガスをこの分解炉から排気するための例えば排気ファンの回転速度を制御したり、排気口の開口度を変更するためにダンパーの角度調整を行なうが、これら回転速度の制御量や、ダンパーの角度調整量を小さくすることができる。その結果、このプラズマ溶融分解炉、及びこの分解炉と接続される排ガス処理設備を安定して運転することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るPCB廃棄物の処理方法及びその処理設備によると、PCB廃棄物を、プラズマ溶融分解炉内に供給できる大きさの封入容器又は封入用樹脂袋に詰め替えて、その小型詰替え済みPCB廃棄物をプラズマ溶融分解炉内に供給してPCBを分解処理する構成であるので、プラズマ溶融分解炉は、その小型詰替え済みPCB廃棄物を溶融分解処理することができる適切な大きさ及び処理能力に設計することができる。更に、このように、プラズマ溶融分解炉を適切な大きさ及び処理能力に設計できるので、プラズマ溶融分解炉内で発生する発生ガスを無害化するための排ガス処理設備についても、適切な大きさ及び処理能力に設計することができる。これによって、プラズマ溶融分解炉及び排ガス処理設備が過大なものとならないようにすることができ、設備費用を低減させることができる。
【0035】
そして、このPCB廃棄物を、封入容器又は封入用樹脂袋に詰め替えて封止しているので、この小型詰替え済みPCB廃棄物がプラズマ溶融分解炉内に供給されるまでの間に、PCBが暴露することを防止でき、PCB汚染の拡大を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るPCB廃棄物の処理方法及びその処理設備の一実施形態を、
図1〜
図9を参照して説明する。このPCB廃棄物の処理方法は、例えばPCB(ポリ塩化ビフェニル)で汚染された感圧複写紙、ウエス、汚泥、電機機器である安定器、トランス、コンデンサ等のPCB廃棄物11、並びにこれらPCB廃棄物を保管するのに使用されてきた鋼製のドラム缶、及び合成樹脂製、段ボール製、鋼製又は木製の容器を含む保管容器12を無害化処理したり、再資源化することができるものであり、
図1に示す前処理設備10で行なわれる前処理工程と、
図2に示す無害化処理設備37で行なわれる無害化処理工程とを備えている。
【0038】
図1に示す前処理工程は、保管容器12に収容されて搬入されて来る保管容器入りPCB廃棄物13、及びPCB廃棄物11を、プラズマ溶融分解炉14内(供給口15、16)に供給できる大きさの封入容器17と、封入用樹脂袋18とに詰め替えて、小型詰替え済みPCB廃棄物19を作製する詰替え工程を有し、この詰替え工程は、汚染・解体処理室20、第2ドラム缶等検査室21、及び供給前処理設備22で行なわれる。
【0039】
そして、この小型詰替え済みPCB廃棄物19は、(B)−(B)に示すように、
図2に示す無害化処理工程において、プラズマ溶融分解炉14内に供給されて、このPCB廃棄物11、並びに、このPCB廃棄物11を収容している封入容器17及び封入用樹脂袋18に付着するPCBが分解処理される。
【0040】
また、この
図1に示す前処理工程は、PCB廃棄物11が取り出されて空になった保管容器12(解体された大型保管容器、小型保管容器)、及びPCB廃棄物11や、解体された大型保管容器が収容された状態の保管容器(破砕用容器23)を、破砕機24によって破砕してPCB破砕物25とする破砕工程を有している。そして、このPCB破砕物25は、(A)−(A)に示すように、
図2に示す無害化処理工程において、プラズマ溶融分解炉14内に供給されてPCBが分解処理される。
【0041】
次に、
図2に示す無害化処理工程は、プラズマ溶融分解炉14によって、小型詰替え済みPCB廃棄物19、及びPCB破砕物25を溶融分解処理する溶融分解処理工程を有している。また、プラズマ溶融分解炉14内で発生する有害物質を含むことがある発生ガスを、排ガス処理設備26によって無害化する排ガス処理工程も有している。このようにして、保管容器12に収容されて搬入されて来る保管容器入りPCB廃棄物13、及び破砕用容器23等を無害化処理することができる。
【0042】
次に、
図1に示す前処理工程を詳細に説明する。この前処理工程が行われる前処理施設は、検査室27、第1ドラム缶等検査室28、汚染・解体処理室20、第2ドラム缶等検査室21、廃棄物荷捌室29、供給前処理設備22、供給待ち荷捌室30、破砕待ち荷捌室31、及び破砕設備室32を備えている。
【0043】
まず、
図1に示す前処理工程には、保管容器12に収容されて搬入されて来る保管容器入りPCB廃棄物13を、保管容器12の種類により、処理対象物の受入から保管までの経路を2つの形態のA類とB類とに分類する分類工程を備えている。
【0044】
A類は、ドラム缶サイズ以下の大きさの小型保管容器に収容されて搬送されてくる小型保管容器入りPCB廃棄物33であり、ドラム缶以外の保管容器に収容されて搬送されてくるPCB廃棄物も含むものである。
【0045】
B類は、ドラム缶サイズを超える大きさの大型保管容器、又は密封性の低い大型保管容器(木箱、段ボール箱)に収容されて搬送されてくる大型保管容器入りPCB廃棄物34である。
【0046】
検査室27は、受け入れた小型及び大型保管容器入りPCB廃棄物33、34の健全性(PCBが漏れていないかどうかの健全性)を目視検査した後、健全であるA類の小型保管容器入りPCB廃棄物33は、第1ドラム缶等検査室28に搬送する作業が行なわれる。
【0047】
ただし、健全でなく汚染が確認された小型保管容器入りPCB廃棄物33、及びB類の大型保管容器入りPCB廃棄物34は、汚染・解体処理室20に搬送する。
【0048】
第1ドラム缶等検査室28は、受け入れたA類の小型保管容器入りPCB廃棄物33について、検査グローブボックスの受入コンベア上で、例えばドラム缶バンドを外し、検査グローブボックス内でドラム缶の蓋を開け、目視によるPCB廃棄物の確認(記載収容物との差異、漏洩の有無、仕分けの要否)により、送り出すべき次工程を選定するための機能を有している。また、PCB廃棄物11の重量計量を行なうための計量機が設置されている。そして、検査グローブボックスの払出コンベア上で、例えばドラム缶にレバー式のバンドを取り付け、次工程の例えば廃棄物荷捌室29に搬送する作業が行なわれる。
【0049】
なお、小型保管容器を開封する検査グローブボックス、及び以下に記載するそれぞれのグローブボックスは、作業性を維持しつつ、作業者の安全性を確保するために、PCBの封止機能を有し漏洩防止が確保されている構成のものが使用されている。また、小型保管容器を開封しても、PCB廃棄物11がどのようなものであるかを確認できない場合(例えばウエスでくるまれており、目視できないもの)は、X線検査装置によってPCB廃棄物11の確認ができるようになっている。
【0050】
汚染・解体処理室20は、PCBの封止機能を有しており、受け入れたB類の大型保管容器入りPCB廃棄物34、及び汚染が確認されたA類の小型保管容器入りPCB廃棄物33について、収容されているPCB廃棄物11を、ドラム缶等の破砕用容器23、及びペール缶等の詰替え用の封入容器17に詰め替える作業(詰替え工程)が行なわれる。また、大型保管容器及び小型保管容器を解体して、破砕用容器23又は詰替え用封入容器17に詰め替える作業(詰替え工程)も行なわれる。
【0051】
この破砕用容器23に詰め替えられた破砕用容器詰替え済みPCB廃棄物35は、後段の破砕機24によって破砕されてプラズマ溶融分解炉14の供給口15(
図3参照)に供給される。そして、詰替え用封入容器17に詰め替えられた小型詰替え済みPCB廃棄物19は、そのままの状態でプラズマ溶融分解炉14の供給口16(
図3参照)からこの分解炉14内に供給される。
【0052】
また、詰替え作業の前後で、それぞれの重量計量を行なうための計量機も設置されている。
【0053】
なお、大型の電気機器のブッシング等のPCB廃棄物11は、破砕して破砕用容器23又は詰替え用封入容器17に詰め替える作業が行なわれる。そして、PCBを含む汚泥も、これら破砕用容器23又は詰替え用封入容器17に詰め替える作業が行なわれる。
【0054】
第2ドラム缶等検査室21は、汚染・解体処理室20で仕分けされた電気機器である安定器及び小型電気機器の内、プラズマ溶融分解炉14への供給単位重量を超えるものを、供給単位重量以下にするための分割(抜油、切断)の作業が行なわれる。更に、この分割されたPCB廃棄物11を破砕用容器23又は詰替え用封入容器17に詰め替える作業(詰替え工程)も行なわれる。
【0055】
この破砕用容器23に詰め替えられた破砕用容器詰替え済みPCB廃棄物35は、後段の破砕機24によって破砕されてプラズマ溶融分解炉14に供給される。そして、詰替え用封入容器17に詰め替えられた小型詰替え済みPCB廃棄物19は、そのままの状態でプラズマ溶融分解炉14の供給口16からこの分解炉14内に供給される。
【0056】
これら安定器及び小型電気機器は、安定器及び小型電気機器解体グローブボックスを使用して、抜油、切断作業ができるようにしてあり、グローブボックス内に、切断機、孔開け機、搬送装置等が設置されている。このグローブボックスは、PCBが拡大しないように内部が密封されている。
【0057】
例えば安定器の切断位置(トランスとコンデンサとの隙間であって、PCBが漏れないように切断できる位置)は、X線検査装置によって特定することができ、その特定した切断位置を示すデータを、グローブボックス内の切断機に伝送することができる。切断機は、このデータに基づいて安定器等を自動的に切断することができる。
【0058】
廃棄物荷捌室29は、受け入れたA類の小型保管容器入りPCB廃棄物33、並びに、汚染・解体処理室20、及び第2ドラム缶等検査室21(安定器若しくは小型電気機器解体グローブボックス)で詰め替えられた破砕用容器23及び詰替え用封入容器17を、それらの容器に収容されているPCB廃棄物11の種類(安定器、小型電気機器、感圧紙、ウエス、汚泥等)に該当する次工程に送り出すための作業が行なわれる。また、汚染・解体処理室20で使用される破砕用容器23が保管されている荷捌ラック(棚)も設置されている。
【0059】
供給前処理設備22は、廃棄物荷捌室29から送られてくるA類の小型保管容器入りPCB廃棄物33からPCB廃棄物11を取り出して、このPCB廃棄物11をプラズマ溶融分解炉14に供給することができる供給単位重量以下にするための作業が行われる。この供給前処理設備22は、安定器仕分グローブボックス(安定器等供給前処理室)と、汚泥等仕分グローブボックス(汚泥等供給前処理室)とを備えている。
【0060】
安定器仕分グローブボックスは、気密封止されたグローブボックス内で、安定器及び小型電気機器(安定器等)を小型保管容器12から取り出して、個別に計量して、プラズマ溶融分解炉14への供給単位重量(分解炉14の供給口16に通すことができる大きさ)に合わせて、封入用樹脂袋18に詰め替えて、小型詰替え済みPCB廃棄物19を作製する作業が行なわれる(詰替え工程)。
【0061】
汚泥等仕分グローブボックスは、気密封止されたグローブボックスを備えており、以下の作業が行なわれる。
【0062】
例えばドラム缶等の小型保管容器12に収容されている感圧紙及びウエスは、プラズマ溶融分解炉14への供給単位重量(制限重量、及び分解炉14の供給口16に通すことができる大きさ)に合わせて、この小型保管容器12からペール缶等の詰替え用の封入容器17に詰め替える作業(供給前処理)が行なわれる(詰替え工程)。
【0063】
また、ドラム缶等の小型保管容器12に収容されている汚泥は、水分等の存在を考慮して供給単位重量(制限重量)の約50%の吸着剤を入れたペール缶等の詰替え用の封入容器17に詰め替える作業(供給前処理)が行なわれる。このペール缶等の封入容器17には、供給単位重量(制限重量)の汚泥が詰められる(詰替え工程)。
【0064】
なお、液状廃棄物の場合は、供給単位重量(制限重量)の吸着剤と、供給単位重量(制限重量)のこの液状廃棄物とをペール缶等の封入容器17に詰め替える作業(供給前処理)が行なわれる(詰替え工程)。
【0065】
また、封入容器17は、例えば栓付きのペール缶を採用している。この栓として、例えばプラスチック製のラプチャーディスク(破裂板)を使用している。このラプチャーディスクは、封入容器17内の圧力が或る一定以上となったときに、破裂するようになっているものである。従って、封入容器17がプラズマ溶融分解炉14内で破裂したときに、炉内圧が急激に変化しないようにすることができる。これに対して、封入容器17として密閉容器を採用すると、溶融分解炉14内で破裂したときに、炉内圧が急激に変化することがある。
【0066】
このように、炉内圧が急激に変化しないようにすることによって、後述する
図2に示すプラズマ溶融分解炉14、及びこの分解炉14と接続する排ガス処理設備26を比較的安定して運転することができる。
【0067】
供給待ち荷捌室30は、
図1に示す前処理工程と、
図2に示す無害化処理工程との操業時間及び日数の相違を吸収するために、並びに、PCB廃棄物11の種類の違いによる前処理工程の作業量と、無害化処理工程の処理量との相違を吸収するために、バッファとしての機能を有している(貯留工程)。更に、プラズマ溶融分解炉14の処理要求に合わせたPCB廃棄物11等の供給を行うことができる荷捌機能も有している。この供給待ち荷捌室30は、供給待ち安定器荷捌ラックと、供給待ちペール缶荷捌ラックとを備えている。また、詰め替え用の新ペール缶を収容する新ペール缶荷捌ラックも備えている。
【0068】
これら供給待ち安定器荷捌ラック、及び供給待ちペール缶荷捌ラックには、多数の小型詰替え済みPCB廃棄物19が収容されている。これら小型詰替え済みPCB廃棄物19は、(B)−(B)に示すように、そのままの状態でプラズマ溶融分解炉14に供給される(溶融分解処理工程)。
【0069】
破砕待ち荷捌室31は、次工程における破砕機24の運転を安定的に行なうために破砕処理対象物である破砕用容器23、及び小型保管容器12を荷捌するためのものである(貯留工程)。この破砕用容器23、及び小型保管容器12として、鋼製及び合成樹脂製のドラム缶、及びプラスチック製のコンテナがあり、形態別に荷捌される。
【0070】
この破砕用容器23は、次工程の破砕機24によって破砕されて、(A)−(A)に示すように、PCB破砕物25としてプラズマ溶融分解炉14に供給される(供給工程)、(溶融分解処理工程)。
【0071】
破砕設備室32は、
図1に示すように、破砕機24が設置されており、PCB廃棄物11が取り出されて空になった小型保管容器12、破砕用容器23、又はPCB廃棄物11が収容された状態の小型保管容器12、破砕用容器23を、破砕機24によって破砕してPCB破砕物25とする作業を行なうための部屋である(破砕工程)。
【0072】
破砕機24は、
図3に示すように、破砕機24の排出口24aとプラズマ溶融分解炉14の供給口15とが破砕物供給装置36を介して接続され、この破砕物供給装置36が、破砕機24の排出口24aから排出されるPCB破砕物25を、プラズマ溶融分解炉14の供給口15を介してこの分解炉14内に供給できるように構成されている(供給工程)。
【0073】
次に、高濃度のPCB汚染物を、汚染・解体処理室20内で取り扱う場合と、破砕機24で取り扱う場合とを比較して説明する。高濃度のPCB汚染物であるPCB原液や白土、PCB原液を拭き取ったウエス等は、分類、詰め替えを容易に行なえることを実証試験で確認しているので、それらを汚染・解体処理室20内での主たる処理対象物としている。つまり、PCB原液や白土等の高濃度のPCB汚染物は、破砕機24で破砕する必要もなく、破砕機24に通すと、破砕機24を高濃度のPCBで汚染することとなり非合理的だからである。
【0074】
一方、主たる破砕処理対象物は、PCB濃度が比較的低い保管容器12、破砕用容器23等としている。その理由は、これらを人力や手工具を使用して解体しようとすると、膨大な労働力を必要とすることを実証試験でも確認されたからである。よって、これらを破砕機24で破砕処理の上、袋詰めや容器詰めすることなく、溶融分解炉14に供給することが適切であると判断した。
【0075】
次に、
図2示す無害化処理工程を詳細に説明する。この無害化処理工程が行われる無害化処理設備37は、プラズマ溶融分解炉14、及び排ガス処理設備26を備えている。
【0076】
プラズマ溶融分解炉14は、内部が約1400℃に維持され、PCB廃棄物11に含まれるPCBは、この炉内で分解処理される(溶融分解処理工程)。ただし、照射されるプラズマの温度は、約1500℃以上である。そして、このプラズマ溶融分解炉14の下部には、
図2に示すように、2つの第1及び第2排出路38、39が形成されている。この2つの第1及び第2排出路38、39は、炉内でPCBが分解されて無害化された溶融廃棄物(スラグ)を、外部に配置した2つの第1及び第2容器40、41に取り出すことができるものである。第1排出路38は、炉内のスラグのうち、溶融ガラスを排出して第1容器40に取り出すことができる。第2排出路39は、炉内のスラグのうち、溶融金属を排出して第2容器41に取り出すことができる。これら溶融ガラス及び溶融金属の固化したものは、卒業判定されて、無害であると判定されたものは、資源として再利用(適正処理)することができる。
【0077】
また、このプラズマ溶融分解炉14は、破砕待ち荷捌室31から破砕機24に送られて、破砕処理されて排出されるPCB破砕物25、並びに、供給待ち荷捌室30(供給待ち安定器荷捌ラック、及び供給待ちペール缶荷捌ラック)より送られて来る小型詰替え済みPCB廃棄物19が、例えば約1分間に1回のピッチ(間隔)で炉14内に供給され、これらを溶融分解処理するように設定されている。勿論、小型詰替え済みPCB廃棄物19の炉14内への供給間隔を1分以外の時間間隔に設定することができる。
【0078】
排ガス処理設備26は、
図2に示すように、プラズマ溶融分解炉14内で発生した発生ガスを、無害化するためのものであり、熱滞留室42、排ガス熱交換器43、減温塔44、バグフィルタ45、及び処理装置46を備えている。この排ガス処理設備26から排出されるバグダスト、及び蒸発残渣は、卒業判定されて、無害であると判定されたものは、適正処理される。
【0079】
また、熱滞留室42は、PCB破砕物25及びPCB廃棄物11をプラズマ溶融分解炉14で溶融分解処理する際に発生する発生ガスを、1100℃以上の温度に維持された当該熱滞留室42内に2秒間以上滞留させて処理することができるものである。これによって、PCB破砕物25及びPCB廃棄物11に含まれるPCBを完全に分解して無害化することができる。
【0080】
次に、上記のように構成されたPCB廃棄物の処理方法(前処理工程、無害化処理工程)、及びその処理設備(前処理設備10、無害化処理設備37)の作用を、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示す前処理工程によると、保管容器12に収容されて搬入されて来るPCB廃棄物11(保管容器入りPCB廃棄物13)を、プラズマ溶融分解炉14内(供給口16)に供給できる制限重量及び大きさの封入容器17と、封入用樹脂袋18とに詰め替えて、小型詰替え済みPCB廃棄物19を作製する詰替え工程を有している。従って、この小型詰替え済みPCB廃棄物19は、(B)−(B)に示すように、
図2に示す無害化処理工程において、プラズマ溶融分解炉14内に供給することができて、このPCB廃棄物11、並びに、このPCB廃棄物11を収容している封入容器17及び封入用樹脂袋18に付着するPCBを分解処理することができる。
【0081】
また、この
図1に示す前処理工程は、PCB廃棄物11が取り出されて空になった保管容器(解体された大型保管容器12、小型保管容器12)、及びPCB廃棄物11や、解体された大型保管容器12が収容された状態の破砕用容器23を、破砕機24によって破砕してPCB破砕物25とする破砕工程を有している。従って、このPCB破砕物25は、(A)−(A)に示すように、
図2に示す無害化処理工程において、プラズマ溶融分解炉14内に供給することができて、このPCB破砕物25に含まれるPCBを分解処理することができる。
【0082】
これによって、
図2に示すプラズマ溶融分解炉14は、そのような小型詰替え済みPCB廃棄物19、及びPCB破砕物25を溶融分解処理することができる適切な大きさ及び処理能力に設計することができる。更に、このように、プラズマ溶融分解炉14を適切な大きさ及び処理能力に設計できるので、プラズマ溶融分解炉14内で発生する発生ガスを無害化するための
図2に示す排ガス処理設備26についても、適切な大きさ及び処理能力に設計することができる。その結果、プラズマ溶融分解炉14及び排ガス処理設備26が過大なものとならないようにすることができ、設備費用を低減させることができる。
【0083】
そして、このPCB廃棄物11を、封入容器17又は封入用樹脂袋18に詰め替えて、PCBの漏洩を防止できるように封止しているので、この小型詰替え済みPCB廃棄物19がプラズマ溶融分解炉14内に供給されるまでの間(例えば
図1に示す廃棄物荷捌室29、破砕待ち荷捌室31、及び供給待ち荷捌室30内で保管されている間)に、PCBが暴露することを防止でき、PCB汚染の拡大を防止できる。
【0084】
そして、
図1に示す前処理工程によると、保管容器12に収容されて搬入されて来る保管容器入りPCB廃棄物13を、保管容器12の種類により、処理対象物の受入から保管までの経路を2つの形態のA類とB類とに分類するようにしている(分類工程)。A類は、小型保管容器入りPCB廃棄物33であり、B類は、大型保管容器入りPCB廃棄物34である。
【0085】
これによって、その分類された小型保管容器入りPCB廃棄物33のPCB廃棄物11、及び大型保管容器入りPCB廃棄物34のPCB廃棄物11を、それぞれ別々の作業工程でプラズマ溶融分解炉14(供給口15)に供給できる大きさの封入容器17又は封入用樹脂袋18に詰め替えることができる。
【0086】
このようにすると、小型保管容器入りPCB廃棄物33、及び大型保管容器入りPCB廃棄物34のそれぞれの詰替え作業を効率よく行うことができる。例えば小型保管容器入りPCB廃棄物33の詰替え作業は、
図1に示す供給前処理設備22のグローブボックスを使用して行うことができ、大型保管容器入りPCB廃棄物34の詰替え作業は、汚染・解体処理室20で行うことができる。
【0087】
そして、このように、PCB廃棄物11を、プラズマ溶融分解炉14内に供給できる大きさの封入容器17又は封入用樹脂袋18に詰め替える詰替え作業は、PCBの封止機能を有するグローブボックスを使用して行なうことによって、PCBの作業者に対する影響を防止できる。また、この詰替え作業をPCBの封止機能を有する汚染・解体処理室20内で行なうことによって、PCBによる汚染をこの汚染・解体処理室20内に限定させることができ、汚染の拡大を防止できる。
【0088】
次に、
図3等を参照して破砕機24、及び破砕物供給装置36を説明する。破砕機24は、PCB廃棄物11が取り出されて空になった小型保管容器12、破砕用容器23、又はPCB廃棄物11が収容された状態の小型保管容器12、破砕用容器23(以下、これらを単に「小型保管用容器12等」と言う。)を破砕してPCB破砕物25を作製することができるものである。
【0089】
この小型保管用容器12等は、
図3に示すように、破砕待ち荷捌室31から搬入装置47によって搬送されてきて、破砕機24の供給口24bからこの破砕機24に供給される。破砕機24は、小型保管用容器12等を破砕してPCB破砕物25を作製し、このPCB破砕物25は、破砕物供給装置36によってプラズマ溶融分解炉14内に供給される。
【0090】
破砕物供給装置36は、
図3に示すように、破砕機24の排出口24aから排出されるPCB破砕物25をプラズマ溶融分解炉14の供給口15に供給することができるものであり、第1破砕物フィーダ48、第2破砕物フィーダ49、及び計量機50を備えている。
【0091】
この破砕物供給装置36によると、破砕機24から排出されるPCB破砕物25を第1破砕物フィーダ48で受け取って、この第1破砕物フィーダ48が作動することによって、PCB破砕物25を第2破砕物フィーダ49上に搬送することができる。そして、この第2破砕物フィーダ49が作動することによって、PCB破砕物25を計量機50が備えている計量容器50a内に供給することができる。そして、予め設定されている所定重量のPCB破砕物25が計量容器50aに供給されると、図示しない制御部が第2破砕物フィーダ49を停止させる。
【0092】
しかる後に、計量機50に設けられている傾倒駆動部51が作動して、計量容器50aを傾倒させることができ、計量容器50a内のPCB破砕物25を供給シュート52に通してプラズマ溶融分解炉14内に供給することができる。なお、計量容器50aの傾倒動作は、制御部に予め設定されている所定の時間間隔、例えば1分間隔で行なうように設定されている。
【0093】
上記のように構成された破砕機24、及び破砕物供給装置36によると、
図3に示す小型保管用容器12等を、破砕機24によって破砕してPCB破砕物25とし、このPCB破砕物25を破砕物供給装置36によってプラズマ溶融分解炉14内に自動的に供給して、PCB破砕物25に含まれるPCBを分解処理することができる。
【0094】
つまり、大型保管容器12をそのままの大きさではプラズマ溶融分解炉14内に供給することができない場合に、まず、この大型保管容器12を解体する。次に、この解体されたものを収容する小型保管用容器12等を破砕機24で破砕する。これによって、プラズマ溶融分解炉14内に供給することができる大きさのPCB破砕物25にすることができる。その結果、このような大型保管容器12を、適正な大きさ、規模のプラズマ溶融分解炉14を使用して溶融分解処理することができる。勿論、保管容器12内に上記以外のPCB廃棄物11が収容されていても、破砕機24で破砕することができる。
【0095】
よって、プラズマ溶融分解炉14に供給して溶融分解処理することができない大きさであってPCBで汚染された保管容器12を、再利用するために洗浄する作業が不要となり、作業者の労力を軽減でき、しかも、洗浄の際のPCB汚染の拡大を防止できる。
【0096】
そして、この破砕物供給装置36によると、破砕機24の排出口24aから排出されるPCB破砕物25を、プラズマ溶融分解炉14の供給口15を介してこの分解炉14内に供給することができるので、PCB破砕物25を、プラズマ溶融分解炉14内に供給するために別の供給用容器に詰替える必要が無い。よって、PCB破砕物25を供給用容器に詰替えるための手間が不要であるし、このような供給用容器の費用を削減できる。
【0097】
更に、
図3に示す破砕機24、破砕物供給装置36、及び
図1に示す破砕待ち荷捌室31によると、この破砕待ち荷捌室31には、小型保管用容器12等を貯留しておくことができるので、この小型保管用容器12等を所望のタイミングで破砕機24に供給することができる。そして、破砕機24は、小型保管用容器12等を破砕してPCB破砕物25を作製することができ、計量機50は、そのPCB破砕物25を所定の時間間隔(例えば1分間隔)でプラズマ溶融分解炉14内に自動的に供給することができる。
【0098】
これによって、プラズマ溶融分解炉14内で発生するガスの発生量の変動幅が小さくなるようにすることができる。よって、分解炉14内の圧力を略一定に保つために、発生ガスをこの分解炉14から排気するための例えば排気ファンの回転速度を制御したり、排気口の開口度を変更するためにダンパーの角度調整を行なうが、これら回転速度の制御量や、ダンパーの角度調整量を小さくすることができる。その結果、このプラズマ溶融分解炉14、及びこの分解炉14と接続される排ガス処理設備26を安定して運転することができる。
【0099】
また、上記と同様に、
図1に示す供給待ち荷捌室30には、小型詰替え済みPCB廃棄物19を貯留しておくことができるので、
図3に示すように、この貯留されている小型詰替え済みPCB廃棄物19を、詰替え済み廃棄物供給装置53によって、所定の時間間隔(例えば1分間隔)で供給通路部54に通してプラズマ溶融分解炉14内に自動的に供給することができる。これによっても、上記と同様に、プラズマ溶融分解炉14、及びこの分解炉14と接続する排ガス処理設備26を安定して運転することができる。ただし、詰替え済み廃棄物供給装置53は、プラズマ溶融分解炉14内の発生ガスが漏れ出ないように、二重ゲート構造の第3及び第4供給用シールゲート部55、56を備えている。
【0100】
また、
図3に示すように、この詰替え済み廃棄物供給装置53に二重ゲート構造の第3及び第4供給用シールゲート部55、56を設けた別の目的として、この詰替え済み廃棄物供給装置53によってプラズマ溶融分解炉14内に供給される封入用樹脂袋18を使用した小型詰替え済みPCB廃棄物19のその封入用樹脂袋18が、溶融分解炉14に供給される前に高温に晒されて溶けて破れないようにすることである。この二重ゲート構造の第3及び第4供給用シールゲート部55、56によって、封入用樹脂袋18が溶けて破れない状態で、小型詰替え済みPCB廃棄物19を、供給通路部54に通して溶融分解炉14内に自動的に供給することができる。
【0101】
図9(a)、(b)、(c)は、プラズマ溶融分解炉14内で発生するガスの発生量の変動幅を小さくすることができることを説明するための図である。
図9(a)は、計量容器50a内のPCB破砕物25、及び小型詰替え済みPCB廃棄物19の両方を、所定の時間間隔(例えば5分間隔)で、所定重量ずつプラズマ溶融分解炉14内に供給したときに発生するガス量(m
3/hr)の一例を示している。
【0102】
このとき、分解炉14内のPCB廃棄物11が発生するガス量は、0〜50(m
3/hr)で変動しており、変動幅は、50(m
3/hr)である。この場合は、プラズマ溶融分解炉14、及びこの分解炉14と接続する排ガス処理設備26を比較的安定して運転することができない状態となっている。
【0103】
なお、順次所定重量ずつ供給されるPCB破砕物25、及び小型詰替え済みPCB廃棄物19は、プラズマ溶融分解炉14内でそれぞれ同等の体積のガスを発生するように予め作製されて貯留されている。
【0104】
図9(b)は、計量容器50a内のPCB破砕物25、及び小型詰替え済みPCB廃棄物19の両方を、所定の時間間隔(例えば1分間隔)でプラズマ溶融分解炉14内に供給したときに発生するガス量(m
3/hr)を、各供給ごとに別々に示している。
【0105】
図9(c)は、
図9(b)に示す各供給ごとに別々に示す発生ガス量(m
3/hr)を合成したものである。このとき、分解炉14内のPCB廃棄物11が発生するガス量は、35〜50(m
3/hr)で変動しており、変動幅は、15(m
3/hr)である。この場合は、プラズマ溶融分解炉14、及びこの分解炉14と接続する排ガス処理設備26を比較的安定して運転している状態となっている。
【0106】
次に、
図3を参照して、破砕機24、及び破砕物供給装置36を外部との間で気密封止している第1隔壁57、第2隔壁58、第3隔壁59、及び第4隔壁60について説明する。
【0107】
第1隔壁57は、
図3に示すように、破砕機24の排出口24aから破砕物供給装置36を通ってプラズマ溶融分解炉14の供給口15までのPCB破砕物25の供給路61を、外部との間で気密封止するものである。つまり、第1隔壁57は、破砕物供給装置36が備えている第1破砕物フィーダ48、第2破砕物フィーダ49、及び計量機50を、外部との間で気密封止している。
【0108】
上記のように構成された破砕機24、及び破砕物供給装置36によると、
図3に示す破砕機24の排出口24aから排出されるPCB破砕物25を、破砕物供給装置36によってプラズマ溶融分解炉14の供給口15に自動的に供給することができるので、作業者がPCB破砕物25によってPCB汚染することを防止できる。そして、破砕機24の排出口24aから破砕物供給装置36を通ってプラズマ溶融分解炉14の供給口15までのPCB破砕物25の供給路61が、外部との間で第1隔壁57によって気密封止されているので、PCB破砕物25によるPCB汚染が第1隔壁57の外側に拡大することを防止できる。
【0109】
第2隔壁58は、
図3に示すように、第1隔壁57によって気密封止されている破砕物供給装置36を、更に外側から囲むように設けられている。この第2隔壁58は、その内側と外側との間を気密封止するものであり、PCB破砕物25によるPCB汚染が第2隔壁58の外側に拡大することを防止できる。第2隔壁58は、この実施形態では、破砕機24の排出口24aから第2破砕物フィーダ49の出口までの範囲を囲むように設けられている。
【0110】
第3隔壁59は、
図3に示すように、破砕機24の供給口24bと、この供給口24bに小型保管用容器12等を供給するための搬入装置47の先端部とを外側から囲むように設けられている。この第3隔壁59は、その内側と外側との間を気密封止するものであり、破砕機24の供給口24bに滞留するPCB破砕物25によるPCB汚染が、第3隔壁59の外側に拡大することを防止できる。なお、搬入装置47の先端部は、二重ゲート構造としてあり、この二重ゲート構造によって、小型保管用容器12等を外部から第3隔壁59内に搬入するときに、第3隔壁59内のPCBが外部に漏洩しないようになっている。
【0111】
第4隔壁60は、
図3に示すように、破砕機24の供給口24bに設けられている押込み装置62を外側から囲むように設けられている。この第4隔壁60は、その内側と外側との間を気密封止するものであり、破砕機24の供給口24bに滞留するPCB破砕物25によるPCB汚染が、押込み装置62を通って第4隔壁60の外側に拡大することを防止できる。
【0112】
次に、
図4〜
図8を参照して、破砕物供給装置36がPCB破砕物25を所定重量ずつ計量して、所定のタイミングでその計量済みのPCB破砕物25をプラズマ溶融分解炉14に供給する手順を説明する。
【0113】
図4(a)は、第1供給用シールゲート部63が短縮状態となっており、第1供給用シールゲート部63のゲート63aが後退位置にあり、計量機50の供給口が開状態となっている。この状態で、第2破砕物フィーダ49が作動すると、
図4(b)に示すように、PCB破砕物25を計量容器50aに供給することができる。
【0114】
そして、第2供給用シールゲート部64が伸張状態となっており、第2供給用シールゲート部64のゲート64aが前進位置にあり、プラズマ溶融分解炉14の供給シュート52の供給口15が閉状態となっている。これによって、プラズマ溶融分解炉14内を密封することができ、分解炉14内で発生するガスが流出することを防止できる。
【0115】
図4(b)は、第2破砕物フィーダ49が作動しており、PCB破砕物25を計量容器50aに供給している状態を示す。計量機50は、計量容器50aに供給されているPCB破砕物25の重量を逐次計量している。
【0116】
図5(a)は、予め設定された所定重量のPCB破砕物25が計量容器50aに供給され、第2破砕物フィーダ49が停止している状態を示している。このPCB破砕物25の計量値は、制御部に送信され、プラズマ溶融分解炉14、及び排ガス処理設備26の制御に使用される。
【0117】
図5(b)は、第1供給用シールゲート部63が伸張状態となっており、第1供給用シールゲート部63のゲート63aが前進位置にあり、計量機50の供給口が閉状態となっている。この状態で、計量機50の内側空間が密封された状態となっている。
【0118】
図6(a)は、計量機50の内側空間のガスが排気され、窒素N
2を内側空間に充填している。これによって、計量機50の内側空間に存在していたガスが、PCB破砕物25に伴ってプラズマ溶融分解炉14内に進入することを防止できる。このようにして、第2供給用シールゲート部64の開放準備をすることができる。
【0119】
図6(b)は、第2供給用シールゲート部64が短縮状態となっており、第2供給用シールゲート部64のゲート64aが後退位置にあり、プラズマ溶融分解炉14の供給口15が開状態となっている。このとき、計量機50の供給口が閉じているので、プラズマ溶融分解炉14内のガスが流出することがない。
【0120】
図7(a)は、図示しない傾倒駆動部51が作動して計量容器50aを傾倒させて、計量容器50a内のPCB破砕物25をプラズマ溶融分解炉14内に供給している状態を示している。
【0121】
図7(b)は、図示しない傾倒駆動部51が作動して傾倒状態の計量容器50aをもとの水平位置に復帰させた状態を示している。
【0122】
図8は、第2供給用シールゲート部64が伸張状態となっており、第2供給用シールゲート部64のゲート64aが前進位置にあり、プラズマ溶融分解炉14の供給口15が閉状態となっている。
【0123】
このようにして、破砕物供給装置36がPCB破砕物25を所定重量ずつ計量して、所定時間間隔でその計量済みPCB破砕物25をプラズマ溶融分解炉14内に供給する1サイクルが終了する。よって、
図4〜
図8に示す動作を、所定時間間隔(例えば1分間隔)で繰り返して行なうことによって、
図9(b)、(c)に示すように、PCB破砕物25を所定重量ずつ、所定時間間隔(例えば1分間隔)でプラズマ溶融分解炉14内に供給することができる。
【0124】
次に、破砕物供給装置36が備える第1及び第2破砕物フィーダ48、49として、例えば振動フィーダを採用しているが、その理由を説明する。
【0125】
つまり、PCB破砕物25は、その性状(嵩密度、破砕粒度、破砕形状等)が一定していないが、これらを同一の第1及び第2破砕物フィーダ48、49、並びに計量機50を使用して、各PCB破砕物25毎に規定された所定重量範囲内に計量して溶融分解炉14内に供給する必要がある。この理由は、後述する。
【0126】
そこで、第1及び第2破砕物フィーダ48、49として振動フィーダを採用すると、各振動フィーダの運転、停止、振幅幅等を、インバータ及びタイマを使用して適切な設定値に設定することができる。そして、これらの設定値を、性状が相違する各PCB破砕物25毎に設定することによって、性状が相違する各PCB破砕物25を、各PCB破砕物25毎に予め設定されている所定重量範囲内に計量して溶融分解炉14内に供給することができる。このことは、実証試験で確認されている。
【0127】
次に、第1及び第2破砕物フィーダ48、49は、PCB汚染に対する除染作業の容易性が必要とされるが、振動フィーダを採用すると、この目的を達成することができる。つまり、振動フィーダは、樋状部が振動駆動部によって振動される構成となっており、この樋状部の上をPCB破砕物25が通るようになっている。従って、PCB破砕物25によって汚染されるのは、樋状部であり、この樋状部は、除染作業を容易に行なうことができ、上記目的を達成することができる。
【0128】
また、
図3に示す破砕物供給装置36におけるPCB破砕物25の供給路は、第1及び第2破砕物フィーダ48、49のそれぞれの樋状部を有している。そして、この樋状部は、振動部分であるので、各樋状部と、固定部分とが、シート状のフレキシブルジョイントによって密封接続されている。これによって、各樋状部が設定された通りに振動できるようにすると共に、PCB破砕物25の供給路を密封することができる。
【0129】
そして、このフレキシブルジョイントは、多層構造のものを使用しており、その多層部には、例えば圧力層が形成されている。この圧力層の圧力は、圧力検出部によって検出される構成となっており、その圧力層の検出圧力が予め設定されている下限圧力よりも小さくなったときに、その旨の信号を出力表示するようになっている。これによって、フレキシブルジョイントの損傷等の異常を作業者に知らせることができ、このフレキシブルジョイントを早期に交換等の修理を行うことができる。
【0130】
次に、
図3に示す破砕物供給装置36が、性状の相違する各PCB破砕物25を、各PCB破砕物25毎に予め設定されている所定重量範囲内に計量して溶融分解炉14内に供給することができる構成となっているが、そのように、各PCB破砕物25毎に予め設定されている所定重量範囲内に計量する目的について説明する。
【0131】
つまり、
図9(c)に示すプラズマ溶融分解炉14内で発生するガス量の変動幅を、できるだけ小さくすることが好ましく、それを実現する方法の1つとして、計量容器50a内のPCB破砕物25を、所定の時間間隔(例えば1分間隔)でプラズマ溶融分解炉14内に供給したときに発生するガス量(m
3/hr)(又はガス発生量を示す波形)が、各供給ごとに略等しくなるようにする方法がある。
【0132】
ところが、性状が相違する各PCB破砕物25は、炉14内に供給したときに発生する重量当りのガス発生量がそれぞれ相違しているので、炉14内に供給したとき予め定めたガス発生量を示す波形となるように、各PCB破砕物25毎に計量重量を計量機50に設定する必要がある。
【0133】
そこで、各PCB破砕物25毎に計量重量を計量機50に設定してあり、これによって、プラズマ溶融分解炉14、その排気ファン、及びこの分解炉14と接続する排ガス処理設備26を比較的安定して運転できるようにしてある。
【0134】
ただし、上記実施形態では、
図9(b)、(c)に示すように、PCB破砕物25及び小型詰替え済みPCB廃棄物19を1分間隔でプラズマ溶融分解炉14内に供給したが、この供給間隔は、1回分の供給によって発生する分解炉14内での発生ガス量に応じて変更することができる。要は、
図9(c)に示す発生ガス量の変動幅が小さくなるように、供給の時間間隔を設定することが好ましい。