(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1のエレクトロクロミック化合物は、N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル、N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル、N−(4−(1−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、N−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン−2,8−ジイル、から選ばれることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
請求項3のエレクトロクロミック化合物は、N−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイルであることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
少なくとも一方が透明である一対の電極基板の間にエレクトロクロミック層と、電解質層とが形成される有機機能性素子であって,前記エレクトロクロミック層は請求項2又は請求項4の何れかに記載のエレクトロクロミック化合物を含むことを特徴とする有機機能性素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエレクトロクロミック性を有する有機機能性素子をカラー表示装置に利用しようとする場合には種々の色が必要となる。また、従来のエレクトロクロミック性を有する有機機能性素子は、電圧の印加を止めてしまうと直ちに消色へ向かってしまうことが多く、発色を維持するためには電圧を印加させ続ける必要があった。このため、カラー表示装置に利用できるような色を発色することのできるエレクトロクロミック材料や、電圧の印加を止めてもある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有したエレクトロクロミック材料が求められている。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑み、エレクトロクロミズム現象を生じる新規なエレクトロクロミック化合物を提供すること、さらには電圧の印加を止めても、ある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有したエレクトロクロミック化合物を提供することを技術課題とする。また、このようなエレクトロクロミック化合物を用いて得られる有機機能性素子を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 本発明のエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【化1】
(式中、R
1は架橋ユニットであるが、架橋させない場合にはなくてもよい。なお、点線は架橋していることを示す。R
1は二価のアルキル基、酸素、硫黄、置換していてもよいケイ素化合物から選ばれる。また、R
1でベンゼン環同士が直接結合してもよい。R
2はアルキル基,アリール基,アルコキシ基,アリーロキシ基,アルコキシカルボニル基,ハロゲン,水素から選ばれる。X
1乃至X
4はそれぞれ個別にアルキル基,アリール基,アルコキシ基,アリーロキシ基,ハロゲン,水素から選ばれる。式中の斜線は共重合をしていることを示し、Arは2価のアリール基であるがなくてもよい。nは1以上の数字である。)
(2) (1)のエレクトロクロミック化合物は、N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル、N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル、N−(4−(1−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、N−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン−2,8−ジイル、から選ばれることを特徴とする。
(3) 本発明のエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする。
【化2】
(式中、R
1は架橋ユニットであるが、架橋させない場合にはなくてもよい。なお、点線は架橋していることを示す。R
1は二価のアルキル基、酸素、硫黄、置換していてもよいケイ素化合物から選ばれる。また、R
1でベンゼン環同士が直接結合してもよい。R
2はアルキル基,アリール基,アルコキシ基,アリーロキシ基,アルコキシカルボニル基,ハロゲン,水素から選ばれる。R
3は架橋ユニットであり、二価のアルキル基、酸素、硫黄、置換してもよいケイ素化合物、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル、エチレングリコール及びその重合体、から選ばれる。X
1,X
4はそれぞれ個別にアルキル基,アリール基,アルコキシ基,アリーロキシ基,ハロゲン,水素から選ばれる。式中の斜線は共重合をしていることを示し、Arは2価のアリール基であるがなくてもよい。nは1以上の数字である。)
(4) (3)のエレクトロクロミック化合物は、N−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイルであることを特徴とする。
(5) 少なくとも一方が透明である一対の電極基板の間にエレクトロクロミック層と、電解質層とが形成される有機機能性素子であって,前記エレクトロクロミック層は(2)又は(4)の何れかに記載のエレクトロクロミック化合物を含むことを特徴とする。
(6) (5)に記載の有機機能性素子は、メモリー性を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は本実施形態の有機機能性素子の構成を模式的に示した図である。
【0009】
図示する有機機能性素子100は、一対の電極101,102、電解質層103、エレクトロクロミック層104を備える。本実施形態の有機機能性素子100は、一対の電極101,102の間に順電圧・逆電圧をかける(印加する)ことによって、発色,消色、或いは色調の変化が生じるものである。さらに具体的には、エレクトロクロミック層104が接する電極101を正の電極とし、電解質層103が接する電極102を負の電極としたときに、両電極間に順電圧をかける(印加する)ことによって、イオンがドープされ発色し、逆電圧をかけることによりイオンが脱ドープされ消色する。本実施形態の有機機能性素子では電圧をかけて発色させた後、電圧を切っても発色状態が維持されたメモリー性を有する有機機能性素子であり、電子ペーパーや遮光手段等に利用可能なエレクトロクロミック表示素子である。
【0010】
電極101は、透明基板と、基板内側(内面)に形成される導電膜にて構成されている。透明基板の形成材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明樹脂や、ガラスが好適に用いられる。透明基板の内側に形成される導電膜は、透明基板同様に透光性を有した導電膜である必要がある。このような導電膜として用いられる材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)やアンチモンドープ錫酸化物(ATO)等、の既知の金属酸化膜を挙げることができる。
【0011】
電極101はこのような透明基板に導電膜を形成させることにより得られる。導電膜の形成は、導電性材料を真空蒸着法、スパッタ法、ロールコーター法、刷毛塗り等、の既知のコーティング方法により行うことができる。導電膜の厚さは発色/消色に必要とされる電圧を印加することが可能な膜厚であればよく、その場合の光学膜厚としては、好ましくは15nm以上280nm以下、更に好ましくは80nm以上280nm以下である。抵抗値として考えた場合には、好ましくは4Ω/cm
2以上125Ω/cm
2以下、更に好ましくは4Ω/cm
2以上20Ω/cm
2以下である。
【0012】
電極102は、電極101と同じように透明基板とその内側(内面)に形成される導電膜からなる。電極102で用いられる透明基板,導電膜は、電極101で使用可能な材料を用いることができる。なお、電子ペーパー等、一方の電極側の面のみを表示面として用いる場合には、他方の電極を形成する基板は透明でなくてもよく、不透明な樹脂基板やセラミック等の透光性を持たない材料を基板として用いることも可能である。また、このように一方の電極が透明でなくて良い場合には、導電性材料として白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属材料を用いることもできる。
【0013】
電解質層103は、一方の面が電極102に接するように他方の面がエレクトロクロミック層104に接するように形成される。言い換えれば、電解質層103は電極102とエレクトロクロミック層104の間に形成される。電解質層103は液状の電解質、または固体状の電解質で形成される。電解質層の厚さは電子の授受、保持に必要な厚さであればよく、その場合の光学膜厚としては、好ましくは0.5μm以上100μm以下、更に好ましくは1μm以上30μm以下である。液状の電解質としては、例えば各種有機溶媒に溶かした支持電解質を用いることができる。このような液状の電解質に用いられる有機溶媒としては、塩化メチレンやアセトニトリル等が挙げられる。また、支持電解質としては、例えば第4級アンモニウム塩等が挙げられる。例えば、このような第4級アンモニウム塩に用いられる陽イオン材料としては、テトラブチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。また、陰イオン材料としては、臭化物イオンや塩化物イオンなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系が挙げられる。
【0014】
他の支持電解質としては既知のイオン液体を用いることができる。このようなイオン液体に用いられる陽イオン材料としては、イミダゾリウム塩類・ピリジニウム塩類などのアンモニウム系、ホスホニウム系が挙げられる。また、陰イオン材料としては、臭化物イオンや塩化物イオンなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系を挙げることができる。これらの液状の電解質は電解質層103を構成する組成(全量)に対して、好ましくは5重量%以上60重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上50重量%以下である。
【0015】
また、固体状の電解質としては、例えば、上述したイオン液体をアクリル系樹脂等により固めたものや、高分子電解質等を用いることができる。イオン液体を固体状の電解質として用いるためのアクリル系樹脂は、以下に挙げるものを使用することができる。なお、表記上「・・・(メタ)アクリレート」とあるのは「・・・アクリレート」または「メタクリレート」を表す。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−アクリロイロプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル(メタ)アクリレート類等の単官能アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブテン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類等の2官能アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等の分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、又はウレタンアクリレート類等の多官能アクリレート、グリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシ系アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタン系アクリレート、種々のアクリル系モノマーを挙げることができる。
【0016】
また、アクリル系モノマーを溶解させる溶媒として、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エチレングリコール、n−プロピルセロソルブ、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、キシレン、トルエン、n―ブタノール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール、ブタノール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、及びこれらの混合物等、のアクリル系材料用の溶媒として一般的に使用可能な有機溶媒が挙げられる。
また、アクリル系モノマーを重合させるための光ラジカル重合開始剤の例として、トリス(クロロメチル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4'−メトキシスチリル)
−6−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどのトリアジン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾイン系化合物、ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノンなどのアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、アシルフォスフィンオキサイド等の既知の重合開始剤を用いることができる。これらは2種類以上を併用して用いてもよい。これらの重合開始剤は電解質層103を構成する組成(全量)に対して、好ましくは0.1重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以上5重量%以下である。なお、固体電解質に用いるイオン液体は、電解質層103を構成する組成(全量)に対して、好ましくは40重量%以上90重量%以下、さらに好ましくは50重量%以上85重量%以下である。また、高分子電解質としては、例えばポリアリルアミン塩酸塩、アクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩、ジメチルアミン−アンモニア−エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン縮合物、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。なお、このような高分子電解質には適宜支持塩を加えてもよい。支持塩としては、例えば、臭化物イオンや塩化物イオンなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系から成る塩が挙げられる。
【0017】
本実施形態のエレクトロクロミック層104は、エレクトロクロミズム現象を示す有機化合物が好適に用いられる。なお、エレクトロクロミズムとは、化学物質に電荷を印加することにより、その光物性に可逆的変化が見られる現象のことである。本実施形態では、このエレクトロクロミック層104を形成するエレクトロクロミック材料として下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系化合物を用いるものとしている。
【0019】
上記の一般式(1),及び一般式(2)において、R
1は架橋ユニットであり、例えば二価のアルキル基、酸素、硫黄、置換してもよいケイ素化合物などが挙げられる。R
1でベンゼン環同士が直接結合してもよい。なお、架橋させない場合にはR
1は無くてもよい。R
1がない場合には、トリフェニルアミン化合物となる。
【0020】
また、上記の一般式(1),及び一般式(2)においてR
2はアルキル基,アリール基,アルコキシ基,アリーロキシ基,アルコキシカルボニル基,ハロゲン,水素のいずれかである。なお、ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。R
2が水素、又はハロゲン以外の場合、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−又はiso−プロピル、n−、iso−又はtert−ブチル、n−、iso−又はneo−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の直鎖、分岐、環状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル、o−、m−、p−トリル、1−および2−ナフチル、アントリル等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−又はiso−プロポキシ、n−、iso−又はtert−ブトキシ、n−、iso−又はneo−ペントキシ、n−ヘキソキシ、シクロヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ等の直鎖、分岐、環状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。アリーロキシ基としては、フェノキシ、o−、m−、p−トリロキシ、1−および2−ナフトキシ、アントロキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリーロキシ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、たとえば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−、i−、t−ブトキシカルボニル基等の直鎖、分岐、環状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が挙げられる。また、上記の一般式(1),及び一般式(2)において、Arで表される二価のアリール基としては、o−、p−フェニレン、チオフェン−2,5−ジイル、チオフェン−2,3−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,3−ジイル、ピリジン−4,5−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,2−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、アントラセン−9,10−ジイル、アントラセン−1,4−ジイル、アントラセン−2,6−ジイル、アントラセン−1,7−ジイル、ビフェニレン−4,4'−ジイル等の芳香族化合物が挙げられる。なお、これらの芳香族化合物において芳香環上が置換された化合物も含まれる。Arとしてアリール基の芳香環上が置換された化合物としては、具体的にはアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、アルキルベンゼン−1,4−ジイル、アリールベンゼン−1,4−ジイル、アリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアルキルベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアルキルベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアルキルベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアリールベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアリールベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアリールベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、アルコキシチオフェン−2,5−ジイル、アルキルチオフェン−2,5−ジイル、アリールチオフェン−2,5−ジイル、アリーロキシチオフェン−2,5−ジイル、ジアルコキシチオフェン−2,5−ジイル、ジアルキルチオフェン−2,5−ジイル、ジアリールチオフェン−2,5−ジイル、ジアリーロキシチオフェン−2,5−ジイルが挙げられる。
【0021】
また、X
1乃至X
4で示されるアルキル基,アリール基,アルコキシ基,アリーロキシ基は、上述したR
2と同様のアルコキシ基、アルキル基、アリール基、アリーロキシ基が挙げられる。また、X
1乃至X
4がハロゲンである場合には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0022】
また、一般式(2)において、R
3は架橋ユニットであり、二価のアルキル基、酸素、硫黄、置換してもよいケイ素化合物、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル、エチレングリコール及びその重合体などが挙げられる。なお、架橋させない場合にはR
3は無くてもよい。
【0023】
上記一般式(1),及び一般式(2)におけるベンゾイミダゾール化合物とArとの間の斜線は、ベンゾイミダゾール化合物と置換されていてもよいAr化合物(2価のアリール基)とが共重合していることを意味している。また、本発明の重合体において、ベンゾイミダゾール化合物とアリール基は、ランダムに結合していても(ランダム共重合体)、交互に結合していても(交互共重合体)よい。また、一般式(1)において、ベンゾイミダゾール化合物とアリール基の導入比はx:1−xで表すことができるが、本発明においては、0<x≦1の任意の値をとることができる。x=1の場合、単独重合体となる。なお、上記一般式(1),及び一般式(2)においてnは1以上の数字を示す。また、n=1の時はモノマーを示し、n>1の時はポリマーを示し、nは重合度を表す。
【0024】
このような、一般式(1)で表されるベンズイミダゾール系化合物において、より具体的には、以下の式(3)で表されるN−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、式(4)で表されるポリN−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル、式(5)で表されるN−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル、式(6)で表されるN−(4−(1−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、式(7)で表されるN−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル、式(8)で表される5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン−2,8−ジイル、を好適に用いることができる。また、一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系化合物において、より具体的には、以下の式(9)で表されるN−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイルを好適に用いることができる。なお、各式で表される化合物は、モノマー又はポリマーとして用いることができる。
【0025】
【化4】
(なお、各式中においてnは1以上の数字を示す。)
エレクトロクロミック層を形成する膜の形成は、エレクトロクロミック材料を所定の溶媒に溶かした後、この溶液をロールコーター法、バーコーター法、スピンコーター法、スプレーコーター法、刷毛塗り等の既知のコーティング方法を用いて電極(基板の導電膜形成面)に塗布し、その後、溶媒を除去することにより所定の厚さを有したエレクトロクロミック層を形成することができる。エレクトロクロミック膜の厚さは発色/消色に必要とされる透過率を得られる膜厚であればよく、その場合の光学膜厚は好ましくは0.1μm以上100μm、更に好ましくは0.2μm以上20μm以下である。なお、エレクトロクロミック層の形成は電極にコーティングする方法の他、一対の電極間に液状のエレクトロクロミック材料を注入し、その後硬化させる方法であってもよい。硬化方法としては光や熱による方法が挙げられる。
【0026】
また、電解質層103やエレクトロクロミック層104を外気から遮蔽するために封止材を用いても良い。封止材としては透湿せず、内部物質による化学反応が生じないものを用いることができる。このような封止材としては、例えば、上述したアクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂のうち、特に好ましくはウレタン系アクリレートやエポキシ系アクリレートを用いることができる。
【0027】
次に、本実施形態の有機機能性素子を得る方法について説明する。透明基板上に導電膜を真空蒸着法、スパッタ法、ロールコーター法、刷毛塗り等、の既知のコーティング方法により形成し、電極101,102を作成する。次に一方の電極101(102)の導電膜の形成面にエレクトロクロミック材料をスピンコート等の既知のコーティング方法により塗布し、所定時間乾燥させ、エレクトロクロミック層104を形成する。このエレクトロクロミック層104の上に電解質液を所定量垂らした上で、他方の電極102(101)の導電膜の形成面を電解質液側として載せて貼り付ける。その後、オーブン等により所定時間乾燥させ、電極間に電解質層とエレクトロクロミック層とが形成された有機機能性素子を得る。なお、電解質液としてイオン液体とアクリルモノマー(重合開始剤を含む)との混合液を用いた場合には、乾燥後、紫外線硬化を行う。また、封止材を用いる場合には、貼り付けた電極101と電極102との間に封止材を塗布し、硬化させて封止を行う。得られた有機機能性素子100に電源装置105を用いて電極101、電極102に所定の電圧を印加させることにより、有機機能性素子が発色する。なお、本実施形態では、エレクトロクロミック層の形成後に電解質層を形成するものとしているが、これに限るものではなく、先に電解質層を形成後、その上にエレクトロクロミック層を形成するようにしてもよい。
【0028】
なお、本発明における有機機能性素子のメモリー性とは、有機機能性素子に対して所定の電圧をかけ発色させた後、電圧の印加を止めても良好な発色状態が所定期間得られていることを指す。
【0029】
次に本件発明の好適な実施例を以下に記載するが、本件発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
(1) 式(3)に示すポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)(一般式(1),Arなし,R
1なし,R
2=X
1=X2=X
3=X
4=水素原子))の合成
1.17gの4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド(和光純薬工業(株)製)と0.47gの1,2−フェニレンジアミンを10mLのメタノールに溶かし、60℃に昇温させて48時間攪拌した。反応液を室温に戻した際に生成した沈殿を濾過した。さらに、沈殿をクロロホルムで洗浄することにより、0.77gの 4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ジフェニルアニリンを単離した。
【0031】
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(DMSO−d
6):δ12.7(s,1H),8.02(d,2H),7.3−7.7(m,6H),7.0−7.2(m,10H)ppm
13C−NMRスペクトル(DMSO−d
6):δ151.2,148.8,146.7,142.6,135.0,129.8,127.7,125.0,124.0,122.2,121.5,118.5,111.1ppm
得られた4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ジフェニルアニリン181mg(0.5mmol)を、過硫酸アンモニウム1mmol(230mg)を含む1M過塩素酸リチウム水溶液中5mlに加えて2日間撹拌して得られた粉末を、ヒドラジン水溶液、水、メタノールで洗浄した。ここで得られた粉末を減圧乾燥することにより、エレクトロクロミック材料(化合物)となる4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ジフェニルアニリンのポリマーを104mg(モノマー単位として0.29mmol)得た。
【0032】
(2) 有機機能性素子の作成
透明基板である1mmのガラス板に真空蒸着法を用いてITOを蒸着させ、一対のITO付きガラス電極(抵抗値14Ω/cm
2)を用意した。前述の合成により得られたエレクトロクロミック材料である4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ジフェニルアニリンを有機溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド)で溶解させ、この溶液を一方のガラス電極に塗布し、オーブンにて100℃、10分にて乾燥させ、光学膜厚6.2μmのエレクトロクロミック層が形成されたガラス電極を得た。
【0033】
次に、アクリルモノマー(UA−510H;共栄社化学(株)製)を50重量%、溶媒MIBK49重量%、重合開始剤(イルガキュア184)を1重量%加え混合した。この混合液に対して電解質材料としてイミダゾリウム系イオン液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート 関東化学(株)製)を60重量%となるように添加し、混合した。このようにして得られた混合液を電解質層用の電解質液とした。得られた電解質液をエレクトロクロミック層付きのガラス電極にスポイトで1滴〜数滴垂らした上で、他方のガラス電極を載せて貼り合わせた。電極間にエレクトロクロミック層と電解質液が挟み込まれた状態で、これをオーブンにより100℃,10分加熱し乾燥させた。乾燥後、高圧水銀灯にて光源下10cmの位置で 1000mJ/cm
2(365nm)の紫外線を照射して硬化させた。紫外線照射を行いアクリルモノマーを重合させて、エレクトロクロミック層と固体の電解質層が形成された有機機能性素子を作製した。なお、実施例1で用いたエレクトロクロミック材料はモノマーとポリマーの両方を用いて、各々別に有機機能性素子を作製した。
【0034】
得られた固体の電解質層の厚みは15μmであった。なお、電解質層の厚み測定は評価後、両電極を剥がし測定した。得られた有機機能性素子のエレクトロクロミック層側のガラス電極を正極、電解質層側の電極を負極として電圧を可変できる電源装置を繋ぎ、順電圧(+2.5V)をかけたところ、モノマーのエレクトロクロミック材料を用いた有機機能性素子は鮮やかな緑色に発色した。また、ポリマーのエレクトロクロミック材料を用いた有機機能性素子は黄緑褐色に発色した。また、−2.5Vの逆電圧をかけたところ、どちらの有機機能性素子も直ちに消色した。次に、得られた有機機能性素子のエレクトロクロミック性の評価(発色評価、メモリー評価)をおこなった。得られた有機機能性素子に電圧(順電圧 +2.5V)をかけ、発色の色相を目視にて確認した後、発色した状態における有機機能性素子の色濃度を視感度透過率計((株)朝日分光、MODEL345)で測定した。印加前後の濃度変化の評価は、10%以上を○、3%以上から10%未満を△、3%未満を×とした。メモリー性評価は、視感透過率を100%とし、1分後の退色率と10分後の退色率を測定した。1分経過後の退色率50%未満を○、50%以上70%未満を△、それ以上を×とし、10分後の退色率70%未満を○、70%以上90%未満を△、それ以上を×とした。このようなエレクトロクロミック性の評価結果を表1に示す。
【0035】
<実施例2>
(1) 式(6)に示すポリ(N−(4−(1−ブトキシカルボニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)(一般式(1),Arなし,R
1なし,R
2=t−ブトキシカルボニル基,X
1=X
2=X
3=X
4=水素原子)の合成
0.67gの4−(N,N−ビス(4−ブロモフェニル)ベンズアルデヒドと0.17gの1,2−フェニレンジアミンを5mLのメタノールに溶かし、60℃に昇温させて48時間かくはんした。反応液を室温に戻した際に生成した沈殿を濾過した。さらに、沈殿をクロロホルムで洗浄することにより、0.40gの4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アニリンを単離した。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(DMSO−d
6):δ12.82(s,1H),8.10(d,2H),7.4−7.7(m,6H)7.53(d,4H),7.0−7.3(m,8H)ppm
得られた4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アニリン209mgと、0.18gの二炭酸t−ブチルを10mLのアセトニトリルに溶かし、12mgの4−N,N−ジメチルアミノピリジンを加え、2日間攪拌した。この反応溶液をクロロホルムに溶かし、炭酸ナトリウム水溶液で抽出した後、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮したクロロホルム層をヘキサンにて再沈殿させることにより、118mgのt−ブチル 2−(4−(ビス(4−ブロモフェニル)アミノ)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−カルボキシレートを単離した。
【0036】
このようにして得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(CDCl
3):δ8.0−8.1(m,1H),7.7−7.8(m,1H),7.59(d,2H),7.3−7.5(m,6H),7.12(d,2H),6.99(d,4H),1.52(s,9H)ppm
13C−NMRスペクトル(CDCl
3):δ153.5,148.7,148.2,146.0,142.6,133.9,132.6,130.7,126.6,126.2,124.9,124.5,122.5,120.0,116.4,114.7,85.3,27.8ppm
次に、窒素雰囲気下でビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)70mg(0.25mmol)に1,5−シクロオクタジエン1mLを加えた後にトルエンを2.5mL加えて懸濁させた。更に2,2’−ビピリジル0.40g(0.25mmol)を加えて攪拌した。この溶液に上述の操作により得られたt−ブチル−2−(4−(ビス(4−ブロモフェニル)アミノ)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−カルボキシレートを90mg(0.15mmol)加えた後に60℃に昇温して48時間攪拌した。反応液をメタノールに注ぎ、得られた粉末をろ過した。この粉末を水、メタノールの順で洗浄した後にジクロロメタンに溶かしてヘキサンで再沈殿することにより、t−ブチル 2−(4−(ビス(4−ブロモフェニル)アミノ)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−カルボキシレートのポリマーを25mg(モノマー単位として0.05mmol)単離した。
【0037】
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料をt−ブチル 2−(4−(ビス(4−ブロモフェニル)アミノ)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−カルボキシレートのポリマーとした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に順電圧,逆電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
<実施例3>
(1) 式(9)に示すポリ(N−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)(一般式(2),Arなし,R
1なし,R
2=X
1= X
4=水素原子,R
3= 1,3−ブタジエン−1,4−ジイル))の合成
1.17gの4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドと0.68gの1,2−ナフタレンジアミンを10mLのメタノールに溶かし、60℃に昇温させて48時間かくはんした。反応液を室温に戻した際に生成した沈殿を濾過した。さらに、沈殿をクロロホルムで洗浄することにより、0.87gのN−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミンを単離した。
【0039】
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(DMSO−d
6):δ12.8(s,1H),7.8−8.2(m,6H),7.3−7.5(m,6H),7.0−7.2(m,8H)ppm
得られたN−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン205.7mg(0.5mmol)を、過硫酸アンモニウム1mmol(230mg)を含む1M過塩素酸リチウム水溶液中5mlに加えて2日間撹拌して得られた粉末を、ヒドラジン水溶液、水、メタノールで洗浄した。ここで得られた粉末を減圧乾燥することにより、48.5mg(モノマー単位として0.29mmol)のポリ(N−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)を得た。
【0040】
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料をN−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン、及びポリ(N−(4−(1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)とした以外は、実施例1と同じ条件で各々有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に順電圧,逆電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
<実施例4>
(1) 式(4)に示すポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル)(一般式(1),Ar=2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル,R
1なし,R
2=X
1=X
2=X
3=X
4=水素原子)の合成
4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アニリン207.4mgと、5,5’−ビストリメチルスタニル−2,2’−ビチオフェン196.8mgを5mLのDMFに溶かした溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を22.8mg加え、90℃に加熱して48時間かくはんした。生成した反応液をメタノールに沈殿させ、さらに、フッ化カリウム水溶液、水、メタノール、ヘキサンの順で洗浄することにより、ポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル)を205.5mg(0.5mmol)単離した。
【0042】
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(DMSO−d
6):δ12.8(s,1H),8.0−8.2(m,2H),7.3−7.8(m,10H),7.0−7.3(m,8H)ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料をポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル)とした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に順電圧,逆電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
<実施例5>
(1) 式(5)に示すポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)(一般式(1),Ar=9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル,R
1なし,R
2=X
1=X
2=X
3=X
4=水素原子)の合成
窒素雰囲気下で、前記記載の4−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アニリン115.9mgと9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジボロン酸131.8mgをトルエン5mLに加えて懸濁させた。次に、炭酸カルシウム1.07gを5mLの水に溶かしたものを加えてかくはんした。更にテトラキストリフェニルホスフインパラジウム(0)12.4mgを加えた後、90℃に昇温して60時間かくはんした。生成した反応液をクロロホルムで抽出し、メタノールに析出させて得られた粉末をヘキサンで洗浄することにより、ポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)を169.6mg単離した。
【0044】
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(CDCl
3):δ9.4(s,1H),6.9−8.0(m,22H),2.05(t,4H),0.6−1.8(m,46H)ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料をポリ(N−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル−alt−9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)とした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に順電圧,逆電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
<実施例6>
(1) 式(7)に示すポリ(N−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)(一般式(1),Ar無し,R
1なし,R
2=X
1=X
4=水素原子,X
2=X
3=メチル基)の合成
0.58gの4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドと0.29gの4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミンを10mLのメタノールに溶かし、60℃に昇温させて48時間かくはんした。反応液を室温に戻した際に生成した沈殿を濾過した。さらに、沈殿をクロロホルムで洗浄することにより、0.53gのN−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミンを単離した。
【0046】
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(DMSO−d
6):δ12.5(s,1H),8.02(d,2H),7.3−7.4(m,6H),7.0−7.2(m,8H),2.3(br,6H)ppm
得られたN−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン204mg(0.5mmol)を、過硫酸アンモニウム1mmol(230mg)を含む1M過塩素酸リチウム水溶液中5mlに加えて2日間撹拌して得られた粉末を、ヒドラジン水溶液、水、メタノールで洗浄した。ここで得られた粉末を減圧乾燥することにより、74mg(モノマー単位として0.19mmol)のポリ(N−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)を得た。
【0047】
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料をN−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン、及びポリ(N−(4−(5,6−ジメチルベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)ジフェニルアミン−4,4’−ジイル)とした以外は、実施例1と同じ条件で各々有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に順電圧,逆電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
<実施例7>
(1) 式(8)に示すポリ(5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン−2,8−ジイル)の合成(一般式(1),Ar無し,R
1=エチレン−1,2−ジイル, R
2=X
1=X
2=X
3=X
4=水素原子))の合成
20.9mgの2−ジ−tert−ブチルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニルと196mgの2−(4−ブロモフェニル)ベンズイミダゾールと156mgの10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[b,f]アゼピンを5mLのトルエンに溶かし、さらに210mgのナトリウムt−ブトキシドと16.5mgのビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を加えて、100℃で24時間撹拌した。反応液に水を加えて反応を止めて抽出した後、シリカゲルのカラムで精製することによって28mgの5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピンを得た。
【0049】
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
1H‐NMRスペクトル(CDCl
3):δ6.6−8.2(m,16H),3.0(s,4H)ppm
得られた5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン194mg(0.5mmol)を、過硫酸アンモニウム1mmol(230mg)を含む1M過塩素酸リチウム水溶液中5mlに加えて2日間撹拌して得られた粉末を、ヒドラジン水溶液、水、メタノールで洗浄した。ここで得られた粉末を減圧乾燥することにより、74mg(モノマー単位として0.19mmol)のポリ(5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン−2,8−ジイル)を得た。
【0050】
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を5−(4−(ベンズイミダゾール−2−イル)フェニル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピンとした以外は、実施例1と同じ条件で各々有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に順電圧,逆電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
<結果>
本実施例のベンズイミダゾール系化合物は構造の違いにより種々の色を作り出すことが可能なエレクトロクロミック材料であることが確認された。また、このような新規なエレクトロクロミック材料はメモリー性があることが確認された。