特許第6063195号(P6063195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063195
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】黒色ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20170106BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20170106BHJP
   C08K 5/3447 20060101ALI20170106BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170106BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170106BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08L79/08 Z
   C08K3/04
   C08K5/3447
   C08K3/36
   C08J5/18CFG
   C08G73/10
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-217924(P2012-217924)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70170(P2014-70170A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松谷 晃男
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅義
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105811(JP,A)
【文献】 特開平09−151324(JP,A)
【文献】 特開2011−080002(JP,A)
【文献】 特開平07−096653(JP,A)
【文献】 特許第4709326(JP,B2)
【文献】 特開2011−128598(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/151886(WO,A1)
【文献】 特表2013−501850(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145473(WO,A1)
【文献】 特表2013−501130(JP,A)
【文献】 特開2005−171206(JP,A)
【文献】 特開2013−028767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08K 3/04
C08K 3/36
C08K 5/3447
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイミド樹脂を100重量部、
(b)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック又は低導電性カーボンブラックを1〜20重量部、及び
(c)フィラーを3〜30重量部を含む黒色ポリイミドフィルムの製造方法であって
ポリアミド酸溶液に、脱水剤及びイミド化触媒を添加して、前記(a)ポリイミド樹脂を製造する、イミド化工程を含み、かつ
前記(c)フィラーの平均粒径が1〜10μm、及び比表面積が1〜100m/gであり、
前記フィラーが酸化ケイ素であり、
前記ポリアミド酸溶液が、前記(b)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック又は低導電性カーボンブラック及び前記(c)フィラーを含むことを特徴とする黒色ポリイミドフィルムの製造方法
【請求項2】
前記ポリアミド酸溶液を、芳香族テトラカルボン酸二無水物、及び、芳香族ジアミンを重合して製造する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の黒色ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記(b)がベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の黒色ポリイミドフィルムの製造方法
【請求項4】
前記ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックは、350℃×20分間後の加熱減量率が3%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の黒色ポリイミドフィルムの製造方法
【請求項5】
フィルム表面の光沢度が1〜50%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の黒色ポリイミドフィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、これに伴って電子機器に用いられる電子部品に対しても小型化、軽量化の要請が高まっている。上記要請を受け、フレキシブルプリント配線板は、可撓性を有し、繰り返し屈曲に耐えるため、狭い空間に立体的高密度の実装が可能であり、電子機器への配線、ケーブル、あるいはコネクター機能を付与した複合部品としてのその用途が拡大している。特に最近では、カメラ、ビデオカメラ、CD−ROMドライブの光ピックアップ部等の電子・光学機器に使用されることが多くなり、それに伴ってフレキシブルプリント配線板に対する遮光性と低光沢性が重要となっている。この遮光性とは光学機器の嫌光部に用いられるフレキシブルプリント配線板に必要な特性で、外部から嫌光部に侵入しようとする光を配線板で遮る特性であり、低光沢性は配線板によって遮られた光のわずかな反射光が再び嫌光部に侵入しないよう、反射光を拡散させる特性である。
【0003】
また、フレキシブルプリント配線板は、携帯電話やパソコンにも欠かすことのできない電子部品であり、その需要は年々増加している。携帯電話やパソコンにおいては、機能とともにデザイン性も重要となってきており、黒色で、低光沢(マット)な質感を有するフレキシブルプリント配線板も求められている。
【0004】
遮光性を付与させるために、従来はフレキシブルプリント配線板のカバーレイフィルム側の電気絶縁性フィルムに直接スクリーン印刷法等により黒色インクを印刷して対応していた。しかしながらこの方法では凹凸のあるフレキシブルプリント配線板にスクリーン印刷を行うため作業性が悪く、かつ回路加工工程中に印刷工程が増えることから、作業効率も悪くなってしまう。また、回路の外形加工時及び折り曲げ時に、黒色インクが折れたり剥れたりして遮光性が失われたり、黒色インクにより機器内部が汚染されてしまうという欠点があった。
【0005】
この課題を解決するために、黒色で低光沢を有するポリイミドフィルムが開示されている。
【0006】
例えば、マット加工した基材上に溶液を塗布・乾燥させ、基材表面のマット形状をフィルムに転写させることで、遮光性フィルムが得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法でマット処理できるのはフィルムの片面のみであり、もう一方の面は研磨等のマット処理が必要であった。
【0007】
さらに、無機充填材を含有する黒色フィルムの表面をマット処理して黒色耐熱遮光フィルムが得られることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。無機充填材だけではフィルム表面のマット感(低光沢性)が不十分であるため、マット処理を追加して実施している。
【0008】
このように、マット感(低光沢性)をフィルムに付与するには、研磨等によるマット処理が必要である。マット処理時に発生する処理粉によって、工程が汚染されるため、処理粉を除去する工程が必要となり煩雑な工程となっていた。
【0009】
一方、無機充填材のみでフィルムにマット感を付与させようとすると、無機充填材の添加量を多くする必要があった。無機充填材の添加量を多くすることは、フィルムを脆くするだけでなく、フィルムの吸水率を高めてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2010−534342号公報
【特許文献2】特開2011−128598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フィルム表面が低光沢である黒色ポリイミドフィルムを得るには、マット処理又は/及びフィラーの添加が必要である。マット処理は、研磨粉がフィルムに付着し、工程を汚染することがあった。また、フィラーの添加は添加量増量でフィルムが脆くなったり、フィルムの吸水率が高くなることがあった。本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、遮光性、低光沢性、絶縁性、低吸水性に優れた黒色ポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、(a)ポリイミド樹脂を100重量部、(b)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック又は低導電性カーボンブラックを1〜20重量部、及び(c)フィラーを3〜30重量部を含み、前記(a)ポリイミド樹脂が脱水剤及びイミド化触媒を用い製造されており、かつ前記(c)フィラーの平均粒径が1〜10μm、及び比表面積が1〜100m/gであることを特徴とする黒色ポリイミドフィルムを用いることにより、得られたフィルムのマット処理が不要で、優れた遮光性(低透過率)、低光沢性(低光沢度)、絶縁性(高い絶縁破壊電圧)、低吸水性を有する黒色ポリイミドフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本願発明は、(a)ポリイミド樹脂を100重量部、(b)ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック又は低導電性カーボンブラックを1〜20重量部、及び(c)フィラーを3〜30重量部を含み、前記(a)ポリイミド樹脂が脱水剤及びイミド化触媒を用い製造されており、かつ前記(c)フィラーの平均粒径が1〜10μm、及び比表面積が1〜100m/gであることを特徴とする黒色ポリイミドフィルムである。
【0014】
前記(b)がベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックであることが好ましい。
【0015】
前記ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックは、350℃×20分間後の加熱減量率が3%未満であることが好ましい。
【0016】
前記(c)フィラーが酸化ケイ素であることが好ましい。
【0017】
フィルム表面の光沢度が1〜50%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の係る黒色ポリイミドフィルムは、優れた遮光性、低光沢性、絶縁性、低吸水性を兼ね備え、意匠性にも優れる。フレキシブルプリント基板のカバーレイフィルム、カバーレイに用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0020】
黒色ポリイミドフィルムとは、全光線透過率が0.6%未満のポリイミドフィルムのことである。主に顔料でポリイミドフィルムを着色させているが、顔料自体が黒色である必要は無く、ポリイミドフィルム、顔料、フィラーを合わせたフィルム状態で、フィルムの全光線透過率が0.6%未満となれば良い。
【0021】
顔料は、ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック又は低導電性カーボンブラックである。その中でも、着色力と絶縁性の面でベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックを用いることがさらに好ましく、ベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックの中でも、350℃×20分間後の加熱減量率が3%未満であるベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラックが、黒色ポリイミドフィルムを製造する工程の汚染を防止できる点で特に好ましい。
【0022】
顔料の含有量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、1〜20重量部であり、コストの面で1〜10重量部が好ましい。1重量部未満であれば、黒色とならず、20重量部を超えるとフィルムが脆弱になったり、絶縁性が低下したりすることがあった。
【0023】
フィラーの材質は、黒色ポリイミドフィルムの低光沢性、機械特性と絶縁性、低吸水性を発現できるものであれば特に限定されないが、好ましいフィラーとして、酸化アルミ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミ等が挙がられる。その中でも、フィルムの色に影響を与えず、フレキシブルプリント基板作製時に使用する溶液への影響が少ない点で、酸化ケイ素が好ましい。酸化ケイ素としては、形状、製造方法等の観点から、溶融シリカ、多孔質シリカ、シリカゲル、フュームドシリカ、球状シリカ等が挙げられる。酸化ケイ素は、後述するフィラーの特徴を満たすものであれば、特に限定するものでは無いが、フィルムの吸水性を低くする面で、溶融シリカ又は、表面の−OH基を加熱又は置換基でキャップし、表面処理した多孔質シリカを用いることが好ましく、無処理で用いることができる溶融シリカがさらに好ましい。フィルムの吸水率を低くすることで、絶縁性が向上する。
【0024】
フィラーの含有量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、3〜30重量部であり、フィラーの粒径が広い範囲のもので光沢度を低下させることができる面で、12〜30重量部が好ましい。含有量が3重量部未満であれば、光沢を下げることがでず、30重量部を超える場合、フィルムの機械強度を低下させ、フィルムとして得ることができなかった。
【0025】
フィラーは、平均粒径が1〜10μmである。平均粒径が1μm以下だと光沢度を低くできず、10μm以上だとフィルムの機械強度を大幅に低下させる。平均粒径が1〜8μmである場合、さらに少ない量で低光沢性を実現できる点で好ましい。
【0026】
フィラーの比表面積が、1m/g〜100m/gであれば、フィルムの低光沢性、絶縁性及び低吸水性を兼ね備えることができる。フィラーの比表面積が1m/g未満の場合、フィラー表面の溶剤親和性が低く、分散させにくい。100m/gより大きい場合、黒色ポリイミドフィルムの低光沢性を実現できるフィラー添加量において、黒色ポリイミドフィルムの吸水率が高くなる傾向がある。黒色ポリイミドフィルムの吸水率を低下させる面で1m/g〜50m/gが好ましい。
【0027】
黒色ポリイミドフィルムに含まれるポリイミド樹脂は、脱水剤及びイミド化触媒を用いて製造される。黒色ポリイミドフィルムは、顔料及びフィラーを含むため脆くなる。特に、フィラーの比表面積が1m/g〜100m/gのフィラーを用いる場合、黒色ポリイミドフィルムの吸水率を低くできる一方、フィルムの低光沢性を実現するためには、多量のフィラーを含有させる必要がある。黒色ポリイミドフィルムに含まれるポリイミド樹脂が、脱水剤及びイミド化触媒を用いて製造されることでフィルムの機械特性を向上させることが可能となる。さらに、ポリイミド樹脂が、脱水剤及びイミド化触媒を用いて製造されることで、フィルムの低光沢性を実現させるのに必要なフィラーの含有量を少なくすることができる。このため、黒色ポリイミドフィルムを構成するポリイミド樹脂が、脱水剤及びイミド化触媒を用い製造されていることが重要である。
【0028】
次に、本発明に係るポリイミドフィルムについて説明する。
【0029】
黒色ポリイミドフィルムは、厚さが5〜75μmであることが好ましい。フィルムの厚さは用途によって異なる。例えば、フレキシブルプリント配線板のカバーレイフィルムで用いられる場合、ポリイミドフィルムの厚さが5〜25μmが好ましく、また、フレキシブルプリント配線板のベースフィルム(基板)に用いられる場合、ポリイミドフィルムの厚さが5〜75μmが好ましい。
【0030】
黒色ポリイミドフィルムの表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)が1.0〜4.0μmであることが好ましい。Rzが1.0μm未満であると、低光沢とならないことがあり、4.0μmを超えると、黒色ポリイミドフィルムに接着剤を均一に積層させることが難しい傾向にある。この表面粗さ(Rz)は、フィラーの平均粒径、フィラーの含有量とイミド化法により調整が可能である。フィラーの平均粒径が大きいとRzは大きくなり、フィラーの含有量が多いとRzは大きくなる。イミド化法では、熱的イミド化法よりも化学的イミド化法の方が、Rzは大きくなりやすい。
【0031】
ポリイミドフィルムは、その前駆体であるポリアミド酸溶液から得られる。このポリアミド酸溶液は、当業者が通常用いる方法で製造することができる。すなわち、1種または2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分と1種または2種以上のジアミン成分を実質等モル使用し、有機極性溶媒中で重合してポリアミド酸溶液が得られる。
【0032】
ポリイミドフィルムの製造に用いられる代表的な酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−オキシジフタル酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4´−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等を上げることができる。その中でも、ピロメリット酸二無水物は、耐熱性の面で好ましい。
【0033】
またジアミン成分としては、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4、4´−ジアミノジフェニルスルフォン、3、3´−ジアミノジフェニルスルフォン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ビスアミノフェノキシケトン、4、4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4´−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4、4´−ジアミノベンズアニリド、3、3´−ジメチル−4、4´−ジアミノビフェニル、3、3´−ジメトキシ−4、4´−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン、あるいはその他の脂肪族ジアミンを挙げることができる。その中でも、パラフェニレンジアミンは、耐熱性、低加熱収縮の面で好ましい。
【0034】
本発明のポリイミドフィルムは、その前駆体であるポリアミド酸の重量平均分子量が10,000〜1,000,000であることが望ましい。重量平均分子量が10,000未満ではできあがったフィルムが脆くなる場合がある。他方、重量平均分子量が1,000,000を越えるとポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液の粘度が高くなりすぎ取扱いが難しくなるおそれがある。
【0035】
ポリアミド酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。これらは単独または混合物として用いるのが望ましい。更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素を前記溶媒に一部混合して使用してもよい。また、このポリアミド酸重合体は前記の有機極性溶媒中に5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%溶解されているのが取扱いの面から望ましい。
【0036】
本発明におけるポリイミドフィルムへの、顔料及び/又はフィラーの添加方法は上記ポリアミド酸を重合する前に予め溶剤中へ添加しておく方法、ポリアミド酸の重合途中に、顔料及び/又はフィラー、又はその分散液をポリアミド酸溶液に添加する方法、顔料及び/又はフィラーを予め溶剤に分散しておき、その分散液をポリアミド酸溶液に添加する方法等が挙げられるが、特に限定されるものでは無い。ポリアミド酸の重合前又は重合途中に、顔料及び/又はフィラー、その分散液を溶剤に添加しておく際は、顔料及び/又はフィラーの含水分量を低く管理することが好ましい。比表面積の小さいフィラーは表面に水分が吸着しにくいので、水分管理しやすいので、ポリアミド酸の重合前又は重合途中にフィラーを添加することができる。顔料及び/又はフィラーの含水分量の管理は、固体状態で含まれる水分を管理する方法(吸水しないような梱包にする、分散する前に乾燥する等)、分散液の状態で含まれる水分を管理する方法(分散液中に脱水剤を混合する等)で厳密に管理することが好ましい。また、ポリミアド酸溶液に顔料及び/又はフィラーの分散液を添加する際は、両溶液の粘度差による混合不良や、顔料及び/又はフィラーのショック凝集の恐れがあり、粘度差を小さく、顔料及び/又はフィラーの分散液の固形成分濃度を低くすることが好ましい。なお、顔料及び/又はフィラーの分散液を使用する際、分散液中にポリアミド酸溶液を加えて溶液粘度を上げたり、微小フィラーを添加し分散液のチクソ性を上げたりして、分散液の安定性を向上させることが好ましい。
【0037】
顔料及び/又はフィラーの分散方法としては、ボールミル、ビーズミル、三本ロール、ホモジナイザー、超音波、撹拌翼を用いた撹拌、等公知の分散技術を適用可能である。尚、顔料とフィラーとは別々に分散液を作製してもよいし、1つの分散液としてもよい。
【0038】
黒色ポリイミドフィルムの製造方法は、熱的イミド化法と化学的イミド化法がある。熱的イミド化法は、脱水剤を使用せずに熱のみでイミド化させる方法であり、イミド化触媒を併用することができる。また化学的イミド化法は脱水剤を使用してイミド化させる方法であり、イミド化触媒を併用することが必須である。ポリアミド酸のイミド化は、イミド化反応とポリアミド酸のアミド結合の開列反応との競争反応であり、イミド化反応速度の速い化学的イミド化法を採用することが好ましい。特に本発明のようなポリイミドフィルムは、顔料及びフィラーを含むことでフィルムが脆くなるため、化学的イミド化法で黒色ポリイミドフィルムを製造することは、ポリイミドフィルムの伸び率や引張り強度等の機械特性を高める上で好ましく、その結果、化学的イミド化法はポリイミドフィルムの製膜性に優れる。また、化学的イミド化法は、脱水剤及びイミド化触媒を用いるため、熱的イミド化法と比較し、比較的低温でイミド化反応が進行する。このため、後述するポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムに変性する工程の途中で、フィルムの中にフィラーが埋没しにくく、フィラーの含有量が少量であっても、低光沢性を実現することができる点でさらに好ましい。
【0039】
熱的イミド化法又は化学的イミド化法で用いられるイミド化触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第三級アミン類などが挙げられるが、フィルムの機械特性を向上させる点で複素環式第三級アミン類を用いることが好ましい。イミド化触媒の添加量は、ポリアミド酸のアミド結合の数に対して、0.3〜1.5当量であることが好ましい。
【0040】
また、化学的イミド化法で用いられる脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられるが、反応生成物が加熱によりフィルムから除去しやすい点で無水酢酸を用いることが好ましい。脱水剤の添加量はポリアミド酸のアミド結合の数に対して、1.3〜3.0当量であることが好ましい。
【0041】
顔料及びフィラー及びポリアミド酸溶液と、イミド化触媒及び脱水剤、又はイミド化触媒が混合した状態であるドープ溶液(混合する順番は順不同)は、−10〜10℃に冷却し、ダイからドラム又はエンドレスベルト上に流延し、200℃以下の熱風で10〜1000秒乾燥することが好ましい。その後、ドラム又はエンドレスベルトから自己支持性を有するゲルフィルムを剥がし、フィルムの両端を金属ピン又は金属クリップで固定し、150℃以上500℃以下の熱風炉で3〜600秒焼成することが好ましい。その後、400℃以上600℃以下のIR炉で3〜600秒追加焼成し、最後に400℃以下の熱風炉で3〜600秒焼成することが好ましい。
【0042】
その後、金属ピン又は金属クリップで固定していたフィルム両端は固定した跡が残っているため、フィルム両端を切り落とし、フィルムロールとして巻き取ることはフィルムロールに皺を発生させない点で好ましい。
【0043】
黒色ポリイミドフィルムは、接着剤等の異種材料との密着性を向上させる目的で、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、有機モノマー、カップリング剤等の各種有機物をプライマーとして塗布する方法、金属水酸化物、有機アルカリ等で表面処理する方法、プラズマ処理、コロナ処理する方法、表面をグラフト化させる方法、等の各種表面処理を単独又は併用して行うことができる。
【0044】
黒色ポリイミドフィルムの全光線透過率は、得られたフィルムの厚みでの全光線透過率が0.6%未満であることが好ましい。0.6%以上であると、光が透過し遮蔽性が低下する。
【0045】
黒色ポリイミドフィルムの光沢度は1〜50%であることがフィルム表面の見た目を均質にできる点で好ましい。50%を超えると、フィルム表面に入射する光を散乱させることが不十分であり、光の入射角に依存しフィルム表面の見た目が異なる。黒色ポリイミドフィルムの光沢度は1〜50%であることが、フィルム表面への入射光が強くても入射光を散乱させ、均質なフィルム表面となる点で好ましく、1〜30%がさらに好ましく、1〜20%が特に好ましい。
【0046】
黒色ポリイミドフィルムの絶縁性は、絶縁破壊電圧で評価する。黒色ポリイミドフィルムの常態時の絶縁破壊電圧は、100V/μm以上が好ましく、150V/μm以上がさらに好ましい。100V/μm未満だと、フレキシブルプリント配線板に使用する場合、高電圧使用時に絶縁不良を起こす。また、吸水時の絶縁破壊電圧は、フレキシブルプリント配線板の中で、黒色ポリミドフィルムで覆われる部分よりも、フレキシブルプリント配線板と他部品との接点部分に漏電が生じて絶縁不良が生じることが大半であるが、10V/μm以上が好ましく、80V/μm以上がさらに好ましい。
【0047】
黒色ポリイミドフィルムの吸水率は3%未満が好ましい。フィルムの吸水率が3%以上であると、フレキシブルプリント基板を加工する際、薬液が黒色ポリイミドフィルムから抜けにくく、フレキシブルプリント基板の加工時間に長時間を要する問題が生じる場合がある。
【0048】
黒色ポリイミドフィルムの外観は、顔料及び/又はフィラーの凝集物が無いことが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における、使用したフィラー及び得られたフィルムの特性は、次のようにして評価した。
【0050】
〔平均粒径〕
島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて、平均粒径を算出し、平均粒径とした。
【0051】
〔比表面積〕
島津製作所社製 トライスターII 3020(BET法)を用いて、比表面積を測定し、その値を比表面積とした。
【0052】
〔全光線透過率〕
日本電色工業社製のヘーズメーター、NDH 5000を用いて、ASTM D 1003に従って全光線透過率(%)を全光線透過率とした。全光線透過率が0.6%未満を「○」とし、0.6%以上を「×」とした。
【0053】
〔光沢度〕
日本電色工業社製の光沢度計、V−7000を用いて、入射角60°での光沢度(%)を測定した値を光沢度とした。光沢度が50%未満を「○」、50%以上を「×」とした。
【0054】
〔絶縁破壊電圧〕
JIS C 2110−7.1にしたがって測定し、絶縁破壊した電圧の値を測定サンプルの厚みで除した値V/μmを絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧は、常態と吸水後の2水準実施している。常態での測定は、23℃(±3℃)/55%RH(±5%RH)の環境で48時間放置した後に測定した。吸水後での測定は、バットに蒸留水を入れ、フィルムが蒸留水に浮かないようにして48時間浸した。その後、フィルムを取り出した後、フィルム表面の水滴を拭き取り、フィルムを取り出した後3分以内に測定した。常態時の絶縁破壊電圧が、150V/μm以上を「○」、100V/μm以上150V/μm未満を「△」、100V/μm未満を「×」とした。
また、吸水後の絶縁破壊電圧が、80V/μm以上を「○」、80V/μm未満を「△」とした。
【0055】
〔吸水率〕
150℃×30時間乾燥させた後、デシケーターに入れて30分放置し、フィルム重量を計測した。その後、蒸留水を入れたバットにフィルムを浸し、24時間放置した後、フィルムを取り出し、フィルム表面の水滴を拭き取り、フィルムを取り出した後3分以内にフィルム重量を計量した。3%未満を「○」とし、3%以上を「×」とした。
【0056】
〔外観〕
フィルム化後、目視で、フィルムにフィラーの凝集物が発生しているかどうかで判定した。凝集物が発生していないものを「無」、凝集物が発生しているものを「有」とした。
【0057】
〔製膜性〕
フィルム化操作中に、フィルムが脆いために裂けてしまったものを「×」、裂けずにフィルムが得られたものを「○」とした。
【0058】
(合成例1:ポリアミド酸溶液Aの合成)
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)805.9gにp−フェニレンジアミン(p−PDA)を 10.1g、及び4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(4,4´−ODA)を56.2g添加して溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を79.2g添加して60分攪拌し溶解させた。さらにこの溶液に別途調製してあったPMDAのDMF溶液(PMDA2.45g/DMF31.6g)を注意深く添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度約15重量%、23℃での回転粘度が3200ポイズのポリアミド酸溶液Aを得た。
【0059】
(調合例1:顔料分散液の調合)
顔料30gをDMF470gに混合した後、ビーズミルを用いて分散させ、固形成分濃度6%の顔料分散液を得た。分散状態は、グラインドゲージで1μm以上の粗粒子が含まれないことを確認した。
【0060】
(調合例2:フィラー分散液の調合)
フィラー50gをDMF450gに混合した後、ホモジナイザーで分散させ、固形成分濃度10%のフィラー分散液を得た。
【0061】
(合成例2:ポリアミド酸溶液Bの合成)
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)805.9kgにp−フェニレンジアミン(p−PDA)を 10.1kg、及び4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(4,4´−ODA)を56.2kg添加して溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を79.2kg添加して60分攪拌し溶解させた。さらにこの溶液に別途調製してあったPMDAのDMF溶液(PMDA2.45kg/DMF31.6kg)を注意深く添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度約15重量%、23℃での回転粘度が3200ポイズのポリアミド酸溶液Bを得た。
【0062】
(調合例3:顔料フィラー分散液の調合)
顔料30kgをDMF470kgに混合した後、ビーズミルを用いて分散させ、固形成分濃度6%の顔料分散液を得た。分散状態は、グラインドゲージで1μm以上の粗粒子が含まれないことを確認し、実験に用いた。また、フィラー48kgをDMF432kgに混合した後、ホモジナイザーで分散させ、固形成分濃度10%のフィラー分散液を得た。得られた顔料の分散液500kgとフィラーの分散液480kgを混合し、顔料フィラー分散液を得た。
【0063】
(調合例4:イミド化剤の調合)
DMF175.6kgに、イソキリン56.8kg、無水酢酸127.6kgを混合し、イミド化剤を調合した。
【0064】
(実施例1)
顔料としてベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック(BASF社製ルモゲンブラックFK4280:350℃×20分間後の加熱減量率が6%)を用い、調合例1と同様にして調合した顔料分散液15.4gと、フィラーとして酸化ケイ素(電気化学工業社製FB−5SDC:平均粒径4.5μm、比表面積3m/g)を用い、調合例2と同様にして調合したフィラー分散液5.5gを混合して、顔料フィラー分散液を調合した。その後、合成例1で得たポリアミド酸溶液Aを135.6gと前記顔料フィラー分散液を混合しドープを調合し、0℃以下の温度で冷却した。前記ドープに、イミド化剤(無水酢酸/イソキノリン/DMF=19.1g/8.5g/26.0g)を添加し、0℃以下の温度で攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を120℃×60秒で加熱した後アルミ箔から自己支持性のゲル膜を引き剥がして金属枠に固定し、250℃×11秒、350℃×11秒、450℃×120秒で乾燥・イミド化させて厚み12μmの黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムは、ポリイミド樹脂100重量部に対して、顔料が5重量部、フィラーが3重量部含有している。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例2、3)
フィラーの添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
顔料の種類をカーボンブラック(エボニック デグサ社製Special Black4)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して5重量部とした。また、フィラーの添加量を変更し、実施例1と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0068】
(実施例5)
フィラーの添加量を変更した以外は実施例4と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0069】
(実施例6)
フィラーの種類を酸化ケイ素(電気化学工業社製FB−3SDC:平均粒径3.4μm、比表面積3m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して8重量部とし、実施例1と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0070】
(実施例7)
顔料の種類をベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック(BASF社製ルモゲンブラックFK4281:350℃×20分間後の加熱減量率が1%)に変更した以外は実施例6と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0071】
(実施例8)
顔料の種類をカーボンブラック(エボニック デグサ社製Special Black4)に変更した以外は実施例6と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0072】
(実施例9)
フィラーの添加量を変更した以外は実施例6と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
(実施例10)
フィラーの種類を酸化ケイ素(電気化学工業社製FB−7SDC:平均粒径5.8μm、比表面積2m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して8重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0075】
(実施例11)
フィラーの種類を酸化ケイ素(マイクロン社製HS−303:平均粒径9.5μm、比表面積1m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して12重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0076】
(実施例12)
フィラーの種類を酸化ケイ素(マイクロン社製HS−301:平均粒径2.4μm、比表面積8m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して12重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0077】
(実施例13〜15)
顔料の添加量及びフィルムの厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして黒色ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0078】
(実施例16)
顔料としてベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック(BASF社製ルモゲンブラックFK4280:350℃×20分間後の加熱減量率が6%)を用い、フィラーとして酸化ケイ素(電気化学工業社製FB−3SDC:平均粒径3.4μm、比表面積3m/g)を用いて調合例3と同様にして、顔料フィラー分散液を調合した。合成例2で合成したポリアミド酸溶液Bの吐出量を27.5kg/hとし、調合例4で調合したイミド化剤の吐出量を12.5kg/hとし、ミキサーで混合した直後に、前記顔料フィラー分散液の吐出量を6.1kg/hとし、続いてミキサーで混合し、ドープを得た。得られたドープは、単層ダイからエンドレスベルトに流延し、120℃×60秒で加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がして、金属ピンでゲル膜の両端を固定した。ゲル膜は顔料及びフィラーが多量に含有しているため、含有していないゲル膜と比較して脆いため、金属ピンは複数列配置し、ゲル膜を複数列の金属ピンで固定した。その後、ゲル膜をテンター炉に入れ、250℃×11秒、350℃×11秒、450℃×120秒で乾燥・イミド化させて厚み12μmで、フィルム幅500mmのポリイミドフィルムを10000m取得した。なお、エンドレスベルトとテンター炉の速度は、吐出量に対して、得られるフィルムの厚みが12μmとなるように調整した。得られたポリイミドフィルムは、ポリイミド樹脂100重量部に対して、顔料が5重量部、フィラーが8重量部含有している。得られたフィルムの特性は、実施例6と同様であった。また、加熱炉を確認したところ、フィルムの特性に差が生じない程度で、顔料に含まれる成分が昇華・再結晶化して、炉内を汚していることが分かった。炉内の汚れをIRで分析し、その汚れが顔料に含まれる成分であることを確認した。
【0079】
(実施例17)
顔料の種類をベンゾイミダゾール骨格を有するペリレンブラック(BASF社製ルモゲンブラックFK4281:350℃×20分間後の加熱減量率1%)に変更した以外は、実施例16と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性は、実施例7と同様であった。また、加熱炉を確認したところ、顔料に含まれる成分で炉内が汚れていなかった。
【0080】
(比較例1)
フィラーの添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。ポリイミドフィルムの組成と、得られたフィルムの特性を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
(比較例2)
フィラーの種類を酸化ケイ素(富士シリシア社製サイリシア350:平均粒径3.9μm、比表面積300m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して4重量部に変更した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表3に示す。
【0083】
(比較例3)
フィラーの種類を酸化ケイ素(富士シリシア社製サイリシア550:平均粒径3.9μm、比表面積500m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して8重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。ポリイミドフィルムの組成と、得られたフィルムの特性を表3に示す。
【0084】
(比較例4)
顔料をカーボンブラック(エボニック デグサ社製Special Black4)に変更し、フィラーの種類を酸化ケイ素(富士シリシア社製サイリシア350:平均粒径3.9μm、比表面積300m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して、8重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表3に示す。
【0085】
(比較例5)
フィラーの種類を酸化ケイ素(電気化学工業社製FB−3SDC:平均粒径3.4μm、比表面積3m/g)に変更し、フィルムへの添加量をポリイミド樹脂100重量部に対して40重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを作製したが、フィルムが脆かったため、均一なフィルムが得られなかった。特性を表3に示す。
【0086】
(比較例6)
イミド化触媒及び脱水剤を使用しないこと以外は、実施例2と同等にしてポリイミドフィルムを作製したが、フィルムが脆かったため、均一なフィルムが得られなかった。特性を表3に示す。
【0087】
(比較例7)
イミド化触媒及び脱水剤を使用しないこと以外は、実施例6と同等にしてポリイミドフィルムを作製したが、フィルムが脆かったため、均一なフィルムが得られなかった。特性を表3に示す。
【0088】
(比較例8)
イミド化触媒及び脱水剤を使用しないこと以外は、実施例1と同等にしてポリイミドフィルムを作製したが、フィルムが脆かったため、均一なフィルムが得られなかった。特性を表3に示す。
【0089】
(比較例9)
フィラーの種類を酸化ケイ素(日産化学社製スノーテックス−ZL:平均粒径0.1μm、比表面積30m/g)に変更し、フィルムへの含有量をポリイミド樹脂100重量部に対して15重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
(比較例10)
フィラーの種類を酸化ケイ素(富士シリシア社製サイリシア470:平均粒径14.1μm、比表面積350m/g)に変更し、フィルムへの含有量をポリイミド樹脂100重量部に対して15重量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを作製したが、フィルムが脆かったため、均一なフィルムが得られなかった。特性を表4に示す。