特許第6063178号(P6063178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063178導電性高分子の製造方法、導電性組成物の製造方法、およびフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063178
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】導電性高分子の製造方法、導電性組成物の製造方法、およびフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20170106BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20170106BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C08L65/00
   B32B27/28
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-184389(P2012-184389)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-40543(P2014-40543A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一義
(72)【発明者】
【氏名】藤木 弘直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝則
(72)【発明者】
【氏名】谷井 一郎
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−090397(JP,A)
【文献】 特開2011−153224(JP,A)
【文献】 特開2006−198805(JP,A)
【文献】 特開2013−249442(JP,A)
【文献】 特開2012−214530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
B32B 27/28
C08L 65/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェン
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素またはC1−4のアルキル基であるか、あるいは一緒になってC1−4のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されていても良い)を、スチレンスルホン酸と下記一般式(2)で表される単量体
【化2】
(式中、Rは、C1−3のアルキル基)との共重合体であるポリアニオンの存在下、水系溶媒中で化学的酸化重合させて導電性高分子を生成する導電性高分子の製造方法であって、前記スチレンスルホン酸と前記一般式(2)で表される単量体のモル比が1:1〜4である導電性高分子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の一般式(2)のRがメチル基であることを特徴とする導電性高分子の製造方法
【請求項3】
3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対してポリアニオンを50〜2000質量部用いて化学的酸化重合させて成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性高分子の製造方法
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項の製造方法により得られる導電性高分子を液体に分散せて導電性組成物を製造する導電性組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項の製造方法により得られる導電性高分子または請求項4の製造方法により得られる導電性組成物を基材フィルムに供給して乾燥により揮発成分を除去して塗膜を形成するフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとが複合化した導電性高分子、当該導電性高分子を含む導電性組成物、および当該導電性高分子若しくは当該導電性組成物を導電体として用いてなる塗膜を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、固体電解コンデンサの固体電解質; 帯電防止剤用の導電体; 液晶ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどに形成される透明電極; ならびに電磁波シールド材などの基材のコーティングに広く用いられている。通常、透明電極として最も汎用なものは、インジウム−スズ系の複合酸化物(ITOという)の蒸着膜であるが、成膜に高温を必要とすることから、成膜コストが高いという問題がある。一方、有機材料から成る透明電極として、低温かつ低コストで成膜可能な導電性高分子を用いた膜が提案されている。この用途における導電性高分子としては、例えば、チオフェンまたはその誘導体などの重合性モノマーを化学酸化重合または電解酸化重合することによって高分子化したものが知られており、特に工業的には、化学酸化重合が行われている。
【0003】
上記のような導電性高分子およびその製造方法としては、例えば、水分散性に優れたポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散液およびその製造方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この水分散液を含むコーティング用組成物を基材上に供給して成る薄膜は、十分な帯電防止機能を発揮し得るが、紫外線(以下、UVと称する場合がある)照射後に電気抵抗値が上昇するという問題を有している。導電性高分子の耐UV特性を高めることは極めて重要な課題であり、従来から、特殊な添加剤を配合する技術(例えば、特許文献2を参照)、複雑な層構造を形成させる技術(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)を駆使して対応している。
【0004】
チオフェンまたはその誘導体を、ドーパントとなる高分子スルホン酸の存在下で水中または水と水混和性溶剤との混合物から成る水性液中で酸化重合して導電性高分子を合成することにより導電性高分子の水系分散液を得る工程など、複数の工程から成る有機溶剤系導電性高分子分散液の製造工程が知られており、高分子スルホン酸として、スチレンスルホン酸とアクリル酸エステルとの共重合体を用いることも知られている(例えば、特許文献5を参照)。
【0005】
さらに、媒体中にエマルジョンラテックスを調整し、少なくとも1種のヘテロ原子含有環式モノマー、媒体中のエマルジョンラテックスおよび添加剤を含む混合物を、エマルジョンラテックスを第1の安定化されたエマルジョン状態に保持する第1の条件で形成し、混合液中のヘテロ原子含有環式モノマーを、第2の安定化されたエマルジョン状態で本質的に導電性のコポリマーを形成できる第2の条件下で重合させる方法が知られている(例えば、特許文献6を参照)。当該方法では、エマルジョンラテックスを調整するモノマーが複数種から選ばれ、そのモノマー中にアクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸が含まれている。
【0006】
また、スルホン酸基と重合性ビニル基を有するモノマー20〜75mol%、親水性基と重合性ビニル基を有する極性モノマー20〜80mol%、上記以外の重合性モノマー0〜20mol%を重合させることにより得られる高分子化合物を、アニリン、チオフェン、ピロールにドーピングさせて成る複合導電性ポリマー組成物が知られている(例えば、特許文献7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−090060号公報
【特許文献2】特開2008−297484号公報
【特許文献3】特表2010−508430号公報
【特許文献4】特表2011−523665号公報
【特許文献5】特許第4573363号公報
【特許文献6】特開2011−031745号公報
【特許文献7】WO2010/95648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の従来から公知の技術には、次のような問題がある。上記特許文献5に開示されるように、アクリル酸エステルを用いた場合には、紫外線による薄膜の電気抵抗値の上昇が大きく、帯電防止性能を維持することができない。また、上記特許文献6および特許文献7には、スチレンスルホン酸とメタクリル酸との組み合わせについては開示されておらず、紫外線に対する優位性についても開示も示唆もされていない。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、従来の導電性高分子の性能を維持しながら、紫外線照射による電気抵抗値の上昇を大幅に軽減可能な導電性高分子、当該導電性高分子を含有する導電性組成物、およびこれらの内のいずれかを導電体として用いて成る塗膜を有するフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行ってきた結果、3,4−ジアルコキシチオフェンを、特定のポリアニオンの存在下、水系溶媒中で化学的酸化重合させることにより、紫外線照射による電気抵抗値の上昇を大幅に軽減可能な導電性高分子が得られることを見出し、本発明の完成に至った。具体的な解決手段は、以下の通りである。
【0011】
本発明の一形態は、以下の一般式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェン
【化1】
(式中、RおよびRは相互に独立して水素またはC1−4のアルキル基であるか、あるいは一緒になってC1−4のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されていても良い)を、ポリアニオンの存在下、水系溶媒中で化学的酸化重合させて成る導電性高分子であって、ポリアニオンを、スチレンスルホン酸と下記一般式(2)で表される単量体
【化2】
(式中、Rは、C1−3のアルキル基)との共重合体とした導電性高分子である。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、一般式(2)のRがメチル基の単量体を用いて成る導電性高分子である。
【0013】
本発明の別の形態は、また、3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対してポリアニオンを50〜2000質量部用いて化学的酸化重合させて成る導電性高分子である。
【0014】
本発明の別の形態は、また、スチレンスルホン酸と一般式(2)で表される単量体のモル比が1:1〜4である共重合体を用いて成る導電性高分子である。
【0015】
本発明の一形態は、上述のいずれかの導電性高分子を含有する導電性組成物である。
【0016】
本発明の一形態は、上述のいずれかの導電性高分子または導電性組成物を導電体として用いてなる塗膜を有するフィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、紫外線照射による薄膜の電気抵抗値の上昇を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る導電性高分子、導電性組成物、塗膜を有するフィルムおよびそれらの製造方法の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
1.導電性高分子およびその製造方法
この実施の形態に係る導電性高分子は、以下の式(1)で表される3,4−ジアルコキシチオフェン
【化1】
(式中、RおよびRは相互に独立して水素またはC1−4のアルキル基であるか、あるいは一緒になってC1−4のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されていても良い)を、特定のポリアニオンの存在下、水系溶媒中で化学的酸化重合させて成る。
【0020】
この実施の形態に係る導電性高分子を製造する上で必須となる材料は以下の(1)〜(4)である。
【0021】
(1)3,4−ジアルコキシチオフェン
上記式(1)のRおよびRにおけるC1−4のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基などを挙げることができる。RおよびRが一緒になったC1−4のアルキレン基としては、好ましくは、1,2−アルキレン基、1,3−アルキレン基などを挙げることができ、具体的には、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基などを挙げることができ、その中でも特に、1,2−エチレン基が好ましい。また、C1−4のアルキレン基は、置換されていても良く、その場合の好ましい置換基としては、C1−12のアルキル基あるいはフェニル基を挙げることができる。置換されたC1−4のアルキレン基としては、好ましくは、1,2−シクロヘキシレン基、2,3−ブチレン基を挙げることができる。このようなアルキレン基の代表例としてRおよびRのいずれもC1−12のアルキル基で置換された1,2−アルキレン基は、エテン、プロペン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、スチレンなどのα−オレフィン類を臭素化して得られる1,2−ジブロモアルカン類から誘導される。
【0022】
(2)ポリアニオン
ポリアニオンを形成し得る化合物(以下、ポリアニオンという場合がある)としては、スチレンスルホン酸と下記一般式(2)で表される単量体
【化2】
(式中、Rは、C1−3のアルキル基)
との共重合体であることが好ましい。上記一般式(2)で表される単量体は、より好ましくは、RをCのアルキル基(メチル基)とするメタクリル酸である。ポリアニオン化合物の分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量(Mw)が1,000〜2,000,000の範囲であり、さらに好ましくは2,000〜1,000,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜500,000の範囲である。ポリアニオンのスルホン化率は、特に限定されるものではないが、好ましくは、80〜100%、さらに好ましくは85〜95%の範囲である。ここで、「スルホン化率」とは、ポリスチレンスルホン酸において、分子中のスルホン酸基を有するスチレン単位(A)およびスルホン酸基を有していないスチレン単位(B)の合計(A+B)に対する(A)の割合(%)を指していう。
【0023】
スチレンスルホン酸1モルに対する上記一般式(2)で表される単量体の量としては、1〜4モルの範囲が好ましく、1〜2モルが特に好ましい。当該単量体を1モル以上とすると、紫外線の照射による抵抗値上昇を効果的に抑制でき、4モル以下とすると紫外線の照射前における抵抗値を低くできる。
【0024】
ポリアニオンの使用量は、3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して、好ましくは50〜2000質量部であり、さらに好ましくは100〜1000質量部であり、より好ましくは200〜500質量部である。ポリアニオンを3.4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して50質量部以上使用することにより、紫外線照射による表面抵抗値の上昇を効果的に軽減でき、ポリアニオンを3.4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して2000質量部以下使用することにより、ポリアニオンを過剰に添加しないことによる表面抵抗値の抑制が働き、導電性能の維持を期待できる。
【0025】
(3)重合開始剤
重合開始剤(以下、単に、「開始剤」という)としては、過硫酸塩、過酸化水素、遷移金属といった酸化剤を挙げることができる。開始剤としては、より好適には、第一鉄塩または第二鉄塩をそれぞれ単体、あるいは両方を組み合わせることができる。その場合、第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、トルエンスルホン酸第一鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第一鉄、ナフタレンスルホン酸第一鉄を好適に例示できる。また、第二鉄塩としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、トルエンスルホン酸第二鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄、ナフタレンスルホン酸第二鉄を好適に例示できる。さらに、重合開始剤として、上記第一鉄塩、上記第二鉄塩と共に、過硫酸塩を混合して用いるのが、さらに好ましい。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどを好適に用いることができる。それらの中でも、過硫酸アンモニウムと硫酸第二鉄の組み合わせが好ましい。また、過硫酸塩と第二鉄塩との比率としては、モル比にて、1〜5000:1が好ましく、5〜100:1がさらに好ましい。第二鉄塩の使用量は、3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して好ましくは1〜400質量部であり、さらに好ましくは5〜200質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。第二鉄塩を3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して1質量部以上用いると導電性を向上でき、第二鉄塩を3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して400質量部以下用いると反応性を高めることができる。複数の開始剤を用いる場合、当該複数の開始剤を予め混合して用いても良いが、予めの混合は必須ではなく、導電性高分子の合成時に混合状態なっていれば良い。重合の温度としては、特に限定されないが、好ましくは10〜90℃、特に10〜50℃が好ましい。重合時間としては、1〜48時間、特に1〜24時間が好ましい。こうして得られた導電性高分子は、好ましくは、固形分0.1〜4.0質量%であり、さらに好ましくは、0.5〜2.0質量%であり、より好ましくは、1.0〜1.5質量%である。
【0026】
(4)水系溶媒
水系溶媒は、好適には、水、あるいは水と水混和性有機溶媒との混合物であり、より好適には水である。水混和性有機溶媒を水に混合する場合、水混和性有機溶媒を、水と水混和性有機溶媒との総量に対して、10質量%以下とするのが好ましい。水混和性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類; N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のアミド化合物; クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類; エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類; エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物; ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物; ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類; 3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物; アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物; ジメチルスルホキシドに代表されるスルホキシド類; 等を好適に用いることができる。これらの水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物で用いてもよい。上記水溶性有機溶媒の中でも、作業環境をより損ないにくく、しかも沸点が水より低く、容易に塗膜を形成できることから、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0027】
(5)導電性高分子の製造方法
この実施の形態に係る導電性高分子は、例えば、以下の方法により製造できる。まず、ポリアニオンを水系溶媒に分散または溶解させ、これにより得られた溶液に、前駆体モノマーとしての3,4−ジアルコキシチオフェンを添加してモノマー分散液を得る。次に、当該モノマー分散液に開始剤を添加して、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学的酸化重合させる。その後、余剰の酸化剤や未反応モノマーを除去して精製し、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとが複合化した構造の導電性高分子の水分散液を得る。
【0028】
2.導電性組成物およびその製造方法
この実施の形態に係る導電性組成物は、上述の導電性高分子を含有する液体若しくは固形物をいう。導電性組成物は、上述の導電性高分子に、水混和性有機溶媒、導電性向上剤、バインダ樹脂などを混合することもできる。導電性高分子の水分散液に、導電性向上剤および/またはバインダ樹脂を均一に混合するために、高い剪断力を付与できる混合分散機を用いるのが好ましい。混合分散機としては、例えば、ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、ビーズミル等が挙げられ、中でも、高圧ホモジナイザが好ましい。高圧ホモジナイザを用いた分散処理としては、例えば、分散処理を施す前の複合体溶液を高圧で対向衝突させる処理、オリフィスやスリットに高圧で通す処理等が挙げられる。混合分散機により分散処理を施すと、原理上、処理により得られる導電性高分子溶液の温度が高くなる。そのため、分散処理前の複合体溶液の温度を−20〜60℃にすることが好ましく、−10〜40℃にすることがより好ましく、−5〜30℃にすることが特に好ましい。複合体溶液の温度を−20℃以上にすれば、凍結を防止でき、60℃以下にすれば、導電性高分子またはポリアニオンの変質を防止できる。また、分散処理後の導電性高分子の水分散液を、例えば、冷媒温度−30〜20℃の熱交換器に通して冷却しても良い。
【0029】
上述のような分散工程では、複合体のキュムラント平均粒子径が好ましくは2000nm以下、より好ましくは500nm以下、特に好ましくは200nm以下になるように分散処理する。複合体のキュムラント平均粒子径が2000nm以下になるように分散処理すれば、得られる導電性高分子溶液の安定性が高くなり、複合体の沈殿を防止できる。キュムラント平均粒子径は、動的光散乱法による粒径分布の測定から求められる。キュムラント平均粒子径は、分散工程での混合条件(例えば、圧力等)により調整される。具体的には、圧力が高い程、平均粒子径は小さくなる。
【0030】
(1)水混和性有機溶媒
導電性組成物の一構成としての水混和性有機溶媒は、上述の導電性高分子の製造の際に使用する水系溶媒に混合し得る水混和性有機溶媒と同種類の中から選択できる。水混和性有機溶媒は、水分量が好適には4質量%以下、さらに好適には3質量%以下、より好適には2質量%以下のものである。水混和性有機溶媒の量は、特に限定されるものではないが、この実施の形態に係る固形分100質量部に対して、好適には10〜5000質量部、さらに好適には50〜3000質量部である。水混和性有機溶媒の量が上記固形分100質量部に対して3000質量部以下の場合には、導電性組成物から得られる導電性塗膜の導電性をより高くできる。一方、水混和性有機溶媒の量が上記固形分100質量部に対して50質量部以上の場合に、導電性組成物の溶液がゲル化しにくくなり、適度な粘度で調整が可能となる。
【0031】
(2)導電性向上剤
導電性高分子の製造の際、導電性塗膜の導電性をさらに向上させるべく、下記(2a)〜(2h)の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を添加するのが好ましい。
(2a)窒素含有芳香族性環式化合物
(2b)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(2c)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(2d)1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(2e)アミド基を有する化合物
(2f)イミド基を有する化合物
(2g)ラクタム化合物
(2h)グリシジル基を有する化合物
【0032】
(2a)窒素含有芳香族性環式化合物
窒素含有芳香族性環式化合物としては、好適には、一つの窒素原子を含有するピリジン類およびその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類およびその誘導体、ピリミジン類およびその誘導体、ピラジン類およびその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類およびその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類およびその誘導体、イミダゾール類およびその誘導体、ピリミジン類およびその誘導体が好ましい。
【0033】
ピリジン類およびその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0034】
イミダゾール類およびその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0035】
ピリミジン類およびその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0036】
ピラジン類およびその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0037】
トリアジン類およびその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0038】
窒素含有芳香族性環式化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜100モルの範囲であることが好ましく、0.5〜30モルの範囲であることがより好ましく、導電性の観点からは、1〜10モルの範囲が特に好ましい。窒素含有芳香族性環式化合物の含有率が0.1モル以上の場合には、窒素含有芳香族性環式化合物とポリアニオンおよびポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)との相互作用が強くなる傾向にあり、十分な導電性を発揮できる。また、窒素含有芳香族性環式化合物が100モル以下の場合には、導電性高分子の含有量が相対的に多くなり、導電性をより高めることができる。
【0039】
(2b)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類; セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール; 1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸およびその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸およびその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸およびその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸およびその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸およびその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸およびその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0040】
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モル以上になると、導電性および耐熱性をより高めることができる。また、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モル以下になると、得られる導電性塗膜中の導電性高分子の含有量が相対的に多くなり、導電性をより高めることができる。
【0041】
(2c)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物; フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物; ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
【0042】
2個以上のカルボキシ基を有する化合物は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜30モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1モル以上になると、導電性および耐熱性をより高めることができる。また、2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して30モル以下になると、導電性塗膜中の導電性高分子の含有量が相対的に多くなり、導電性をより高めることができる。
【0043】
(2d)1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物
1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0044】
1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンとポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が1質量部以上になると、導電性および耐熱性をより高めることができる。また、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が5,000質量部以下になると、導電性塗膜中の導電性高分子の含有量が相対的に多くなり、導電性をより高めることができる。
【0045】
(2e)アミド化合物
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素および尿素誘導体などが挙げられる。アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0046】
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。アミド化合物の分子量は46〜10,000であることが好ましく、46〜5,000であることがより好ましく、46〜1,000であることが特に好ましい。
【0047】
アミド化合物の含有量は、ポリアニオンとポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。アミド化合物の含有量が1質量部以上になると、導電性および耐熱性をより高めることができる。また、アミド化合物の含有量が5,000質量部以下になると、導電性塗膜中の導電性高分子の含有量が相対的に多くなり、導電性をより高めることができる。
【0048】
(2f)イミド化合物
イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミドおよびフタルイミド誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体、ベンズイミドおよびベンズイミド誘導体、マレイミドおよびマレイミド誘導体、ナフタルイミドおよびナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0049】
また、イミド化合物は、両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方または両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。その具体例としては、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0050】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0051】
イミド化合物の含有量は、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10,000質量部であることが好ましく、50〜5,000質量部であることがより好ましい。イミド化合物の添加量が前記下限値以上であると、イミド化合物添加による効果が高くなるので、より好ましい。また、前記上限値以下であると、導電性高分子の濃度の上昇に起因する導電性の向上が起きるので、より好ましい。
【0052】
(2g)ラクタム化合物
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素または任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0053】
ラクタム化合物の含有量は、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましい。ラクタム化合物の添加量が前記下限値以上であると、ラクタム化合物添加による効果が高くなるため、好ましい。また、前記上限値以下になると、導電性高分子の濃度の上昇に起因する導電性の向上が起きるので、より好ましい。
【0054】
(2h)グリシジル基を有する化合物
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0055】
グリシジル基を有する化合物の含有量は、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンの合計100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましい。グリシジル基を有する化合物の添加量が前記下限値以上であると、グリシジル基を有する化合物添加による効果が高くなるため、好ましい。また、前記上限値以下になると、導電性高分子の濃度の上昇に起因する導電性の向上が起きるので、より好ましい。
【0056】
(3)バインダ樹脂
バインダ樹脂としては、特に限定されることなく、目的に応じて適宜選択可能であり、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル; ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド; ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド; ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂; ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂; エポキシ樹脂; オキセタン樹脂; キシレン樹脂; アラミド樹脂; ポリイミドシリコーン; ポリウレタン; ポリウレア; メラミン樹脂; フェノール樹脂; ポリエーテル; アクリル樹脂およびこれらの共重合体等を好適に挙げることができる。また、バインダ樹脂には、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶媒、粘度調整剤等を加えて使用することができる。
【0057】
上記バインダ樹脂の中でも、容易に混合可能なポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンのいずれか1種以上が好ましい。また、アクリル樹脂は、硬度が高く透明性に優れるため、光学フィルタのような用途には適している。また、バインダ樹脂は、熱エネルギーおよび/または光エネルギーによって硬化する液状重合体を含むことが好ましい。ここで、熱エネルギーにより硬化する液状重合体としては、反応型重合体および自己架橋型重合体が挙げられる。反応型重合体は、置換基を有する単量体が重合した重合体であり、置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物、オキセタン系、グリシジル基、アミノ基などが挙げられる。具体的な単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多官能アルコール; マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピメリン酸、アスコルビン酸、フタル酸、アセチルサルチル酸、アジピン酸、イソフタル酸、安息香酸、m−トルイル酸等のカルボン酸化合物; 無水マレイン酸、無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、ジクロル無水マレイン酸、テトラクロル無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピメリット酸等の酸無水物; 3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、アジドメチルメチルオキセタン等のオキセタン化合物; ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)等のグリシジルエーテル化合物; N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N,N−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン等のグリシジルアミン化合物; ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DHP30−トリ(2−エチルヘクソエート)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素、モノエチルアミン、メタンジアミン、キシレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等のアミン化合物; 1分子中に2個以上のオキシラン環を含む化合物のうち、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンによるグリシジル化合物、あるいはその類似物; などが挙げられる。
【0058】
反応型重合体においては、少なくとも2官能以上の架橋剤を使用する。その架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、塩基性金属化合物のAl(OH)、Al(OOC・CH(OOCH)、Al(OOC・CH、ZrO(OCH)、Mg(OOC・CH、Ca(OH)、Ba(OH)等を適宜使用できる。
【0059】
自己架橋型重合体は、加熱により官能基同士で自己架橋するものであり、例えば、グリシジル基とカルボキシ基を含むもの、あるいは、N−メチロールとカルボキシ基の両方を含むものなどが挙げられる。
【0060】
光エネルギーによって硬化する液状重合体としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。光エネルギーによって硬化する液状重合体を構成する単量体単位としては、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類; テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類; アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーデル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類; ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類; 2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類; 酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
【0061】
光エネルギーによって硬化する液状重合体は、光重合開始剤によって硬化する。その光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。また、カチオン重合開始剤としては、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等が挙げられる。
【0062】
上記バインダ樹脂の量は、特に限定されるものではないが、導電性高分子の固形分(ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる複合体)100質量部に対して、固形分換算で10〜10,000質量部、特に50〜4,000質量部とするのが好ましい。
【0063】
(4)その他
その他に導電性組成物に含め得る成分としては、例えば、充填剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤、界面活性剤、金属微粒子などを好適に挙げることができる。これらの成分は、1種単独または2種以上を併用しても良い。さらには、上記成分に属する材料も1種のみを用いても良く、あるいは2種以上を併用しても良い。
【0064】
3.塗膜を有するフィルムおよびその製造方法
この実施の形態に係る導電性高分子または導電性組成物は、それを用いて塗膜を形成したフィルムに利用できる。上記導電性高分子または上記導電性組成物は、優れた導電性を発揮するのみならず、透明性、高温下での放置による導電性の低下の少ない高耐熱性などの性能も保持する。このことから、上記導電性高分子または上記導電性組成物は、帯電防止フィルムの他、導電性塗料、固体電解コンデンサ、タッチスクリーン、有機LED、有機EL、リチウム二次電池、有機薄膜太陽電池、導電性高分子繊維などにも利用できる。
【0065】
この実施の形態に係る塗膜を有するフィルムは、基材となるフィルム(基材フィルムという)と、該基材フィルムの少なくとも片面に形成された導電性塗膜とを有する。上記導電性高分子または上記導電性組成物を導電体として用いてなる塗膜を有するフィルムを製造する場合、基材フィルムに導電性高分子または導電性組成物の分散液を塗布した後、あるいは基材フィルムを当該分散液中に浸漬した後、乾燥によって揮発成分を除去することにより、塗膜を有するフィルムを得ることができる。乾燥温度は、特に限定されないが、好適には40℃以上で、かつ塗膜や基材フィルムにダメージを与えない温度以下である。
【0066】
基材フィルムへ上記分散液の供給法の具体例としては、スピンコート法、ローラコート法、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターブレードコート法、ニーダーコート法などを挙げることができる。基材フィルムは、特に限定されるものではなく、透明な材料で成る基体であればより好ましく、その材料の種類、基体の形状、構造、大きさ、厚みなどについては、目的に応じて適宜選択できる。本明細書において、「透明」は、無色透明の他、有色透明、無色半透明および有色半透明のいずれをも含むように広義に解釈される。透明な基体の材料としては、例えば、樹脂を好適に挙げることができる。当該樹脂の種類は、特に限定されるものではなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(結晶性または非晶性)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(結晶性または非晶性)、ポリエチレンナフタレート樹脂(結晶性または非晶性)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)などを挙げることができ、これらの内の1種を用い、あるいは2種以上を併用しても良い。シートを延伸処理する場合には、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリスチレンフィルムなどのようにガラス転移温度の低い樹脂フィルムを好適に用いる。基材フィルムとして、ガラス転移温度の低い樹脂フィルムを用いる場合には、表面外観の劣化を防止するために、乾燥温度を80℃以下にすることが好ましい。
【0067】
この実施の形態に係る塗膜を有するフィルムにおいて、上記導電性高分子または上記導電性組成物の分散液により形成される塗膜の厚みは、特に限定されるものではなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、好適には、0.01〜10μmの範囲に設定できる。塗膜の厚みを0.01μm以上とすると、塗膜を有するフィルムの表面抵抗率をより安定化させることができ、塗膜の厚みを10μm以下とすると、透明な基体と塗膜との密着性をより高めることができる。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の実施例について、比較例と比較して説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記において、部および%は、それぞれ質量部および質量%を意味する。
【0069】
1.ポリアニオンの合成
表1に、各製造例における組成比および重量平均分子量を示す。
<製造例1>
1000mlのイオン交換水に、41.2gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、次いで68.8gのメタクリル酸を混合し(スチレンスルホン酸とメタクリル酸のモル比は、20:80に相当)、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した3gの過硫酸アンモニウム溶液を2時間滴下し、その溶液を6時間攪拌した。得られたポリアニオン溶液に対して、陽イオン交換樹脂200gを用いて2回処理した。その後、固形分が5%になるように、イオン交換水を加えて調整した。GPC(ゲル濾過クロマトグラフィ)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィ)システムを用いて、得られたポリアニオンの分析を行った。昭和電工株式会社製のプルランを標準物質として重量平均分子量(Mw)を測定した結果、ポリアニオンのMwは約20万であった。
【0070】
<製造例2〜4>
スチレンスルホン酸とメタクリル酸とのモル比を50:50の条件でポリアニオン(Mw=20万)を製造した(製造例2)。同様に、表1に示す組成でポリアニオンを製造した(製造例3,4)。表1中、「SS」はスチレンスルホン酸を、「MAA」はメタクリル酸を、それぞれ示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<比較製造例1〜7>
また、比較として、表2に示す組成にてポリアニオンを製造した。表2に、各比較製造例における組成比および重量平均分子量を示す。表2中、「SS」はスチレンスルホン酸を、「AA」はアクリル酸を、「HEMA」はメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを、「EA」はアクリル酸エチルを、それぞれ示す。
【0073】
【表2】
【0074】
2.導電性高分子の製造
(1)実施例
<実施例1>
5gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、製造例1にて得られたポリアニオン300g(固形分:15g)を1000mlのイオン交換水に溶かした溶液と、を混合した。次に、当該混合後の溶液を30℃に保ち攪拌を行いながら、3gの硫酸第二鉄と10gの過硫酸アンモニウムとをそれぞれ50mlのイオン交換水に溶かした酸化触媒溶液をゆっくり加え、4時間攪拌して反応させた。これにより得られた反応液に対して、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ100g用いて2回処理した。次に、処理後の溶液中の固形分が1%になるように、イオン交換水を加えて、導電性高分子の固形分濃度を調整した。
<実施例2>
表3に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、製造例2で得られたポリアニオンを用いて、その他の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<実施例3>
表3に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、製造例3で得られたポリアニオンを用いて、その他の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<実施例4>
表3に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、製造例4で得られたポリアニオンを用いて、その他の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<実施例5>
表3に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:200となるように、製造例2で得られたポリアニオンを用いて、その他の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<実施例6>
表3に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:500となるように、製造例2で得られたポリアニオンを用いて、その他の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
【0075】
(2)比較例
<比較例1>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例1で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<比較例2>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例2で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<比較例3>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例3で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<比較例4>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例4で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<比較例5>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例5で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<比較例6>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例6で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
<比較例7>
表4に示すように、重量比にて、EDOT:ポリアニオンの固形分=100:300となるように、比較製造例7で得られたポリアニオンを用いて、ポリアニオンの種類と添加量以外の条件を実施例1と同様の要領にて固形分1%の溶液を得た。
【0076】
3.評価方法
(1)固形分濃度の測定方法
試料約1gをアルミニウム箔製の皿に計り取り、105〜110℃に保った乾燥機に入れて1時間加熱した後、乾燥機より試料を取り出して、デシケーターの中で放冷した。試料の乾燥後の重量を測定し、次式により、固形分濃度を算出した。
【0077】
【数1】
【0078】
(2)透過率の測定方法
下記の表面抵抗値測定に用いたフィルムの透過率を、ヘイズメーターNDH5000(日本電色社製)を用いて測定した。
【0079】
(3)表面抵抗値の測定方法
各1%溶液をメタノールにて倍量に希釈し、PETフィルム(三菱化学株式会社製、DIAFOIL T680E100)上に#8バーコーターで上記希釈した液を塗布した後、熱風乾燥機を用いて100℃×1分間の条件で乾燥した。得られたフィルムの表面抵抗値は、ハイレスタ(三菱化学アナリテック社製: ハイレスタGP MCP−HT450)を用いて測定した。また、アトラスUV2000(オーウエル社製)を用いて、80℃にて100時間、UVを照射した後の表面抵抗値を、同じく、ハイレスタ(三菱化学アナリテック社製: ハイレスタGP MCP−HT450)を用いて測定した。なお、この条件で求められる表面抵抗値上昇倍率は、1000倍以下であり、好ましくは500倍以下である。
【0080】
4.評価結果
表3および表4に、実施例1〜6および比較例1〜7の各条件にて作製した試料の各種評価結果を示す。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
表3および表4を比較して明らかなように、実施例1〜6により得られる導電性組成物は、従来のもの(比較例1〜7)と同等の表面抵抗値および透明性を示すことに加え、従来のものと異なり、紫外線に長期間当たっても表面抵抗値が上昇し難い導電性薄膜を形成できることが実証された。実施例1〜6により得られる導電性組成物は、薄膜にした際に、紫外線に暴露するような場所でも導電性能を維持できる点で有利である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば、帯電防止フィルム、導電性塗料、固体電解コンデンサ、タッチスクリーン、有機LED、有機EL、リチウム二次電池、有機薄膜太陽電池、導電性高分子繊維などに有効に利用できる。