特許第6063219号(P6063219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063219
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】鋳型造型用粘結剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/10 20060101AFI20170106BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B22C1/10 D
   B22C1/22 E
   B22C1/22 C
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-254369(P2012-254369)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-100726(P2014-100726A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青沼 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊樹
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−148340(JP,A)
【文献】 特開2011−045904(JP,A)
【文献】 特開2012−135778(JP,A)
【文献】 特開2011−224639(JP,A)
【文献】 特開2010−012475(JP,A)
【文献】 特開2006−070247(JP,A)
【文献】 特開2012−139729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/10, 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアルデヒド、尿素及び酸硬化性樹脂を含有し、
前記尿素に対する前記芳香族ジアルデヒドの質量比が2.0以上15.0以下である、鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジアルデヒドの含有量が、鋳型造型用粘結剤組成物中、1.0質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項3】
前記尿素の含有量が、鋳型造型用粘結剤組成物中、0.3質量%以上5.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項4】
前記酸硬化性樹脂がフルフリルアルコールを含有する、請求項1〜のいずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項5】
前記フルフリルアルコールの含有量が、鋳型造型用粘結剤組成物中、65質量%以上95質量%以下である、請求項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【請求項6】
耐火性粒子と、請求項1〜のいずれか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを含有する、鋳型用組成物。
【請求項7】
耐火性粒子と、請求項1〜のいずれか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを混合して、鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ジアルデヒド、尿素及び酸硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物と、これを用いた鋳型用組成物及び鋳型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸硬化性自硬性鋳型(以下、単に「鋳型」ともいう)は、珪砂等の耐火性粒子に、酸硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤と、リン酸、有機スルホン酸、硫酸等を含有する硬化剤とを添加し、これらを混練した後、得られた混練砂を木型等の原型に充填し、酸硬化性樹脂を硬化させて製造される。得られた鋳型は、機械鋳物部品や建設機械部品あるいは自動車用部品等の鋳物を鋳造する際に使用される。
【0003】
前記した鋳型の造型、あるいは鋳型を用いて鋳物を鋳造する上で重要な項目として鋳型の生産性が挙げられる。鋳型の生産性を上げるためには、原型に混練砂を充填した後、鋳型の硬化速度を上げて、原型から鋳型を抜型するまでに要する時間(抜型時間)を短くする必要がある。
【0004】
また、もう一つの重要な項目として、鋳型造型時の作業環境の改善が挙げられる。特に酸硬化性樹脂としてフラン樹脂を使用する場合、鋳型造型時に発生するホルムアルデヒド量の低減及び鋳造時に発生するSOx量の低減が望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1では、特定の尿素含有量、特定のpHを有する樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物が、鋳型造型時のホルムアルデヒドの発生を低減し、硬化特性を向上させることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、水溶性フェノール樹脂と芳香族アルデヒドとを必須成分とする鋳型造型用粘結剤組成物が鋳型造型時及び鋳造時のホルムアルデヒドの発生を低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−70247号公報
【特許文献2】特開平5−50177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来から提案されている鋳型造型用粘結剤組成物では、鋳型の硬化速度の点で不十分であった。更に、鋳型造型時の作業環境改善の観点から、鋳型造型時のホルムアルデヒド発生量及び鋳造時のSOx発生量のさらなる低減が求められているのが実情であった。
【0009】
本発明は、鋳型の硬化速度を向上させることができ、かつ鋳型造型時のホルムアルデヒド発生量及び鋳造時のSOx発生量の低減が可能な鋳型造型用粘結剤組成物、及びこれを用いた鋳型用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鋳型造型用粘結剤組成物は、芳香族ジアルデヒド、尿素及び酸硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物である。
【0011】
本発明の鋳型用組成物は、耐火性粒子と、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを含有する鋳型用組成物である。
【0012】
本発明の鋳型の製造方法は、耐火性粒子と、前記鋳型造型用粘結剤組成物と、当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを混合して、鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鋳型の硬化速度を向上させ、かつ鋳型造型時のホルムアルデヒド発生量及び鋳造時のSOx発生量の低減が可能であり、作業環境を著しく改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物(以下、単に「粘結剤組成物」ともいう)は、鋳型を製造する際の粘結剤として使用されるものであって、芳香族ジアルデヒド、尿素及び酸硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物である。本実施形態の粘結剤組成物は、鋳型用組成物の硬化速度を向上させ、鋳型造型時のホルムアルデヒド発生量及び鋳造時のSOx発生量を低減させることができる。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下の様に考えられる。
【0015】
従来、鋳型造型時に酸硬化性樹脂中に含まれるフルフリルアルコールのメチロール基同士の縮合反応によって多量のホルムアルデヒドが発生し、作業環境を悪化させていた。この課題に対し、特許文献1では、尿素をホルムアルデヒド捕捉剤として作用させることにより、ホルムアルデヒドの発生を抑制している。また、特許文献2では、芳香族アルデヒドをホルムアルデヒド捕捉剤として作用させることにより、ホルムアルデヒドの発生を抑制している。しかしながら、本実施形態の粘結剤組成物では、芳香族ジアルデヒドや尿素がフルフリルアルコールのメチロール基同士の縮合反応によって発生したホルムアルデヒドを捕捉するのではなく、鋳型造型時に芳香族ジアルデヒドと尿素の重合反応が起こり、芳香族ジアルデヒド、尿素及びフルフリルアルコールの重合反応がフルフリルアルコールのメチロール基同士の縮合反応よりも優先的に起こるために、ホルムアルデヒドの発生が低減されると推測される。また、芳香族ジアルデヒドと尿素の重合反応の反応速度が速く、これにより鋳型の硬化速度が加速されるために、SOxを発生させる硬化剤の量を低減することができ、SOxの発生量を低減させることができると考えられる。
【0016】
以下、本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物に含有される成分について説明する。
【0017】
〔鋳型造型用粘結剤組成物〕
<芳香族ジアルデヒド>
芳香族ジアルデヒドは、芳香族化合物の芳香環に2つのホルミル基を有する化合物である。芳香環としては、ベンゼン環、フラン環等が挙げられ、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒドの発生量を低減させ、SOxの発生量を低減させる観点から、ベンゼン環が好ましい。また、芳香環には、ホルミル基以外の置換基、例えば、アルキル基等を有していてもよい。
【0018】
芳香族ジアルデヒドは、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒドの発生量を低減させる観点、SOxの発生量を低減させる観点から、下記一般式(1)で表される構造を有する芳香族ジアルデヒドが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
上記一般式(1)で表される構造を有する芳香族ジアルデヒドの具体例としてはイソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド及びフタルアルデヒドが挙げられる。これらのうち、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、イソフタルアルデヒド及びテレフタルアルデヒドが好ましく、酸硬化性樹脂への溶解性の観点及びホルムアルデヒド発生量を低減させる観点からイソフタルアルデヒドがより好ましい。これらの芳香族アルデヒドは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
芳香族ジアルデヒドの含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、粘結剤組成物中、1.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。芳香族ジアルデヒドの含有量は、酸硬化性樹脂への溶解性の観点から、粘結剤組成物中、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。また、芳香族ジアルデヒドの含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点、及び酸硬化性樹脂への溶解性の観点から、粘結剤組成物中、1.0〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0022】
<尿素>
尿素の含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、粘結剤組成物中、0.3質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましい。尿素の含有量は、酸硬化性樹脂への溶解性の観点から、粘結剤組成物中、5.0質量%以下が好ましく、4.5質量%以下が好ましく、4.0質量%以下が更に好ましい。また、尿素の含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点、及び酸硬化性樹脂への溶解性の観点から、粘結剤組成物中、0.3〜5.0質量%が好ましく、1.0〜4.5質量%がより好ましく、2.0〜4.0質量%が更に好ましい。
【0023】
<尿素に対する芳香族ジアルデヒドの質量比>
尿素に対する芳香族ジアルデヒドの質量比(芳香族ジアルデヒド/尿素)は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましく、4.5以上がより更に好ましい。尿素に対する芳香族ジアルデヒドの質量比は、同様の観点から、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、8.0以下が更に好ましく、6.0以下がより更に好ましい。また、尿素に対する芳香族ジアルデヒドの質量比は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から2.0〜15が好ましく、2.5〜10がより好ましく、2.5〜8.0が更に好ましく、3.0〜6.0がより更に好ましい。
【0024】
<酸硬化性樹脂>
酸硬化性樹脂としては、従来公知の樹脂が使用でき、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物(以下、「尿素変性フラン樹脂」ともいう)、フェノール類とアルデヒド類の縮合物(以下、「フェノール樹脂」ともいう)、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるものや、これらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが使用できる。また、これらの群から選ばれる2種以上の共縮合物からなるものも使用できる。このうち、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、フルフリルアルコール、フェノール樹脂及び尿素変性フラン樹脂から選ばれる1種以上を使用するのが好ましく、フルフリルアルコールがより好ましい。また、フルフリルアルコールは、非石油資源である植物から製造できるため、地球環境の観点からも好ましい。
【0025】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、パラホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうち1種以上を適宜使用できる。これらの中でも、経済性の観点から、パラホルムアルデヒドを用いるのが好ましい。
【0026】
尿素変性フラン樹脂は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、その構成するモノマー成分であるフルフリルアルコール1モルに対するアルデヒド類と尿素のモル比が、それぞれ0.5〜8モル、0.10〜4モルであることが好ましく、0.7〜4モル、0.15〜2モルであることがより好ましく、1〜3モル、0.20〜1.5モルであることが更に好ましい。
【0027】
尿素変性フラン樹脂は、フルフリルアルコール100質量部に対し、尿素0.6〜30質量部及びパラホルムアルデヒド0.4〜50質量部反応させることにより得ることが出来る。経済性の観点、鋳型の可とう性を向上させる観点及び鋳型の最終強度を向上させる観点から、フルフリルアルコール100質量部に対し、尿素1.0〜25質量部及びパラホルムアルデヒド1.0〜45質量部反応させることが好ましく、尿素1.5〜20質量部及びパラホルムアルデヒド1.5〜40質量部反応させることがより好ましい。
【0028】
尿素変性フラン樹脂を製造する際、尿素変性フラン樹脂以外に原料のフルフリルアルコール、原料に含まれる水、反応中に生成する水等が含まれるが、経済性の観点から除去しなくてもよい。尿素変性フラン樹脂組成物は、尿素変性フラン樹脂、フルフリルアルコール及び尿素変性フラン樹脂以外の成分、例えば水等を含有する。
【0029】
フェノール樹脂は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、その構成するモノマー成分であるフェノール類1モルに対するアルデヒド類のモル比が、それぞれ0.10〜4.0モルであることが好ましく、0.15〜2.0モルであることがより好ましく、0.20〜1.5モルであることが更に好ましい。
【0030】
フェノール樹脂は、フェノール100質量部に対し、パラホルムアルデヒド2.0〜60質量部を加え、反応させることにより得ることができる。経済性の観点及び鋳型硬化速度を向上させる観点からフェノール100質量部に対し、パラホルムアルデヒド3.0〜55質量部反応させることが好ましく、4.5〜50質量部反応させることがより好ましく、6.0〜45質量部反応させることが更に好ましい。さらに、ハンドリング性を向上させる観点から、希釈溶媒として、フルフリルアルコールを混合することが好ましい。当該フルフリルアルコールの含有量は、フェノール樹脂100質量部に対して、20〜100質量部が好ましい。
【0031】
酸硬化性樹脂の含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、粘結剤組成物中、65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。酸硬化性樹脂の含有量は、粘度を適切な値に調節することによるハンドリング性の観点から、粘結剤組成物中、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。また、酸硬化性樹脂の含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点、及び粘度を適切な値に調節することによるハンドリング性の観点から、粘結剤組成物中、65〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、75〜85質量%が更に好ましい。
【0032】
フルフリルアルコールは、単独で配合するものに加えて、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、尿素変性フラン樹脂などを合成する際に、モノマーの形で残存するものも含む。
【0033】
フルフリルアルコールの含有量は、硬化促進剤、尿素及び芳香族ジアルデヒドを溶解させる観点及び粘結剤組成物を扱いやすくする観点、粘度を適切な値に調節し、ハンドリング性を向上させる観点から、粘結剤組成物中、65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。フルフリルアルコールの含有量は、粘度を適切な値に調節することによるハンドリング性の観点から、粘結剤組成物中、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。また、フルフリルアルコールの含有量は、硬化促進剤、尿素及び芳香族ジアルデヒドを溶解させる観点及び粘結剤組成物を扱いやすくする観点、粘度を適切な値に調節し、ハンドリング性を向上させる観点から、粘結剤組成物中、65〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、75〜85質量%が更に好ましい。
【0034】
本実施形態の粘結剤組成物中には、更に水が含まれてもよい。例えば、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物などの各種縮合物を合成する場合、水溶液の原料を使用したり縮合水が生成したりするため、縮合物は、通常、水との混合物、すなわち酸硬化性樹脂組成物として得られる。このような縮合物を粘結剤組成物に使用するにあたり、経済性の観点から、合成過程に由来するこれらの水をあえて除去する必要はない。また、粘結剤組成物を取扱いやすい粘度に調整する目的などで、水を更に添加してもよい。ただし、水が過剰になると、酸硬化性樹脂の硬化反応が阻害されるおそれがある。水の含有量は、粘結剤組成物中、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下がより更に好ましく、0.1質量%以下がより更に好ましい。
【0035】
<硬化促進剤>
粘結剤組成物中には、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、硬化促進剤が含まれていてもよい。なお、硬化促進剤は、粘結剤組成物中に含まれるものに加えて、鋳型用組成物に別添してもよい。硬化促進剤としては、鋳型の硬化速度を向上させ、最終的な鋳型強度を向上させる観点から、下記一般式(2)で表される化合物(以下、硬化促進剤(1)という)、多価フェノール類からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0036】
【化2】
〔式中、X及びXは、それぞれ水素原子、CH又はCの何れかを表す。〕
【0037】
硬化促進剤(1)としては、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン、2,5−ビス(メトキシメチル)フラン、2,5−ビス(エトキシメチル)フラン、2−ヒドロキシメチル−5−メトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−エトキシメチルフラン、2−メトキシメチル−5−エトキシメチルフランが挙げられる。なかでも、鋳型強度を向上させる観点から、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランを使用するのが好ましい。
【0038】
多価フェノール類としては、例えばレゾルシン、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール、縮合型タンニン、加水分解型タンニン等が挙げられる。なかでも、鋳型強度を向上させる観点から、レゾルシンが好ましい。
【0039】
硬化促進剤(1)の含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、粘結剤組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることが更に好ましい。硬化促進剤(1)の含有量は、酸硬化性樹脂への溶解性の観点から、粘結剤組成物中、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、6質量%以下がより更に好ましい。
【0040】
多価フェノール類の含有量は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、粘結剤組成物中、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることが更に好ましい。多価フェノール類の含有量は、酸硬化性樹脂への溶解性の観点から、粘結剤組成物中、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。更にレゾルシンを用いる場合は、鋳型の硬化速度を向上させ、ホルムアルデヒド発生量を低減させ、SOx発生量を低減させる観点から、粘結剤組成物中、10質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
<シランカップリング剤>
また、粘結剤組成物中には、更にシランカップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。シランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシランなどが用いられる。好ましくは、アミノシラン、エポキシシラン、ウレイドシランである。より好ましくはアミノシラン、エポキシシランであり、更に好ましくはアミノシランである。アミノシランの中でも、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0042】
シランカップリング剤の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量は、同様の観点から、粘結剤組成物中、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態の粘結剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、0.01〜0.5質量%が好ましく、0.05〜0.3質量%がより好ましい。
【0043】
[鋳型造型用組成物]
本実施形態の粘結剤組成物は、耐火性粒子及び硬化剤と混合して鋳型造型用組成物とすることができる。本実施形態の鋳型造型用組成物は、本実施形態の粘結剤組成物、耐火性粒子及び硬化剤を含有する。
【0044】
<耐火性粒子>
耐火性粒子としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収したものや再生処理したものなども使用できる。
【0045】
<硬化剤>
硬化剤は、本実施形態の粘結剤組成物を硬化させる硬化剤である。具体的には、キシレンスルホン酸(特に、m−キシレンスルホン酸)及びトルエンスルホン酸(特に、p−トルエンスルホン酸)等のスルホン酸系化合物、リン酸系化合物、硫酸等が挙げられる。これらの化合物は、取り扱い性の観点から水溶液であることが好ましい。更に、硬化剤中にアルコール類、エーテルアルコール類及びエステル類よりなる群から選ばれる1種以上の溶剤や、カルボン酸類を含有させることができる。
【0046】
本実施形態の鋳型用組成物において、耐火性粒子と粘結剤組成物と硬化剤との比率は適宜設定できるが、鋳型の硬化速度を向上させ、最終的な鋳型強度を向上させる観点から、耐火性粒子100質量部に対して、粘結剤組成物が0.5質量部以上であり、硬化剤が0.07質量部以上であることが好ましい。また、得られる鋳物品質の向上の観点から、耐火性粒子100質量部に対して、粘結剤組成物が1.5質量部以下であり、硬化剤が1.0質量部以下であることが好ましい。また、耐火性粒子と粘結剤組成物と硬化剤との比率は適宜設定できるが、鋳型の硬化速度を向上させ、最終的な鋳型強度を向上させる観点、及び得られる鋳物品質の向上の観点から、耐火性粒子100質量部に対して、粘結剤組成物が0.5〜1.5質量部であり、硬化剤が0.07〜1.0質量部であることが好ましい。
【0047】
粘結剤組成物と硬化剤の質量比は、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物100質量部に対して、硬化剤20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。粘結剤組成物と硬化剤の質量比は、得られる鋳物品質の向上の観点から、粘結剤組成物100質量部に対して、硬化剤60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。また、粘結剤組成物と硬化剤の質量比は、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点、及び得られる鋳物品質の向上の観点から、粘結剤組成物100質量部に対して、硬化剤20〜60質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。
【0048】
本実施形態の粘結剤組成物は、鋳型製造に好適に使用される。
【0049】
〔鋳型の製造方法〕
鋳型は、本実施形態の鋳型用組成物を硬化させることによって製造することができる。本実施形態の鋳型の製造方法において、従来の鋳型の製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。好ましい鋳型の製造方法として、耐火性粒子と本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物と、前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を有する鋳型の製造方法が挙げられる。
【0050】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
【0051】
<1>芳香族ジアルデヒド、尿素酸及び硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物。
<2>前記芳香族ジアルデヒドが、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド及びフタルアルデヒドからなる群より選ばれる1種以上である前記<1>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<3>前記芳香族ジアルデヒドの含有量は、鋳型造型用粘結剤組成物中、1.0質量%以上であり、5.0質量%以上であり、10質量%以上であり、30質量%以下であり、25質量%以下であり、20質量%以下であり、1.0〜30質量%であり、5〜25質量%であり、10〜20質量%である前記<1>又は<2>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<4>前記尿素の含有量が、鋳型造型用粘結剤組成物中、0.3質量%以上であり、1.0質量%以上であり、2.0質量%以上であり、5.0質量%以下であり、4.5質量%以下であり、4.0質量%以下であり、0.3〜5.0質量%であり、1.0〜4.5質量%であり、2.0〜4.0質量%である前記<1>〜<3>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<5>前記尿素に対する芳香族ジアルデヒドの質量比(芳香族ジアルデヒド/尿素)が、2.0以上であり、2.5以上であり、3.0以上であり、4.0以上であり、15以下であり、10以下であり、8.0以下であり、6.0以下であり、2.0〜15であり、2.5〜10であり、3.0〜10であり、3.0〜8.0であり、4.0〜6.0である前記<1>〜<4>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<6>前記酸硬化性樹脂の含有量が、鋳型造型用粘結剤組成物中、65質量%以上であり、70質量%以上であり、75質量%以上であり、95質量%以下であり、90質量%以下であり、85質量%以下であり、65〜95質量%であり、70〜90質量%であり、75〜85質量%である前記<1>〜<5>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<7>前記酸硬化性樹脂が、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物、フェノール類とアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物、フェノール類とアルデヒド類の縮合物、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物から選ばれる1種以上を含有し、好ましくはフルフリルアルコールを含有する前記<1>〜<6>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<8>前記酸硬化性樹脂が、フルフリルアルコールを含有する前記<1>〜<7>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<9>前記フルフリルアルコールの含有量が、鋳型造型用粘結剤組成物中、65質量%以上であり、70質量%以上であり、75質量%以上であり、95質量%以下であり、90質量%以下であり、85質量%以下であり、65〜95質量%であり、70〜90質量%であり、75〜85質量%である前記<8>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<10>更に、硬化促進剤を含有する前記<1>〜<9>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<11>前記硬化促進剤が、下記一般式(2)で表される硬化促進剤(1)、多価フェノール類、及び芳香族ジアルデヒドからなる群より選ばれる1種以上である前記<10>の鋳型造型用粘結剤組成物。
【化3】
〔式中、X及びXは、それぞれ水素原子、CH又はCの何れかを表す。〕
<12>前記硬化促進剤が前記硬化促進剤(1)を含み、当該硬化促進剤(1)の含有量が、粘結剤組成物中、0.5質量%以上であり、1.0質量%以上であり、3.0質量%以上であり、粘結剤組成物中、30質量%以下であり、20質量%以下であり、10質量%以下であり、6質量%以下である、前記<11>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<13>前記硬化促進剤が前記多価フェノール類を含み、当該多価フェノール類の含有量が、粘結剤組成物中、1.0質量%以上であり、2.0質量%以上であり、3.0質量%以上であり、粘結剤組成物中、25質量%以下であり、15質量%以下であり、10質量%以下であり、粘結剤組成物中、10質量%以下であり、7.0質量%以下であり、3.5質量%以下である、前記<11>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<14>更に、水分を含有し、鋳型造型用粘結剤組成物中の水分含有量が、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0.1質量%以下である前記<1>〜<13>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<15>更に、シランカップリング剤を含有する、前記<1>〜<14>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<16>前記シランカップリング剤の含有量が、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上であり、0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下である、前記<15>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<17>前記シランカップリング剤がN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランである前記<15>又は<16>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<18>前記鋳型造型用粘結剤組成物の窒素含有量が、0.5質量%以上であり、0.7質量%以上であり、0.9質量%以上であり、4.0質量%以下であり、3.0質量%以下であり、2.0質量以下であり、0.5〜4.0質量%であり、0.7〜3.0質量%であり、0.9〜2.0質量%である前記<1>又は<17>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<19>耐火性粒子と、<1>〜<18>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物と、前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを含有する、鋳型用組成物。
<20>前記耐火性粒子と前記粘結剤組成物と前記硬化剤との比率が、前記耐火性粒子100質量部に対して、前記粘結剤組成物が0.5質量部以上1.5質量部以下で、前記硬化剤が0.07質量部以上1質量部以下である、前記<19>の鋳型用組成物。
<21>前記粘結剤組成物と前記硬化剤の質量比は、前記粘結剤組成物100質量部に対して、硬化剤20質量部以上、好ましくは30質量部以上であり、硬化剤60質量部以下、好ましくは50質量部以下である、前記<19>又は<20>の鋳型用組成物。
<22>前記耐火性粒子と、<1>〜<21>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物と、前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを混合して、鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化する硬化工程を含む鋳型の製造方法。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。
【0053】
<粘結剤組成物中の水分>
JIS K 0068に示される化学製品の水分試験法にて測定を行った。
【0054】
<粘結剤組成物中のフルフリルアルコール含有量>
ガスクロマトグラフィーにより、フルフリルアルコールの検量線を用いて、粘結剤組成物中のフルフリルアルコール含有量を測定した。
[測定条件]
内部標準溶液:1,6−ヘキサンジオール
カラム:PEG−20M Chromosorb WAW DMCS 60/80mesh(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:80〜200℃(8℃/min)
インジェクション温度:210℃
検出器温度:250℃
キャリアーガス:50mL/min(He)
【0055】
<酸硬化性樹脂組成物の製造例>
[酸硬化性樹脂組成物1:尿素変性フラン樹脂]
三ツ口フラスコにフルフリルアルコール100質量部、パラホルムアルデヒド35質量部及び尿素13質量部を取り、混合し、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整した。混合物を100℃に昇温後、同温度で1時間反応させた後、37%塩酸でpH4.5に調整し、更に100℃で1時間反応させた。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、尿素5質量部を添加して、100℃で30分反応させ、酸硬化性樹脂組成物1を得た。酸硬化性樹脂組成物1の組成は、尿素変性フラン樹脂71.7質量%、フルフリルアルコール19.5質量%、水8.8質量%であった。
【0056】
[酸硬化性樹脂組成物2:フェノール樹脂]
三ツ口フラスコにフェノール100質量部及びパラホルムアルデヒド45質量部を取り、混合し、48%水酸化カリウム水溶液でpH8.0に調整した。混合物を80℃で10時間反応させた。その後、ここで得られた反応物80質量部に対し、フルフリルアルコールを20質量部加えて酸硬化性樹脂組成物2を得た。酸硬化性樹脂組成物2の組成は、フェノール樹脂72質量%、フルフリルアルコール20.0質量%、水8.0質量%であった。
【0057】
<芳香族ジアルデヒド化合物>
芳香族ジアルデヒドは、以下のものを用いた。
イソフタルアルデヒド:和光純薬工業社製
テレフタルアルデヒド:和光純薬工業社製
【0058】
<粘結剤組成物の製造例>
表1に示す所定量の酸硬化性樹脂組成物、アルデヒド化合物、尿素、水、シランカップリング剤をそれぞれ混合し、実施例1〜10及び比較例1〜9の粘結剤組成物を製造した。「FFA」はフルフリルアルコール(花王クエーカー社製)、「シランカップリング剤」はN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製)を意味する。各実施例及び比較例に係る粘結剤組成物の組成を後述の表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
〔実施例1〜10、比較例1〜9〕
[試験例1(SOx発生量の評価)]
<硬化剤の製造例>
硬化速度が0.5hrで約0.3[MPa]となるように、表1に示す粘結剤組成物に対し、キシレンスルホン酸と硫酸の量を調整し、表2の組成になるように水と混合した。
【0061】
<鋳型造型用組成物の製造例>
25℃、55%RHの条件下で、珪砂(フリーマントル新砂)100質量部に対し、硬化剤0.40質量部を添加し、次いで表1に示す粘結剤組成物1.00質量部を添加し、これらを混合して鋳型用組成物(混練砂)を得た。
【0062】
<硬化速度の評価>
混練直後の混練砂を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、0.5時間経過した時に抜型を行い、JIS Z 2604−1976に記載された方法で、テストピースの圧縮強度(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
<SOx発生量の評価>
表2において、硬化速度が0.5hrで約0.3[MPa]にするのに必要な硬化剤中のS濃度を求めた。S濃度は硬化剤中に含有されるS元素の質量パーセント濃度を示す。S濃度が低いものほど、鋳造時に発生するSOx発生量が低減できることを意味する。
【0064】
[試験例2(ホルムアルデヒド発生量の評価)]
<鋳型造型用組成物の製造例及びホルムアルデヒド発生量の評価>
25℃、55%RHの条件下、ミキサー(7.0L・密閉系)で珪砂(フリーマントル新砂)2.0kgに対し、表2に示す硬化剤8.0g(珪砂100質量部に対し0.40質量部)を添加し、次いで表1に示す組成の粘結剤組成物20g(珪砂100質量部に対し1.00質量部)を添加し、これらを混合した。その際、粘結剤組成物の添加時より8分間、Airを流し込み(3.0L/min)、混練砂より発生したホルムアルデヒドを蒸留水にて捕集し、サンプルを得た。次いでアセチルアセトン法を用いた高速液体クロマトグラフィーによりサンプル中のホルムアルデヒド量を測定した。結果を表2に示す。
[測定条件]
カラム:L−column ODS
移動相:蒸留水
移動相流量:1.0mL/min
カラム温度:25℃
反応液:150g 酢酸アンモニウム、3mL 酢酸、5mL アセチルアセトンを1000mLの蒸留水に溶解
反応液流量:0.5mL/min
反応温度:80℃
検出:蛍光検出、励起波長 395nm、検出波長 545n
【0065】
【表2】
【0066】
表2から明らかなように、実施例1〜10は、比較例1〜9より、ホルムアルデヒド発生量の低減及びSOx発生量の低減に優れる。