(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063212
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
A46D 9/02 20060101AFI20170106BHJP
A61C 15/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
A46D9/02
A61C15/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-247170(P2012-247170)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-94133(P2014-94133A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207713
【氏名又は名称】大平工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晃
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
特表平05−502600(JP,A)
【文献】
特開平08−224127(JP,A)
【文献】
特開平06−285753(JP,A)
【文献】
特開昭62−188658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00−17/08
A46D 1/00−99/00
A61C 15/00−15/02
B24B 5/00− 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯間ブラシをその長手方向軸心回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心回りに周回移動させる一方、歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転しつつ他の軸心回りに周回移動する際、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って配設された円弧状の研磨シートにブラシ先端を略接触させるとともに、円弧状の研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って上下方向に往復移動させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨方法。
【請求項2】
歯間ブラシをその長手方向軸心の一方向回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心の一方向回りに周回移動させる一方、歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転しつつ他の軸心回りに周回移動する際、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って配設された円弧状の研磨シートにブラシ先端を略接触させるとともに、円弧状の研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って上下方向に往復移動させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨した後、歯間ブラシをその長手方向軸心の他方向回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心の他方向回りに周回移動させる一方、歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転しつつ他の軸心回りに周回移動する際、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って配設された円弧状の研磨シートにブラシ先端を略接触させるとともに、円弧状の研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って上下方向に往復移動させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨方法。
【請求項3】
支持フレームに、太陽歯車、内歯車、これらの太陽歯車と内歯車とに噛み合って周方向に等間隔をおいて配置された複数個の遊星歯車からなる遊星歯車機構を設け、各遊星歯車に歯間ブラシのホルダーを設け、また、ホルダーに保持された歯間ブラシにおけるブラシの太陽歯車の軸心回りの周回移動軌跡に沿って円弧状の研磨シートを配設するとともに、円弧状の研磨シートを太陽歯車の回転に連動して該研磨シートの円弧面に沿って上下方向に往復移動させる連動機構を設けてなり、内歯車を支持フレームに回転不能に支持した状態で太陽歯車を回転させ、歯間ブラシのブラシ先端を研磨シートの円弧面に沿って往復移動する円弧状の研磨シートに略接触させて自転する遊星歯車を介して歯間ブラシを長手方向軸心回りに回転させるとともに、公転する遊星歯車を介して円弧状の研磨シートに沿って周回移動させてブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨装置。
【請求項4】
請求項3に記載の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置において、前記連動機構が、太陽歯車の回転軸と直交し、互いに噛み合う一対のかさ歯車を介して連結された水平軸と、該水平軸に設けられた円盤と、該円盤に水平軸の軸心から偏心した位置に一端が連結されたアームとからなり、アームの他端が垂直な円弧状の研磨シートに連結されることを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置において、前記ブラシ先端研磨装置を一対併設し、一方の研磨装置における遊星歯車機構の太陽歯車の回転方向と他方の研磨装置における遊星歯車機構の太陽歯車の回転方向とが互いに逆方向であることを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯間ブラシが知られている。この歯間ブラシ11は、
図5(a)に示すように、金属ワイヤ12を撚り加工して形成されたワイヤロッド部13と、このワイヤロッド部13に直交して、かつ、その長手方向に間隔をおいて半径方向に放射状に突出された複数本のフィラメントからなるブラシ14と、ワイヤロッド部13の基部に一体に設けられたプラスチック製基台15とから構成されている。そして、歯間ブラシ11の基台15を摘んでワイヤロッド部13を歯と歯の間の隙間に出し入れすることにより、ワイヤロッド部13に固定されたブラシ14がともに移動し、通常の歯ブラシによるブラッシングでは歯垢清掃が困難な歯の側面部分や根元部分等を清掃することができる。
【0003】
このような歯間ブラシ11は、二つ折りした金属ワイヤ12の間に合成繊維束からなる複数本のフィラメントを挟み込み、金属ワイヤ12を撚り加工してフィラメントを複数本ずつ複数箇所でねじり止めした後、フィラメントを毛切り加工してブラシ14を形成し、最後に基台15をインサート成形等によって形成することで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した歯間ブラシのブラシ先端を刃物で毛切り加工すると、ブラシを形成する各フィラメントの先端は、
図5(b)に示すように、鋭角状の切断面を有するとともに、その周囲がささくれだって周囲に拡がった形状に切断される。このため、歯間ブラシの使用に際して、ブラシを歯と歯の間へ挿入すると、毛先が固い等の異物感を覚える場合があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ブラシを形成する各フィラメントの先端をほぼ丸く研磨してブラシの歯間への挿入時の異物感の発生を抑制することのできる歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨方法は、歯間ブラシをその長手方向軸心回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心回りに周回移動させる一方、歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転しつつ他の軸心回りに周回移動する際、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って配設された円弧状の研磨シートにブラシ先端を略接触させるとともに、円弧状の研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って
上下方向に往復移動させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、歯間ブラシをその長手方向軸心回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心回りに周回移動させる。また、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って円弧状の研磨シートを配設してブラシ先端を略接触させるとともに、研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って往復移動させる。これにより、歯間ブラシは、ブラシを形成する各フィラメントの先端が研磨シートの円弧面に沿って往復移動する円弧状の研磨シートに略接触し、わずかに撓んだ状態で回転しながら周回移動することから、各フィラメントの先端を全周にわたってほぼ丸く研磨することができる。
【0009】
この結果、歯間ブラシを歯間へ挿入する際、ブラシを形成する各フィラメントの先端が歯肉に滑らかに接触し、異物感の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨方法は、歯間ブラシをその長手方向軸心の一方向回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心の一方向回りに周回移動させる一方、歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転しつつ他の軸心回りに周回移動する際、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って配設された円弧状の研磨シートにブラシ先端を略接触させるとともに、円弧状の研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って
上下方向に往復移動させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨した後、歯間ブラシをその長手方向軸心の他方向回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心の他方向回りに周回移動させる一方、歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転しつつ他の軸心回りに周回移動する際、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って配設された円弧状の研磨シートにブラシ先端を略接触させるとともに、円弧状の研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って
上下方向に往復移動させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、歯間ブラシをその長手方向軸心の一方向回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心の一方向回りに周回移動させる。また、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って円弧状の研磨シートを配設してブラシ先端を略接触させるとともに、研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って往復移動させる。その後、歯間ブラシをその長手方向軸心の他方向回りに回転させるとともに、その長手方向軸心と平行な他の軸心の他方向回りに周回移動させる。また、歯間ブラシのブラシの周回移動軌跡に沿って円弧状の研磨シートを配設してブラシ先端を略接触させるとともに、研磨シートを該研磨シートの円弧面に沿って往復移動させる。これにより、歯間ブラシは、ブラシを形成する各フィラメントの先端が研磨シートの円弧面に沿って往復移動する円弧状の研磨シートに略接触してわずかに撓んだ状態で一方向に回転しながら一方向に周回移動した後、ブラシを形成する各フィラメントの先端が研磨シートの円弧面に沿って往復移動する円弧状の研磨シートに略接触してわずかに撓んだ状態で先の回転方向とは逆の他方向に回転しながら他方向に周回移動することから、各フィラメントの先端を全周にわたって満遍なく丸く研磨することができる。
【0012】
この結果、歯間ブラシを歯間へ挿入する際、ブラシを形成する各フィラメントの先端が歯肉に滑らかに接触し、異物感の発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置は、支持フレームに、太陽歯車、内歯車、これらの太陽歯車と内歯車とに噛み合って周方向に等間隔をおいて配置された複数個の遊星歯車からなる遊星歯車機構を設け、各遊星歯車に歯間ブラシのホルダーを設け、また、ホルダーに保持された歯間ブラシにおけるブラシの太陽歯車の軸心回りの周回移動軌跡に沿って円弧状の研磨シートを配設するとともに、円弧状の研磨シートを太陽歯車の回転に連動して該研磨シートの円弧面に沿って往復移動させる連動機構を設けてなり、内歯車を支持フレームに回転不能に支持した状態で太陽歯車を回転させ、歯間ブラシのブラシ先端を研磨シートの円弧面に沿って
上下方向に往復移動する円弧状の研磨シートに略接触させて自転する遊星歯車を介して歯間ブラシを長手方向軸心回りに回転させるとともに、公転する遊星歯車を介して円弧状の研磨シートに沿って周回移動させてブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、支持フレームに設けた遊星歯車機構の遊星歯車のホルダーに毛切り加工された歯間ブラシを差し込んで保持した後、太陽歯車を回転させる。ここで、内歯車が支持フレームに対して固定されていることから、太陽歯車及び内歯車に噛み合う各遊星歯車は、太陽歯車の回転によって太陽歯車の回転方向とは逆方向に自転するとともに、太陽歯車の周囲を公転する。一方、遊星歯車の自転及び公転によって遊星歯車のホルダーに保持された歯間ブラシが長手方向軸心回りに回転するとともに太陽歯車の周囲を周回移動することに対応して、歯間ブラシのブラシ先端が略接触するように円弧状の研磨シートが配設されている。しかも、円弧状の研磨シートは、太陽歯車の回転に連動して該研磨シートの円弧面に沿って往復移動する。これにより、歯間ブラシは、ブラシを形成する各フィラメントの先端が研磨シートの円弧面に沿って往復移動する円弧状の研磨シートに略接触してわずかに撓んだ状態で回転しながら周回移動することから、各フィラメントの先端を全周にわたってほぼ丸く研磨することができる。
【0015】
この結果、歯間ブラシを歯間へ挿入する際、ブラシを形成する各フィラメントが歯肉に滑らかに接触し、異物感の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明において、前記連動機構が、太陽歯車の回転軸と直交し、互いに噛み合う一対のかさ歯車を介して連結された水平軸と、該水平軸に設けられた円盤と、該円盤に水平軸の軸心から偏心した位置に一端が連結されたアームとからなり、アームの他端が垂直な円弧状の研磨シートに連結されることが好ましい。これにより、太陽歯車の回転に連動して水平軸を回転させ、水平軸の軸心と円盤に対するアームとの連結部との偏心距離の2倍の長さ分円弧状の研磨シートをその垂直な円弧面に沿って簡単に上下方向に往復移動させることができる。
【0017】
本発明において、前記ブラシ先端研磨装置を一対併設し、一方の研磨装置における遊星歯車機構の太陽歯車の回転方向と他方の研磨装置における遊星歯車機構の太陽歯車の回転方向とが互いに逆方向であることが好ましい。これにより、一方の研磨装置において、ブラシを形成する各フィラメントの先端を全周にわたってほぼ丸く研磨した後、他方の研磨装置において、一方の研磨装置による歯間ブラシの回転方向とは逆方向に歯間ブラシを回転させて、ブラシを形成する各フィラメントの先端を全周にわたってほぼ丸く研磨できることから、各フィラメントの先端を全周にわたって満遍なく丸く研磨することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブラシを形成する各フィラメントの先端をほぼ丸く研磨してブラシの歯間への挿入時の異物感の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1の研磨装置を一部省略して示す平面図である。
【
図3】本発明の研磨装置によって研磨された歯間ブラシ及びそのブラシ先端X部を拡大して示す説明図である。
【
図4】本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置の他の実施形態を
図2に対応して示す平面図である。
【
図5】従来の歯間ブラシ及びそのブラシ先端A部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1及び
図2には、本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置1の一実施形態が示されている。
【0022】
この研磨装置1は、歯間ブラシ11におけるストレート状のブラシ14先端、すなわち、半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントをほぼ同一の長さに揃えたブラシ14先端を丸く研磨するものであって、支持フレーム2に設けられた遊星歯車機構3と、遊星歯車機構3の太陽歯車33を回転させる駆動機構4と、遊星歯車機構3の遊星歯車35の移動軌跡に沿って設けられた研磨ユニット5と、研磨ユニット5を太陽歯車33の回転に連動して上下方向に往復移動させる連動機構6とから構成され、遊星歯車機構3の各遊星歯車35に歯間ブラシ11のホルダー7が設けられるとともに、遊星歯車機構3における歯間ブラシ搬入位置に臨む遊星歯車353のホルダー7に研磨対象の歯間ブラシ11を装着するロボットアーム8A及び遊星歯車機構3における歯間ブラシ搬出位置に臨む遊星歯車35のホルダー7から研磨された歯間ブラシ11を取り出すロボットアーム8Bがそれぞれ設けられている。
【0023】
遊星歯車機構3は、支持フレーム2に固定されたケーシング31と、ケーシング31に対して回転軸32を介して回転自在に支持された太陽歯車33と、ケーシング31に固定された内歯車34と、太陽歯車33及び内歯車34と噛み合って周方向に等間隔をおいて配設された複数個の遊星歯車35とからなり、各遊星歯車35の回転軸36は、太陽歯車33の回転軸32に支持されたキャリアー37にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0024】
駆動機構4は、支持フレーム2に設けられたモータ41、例えば、ステッピングモータと、該モータ41の出力軸及び太陽歯車33の回転軸32の下端部にそれぞれ固定されて互いに噛み合う駆動歯車42及び従動歯車43からなり、モータ41が回転駆動すると、駆動歯車42及び従動歯車43が回転し、それにより、従動歯車43が固定された回転軸32、すなわち、太陽歯車33が回転する。太陽歯車33が回転すれば、太陽歯車33及び内歯車34とそれぞれ噛み合う各遊星歯車35が、キャリア37に支持されて回転軸36の軸心回りに回転(自転)するとともに、太陽歯車33の周囲を回転(公転)する。
【0025】
この実施形態においては、
図2において、太陽歯車33を反時計回り方向に回転させることにより、各遊星歯車35は、回転軸36の軸心に関して時計回り方向に自転しつつ太陽歯車33の周囲を反時計回り方向に公転する。
【0026】
研磨ユニット5は、半円状の支持プレート51に沿って紙やすり等の研磨シート52を貼着して形成され、遊星歯車35のホルダー7に保持された歯間ブラシ11の移動軌跡に沿って配設されている。すなわち、研磨ユニット5の研磨シート52は、上方から見て太陽歯車33の回転中心から遊星歯車35にホルダー7を介して保持された歯間ブラシ11のブラシ14の外周側先端までの半径に対応する半円状に形成されるとともに、太陽歯車33の回転中心を中心とする、前述した半径の円周上に配置されている。ここで、遊星歯車35が太陽歯車33の周囲を公転する際、遊星歯車35のホルダー7に保持された歯間ブラシ11のブラシ14の外周側先端が研磨シート52に略接触した状態でほぼ180度周回移動するように研磨ユニット5が配置されている。
【0027】
連動機構6は、太陽歯車33の回転軸32の上端部に固定されたかさ歯車61と、該かさ歯車61と噛み合う従動かさ歯車62を一端に固定するとともに、他端に円盤64を固定した水平軸63と、水平軸63の軸心から設定された偏心距離をおいて円盤64に一端が回転自在に連結されたアーム65とからなり、アーム65の他端が研磨ユニット5の支持プレート51に回転自在に連結されている。
【0028】
これにより、太陽歯車33が回転軸32を介してその軸心回りに回転するとき、かさ歯車61及び従動かさ歯車62を介して水平軸63が回転し、水平軸63に固定された円盤64が水平軸63の軸心回りに回転する。円盤64が回転すれば、円盤64に連結されたアーム65が、水平軸63の軸心とアーム65の連結中心との偏心距離を回転半径として水平軸63の軸心回りに回転する。したがって、アーム65は、円盤64に対する偏心距離の2倍の長さ上下方向に往復移動し、研磨ユニット5を遊星歯車35のホルダー7に保持された歯間ブラシ11のブラシ14先端に略接触した状態でその円弧面に沿って昇降させることができる。
【0029】
次に、このように構成された研磨装置1を用いて歯間ブラシ11におけるブラシ14先端を研磨する場合について説明する。
【0030】
まず、図示しない始動スイッチを操作すると、ロボットアーム8Aが作動し、毛切り加工された歯間ブラシ11の搬送ラインから歯間ブラシ11を把持して取り出した後、遊星歯車機構3における歯間ブラシ搬入位置の遊星歯車35のホルダー7に差し込む。ホルダー7に歯間ブラシ11を保持したならば、モータ41を設定角度回転駆動させ、駆動歯車42及び従動歯車43を介して回転軸32、すなわち、太陽歯車33をその軸心回りに設定角度反時計回り方向に回転させる。太陽歯車33が回転すると、遊星歯車35は、ホルダー7に歯間ブラシ11を保持した状態で、回転軸36の軸心に関し時計回り方向に設定角度だけ自転するとともに、太陽歯車33の周囲を反時計回り方向に設定角度だけ公転する。
【0031】
モータ41を介して太陽歯車33が設定角度だけ回転し、遊星歯車35が設定角度自転しつつ設定角度公転すれば、モータ41の駆動を停止させた後、ロボットアーム8Aを作動させ、歯間ブラシ11を把持して次の遊星歯車35のホルダー7に差し込む。以下、同様に、モータ41を介して太陽歯車33をその軸心回りに設定角度だけ反時計回り方向に回転させることにより、各遊星歯車35を、ホルダー7に歯間ブラシ11を保持した状態で、回転軸36の軸心回りに時計回り方向に設定角度だけ自転させるとともに、太陽歯車33の周囲を反時計回り方向に設定角度だけ公転させた後、ロボットアーム8Aを介して新たな歯間ブラシ11を次の遊星歯車35のホルダー7に差し込むことを繰り返す。
【0032】
一方、太陽歯車33の回転軸32が設定角度ずつ回転するとき、回転軸32に設けられたかさ歯車61及び従動かさ歯車62を介して水平軸63も設定角度ずつその軸心回りに回転する。このため、水平軸63に設けられた円盤64が水平軸63の軸心回りに水平軸63の回転角度だけ回転し、円盤64に連結されたアーム65を、水平軸63の軸心及び円盤64に対するアーム65の連結点間の偏心距離と、水平軸63の回転角の正弦との積に相当する高さだけ上下方向に移動させる。すなわち、アーム65に連結された研磨ユニット5をその円弧面に沿って上下方向に移動させる。
【0033】
このように、太陽歯車33が反時計回り方向に間欠的に設定角度だけ回転すると、遊星歯車35が、太陽歯車33の回転角度に対応する設定角度ずつ時計回り方向に間欠的に自転するとともに、太陽歯車33の周囲を反時計回り方向に設定角度ずつ間欠的に公転し、さらに、太陽歯車33の回転角に対応する長さずつアーム65を介して研磨ユニット5がその円弧面に沿って間欠的に上下方向に移動する。この際、遊星歯車35のホルダー7に保持された歯間ブラシ11は、設定長さずつ上下方向に間欠的に移動する研磨シート52に略接触した状態で、長手方向軸心回りに間欠的に回転しつつ、円弧状の研磨シート52に沿って間欠的に周回移動する。
【0034】
したがって、歯間ブラシ11のブラシ14先端は、円弧面に沿って上下方向に移動する研磨シート52に略接触してわずかに撓んだ状態で、周方向に設定角度ずつ回転しながら研磨シート52に沿って周回移動することにより、歯間ブラシ11のブラシ14を形成する各フィラメント先端は、研磨シート52によって周方向に設定角度ずつ接触位置を変えながら研磨される。
【0035】
このようにして、太陽歯車33が設定角度ずつ間欠的に回転することを繰り返すことにより、遊星歯車35が設定角度ずつ自転しつつ太陽歯車33の周囲を設定角度ずつ公転し、また、円弧状の研磨シート52が円弧面に沿って上下方向に移動し、歯間ブラシ11のブラシ14先端が全周にわたって研磨される。そして、歯間ブラシ11を保持する遊星歯車35が自転しつつ太陽歯車33の周囲を公転し、歯間ブラシ搬出位置に到達すれば、ロボットアーム8Bが作動し、研磨を終えた歯間ブラシ11を把持して遊星歯車35のホルダー7から取り出し、図示しない製品搬送ラインに供給する。
【0036】
この結果、ホルダー7に保持された歯間ブラシ11は、ブラシ14先端が円弧状の研磨シート52に略接触した状態で、長手方向軸心回りに回転するとともに、円弧状の研磨シート52に沿って周回移動し、さらに、円弧状の研磨シート52が上下方向に往復移動することにより、ホルダー7に保持された歯間ブラシ11のブラシ14を形成する各フィラメント先端を全周にわたってほぼ丸く研磨することができる。
【0037】
ところで、前述した実施形態においては、太陽歯車33を反時計回り方向に回転させることにより、時計回り方向に自転しつつ反時計回り方向に公転する遊星歯車35を介して歯間ブラシ11を長手方向軸心回りに回転させながら太陽歯車33の周囲を周回移動させ、その際、上下方向に往復移動する円弧状の研磨シート52に歯間ブラシ11のブラシ14先端を略接触させて、ブラシを形成する各フィラメント先端をほぼ丸く研磨する場合を例示したが、歯間ブラシ11の長手方向軸心回りの回転方向と太陽歯車33周囲の周回移動方向が一定となり、ブラシを形成する各フィラメント先端は、歯間ブラシの長手方向軸心回りの回転方向と太陽歯車33周囲の周回移動方向に沿ってわずかに撓むことでほぼ丸く研磨される。
【0038】
したがって、ブラシを形成する各フィラメント先端のうち、歯間ブラシの長手方向軸心回りの回転方向と太陽歯車33周囲の周回移動方向の反対側は、研磨されずに残されている可能性がある。このため、ブラシを形成する各フィラメント先端を満遍なく丸く研磨するためには、太陽歯車の回転方向を変えて再度研磨することが好ましい。
【0039】
具体的には、
図4に示すように、第1の研磨装置1A及び第2の研磨装置1Bを併設し、まず、第1の研磨装置1Aにおいて、前述したように、太陽歯車33を反時計回り方向に回転させることにより、時計回り方向に自転しつつ反時計回り方向に公転する遊星歯車35を介して歯間ブラシ11を長手方向軸心回りに回転させながら太陽歯車33の周囲を周回移動させ、上下方向に往復移動する円弧状の研磨シート52に歯間ブラシ11のブラシ14先端を略接触させ、その移動方向に対応してわずかに撓ませてほぼ丸く研磨する。
【0040】
次いで、第1の研磨装置1Aにおいて研磨された歯間ブラシ11を歯間ブラシ搬出位置のホルダー7からロボットアーム8Bを介して取り出した後、第2の研磨装置1Bの遊星歯車機構3における歯間ブラシ搬入位置に臨む遊星歯車35のホルダー7に装着する。一方、第2の研磨装置1Bにおいては、太陽歯車33を時計回り方向に回転させることから、第1の研磨装置1Aとは逆方向、すなわち、反時計回り方向に自転しつつ時計回り方向に公転する遊星歯車35を介して歯間ブラシ11を長手方向軸心回りに回転させながら太陽歯車33の周囲を周回移動させ、上下方向に往復移動する円弧状の研磨シート52に歯間ブラシ11のブラシ14先端を略接触させ、その移動方向に対応してわずかに撓ませてほぼ丸く研磨する。そして、第2の研磨装置1Bにおいて研磨された歯間ブラシ11を歯間ブラシ搬出位置のホルダー7からロボットアーム8Cを介して取り出した後、製品搬送ラインに供給する。
【0041】
これにより、歯間ブラシ11のブラシ14先端を回転方向を変えて研磨することが可能となり、ブラシを形成する各フィラメント先端を満遍なく丸く研磨することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 研磨装置
2 支持フレーム
3 遊星歯車機構
33 太陽歯車
34 内歯車
35 遊星歯車
4 駆動機構
5 研磨ユニット
52 研磨シート
6 連動機構
61,62 かさ歯車
63 水平軸
64 円盤
65 アーム
7 ホルダー
11 歯間ブラシ
14 ブラシ