特許第6063208号(P6063208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6063208-鉄道車両の側構体 図000002
  • 特許6063208-鉄道車両の側構体 図000003
  • 特許6063208-鉄道車両の側構体 図000004
  • 特許6063208-鉄道車両の側構体 図000005
  • 特許6063208-鉄道車両の側構体 図000006
  • 特許6063208-鉄道車両の側構体 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063208
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】鉄道車両の側構体
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B61D17/08
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-234593(P2012-234593)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-83982(P2014-83982A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 利行
(72)【発明者】
【氏名】本間 志郎
(72)【発明者】
【氏名】永原 斉
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−029355(JP,U)
【文献】 特開平09−030414(JP,A)
【文献】 実開昭59−143868(JP,U)
【文献】 特開2006−027366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓用開口が形成された外板と、
前記窓用開口の下方に配列され、前記外板に接合された複数の横骨と、
前記窓用開口の側方の吹寄部を通って前記複数の横骨と交差する縦骨と、を備え、
前記縦骨は、前記吹寄部で前記外板と接合される第1フランジ部と、前記第1フランジ部との間に段差を形成するように前記第1フランジ部の下方で前記外板から離間し、前記複数の横骨に接合される第2フランジ部と、を有する、鉄道車両の側構体。
【請求項2】
前記外板には、少なくとも一対の前記窓用開口が互いに近接して形成されており、前記吹寄部は、前記一対の窓用開口の間の部分である、請求項1に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項3】
前記吹寄部には横骨が配置されていない、請求項1または2に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項4】
前記外板には、少なくとも2つの出入口用開口がさらに形成されており、
前記窓用開口は、前記出入口開口の間に配置され、
前記横骨は、一方の前記出入口用開口から他方の前記出入口用開口まで連続して延在する、請求項1〜3の何れか一項に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項5】
前記縦骨は、前記外板と平行に延びる主壁と、前記主壁の端部から前記第1フランジ部および前記第2フランジ部につながる側壁と、を有し、
前記主壁が延びる方向において、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間には隙間が形成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項6】
前記縦骨には、前記主壁に対向しながら前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とに跨るように延びる補強壁を有する補強部材が固定されている、請求項5に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項7】
前記第1フランジ部、前記第2フランジ部および前記側壁は、前記主壁の両側に設けられている、請求項5または6に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項8】
前記複数の横骨のそれぞれは、前記外板と接合されるフランジ部と、前記外板と空間を隔てて対向する主壁と、前記主壁の端部から前記フランジ部につながる側壁と、を有し、
前記縦骨の主壁には、当該主壁が前記複数の横骨のそれぞれの前記フランジ部と重なる位置に貫通穴が形成されている、請求項5〜7の何れか一項に記載の鉄道車両の側構体。
【請求項9】
前記外板および前記縦骨の下部は、車幅方向内側にオフセットするように曲がっている、請求項1〜8の何れか一項に記載の鉄道車両の側構体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外板の内側に横骨および縦骨が配置された鉄道車両の側構体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外板に横骨が接合され、その横骨の上に縦骨が架け渡された、いわゆる浮き骨構造の側構体が知られている。例えば、特許文献1には、窓用開口と出入口用開口が車両の長手方向に交互に形成された外板に、高さの異なる二種類の横骨が接合された鉄道車両の側構体が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1に開示された側構体では、外板に形成された窓用開口の直ぐ上側および直ぐ下側に高さの高い第1横骨が1本ずつ配置されており、これらの第1横骨の間(窓用開口と出入口用開口の間の吹寄部)および第1横骨の上下外側に、高さの低い複数の第2横骨が配列されている。そして、これらの横骨と交差する縦骨は、一対の第1横骨と対応する位置で上側縦骨部、中間縦骨部および下側縦骨部に分割されており、それらの縦骨部同士は継手部材により連結されている。
【0004】
各縦骨部は断面ハット状をなしており、その両フランジ部が第2横骨に接合されている。一方、縦骨部同士を連結する継手部材は、縦骨部同士の間の隙間を車幅方向内側から覆うように第1横骨に沿って車両の長手方向に延びており、その両端部が第1横骨に接合されている。
【0005】
また、特許文献2には、横骨を縦骨に優先して配し、縦骨を横骨に当てがって溶接接合した鉄道車両の構体骨構造が開示されている。これにより、特許文献2は、横骨が縦骨に分断されることなく、車両長手方向に連続して設けて、分断しなくてよい分だけ最小の本数とすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−126758号公報
【特許文献2】特開2006−347358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された側構体では、縦骨が外板から離間しているために、窓用開口等の開口部が近接する狭隘な外板の吹寄部では、外板の面外方向とせん断方向の強度が不足する場合がある。また狭隘な吹寄部に横骨を配置することは、その接合作業が煩雑となるとともに、部品点数が増加するという問題もある。
【0008】
また、特許文献2は、縦骨を横骨に溶接接合することを基本構造としながら、開口部近傍の横骨の端部において、縦骨の一方のフランジを横骨に接合し、他方のフランジを外板に接合した構造が開示されている。しかしながら、特許文献2は、吹寄部に横骨を配置した構造を前提としている。
【0009】
そこで、本発明は、縦骨を分断することなく簡素な構造としつつ、吹寄部における外板の強度を向上可能な鉄道車両の側構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の鉄道車両の側構体は、窓用開口が形成された外板と、前記窓用開口の下方に配列され、前記外板に接合された複数の横骨と、前記窓用開口の側方の吹寄部を通って前記複数の横骨と交差する縦骨と、を備え、前記縦骨は、前記吹寄部で前記外板と接合される第1フランジ部と、前記第1フランジ部との間に段差を形成するように前記第1フランジ部の下方で前記外板から離間し、前記複数の横骨に接合される第2フランジ部と、を有する。
【0011】
上記の構成によれば、吹寄部において縦骨が外板に接合されているために、吹寄部における外板の強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、縦骨を分断することなく簡素な構造としつつ、吹寄部における外板の強度を向上可能な鉄道車両の側構体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る鉄道車両の側構体を車幅方向内側から見た図
図2】(a)は図1のIIA−IIA線に沿った側構体の断面図、(b)は窓用開口が並んでいない部分での側構体の断面図
図3図1のIII−III線に沿った側構体の断面図
図4】(a)は図1の要部を示す図、(b)は同要部を側方から見た断面図、(c)は同要部を下方から見た断面図
図5図1に示す側構体に用いられる補強部材の斜視図
図6】変形例の縦骨を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。
【0015】
図1図3に、一実施形態に係る鉄道車両の側構体1を示す。この側構体1は、複数の窓用開口21および出入口用開口22が形成された外板2を備えている。
【0016】
本実施形態において、側構体1は窓用開口21が少なくとも一対互いに近接して形成された構成を有している。ここで、「近接」とは、窓用開口21同士の間の距離が、縦骨を1本ないし2本程度、配置可能な幅をいう。なお、縦骨は、外板の補強部材として機能する曲げ強度を有するものであれば、適宜、板厚や幅を変更可能である。一例として、縦骨は水平軸周りの断面係数が4000〜8000mm程度となるように、板厚や幅が規定される。本実施形態では、窓用開口21が当該窓用開口21の幅よりも僅かに大きなピッチで並んでおり、端に位置する窓用開口21は出入口用開口22とも近接している。このため、窓用開口21同士の間の第1吹寄部2aおよび窓用開口21と出入口用開口22の間の第2吹寄部2bには、横骨が配置されていない。なお、外板2には、図3に示すように窓用開口21を縁取る枠部材25が取り付けられている。
【0017】
窓用開口21の下方には複数(図例では4本)の下側横骨3Aが配列され、窓用開口21の上方には複数(図例では3本)の上側横骨3Bが配列されている。なお、図1は、側構体1における窓用開口21が並ぶ部分のみを示しており、窓用開口21が並んでいない部分では、図2(b)に示すように、窓用開口21と対応する領域に、複数(図例では4本)の中間横骨3Cが配列されている。これらの横骨3A〜3Cは、外板2に接合されている。また、本実施形態において、側構体1は複数の出入口用開口22を備えており、窓用開口21は出入口用開口22の間に配置されている。そして、下側横骨3Aは、出入口用開口22間の途中で分断されずに連続して延在している。ここで、「連続して延在」とは、下側横骨3Aが継ぎ目のない一体物であること、または複数の下側横骨3Aが同程度の断面係数を有する継手により連結されていることを意味する。
【0018】
第1吹寄部2aおよび第2吹寄部2bには第1縦骨4Aが通されており、それ以外の部分には第2縦骨4B(図2(b)参照)が通されている。すなわち、第1縦骨4Aは下側横骨3Aおよび上側横骨3Bと交差し、第2縦骨4Bは下側横骨3A、中間横骨3Cおよび上側横骨3Bと交差する。第1縦骨4Aは、第1吹寄部2aに2本、第2吹寄部2bに1本配置されている。
【0019】
図2(a)および(b)に示すように、外板2は、その腰部が車幅方向内方にオフセットするようなS字状のコンタ形状(外郭形状)としている。第1縦骨4Aおよび第2縦骨4Bの下部は、外板2と同様に、車幅方向内側にオフセットするようにS字状に曲がっている。すなわち、外板2ならびに第1縦骨4Aおよび第2縦骨4Bは、中央から下端に向かって、いったん車幅方向内側に折れ曲がった後に、下方に折れ曲がっている。
【0020】
本実施形態では、全ての横骨3A〜3Cおよび縦骨4A,4Bが断面ハット状をなしている。ただし、横骨3A〜3Cおよび縦骨4A,4Bの一部または全部は、断面クランク状あるいはZ字状をなしていてもよい。
【0021】
第2縦骨4Bは、全長に亘って一定の断面形状を有しており、下側横骨3A、中間横骨3Cおよび上側横骨3Bのみと接合されて外板2に接合されていない。一方、各第1縦骨4Aは、中間部が下部および上部よりも車幅方向外側に張り出す形状に形成されている。そして、第1縦骨4Aの下部および上部がそれぞれ下側横骨3Aおよび上側横骨3Bに接合され、中間部が吹寄部2a,2bにおいて外板2と接合されている。
【0022】
より詳しくは、各第1縦骨4Aは、図2(a)に示すように、第1吹寄部2aまたは第2吹寄部2bで外板2と接合される一対の第1フランジ部43と、下側横骨3Aに接合される一対の第2フランジ部44と、上側横骨3Bに接合される一対の第3フランジ部45とを有している。なお、第3フランジ部45は第2フランジ部44と接合対象が異なるだけで、第3フランジ部45自体の構成および第3フランジ部45と第1フランジ部43との関係は第2フランジ部44と同様であるため、以下では図4(a)〜(c)を参照して第1フランジ部43と第2フランジ部44の関係を中心に説明する。
【0023】
図4(a)〜(c)に示すように、第2フランジ部44は、第1フランジ部43との間に段差を形成するように、第1フランジ部43の下方で外板2から離間している。第2フランジ部44から外板2までの距離は、下側横骨3Aの高さと等しい。
【0024】
各下側横骨3Aは、外板2と接合される一対のフランジ部33と、外板2と空間を隔てて対向する主壁31と、主壁31の上下両端部からフランジ部33につながる一対の側壁32とを有している。そして、各下側横骨3Aの主壁31に、第1縦骨4Aの第2フランジ部44が面接触した状態で接合される。なお、側壁32の主壁31に対する角度は直角であってもよいし鈍角であってもよい。
【0025】
第1縦骨4Aは、第1〜第3フランジ部43〜45の他に、全ての横骨3A,3Bを超えて外板2と平行に延びる主壁41と、主壁41の左右両端部から第1〜第3フランジ部4345につながる一対の側壁42とを有している。なお、主壁41は、必ずしも全長に亘って外板2と完全に平行である必要はなく、外板2と実質的に平行であればよい。例えば、主壁41と外板2との間の距離がどこかの場所で僅かに変化していてもよい。
【0026】
本実施形態では、主壁41が延びる方向において第1フランジ部43と第2フランジ部44の間に隙間6が形成されているとともに、側壁42には、隙間6から主壁41に向かって凹む切欠き49が設けられている。このため、第1縦骨4Aは、金属板の折り曲げ加工(例えば、ブレーキプレス成形)により製造可能となっている。
【0027】
また、本実施形態では、第1縦骨4Aの第1フランジ部43と外板2との接合、下側横骨3Aのフランジ部33と外板2との接合、および第1縦骨4Aの第2フランジ部44と下側横骨3Aの主壁31との接合は、スポット溶接により行われる。例えば、下側横骨3Aと外板2とを両側から電極で挟んでスポット溶接した後に、下側横骨3A上に第1縦骨4Aを乗せ、第1縦骨4Aのみに片側から電極を当ててスポット溶接(シリーズスポット)することも可能である。しかし、この場合には、シリーズスポット時に下側横骨3Aに大きな荷重がかかるため、その荷重に耐え得るように下側横骨3Aの板厚を厚くする必要がある。これに対し、まず、第1縦骨4Aと下側横骨3Aとを両側から電極で挟んでスポット溶接して骨組体を作製し、その後に、この骨組体を外板2に乗せて下側横骨3Aと外板2とを両側から電極で挟んでスポット溶接すれば、下側横骨3Aの板厚を薄くすることができる。本実施形態では、骨組体を先に作製した場合でも、下側横骨3Aと外板2とを両側から電極で挟んでスポット溶接できるようにするための構成が採用されている。
【0028】
具体的に、第1縦骨4Aの主壁41には、当該主壁41が各下側横骨3Aのフランジ部33と重なる位置に、スポット溶接用電極が挿通可能な貫通穴4aが形成されている。また、第1縦骨4Aの第2フランジ部44には、第1吹寄部2aにおいて隣り合う第1縦骨4A同士の間にスポット溶接用電極が挿通可能な開口を形成するための切欠き46が設けられている。そして、これらの貫通穴4aおよび切欠き46を利用して下側横骨3Aのフランジ部33と外板2とのスポット溶接が行われる。また、最も上方に位置する下側横骨3Aの上側のフランジ部33に対しては、切欠き46と対応する位置において、第1縦骨4Aの第1フランジ部43と第2フランジ部44の間の隙間6を利用してフランジ部33と外板2とのスポット溶接が行われる。このような構成により、第1縦骨4Aの存在によって、下側横骨3Aと外板2とのスポット溶接のピッチが不当に広がることを防止することができる。なお、本実施形態におけるスポット溶接の位置を図4(a)中に×印で示す。
【0029】
上述した第1フランジ部43と第2フランジ部44の間の隙間6および側壁42に設けられた切欠き49は、第1縦骨4Aの断面係数を低下させる。そこで、第1縦骨4Aの内側には、当該第1縦骨4Aの断面係数の低下を補う補強部材5が配置されている。
【0030】
補強部材5は、車幅方向内側に開口する断面コ字状をなしており、切欠き49から上下両側に延びている。より詳しくは、補強部材5は、第1縦骨4Aの主壁41に対向しながら第1フランジ部43と第2フランジ部44とに跨るように延びる補強壁50と、この補強壁50の左右両端部から第1縦骨4Aの側壁42に沿って立ち上がる一対のガイド壁54とを有している。
【0031】
第1縦骨4Aの各側壁42には、補強部材5のガイド壁54を露出させる開口47,48が切欠き49の上方および下方に設けられている。補強部材5は、側壁42における各開口47,48を縁取る周縁部の少なくとも一部がガイド壁54と隅肉溶接されることにより、第1縦骨4Aに固定されている。
【0032】
図5に示すように、補強壁50は、第1フランジ部43と同一面上に位置する第1平面部51と、第2フランジ部44と同一面上に位置する第2平面部53と、第1平面部51の下辺と第2平面部53の上辺とを連結する傾斜部52とで構成されている。第1平面部51の下辺は第1フランジ部43の下端とほぼ同じ高さにあり、第2平面部53の上辺は第2フランジ部44の上端とほぼ同じ高さにある。また、補強壁50には、第1縦骨4Aの主壁41に設けられた貫通穴4aと対応する位置に、スポット溶接用電極が挿通可能な切欠き55および長穴56が設けられている。
【0033】
上述したように、上側横骨3Bに接合される第3フランジ部45は第2フランジ部44と同様に構成されているために、図2(a)に示すように、補強部材5は、第1フランジ部43と第2フランジ部44との境界部分だけでなく、第1フランジ部43と第3フランジ部45との境界部分にも配置されている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の側構体1では、第1吹寄部2aおよび第2吹寄部2bにおいて第1縦骨4Aが外板2に接合されているために、第1吹寄部2aおよび第2吹寄部2bにおける外板2の強度を向上させることができる。すなわち、浮き骨構造の、横骨および縦骨の双方を連続させるという利点を活かしつつ、吹寄部を強化することができる。
【0035】
特に、本実施形態のように吹寄部に横骨が配置されていない場合には、第1縦骨4Aと外板2との接合により、吹寄部における側構体1の剛性を十分に確保することができる。換言すれば、第1縦骨4Aと外板2との接合により、吹寄部の横骨を不要とすることができる。
【0036】
ところで、窓用開口21と出入口用開口22の間の第2吹寄部2bには、戸袋柱や戸当り柱などが配置されることがある。しかし、窓用開口21間の第1吹寄部2aでは、そのような柱が配置されることは少ない。従って、第1縦骨4Aの構成は、特に第1吹寄部2aに有効である。
【0037】
また、本実施形態の側構体1では、第1縦骨4Aが断面ハット状をなしていて、第1〜第3フランジ部43〜45および側壁42が主壁41の両側に設けられているため、第1吹寄部2aおよび第2吹寄部2bにおいて外板2を高強度で支持することができる。
【0038】
また、本実施形態の側構体1では、第1縦骨4Aの主壁41に貫通穴4aが設けられているため、第1縦骨4Aが下側横骨3Aと重なる位置でも下側横骨3Aと外板2とをスポット溶接することができる。
【0039】
また、本実施形態のように、外板2の腰部が車幅方向内側にオフセットしたS字状のコンタ構造とするとともに、横骨及び縦骨を連続させた浮き骨構造とすることにより、外板の強度を十分に確保しつつ、より製作が容易な側構体を実現することができる。特に、本実施形態の側構体では、横骨が優先された構造であり、縦骨の存在によって横骨が分断されることがないので、車端圧縮荷重に対して十分な強度を有している。
【0040】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、窓用開口21は、必ずしも出入口用開口22と近接している必要はなく、出入口用開口22から当該窓用開口21の幅の半分以上離れていてもよい。この場合、第2吹寄部2bには、中間横骨3C(図2(b)参照)が配置されていてもよい。
【0042】
また、例えば窓用開口21が大きな場合は上側横骨3Bは省略されてもよいし、上側横骨3Bの代わりに軒桁のみが配置されてもよい。すなわち、第1縦骨4Aは第3フランジ部45を有さず、第1フランジ部43が第1縦骨4Aの上端まで延びていてもよい。
【0043】
また、下側横骨3A、第1縦骨4Aおよび外板2間の接合方法は、スポット溶接に限らずレーザー溶接であってもよい。
【0044】
さらに、第1縦骨4Aの第1フランジ部43と第2フランジ部44との間には必ずしも主壁41が延びる方向に隙間6が形成されている必要はない。例えば、図6に示すように、第1縦骨4Aには、第1フランジ部43と第2フランジ部44とを連結する連結部40が設けられていてもよい。連結部40は、第1フランジ部43および第2フランジ部44を折り曲げ加工により形成した後に、それらに溶接すればよい。あるいは、成型可能な材料及び板厚であれば、これらを一体絞りプレス成型で形成されてもよい。これらの構成であれば、補強部材5を省略することができる。ただし、前記実施形態のように第1フランジ部43と第2フランジ部44との間に隙間6が形成されていれば、第1縦骨4Aを折り曲げ加工のみで製造することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 側構体
2 外板
2a 第1吹寄部
2b 第2吹寄部
21 窓用開口
3A〜3C 横骨
31 主壁
32 側壁
33 フランジ部
4A,4B 縦骨
4a 貫通穴
41 主壁
42 側壁
43 第1フランジ部
44 第2フランジ部
5 補強部材
50 補強壁
6 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6